『80日間宇宙一周 From Earth with Love』脚本⑭

レース会場にかけてくるミグ
ミグ「イワン・・・!!」
イワン「ミグ・・・」
イルミナとフレミングの死体に気づくミグ
ミグ「これは・・・!ヴェルヌ博士がフレミングさんを・・・!?
イワン「いや・・・彼女は怪物などではなかった・・・
(顔を上げる)・・・死者を弔うのはあとだ、もう時間がない、行くぞ!!」
ミグ「どこに!?」
イワン「宇宙サミットだ!!」



ウェルズ議事堂
議事堂前はマスコミや警察で騒然としている。
アストンマーティンを荒々しく止めるイワン。
車から急いで降りるイワンとミグ。
軍隊が会場への入口を封鎖している。
議事堂に入ろうとするイワンを止める兵士
「ダメだ!ここには誰も入れない!!」
手帳を見せるイワン「うるさい!TIAのイワン・ウェイドだ!」
兵士「誰であろうが通れんものは通れん!!
イワン「通せ!」
バーンズ提督「馬鹿な真似はよせ、ウェイド。
連中は太陽系を人質にしているんだぞ!
ピカールがスイッチを押したら、太陽は凍っちまう・・・!!」
イワン「お前がバーンズか?」
提督「ああ・・・」
バーンズの腹を思い切り殴るイワン。
崩れ落ちるバーンズ
イワン「言ったよな?今度会ったらぶっ飛ばすって」

兵士が集まってきて、イワンとミグに銃を突きつける。
ミグ「イワン・・・!」
バーンズを捕まえて人質にするイワン「議事堂に入れてくれ!
オレならあのピカールを止められる!
切り札があるんだ・・・!」
兵士「いいから降伏しろ!!」
イワン「オレを信じてくれ・・・!!!」
兵士「早く提督を離せ!!」
イワン「太陽系を救えるんだ・・・!
引き金に指をかける兵士「離せええ!!」
ミグ「イワン・・・!!!」

アリエル「二人共耳を抑えて!!
その瞬間、超高周波が議事堂前に響く
ガラスが次々に割れていく。
超音波を出して特殊部隊を制圧するアリエル。
ミグ「・・・!?」
警官隊を引き連れるゲオルグ
「テロを仕組んだのは、地球連邦軍だ!全員逮捕!!」
警官隊と軍隊がぶつかり合う。
次々と軍隊を袋叩きにしていくゲオルグ「天王警察をなめるな!!」
バーンズ提督「これは反逆だ!!警察といえども構わん!
撃ち殺せ!!」
しかし兵士たちは撃たない。
武器を次々捨てて投降していく。
提督「貴様ら!なにをやってる!!」
上空に武装した海賊船団が現れる。
キャプテンロジャー「まだやるか?」
諦める提督

逮捕されるバーンズ提督
ゲオルグ「警官生活最後にとんでもない大物がしょっぴけたぜ」
海賊船を見つめるミグ
ミグ「なんでみんなが・・・」
ルヴェリエ「ぼくが連絡したんです・・・!」
アリエル「さあ、お二人は早く中へ・・・!」
イワン「行こうミグ・・・!ライトを救うんだ!!」
頷くミグ
議事堂へかけていくイワンとミグ。



宇宙サミット会場
アルベド議長「どういうことだね、センチネル大統領・・・」
アラゴ「知っていることを話してもらおうか・・・?」
センチネル「・・・まさかキミに太陽系を人質にされるとはな・・・」
微笑むピカール「飼い犬に手を噛まれましたね・・・」
センチネル「事の発端はもう400年以上前の話だ・・・
月面でとある石版が発掘されたことから我々の計画は始まった・・・」
アルベド「石版・・・?」
センチネル「スタータブレットは存在したのだよアルベド議長・・・
そこには太陽系のすべての歴史が書かれていた・・・過去も・・・そして未来も・・・
そして我々は恐ろしい事実を知った。
我々の太陽系はもうじき滅ぶ運命にあると・・・いや既に滅ぼされていたのだ、20億年前に」
アラゴ「はあ?オレたちにも分かるように言ってくれ」
ピカール「生命は一度滅ぼされていたのですよ、ガンマ線バーストによって・・・」
アラゴ「なんだと・・・?」
ピカール「だから最初の生命の誕生から多細胞生物の出現までに大きな空白があったのです。
そして、宇宙に滅びをもたらした怪物の正体がこれです」
円卓に資料を置くピカール
「これは30年前にエンディミオン宇宙観測所で撮影されたものです・・・」
資料を見る首脳陣「これは・・・」
センチネル「フレッド・ホイル銀河という。」
ピカール「宇宙を移動しながら、銀河のエネルギーを奪い取り、ブラックホールに変えていく捕食性の銀河で、銀河数百個分もの強力なエネルギーを持っています・・・
例えるなら宇宙のがん細胞ですな。」
アラゴ「銀河数百個分だって・・・!?そいつが襲ってくるのか?」
センチネル「もう襲われたのだよ・・・
宇宙の果てでこの怪物はほかの銀河を食い、宇宙中に強力な光と熱と衝撃波を撒き散らした。
20億年前にまず真っ先にやってきたのは光とガンマ線だ・・・
これによって太陽系の生命体は一度死滅。
そしてこれからやってくるのが・・・」
ピカール「熱と衝撃波です・・・つまり宇宙温暖化は真実だったのです。
私はこの観測結果を地球連邦に報告し、ディスカバリー計画を発動させた」
アラゴ「アイザック・イエガーがアルファケンタウルスまで行った有人宇宙飛行計画か!」
ピカール「フレッドホイル銀河の存在を確認しなければ、予算は出せないと言われたのでね・・・
そして・・・」

