『80日間宇宙一周 From Earth with Love』脚本⑯

太陽系を飛ぶライトアロー号。
これで最後になるかもしれない、馴染みのある惑星たち。
コックピット
ライト「手順はわかっとるな」
ミグ「私は隕石解体のプロだよ?たとえ相手が銀河になろうと変わらんさ・・・」
ライト「・・・怖いか?」
ミグ「怖くないよ・・・
いや、ごめん嘘・・・
でも・・・キミと一緒だから・・・」
にやりと笑うライト「ほんじゃあ、宇宙一周旅行の始まりや・・・!」
スイッチを押す。
リニアエクシードエンジンが起動し、ライトアロー号が徐々に光に変わっていく。
コックピットで手を握るライトとミグ。
すべてが光へ――


虚無


ミグは夢を見た・・・
揺り籠の中にいるミグ
ミグを覗き込む父親と母親
父親「幸せに生きてほしいな」
母親「大切な人に出会ってね・・・」

立ち上がる幼少期のミグ。
屋敷のダンスホールを見渡す。
将校「大変だ・・・チオルコフスキー夫妻が作戦中の事故で亡くなった・・・!」

養父「ひとりぼっちか可哀想に・・・うちにおいで・・・可愛がってあげるから」
養父に手を引かれる少女時代のミグ。

養父に虐待されるミグ。胸に傷を負わされる。
家を裸足で飛び出す。深い針葉樹の森に駆けていく・・・

イワン「この子は私が引き取る。屋敷も買い上げよう・・・」
養父「冗談じゃない!この子はウチの養子だ・・・!!」
養父の腹を殴るイワン
養父「ぐっ・・・!!」
イワン「彼女が受けた傷はこんなもんじゃないぞ・・・」

20歳くらいのミグ。
イワンを屋敷のドアで引き止める「なんで出て行っちゃうんですか!?
私が若いから・・・?」
イワン「いや・・・」
ミグ「じゃあなんで・・・私が嫌いなら理由を言ってください!」
イワン「・・・その傷かな・・・」
ミグ「え・・・??」
イワン「その胸の傷・・・ずっと気持ち悪いって思ってた・・・これでいいか?」

またひとりぼっちになってしまうミグ
デニス「あなたも結婚したらどう?子育てって大変だけど楽しいわよ~」
バーニー「お前はいいよな。両親が早くに死んでよ。こちとら介護で地獄を見てるぜ」

キャロット軍曹「チオルコフスキー!貴様オレが女だからって手心を加えると思っているな!軌道歩兵隊ではそうはいかんぞ!!その胸以上の傷を覚悟しておけ!!」
ナッシュ・ストライカー軍曹「ご両親は残念な事をしたな・・・
しかし我々ディープインパクトの任務は誰かがやらなければならないものだ。
太陽系に住む多くの人たちが安心して眠れるように・・・」

小惑星の上で凍りついていくミグ
ミグ(もう・・・わからない・・・私は一体何のために生きているの・・・??
大切な人なんて誰もいないのに・・・)

ライト「な~んやここ姉ちゃんちか!」
ミグ「え・・・?」
ライト「オレは地球一の天才発明家ライト・ケレリトゥス!
太陽系最速の男や!どうや惚れたか~~!!??」
ミグ(なんだこの人・・・)

軍曹に電気ショック与えるライト「えい」
軍曹「ちんぎゃああああ!」
伸びをするライト「あ~オレもう飽きたわこの星。オレ帰るから」
ミグ「え~~~!」
ライト「夢なんか?地球へいくの。そうだ!オレが連れてったる!」
ミグ「え・・・?」
ライト「次は絶対に地球に連れてったるからな!」

ライト「無理やない!!オレを信じろ!!!!」
ミグ(ライト・・・)
冥王星、海王星、天王星・・・様々な星でのライトの笑顔・・・




何億光年も果の宇宙。
強烈な光を出すフレッドホイル銀河
フレッドホイル銀河が何十億年も前に放射した衝撃波の射程圏内に入るライトアロー号
ライト「・・・グ!ミグ・・・!」
ミグ「ん・・・」
ライト「目を開けろ・・・!おったぞ!!」
目を疑うミグ。
目の前には空間自体をグロテスクにえぐりねじまげる、発光するアメーバーのような巨大な天体が広がっている。
ライト「こいつは・・・銀河やない・・・クエーサーやったんや・・・」
ミグ「クエーサー・・・?」
ライト「やつの心臓はブラックホールや・・・戦うでミグ!準備はええな!!」

機体を安定させるライト
機体に取り付けられた宇宙望遠鏡の映像を送るモニターにターゲットが映る。
実際には機体よりも何億光年も先・・・宇宙の果てにいる怪物
装置を操作して、ジオメトリカルホウサンチュウの入った弾頭を切り離す。
衝撃波の第一波が襲いかかってくる。
コックピットにアラートが鳴りひびく。
メイルシュトローム砲の発射レバーに手をかけるミグ。
ホウサンチュウの弾頭に照準を合わせる。
ミグ「私が撃ったら、すぐに撤退する・・・!」
ライト「任せろ!」
ミグ「カウント3でいくぞ・・・!」
「3」
「2」



