『風と翼:RESET』脚本⑨

大道寺「なんだって!!?」
秀吉「そいつは学者やってるオイラの兄貴の秀長だよ。」
豊臣「秀吉、お前の真似するのも疲れたよ~」
ピコハンで秀長を叩く。
秀吉「うるせえ、ばかやろう、全然似てなかったぞ」

カイト「なんで、こんなことを・・・」
秀吉「言っただろう?日本をよくするためさ。
確かに、オイラの会社が経済界を天下統一してから物価が上がっちまったが、それもこれもあそこにいる政府の連中の圧力があって、泣く泣くしたんだ。」
天守閣から出てくる石田総理「そ・・・それは・・・
一斉に物価をディスカウントしたら、デフレスパイラルになるって、竹中が・・・」
大谷官房長官「総理!生中継されています。
発言にはくれぐれも気をつけて・・・!」

秀吉「だからそのお詫びに、オイラは石川五右衛門として、みんなに現金を給付したんだよ。おかげで、景気はそこまで悪くならなかっただろ。
つまり、豊臣秀吉になっちまってからできなったことを、あんちゃんたちにやってもらったのさ・・・」
秀長「偉くなっちゃうと、しがらみが多くて、なにかと不自由なんだよ。」
秀吉「お前が言うな、このやろう!
・・・とにかく、日本のガンはあそこにいる政治家と官僚どもだ。
オレたちの税金で、ノーパンホルモンとかいう、よくわからねえ天下り機関ばっか作りやがって、挙げ句の果てに消費税を1000%に上げようとしているんだよ。」
石田総理「その法案はまだオフレコのはずじゃ・・・!」
大谷官房長官「お前は黙ってろ!!」

秀吉「こんな政府は国民にとって害悪でしかない。
そろそろ議院内閣制というシステム自体廃止したほうがいいと思うぜ。」
観客が歓声を上げる。
「そーだそーだ!秀吉が正しい!!!」
石田総理「そ、そんな・・・」
秀吉「・・・これからは国会や内閣に変わって我が木下財団、いや、社名あらため株式会社SDGsが、この日本国を経営する!
賛成してくれる人はリモコンのDボタンで投票してくれ。
抽選で1万名の方に、この銀の延べ棒プレゼント!」

秀吉支持率が99%を超える。
インカムの安藤「すごい!ほぼ100%の国民が秀吉を支持しています!」

秀吉「はい、というわけで結果が出ました!日本政府は廃止!石田内閣は全員贈収賄で逮捕!」
控えていた警察に捕まる政治家たち。
小声で石田総理に囁く秀吉「国民の政治不信をここまで下げてくれてありがとな。
助かったぜ。すぐに出してやるからよ。」
石田総理「殿のためなら。」

カイトに近寄る秀吉。
「言っただろ?日本を盗むって。」
カイト「まさか本当にやるなんて・・・」
「これで、オイラは立法、行政、司法、財界すべてを手に入れた。
どうする、二代目五右衛門。
自分が正しいと思うことを、誰にも邪魔させずにやれるんだ。」
カイト「・・・ど・・・どうしよう・・・」
サラ「好きな日本が作れるのよね?」
秀吉「うん。」
すると、カメラの前にサラが飛び出す。
サラ「性別で差別をしないで欲しい!」
カイト「え?」
サラ「私は、女子というだけで野球選手の夢を諦めた・・・
女子部員=マネージャーという価値観はなくして欲しい!
・・・そして、私はこの中の誰よりも野球がうまい!!」
カイト「サラちゃん・・・」
振り返るサラ「ほら、みんなも!今のうちなら新しい日本が作れるよ!
言いたいこと言いな!」
大道寺「人を見た目で判断するな!おれは不良じゃねえ!
そもそも学校は休まず皆勤賞だ!」
インカムの安藤「ぼ・・・ぼくも、オタクをいじめないでほしいです!」
ウォンイク「在日韓国人差別も問題だねえ・・・」
カイト「あれ?韓国といえば、秀吉さんはなんで朝鮮出兵を・・・?
ホテルでは許せねえとか言ってたのに・・・」

秀吉「へっへっへ・・・君らは青いねえ。まったく青い!
日本を手に入れて最初にやるのが、青少年の主張ってかい。
この国の差別がそう簡単になくなるわけねえじゃねえか。
貧乏で、指に障害があったオイラを人間扱いしてくれたのは先代の信長さんと、イ・スンシン会長だけだったよ。
この国を根本から変えるには、荒療治しかねえ。すなわち、もう一度戦後の焼け野原に戻して、みんな平等に貧しくするのさ。そうすりゃ少しは助け合うだろ。」
そう言って、マルチビジョンのリモコンを操作する秀吉。

