『マンガはなぜ規制されるのか』

 著者は長岡美幸さん。タイトル通りの本。細かいことは買って読んでもらうとして、とりあえずどこの誰が何のために漫画を規制しようとしているのかというと、どうやら婦人会的な市民団体、PTA、そして警察組織らしい(犯罪者の自宅には大抵漫画があるから・・・)。
 この人たちの共通点って、確固たる正義のイメージがあって、善意でしっかり結束しているようなところだと思う。離合集散を繰り返すようなネット世論?とはそこが違うのかな、と。
 本気で社会をより良いものにするために頑張っているからエネルギーというか本気度が違う。漫画ってどっちかというとカウンターカルチャーというかアングラ的な存在だったわけだし、ぶっちゃければ社会をよくするために存在するような崇高なメディアじゃないんだよ・・・

 さて、漫画の規制の話題ってネット、とりわけツイッターで盛り上がっているけど、ツイッターのどこの誰ともわからない匿名のハンドルのつぶやきがいくら束になってかかろうとも、具体的な政治的運動(=圧力)にはかなわない。
 代議士さんだってネットで悪態ついている匿名の人よりは、直接会って応援してくれる人の声を優先して聞くだろうし。
 一般意志2.0とか言うけれど、やっぱり政治の世界ではアナログ的な人間関係というかコミュニティが強いっていうのがわかる。安倍総理はネットに理解がある政治家って感じがあるけれど、結局はいいように利用しているってだけだと思うんだよ。
 じゃあツイッターで規制反対!って騒いでいる人が、リアルで政治家とコネを作って市民運動にまで昇華できるかというと、それはなかなか難しいと思う。
 政治家と交流しているアニメオタクとかあまり想像できないし・・・いくらかはいるのだろうけれど。
 
 そもそも漫画規制賛成派も反対派も感情レベルでああだこうだ言っている点は見事にどっちもどっちで、漫画文化に興味がない人やそこまで熱くなれない人から見れば引いてしまうのではないだろうか。関わりたくね~って。
 例えば、私も漫画を政府の恣意的な判断で規制するのは、表現の自由を犯すことであって、もちろん反対なんだけれど、「漫画規制しようとするPTAのババアは死ね」とか暴言吐いている人と同じ仲間とは思われたくないよなあっていうのがあるじゃん。

 その上、昨今の橋下市長の「性風俗」の発言を巡る騒動にしてもそうだけど、日本って女性を性の道具にしている変態国家的なイメージが海外にはどうしてもあって、まあ、それはおそらく正しくてそのイメージはなかなか払拭できない。
 ロリコン漫画やアイドル文化にしたって「ジャパンはチャイルドポルノを国家的に容認しているのか!」って欧米の人はドン引きしてるわけで。
 そう考えるとグローバルなクールジャパンの戦略(日本の漫画文化の海外進出)と、漫画のエログロ表現の規制って実はそんなに矛盾もしてない気もする。
 あっちはあっちで意外と合理的なんじゃないかって。ちょっと海外に売るにはエロが過ぎるというか・・・そういう判断なのかもしれない。

 この前、ナドレックさんがおっしゃっていたんだけど、こういう問題ってまず、どういう過程(論法)を踏んで規制しようとしているかを、私たちが冷静に考えることが重要で、漫画は読まないし利害関係ないからいいやって無関心を決め込むと、別の問題の時に泣きを見るよって話なんだよね。
 とはいえ、私たちも日常生活に追われているから、なかなか直接的な利害が起きないと(例えば漁師さんがアベノミクスの影響でオイルの値段が上がっちゃって大変とか)、政治的なことを真剣に考えなかったりする。そこが民主主義の罠というか難しいところだ。