会場に入ってくるイワン「怪物は存在した・・・」
首脳陣「キミは・・・」
イワン「アイザック・イエガー・・・ディスカバリー計画のテストパイロットだ・・・」
会場に入ってくるミグ「え・・・??」
イワン「そうか・・・オレのミッションにはそういう裏があったんだな・・・ピカール博士。」
うなずくピカール
イワン「10年前オレが地球に帰還したとき、地球連邦軍はオレの調査結果を廃棄して、子供たちに夢を与える冒険としてマスコミに報道させた・・・なぜだ?
災厄の規模が大きすぎて太陽系すべての惑星は救えないと判断したからだ。
そうだろう?」
センチネルに詰め寄るイワン「すべての黒幕・・・!」
センチネル大統領「・・・我が地球にこれ以上移民を受け入れる余裕はない・・・!」

騒然とする会議場
アラゴ国王「なるほど・・・どのみち消滅する星に復興支援なんてしたって焼け石に水だもんな!」
ハデス天皇(冥王星のトップ)「うちの星の予算をケチったものそういうことか~!!」
アラゴ「あんたの星はそもそも惑星じゃないだろ!!」
ハデス「長年太陽系を守ってもらってその口の利き方はなんだ!
私の星だったらキミは打首獄門ものだぞ!」
モウタクサン国家主席(土星のトップ)「ええい、準惑星は黙っててもらおう!
センチネル大統領、なぜフレッドホイル銀河の存在を隠した!?
答えたまえ、もし彼が言ったことが事実なら・・・」
センチネル「隠してはいない、宇宙温暖化はマスコミがさんざん取り上げたはずだ。
まともに相手をしなかったのは各国政府の責任だろ!」
水掛け論をはじめる首脳たち

呆然とするミグ「・・・・・・。」
アルベド「やめないか!みっともない!!!」
静まる首脳たち
アルベド「すべて放送されてるぞ・・・」
惑星連合放送のカメラがサミットの様子を撮影し続けている。
秘書官「だ・・・誰だ!?あんなカメラを入れたのは!!」
ピカール「くっくっく・・・
あなたがたがこのように醜態を晒すことも我が主ミスターアップルはお見通しですよ。
我々サーペンタリウスが歴史の影で戦争をプロデュースしたのは、結局あなたがたがなんの役にも立たないことを見抜いていたからです・・・」
首脳たち「・・・・・・。」
ピカール「我々は軍拡競争によって、来るべき日のために兵器を進化させた。
すべてを焼き尽くす熱と衝撃波から太陽系を守るのに必要なものは、剣と盾と矢・・・
光の矢でフレッドホイル銀河に行き、盾を設置し、剣で怪物に止めを指す。
武器は全て揃った。
私のメイルシュトローム砲が剣、ヴェルヌ博士のジオメトリカルホウサンチュウが盾、そして・・・ライトくんのリニアエクシードエンジンが矢・・・」
センチネル「全てキミの筋書き通りに行くとは限らんぞ・・・
何度も言ったようにその計画は、あまりにリスクが大きすぎる・・・
光の速さを超えて帰ってきた人間は未だかつてひとりもいないんだからな」
イワン「だが誰かがいずれやることだ・・・
0なのか、それとも0に限りなく近いのか、は大きく違うぞ。」
センチネル「そんな危険な賭けで地球を危機にさらすわけにはいかん・・・!
我々が宇宙についてあれこれ議論するのは、ちっぽけな細菌が冷戦を議論するのと等しい。
そして細菌がいくら束になってかかっても核ミサイルを止めることはできない。」
イワン「だからオレたちスパイを使って他の惑星の軍事技術を盗ませ、自分の星にだけシェルターを造って逃げるのか?
彼女は言っていた・・・小さな世界にも尊い宇宙は広がっていると・・・」
センチネル「・・・・・・。」

笑うアラゴ「ははは・・・!」
驚く首脳たち
アラゴ「あんたは汚染された地球の地下で未来永劫モグラのように生きていくつもりか?
どのみち遅かれ早かれ人類は絶滅するぞ・・・」
立ち上がるアラゴ「オレはピカールのオヤジに賭ける。
冥王星人は嫌いだがな」
ピカール「どうも・・・それでは大統領、ここはひとつ投票と行きましょう・・・
地球は自由と民主主義の星でしょう?」
センチネル「・・・・・・。」
ピカール「投票のタイムリミットはライトくんが太陽を折り返すまで・・・
それまでに結論がまとまらなかったら・・・」
アタッシュケースのスイッチを指差すピカール
「このスイッチを押して、ライトくんに太陽系ごと凍らせてもらいましょう・・・」
センチネル「・・・地球はテロリズムに屈しない・・・!」
ナッシュ「お前がオレたちテロ組織を作ったんだろうがバーカ」
椅子に座るピカール「さあ宇宙の運命を決めようじゃありませんか・・・!」

イワン「ミグ・・・」
ミグ「はい・・・」
イワン「神はサイコロを振ると思うか・・・?」
ミグ「私は神じゃありません・・・あなたは・・・?」
首を振るイワン「信じるしかないだろ・・・」

『80日間宇宙一周 From Earth with Love』脚本⑬

レース会場
時計を確認して立ち上がるイルミナ「・・・私、そろそろ行きますね・・・」
イワン「レース最後まで見ていかないのか?」
イルミナ「もう十分です。ひと目でもライトくんが見れただけで私は満足だから・・・
賭けはチャラでいいですよ。きっとライトくんが優勝するから・・・」
イワン「そうか・・・これからは?」
イルミナ「何も考えてません・・・広い世界を自分自身の力で生きていくつもりです。
あなたが自由をくれたから・・・」
イワン「そうか・・・」

