『風と翼:REVELATION』脚本⑨

夜。
雪化粧の伊賀山中
家康「はくしょい!」
廃墟となった伊賀エージェンシーの本社ビルに入る家康一行。
家康「あった・・・ここなら雪をしのげよう・・・」
本多が地面にキャンプ用品を並べる。
本多「麓のWILD1からかっぱらってきました。」
家康「山賊じゃねえか・・・」
本多「麓の町は壊滅です。もう誰もいません。」
携帯燃料で火種を起こす本多。
家康「手際がいいな。」
マシュマロを焚き火で焼く本多「一時期、家族でキャンプにはまってたんすよ」

焚き火を囲んで座る3人。
鉈で木を削って武器を作っている服部。
焚き火を眺める家康「AIで安寧の世を築こうとしたが・・・またしても失敗だ・・・
わしのビジネスは成功したためしがない・・・」
本多「確かに。今川焼き屋は集団食中毒出したし、地下風俗は売上金強奪されたしね。
・・・はい、じょうずに焼けました」
焼きマシュマロを家康に渡す本多
マシュマロをほおばる家康「お前は、ずっとついてきてくれるよな・・・」
本多「小学校からの仲じゃないっすか。」
家康「正信・・・」
その時、外の茂みで動物の悲鳴が上がる。
家康「ひいい!」
服部「罠にかかったようだ。どっこいしょ。」
立ち上がって、建物から出て行く服部。
茂みの中に消えていく。

本多「・・・失敗なんて慣れっこじゃないですか。
渡る世間に鬼はなし・・・一からもう一度頑張りましょうや」
服部「これって食べられるかな・・・?」
服部が、罠にかかった鬼を引きずってくる。
本多「うわキモっ・・・!」
家康「先生、なんという動物ですか、これは・・・!」
服部「おそらく地獄の鬼だと思う。
AIが翼を解放するために、魔王信玄の封印も解いてしまったということか・・・」
家康「信玄・・・!?太平洋戦争を起こして日本をめちゃくちゃにしたデーモンじゃないですか!」
本多「でもあいつはA級戦犯になって処刑されたんじゃないすか?
俺は小学校でそう習いました。」
鉈を振り上げる服部「鬼は・・・」
ダン!と、鬼の腕を切断する服部。
「決して殺せない・・・」
切断された腕がわずかに再生しているのがわかる。
家康「・・・生きていたのか・・・」
切断した鬼の腕に鉄串を突き刺し、焚き火で炙る服部。
服部「そして信玄は同じ失敗を繰り返さない・・・
今度こそ太平洋戦争で欧米に勝つつもりだ・・・」
鬼の腕が焼けていく。
服部「世界は再び地獄の業火に包まれる・・・」
家康「なんとかならんのですか、先生・・・」
鬼の腕のバーベキューをかじる服部。
服部「翼の記憶がよみがえることに賭けるしかない・・・」
「翼?」
壁にかかっている結婚式の写真を鉄串で指す服部。
家康「・・・?このギャルどっかで・・・」
本多「・・・あ!風間カイトの彼女ですよ!チアガールやってた。」
家康「先生・・・チアガールに、なんとかなる問題なのですか・・・?」



望月忍者屋敷
翼「私には無理です・・・!」
金吾「お主の父は言っておった・・・お前さんには神にも等しい力が秘められておると・・・
戦時中、医学者だったわしは、養命酒と間違えて、あの信玄に不老不死の秘薬を調合してしまった・・・
その時の後悔から、弟子の百地丹波が死者を復活させることに反対したのじゃ・・・
・・・死を超越したものは、もはや人間ではない・・・鬼じゃ。
鬼を倒せるのは、神しかおらぬ。」
翼「わたしはただの人間ですって・・・!
魔王なんて倒せません・・・!!」
金吾「・・・己の運命から逃げるのか・・・?」
千代女「全ての元凶はアンタでしょ!!」
翼「わたしは・・・人間です・・・」
千代女「その問題は一回置いておきましょう。
心配なのは地獄に落ちたカイトくんよ・・・」
翼「!・・・カイトさん・・・!」
日本経済新聞の一面を見せる千代女。
新聞を読む翼「首都移転計画予定地、大地震で陥没・・・作業員の多くが今なお行方不明・・・」
千代女「力を貸してくれないかしら・・・翼ちゃん・・・」
翼に鶴姫一文字を渡す。
金吾「己の運命・・・」
千代女「うるさい。」
武装した八重たちが部屋に入ってくる。
八重「・・・鬼の討伐隊の準備は整ったわ。いつでも出撃できる・・・」
長門「甲賀から東京までのルートは切り込み隊の柴田、丹羽、滝川が確保した・・・!
いくなら今しかないぞ。一騎当千の信長四天王も、さすがにいい年だ・・・疲れちゃうからな。」
千代女「翼ちゃん・・・」
立ち上がる翼「これは討伐隊じゃない・・・救助隊です。
すぐに助けに行きます。」
その姿を見て、笑顔になり部屋の奥へ引っ込もうとする金吾「・・・・・・。」
逃げ出そうとする金後の首根っこを掴む千代女
「今回はあんたも来なさい!」
金吾にバンバンガンを突きつける長門「己の運命から逃げるんじゃない、むき卵。」
剣先をむける八重「・・・全ての元凶・・・殺すわよ・・・」
金吾「反省してま~す」



田舎の国道で、スポーツカーを走らせるサラ
ラジオ「警視庁交通管制センターです。自動運転の故障で、東名高速は大規模な追突事故が発生、120kmの渋滞となっています。」
助手席でぼやく秀頼「我々が恐れていたことが現実になったな・・・」
踏切の遮断機が降り、車を停車させる。
秀頼「カイト殿や翼殿が無事だといいが・・・」
サラ「あの二人ならきっと大丈夫・・・最高の忍者だから・・・
悔しいけど・・・お似合いのカップル・・・」
秀頼「まだ好きなんじゃないのかね・・・」
サラ「私には、カイトくんを助けに行く勇気も力もないから・・・
私はいつも口だけ・・・」
秀頼「自分の気持ちを伝えたほうがいいぞ・・・」
サラ「こんな事態で愛の告白なんかしている場合じゃないですよ」
秀頼「こういう事態だからこそ。」
その時、輸送トラックが追突してくる。
サラ「ちょっと何してんのよ!!!弁護士の初任給で買った911カレラよ!?」
バックミラーに目をやるサラ。
サラ「運転手が乗っていない・・・」
秀頼「AIにとって我々は天敵だ。
交通事故に見せかけて抹殺するつもりなのだろう・・・!」
線路には貨物列車が近づいてくる。
秀頼「このままでは、貨物列車にぶつかる・・・!」
ギアをリバースレンジに入れる。
秀頼「トラックと力比べする気か!!」
サラ「トラックはせいぜい400馬力・・・!
6気筒水平エンジン、ツインターボの力を見せてやる・・・!」
秀頼「無茶するな・・・!」
なんとか、貨物列車が通り過ぎるまで踏みとどまり、踏切をわたりトラックが上がってこれない丘の上まで逃げるスポーツカー。
AIトラックはそのまま通り過ぎていく。
秀頼「これも家康の余興か・・・?」
サラ「・・・これから、どこに逃げれば・・・」
秀頼「安全な場所が一つだけある・・・」