 それに、もしこれで漫画が規制されて、内閣支持率が落ちたらその法律はまずったんじゃないか?ってなるけど、これでたいして支持率が落なかったら意外と漫画が規制された社会になってもキミら順応してるじゃんってことにもなるだろうし。
 騒がなかったら賛成しているのと一緒だよねって判断するからね。マイノリティの意見ってないがしろにされやすいんだ。
 あと、規制されたらされたで、その規制をどうやってかいくぐって面白い漫画を作るか?っていうのに挑戦するクリエイターは絶対出てくるよね。これが通ったら二次元全滅とか言っている人がいるけど、どうだろう?
 まあオタクやファンの人が、自分が愛読していた漫画の作者が逮捕されたとして、その作者のために立ち上がるってことはまず考えられないから、やっぱり作り手や送り手は萎縮しちゃったり、自主規制を繰り返したりはするのだろうけれど。
 ただリアルな話、規制された途端に即全滅はないだろう。
 
 とにかくさ、この前の選挙で与党に自民党を選んだのは私たち国民の総意なんだから仕方がない。自民党政権が漫画を規制しようとしているのは昔から分かっていたはずだ。
 そして何度も言っているように、今の私たちはロジックではなくて、感情レベルで短絡的に物事を判断してしまう。あいつは嫌いとか、あいつは許せね~とか、あいつは許せね~とか。意見が異なる人たちの立場を想像するという発想がない。賛成派も反対派も。
 ならば、主観的だ!と揶揄される今回の漫画規制の法案だって、ある種時代の必然的に生まれたものだってことがわかる。感情論の世界なんだから。

 大体理屈で言えば、過激な漫画と性犯罪の因果関係は分かっていないのに、規制も反規制もないわけだ。もし仮に因果関係が全くないというなら、規制する理由もないし、逆に規制したって問題はないことになる。
 漫画規制反対派の人は、エロ漫画が規制されたら犯罪率は逆に増えるとか言っているけれど、もうロジックとして矛盾していてさ。ちょっと待ってよ、エロ漫画と犯罪は無関係じゃなかったんかいってどうしても突っ込んでしまうよ。因果関係論って都合がいいんだw

 首都大学東京教授の宮田真司(社会学)は、松文館裁判や東京都議会の参考人質疑などで次のように訴えている。
 ○暴力的・性的メディアが受け手を暴力的・性的にするという「強力効果説」は否定され、「限定効果説」が学会の主流。性的メディアが青少年に悪影響を及ぼすという理由で規制するのは科学的根拠がない。(243-244ページ)


 宮台さんの“限定”効果説っていうのは興味深い。つまり効果が全くないわけではないと。でもその効果はあくまでも限定的である、と。これくらいの表現のほうが少なくとも私には信用できる。

 なんにせよ問題なのは、因果関係が立証できないものを規制しちゃえっていう動きであって、それは、私たちが、疑わしきは罰せずの社会か、疑わしきは罰するの社会のどちらを選ぶかで、良いも悪いも変わってくるはずだ。
 そして自民党は疑わしきを罰する、秩序と安全を強く求める社会づくりに舵を切ったんだと思う。ならば漫画規制は自民党のロジックで言えばアリなのだ。
 『学問のすすめ』で福沢諭吉が言っているように、集団がそれぞれ節度を守ってちゃんと生きていれば政府は国民に自由を与えてゆるくなるし、集団がバカばっかだと政府は締めつけを厳しくせざるを得ない。どんな政府にするのかは国民しだいってことなんだろう。

 さらに漫画好きとして知られる麻生太郎さん、漫画が好きなだけあって漫画の影響力の強さも知っている。
 だからこそ場合によっては法規制やむなしと考えているわけで、ここら辺は90年代の会合で、文化事業を担うということで減税措置がなされている出版業界の既得権益に踏み込む発言を麻生さん自身がしているんだよね。
 現在、活字離れや電子出版などで苦しんでいる出版業界がさらに経営レベルで追い込まれてしまう。その包囲網は20年も昔から狭められていたんだ。

