福岡先生への手紙

 福岡伸一先生は本当にダーウィニズムを批判しているのか・・・?著書の中の文章だけではあまりに曖昧。・・・ということで福岡先生の研究室にこんな質問を送ろうと思います。

福岡先生はじめまして。

先生の著作楽しく読ませていただきました。

巷では先生はネオ・ダーウィニズムは進化を説明するには不十分として、ラマルクや今西錦司さんの進化論を支持しているという話を聞きます。

これは本当なのでしょうか?

それともいわれのない誹謗中傷なのでしょうか?

これがガセネタならば、断固戦うべきだと思います。動的平衡において先生に対する批判も批判の体をなしていないものもありますし。

また獲得形質が本当に遺伝するような実験研究例がありましたら、ぜひ紹介していただきたいと思います。


 例えば、時間の限られたテレビ番組や、購買層を想定した雑誌の連載で、ガチにダーウィニズムを説明するよりはずっと簡単な説明で済む「用不用説」を用いてロマンチックなイメージを視聴者や読者に提供した方が受けがいいのかもしれません。
 また科学に疎いテレビディレクターや編集者が「そう書いた方が売れますから・・・」と修正を求めてくるのかもしれない。

 私はかつて漫画の話で「面白さの犠牲にされる真実」という記事を書きました。しかしいくら面白くても科学者が面白さの為に正しい科学を犠牲にしては不味いのではないか・・・?
 福岡さんの真意はまだ解らないので、なんともいえませんが、あの脳科学者の人とかはテレビで「脳科学的な説明」を聞いたことがあまりありません。

 私はソ連がかつてルイセンコと言うトンデモ系農学者によって多くの餓死者を出したことは忘れてはいけないと思います。
 科学は反証する学問。だからダーウィンの説明よりももっと合理的な説明があれば別にダーウィニズムに固執する事はありません。
 とはいえ今のところダーウィンの進化論はアインシュタインの相対性理論くらい理にかなった理論だとされています。このような有名な理論を「実は間違っているよ」と言えば、読者の興味を引くことはできます(でも、そういった本は大抵とんでもない説だったりハッタリだったりします)。

 面白主義を標榜する漫画を描くお前が何言ってんだ。お前が言うなって気もしますが、やっぱり価値相対主義に行く前に・・・一応有力な定説を世間には「考える基準」として教えるべきです。
 それがあるべき科学の教育だと思います。たとえダーウィンよりラマルクの説明の方が解りやすくても・・・

 追記:科学の定義、科学的な思考については、なすぼねさんお勧めの一冊『系統樹思考の世界』(三中信宏著)が確かにお勧め!新書で超安いですがそれ以上の価値は確実にあります!
 だから系統樹!!w

動的平衡って代謝のこと?

 『生物と無生物のあいだ』の記事があまりに長くなったので、やっぱり二つにしますw。今回は『生物と無生物のあいだ』のキーワードとなっている「動的平衡」という概念について。

 シュレーディンガーの提唱した「ネゲントロピー(=エントロピーの逆。秩序化。概念自体は知ってたけど、この言葉はこの前知った。それも『構造と力』で)」に対して、福岡さんがそのメカニズムの観点から紹介した、シェーンハイマーの「動的平衡」という言葉。本書のメインだけあって、なかなか面白い考えです。

 「秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない・・・(166ページ)」

 つまりブログで例えるならば、更新率の低いブログは誰も見なくなり、どんどん廃れてコメント欄にアダルトサイトへのリンクが張られ、無秩序化(エントロピーが増大)していきます。
 生物はこの対策に、ブログをずっと更新しなくても荒らされないような、超強固なセキュリティを考えたりはしません。生物の取った手段はもっと柔軟で手軽なものです。そう、めちゃくちゃ更新率を上げるのです。

 これは哲学のよくある問題「テセウスの舟」。船の板を一枚ずつ外して新しい板と交換した時、一体何枚目まで「もとの船」と言えるだろうか?そして外した板で再び船を作った時、それは「もとの船」と言えるのだろうか?