天守閣が変形してミサイルの発射台が現れる。
その様子をマルチビジョンに映し出す。

秀吉「朝鮮出兵で反日ムーブが高まったおかげで、日本を懲らしめる兵器の開発資金はあっという間に集まったぜ」
サラ「テポドン!!??」
秀吉「そんな物騒なもんじゃないよ。オイラは殺しが嫌いだからな。
あれこそ、韓国のイ・スンシン会長の全面協力のもと、秀長が開発した、究極エコな最終兵器、人呼んで“持続可能爆弾ISO14001”だ・・・!」
サラ「エコ爆弾・・!?いろいろ矛盾したワードのような・・・」

秀長「あの爆弾は、すべての人工物を天然素材に戻す原子分解爆弾なんだよ。
人体への影響も一切なし。まあ、洋服が人工物なんで分解されちゃうから、みんなフルチンになっちゃうけど」
秀吉「そりゃ受けるな。
おい、秀長、とりあえずどんな威力か、エコが大好きなEUに落としてみようぜ。
デモンストレーションだ。」
秀長「いってみよう、やってみよう」
ルイス・フロイスEU大使「やめるんだ、ミスター秀吉!」
ピコハンで叩く秀吉「うるせえ、お前ら、そんなに自然が好きなら原始時代に戻りやがれ!」
欧州に発射されるISO14001。
ドイツの文明は崩壊し、美しい緑の魔境に戻ってしまう。
秀長「成功だ!」

各国の首脳が慌てて秀吉に膝まづく。
ヘンリー・ハドソン大統領「す・・・素晴らしい兵器だ!ぜひ我がアメリカ合衆国に譲ってくれ!」
万暦国家主席「通商条約を拒んで悪かった!ぜひ、我が明国と取引しましょう!」
秀吉「じゃあ、なかよく1個ずつな。
・・・て、ことで、オイラはこんな日本からは、おさらばするぜ。
せいぜい、国民の皆さんでもう一度日本史をやり直してくれよな。
秀長、発射だ!目標は東京だな、とりあえず首都圏を湿地帯にしとくか。」
秀長「ポチッとな。」
カイトに振り向く秀吉「あんちゃん、これがオイラからの最後の挑戦状だ。
あのミサイルをどうするか、決めさせてやる。」
SPに囲まれて、天守閣から立ち去る秀吉。

カイト「行っちゃった・・・」
マルチビジョンを指差す翼「は・・・早くあのミサイルを止めないと・・・!」
カイト「いや、これは止めるべきなのか・・・?」
翼「・・・え?」
カイト「あのミサイルで社会を一度リセットすれば、この国は本当に生まれ変わるのかも・・・」
翼「本気ですか・・・?」
カイト「だって・・・」
叫ぶ翼「私は、街の図書館で静かに本を読みたい!それが私が望むささやかな幸せなの!別に森の中で動物たちと暮らしたくはない・・・!」
カイト「・・・翼さん・・・」
翼「そして、私は球場で活躍するカイトさんを見たいの・・・!!!」
カイト「・・・!」
ウォンイク「・・・そうだね。日本は間違っていることもあるけど、滅ぼすまでじゃない。
理不尽ないじめから弱い者を守ってくれる君のような人間もいるじゃないか。」
サラ「カイト君、秀吉は極端なのよ。今なら間に合う!」
ラップトップを開く安藤「ミサイルの巡航システムにハッキングします!日本を救いましょう!」
大道寺「あんなミサイル、打ち返そうぜカイト!ああん!!??」
カイト「打ち返す・・・か・・・!」

『風と翼:RESET』脚本⑧

天守閣
玉座から立ち上がる豊臣「これでファイナルステージの顔ぶれが揃ったか・・・」
ギャンブルに買って大はしゃぎする石田総理「やった!152倍配当だぞ・・・!」
大谷官房長官「やめてください、これも放送されていたらどうするんですか。」
悔しがる各国の代表たち。

片桐「選ばれし挑戦者の皆さん!IR大阪天守閣にようこそ!!
いよいよファイナルステージとなります!
このゲームの勝者が、豊臣秀吉の財宝200兆円相当を獲得できるのです!
最後のゲームは“ウォール・オブ・フリーダム”!
3つのドアのうち好きな一つを選んで入ってください!
1つだけが財宝への金庫につながっております!
大道寺「最後は運ゲーかよ!!」