美術教育史覚え書き

日本の美術教育の歴史的な流れはおおまかにとらえると

明治時代:臨画中心

大正時代:自由画教育運動

昭和:軍事的な技術訓練的内容。科学的かつ合理的。

戦後:児童生徒中心主義


1871年(明治4年)
日本発の美術教育の教科書『西画指南』
川上冬崖(南画=中国の絵画の画家)がイギリスのロベルト・スコットボルンの著書を翻訳したもの。点、線、形、明暗とかなりメソッドに沿って描き方を教える。

1872年(明治5年)
学制発布=日本の美術教育の誕生。
『図法階梯』
実用主義で、教科書の絵を模写する臨画がメイン。

1885年
文部省に図画取調掛が設置される。
フェノロサ(伝統的な日本画の再興を論じた)岡倉天心(美術評論家)が委員に。

1887年
図画取調掛を改めて、東京美術学校(今の東京芸大)が設立される。

1891年(明治24年)
図画教員の検定試験。鉛筆画だけでなく、毛筆画でも受験ができるようになった。

1897年(明治30年)
フランツ・チゼックがウィーンで児童美術教室を創設。
児童画を美術作品として見なし、子供中心の創造主義美術運動を開始。美術と教育の統合を主張。
子供は視覚よりもイメージを表現。
教師の役割は創造的な雰囲気を作ること。子どもが生まれながらに持つ法則に従って育てる。

1904年(明治37年)
『尋常小学毛筆画手本』『高等小学鉛筆画手本』アメリカのテキストを参考に編集。
子供の心理的発達を踏まえた画期的な教科書。

1905年
ケルシェンシュタイナー『描画能力の発達』
ドイツの教育学者。公民教育、労働教育を提唱。

1910年(明治43年)
『尋常小学新定画帖』(日本発の美術の国定教科書)が刊行。
鉛筆画、毛筆画の区別を撤廃。
小山正太郎が編集。
欧米の図工教育の動向を踏まえて、年齢によって記憶画、臨画、写生、考案画などが教えられる。
山本鼎による自由画教育運動で衰退。

1919年
バウハウス設立
ヴァルター・グロビウスが設置。世界初の本格的なデザイン教育機関。
「すべての造形活動の最終目的は建築である」
芸術(アーティスト)と手工芸(職人)の統合。
教授陣はカンディンスキー、クレーなどの抽象主義の画家

ヨハネス・イッテン
予備課程――材料、テクスチャ、形態、色彩、リズム(ようは造形活動における基礎的訓練)を担当。知識よりも経験を重視。
後にベルリンで私設の芸術学校を作る。

モホリ・ナギ
構成主義の作家。木、金属、ガラスなどの材料を使った立体構成を担当。
シカゴにニューバウハウスを作る)

バウハウスの取り組みを武井勝雄が日本に紹介。
昭和33年にバウハウスの予備課程が「色や形の基礎演習」として中学校指導要領に取り上げられたが、すぐに改訂されてしまい定着しなかった。

1918年(大正7年)
長野県の小学校で山本鼎が講演「自由画教育の奨励」をおこなう。
1919年に「第一回児童自由画展覧会」が開催。
臨画を廃止し児童中心主義を唱える。
技能を軽視、模倣と創造は関連するなどの批判もあり。

1921年
山本鼎『自由画教育』刊行

1925年(大正14年)
岸田劉生『図画教育論』
「真の写実は創造を生む」と、アンチ臨画を批判。
図工の目的は心を育てる徳育にあると論じた。

1941年
国民学校の教科書『エノホン』が出版。(1941~1944年まで)本当に絵しか書かれてない本。
国家主義を強調した教材や軍国主義的教材。愛国心教育。

1943年
ハーバート・リード『芸術による教育』
ユングの心理的類型を用いて子どもの絵を表現ごとに分類。
思考型・・・写実主義、印象派(自然の模倣)
感情型・・・シュールレアリスム(精神性を重視)
感覚型・・・表現主義(個人の感動重視)
直感型・・・構成主義、キュビスム(抽象形態を重視)