惑星連合放送
「実況の途中ですが、ここで臨時ニュースです!
現在火星で行われている宇宙サミットが二人のテロリストに占拠されました・・・!
現地警察の発表では、実行犯は冥王星の退役軍人ナッシュ・ストライカーと
太陽系科学学会のトリエステ・ピカール博士で、彼らは軍や警察の制止を振り切り会場にいる惑星連合の首脳陣を人質に・・・」


イルミナ「え・・・?」
イワン「・・・あれは・・・!!」

モニターに結晶化した警備員の死体が映る。

イルミナ「そんな・・・生物兵器のストックはないはずなのに・・・!」
イワン「だがあった・・・!」
逃げ出そうとするイルミナ
イワン「待て!!」
イルミナの背中に銃を突きつけるイワン。
立ち止まるイルミナ
イルミナ「銃・・・持つようになっちゃったんですね・・・」
イワン「この前ピカール博士が面会に来ただろう?何を話した?」
イルミナ「私の研究は素晴らしいって・・・宇宙の運命を変える力だと・・・」
イワン「それだけか!?彼に残りの生物兵器の場所を教えたんじゃないのか!?」
イルミナ「そんなこと知りません・・・!!」
イワン「いい加減本音で話したらどうだ!?キミは一体何を企んでいる!?」
声を荒げるイルミナ「撃つなら撃ってよ・・・!!!」
イワン「!」
イルミナ「まだ・・・まだ私のことを信じてくれないんですか・・・?」
イワン「・・・・・・」
振り返るイルミナ「ウェイドさんは口では信じるって言いながら、いつも言葉の裏を探ってばっかり・・・
最後の最後で、いつも人を信じることから逃げてしまう・・・
私の言葉が嘘に聞こえるのは、あなたが私に嘘をついているから・・・!
さあ本音を聞かせてください・・・」
イワン「・・・・・・」
涙を流すイルミナ「私は無罪なんですか?それとも犯罪者??」
考え込むイワン
何かに気づく
イワン「・・・ちょっと待て、キミはどこでその生物の研究を行ったんだ・・・?」
イルミナ「公的な研究施設です・・・地球連邦の・・・」

ケプラー「人の人気と一緒だイワン。
何か重要なものがあると思って蓋を開けたら中身は空っぽなんてことはよくあるもんだ。
思い込みってやつはそれだけ強大だ。
世界を動かしているのは案外そんなものなのかもしれない・・・」


イワン「!やられた・・・!」
イルミナ「え?」
イワン「オレは自分自身で勝手に架空の筋書きを書いていたんだ・・・!」

コーエン「気をつけてくれ、ウェイド!我々の敵はあまりに強大だ。」
ブレイズ「今どきデータ通信なんてなにをやっても傍受されちまうのに・・・」


イワン「なぜコーエンが簡単に傍受される通信回線を使ったのか・・・
それがあいつからの最大のヒントだったんだ。
不可能だからだ・・・!なぜならオレたちの敵は宇宙最大のスパイ組織・・・」

銃声
背中から撃たれるイルミナ
観客が絶叫する。
イルミナに駆け寄るイワン「ヴェルヌ博士!!」
銃を構えるフレミング「やっと見つけたぜ・・・」
イワン「そうか・・・オレも腕が落ちたもんだ・・・
この無差別バイオテロはハナからTIAと地球連邦が仕組んでいたんだな・・・
サーペンタリウスのテロのお膳立てをして、連中を壊滅させる口実をでっち上げるってわけか・・・
オレたちのやり方は昔から全く変わってないってことだな」
フレミング「世論を味方につければ戦争くらいわけはないからな」
イワン「これでまた出世か。コーエンを殺したのもお前の仕業だな」
フレミング「上の命令でな。
宇宙サミットまでにサーペンタリウスを知る者は殲滅しろとさ。」
イワン「実体のない組織を作り、汚れ仕事を押し付けた挙句、用が済んだらそのまま消しちまうのか。どうせ地球連邦が隠蔽したい情報でもあるんだろう・・・」
フレミング「まあ、そんなところだ」
血を流して倒れているイルミナを見るイワン「・・・・・・・。」
フレミング「・・・よくやってくれたウェイド。
お前のおかげでブレイズもロッソも・・・そしてヴェルヌすら始末できた。
残りはあのピカールだけだ。さあ本部に戻ろう」
イワンに背を向けるフレミング
イワンを見つめる死にかけのイルミナ「・・・・・・。」
イワン「・・・・・・。」

フレミングの後頭部に銃を突きつけるイワン
フレミング「おいおい・・・どういうつもりだ?」
イワン「スパイがテロ計画を聞いて黙っているわけにはいかないだろ。
ピカールに言って計画を中止させろ。」
フレミング「お前は何もわかっちゃいない。これは高度に政治的な問題だ・・・」
イワン「無差別テロも国家のためか?
オレたちの仕事はいつもこんなことばっかりだ・・・いつまで繰り返す??
オレたちは一体“何と”戦っているんだ?」
フレミング「冷静になれウェイド・・これは世界を守るために必要なことなんだよ・・・」
引き金に指をかけるイワン「そんな世界じゃ不十分だ」
フレミング「またコインで決めるのか?」
イワン「いや・・・。
自分の意志だ」
引き金を引くイワン。