片桐「ドアを決めるのは先着順です!」
五右衛門「なんだって!?じゃあオイラはここだ!」
真ん中のドアを選ぶ五右衛門。
サラ「あっずるい!」
大道寺「じいさん、スタッフに正解のドアを教えてもらってんじゃねえか?」
片桐「ほかの方はどうしますか?」

サラ「こういうのって心理学的な傾向ってあるの?」
ウォンイク「左を選ぶ人が多いって言うけどね・・・」
翼「では、裏をかいて正解は右なんでしょうか・・・?」
サラ「どうするカイトくん?」
カイト「う~ん・・・」
プラナス「私は左にするわ・・・」
サラ「とられちゃったよ!」
片桐「プラナスさんが左、旧五右衛門さんが真ん中、新五右衛門チームが右となりました!
では、最初にドアを選んだ真ん中から入ってもらいましょう!」

五右衛門「それじゃあ、ちょっくら行ってくるわ。」
大道寺「あの緊張感のなさ・・・絶対にヤラセだぜ!」
サラ「じじい~!」
五右衛門「貧乏人のみなさんごきげんよう」
五右衛門がドアを開けると、その先は熱湯風呂になっており、頭から落ちてしまう。
あわてて熱湯風呂から脱出し、氷水をかける五右衛門。
翼「でも外しましたよ!」

片桐「初代五右衛門さん失格です!
ここで追加ルールです!ドアを選びなおすことができます!
どうしますか?」
サラ「なんですって?」
大道寺「意味あるのか?」
安藤「これはモンティ・ホール問題だ。」
サラ「なにそれ。」
安藤「確率論的には、最初の選択は1/3ですが、今度は2/3になるので、選び直したほうが勝率が上がるという研究があって・・・」
翼「で・・・でも、向こうとまったく同じ立場なのに、確率は上がるんですか?」
プラナス「面白いわね・・・私はあなたたちの好きでいい・・・」
ウォンイク「何度も試行するならともかく、一発勝負だし、1/3も確率としてはけっこう高いからね・・・」

ドアに近づくカイト「・・・・・・」
何かに気づく。
翼「カイトさん・・・?」
カイト「みんな・・・ぼくは右で行こうと思う・・・」
サラ「なんで!?」
カイト「理由は言えないけど・・・ぼくを信じて欲しい」
ウォンイク「まあ、もともと運否天賦のゲームだ。好きにしたまえ。」
大道寺「最後は直感・・・いいじゃねえか、俺達らしくて」
サラ「ちょっと待ってよ!200兆円がかかってるのよ・・・!?」
安藤「確率が高い方を選ぶべきじゃ・・・」
大道寺「好きな男の言うことを信じろよ」
サラ「あんた・・・まあ、いいわ、わかった。カイトくんを信じる」
カイト「翼さんもいい?」
微笑む翼「・・・私も右だと思います。」
片桐「それでは運命の瞬間です!二つのドアを同時にオープンします!」

カウントダウンが始まる。
「3」
「2」
「1・・・!」
「オープン!!!」
すると左のドアから本多忠勝が現れる。
「アイルビーバック!・・・ん?」
見ると、プラナスは姿を消していた。

サラ「・・・ということは!!??」
片桐「コングラッチュレイションズ!!!
豊臣秀吉の財宝は新五右衛門チームの獲得です!!」
サラ「やったーーー!!」
翼「ドアの前でかすかにリングが鳴ってたんですね・・・」
カイト「うん・・・」

扉の奥には数え切れないほどの銀のインゴットが並んでいる。
片桐「それでは、ご紹介いたしましょう!
木下財団の総帥、経団連の終身会長であり、この大阪城の城主であられる大殿、豊臣社長です!!」
門が開いて、200兆円の小切手を持った豊臣が現れる。
片桐「豊臣社長から賞金の授与です!」
豊臣「くそ~!石川五右衛門め!オイラの完敗だ!まいった!
あんたは偉い!世のため人のために200兆円を使ってくれ。」
サラ「ついにやったね、カイトくん・・・!」
カイト「う・・・うん・・・」
うちわを仰いでいる五右衛門「あんちゃんはえらい!」