1947年(昭和22年)
ヴィクター・ローウェンフェルド『美術による人間形成』
アメリカの美術教育学者。描画の発達段階理論。
子供の描画表現には「視覚型」と「触覚型」があり、その傾向は前写実期から現れる。
視覚型は見たままそのままを正確に再現しようとするタイプ。全体の47%
触覚型は主観的解釈に基づき、情緒的な反応を絵に表現する。全体の23%

1952年
北川民次『絵を描く子供たち』
戦後、久保貞次郎とともに、子どもの想像力と個性の発達を目指す創造主義美術教育運動を全国的に広めた。

1958年(昭和33年)
中学校学習指導要領が告示。
「図画工作」が「美術」と「技術」に分かれる。

美術教育覚え書き

美術教育の意義
①美術の教育(エッセンシャリズム)
美術系学校における専門的な教育。作家や学者を養成するためのもの。
技能や知識の習得、育成。高校からウェイトが大きくなる。

②美術による教育(コンテクスチャリズム)
普通教育において、子供の人格形成や社会的な自立を図るために、美術の活動を手段として用いるもの。小中学校で重視。

一人ひとりの個性や主体性に着目してそれを育成できる教科として美術は重要!
個性とは本来、個人が他者と異なる点すべてを総括したもので、ポジティブな側面だけではない。
個性教育は前提となる学習に対する姿勢や集団学習のルールが学習されていなければ成り立たない!

生きる力
自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力(中央教育審議会答申)

生きる力=確かな学力+豊かな心+健やかな体(平成20年告示、平成23年度から開始の新学習指導要領)

鑑賞教育
美術を通した国際理解。文化の違いと共通性を踏まえて互いに尊重し合う態度。

高校の芸術科・美術科の目標
芸術の幅広い活動を通して、生涯にわたり芸術を愛好する心情を育てるとともに、感性を高め、芸術の諸能力を伸ばし、芸術文化についての理解を深め豊かな情操を養う。

ややこしいけど、心情は“育てて”、感性は“高め”、諸能力は“伸ばす”のね。

美術Ⅰの目標
美術の幅広い創造活動を通して、美的体験を豊かにし、生涯にわたり美術を愛好する心情を育てるとともに、感性を高め、創造的な表現と鑑賞の能力を伸ばし、美術文化についての理解を深める。

美術Ⅱの目標
美術の創造的な諸活動を通して、美的体験を豊かにし、生涯にわたり美術を愛好する心情を育てるとともに、感性を高め、個性豊かな表現と鑑賞の能力を伸ばし、美術文化についての理解を深める。

ⅠとⅡは太字の部分が違うだけ。一年は幅広く基礎的。二年はもうちょい個性を重視して創造的。

美術Ⅲの目標
美術の創造的な諸活動を通じて、美的体験を豊かにし、生涯にわたり美術を愛好する心情と美術文化を尊重する態度を育てるとともに、感性と美意識を磨き、個性豊かな美術の能力を高める。

「美術文化の尊重」と「美意識」って文言があるのはⅢだけ。

高校芸術科の構成
「音楽」「美術」「工芸」「書道」の4つ。中学校美術科と違って工芸分野が離脱する!

美術家は表現分野(絵画、彫刻、デザイン、映像メディア表現)と鑑賞で構成される。

指導内容は「発想・構想の能力」「表現の技能」に分かれる。
日本の美術文化に関する鑑賞の指導を充実させ、従来あった「時代」「民族」「風土」に加えて「宗教」を明示する。

ノーカントリー

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆」

 お前さんの気持ちはよくわかるよ。この国は人に優しいとは言えん。なんとかできると思うなら、それはうぬぼれだよ。

 勧める映画にハズレなしのマロさんおすすめ作品。事の発端はマロさんとのこのやりとり。

 そういえばコーエン兄弟の「ノーカントリー」という映画でハビエル・バルデム演じる殺し屋が人を殺すか迷った時はコイントスで決めているのですが、80日間最終章を読み返していてイワンのコイントスの癖のところでその映画を思い出しちゃいました。