瀕死のイルミナ「ウェイドさん・・・」
イルミナを抱きかかえるイワン「もういい喋るな、すぐに医者が来る・・・」
イルミナ「実は・・・私はあなたにひとつだけ嘘をつきました・・・
生物兵器の開発を強要したのは地球連邦軍なんです・・・
彼らは私の両親を殺してジオメトリカルホウサンチュウを遺伝子操作させた・・・」
イワン「なぜ地球連邦がそんなことを・・・」
イルミナ「地球を救うシェルターを作りたいから・・・」
イワン「シェルター・・・?」
イルミナ「すべてはピカール博士が知っています・・・
お願い・・・宇宙を・・・ライトくんを守って・・・」
弱っていくイルミナ「う・・・」
イワン「しっかりしろ!」
首を振るイルミナ
イルミナ「もういいんです・・・ありがとう・・・私は十分幸せでした・・・
最後の最後にあなたに暗く深い海の底から救ってもらえた・・・」
イワン「私はいい人間じゃない・・・刑務所からキミを自由にしたのはキミを・・・」
微笑むイルミナ「・・・最初から分かってましたよ・・・あなたはスパイなのに嘘が下手ですね・・・」
イルミナの手を握るイワン。
イワン「この仕事はもう引退だな・・・」
微笑みながら目を閉じるイルミナ
静かに息を引き取るイルミナ「大事に生きて・・・」

『80日間宇宙一周 From Earth with Love』脚本⑫

ライトのピット。
TIAのフレミングもいる。
ミグに挨拶しようとするフレミング「私はTIAの・・・」
ゲオルグ「挨拶はいい。説明してやれ」
会場の見取り図を広げるフレミング「脱出ポッドの微弱な信号をこの会場でキャッチした。
つまりこの会場のどこかにウェイドとヴェルヌはいる・・・」
ミグ「なぜレース会場に・・・」
フレミング「ライトへの復讐だ・・・!
彼女は自分を刑務所に入れたライトに残酷な死を与えようとしている!」
ミグ「でもテロ計画の情報をライトにリークしたのは彼女自身じゃ・・・」
フレミング「彼女は彼に一緒に逃げて欲しかったとしたら・・・?」
ミグ「え・・・?」
フレミング「ヴェルヌは幼い頃からライトに好意を抱いていたらしい。
しかしライトは彼女を相手にすることもなく、警察に突き出してしまった・・・」
ゲオルグ「女の恨みは恐ろしいからな・・・」
フレミング「それに彼女は宇宙一知恵が回る・・・」
ミグ「しかし彼女はライトにどんな復讐を・・・」
ゲオルグ「それはこの公爵閣下が説明してくれる。」
テーブルに自然科学の雑誌や図鑑、論文を置くルヴェリエ。
ルヴェリエ「イルミナ・ヴェルヌ博士の論文を読んだことがあるんです。」
ページをめくるルヴェリエ
「これです・・・」
論文にはとある微生物の顕微鏡写真が載っている。



観客席
イルミナ「私は知らなかった・・・この小さな世界は私だけのものだと思っていたから・・・
でも・・・そうじゃなかった・・・」
イワン「キミはその顕微鏡で・・・一体どんな世界を覗いてしまったんだ?」
イルミナ「ジオメトリカルホウサンチュウ・・・」
イワン「ジオメトリカルホウサンチュウ・・・?」
イルミナ「私が見つけた、宇宙でもっとも神に近い生き物・・・
オリハルコンの結晶で出来ていて、熱エネルギーを瞬時に代謝と自己増殖に用いてしまうんです。
一切の老廃物もなし。エネルギー変換効率は100%。」
イワン「だからあの時、ピストルを撃ったスタッフが結晶化して殺されたんだ・・・
・・・つまりそれは超小型の反応炉みたいなものじゃないか、バイオテロにはもってこいだ」
イルミナ「どれくらいの熱で反応するかは種類によって決まっているんですが、遺伝子操作を施せば太陽の中心温度にも、人間の体温を好むようにも作り替えられる・・・」
イワン「なんて恐ろしいものをキミは作り出してくれたんだ・・・」
イルミナ「作ったのは私じゃありません。もともと太陽系にいた生物です。
私はただそれを研究しただけ・・・」
イワン「だが、結果的にキミはそれをテロリストに流してしまったことになるんだぞ。
人類を滅ぼしかねない神の力を・・・」
イルミナ「知らなかったんです・・・この技術は平和利用されると思っていたから・・・」
イワン「・・・ライトにもそう言えるのか?」
イルミナ「・・・・・・」



ピット
ミグ「熱エネルギーをオリハルコンの結晶に変える生物・・・」
ゲオルグ「知ってるのか?」
ミグ「い、いえ・・・」
ルヴェリエ「つまりこの生物は熱を与えれば、与えた分だけ増殖してしまうんです。
強力な熱を与えたら、その暴走はもう止められない・・・」
ミグ「でもこの生物兵器は地球連邦がすべて差し押さえたんじゃ・・・」
フレミング「盗まれたんだ・・・」
ゲオルグ「なんだって!?」
フレミング「サーペンタリウスに・・・
それで我々TIAはサーペンタリウスを急遽リストのトップにおいて、マークしていたんだ」
フレミングに殴りかかるゲオルグ「揃いも揃って貴様ら地球連邦はバカばかりかー!!
ゲオルグを取り押さえるミグ「け・・・警部落ち着いてください・・・!
ルヴェリエ「今この人を責めてもどうにもならないですよ・・・!」
息を整えるフレミング「ヴェルヌは刑務所でピカールにライトへの復讐を持ちかけられたに違いない・・・ヴェルヌはライトの最大の晴れ舞台で復讐を完遂させる気だ・・・」
ミグ「最大の晴れ舞台・・・」