「1!!」

目の前が真っ白になり、メイルシュトローム砲が弾頭を貫く。
宇宙にばらまかれたジオメトリカルホウサンチュウがメイルシュトローム砲のエネルギーを喰らい、猛スピードで繁殖していく。そのさまは透明なクリスタルのドームが早回しで建設されていくようだ。
オリハルコンの結晶体はエネルギー砲をつたってライトアロー号にも襲いかかる。
すかさずリニアエクシードエンジンを起動し別の次元に飛んでいくライトアロー号。
次の瞬間衝撃波が襲いかかる。
衝撃波の強大な熱エネルギーはさらにジオメトリカルホウサンチュウのドームに置き換えられていく。
マトリョーシカをしまっていくように、どんどんできるドームの大きさが巨大化していく。
衝撃波が太陽系を襲うたびに・・・

そして・・・





エッジワース・カイパーベルト周辺宙域
太陽系に帰還してくるライトアロー号。
コックピット
無言の二人「・・・・・・。」

窓の外の小さな星を指差すライト。
ライト「あ・・・あれもしかして冥王星ちゃうか?」
ミグ「え・・・?」
身を乗り出すミグ。
かつての自分の星を見てショックを受ける。
ミグ「そんな・・・」

冥王星は氷の惑星に変わっている・・・

ミグ「これが・・・冥王星?私の星・・・??」
ライト「んなバカな・・・」
計器を確認するライト。
太陽系の温度がグッと下がっていることがわかる。

ライト「太陽の方向はあっちや・・・太陽を目指そう・・・」

海王星を通り過ぎるライトアロー号。海王星もメタンで出来た氷の星と化していた。
ライト「どの星も逆に凍てついちまったのか・・・?」
ミグ「いや・・・そうじゃない・・・」

目の前に土星と木星が現れる。
ミグ「ガスになってる・・・蒸発してしまった・・・」

茫然自失するミグ。
ミグ「これが・・・私たちの太陽系・・・」

沈黙。




口を開くライト「・・・帰ろう・・・」
ミグ「帰るってどこに??
私たちは結局何も出来なかった・・・!!」
ライト「できる限りのことはやったやろ・・・」
号泣するミグ「惑星はすべてガスになってしまったんだぞ・・・!?
私たちは誰も助けられなかった・・・!誰ひとり・・・!!」
ライト「まだ決まったわけやないやろ。
それに・・・もし仮に宇宙でオレとお前の二人きりになったとしても・・・オレは生きていく。
あんたが死ぬまでな、ミグ。死ぬまでずっと守り続けてやるから」
ミグを抱きしめるライト。




無線「・・・・」
ライト「なんか聞こえないか?」
ミグ「え?」
ライト「地球からの通信電波や!」
無線周波数を合わせるライト。
無線「・・・こちら地球、ライトアロー号応答せよ」
ミグ「!!!」
無線機を掴むライト
ライト「こちらライトアロー・・・生存者は二名・・・ライト・ケレリトゥスとミグ・チオルコフスキー。
そっちは無事なのか!?」
ミグ「助かった・・・?」
ライト「あ、ああ・・・」
ミグ「助かった・・・!」
ミグと抱き合うライト「助かったんや!!!!」

無線「現在地の座標を送る。直ちに帰還せよ。」
ライト「了解、進路を326に取る」
地球に向けて進路を取るライト。

ミグ「あれが・・・」

ミグの目の前にある青い美しい星――地球。
奇跡的に災厄をまぬがれ太陽系で唯一生命が存在する星・・・

ライト「これがずっと見せたかったんや」
涙を流すミグ。
小さく頷くミグ「うん・・・」
ライト「さあ・・・家に帰ろう・・・」
地球に向かうライトアロー号。

神よ 変えることのできるものについて、
それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
変えることのできないものについては、
それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。
そして、
変えることのできるものと、変えることのできないものとを、
識別する知恵を与えたまえ。


『80日間宇宙一周』おしまい

『80日間宇宙一周 From Earth with Love』脚本⑮

コード601を発令!!
「各惑星から最高の科学者を集めろ!!
宇宙学者、核物理学者、量子物理学者、天体物理学者・・・!」

各惑星の住人が巨大な輸送船に乗って地球へ運ばれていく

火星の前線基地
作戦室のモニターを見上げる男たち。
机では計算尺を使ってデニスが衝撃波の被害が最も少ない場所を算出している。
ピカール「エヴァンジェリスタ先生の計算では地球が最も安全であることが確認されました。」
オペレーター「ノア計画は28%進行中・・・」
青ヒゲ「この日のために方舟を集めておいてよかったわ・・・
あなたの基金のおかげよレイちゃん」
メガネがずれてキスマークだらけのヴィン「もうなんでもいいっス・・・」
ピカール「TIAもあなたがサーペンタリウスの最後の幹部だったとは気づかなかったようですね」
青ヒゲ「オカマですから」