 まあ私もこんなような設定っておしゃれな洋画にありそうだよなって感じで考えたんですが(007にはカジノ=賭け事のシーンが多いし)本当にあったというw
 もちろん偶然だからコイントスに込めた意味合いは異なっていて、私は宇宙の運命をテーマした話ということで、宇宙の多世界解釈や量子力学における確率解釈のメタファーとして、スパイのイワンにコインを持たせたんですよね。
 またスパイっていうのは情報の真偽が命取りになるんだろうけれど、ここまで情報社会になると、もうメディアリテラシーではどうにもならない部分がある。なら最終的な判断は運を天に任せることしかできないんじゃないか、というマクロな諦観・・・あ、これは『ノーカントリー』も一緒かw
 なんにせよ、この映画を私は知らなかったから、個人的にはあの脚本を作る上で「似てるなあ」って思ったのは『フォレスト・ガンプ』だったっていうねw運命は偶然(ガンプのママ説)か必然(ダン中尉説)か・・・という。

 で、『ノーカントリー』・・・これ最後の方までは『ロード・トゥ・パーディション』のような、いかれた殺し屋に追いかけられるロードムービーだよなって思ってたら、最後の最後でガガガって路線変更して、実はテーマはそこじゃないんだよって持っていく。
 ポイントは中盤全く出ない(!)トミー・リー・ジョーンズさん演じる老保安官だ。彼の登場シーンは映画が始まって結構経ってからなんだけど、実は声の出演では一番最初なんだよね。
 つまりあの保安官は、この映画の“語り手”だったわけだ。面白いのは、このキャラは作中ではあまり事件に絡まないで、最後の最後まで傍観者として終わっちゃうという点。
 普通だったら、ジョシュ・ブローリンがやられちゃって、すべてを諦めた老保安官がもう一度立ち上がり、正義の名のもとにあのガスボンベコイン野郎(シガー)を倒すのが脚本の王道なんだけど、このジョーンズ保安官、殺害現場までは行くんだけど、結局シガーを逃しちゃうw

 やっぱダメだ、こえぇってw

 んで、そのまま保安官引退!すげえ!衝撃の展開・・・いや、待てよ。こんなお話どっかで見たぞ・・・『まどか☆マギカ』だ!www
 ほぼ主役を張っていたブローリンさんがクライマックスであっさり退場しちゃって(おマミかw)、ジョーンズ保安官がラストの締めを担当するんだけど、そこで繰り返されるのは「あ~アメリカの南部も変わっちゃったな~」っていうため息wなにしろタイトルが「故郷がない」だもんw
 これまでの価値観とは相容れない、ぶっちゃけ理解不能な殺し屋を相手にしなくなっちゃった保安官の正直な心境=やだなあ。
 これは警察に限らず学校の教員、それもベテランの先生が抱える悩みとも重なるだろう。あれれ、昔のやり方が通用しないぞっていう。
 そう言う意味では、この映画のテーマは『ダークナイト』に近い。そしてさらにリアルな、普通の警察官の心境を代弁したものになっている。

 銃を構えとけ。
 あなたは?
 お前の後ろに隠れる。


 さて、一方みんなに「いかれている、いかれている」って言われちゃう殺し屋シガー。彼は古きよきアメリカを変えていく強大な存在――時代のメタファーだろう。
 ポストモダンという有象無象の不気味でグロテスクで一貫性のないリゾーム。ただ最後にふと見せるシガーの弱さ。実はシガーは理由もなく殺戮を繰り返すような狂気そのものではなかった。もしそうだとしたらコーエン兄弟はシガーにコインを持たせなかったはず。
 つまり冒頭でも言ったように、イデオロギーが崩壊した現代社会を生きる術としてシガーはコインを投げることしかできなかったのではないだろうか。
 だからこそシガーは偏執的と言えるまでにルールにこだわる。

 お前のルールのせいでこうなったならルールは必要だったか?