 「生物は自身の秩序(ホメオスタシス)を絶えず維持するために積極的に外部からエネルギーを取り換え、自身の形を更新している」・・・これが福岡さんの言う「動的平衡状態」です(多分)。しかし「生物の定義とは、動的平衡である。」はちょっと大袈裟感が。

 思ったんですけど、実は福岡さんの「動的平衡」って・・・生物の大きな要素「代謝」(生物学の基礎中の基礎)なのでは?
 
 つまり福岡さんは、かつてハミルトンの「包括適応度」という難しい概念を、一般の人にも解り易く「利己的な遺伝子」というモデルで説明したリチャード・ドーキンスに似ているのかもしれませんね。

 追記:福岡さんがドーキンスと似ているという文は不当かもしれない・・・ここでは「解り易く言葉を変えて、世間にはなじみの薄い生物学の考え方を一般に広めている」という意味で書きました。
 しかしダーウィニズムの正当な継承者ドーキンスと、ラマルク説に傾倒する福岡さんを似た者同士と言ってしまうのは、いくらなんでもドーキンスに失礼だ・・・
 調べたところ福岡さんの進化に対する考え方はちょとおかしい。しかしハーバード大学で働いた福岡さんがこのような生物学をかじったことがある人なら誰でも解る初歩的な誤りを犯すだろうか・・・?
 本気で福岡さんが「獲得形質の遺伝」を再び復活させようとしているのなら、それは「コタツから出てトイレに行くのが面倒な人のおちんちんは長く進化します」と言っているようなものでとても残念だし、世間の注目を集めるために“わざと”反証された説を言っているのだとしてもそれも哀しい。
 ベストセラー作家となった福岡さんはとても影響力のある科学者なのだから、正しい知識を世間に広めてほしいな。

『生物と無生物のあいだ』

 なんかとっても懐かしい本・・・

 中学生の私は理科の二分野が好きで、よく近くの県立図書館に自転車で通っては、生物学の本を読みあさっていました。
 もの知らずな中学生の頭脳ですから誤読もあったでしょうが、新しい知識を吸収するのが非常に楽しく、友達とその感動を共有したくなった私は、面白い本を友達に紹介しようとしたものの「難しそう」と見事に拒否られましたw。
 そこで私は「それは活字=小難しいというただのイメージだよ」と活字の本を要約し、キャンパスノートに絵入りで遺伝子や進化論、宇宙論、動物行動学、地球環境の本を制作。
 活字本はともかく、当時はジャンプ黄金時代だったので漫画には親しんでいる友達は、絵が入っていると楽しんで読んでくれました。
 今では進化論のノートしか残っていませんが(遺伝子は大学の友だちが勝手に理学の教授に渡しちゃったらしい。恥ずかしすぎる!)特に進化論をめぐるヴィクトリア朝時代のごたごたを漫画で描いたのは好評で、これが今の漫画描きの原点でした。

 そんな中学時代に仕入れた生物学の知識・・・DNA、PCR法、ノックアウトマウス・・・そして「いたいた!」って感じの通好みの数々の生物学者(高校の生物でも出てくる肺炎双球菌のエイブリー、『ジュラシックパーク』でも引用されているシャルガフ、PCR法の父で破天荒なマリス)・・・この『生物と無生物のあいだ』にはそんな中学時代の思い出が溢れています。
 これは例えるならば、かつてモーニング娘。にハマっていたファンが、往年の名曲「ラブマシーン」を聴くようなもの。新しい発見はないものの胸はときめきます。

 著者の福岡伸一さんの文章は、私はプリオンを取り上げた雑誌の記事しか読んだことがなく、それを読んだ時には、「カッチリとした理論的な文章を書く誠実そうなイメージ」を氏には抱きましたが、この本では要所要所に挟まれるエピソードが何とも文学的で、小説のようです。
 またDNAの構造の発見における研究者たちの仁義無き戦い・・・華やかな歴史的発見の裏のダークサイドも取り上げていてゴシップ好きにはたまらない作り。