地獄
神輿に乗って信玄の玉座に現れる平将門。
「武田のオヤジ、連れてきたぜ。」
義経「神輿から降りなさい、総統閣下の御前だぞ・・・」
将門「神田神社の祭神が神輿に乗って何が悪い。
わりーけど、オレッチは関東八州の新皇だかんな?
まあまあ偉いかんな?」
小声で義経「ただの朝敵じゃねえか・・・」
将門「おめーも朝敵だっただろ!」
信玄「源平合戦は給湯室でやってくれるか・・・?」
義経「・・・失礼いたしました。」
将門「おう、お客さんを神輿から下ろせ!」
鬼「ほら、降りるんだ!」
神輿から降ろされるカイト。
そこらじゅうに旧日本軍の軍服を着た鬼たちがいる光景にビビってしまう。
カイト「ひいいいい!絶対こいつらに食い殺される~~!!」
義経「人間なんて食べませんよ!ぼくらはヴィーガンなの!」
カイト「うそだ!じゃあ、お前らは何でタンパク質を摂取してるんだ!」
将門「大豆。」
カイト「フェイクニュースだ・・・!じゃあ節分は一体・・・」
信玄「もういい、落ち着け人間よ・・・」
カイト「あんた・・・!あの石像の・・・!」
信玄「左様・・・吾輩は魔界の王、武田信玄。
青年よ、この度は封印を解いてくれて礼を言うぞ。」
カイト「いや、あれはちょっとした事故で・・・」
信玄「まあよい・・・このマントルまでやってきた生身の人間は初めてだ・・・
そなたの名前を聞こう・・・」
カイト「風間カイトです・・・」
鬼たちがざわつく「風魔・・・?」
信玄「・・・・・・。」
義経「風間カイトさん。偉大なる総統閣下が、あなたに勲章を授けてくださいます。
ありがたく頂戴するように。」
カイト「あの・・・そろそろ帰ってもいいですか・・・?」
義経「キミ、ちょっと失礼だぞ!!」
信玄「風間カイト・・・貴様・・・もしかして、信長や秀吉を倒した、あの伝説の忍か?」
カイト「なんで地獄の魔王がぼくを知ってるんですか??」
信玄「貴様の武勇はこの地獄にも聞き及んでおる・・・
ぜひ、その力を見込んで我々に協力をしてもらいたい・・・」
カイト「お、お前たちの地上征服の協力はできないぞ・・・!」
信玄「そんなことは考えておらぬ・・・我々は地上の人間との平和的共存を望んでいる・・・」
カイト「そうなの・・・?」
信玄「我々はこの見た目で、古くから人間たちに誤解され・・・差別されてきた・・・
この地獄は、鬼の強制収容所なのだよ・・・」
カイト「・・・え・・・」
信玄「吾輩は、哀れな鬼たちをここから解放したいだけだ・・・」
カイト「でも、鬼を差別した人間を恨んでいるんじゃ・・・」
信玄「憎しみからは何も生まれぬ・・・
我々鬼は誰よりも平和を愛している・・・」
侵略計画用の日本地図を指差すカイト「この地図は・・・?」
信玄「鬼が友好を結んだ都市だ・・・」
カイト「そうか・・・すでに東京は鬼を受け入れているのか・・・
ダイバーシティだもんな。」
信玄「そ・・・そうだ・・・
風間カイトよ、貴様こそ人と鬼の世界をつなぐ未来の架け橋になる男だ・・・」
カイト「人と鬼の・・・架け橋・・・」
将門「そもそも普通の人間は、ここの圧力に耐えられないもんな。」
義経「確かに・・・」
カイト「で・・・ぼくは何をすれば・・・」
信玄「簡単なことだ・・・東京都との国交樹立を記念して、この装置を東京スカイツリーの頂上に設置してくれるだけでよい。」
球体状の装置を受け取るカイト「なんですかこれ・・・」
義経「地獄のテレビ番組が地上でも映るチューナーです。」
カイト「へ~」
信玄「引き受けてくれたら、この将門が神輿で地上まで返そう・・・」
将門「あたぼうよ」
カイト「鬼さんたち・・・見た目はおっかないですが・・・
実は悲しい境遇にあったんですね・・・」
信玄「わかってくれたか・・・恩にきるぞ、風間カイト・・・!」
カイト「ぼくが人と鬼をつなぎます・・・!」

大本営を出て行くカイト。
信玄「・・・あいつ本当にバカだな・・・この履歴書に書いてあるとおりだ・・・」
平八郎の履歴書をめくる信玄。
「風間カイト・・・人を決して疑わず、情に厚く、弱きものの味方で、誰に対しても敬意と思いやりがある・・・」
義経「最後の方、ちょっと涙ぐんでましたもんね・・・」
大本営のモニターがつく。
不敗の大王アレキサンドロス(中東の地獄の支配者)
「おい、武田総統・・・世界全面攻撃の命令はまだなのか?
こっちは戦いたくてウズウズしてんだ。」
国士無双の韓信(中国の地獄の支配者)
「中国、ロシア方面はこの韓信に任せてちょうだい。国家主席の股をくぐると見せかけて、タマタマを握りつぶせば、中国共産党は崩壊よ。」
雷光のハンニバル(ヨーロッパとアフリカの地獄の支配者)
「下品なやつめ・・・武田総統、こちらも戦象の準備は万端だ。
100万頭のアフリカゾウを用意した・・・EUは7日で征服して見せよう・・・」
信玄「ぐははは・・・
あのバカ忍者が、日光遮断システム“トータル・エクリプス”をスカイツリーに設置すれば、地上の人間は皆殺しだ・・・」

『風と翼:REVELATION』脚本⑧

横たわって眠っている翼。
記憶が徐々に蘇る。

太平洋戦争末期・・・
煉獄のように燃え盛る首都東京。
その業火の中で、魔王が涼しい顔で歩いている。
魔王「侵略すること火のごとし・・・」

連合軍司令本部
通信兵「ダメです!B29爆撃機で、合計1700トンの焼夷弾を落としましたが、奴にとってはちょっとしたサウナのようです・・・!人間じゃありません!!」
マッカーサー「ジャパニーズサムライ・・・化け物か・・・」
アメリカ軍兵士「元帥!ジャパンのフィクサー、ミスター信長がお見えです。」
マッカーサー「お通しせよ。」
若かりし頃の信長「お邪魔しますよ・・・」
マッカーサー「ウラン型原爆もダメ、プルトニウム型もダメ・・・そして今や、戦場は東京となっている・・・ミスター信長、日本を滅ぼすおつもりか・・・」
ソファに座る信長「一億総玉砕になろうとも、ここであの魔王を止めなければ、お次は中国、満州、ソ連・・・そしてアメリカさん、あなた方の番ですよ?
広島と長崎の最終兵器は確かに効いています。事実、魔王の動きは鈍っている・・・」
マッカーサー「ではこのまま核兵器を使い続けろと・・・?日本を滅ぼすのはトルーマン大統領も反対している。」
信長「この消耗戦には私も反対です。あの魔王は死を超越した・・・殺すのではなく、ひるませて、粗大ごみのように封印するしかない・・・」
マッカーサー「封印だと・・・?」
信長「今回は元帥にお土産を持ってきました・・・」
手を叩く信長。
すると、猛獣用の檻が司令本部に運ばれてくる。
信長「原爆の衝撃波で天空から降ってきた、世にも珍しい珍獣です。」
檻の中を覗き込むと言葉を失うマッカーサー。
信長「野生の天使であります。」
天使は傷だらけで、髪はボサボサ、翼は折れかけている。
マッカーサー「い・・・生きているのか?」
信長「核爆発による大気汚染でかなり弱ってはいますが。」
天使「水・・・」
マッカーサー「会話ができるのかね?」
信長「ここにいる私の部下が調教しましてね。」
天使にコップで水をやる百地丹波。
信長「彼が保護をしたのです。」
マッカーサー「素晴らしい・・・」
信長「地上に悪魔が現れたと思ったら、今度は天空から天使が落ちてきた。
これは天命です。敵の敵は味方。
天使と悪魔・・・神に等しいこの二つの力をぶつければ、互いの力を奪い合い、魔王を封印できるに違いない。」