カイト「・・・国家予算並みのお金を、ずいぶんあっさり泥棒に渡しちゃうんですね・・・
秀吉さん・・・」
豊臣「オレはフェアな人間だからね」
豊臣の横を通り過ぎ、五右衛門にもう一度尋ねる翼。
カイト「そうでしょうか・・・自分から自分にお金を渡すなら、それこそ全財産だって関係ない・・・」
大道寺「カイトは何を言ってるんだ??」
慌てる片桐「そ、それでは、優勝は石川五右衛門チームということで番組は終了です!ありがとうございました~!」
五右衛門「・・・もういいよ片桐。
あんちゃんは全部お見通しのようだ。」
片桐「殿・・・」
五右衛門「そのとおり。オイラが豊臣秀吉だ。」

『風と翼:RESET』脚本⑦

IR大阪最上階
片桐「ステージ4にやってまいりました!
残るチームはとうとうたったの3チーム!
フランス代表、怪盗ルポン!」
ルポン「コマンドール!」
片桐「風間カイトくん率いる神奈川代表石川五右衛門チーム!」
ぼろぼろのカイト達。
サラ「マジでサラ・コナークロニクルだった・・・」
片桐「最後に・・・!
初代石川五右衛門・・・!」
五右衛門「からくり道中!」
カイト「・・・って参加してたんですか!!???」
五右衛門「うん♪驚いたろ、へへっ」

片桐「これは世紀の映像になりました!初代五右衛門と二代目五右衛門がついに共演!」
翼「あなたが有名な石川五右衛門さんですか・・・」
五右衛門「嬢ちゃん、百地んとこの娘だろう?赤ん坊の時に実は会ってるんだよ。
覚えてねえだろうなあ。」
サラ「あんたが出場するなら、私たちに頼む必要はなかったじゃないの!」
ウォンイク「しかし、あのステージをあなたが全てクリアしたとは・・・」
大道寺「インチキしたんじゃねえか?」
五右衛門「な・・・何を言う!冗談じゃあないよ」

片桐「それでは、ステージ4は“ブレイブマン・ストレイト”です!
ビルの屋上と屋上にかけられた不安定な橋を渡って、向こう側の天守閣に到達できればクリア!財宝の獲得に挑戦できる最終ステージに進むことができます!」
大道寺「じゃあ、じいさん最初にやってみろ。」
五右衛門「バカヤロウ、星になっちまうよ」
?「もう1人いる・・・」
片桐「なんと、失礼しました!謎の仮面プラナスさんもステージ4進出です!」
翼「・・・!あなたは・・・」
カイト「翼さんを襲った殺し屋だ・・・!」

プラナスは躊躇なく、不安定な橋をかけ渡る。
プラナスに向けて、砲弾が次々に発射されるが、人間離れした身のこなしで全てかわしていく。
唖然とする一同。

片桐「プラナスさん、ファイナルステージ進出!!」
ルポン「私は辞退させていただく。こんなバカバカしいことで人生を終わらせたくはないね。ジュテーム。」
プラナス「あなたたちはどうするの?忍者さんたち・・・」
カイト「あの人の攻略で発射タイミングはだいたいわかった・・・」
翼「いけそうですか・・・?」
カイト「多分。」
サラ「ちょ、ちょっと正気!?あんなのできっこないわよ!」
カイト「殺し屋ができて、プロの忍者ができないことはない・・・」
サラ「死んじゃうって!」
カイト「だいじょうぶ、足の速さには自信がある。一気に駆け抜けちゃうよ」

片桐「それでは、新五右衛門チームの挑戦です!いけー!」
プラナスを超える足の速さで橋を駆けていくカイト。
片桐「すごい速さで橋を駆けていきます!!」
カイトに向けて砲弾が発射される。
カイトは最初の砲弾をジャンプしてかわすが、次の砲台がカイトのジャンプを見越して砲弾を撃ち込む。
ウォンイク「いけない、さっきとタイミングが違う!」
安藤「砲台に人工知能が搭載されているんだ・・・!」
空中のカイトの腕に砲弾が当たる。
カイト「ぐっ!」
翼「カイトさん・・・!」
バランスを崩し、橋から落ちかけるカイト。
青ざめるサラ。
その時、対岸のプラナスがとっさにカイトに手を伸ばし、引き上げる。
カイト「・・・!」

片桐「プラナスさんのサポートで、新五右衛門チームもなんとかクリアです!」
翼「助けてくれた・・・?」
プラナス「腕は大丈夫・・・?」
カイト「な・・・なんで・・・」
プラナス「あなたはプロの忍者じゃないから。」
カイト「え・・・」
プラナス「悪いことは言わない。真剣に進路を考えることね・・・」
カイト「ぼくは・・・!」
プラナス「次に忍者の真似事をしたら・・・」
カイト「・・・・・・。」
プラナス「・・・殺す。」