 野口英世さんのイメージも本書の通りでしょう。野口英世は生まれた時代が惜しかった。あの時代は病理学の歴史においては、技術的ブレイクスルー、新たなエポックメイキングの直前で、光学顕微鏡で見える病原体はほとんど発見されつくしていました。
 残っていたのは光学顕微鏡ではどう考えても見えないウィルス性の疾患・・・

 またDNAの構造発見の陰の主役、ロザリンド・フランクリン氏は恥ずかしながら初めて知りました(もしくは忘れていました。ごめんなさい!)。確かに彼女の功績はあまり表だって本で紹介される事はなく、不当な扱いかもしれません。
 しかし福岡さんはこの人をかなり持ちあげますw(少なくともそう読める)。本書は科学本でありながら、卓越したアナロジーにあふれた文学調の本でもあるので、こいつはちょっと危険だぞw。
 文学が好きな読者はその想像力で時には「文章に書いていないことも読んで」しまいますから。

 それに「フランクリンは気難しく、ヒステリックで根暗。自分のデーターの重要性にすら気付かない視野の狭い女性」というワトソンの評価も、生物学の話ではない。科学と分けて考えるべき話です。
 本当にそういう人だったかもしれないし、そうじゃないかもしれない。こんなこと言われても当事者じゃない限り何ともコメントしづらいですよ、福岡さん(苦笑)。
 この本は65万部売れたそうですが、これを読んだ一般の人はワトソンやクリック、ウィルキンズにあまり良いイメージを持たないでしょう。「この盗作野郎!女性の敵!」とも思うでしょう。まあワトソンに関しては当時若造だったので筆が滑ったことは事実でしょうね。

 ただ、こういうことは科学の世界ではよくあることだと思います。科学者にとって研究論文は芸術家の作品と同じ。
 しかし科学の研究成果も、芸術作品も考えた作家のものであると同時に、社会のものでもある。いわゆる「パブリック・ドメイン」です。この共有化こそ、人類の歴史で繰り返し新たな発見を生んできた。
 「パクリ交雑論」を展開する私としては、福岡さんの先取権に固執する情熱は分かるものの(科学者にとって“自分の結果”を残さなければ食っていけないから)やはり温度差を感じてしまいます。
 科学における対照区の重要性や先入観の危険性を冒頭でこれでもかと冷静に訴える福岡さん・・・しかしこの本を読み終えて感じたのは意外に情熱的な人だと言うこと。やっぱり本書には取り上げてないけれど、いろいろ嫌なやつがいるんだろうなあ・・・やだなあ。

 フランクリンは確かに不当な扱いを受けたかもしれません。
 しかし学者には様々なタイプがあります。フランクリンのようにコツコツと誠実にデーターを集めるのが巧い人。ワトソンとクリックのようにデータを分析し普遍的法則を思いつくのが巧い人。そして「利己的な遺伝子」「ミーム」などキャッチーなコピーを考えたドーキンスのように、世間に解り易く発表するのが巧い人。
 ここで問題が発生します。フランクリンのデータを使って普遍性を思いつき理論を考えたワトソンとクリックの理論をドーキンスが解りやすくまとめて発表したらどうなるのか?
 この研究は一体誰のものなのか・・・

 またフランクリンはX線回折のスペシャリスト(X線回折は作業が超難しくて、素人には決してできなかった。PCRやオートクレーブの操作を家電のごとく簡単に出来るのとは大違い)ですが、彼女が使ったX線装置は先人の偉大な研究の遺産であることも付け加えた方がいいでしょう。
 ここにあるのは知の相続制。文明が始まった時から続くミームの連鎖です。

 私は本書で展開される「オレの研究だ!」「いやオレだ!」の個人主義的なやりとり、そしてそれが分子生物学の歴史に偉大な名を残す研究者(いわば中学生の頃の私のヒーロー)の間でもしっかり行われていたことに、夢を叩き壊されましたw。
 