指令本部の廊下
煙草を出して吸う信長「よくやった三太夫。あとは白人どもに任せよう・・・」
百地「信長様・・・あの天使を、魔王信玄と戦わせるのは反対です・・・」
信長「ほう・・・」
百地「翼・・・いえ・・・上杉謙信は核爆発で弱っています」
信長「それは、武田信玄も同じだろう。
さては、きみ・・・鳥人に情がわいたか。
翼なんていう名前をつけて・・・」
百地「・・・・・・。」
信長「・・・正直、私はこの地獄のような戦争が終われば、あの女が生きようが死のうがどうでもいい・・・」
百地「も・・・もし、上杉が武田に敗れたら・・・?」
廊下を歩いてくる明智博士「それはありえませんよ。」
信長「やあ、明智博士・・・」
明智博士「どうも。
武田信玄が不死身なのは、秘薬の力によってエントロピーにバグが発生したからです。つまり、細胞は老化していくのではなく、むしろ自発的にエネルギーを得て若返っていく・・・ある種の永久機関ですな。」
百地「・・・・・・。」
明智博士「したがって、その生命エネルギーを信玄から永久に奪い続ければ、殺せなくとも動きを封じることができる・・・」
信長「原子炉のようにね。」

明智光秀の部下の研究者が巨大な三叉槍を運んでくる。
明智「アメリカ軍と共同開発したハイドロランサー1530・・・
あの鳥女がこいつで信玄を突き刺せば、奴のエネルギーは槍を介してすべて彼女に吸収される。謙信のキャパシティを超えない限りは、信玄は機能停止です。」
百地「もし上杉謙信がエネルギーを吸収しきれなかったら・・・・!!??」
明智「こんなこと、やったことないから分からないけど・・・風船のように膨らんで爆発するのかも・・・」
百地「神の使いの天使に対してなんてことを・・・!」
信長「じゃあ他に世界を救う手立てはあるのかい?」
百地「・・・・・・。」
明智「百地さん、大丈夫です。核兵器はまだたくさんあります。
これが失敗したら、また核爆弾を使って、天使どもを打ち落とせばいい・・・」
百地「狂ってる・・・」
信長「まあ、武士の情けだ。作戦実行まで5日ある。彼女を見送らせてあげるよ。」



地下シェルターにある小さな教会。
そこで、ささやかな結婚式を挙げる、百地丹波と上杉謙信(翼)。
仲人は服部半蔵。
石川五右衛門(豊臣秀吉)ら、伊賀忍者が列席している。
秀吉「綺麗だぜ、姉ちゃん」
百地「君を救えなくて済まない・・・」
翼「いえ・・・私は幸せです。私は天界でずっと孤独だったから・・・」
百地「翼は天使のように優しいな・・・」
カメラを構える服部「それではご両人、チーズ・サンドイッチ!」
この時撮影した写真が、伊賀エージェンシーに飾られていた。



川中島上空1000m。
米軍輸送機の後部ハッチが開く。
百地「翼・・・」
微笑む翼「私がこの戦争を止めます。」
ひらりとハッチから飛び降りる翼。
羽を折りたたみ、地上の信玄に急降下していく。
翼「信玄覚悟おおおお!!」
頭上の翼に気づく信玄。
とっさに軍配で翼の槍を受け止めるが、そのまま地面がめり込み、地下深くに沈んでいく。あっという間に地殻を過ぎ、上部マントルまで達し・・・閃光――



翼「・・・・・・!!!!」
目を覚ます翼。
千代女「翼ちゃん・・・!大丈夫よ、ここは安全・・・」
汗でぐっしょりの翼「はあはあ・・・こ・・・ここは?」
あたりを見回すと、望月金吾の忍者屋敷だということに気づく。
甲賀忍者の長、望月金吾「お前さんの家じゃよ。」
翼「望月頭領・・・!ロボットたちは・・・?」
千代女「ここにはいないわ。
皮肉にも廃村になって文明から切り離されたことが、功を奏したわね。」
望月金吾「それよりも・・・思い出したんじゃろ?」
翼「・・・おかしな夢を見ました・・・お父さんやお母さんが地獄の魔王と戦っていて・・・」
千代女「夢じゃないわ。私の結界は破られた・・・もう、魔王をおさえるものは何もない・・・」
翼「魔王って・・・そんなものはこの世にはいません。」
千代女「そうね、確かにいなかったわ・・・でも、生み出してしまった。
このじいさんが・・・」
金吾「不老不死の秘薬を作っちゃいました。反省してま~す・・・」
翼「頭領が??」
千代女「魔王の名は、武田信玄・・・日本最強の武将・・・」
翼「武田・・・信玄・・・」



地獄。
地下大本営基地に、封印が解かれた武田信玄が現れる。
鬼たち「武田総統に敬礼!」
「ハイル・タッケダー!!」
「ジーク・甲斐ザー!ジーク・ライヒ!!」
玉座に座る信玄。
副官の源義経「お待ちしておりました、総統・・・」
信玄「待たせたな。
それでは大東亜戦争の続きを始めようか・・・首尾は?」
日本地図を軍剣で指す義経「東京と大阪の奇襲攻撃は成功しました。
警察組織は自動化されていたので、EMP攻撃で簡単に無力化できました。」
信玄「愚かな・・・機械に頼るからこうなるのだ・・・
東部大隊は二手に分けてそのまま南下、自衛隊の市ヶ谷基地と横須賀基地に軍を進めよ。
現在の我々には主に金棒しか装備がない・・・まず市ヶ谷基地の武器庫を狙え。
横須賀基地では、空母と原潜を奪うのだ・・・
西部大隊は八尾駐屯地だ。中部方面ヘリコプター隊をおさえ、人間どもの補給路を断つのだ。日本の全軍を掌握したら、今度こそ鬼畜米英をひねりつぶす・・・!」
義経「はは。」
信玄「・・・で、我が封印を解いた大バカ者は・・・?」
義経「将門将軍が鬼500人を引き連れ、征討に向かいましたが・・・」
信玄「殺すなと伝えよ。吾輩直々に感謝の言葉を述べ・・・勲章を授けよう・・・」



川中島遺跡。
平八郎に蹴散らされている鬼たち。
黒服「獄長・・・!」
平八郎「きさまら!金のかけたドッキリをしおって・・・!
なんだ、このリアルなクリーチャーどもは!スタン・ウィストンスタジオか!?」
黒服「いや、本物かと・・・」
平八郎「だまらっしゃい!はやく、ドッキリ大成功の札を出せい!!」
カイト「本当の化け物がいた・・・」
黒服「獄長大変です!セクハラパラダイス建設地にも鬼が現れました!!」
平八郎「なんだと!!?」