ハッとするミグ「もしかして・・・いや馬鹿な・・・」
ゲオルグ「なんだ?」
ミグ「太陽・・・
このレースの折り返し点は太陽だった・・・!」
ゲオルグ「太陽なんかにあの生物兵器を撒かれたら・・・!」
ルヴェリエ「太陽の熱エネルギーはすべて物質に置き換わって・・・」
ミグ「太陽系は滅びてしまう・・・!!
つまり生物兵器が仕掛けられた場所は・・・
ライトアロー号・・・リニアエクシードエンジン・・・!?」
フレミング「ヴェルヌはライト自身をテロの実行犯にするつもりなのか・・・!」
ゲオルグ「すぐにレースを中止させろ!」
ミグ「で・・・でもあのエンジンに生物兵器があると決まったわけじゃ・・・」
ゲオルグ「ああ!?お前何言ってる!これは太陽系の危機なんだぞ!!
とっととライトのバカに運動会は終わりだって言っとけ!!」
ミグ「・・・・・・。」
ゲオルグ「フレミング、あんたらはすぐに会場の二人を見つけ出せ!
生物兵器の弱点を聞き出すんだ!!」
TIAのエージェントたちと共にかけていくフレミング。
無線を持って立ち尽くすミグ。
ゲオルグ「なにをぼさっとしてるチオルコフスキー!お前がやらないならオレから言う!
貸せ!!」
ミグ「いえ・・・私から言います・・・」
ルヴェリエ「ミグさん・・・」



太陽へ一直線に進んでいくレーサーたち。
ライトアロー号のコックピット
ミグ「・・・ライト、聞こえるか?」
ライト「ああ、ミグ。どうした?」
ミグ「今から私が言うことを信じて聞いて欲しい・・・」
ライト「ええよ。何?」
ミグ「レースを中止してくれ」
ライト「またかい!!!
あんな・・・今度はどこに爆弾があんねん!」
ミグ「キミの機体だ・・・!それも今度は太陽系を滅ぼしかねない生物兵器だ!」
ライト「生物兵器ってなんやねん・・・」
ミグ「それは・・・その・・・キミの・・・」
ライト「イルミナか」
ミグ「え・・・?」
ライト「天王星のこと誰かに聞いたんやな・・・
言っとくけどイルミナはテロリストなんかちゃうぞ。
生き物を愛する優しい女の子や!」
ミグ「しかしキミを恨んでた・・・!キミは・・・
キミは・・・彼女の遠くへ行ってしまったから・・・」
ライト「・・・・・・。」
ミグ「その生物兵器が太陽の周りでばらまかれたら、太陽の熱は全てクリスタルになってしまうんだ。頼むライト・・・もう一度私を信じてくれ・・・!」
ライト「・・・それは直接イルミナに確認したんか・・・?」
ミグ「え・・・?」
ライト「オレは信じへんぞ!
イルミナはそんなことするような子じゃ絶対にない!!」
ミグ「だが・・・!!」
ライト「今度はオレを信じろミグ!!」
ミグ「ライト・・・」
無線が切れる。
「電波射程圏外」の表示
ミグ「ダメだ・・・」
ルヴェリエ「そんな・・・!」



火星の宇宙サミットの会場――ウェルズ議事堂。
会場の前に高級車が止まる。
車から降りるアタッシュケースを持ったスーツの男。
銃を持った警備員「失礼ですが・・・」
ピカール「太陽系科学学会のトリエステ・ピカールと申します。
惑星連合の皆さんに至急お伝えしたいことがありまして参りました。」
警備員「しかし名簿にない方を通すわけには・・・」
ピカール「宇宙温暖化問題ですか・・・けっこう。
しかし、そんなくだらない政治的駆け引きよりも、もっと深刻な危機について彼らには考えてもらわねばなりません。」
警備員「え?」
警備員に銃を突きつけるナッシュ・ストライカー軍曹「オレたちの宇宙は本当に滅びるんだよ」
異変に気づき集まってくる会場警備の警察や軍隊。
銃を突きつける特殊部隊「そこの二人!おとなしく手を上げろ!!」
ピカール「軍曹、ここは頼みます。」
ナッシュ「わかった。」
会場に入っていこうとするピカール
特殊部隊「動くな!!」
ナッシュ「撃つのか・・・悪いことは言わん。やめといたほうがいいぜ?」
特殊部隊「勝てないぞ!こっちは大勢だ!!」
ナッシュ「じゃあやってみろ」
特殊部隊が発砲する。
その瞬間彼らの武器が結晶化していく
「なんだ・・・!!?」
「撃て!!撃ちまくれ!!!」
集中砲火を浴びるが、すべての銃弾がナッシュに届く前にオリハルコンになってしまう。

くるりと向きを変え扉の方へ歩いていくナッシュ。
ナッシュの背後には結晶と化した警察、特殊部隊・・・そして戦車や装甲車が、まるで時間が凍ったかのように並んでいる。



宇宙サミットの会場に入ってくるピカール
円卓には各惑星の首脳が席についている。
スタッフ「なんなんだ君たちは!!」
アタッシュケースを持ち上げるピカール「宇宙の未来について話に来ました」
秘書官たち「ふざけるな!!」
ナッシュ「ふざけてるのはてめえらの方だろ。誰ひとり宇宙の未来なんか考えちゃいねえ。
ただの利権じゃねえか」
秘書官「なんだと・・・キミ達、口の利き方に気をつけたまえ・・・!」
ナッシュ「お前と話したいわけじゃねえよ。オレたちが用があるのはそっちの・・・」
ンゴロ・アルベド議長(木星のトップ)「わかった・・・聞こう・・・」
ナッシュ「話がわかる政治家もいるな。」
席を持ってきて勝手に座るピカール「では失礼して、会議に参加させてもらいますよ・・・」
アラゴ国王(海王星のトップ)「またあんたらかよ・・・俺たちを人質にして今度は何をしたいんだ?」
ピカール「いえ・・・我々の人質はあなたがたではありません・・・」
アタッシュケースを開けるピカール。
ケースの中には何かの起動スイッチが入っている。
ピカール「我々の人質は太陽系全土です。あなたはお分かりですよね?
・・・地球連邦大統領、ハワード・センチネル閣下・・・」
ハワード・センチネル大統領「・・・・・・。」