 この原因は一体何なのでしょう?私はやはり資本主義だと思います。科学の研究にはとにかく莫大なお金がかかる上、結果が出て実を結ぶのは時間がかかる、かなり危険な投資(結ばないかもしれないし)。
 ノーベル賞を受賞した「スーパーカミオカンデ(ニュートリノを観測する大きな地下プール)」で有名な小柴さんは、一説にはこの研究予算を集めるのがとてもうまかった人らしく、「博物学」と言う分野が消えてから久しい、細分化かつ複雑化された近代の科学は、資本主義に常に翻弄されてきました。
 ナチスのユダヤ人虐殺につながった優生学を、アレクシ・カレルやコンラート・ローレンツなど当時の優秀な科学者が結局間接的に支持した理由も、やはり研究費。
 このひも(=パトロン)付き科学者の状況を批判したのが『ジュラシックパーク』で、利益追求型のベンチャー企業「インジェン」が、金になる研究(だけ)をどしどし研究者にやらせ、恐竜に人が虐殺されるという恐ろしい結果を招きました。

 現在は優生学(=1883年~今?)やジュラシックパークの時代(=1989年)とは違い、ネットワーク技術によって「知は共有される」方向に向かっています。
 そこで大切なのはオリジナルへの敬意。「私はDNAの構造を考えるのにフランクリンさんのデータが多いに役立ちました。ありがとうございます」と感謝の気持ちを述べればいいんじゃないか。
 というかお金と言う概念を取っ払った時に残るのは、結局それ(人として相手を尊敬する気持ち)しかないのでは?「フランクリン?誰それ?オレが全部考えた」という嘘つきは許さんw。
 お金によって研究者がお互いの研究を感情的に批判し合い(批判自体は科学においてとても有益)、足を引っ張り合うのは人類にとって大きなマイナス。私はこの本を読んでそんな事を考えてしまいました。

 あと最後にこれだけは言わせて!この本に興味をもたれた方ぜひ一冊だけでなく、佐倉統さんの『進化論の挑戦』を併せて読むことをお勧めします!
 なぜかというと、この本は「マクロな生物学」の視点がないので(特に144ページ「しかし私は、現存する生物の特性、特に形態の特徴のすべてに進化論的原理、つまり自然淘汰の結果、ランダムな変異が選抜されたと考えることは、生命の多様性をあまりに単純化する思考であり、大いなる危惧を感じる」は真面目に研究している分子進化学者が怒るぞw)、佐倉さんの本でマクロ、福岡さんの本でミクロの生物学を楽しめば、面白さは二倍三倍間違いなし!

クレヨンしんちゃん 超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆☆」

 親は子どもに生き抜けって言うもんだろうがああああ!
 
 『クレヨンしんちゃん』と言う漫画は、私は「ミスタービーン」タイプだと思っていて、つまり主人公が変人なので、あえて主人公への感情移入を封じる構造になっているのです。
 だから変人でトリックスターのしんちゃんを物語の主役としてちゃんと動かせば動かすほど、しんちゃんの魅力がなくなってくるジレンマに、尺の長い映画版の作り手は苦しんでしまうのだと思います(しんちゃんがまともに見えちゃうから)。
 これを巧くやったのが『ヘンダーランドの大冒険』で、逆にそれをはなから放棄し、父ひろしを動かして成功したのが『モーレツ!オトナ帝国の逆襲』です。
 そして今回の新作映画は嬉しいことに前者。それも亡くなられた臼井儀人先生すら手を出さなかった(小学生になった話はありますが)大人になったしんちゃんを描いたのだから、なんという冒険・・・!
 長いしんちゃんの歴史で封印されてきた(?)「未来のしんちゃん」を想像するのはかなり怖いものがあってw、これほど有名で愛されているキャラクターの(妄想やイメージでは決してない)大人になった姿をどう違和感なく観客に公開するかは、アポリアもいいとこ。
 そのパンドラの箱に果敢に挑戦されて、見事違和感のないかっこいい大人のしんちゃんを描き、原作者の臼井先生に捧げたのはちょっと感動的・・・
 
 しかししんちゃんってこれまでに一体いくつの巨大ロボットを撃破しているんだ??