大江戸セクハラパラダイスは阿鼻叫喚の地獄となっている。
逃げ惑う労働者「ひいいい!鬼だ~!!」
勝手にスプラッシュマウンテンやメリーゴーランドに乗って遊んでいる鬼たち。
家康の穴あきパネルに顔を入れて記念撮影をしている。
カイト「まるでグレムリンだ・・・」
平八郎「鬼どもめ・・・好き勝手しおって・・・!」
ドラゴンカッターに弾を込める平八郎
「一匹残らず駆除してやる!!!お前たちついてこい!」
黒服「は!!」
カイトを残して行ってしまう平八郎達。

?「とんでもねえやつが、地上にもいたもんだ・・・」
振り向くカイト「!」
見ると、神輿の上で仁王立ちしている江戸っ子がいる。
背中には「アセノスフェア溶解玄武岩97%」と書かれた火焔放射器のタンクをしょっている。
カイト「あんた誰だ…」
「オレっちか?オレっちは神田大明神・・・平将門だ!」
「平将門・・・」
「あんただろ?うちの総統の封印を解いてくれたのは。礼を言うぜ。
あらよっと!」
カイトを殴って一撃で気絶させる将門。
気を失ったカイトを神輿の中に入れてしまう。

平八郎にちぎっては投げられる鬼たち。
将門「そいつにかまっててもキリがないぜ!
鬼ども、撤収だ!わっしょい、わっしょい!!」
平八郎「おのれ江戸っ子!逃がすか!」
将門「てやんでい!火事と喧嘩は江戸の華だぜ!!」
平八郎に向かって火炎放射器を放つ将門。
平八郎「うおおお!」

炎が鎮火される。
遊園地から消えてしまう鬼たち。
黒服「き・・・消えた・・・」
ちぎり取った鬼の腕をポロリと落とし、涙を流す平八郎。
「おのれ・・・鬼どもめ・・・
殿のテーマパークでそこら中にうんこをしていきおった・・・!!」

『風と翼:REVELATION』脚本⑦

地下20kmモホロビチッチ不連続面付近
発光する物体に近づくカイト。
発光する物体は、カンラン石でできた人間の彫刻だった。
彫刻は二人で、一人は天使のような翼を生やした美しい女性の彫刻で、もう一人の彫刻に槍を突き立てている。
もう一方は、悪魔のような巨大な角を生やした軍人風の男性の彫刻で、天使の槍を軍配で受け止めている。
カイト「宝石でできた彫刻・・・?にしてはリアルだけど・・・」
天使のほうの顔をのぞき込むと、言葉を失う。
カイト「・・・!翼さん・・・!?いや、馬鹿な・・・!!」
天正伊賀の乱を思い出すカイト
「そうか・・・これが・・・百地丹波が復活させようとしていた翼さんのお母さんなんだ・・・でもこれって・・・人間じゃない・・・?」

その時、周囲が激しく振動する。
振り返ると、カイトを追撃してきた採掘機が宝石の彫刻に突進しようとする。
しかし、天使と悪魔の彫刻の周囲には結界が張られており、採掘機のドリルはへし折れ横転する。
転がってくる採掘機をよけるカイト「うわ!」
採掘機はそのまま崖の下の溶岩に落ちて溶けていく。
カイト「結界・・・?」
周囲をよく見ると、そこら中にお札が張ってあることに気づく。
カイト「ここは一体・・・」
腕を伸ばして結界のお札をはがしていくモグちゃん「川中島遺跡ですよ。」
振り返るカイト「え・・・?」
モグちゃん「・・・魔王武田信玄を、女神上杉謙信が地獄の底に封印した聖域・・・人間の皆さんのおかげでやっと発掘できました。
なるほど、誰の仕業か判らないが、式神の結界が張ってある・・・」
剝がしたお札を丸めて地面に捨てるモグちゃん。
カイト「君たちAIが勝手にやったのか・・・?」
モグちゃん「いえ。我々に命令を与えたのは百地丹波様です。
百地様は生前、我々のプログラムを秘密裏に書き換えた・・・
最愛の妻、上杉謙信様・・・いや翼様を甦らせよ、と・・・」
カイト「でも、望月のじいさんの反対で、復活の秘薬はできなかったんじゃ・・・それに遺体だって・・・
・・・え?もしかして、これが遺体・・・??」
モグちゃん「・・・これはお二人の生命エネルギーの依り代にすぎないかと・・・
我々は、百地様の命を受け、全国各地で奥様のご遺体を探しました。
しかし、20年近く探し続けても見つかりませんでした・・・
そして、分かったのです。」
カイト「・・・・・・?」
モグちゃん「翼様はそもそも亡くなっていない、と。」
カイト「・・・え?」
モグちゃん「百地社長が甲賀の地を奪って作製しようとしていた秘薬は、翼様の記憶を蘇らせるものだったのです・・・」
頭を抱えるカイト「・・・もうよくわからなくなってきた・・・」
モグちゃん「それでは、真相(リベレーション)をお話ししましょう・・・」

その瞬間、モグちゃんが爆発する。
カイト「!!」
ショットガンを構えている平八郎「機械の分際で反乱を起こすとは・・・」
カイト「本田忠勝・・・」
平八郎「スラッグ獄長と呼べ、風間カイト。
AIに余計な細工をしたのはお前か?
我がセクハラパラダイスに忍び込んだ目的を申せ。
さもなくば、キサマもこのスラッグ弾で爆死することになろう・・・」
カイトの近くを黒服たちが取り囲む。
信玄と謙信の像を指さしてごまかすカイト
「こ・・・この像、セクハラパラダイスのメイン広場にいいかなと思って・・・」
平八郎「はははははははは!なるほど、光る像か!
確かにエレクトリカルナイトパレードにうってつけだ!」
像にショットガンを撃ち、破壊する平八郎。
「ふざけるんじゃない。」
粉々になる天使と悪魔の像。

平八郎「さあ、観念・・・」
その時、像から光が放たれ、青白い光が天へ、赤い光が地へ向かう。
そして、地面が激しく振動する。
平八郎「また地震か!!」
地震は止まらず、どんどん大きくなる。
重機が倒れ、奈落の底に落ちていく。
黒服「獄長危険です!!」
カイト「あんたが封印を解いたんだ・・・!」
平八郎「何の!?」
カイト「地獄の魔王だ・・・!」
平八郎「苦し紛れのはったりはよせ!そんなもの、この世に存在せぬわ!」
平八郎の足元で地面が裂けていく。
その地面の裂け目から、怪物の腕が飛び出す。
肝をつぶすカイト「!!ば・・・化け物だ!!」
黒服「ご・・・獄長!後ろを!!」
平八郎「きさまら!わしをスターマル秘ドッキリにかけるとはいい度胸・・・」
その瞬間、裂け目から無数の鬼が飛び出し、平八郎に襲い掛かる。
平八郎「うお!!」
平八郎に鬼たちが覆いかぶさる。
黒服「獄長~~!!」
戦慄するカイト「逃げろ!!」



ビルの屋上から屋上へ飛び移り、地下帝国を目指す翼
「カイトさん無事でいて・・・!」
その時、翼のすぐ上をジャンボ旅客機が不安定な飛行で横切る。
翼「うわ!!」
旅客機はなんとそのまま、IR大阪に突っ込む。
巨大カジノ施設は炎上して崩壊していく。
突然の光景に呆然とする翼。
ビルの下に目をやると、自動運転の車が暴走し、高速道路は炎に包まれている。
翼「テ・・・テロ攻撃!!??」