翼たちが駆け寄る。
「カイトさん!」
サラ「カイトくん!?大丈夫・・・?」
カイト「あ・・・ああ・・・」
翼「ありがとうございます・・・」
プラナス「・・・あなたなら助けなかった。」

片桐「・・・で、どうしますか?初代五右衛門さん。挑戦しますか?」
五右衛門「ん?うん」
片桐「最後に、伝説の義賊初代石川五右衛門さんの挑戦です!」
五右衛門「じゃあ、マイルドモードで」
片桐「スタッフの皆さん、マイルドモードでお願いします!」
そう言うと、橋に手すりができ、橋のすぐ下には防護ネット、砲台は撤去される。
サラ「あ!ずる!!」
難なく橋を渡る五右衛門「いや~手に汗握るスリルと冒険だった!」
片桐「おめでとうございます!」
五右衛門を見るカイト「もしかして、あの人・・・」
頷く翼「あの人も忍者ですから・・・」
カイト「信用してはいけない・・・」
翼「はい・・・」

『風と翼:RESET』脚本⑥

片桐「さて、ステージ1を突破したのは100チーム中50チームとなりました!
ステージ2は、“ホッピングストーンオーシャン”です!
対岸まで到達すればステージクリアです!」

蒼月の光が差し込む海上には、対岸にかけて飛び石が浮いている。
カイト「この石をつたって向こう岸に行けばいいのか・・・」
大道寺「コイツはシンプルそうだな」
サラ「これもトラップがあるんじゃないの?」
ステージ1の電流を受けて、なかなかチャレンジしない参加者たち。
豊臣「とっとと渡れ、魚の餌にしちまうぞこのやろう!」
海中に人喰いザメがいることに気づく。
サラ「落ちたら死んじゃうじゃないの!」

その時、滝川一益が飛び石を駆け抜けようとする。
滝川「信長四天王として、これ以上無様な姿は見せられん!」
翼「あの人さっき失格したような・・・」
半分以上海をわたるが、飛び石の中にダミーがあり、それを踏んで海に落ちてしまう滝川。
滝川に殺到するサメ。

それを見て、ほかの参加者が一斉に飛び石を渡ろうとする。
車上荒らし「今だ!今なら仮に落ちてもサメは来ない!」
次々に海へ落ちていく参加者。

サラ「ひどい!ほとんどの石がダミーじゃない!
翼ちゃんの忍術でなんとかならない?」
翼「すいません、私、水だけは苦手でして・・・」

大道寺「向こう岸につけばいいんだろ・・・?オレが行こう。」
ウォンイク「君の体重ではあの浮き石は沈んでしまうぞ、ここは軽量級のサラくんが・・・」
慌てるサラ「大道寺くんありがとう!」
カイト「策はあるの?」
大道寺「まあな。小学生の頃、どうぶつ奇想天外のスタジオ観覧をしたこともある動物博士の俺に任せとけ」
サラ「そういや鈴木蘭々のサイン色紙持ってたわね・・・」
ウォンイク「あれはなんて種類のサメだい?動物博士」
大道寺「よくわからん。」
そう言うと、石を渡ろうとせず、ゆっくりと海に入っていく大道寺。

大きく息を吸い込むと海中に深く潜水をする。
サラ「あいつ何考えてるの!!??」
そのまま海中を泳いで、対岸にわたってしまう大道寺。
片桐「なんと、最初から石を渡らず対岸まで泳いでしまうというパワープレー!」
サラ「なんでサメに襲われなかったの?」
大道寺「サメの被害に最もあうのは水面で音を鳴らすサーファーらしい。
つまり静かに潜っちまえばサメは襲ってこねえ・・・」
ウォンイク「みのもんたに感謝だね」
片桐「さあ、メジロザメに襲われて半分以上が救急車で運ばれましたが、元気に次のステージに参りましょう!」



IR大阪天守閣
豊臣「ちょっと海に入れるサメが多すぎたな。ほとんど生き残ってねえじゃねえか。」
幸村「海遊館のサメ、ほとんど借りてきましたからね・・・
それよりも社長・・・イ会長がお見えになってます・・・」
豊臣「会長が・・・?」