 今回の話に関しては重大なネタバレがありそうなので、観ていない人は読まない方が・・・私はテレビCMすら観ずに、一切の情報なしで見たんですけどこれが幸運でした。どんな話か全く知らなかったので、とても楽しめました。しんちゃん映画の最高傑作かもしれません。

 ある日しんちゃんたちは自分たちの未来について公園で思いをふくらませます。マサオくんは売れっ子漫画家、ネネちゃんはセレブ女優、風間くんは企業の社長、ボーちゃんは発明家・・・しかししんちゃんは自分が大人になることなど全く考えておらず「おらの夢は子供でい続けることだぞ!」とホリケンワールド全開です。
 その時公園に「未来のしんちゃんの花嫁だ」というタミコさんという女性がやってきて、しんちゃんを強引に未来に連れて行ってしまいます。そのタイムワープに案の定巻き込まれる春日部防衛隊一同・・・
 未来の埼玉県はエラいことになっていました。

 地球に巨大隕石が衝突し東京都は壊滅、核の冬で日光は遮断され闇の世界に・・・埼玉県は水没した東京に変わって新たな首都になっています。
 しかし未来の埼玉県は、闇の世界において「光」を牛耳る、人気特撮番組「アクション仮面」のメインスポンサー「金有電機」によって支配され、電気の光あふれる未来都市に暮らせるのはたった一部の富裕層のみ。経済はお菓子の「チョコビ」が1800円と言うハイパーインフレ状態で、一般庶民はまるで貧民街、スラムと化した住宅地へ隔離されています。
 徹底した超格差社会に明るい希望を取り戻そうと画策したのが、未来のしんちゃん。しかしタミコの父であり、金有電機の総裁「金有増蔵」がこれを阻止。未来の「しんのすけさん」を拉致してしまいます。

 さらに衝撃的なのがメインキャラクターの将来。トップバッターがマサオくん。恐ろしいことに漫画雑誌に連載している漫画に「クズ漫画が、どこが面白いんだ。編集部は俺の才能を分かってない」とぶーたれるコンビニ店員と化していました。まるで自分の10年後を見ているようです!!
 ネネちゃんも負けてはいません。未来の彼女は徹底的にやさぐれたオンボロ幼稚園の保母さんで、居酒屋で合コン時にも、「歩くワイドショーのおばさん」が履くようなレッグウォーマーを愛用する彼女は、もはや結婚どころか女を捨ててます。「いいこと?リアルおままごとよりも現実はシビアよ」は名言だと思います。 
 そして風間くんは金有電機のエリート幹部社員。増蔵は「家電会社なんてつまらないじゃん?」と自分に吐き捨てた下品でマイペースなしんのすけよりも、風間くんと自分の娘を結婚させようと画策します。
 ラストがボーちゃんなんですが、彼だけはなんと子ども頃の夢を叶えています。野原しんのすけが放出する、どんな物理法則にも従わない未知のエネルギー「OBAKAパワー」を学会で発表したり、巨大ロボを建造する工学者になっていました。

 家族の未来はもっと衝撃的。ひろしとみさえは・・・これは劇場でぜひ確かめてください。度肝を抜かれます。
 あと公務員になると家を飛び出して行方知れずのしんちゃんの妹「ひまわり」はインターポールの秘密捜査官に、イヌのシロはギズモ・グレムリンばりに劇的に増えていました。
 あ、あとアニメ版でおなじみ、テレビリポーターの団羅座也(=ダン・ラザー)さんも健在。ただひろしとみさえの素振りだと、マサオくんたちの家族は天変地異から逃れられなかったようです。

 ベースのストーリーラインは比較的単純で追いやすく『サマ―ウォーズ』のように設定や状況を整理する必要はないです。「くだらねえ~」とへらへら笑って、やっぱりひろしにはちょっと泣かされて(悔しい!)、一直線でハッピーエンド。ED曲のmihimaru GTの「オメデトウ」は作風にとても合ってて、クレヨンしんちゃんの「ベストヒットシングルヒストリー」を所有する私としては、殿堂入りレベル。最後までいい映画でした。