『80日間宇宙一周 From Earth with Love』脚本⑪

惑星連合放送の中継衛星
オフィスで惑星連合放送の役員会議が開かれている。
ハル・ケプラーが役員たちにプレゼンをしている。
ケプラー「いいか、我々が忘れちゃいけないのは、報道は真実じゃない、娯楽だってことだ。
それを間に受けて真剣に議論をしている救いようのないバカがいるからオレたちはメシが食える。
勘違いするな、オレたちにとって重要なのは、その情報が真実かどうかじゃない。
“視聴者が見たいものを見せてやる”ってことだ。
いかにして無知で、無教養で、忍耐力のない、移り気な視聴者の心をつかむかだ。
虚構こそ今や真実(リアル)なのだ」

役員会議が終わる。
イワン「連中いい顔をしていなかったぞハル」
振り返るケプラー「ふん偽善者共が・・・
で?今日はどうした?なにか面白いネタでも持ってきたのか?」
イワン「その逆だ・・・どこか二人で話せないか?」
ケプラー「オフレコか?」
イワン「ああ。ここに来たことはTIAには知らせないで欲しい。
最近上の連中がオレのやり方が気に入らないらしくてな・・・
情報管理もずさんだし、足引っ張ってばっかりなんだよ」
ケプラー「わかった。オレのオフィスでいいか?」
イワン「すまない」

ケプラーのオフィス
豪華なソファーに座るケプラー
ケプラー「サーペンタリウスに関しては我々は実態がある組織じゃないと踏んでいる。
惑星連合を裏で操っているのがサーペンタリウスとか・・・その手の陰謀話はいくらでもあるが、それは逆に言えば、いくらでも作れるってことだ。
これまでオレたちがネタにしてきた多くの秘密結社と同じく、結局は絵にかいた餅なのさ・・・」
ケプラーにウォッカを注いでもらうイワン「それは、テレビ屋の勘か?」
ケプラー「いや長年の経験に基づく確信だよ・・・
人の人気と一緒だイワン。
何か重要なものがあると思って蓋を開けたら中身は空っぽなんてことはよくあるもんだ。
思い込みってやつはそれだけ強大だ。
世界を動かしているのは案外そんなものなのかもしれない・・・」
イワン「本当に?本当にそれだけなのか?
我々の世界はもっと具体的な危機に瀕しているとは考えられないか?」
ケプラー「なるほど・・・確かに恐怖は金になる。
小惑星の衝突、ブラックホールの接近、太陽フレア・・・ガンマ線バーストなんてのもあったな。
どいつも結局は世界の滅亡には役不足だったが・・・そんなのはどうでもいい。
重要なのはそういった恐怖の存在は、大衆が自分自身で作り上げているってことだ」
イワン「小惑星は何度も衝突しているぞケプラー。実際に海王星では・・・」
ケプラー「ああ、そのとおり。だが先月の木星の大地震でかき消されたな。
今回の宇宙温暖化はさらにいい。
つかみどころがない上に、業界団体という視聴者が叩きやすい敵がいるからな。
どんなに被害が甚大だろうと自然災害には“敵”はいない・・・」
イワン「・・・そういえば宇宙サミットはいつだ?」
ウォッカを飲むケプラー「来週だ。コズミックグランプリの最終戦と同じ日さ。」
グラスを置いて立ち上がるイワン「・・・ありがとう」
ケプラー「あんたも気をつけろよ。情報は利用するためにあるんだぜ」
イワン「肝に命じる」



レース会場
実況「いよいよコズミックグランプリの第5戦がはじまります!
初戦で最下位だったライト・ケレリトゥスが驚異の追い上げを見せた本レース、
ついにルナ・マイヤースとライト・ケレリトゥスの一騎打ちになりそうです!
オッズはマイヤースが1番人気、ライトは3番人気です!
最終戦はコースが大幅に変わるんですよね。一体どんなレースなんでしょう?」
解説「はい、火星から太陽までを回る星間コースになっています。
その距離は8億キロ。太陽の引力を利用してうまくスイングバイできるかが勝負の鍵となりそうです。」


満員の観客席
飲み物を持ってくるイワン「ライトは勝ち進んだな」
楽しそうなイルミナ「ええ・・・ライトくんはすごい・・・」
イワン「ああ、あいつはすごいやつだ・・・(飲み物を渡す)」
イルミナ「ありがとうございます」
席に着くイワン「どうやら尾けられてはないようだ・・・」
イルミナ「いつもそうやって後ろを気にして生きているんですか?」
イワン「弁護士も敵が多いのさ・・・」
イルミナ「大変な職業なんですね・・・」
イワン「私も宇宙を飛び回り、いろいろな人物に会って、いろいろなものを見てきた・・・
いや・・・見すぎたのかもしれない・・・」
イルミナ「・・・・・・。」
コインを取り出すイワン「・・・だから、ほとほとこの仕事が嫌になってね、
コインに自分の人生を委ねることにしたのさ・・・」
悲しそうにイワンのコインを見つめるイルミナ
イワン「・・・どうだ賭けをしないか?」
イルミナ「え?」
イワン「このレースで誰が優勝するか」
微笑むイルミナ「私はライトくんに全額ベットしますよ」
イワン「君の肝っ玉には負けるな。」



ライトのピット
ライトとクルーとミュウが打ち合わせをしている。
クルーチーフ「いいかライト。このレースで一着になれば優勝できる。
お前をさんざバカにした連中に目にもの見せてやれ」
ライト「おう、任せとけ」
ミュウ「それに・・・彼女に優勝カップをプレゼントするんでしょ」
ライト「ああ・・・」
ピットにミグを連れてくるミュウ。
ミグ「ライト・・・」
ライト「ミグ、行ってくるからな」
ミグ「待ってるから・・・」