IR大阪のメインエントランス
片桐「ステージ3はいよいよ舞台がIR大阪に移りまして“エビルズマンション”です!
部屋数2000の迷宮となっているこのビルの最上階を目指してください!」
リーゼントをセットしなおす大道寺「このビルって何階建てだ?」
インカムの安藤「図面だと88階建てです。」
空き巣「やってられるか!オレはエレベーターで行くぜ!」
オレオレ詐欺師「あ!オレも乗せろ!」
エレベーターの方へ駆け出すほかの参加者。
大道寺「行っちまったぞ」
ウォンイク「どうする、カイトくん」
カイト「エレベーターは絶対やめといたほうがいい・・・」
エレベーターホールの方から悲鳴が聞こえる。
カイト「ほら・・・」

片桐「言い忘れましたが、このビルには、みなさんを襲う刺客がいます!
彼らに捕まらないように最上階まで登ってください!」
なぜかまだ参加している滝川「その者をこちらが退治してもいいのか?」
片桐「可能ならば結構ですが・・・」
滝川「よいのだな!ようし、見ておれ、拙者が成敗してくれる!」
片桐「ちなみに、刺客が接近している際には、みなさんのリングが警報を発しますので、ぜひ活用してください。」

すると、エントランスの参加者全員のリングが鳴る。
翼「来る・・・!」
滝川「ぎゃああああ無念だああああ!」
滝川が人形のように勢いよく、こちらに放り投げられてくる。
闇の中から、ショットガンとサングラスを装備した、無骨な男が姿を現す。
用心棒(平八郎)「犯罪者どもめ・・・貴様らに今日を生きる資格はねえ。」
カイト「あいつは・・・!」
翼「聚楽第のターミネーターですよ!」

怪盗ルポン「なんだね、相手はたったひとりじゃないか」
ビリー「HAHAHA!YOUは西部劇名物ダイナマイトでボンバー!」
カイト「向こうもやばいぞ!みんな伏せろ!」
ダイナマイトを投げつけるビリー・ザ・キッド。
大爆発。
傷一つ負っていない本田平八郎忠勝。
ビリー「ヒーハー!?モンスターね!!」
平八郎「ライダーキック!」
ビリー「ぶぎゃあああ!」
強力なドロップキックをくらってなぜか爆発四散するビリー。
次々と本多忠勝によってちぎっては投げられる参加者たち。
カイト「あれを倒すのは無理だ!逃げよう!!」



食堂に逃げ込むカイトたち
サラ「はあはあ・・・ここまでくれば・・・」
大道寺「おっバイキングがあるぜ!夜食でもつまもうぜ」
サラ「わあ、美味しそう!」
ウォンイク「オールスター感謝祭を思い出すねえ」
カイト「じゃ、ここで一旦休憩しようか・・・」
ゼリーをスプーンで救うサラ「なにしろこのビルはでかいから、あのミノタウルスにもそうそう出会わない・・・」
スプーンですくったゼリーが揺れる。
ウォンイク「?」
壁に平八郎の影が写っている。
5人のリングが鳴る。
逃げ出すサラ「なんで・・・!!」
インカムから安藤「おそらく、みなさんのリングが発信機になって相手に伝わっているんだと思います。」
リングに手をかける大道寺「こいつを外しちまおう!」
カイト「いや失格になると思う!」
大道寺「くそが!」



天守閣のVIPルーム「帝王裏の間」
日韓を支配するフィクサー、イ・スンシン会長「大変だったな・・・」
豊臣「すいません、なかなか挨拶できなくて・・・
会長の御尽力で、“計画”は順調に進行中です。」
「気にせんでいい・・・弟は元気か」
「ええ・・・会長によろしくと言っていました。」
「計画の後はどうするんだ?・・・韓国こねえか?若い衆もいるからよ。」
「ありがとうございます・・・」

『風と翼:RESET』脚本⑤

IR大阪――深夜12時
闇夜に紛れ、地下の排水管をかけるカイトたち。
不平を言うサラ「くさい!鼻がもげる・・・!」
大道寺「うるせえ、静かにしろ・・・!」
サラ「なんで、ウォンイクはいないのよ・・・!」
大道寺「ジャケットが汚れるのが嫌なんだとよ。
だいたい勝手についてきたのはオメエじゃねえか、安藤と基地で待ってりゃよかったんだよ。」
サラ「まさか、こんなところから侵入するなんて・・・」
大道寺「どうせ、あの翼ちゃんと張り合ってるんだろ、やめとけ。」
サラ「ぶん殴るわよ、大道寺くん」
二人の先で図面を広げて翼と話し合うカイト。
大道寺「しかし、あいつら、潜入のこなれ感がすごいなあ・・・」
サラ「さも当然のようにマンホールに入るもんね・・・」
キャットウォークの上を指差す翼「おそらく、この上が最初の関門だと思います。」
はしごを登るカイト「一体、秀吉はどんなトラップを仕掛けたか・・・」
ハッチを開けるカイト。
カイト「なんだこりゃ・・・」