 臼井儀人先生はサラリーマン経験のある遅咲きの漫画家で、今なお私に勇気を与えてくれています。心からご冥福をお祈りします。

サマーウォーズ

 「面白い度☆☆」「好き度☆」

 ダメだ・・・私の悪い頭では処理しきれないぞ・・・

 『サマーウォーズ』は「21世紀版 電光超人グリッドマン」とも言えるSFアニメ映画!やっと時代が「グリッドマン」に追い付いたのかな?
 そういう意味では今こそ再び見たい特撮モノであります。ぜひ再放送して!

 こんな事言っても「グリッドマン」を知らない人にはなんのこっちゃって話ですが、昔円谷プロが「電子版ウルトラマン」みたいなのを手掛けたんです。
 ウルトラマンは敵が巨大な野生動物や異星人でしたが、それに対してグリッドマンの怪獣はなんとコンピュータウィルス。そう、インターネットがここまで普及していない時代に、近未来の電子化を予測して生まれたヒーロー、それがアンチウィルスソフトウェアのグリッドマンなのです。♪エ~ビピョンピョン(そんなOPテーマだった)
 ただグリッドマンの怪獣は、冷蔵庫や掃除機と言った家庭の電化製品を暴走させていましたが、結局現在ネットワーク制御されている電化製品はゾウジルシのポット位で、今見ると荒唐無稽なんですけど・・・それでも時代を先取りしていた点はすごい。
 ・・・というか、先取りしすぎて時代が追い付かなかった。怪獣とかウルトラ怪獣と路線が違うデザインでとてもかっこよかったのに・・・
 いかんいかん。グリッドマンの話で終わっちゃうのでここらで切り上げます。

 この映画、そもそもテレビCMでは内容がさっぱり分からなかった。解らなかったゆえに魅力を感じなかった。日本アニメ特有のインスピレーション先行型アニメかな?と。しかしそれは違いました。『サマ―ウォーズ』のプロットはかなり緻密に計算されていて、完成度はかなり高い。
 とはいえこの映画はかなり複雑です。少なくとも私の頭はだんだん疲れてきてしまいました。個々のエピソードは質が高く面白いのですが、とにかく登場人物の数といい情報が多すぎるのです。
 だから今回の記事も文章量が多くなりそうです。かつてこれを映画館で見て「面白かったぜ」と言う友人に「どんな話なの?」って聞いたら「うまく説明はできねえ」と返された思い出があるのですが、激しく納得。

 電子化された個人情報を一元化されたヴァーチャルスペース「OZ(ただこれがサーバーコンピューターの名前なのか、ネットワークシステムの名前なのか、それともソフトウェアなのかは不明。忘れちゃった)」で管理、保守、共有するというアイディアは高校の図書館で読んだ『インターネットはからっぽの洞窟』を彷彿とさせ、SFの題材としては上質で、示唆にあふれています。
 だからそれだけに最初から最後までSFとして物語を落としてほしかった。『ダ・ヴィンチ・コード』ではテーマが「神への信仰」だったので、ラストシーンもイコノロジーの専門家が「私が井戸におちた時・・・私は神など信じてなかったけど、やはり祈ったよ」というセリフで映画を総括していました。
 しかし『サマーウォーズ』ではラストシーンが青春恋愛映画のようなキスシーンでほほえましく終わるので、そう考えるとSFとして作ってはいないのかもしれません。
 でもネットワークを題材にした作品であることは確かだし・・・ううう・・・

 そこで私はこの複雑な映画の構造を分解。すると大きく4つほどのパーツに分かれることが解りました。
①一夏の青春恋愛モノ・・・若者向け
②ネットワーク上で敵と戦うバトルアクションもの・・・ちびっ子向け
③情報技術を題材にしたSF・・・マニア向け
④家族をテーマにした群像劇・・・ファミリー向け