ライトアロー号のコックピットに乗り込むライト。
それをピットから見つめるミグ。



レースがスタートする。
エンジンを起動させるライトたちパイロット。
各機が太陽を目指して勢いよく飛んでいく。
大歓声の観客席
身を乗り出すイルミナ「すごい、すごい・・・!
私一度でいいからレースを生で見たかったんです」
イワン「キミのライトがトップだぞ。これは賭けはキミの勝ちかな?」
笑うイルミナ

イルミナ「・・・今でも私を無罪だと思いますか?」
コインを指で弄るイワン「ああ・・・それにキミはもう死んだ・・・
外の世界で自由に生きればいいさ・・・」
複雑な表情のイルミナ「自由・・・」
イワン「・・・」
イルミナ「そういえば、ライトくんはいつも自由だったな・・・」
イワン「ライトとは・・・?」
イルミナ「幼馴染だったんです。
・・・幼い頃は二人ともおとなしい子供で、よく一緒に遊んでいました。
今では想像もつかないと思いますけど、ライトくんままごとしてたんですよ?」
イワン「はっはっは・・・」
イルミナ「でも・・・私と違って、あの人はどんどん世界を広げていった・・・
気づいたらライトくんはずっと遠くへ行ってて・・・
私に残ったのは・・・私だけの・・・小さな世界」
イワン「・・・・・・。」
いじらしく微笑むイルミナ「知っていますか?宇宙は私たちのごく身近なところにもあるんですよ?
顕微鏡と望遠鏡・・・覗いているものは違うけれど・・・
そこに広がる世界は間違いなく宇宙なんです。」



宇宙ロケットが次々に火星の軌道を離れていく・・・
ピットでロケットを見つめるミグ。

係員「ちょっとここは関係者以外立ち入り禁止ですよ!!」
ゲオルグ「うるせえ!どけ!!」
係員を蹴散らしライトのピットに入ってくるゲオルグ。
ミグ「ゲオルグ警部!?」
ゲオルグ「ミグ!?ライトはどこだ!!」
ミグ「もうレースは始まっちゃいましたよ・・・」
ゲオルグ「くそ!!」
アリエルとルヴェリエも入ってくる。
ルヴェリエ「大変なんです!」
ミグ「ど・・・どうしたんですか??」
ゲオルグ「トランキュリティからヴェルヌが脱獄した!
ウェイドを人質にこの星に逃げたらしい!」
ミグ「え・・・!?」

『80日間宇宙一周 From Earth with Love』脚本⑩

月面
トランキュリティ刑務所があった場所はクレーターになっている。
クレーターの上空を旋回する宇宙船。
イワン「あそこだ・・・」
宇宙船のアームでクレーターから球体を掘り出しコンテナに回収する。
フレミング「怪物は核爆発でも焼けなかったわけか・・・」
イワン「彼女自身が内側からさらに球体を強化したんだろう。
それと・・・ボイスレコーダー役に立ったよ」
フレミング「TIAお手製の超小型ジャミング装置だ。監視カメラを狂わすくらいわけはない」

宇宙船の格納部
コンテナにある球体
球体に近づくフレミングとイワン。
フレミング「しかしこれは危険な賭けだったんじゃないのか?」
イワン「まあね・・・」
フレミング「ったく、なんでもかんでもコインで決めやがって・・・
さて・・・核でも破壊できないこのボールをどうやって割る?」
ガラスが割れるような音
「!」
後ろの球体からイルミナが出てくる。桎梏がすべて外れている。
イルミナ「これはガラスじゃないんです。
オリハルコンの結晶・・・私の作品・・・」
イワン「出る気になればいつでも出られたんだな・・・」
首を振るイルミナ「いいえ・・・例え球体から出ても、核ミサイルで焼かれてました・・・」
イワン「だから早く死刑に・・・」
フレミング「はめられた・・・!」
イルミナに銃を向けるTIAのスタッフ。
イルミナ「私を救ってくれるんじゃなかったんですか?弁護士さん・・・」
イワン「やめろ撃つな!」
スタッフの一人がイルミナに向かって発砲する。
その刹那、ピストルの熱エネルギーが一瞬のうちにオリハルコンの結晶に変わってしまう。
ピストルの銃口からどんどん結晶に変えられていくTIAのスタッフ
悲鳴を上げるスタッフ「ぎゃあああ!」
結晶になって砕け散ってしまう。
イルミナ「かわいそうに」
フレミング「なんてこった・・・」
イワン「球体が割れて彼女の作った微生物がばらまかれたんだ・・・」
ゾッとする笑みを浮かべるイルミナ「それではお話の続きをしましょう、ウェイドさん。
私とあなた・・・ふたりっきりで・・・」
フレミングたちに目をやるイワン「・・・頼む。」
フレミング「お前・・・殺されるぞ・・・」
イワン「女性には何度か殺されかけているんでね・・・」

宇宙船からイワンとイルミナが乗った小型ポットが発進する。

宇宙船のコックピット。
フレミング「追跡しろ」
オペレーター「TIAの工作船にはステルス機能がついています。
向こうからの信号がなければ追えません・・・!」
コンソールを叩くフレミング「くそったれ!!」



小型ポッド
イルミナ「助けてくれてありがとうございます・・・」
ポッドを操縦するイワン「・・・で、どこへ連れてって欲しいんだ・・・?」
イルミナ「火星のコズミックグランプリの会場へ・・・」
イワン「一体何を企んでいる?キミの目的は何だ?」
微笑むイルミナ「一度でいいからライトくんのレースが見たかった・・・それじゃダメですか?」