 決めるのはコインじゃないでしょ。あなただけのはずよ。


 どんなラディカルな人間も、結局ルールからは自由になれない。好き勝手に決めているようでも無意識にルールに操られている。浅田彰さん的には“コード”と言ったほうがいいかもわからないが。
 つまり、なんの理由もなく無秩序に行動することなんて、ポストモダンの権化シガーですら不可能なのだ。
 そう言う意味でラストのジョーンズ保安官の夢の話で終わるっていうのも興味深い。我々は結局、未来が深い闇ではなく、松明の明かりで照らされていることを信じて生きるしかない。
 もっとも個人的には私は、この世界に良いも悪いも、正しいも不正もありゃしないって思っている。だからこそ、だったら、いい方を選んで勝手に考えちゃえと思って生きている(O型ですから)。
 そこらへんはその人の人生観にもよるのだろうけれど、アメリカっていうのはマニュフェスト・ディスティニーとか言うくらいだから、さらに神や運命、先祖が切り開いてくれた歴史に敬意があるに違いない。そんなアメリカの哲学を垣間見せてくれるラストだったのかもしれない。

 ぶっちゃけ難しくてよくわからなかったけど。

 最後に。この映画ではジョシュ・ブローリンさんの声の吹き替えを故・谷口節さんが担当しているんだけど、ジョシュ・ブローリンさんといえば『MIB3』で若き日のトミー・リー・ジョーンズを演じたほど顔が似ている俳優さん。そして声がトミー・リ・ージョーンズさんの吹き替えを多くこなす谷口さん。で、この映画のジョーンズ保安官は別の人、菅生隆之さんがアテレコしてて・・・すごいややこしい。
 ぶっちゃけジョーンズがふたりいる映画に見えちゃったwなら吹き替えで見るなって話なんですが、やっぱり私は谷口ボイスが好きなんで・・・あとシガーの声も良かった。不気味で。

007メモ

 友達の言うように007っていつも大体同じことやってるから、だんだん区別がつかなくなってきた。(特にピアース・ブロスナン作品)というわけで備忘録を少しだけ。

ロシアより愛を込めて
秘密結社スペクターが007を暗殺するべく、ソ連の女性軍人タチアナを利用して彼をロシアにおびきよせる。
実はこの映画を見たのはついこの間なんだけど、悪党に利用されてしまう愛国心のある悲しい女性っていうのが『80日間宇宙一周』の第一作目とすごいかぶってて、そこから最終章のタイトルはこの作品のパロディ(地球より愛をこめて)にすることにしたんだ。
スペクター幹部のソ連のおっかないババアがタチアナに「失敗したら死刑だよ!」と脅すところとか、なんというか暗い冷戦時代を感じさせて切ない。
いろいろな人物に顔が効くトルコ人の諜報員のおじさんがすっごいいいキャラしていたんだけど(マスターキートンで出てきそうなタイプw)列車内で殺されちゃうんだよね・・・

サンダーボール作戦
サメを個人的に飼育している大富豪がアメリカの核ミサイルを強奪、どっかの海底に隠し、各国政府を脅すという暴挙に出た。
なんといってもクライマックスの水中戦がすごい。そして長いw
人気のあるエピソードなのか、ショーン・コネリー、007復帰作の『ネバーセイネバーアゲイン』でもう一度リメイクされている。悪役の雰囲気はだいぶ違ったが。
・・・というか、このリメイク版、なんと若きローワン・アトキンソンが英国領事役としてちょっとだけ出演!すごい事勿れ主義&ドジな人を演じていましたw
でもこの頃はまさか自分が007のパロディ映画をやるとは思ってもなかったんだろうな。
コネリーはこれくらいになるともう髪に白いものが混じっているんだけど、それが『ジョニー・イングリッシュ気休めの報酬』のローワンとすっごい似てて、ローワンがスパイを演じるにあたってコネリーの仕草をすごい研究したことがわかるwもう一度『気休めの報酬』は見るしかないな!
敵は両作品ともラルゴ、とその愛人の女殺し屋。サンダーボールではボンドと寝ても改心しなかった強者ぶりをアピールしていたが(あと峰不二子っぽいw)カーニバルか何かのシーンであっさり銃弾の盾にされて死亡。ネバーセイネバーアゲインはボンドに「私がこれまでで最高の女だった」と署名しなさい!とちょっと可愛いことを強要、最後は万年筆型の爆弾で爆死したw
サンダーボールでは敵の一味の物理学者の先生がラルゴの変態ぶりに呆れて寝返りヒロインを助けてくれるんだけど、あのあと海に飛び込んでどうなんたんだろう??そればかりが心残りだw
それと初期のシリーズでは、黒幕の定番、膝の上で猫がニャーの元ネタが007のスペクターということが分かる。