 この4つを1つの映画に上手くはめ込んでいるのはすごい。すごいがやはり何をメインで話を追っていいかが分からないんです。
 つまり某球団のように、優秀な打者をたくさん集めてきてもチームが勝てないのと同じように、優れた物語ばかりでもそれを詰め込み過ぎると雑多な印象を受けてしまう。
 その対策に一役買っているのが「甲子園の高校野球」のパート。これは『アイスエイジ』シリーズで言うならば、リスの「スクラット」のようなもので、シーンの接着剤、および現在までの展開のまとめを担っていて、観客がスムーズに物語を追えるように工夫されています。
 たとえば陣内家のネットワークにおける「合戦」がピンチになると、甲子園で戦うピッチャーもピンチに追い込まれ、現状がリンクされているのです。正直この甲子園のパートは目立たないけど、この映画の組み立てにかなり貢献していたと思います。

 さて『サマーウォーズ』の4つのパーツは、どれも単体で見ても面白くできています。というか単体でも十分なほど巧い。だから一度に襲ってくると辛いw。

 まず①。数学しか取り柄のない、根はやさしいが気弱な今時の草食系ヒーロー「健二」くんが、憧れの夏希先輩(女性)の恋人のフリを先輩当人から依頼されるという、かなりベタなラブコメパート。
 私はこの手のラブコメは「嘘っぽい」と引いてしまうのですが、ヒロインの夏希先輩がジブリアニメのような爽やかな性格の普通の女性で、秋葉原の伝統芸「萌え属性」など微塵もなかったのは好印象。キャラクターデザインも平凡で印象希薄なのが良かった(手足が細すぎるとは思うが・・・)。

 夏希先輩だけではなく、この映画の登場人物はみんな夏のように爽やかな人たちばかりで『ルパン三世 カリオストロの城』風に言えば「なんて気持ちのいい奴らなんだ・・・」
 このキャラクターの性格やセリフを考えた人は相当巧いと思います。OZネットワークの危機によってコンピューター制御された日常生活がノイズのように徐々に狂っていく過程に対しての男性キャラと女性キャラのリアクションの温度差は見事で、とてもリアル。
 そうそう、母になった女性は本当に逞しく、空から人工衛星が降り注ごうとも常に目の前の生活に目が行っているもの(ほんまかい)。
 それに比べて男はアバターだかアカウントだか知らないけど「世界の危機だとか」よく分からないテレビゲームに夢中・・・これだから男ってのは頼りにならないわ、と(これはほんと)。

 次に②。OZの仮想空間内でのアバター同士のバトルアクション。これ、普通に格闘ゲームやってましたけど、なにかのメタファーなのでしょうか?負けるとアカウント取られて「なり済まし犯罪」されちゃうし。
 ここらへんはおそらくハッカーがシステムのプロテクトをキーボード叩いて破るより、格闘シーンにしたほうがヴィジュアル的にも解りやすいという判断なのかもしれませんが、ちょっと力技w。
 いきなり「バトルモードに移行した!?」と唐突に始まるコンピューター内での殴り合いは強引でイメージが追い付かず(なにやってるの???)興ざめしてしまいました・・・
 やはりちびっ子を飽きさせないための工夫でしょうね。ここがこの映画がグリッドマンっぽいゆえん。

 そして③。ここが結構残念。①②④に食われちゃった気がします。SFの物語の落とし方は何パターンかあって、マイクル・クライトンのように「そのテクノロジーは危険だから手を出さない方がいい」というテクノロジー批判タイプと、「テクノロジーじゃなくて危険なのはそれを用いる人間。扱い方を気をつけよう」という使用法改善タイプ。そして「そのようなリスクも進歩には必要だ」というひたすら突き進んでいくファイヤアーベントタイプ。
 この映画はどれだったんだろう・・・?結論がいまいち不明確だった。おそらくこの映画は「テクノロジー批判タイプ」ではない。
 私がこの映画で最も大好きなシーンが、御歳90歳の先輩の祖母の栄お婆ちゃんが全くコンピューターに頼らず、膨大なコネクションを生かし、年賀状や暑中見舞いの手紙、手帳、黒電話を駆使して事態を収拾させるため関係者を励ますところ。
 正直このシーンを映画のクライマックスに持ってきてほしかったくらいで、このシーンでカタルシスを完了してしまった私は、その後の展開がどうも乗れなかったんです。
 つまりもはや電子化された時代において、ああいう戦い方が出来るのは栄お婆ちゃんだけ。知識を求め暴走する「自律型ウィキペディア」のようなプログラム「ラブマシーン」を止めるのは結局電気屋のスーパーコンピューターと、漁師の自家発電機と、自衛隊松本駐屯地のアンテナと言ったテクノロジー。テクノロジーを倒すには結局テクノロジーしかなかった。となると「使用法改善タイプ」か?