火星
レッドシグナル空軍基地
滑走路にリンドバーグ号が運び込まれる。
油まみれになってリンドバーグ号にエンジンを取り付けるゴダードとライト。
その様子を頬杖をついて見つめるミグ。
青い空と太陽。ゆっくりとした時間が過ぎていく。

ダグ「面白いことやってるじゃないかヘルマン」
振り返るライト「あ、来てくれたんか!」
リンドバーグ号に二人の老人が近づいてくる。
クーラーボックスからビールを取り出し放り投げるダグ・リリエンタール「ほれ冷えてるぞ」
ビールを受け取るゴダード「早いじゃないか」
アロハシャツのダグ「新しいおもちゃがあるって聞いたら、いてもたってもいられなくてな。
どのみち息子の家じゃ居場所がないよ、ようライト」
翼から降りてくるライト「ダグ・・・!
超光速ロケットの構造的な計算ができるのは宇宙でもあんたしかいない」
ニヤリとするダグ「オレもそう思う。で、そこの美人は?」
ミグ「は・・・はじめまして、ミグ・チオルコフスキーです。よろしく・・・」
ダグ「リリエンタールだ、よろしく。おっぱい触っていい?」
ライト「お前もか!!」
ロン・クーロン「わたしはロン・クーロン。おっぱい触ってもらっていい?」
ライト「帰れ!!」

滑走路のアスファルトの上にチョークで数式を書くダグ。
ダグ「25年前にオレたちが作った“Xー零”の原理は量子力学の応用だった。
つまり、物質を原子核の密度にまで圧縮させ、それによって発生する衝撃波を利用して光速の3分の2まで速度を出すことに成功したわけだ」
ライト「イエガーがアルファケンタウルスまで行った伝説の機体やな」
勢いよく数式を書いていくダグ「だが今回のエンジンには全く違う理論を応用させる。
具体的に説明しよう。光速度不変が成り立つのはあくまで4次元の話であって、それは特殊相対論を成立させるための前提に過ぎない。
現在の物理学は光を基準に理論を構築しているから、当然光の速さは越えられないわけだ。
しかし・・・収縮してしまっている残り9つの次元を広げれば光だって超えられる。
ここまではわかるな?」
頷くライトとゴダードとロン。ミグだけはさっぱり理解できない。



滑走路
豪音と共にエンジンに火がつく。
コックピットのライト「どうや?」
機体から離れたテント
コンピューターシミュレーションを確認しながら首を振るゴダート
ヘッドセットを外す「まだまだだな・・・もう一度調整してみるぞ」
ライト「わかった」

格納バンカーにはリンドバーグ号のコックピットから取り外された電子機器のパーツが転がっている。
作業台で電気系統をつないでいくロン
ロン「しかしあの頃の地球連邦軍は羽振りが良かったなあ・・・」
後ろのホワイトボードで計算式を書いているダグ「いうな、クーロン」

バンカーに入ってくるミグ「お疲れ様です」
ロン「ああ、チオルコフスキーさん・・・」
ミグ「なにをしているんですか?」
ロン「航法システムの回路をつないでおるのです・・・
わたしは電気屋でね・・・ライトくんには昔からひいきにしてもらってます。」
作業台のパーツに目をやるロン。
ロン「さて、宇宙ロケットの進歩を影で支えたのは、このアビオニクスであります。
超高速で宇宙を飛ぶロケットの速度は、人間の感覚では処理しきれない。
従いまして、電子的な演算でパイロットにもわかるように尺度を落とし込む(ダウンサイジングする)わけであって・・・」
ダグ「よせよクーロン、彼女がキョトンとしてるじゃねえか。
もっとわかるように言わねえと、女にモテないぞ」
ロン「じゃ、任せる。」
ダグ「あんたの星にマトリョーシカっておもちゃがあるだろ。つまりはあれさ。
ショベルカーのアームで砂粒一つはつまめないが、徐々にアームのサイズを小さくしていけば、砂粒を一つずつつまんで移動させることだってできるよな?
ようはそういうことだ。天文学的なスケールのものを人間のサイズに落とし込む、そしてその逆をも可能にするのがクーロンの仕事さ。」
ミグ「ありがとう、よくわかりました・・・」
ダグ「まあ、普段はハイビジョンテレビ売ってる電気屋だがね」
ロン「うるさいぞ」




滑走路に改造されたリンドバーグ号・・・ライトアロー号が置かれている。
ライトアロー号を見上げる一同。
ライトに最後の確認をするゴダード「まずは光速の1000分の1からだ。
レースごとにリニアエクシードエンジンの様子を見て、徐々に最高速度を上げていけ。」
ライト「マッハ900ってところか・・・わかった」
ミグ「それでレースに勝てるんですか?」
ダグ「ははは!光速度なんて出したら、たった4時間であんたの星を通り過ぎちまうよ!」
ロン「それだけじゃありません。最高出力でこの機体は次元の壁をも破ってしまう・・・」
ゴダード「それは最終戦の切り札にとっておけよライト。
文字通り、光(ライト)になっちまうんだからな。」
ライト「わかっとる・・・」
肩に手を乗せるゴダード「じゃ、レース頑張れよ。」
ライト「ああ、ありがとな師匠」
ダグ「幸運をな」
ミグ「あれ?帰っちゃうんですか??」
ゴダード「オレたちは作るのが好きなんだ。飛ばすのはどうでもいいよ」
ダグ「いや~しかし趣味でプロを超えるってのは気持ちがいいな!」
ロン「いつもの店に行きましょう」
ロンの電気店のバンに乗りあっさり引き上げていく三人
笑うミグ「おかしな人たち・・・」
ライトアロー号に乗り込むライト「さ、ミグ。レース会場に行くで」
ミグに手を差し伸べるライト
ミグ「うん・・・」
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