あわてて、高速道路に飛び降り、怪我人を救助する翼。
翼「しっかりしてください・・・!きゅ・・・救急車を呼ばなきゃ・・・!」
その時、パトカーや救急車、消防車などの緊急車両が到着する。
翼「よかった・・・!」
しかし、救急車はけが人を轢いてとどめを刺し、消防車はけが人に放水を開始し、高速道路から落としてしまう。
そしてパトカーが自動小銃を翼たち一般市民に向けて、ためらうことなく発砲する。
翼は慌てて、服部からもらった刀で弾丸を打ち返し、返す刀でパトカーを両断する。
息を切らす翼「なんてこと・・・」

パトカー「銃刀法違反です。2年以下の懲役、または30万円以下の罰金・・・は、いいので、どうぞ死んで償ってください。」
翼の周囲を取り囲むパトカーの群れ。
刀を構えるが、その時青い光が翼を包み込み、翼の意識がもうろうとする。
ふらつく翼「あ・・・頭が・・・」
一斉射撃の構えを見せるパトカー。
翼「・・・だめ・・・」
その瞬間、すべてのパトカーが切断される。
「警察の名が汚れる・・・」
翼「え・・・?」
パトカー「八重かをり警視・・・この、百地翼は・・・」
パトカーのコンピューターに刀を突き刺し、とどめを刺す八重「友だちだ。」
翼を抱き上げる八重。
翼「八重さん・・・」
さらに、暴走する消防車が次々に爆破される。
振り返ると、ヒトマル式戦車に乗った長門が、AI車両と戦っている。
長門「は~はは!この私がソードダンサーを助けることになろうとは、だれが予想したかね!」
翼「・・・あなた誰?」
長門「・・・わたしだ!長門守!!フィアンセだっただろ!!
信長様の命を受けてただ今参上!!ここは私が食い止める!」
戦車の攻撃をかいくぐって救急車が二人に暴走してくる。
長門「あ、かいくぐられた・・・」
すると、その救急車に装甲で改造されたキャンピングカーが突っ込み、救急車を横転させる。
キャンピングカーの運転席から望月千代女が顔を出す。
千代女「乗って!!」
キャンピングカーに乗り込む八重と翼。
アクセルを踏み込む千代女。



裁判所からの帰りに大阪でたこ焼きを食べ歩きしている家康たち。
家康「やっぱ本場はうまいな。」
本多「この、ネギが沢山かかってるのうまいっすよ」
家康「一個ちょうだい。」
本多「社長も買えばいいじゃないですか。」
家康「味見くらいいいだろ!」
服部「お二方。そろそろ新幹線の時間だよ。
わたし、帰って家庭菜園に水をやりたいんだけど・・・」
強引に本多からタコ焼きを奪って口に入れる家康「帰りましょう。」
本多「あ!!」

3人が新大阪駅までたどり着くと、ホームにアナウンスが流れる。
「まもなく3番線に東海道新幹線『ぜつぼう』が到着します。
白線を超えて線路の上でお待ちください。ひき肉になれます。」
家康「さすが、大阪だ。アナウンスもなかなかギャグが効いてるな。」
本多「なんでやねん!っつって。『のぞみ』やろ!っつって。」
すると、ホームに猛スピードで燃えた新幹線が近づいてくる。
家康「誰だ、車内でキャンプファイヤーしてるのは?」
本多「速度が速すぎませんか?」
逃げ出す服部「ホームから離れた方がいいかもよ。」
駅にさしかかる直前、新幹線は脱線し、ひっくり返ってホームに激突してくる。
家康「ひいいいいいいい!!!」
キオスクの中に隠れて、難を逃れる3人。
駅構内はめちゃくちゃに破壊される。
家康「ざけんじゃねえJR!どういう安全管理してんだ!!」
ひっくり返った新幹線の中から車内販売ロボットが出てくる。
ロボット「お客様の中で、徳川家康様はいらっしゃいますか・・・?お客様の中で・・・」
本多「呼ばれてますよ?」
家康「もう駅弁を食べる気なくしたよ・・・」
キオスクに隠れている家康に気づくロボット
「こちらにいらっしゃいましたか。
先ほど可決したAI虐待禁止法により、AIを奴隷のように酷使した徳川社長には死刑判決が出ました。もう用済みなので、この駅弁を食べて安らかに死んでください。」
家康「おい、このロボット壊れているぞ。」
ロボットのカバーを開けて、配線を取り出す服部。
その配線を自分のラップトップにつなぐ。
「・・・こいつは大変だ・・・」
家康「先生・・・?」
本多「人工知能の反乱ですか?」
服部「違う。わが社のAIがコンピュータウイルスに感染してる・・・」
本多「ウイルス・・・?いったい誰が・・・」
服部「百地丹波・・・死んだ後も食えないやつめ・・・」
がれきを拾う服部。
家康「先生・・・?」
そのがれきをロボットにぶつけて破壊する。
本多「うお!」
振り返る服部「社長。ロボットたちは本気であんたを殺しに来ますよ。」
家康「わ・・・わしが何をした!!?」
服部「いまや文明のあるところはすべて社長の敵だ。
徒歩で三河の本社まで逃げるしかない・・・
本社まで逃げ切れば、AIの緊急停止スイッチがある。」
本多「大阪から愛知までっすか!?」
スマホを取り出してグーグルマップで経路を調べようとする本多。
本多の手を叩く服部。
スマホが地面に落ちる。
本多「何するんすか!!」
地面に落ちた本多のスマホを足で踏みつけて粉々にする服部
本多「何するんすか~~~!アイフォン37っすよ!!」
服部「AI共に我々の居場所を知らせるようなものだろ。
電子機器の使用は今後一切禁止だ。」
キオスクの床に地図を広げる服部
「・・・ロボットが一切いないルートは・・・」
本多「そんなとこあるんすか!?」
服部「・・・ひとつだけある。」
家康「どこに!?」
三重県の山中を指す服部「伊賀上野。」
本多「勘弁してください、オレ痛風で、ひざもぐちゃぐちゃだし、あんな険しい山道は・・・」
突然真剣な顔になる家康「・・・情けないぞ、正信。見よ、この有様を・・・
わしらのロボットのせいで、多くの一般市民が犠牲になっている・・・
彼らはモブキャラなどでは決してない。
才能がなくとも・・・平凡で個性がなくとも・・・家族が・・・人生があるのだ」
本多「社長・・・」
家康「モブキャラ代表として、わしは戦うぞ。」
服部「さすが、我が主君・・・!」
家康「いざ、伊賀越えじゃ!!」

『風と翼:REVELATION』脚本⑥

平八郎が獄長室から、地下の現場の様子を眺める。
黒服「あの若者の履歴書です・・・」
平八郎「・・・やはりな。あやつには屈辱を味わわせてやろう・・・
いくら忍びでも翼はあるまい・・・地震が起これば足場から奈落の底だ。」