 ここがぼけたのは間違いなく「ラブマシーン」の説明不足。ただあれを開発した訳ありの親族はなかなか癖のあるキャラクターで強い印象を残していました。
 欲を言えば「ラブマシーン」は情報(=個人アカウント)を収集するため、格闘ゲームで世界中のゲーマー(ハッカーのメタファーか?)を倒していきます。これは情報収集と言うプログラムにのっとった極めて合理的な行動。
 しかしラストに夏希先輩との花札勝負で負けた「ラブちゃん」は苦し紛れに、あのクソアマのいる民家に鉄の衛星をお見舞いしてやると、人工衛星の落下コースを陣内家に修正します。これってさらっと流されたけど、実はSFとしてけっこう重要なシーンだったんじゃないでしょうか?
 どう考えてもこの振る舞いは合理的ではなく、ゲームに負けた負けず嫌い野郎のやけくその八つ当たり。なんとラブマシーンは今までのAIには無かったであろう高度な自我が芽生えているのです!
 そもそもプロのチェスプレーヤーが、コンピュータに負ける時代。ラブマシーンなら花札くらい人間に確実に勝てそうなものなのに・・・ちょっと深読みすると花札のフィールド、奥にブラキオサウルスやアロサウルスなどの恐竜のシルエットがいませんでした?
 つまりあの時代花札は恐竜と同じく「滅んだ遊び」で、そのルールはもはや陣内家しか知らなかったとか・・・ないな(世界中の人が「こいこい」言ってたし。あんたら解るんかいw)。

 あとアメリカの国防省を悪の黒幕にするのはどうなんだ・・・?結局インターネットってアメリカ軍が作ったわけで、クライトンのようにテクノロジー批判という結論にしないならば、まさに天に唾なような気が。

 ただ面白かったのは④。仮にテクノロジーを使おうとも、そこにあるのは爽やかで温かい人間たちの交流。「技術が発展した今こそ、人と人とのつながりが・・・」と栄お婆ちゃんは激励しましたが、それはどうやら杞憂だったよう。どんなに科学技術が発展しようとも人間はやっぱり38億年かけて漸進的に進化してきた動物。変わらないんです。ここが映画のテーマだったのかな?
 神戸で地震が起きた時、またニューヨークでテロが起きた時、「大阪万博」「東京オリンピック」の温かい昭和は遠くなりにけり・・・情報化社会で生きる現代人だって力を合わせて命がけで仲間を救いました。
 つまり今回のOZの一件はネットワーク時代に訪れた「天災」のようなもの。資本主義がときにサブプライムショックをもたらし、産業革命が酸性雨を降らせたのとおなじ、テクノロジーにつきもののよくあるクライシス。
 技術と上手く付き合う方法を模索するのは、機械ではなく、人間の頭脳。そういった意味で最後の最後に主人公が暗算でパスワードを解いて、強大な「ラブマシーン」を倒したのは意味があったと思います。
 
 ・・・ほら。すごい文章量。やっぱりこの映画の筋を一言で説明するのは不可能。いくら個々の要素がうまくても詰め込み過ぎると私のような観客はついていけなくなってしまう・・・というのを痛感しました。お話作りは奥が深いです。

 結論:長い。お婆ちゃんのシーンで終わってよかった。
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