ハッチの先には、巨大なフェンスがそびえ、そのふもとには大勢の人だかりができている。
「ステージ1受付」と書かれたテントには、ガラの悪い男たちが列を作っている。
ハッチからはい出て周囲を見渡すと、観客やテレビカメラも入っていることに気づく。
カイト「これは・・・まるでテレビ番組だ・・・」
カイトの後ろからはい出てくる3人。
館内アナウンスが入る。
豊臣「腕自慢の泥棒諸君!よくぞお足元の悪いなか、我が風雲大阪城にお越しくださいました!ぜひ、全ステージを突破して、金庫に眠る莫大な財宝と世界一の大泥棒の称号をゲットしてください!」
雄叫びを上げる泥棒たち。
豊臣「石川五右衛門なんかに負けるんじゃねえぞ社会のゴミども!!財宝は先着1名だ!」
オレオレ詐欺師「やってやるぜ~!」
万引き主婦「優勝するわよ!」
車上荒らし「きっとやれる・・・!」
大道寺「秀吉の野郎、ほかの泥棒たちも招待したみてえだな・・・」
サラ「これじゃあ、下水道に潜った意味なかったじゃない!!」
監視カメラがカイトを捉える。
豊臣「おやおや~・・・そこにいるのは石川五右衛門さんじゃありませんか!
受付がお済でない方は、あちらのテントにとっとと急げバカヤロウ!」
参加者の目が一斉にカイトに集まる。
空き巣(・・・!あの青年が石川五右衛門・・・!!)
銀行強盗(ただのガキじゃねえか・・・大したことなさそうだな・・・)
スリ(殺す・・・)
翼「と・・・とりあえず、私たちも受付に行きましょう・・・」
カイト「うん・・・」

受付テント
列に並ぶカイトたち。
係員「申し訳ございません、犯罪歴がない方はご参加いただけません。
ご自身の手配書など、犯罪者であることを証明する書類が必要になります。」
ミスターサスケ「え?ダメなの・・・!?」
カイト「ぼくらも、そんな証明書はもってないですけど・・・」
係員「石川五右衛門様御一行ですね。お待ちしておりました。
エントリーナンバーは824になります。」
ナンバーが割り振られた金属製のエントリーリングを渡される。
サラ「あたしらは顔パスみたいね・・・」
カイト「参加者は、これを手首にはめろってさ。」
リングを付けるサラたち。
サラ「いよいよ本当にテレビ番組になってきたわね・・・」
大道寺「実際に放送されてるんだよ。」
インカムから安藤「しかし、これはお互いにフェアな状況だと思います。」
大道寺「どういうことだ?」

基地でテレビを見る安藤
「先輩たちの様子は今、全国ネットで生中継されています。」

カイト「・・・つまり、秀吉の方も仮に財宝が奪われても、ぼくらにムチャはできない・・・」
翼「逆に、絶対にクリアはできないという自信が向こうにはあるわけです・・・」
大道寺「おもしれえ。」
ファンの取り巻きを引き連れてウォンイク「やあ、無事に到着したみたいだね、待っていたよ・・・」
大道寺「てめえ、こっちはドブの中を潜入したってのに・・・!」
ファン「ウォン様、頑張ってー♥」
ファンに手を振るウォンイク。
ウォンイクにリングを渡すサラ「いいから、あんたもこれをつけなさい!」

カイトの近くに寄ってささやく翼。
「カイトさん・・・」
カイト「・・・ああ・・・秀吉はなんでぼくらが石川五右衛門だと知ってるんだ・・・?」
翼「考えたくはありませんが・・・」
カイト「・・・僕らのチームに内通者がいる・・・?」
サラ、大道寺、ウォンイクの方を見つめるカイトと翼。



IR大阪天守閣
豊臣「富も権力もあり、人生に退屈しているゲストの皆さん。
さあ、いよいよショーの始まりだぜ」
特別ゲストとして石田内閣の面々や各国の代表が招かれている。
バニーガールのディーラー「大阪城へようこそ!
最初のゲームは“ボーダー・ウォール”です。
1万ボルトの電圧をかけたフェンスを越え、向こう側に行けたらステージクリアです。まもなくベットタイムを締め切ります。」
ルイス・フロイスEU大使「つまり、感電死しない挑戦者に賭ければいいのかね」
バニー「ええ、ステージ1での配当金は次回のステージで全額ベットし、転がすことも可能ですよ~」
フロイス「ようし、私は怪盗ルポンに3000ベットだ」
ハドソン米大統領「わしはビリー・ザ・キッドだ!」
石田総理「え、じゃあ私は石川五右衛門に・・・」
大谷官房長官「賭けるんかい・・・」