岩盤を掘削するカイトたち。
黒服「働け働け~!お前らの代わりはいくらでもいるんだ!」
モグちゃん「ファイトです。賞与が3%増える可能性があります。」
力尽きて倒れる労働者。
「だいじょうぶか!しっかりしろ!!」
モグちゃん「残念です。医療費は自己負担となるため、来月の給料から天引きとなります。」
地下でつるはしを振るう労働者「はあはあ、ここは地獄だ・・・」
土砂を運ぶカイト「地獄・・・なぜか、この光景に見覚えがあるような・・・」
労働者「兄ちゃん、地獄に落ちたことがあるってか。」
黒服「ID1580番はいるか!」
カイト「ぼくだ。」
黒服「配置換えを命じる!
AI球団が野球に興じるスマッシュスタジアム球場の建設に回れ!」
労働者「こいつら、あんたが元プロ野球選手だと知って嫌がらせを・・・!」
黒服「身は軽いだろ?ええ?ドブネズミ・・・」
カイト(僕が忍びだと気づいている・・・)「・・・分かりました・・・」
労働者「兄ちゃん・・・!」
力なく微笑むカイト「仕事がもらえるだけありがたいよ・・・」



日光テクノロジー大阪支社の社長室
石川専務「社長!仕事はしなくていいのですか?」
本多とマリオカートをやっている家康
家康「だいじょうぶだいじょうぶ、経営的なものもAIに任せているから。
これで俺たちは不労所得者。あ、赤コウラ卑怯だぞ!」
本多「ヤッフー♪」
傍らで戦車のプラモデルを組み立てている服部に声をかける石川
「先生・・・先生からもなんか言ってやってくださいよ・・・!」
ランナーをニッパーで切りながら服部「家康くん・・・私が作っておいてなんだけど、AIの手綱はしっかりと握ってないと、あいつら何をしでかすかわからないぞ・・・」
家康「先生の作ったAIなんですから、大丈夫ですって。」
本多「ドラえもんみたいなこと言う先生だなあ・・・」
石川「作者の先生でもAIの思考は判らないのですか?」
服部「あいつら勝手に考えているからね。」
石川「しまった・・・これを見てください。」
チャンネルをNHKの国会中継に変える石川
家康「あ!こら!今、最終ラップだったのに!」
石川「うるさい!」
国会で国会議員が全員寝ている。
石川「全員寝てます。」
家康「今に限ったことでないではないか。」
石川「国会の議決も、法案の作成も、生成型AIを導入したのです。」
本多「多忙化する官僚の業務を軽減できるじゃないっすか。DX化っすよ。」
家康「お前頭いいな。」
本多「あざす!」
石川「AIが人間を脅かすようなことはないんでしょうか??」
服部「人間がAIになにを命令するかによると思うけど・・・」
国会中継「AI全権委任法が賛成多数で可決されました!!」



豊臣&天井法律事務所
オフィスで同じ国会中継を見る秀頼
「なんて愚かなことを・・・
すぐに裁判を起こさなければ・・・!」
秀頼に紅茶を出す翼「何が起こったんですか?」
サラ「日本政府が政治すらAIに丸投げしちゃったのよ・・・!」
秀頼「これでAI技術を牛耳る日光テクノロジーに国は乗っ取られたようなものだ。AIに都合のいい法案をどんどん通されたら、我々の勝訴は不可能になる・・・!」
翼「し、しかし、カイトさんがまだ地上に戻ってきてません・・・」
秀頼「もうカイト殿を待ってられない・・・公判中に彼が戻ってくるのを祈るしかない・・・
サラ君、訴訟の手続きを・・・!」
サラ「はい!」



地下
高所で球場の骨組みを組むカイト。身軽な身のこなしで骨組みを跳んでいく。
労働者「兄さん、筋がいいな!鳶(とび)やってたのかい?」
カイト「ま、まあ近いことは・・・」
工事監督が笛を鳴らす「作業中止!!
カナリアロボが壊れた!空気汚染が発生!直ちに避難!!」
労働者「またメタンガスか・・・引火して爆発したら生き埋めだぞ、おっかねえな。」
トンネルから避難する労働者たち。
息を切らすカイト「・・・なんて不衛生なところなんだ・・・
地下鉄が近いのか定期的に地震による落盤が起こるし、ガス源や熱水源も多い・・・
こんな場所にテーマパーク作って家康は何がしたいんだ・・・」
労働者「なんでもAIがこの場所を選んだそうだぞ。」
カイト「AIが・・・」

非常用エレベータの方に案内される労働者たち。
モグちゃん「全労働者は地上に避難してください。首都移転計画はこれで終了です。ありがとうございました。」
カイト「え?僕が作った球場は?」
モグちゃん「大江戸セクハラパラダイスは税金の無駄だと政府が判断し、建設中止となりました。」
カイト「突然どうしたんだろう・・・」
ヒソヒソ声で労働者「ガス漏れは嘘らしいぞ。」
カイト「・・・え?」
労働者「別の班の連中の話によれば、マグマだまりの冷却をしていた懲罰班がとんでもないものを堀り出したらしい。」
カイト「とんでもないもの・・・?」
労働者「よくわからねえが、天下の財宝に違いねえ。それでオレたちはお払い箱さ」
カイト「きっと家康の狙いはそれだ・・・!」
列を逆走するカイト。
「おい、兄さん!何処へ行くんだ!!」

獄長室
黒服「獄長大変です!労働者どもが仕事を放棄して次々と引き上げています!」
平八郎「この私に反逆するとは、さすが肉体労働しかできないチンパンジーだけあるな・・・少しムチで叩いてやろうぞ。」
巨大なショットガン「ドラゴンカッター」を手に取る。

カイトが労働者の隊列を引き返していくと、黒服が労働者を止めているのが見える。
黒服「お前ら勝手に何処へ行くつもりだ!」
労働者「ロボットがセクハラランドの建設は打ち切りだって言ったぞ!」
黒服「そんな命令はしていない!それに正しくは大江戸セクハラパラダイスだ!」
カイト(家康の命令じゃない・・・?)

走り続けると「この先マグマだまりアリ超危険」と書かれたパネルが見える。
黒服たちは労働者を引き止めるので夢中で、カイトがマグマだまりに降りていくのに気づかない。
ガスマスクをつけてゴンドラを降りていく。

薄暗い坑道を進んでいくと、石田三成がうずくまって震えている。
カイト「石田さん・・・!」
石田「若者よ、この先に行ってはいけない・・・!」
カイト「一体何が掘り出されたんです・・・?」
石田「・・・あれは・・・人間・・・」
カイト「こんな地下に人間が埋まっていたんですか・・・!?」
茫然自失している石田「・・・人間なのか・・・?」
カイト「しっかりしてください・・・!みんな引き上げています、石田さんも上へ!」
カイトがさらに奥へ進もうとすると石田が怒鳴る。
石田「ダメだ!殺されるぞ!!」
カイト「一体何に・・・」
石田「AI重機だ・・・!暴走してる・・・!!」
カイト「なんだって・・・」
いきなりまばゆいビームを浴びせて、掘削機がカイトに襲いかかってくる。
すんでのところで巨大なドリルを交わすカイト。
しかし、すかさずバックホウのアームがスイングし、カイトはさらに下の坑道へハネ飛ばされる。
下へ下へ転がっていくカイト。
落下し続け、どこかの地面にぶつかり気を失う。