黄金銃を持つ男
OPテーマ曲が結構好き。友達のフェイバリット作品。
腕利きの殺し屋スカラマンガが純粋にジェームズ・ボンドとどっちが強いか戦ってみたい!と挑戦状を叩きつける、ただそれだけの話wでもシンプルすぎて逆に楽しかった。
なんかビックリハウスみたいな変な島にちっちゃい相棒と住んでいるし・・・w
例のごとくボンドと寝て寝返っちゃったスカラマンガの愛人は、合流場所のボクシングの試合会場でマネキンみたく殺されていた。罪な男やで、ボンド。
今回のボンドガールは助手のグッドナイト。ボンドの助手の女性っていうのも死亡率が結構高いんだけど(サンダーボールとか)今回はメインヒロイン扱い。でもこの女はっきり言ってすっごい仕事ができない無能ガールw
ビキニ姿とかキュートだったけど、こういうタイプは絶対に同性の女性から嫌われるであろうw

リビング・デイライツ
今のところ一番好きなエピソード。スパイに死を!とKGBが00要員を抹殺していく。
敵のコスコフ将軍が、決して強大ってわけではないんだけど、すっごい悪知恵が働くやつで、リアルに賢いのが面白かった。なんというかこの程度の情報戦は絶対リアルでもたくさんあるよなあ・・・という。荒唐無稽な話が多い007シリーズでこういうのは新鮮だった。腹の探り合いというか。
あと敵に殺し屋(役)として利用されたチェリストとのラブロマンスも結構素敵で、この映画で個人的にはジェームズ・ボンド像がなんとなく理解できた感じ(華やかなことをやっていながら心の底では何も楽しんでいない孤独な人)。
ティモシー・ダルトンのボンドって見た目はパッとはしないけど、とにかく優しいんだ。チェロとってきてあげたり・・・

ゴールデンアイ
ピアース・ブロスナン版の第一作。ピアース・ブロスナンは本当ジェームズ・ボンドにはまり役だと思う。甘く端正な顔立ち。あと声が神谷明さん!超かっこいい。
今回からMが女性に変わって「冷戦時代の遺物とか、女性蔑視の恐竜」とか今までのボンドの行いをさんざ言うwでも配属されたばかりなのでMI6セクションのスタッフに敬語で話しているのが初々しい?
Qはいつものデスモンド・リュウェリンさんが続投。「触っちゃいかん!わしの昼飯だ」は爆笑w
ゴールデンアイとはロシアのEMP発生装置付きの人工衛星。それの開発に関わった、すっごいついてなさそうな女性プログラマーが今回のボンドガール・・・でいいのだろうか?セクシーというよりはチャーミングな人で、黄金銃を持つ男のメアリー・グッドナイトに近いwあそこまでバカじゃないけどw
ただアクション映画として大味で戦車を暴走させるシーンはいくら公務とはいえやりすぎだと思うw絶対ボンド楽しんでただろ!(あそこまでやる必要があったようには思えない)
悪役はボンドの元相棒と、めっちゃサディスティックなセックスをするド変態の女殺し屋、あとプログラマーのメガネ(液体窒素で凍った)。
CIAのジャック・ウェイドが初登場(車のエンジンをスレッジハンマーでガン)。あと元KGBのマフィアっぽいおじさん。