片桐「では、最初の挑戦者は、群馬県からお越しの滝川一益さんです!」
滝川一益「信長四天王として、これ以上秀吉に好き勝手はさせん!」
滝川を応援しに来ている、柴田と丹羽。
柴田「よっ元忍者!」
丹羽「がんばれ~」
ワイプの豊臣「何年前のこと話してるんだあいつ・・・」
慣れた様子で鍵縄を回す滝川
「こんなフェンスは忍者にとっちゃわけもない・・・」
鍵縄を放り投げ、フェンスのてっぺんに鉤爪を引っ掛ける滝川
滝川「かかった!」
滝川が大ジャンプして、フェンスに脚をかけようとすると、体に大電圧がかかり吹っ飛ぶ。
滝川「ぎゃああああああああ!」
片桐「滝川さん失格です!」
柴田「あいつは我が四天王の中でも最弱・・・」
丹羽「じゃあ、次は柴田さんがやりますか?」
白旗を上げる柴田「秀吉!ギブア~~~ップ!!」

阿鼻叫喚の参加者たち「ふざけんな!
俺たちは電流が流れているなんて聞いてねえぞ!!」
豊臣「害獣の侵入を防ぐにはこれが一番!どうした?全員ギブアップかい。」

サラ「あのおっさん、ふっとんだわよ・・・!」
ウォンイク「犯罪者がひどい目にあうのを楽しむ番組のようだね」
大道寺「悪趣味なやつらだ」
翼と話し合うカイト「どう攻略したものか・・・」
翼「感電さえしなければいいわけですからね。」
大道寺「あの二人、攻略する前提で話してるぜ・・・」

銀行強盗「ガキども・・・俺が見本を見せてやる・・・」
片桐「続いての挑戦者は、東京都からお越しの銀行強盗レッドギャングさんです!
失敗すれば、そのまま逮捕無期懲役ですが、高圧電流をどう攻略しますか?」
「オレを誰だと思ってやがる・・・」
片桐「お~っと、両手両足に絶縁体のゴムを装着だ!」
ほかの参加者「正解はあれか!」
「よし、オレ達もパクろう!」
強盗「て、てめえら、真似するんじゃねえ!著作権侵害だぞ!
くそが、さすが犯罪者どもめ・・・先に超えるのはオレだ!」
ゴムをつけた泥棒たちがフェンスに殺到する。
片桐「お~っと参加者が次々とフェンスを登り・・・」
参加者たち「ぎゃああああああああ」
片桐「感電しました~~~!」
天守閣で大爆笑の豊臣

サラ「ゴムじゃ防げない・・・!?」
大道寺「ゴムは電気を通さないんじゃねえのか」
安藤「絶縁破壊・・・!電圧が高すぎるんだ・・・!」
ウォンイク「見たまえ、犯罪者たちのローストを・・・」
次々に逮捕されていく失格者。
翼「・・・よし。私が行きます。」
サラ「翼ちゃん!!??」
大道寺「さっきの惨劇見てたんじゃねえのか?」
カイト「頼んだ。チームの場合はメンバーがひとりでもクリアすればいいみたいだから」
翼「了解です。」
片桐「なんと、この状況でまだ挑戦者がいます!
エントリーナンバー824、石川五右衛門チームの百地翼さんです!」
豊臣「さあ、本命だ・・・」

フェンスに駆け寄る翼
片桐「お~っと、ゴムもなしになんのためらいもなくフェンスに駆け寄っていく~!」
フェンスに両手両足で飛びつく。
電線にしがみつくが、感電していない翼。
サラ「感電してない!」
大道寺「なるほど、電線のカラスと一緒だ。
1本だけ掴むぶんには、体に電気は流れねえ。」
2本の電線に接触しないように、体を揺すって、次の電線にしがみつく翼。
次のジャンプで、てっぺんの電線に到達し、そのままジャンプで向こう側に降りてしまう。
片桐「五右衛門チーム、ステージ1クリアです!!」
サラ「すごい!!」
石川五右衛門に賭けていたので喜ぶ石田「やった~!!」
豊臣「まあ、これくらいはいけないとね」
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