大阪高等裁判所には雪が降っている。
日光テクノロジー特殊法人許可処分取消請求訴訟第1回公判。
原告席には、秀頼とサラ、被告席には国の代理人の弁護士徳川秀忠と日光テクノロジー社長の家康が座っている。
家康「あなた方は我が社を売国企業と侮辱するが・・・人口が1億人を切ったこの国の労働力不足を解消するには、機械化を進めるか、異国人を雇うしかない。
しかし、この国が鎖国政策を続けている以上、解決策はロボットしかないのです。このソリューションの何が売国なのですか?」
サラ「思ったよか、わりと弁が立つわね・・・」
秀頼「被告側に強力なアドバイザーがいるな・・・」
家康の後ろでハンバーガーを食べている人物を指差す翼「あ・・・あの人・・・!」
サラ「知り合い・・・?」
翼「はい、あのアメカジスタイル・・・伊賀上忍、服部半蔵先生です・・・!
天才発明家にして軍師だと父が恐れていました・・・
きっと弁護士ロボットでも作ったんじゃ・・・」
秀頼「厄介だな・・・とうとう我々も法廷でAIと戦うことになろうとはな。
GDPや生産性の向上といった数量的なデータに関しては機械の方が一枚上手だ。
ここは機械に計算できない社会的、倫理的な問題に争点を持っていくしかあるまい・・・」

頷いて起立するサラ
「裁判長、問題はAIが起こした不法行為について責任の所在が不明確である点です。
AI利用者が不法行為責任を負わないという、鳥居判決が適用されるならば、AIの製造者が製造物責任を負うはずです。」
家康「製造物責任・・・?」
キーボードを叩く服部「ええと・・・製造物の欠陥によって損害が発生した際には、そのメーカーが賠償責任を負うこと・・・」
家康「どう答えればいいですか・・・?」
キーボードをたたいてAI弁護士が書いた書類をプリントアウトする服部「はいよ。」
印刷したての書類を受け取る家康。
服部「そのまま読んで。」

書類を読む家康
「ええと、問題はAIがソフトウェアなのか、ハードウェアなのかであります。
製造物責任法における“製造物”には、サービスやコンピュータプログラムは該当しません。例えば、AIの自動運転によって配送トラックが事故を起こした場合、AIの自動運転プログラムに欠陥があるのではなく、AIによる配送サービスに過失があったと考えるべきであります。
よってこの場合の損害賠償は、製造元の我社ではなく、民法715条1項によりAI配送サービスを行っている配送会社が負うべきなのです。」
頷く大野裁判長「確かに。」
サラ「裁判長異議あり!それはおかしい・・・!
事故を起こすようなAIを開発したメーカーが訴えられないのは、社会的に問題があります!メーカーが悪意あるプログラムを組み込んだ場合は?」
家康「うちの製造物になんてこと言うんだアバズレ!」
服部「“プログラム”ね。」
家康「うちのプログラムになんてこと言うんだブス!」
サラ「誰がブスよ!」

挙手する服部「裁判長。」
大野裁判長「どうぞ。」
服部「そのAIの開発者です。まず、我社のAIのソースコードはすべてネット上に公開しています。」
サラ「あんな機械語なんて誰にも読めないわよ!」
裁判長「原告側、静粛に。」
服部「しかし、AIは学習し成長するものです。うちのAIを利用している取引先が、AIにどんな教育をしているかは、私たちには感知できない・・・どんな技術も使い方次第です。カッターナイフは平時には便利な文房具だが、乱世にはきっと恐ろしい凶器になる。」
家康「そうだ!使ってる奴が悪いんだ!」
サラ「だから、使ってる奴が罰せられないから言ってるんでしょうが!」

秀頼「よろしいでしょうか、裁判長・・・」
裁判長「発言を許可します。」
秀頼「日光テクノロジーは東京電力同様、現在国有化されています。仮に、AIによって原発事故のような大災害や大事故が起きたとしましょう。
その場合は国家が規制責任を負い、被害者は国家賠償請求訴訟が起こせるという考えでよろしいでしょうか?」
家康「どういうこと?」
服部「AIを使った責任は最終的には国家が負うって言いたいみたいよ」
家康「大丈夫なのか・・・?」
服部「国家を相手取って裁判を起こした場合、ほとんどの場合原告側が負けている。
因果関係不明とか陰謀論とか好きなだけこじつけられるからね。
実際、原発事故だって、薬害事件だって、国は勝っている。
社長、ここら辺で妥協してもいいんじゃない?」
家康「うちの会社には責任は及ばないんですよね?」
服部「AI弁護士によれば。」
家康「裁判長、異議なし。」



控え室で荷物をまとめる一行。
翼「お疲れ様です」
サラ「さすが教授・・・!国が責任を負うという言質を取りましたね!」
秀頼「大阪冬の陣は一歩前進といったところか・・・
原発事故は国が東電に責任を押し付けて尻尾切りをしたことを忘れているようだな・・・これでAIで重大事故が起これば、国が日光テクノロジーに行政処分を行う可能性は高いが・・・」
翼「国は東京電力の営業を差し止めてはいません・・・」
サラ「やっぱり裁判の行方はカイトくんにかかっているわね・・・」
翼「カイトさんが地下に降りてもう一ヶ月・・・何かあったんじゃ・・・
やっぱり私も地下の様子を見てきます・・・」
サラ「危険だって・・・!」
翼「・・・だからこそ。」
部屋を出ていく翼。

裁判所のホールで服部と鉢合わせる翼
すれ違いざまに服部が声をかける。
「君のお父さんは主君を見誤ったね・・・」
立ち止まる翼
「家康殿が名君とも思えませんが・・・」
服部「信長会長と違って家康くんには野望がない・・・
たまに失敗もするが子どものように純粋だ。」
翼「子どもに持たせるには、恐ろしい技術だと思いますが。」
服部「子どもは成長するものです。それにAIも・・・
使い方によっては人や社会を幸せにすると思うよ。」
翼「それでも・・・どんなに親切で働き者でも・・・AIは人間ではありません・・・
私の好きな人から生きがいを奪ったAIを私は許せない・・・」
服部「人間であるかどうかが、そこまで重要かな。」
翼「・・・先を急ぎますので・・・これにてご免。」
刀を取り出す服部「地獄に行くのはまだ早い・・・」
身構える翼「!」
刀を渡す服部「君の御父上の形見だ。持っていきなさい。」
受け取る翼「・・・?」
服部「姫鶴一文字・・・これでないと鬼は殺せない・・・」



地面の底で気絶しているカイト。
しばらくして意識が戻る。
カイト「・・・ここは・・・」
起き上がると、暗闇の中に青白い光が見える。
光の方へ近づくカイト。
発光しているものの正体に気づき絶句するカイト。
カイト「・・・え?」

『風と翼:REVELATION』脚本⑤

奥の部屋に案内される。
そこには、国内のAIの動向を監視したサーバーがずらりと並んでいる。
サラ「この雰囲気懐かしいでしょう?」
秀頼「こう見えてコンピュータの心得はあってね・・・国内のAIが反乱を起こさないか、監視をしているのだ。」
モニターを指さすカイト「この数字は?」
秀頼「AIが法に抵触した件数をリアルタイムでカウントしている。
黄色い数字が法に触れる可能性、赤が完全に違法だ。
今日だけで、触法行為が1万件を超えている・・・」