トゥモロー・ネバー・ダイ
結構好きな話だったんだけど、意外と興行収入は芳しくなかったようだ。
敵は新聞屋で、相棒となるボンドガールは中国新華社通信の記者。
例のごとく敵の女(つーか奥さん)と寝て情報を聞き出すボンドであったが、やっぱりドクターカウフマンとかいう変な医者に殺されちゃう。
冒頭から中盤まではカーヴァー新聞社のやり方ってすっごい知能的で面白かったんだけど、後半普通のアクション映画になっちゃって、結局私兵を使って戦争やるなら前半の計画とか回りくどくないかって思う。武力を使わずに情報だけで戦争を起こして世界を操るっていうのが魅力だったんだけどね。
ただ脚本の完成度はすごく高くて、中国のスパイとのコンビもなかなか良かった。
ジャック・ウェイドも再登場。空軍機からの降下のシーンで米軍の兵士に混じってました。THEアメリカ!みたいな感じで面白いシーンだったなw(こち亀っぽい)

ワールド・イズ・ノット・イナフ
すっごい複雑な話。石油パイプラインに関わる利権を取り扱っている。
今回は囚われのヒロイン役と黒幕が同一人物だったという異色作。いわゆるストックホルム症候群。それと全く痛みを感じない余命僅かなテロリストが黒幕の恋人役として登場。
この悪役二人の恋愛は結構面白かった・・・けどゴールデンアイから再登場したKBGのおじさんを殺しやがって、流石にボンドも怒って珍しくヒロインを射殺しちゃう。
でも恋愛の暴力性というか狂気みたいなものが感じられて、面白いっちゃ面白かった。
それとサブヒロインみたいな感じで核物理学者の姉さんが出てくるんだけど、ララ・クロフトみたくて、とても学者には見えない。ボンドはとりあえずこっちと寝て落ち着いたというw
前回のクライマックスはステルス船で、今回は潜水艦。どっちも海戦だったんだけど、サンダーボール作戦のオマージュなのかな?
あとこの回で長年ボンドをサポートしたQが引退。Rがあとを継ぐことに。

ダイ・アナザー・デイ
敵が北朝鮮だったw最初にボンドに崖から落とされた北朝鮮の商工のバカ息子が西洋人に顔と身分を買えダイヤモンド商人になっていたという・・・
そのダイヤモンドを使ってゴールドフィンガー氏もびっくりの宇宙レーザー兵器を開発する。まあとんでもないスケールの計画なんだけど、結構あっさりやられちゃったなw
というか筋が前作と比較してかなりシンプルであんま印象に残ってないw
冒頭北朝鮮に拘束、拷問を受けたボンドは、イギリスに生還したあともスパイの資格を剥奪されていたのだが、勝手にスパイ活動やっちゃうのは『消されたライセンス』っぽいw
フェンシングの先生としてマドンナがゲスト出演。
あとMI6の女性諜報員が黒幕に寝返っていたりした。今回のボンドガールはエキゾチックな顔立ちのアメリカのNSAの諜報員。
ラストは墜落寸前の輸送機からヘリコプターで脱出する。絶対無理。

スカイフォール
ダニエル・クレイグってあんまジェームズ・ボンドって感じがしないんだよな・・・なんというか生真面目で。ワイルドでプロの殺し屋には見えるんだけど、ちょっとスケベだったり軽口を飛ばす感じではない。
クレイグ版から007シリーズはリセットされたようだ。M役のおばちゃんだけは続投したようだが。この最新作で殉職しちゃう。Qはメガネをかけたオタク風の若者になってた。
今後007シリーズはどうなるのかな?そういえばアストンマーティンは出てたな。廃車になっちゃったけどw
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