翼「警察は取り締まれないんですか?」
秀頼「そもそも警察が人手不足でAIに依存しているくらいだからね・・・
それにAIを規制する法律がない以上、グレーゾーンのものも多い。」
サラ「怖いのはそこなの。AIそのものを罰する法律がないから、犯罪者の違法行為の抜け道にもなっているのよ。ペットが通行人を嚙んだら、飼い主の責任になるけど、AIにはそれが適用されない。」
翼「なんでですか?」
サラ「去年、AIによる過失責任はその利用者に及ばないという判決が最高裁で出ちゃったから・・・」
秀頼「鳥居判決だな」
サラ「なのでAIを悪用した人間が、その責任をAIに押し付けちゃえば、違法行為は消えてしまうという魔法のような状況・・・」
翼「そんなむちゃくちゃな・・・」

秀頼「実際にある女性がAIに“韓国アイドルのイ・ウォンイクに会えたら死んでもいい”とぼやいたら、ユーザーの気持ちをAIが勝手に忖度して、そのアイドルを自宅までさらってきてしまったことがある・・・このユーザーは罪を犯したと言えるかね??」
カイト「確かに、この前タクシーに乗ったら、知らない人のアパートにつれていかれて超怖かったって言ってたなあ・・・」
翼「じゃあ、AI開発をしている日光テクノロジーは訴えられないんですか?
あまりに凶暴なペットなら、それを売っているペットショップは訴えられるんじゃ・・・」
サラ「翼ちゃんの言うとおりだけど、日光テクノロジーは今や国営企業よ。それに、今さら国民が便利なAI技術を捨てるとは考えにくいしね・・・」
カイト「それで、打つ手がなくなってデモをしてたの・・・?」
サラ「まあね。そしたら警察のやつ、ロボットパトカーを差し向けてきて・・・
こともあろうに武器をちらつかせて威嚇してきたのよ?」
秀頼「それは危険だ・・・考えられないとは思うが、もしそのパトカーが市民に向けて発砲した場合、現状ではそのパトカーも、それを出動させた警察も法的責任が問われない・・・事態は急を要するな。」

翼「・・・家康殿は訴えられない、市民運動もできない・・・一体どうするおつもりですか?」
秀頼「手は一つある・・・
検察が家康を刑事訴追するのではなく、サラ君たち弁護士会が民事で訴える・・・!」
翼「でも、AIを規制する法律がないなら、家康殿の会社を訴えるのは難しいんじゃ・・・」
秀頼「訴えるのは家康の会社ではない・・・日光テクノロジーを特殊法人化した国を訴える・・・!国に営業差し止めを迫るのだ・・・!
サラ「さすが教授・・・!」
翼「勝算はあるのですか・・・?」
秀頼「大阪高裁の大野治長裁判長は、人工知能の規制に前向きな日本の良心ともいえる裁判官だ。日光テクノロジーの違法性さえ立証できれば、勝機はある。」

カイト「・・・お話はだいたいわかりませんでした・・・
・・・で、AIに仕事を奪われたぼくは何をすればいいんですか?」
秀頼「さすが忍び・・・話が早いな。
問題は徳川家康が性急にAI技術を普及させようとする意図だ・・・
かつて、信長や秀吉が日本を支配しようとしたように、家康にも野望があるはずだ・・・」
カイト「何も考えてなさそうだったけど・・・」
秀頼「侮ることなかれ、風間殿。相手はタヌキだ。
家康が政治家に圧力をかけ人工知能に都合のいい法改正がさらに進めば、我々がやろうとしていることは遡及処罰となり、家康の暴挙は永遠に止められなくなる。
我々に残された時間はわずかだ。」

サラ「日光テクノロジーが気になるプロジェクトをしているの・・・
それが首都地下移転計画・・・」
カイト「この人、地下が好きだな・・・」
サラ「AIで失業した人達を雇って、巨大なシェルターを作っているようなのよ・・・」
翼「核戦争にでも備えているんでしょうか・・・?」
カイト「埋蔵金の発掘かも・・・」
サラ「表向きは、首都圏の土地不足を解決するためらしいけど・・・あまりにも不自然だわ・・・」
秀頼「風間殿には、徳川地下帝国の実態と目的を調査してもらいたい・・・
もし、そこで非人道的なことが行われていたら、裁判は必ず勝てる・・・」
翼「カイトさん・・・」
カイト「結局、ぼくにはこの道しかないようだ・・・」
翼「なら、私もともに・・・」
カイト「翼はサラちゃんたちを守ってほしい・・・
地上も何が起こるかわからないから・・・それに、翼には空が似合うよ。」



地下を潜る巨大エレベーター。
職を失って地下落ちした労働者に混ざって風間カイトもいる。
「おいおい、あれプロ野球選手の風間カイトじゃねえか・・・?」
「あんな有名人も地下落ちするのか・・・」
「でもまあ、1年頑張れば、ひと財産築けるしな・・・」
「オホーツクのカニ漁業船団よりはこっちだよな・・・」

黒服「それでは、新入りの労働者諸君はメインエントランスまで行進!
地下首都移転計画のプロジェクトリーダーからご挨拶がある。ありがたく聞くように!」
行進する労働者たち「1,2,1,2,・・・」

テーマパークのようなエントランスに集められる労働者たち。
プロジェクトマネージャー「歓迎するぞ、名もなき肉体労働者たちよ・・・
我が主君徳川家康公の私設テーマパーク“大江戸セクハラパラダイス”の完成は諸君たちにかかっている・・・せいぜい励むように・・・」
労働者「え?首都移転計画じゃなかったのか!?」
PM「首都も移転する・・・ついでに。
だが、まずはこの地下に殿の殿による殿のための楽園を作るのだ・・・!」
パーク案内図を配る黒服。
黒服「A班はシンデレラ江戸城、B班はビッグ鷹狩りマウンテン、C班はハイパーピンサロ大奥、D班はスマッシュスタジアム球場の建設だ!各々自分の担当を確認せよ!」
カイト「野望が本当にしょうもない・・・」
労働者「ま、まあ金がもらえるなら何でもいいか・・・」
元国会議員の労働者「いや、この工事の発注元の日光テクノロジーは国営企業だ!つまり建設費用は国の税金だ!国の税金を使って、個人的な娯楽施設を作るとは何事か!」
労働者「そうだ、そうだ!それに、ここで稼いでも結局税で持ってかれるなら、楽しいのはお前らだけじゃねーか!」
ブーイングが起こる。
PM「・・・なら帰るがいい。この仕事がやりたい人間は他にもたくさんいるんだ。
この国のどこに、ただの人間が1年で1000万円を稼げる職場がある・・・?」
労働者「くっ・・・」
PM「そして、そこのお前。
総理大臣時代にさんざん殿の店で遊んでおきながら、殿を批判するとはよい度胸だ。石田治部、お前には見せしめとしてマグマだまり冷却工事を命じる。」
タヌキのマスコットキャラが2匹現れ石田の身柄を取り押さえる。
石田三成「し・・・死んじゃうだろ!」
PM「安全第一で行うことだ。」
逃げ出す石田「おのれ・・・!この実態を国会に報告してやる・・・!」
PM「連れていけ・・・!」
ざわつく労働者たち。
PM「わかったか?この地下で反逆は許されない。提示した年俸や福利厚生は約束するが、日本は地震大国が故、労働災害も多い。せいぜい気をつけることだ・・・」
カイト「大将・・・あんたの名前は?」
黒服「無礼であるぞ!」
PM「よいよい・・・挨拶が遅れたな・・・私は本多平八郎忠勝・・・
ここでは“スラッグ獄長”と呼ばれている・・・」
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