センチネルに振り返るナッシュ「なんだかんだいって太陽系の全人口70億人くらいお前の星に入るじゃねえか」
センチネル「私は来期は落選だ・・・」
デニス「まだ選挙のこと考えてるわよ?」
装備を調整するバーニー「幸せなやつ。あんたの旦那と子供は何番だった?」
デニス「14091番かな・・・まさか人生で地球に行けるなんて思ってなかったもん」
バーニー「しかもタダでな。あんた歴史に名を残すぜ。偉大な大統領として。」
ため息をつくセンチネル
センチネルの肩に手を乗せるヴィン「今度うちが応援するよ・・・」



冥王星
衝撃波を相殺しようとすべての軍事基地が迎撃態勢に入る
ハデス城
バルコニーで兵士に演説をするハデス。
ハデス天皇「我々は古くから太陽系の盾として侵略者を迎え撃った。
そして今ついに史上最大の敵が太陽系を滅ぼそうと接近している。
冥王軍のプライドにかけてこれに打ち勝たねばならない!
私とともに戦う者はいるか!?」
大歓声
執事「陛下・・・わたしく生まれて初めてあなたを尊敬しました」
ハデス「一度これやってみたかったんだ~」
執事(やっぱバカだ)

クレーターバレー訓練基地
ヘルメットをかぶる大佐「貴様は訓練教官だろ。」
キャロット軍曹「俺も戦わせてください!
いつも威張っている奴が真っ先に戦わなければ新兵にしめしがつきません!」
大佐「勝手にしろ・・・!」
どさくさに紛れて逃げようとするハーシェル隊長
大佐「お前は待て!」
ハーシェル「え」



海王星
王族が海賊船に乗り込んでいる。
ナイアド元女王の手を取って船に乗せるアラゴ国王「母上、船にお乗りください」
ルヴェリエ「兄さん・・・」
アラゴ「お前も早く乗れ。引越しだ」
ルヴェリエ「兄さんは?」
アラゴ「冥王星が命捨ててしんがりつとめてんだ。
国王のオレが逃げるわけいかねえだろ。
お前にだけにかっこいい真似させてたまるか。今度はオレにやらせろ。」
ロジャー「全員乗り込みました」
アラゴ「よし、お前も民とともにできるだけ遠くへ逃げろ。
オレは近衛隊とともに冥王星に加勢しに行く。」
ロジャー「私もお供します」
アラゴ「お前がいなくて誰が宇宙海賊をまとめるんだよ」
ロジャーが海賊船の方を振り返る。
海賊たちに指示を出すルヴェリエ
ロジャー「彼です・・・」
アラゴ「あいつめ」
ロジャー「私も近衛隊の騎士・・・戦わせてください」
エガリテ将軍がコンパスを差し出す「戻ったか戦友・・・」
ロジャー「またお前と戦えるとはな」



天王星
惑星連合放送のテレビ局
ディレクター「ジュリエッタ・・・プロデューサーが番組内容を変えろと・・・」
ジュリエッタ「いいえ、私のチャンネルだけはいつものように歌っていつものように踊るだけ。」
ディレクター「太陽系が消滅するかもしれないんだぞ!?」
ジュリエッタ「だからこそいつもの日常を望んでいる人がいる・・・そうよね相棒?」
アリエル「はい!」

ジュリエッタ&アリエル「♪右側を走る自転車~左をきちんと走らない~」

定年退職したゲオルグ警部が自宅のリビングでジュリエッタの番組を見ている
「ふん、相変わらずバカみてえな歌うたってやがる・・・」
ガーデニングしている奥さん「ねえお父さん見て、空があんなに明るいわよ・・・」
庭に出て空を見上げる老夫婦。
ゲオルグ「こういう老後も悪くねえな・・・」



土星
ハイペリオン教会
大勢の民衆が大聖堂に集まって祈りを捧げている。
シスターのサーシャが星に残る貧しく弱い人々に説教をする。
サーシャ「終わりは誰にでも来るのです。ひとは一人で生まれ一人で死ぬ孤独な存在です。
しかし・・・私たちはその孤独から解放されるのです。
終わりは新たな世界の始まりなのですから・・・」



木星
エウロパ大学
学生や職員が宇宙船に避難している。
事務員「先生!早くしてください!論文ならいつでも読めるでしょう!」
研究室で紅茶を飲みながら論文に目を通すマーガレット
「うるさいわね・・・急かされるの嫌なのよ・・・」
紅茶を飲み干して、キャビネットの方に歩き、この前撮影した写真立てを手に取るマーガレット
事務員「先生・・・お願いしますよ!!」
写真立てを事務員が持つダンボールの中に入れるマーガレット
マーガレット「うちの人は?」
事務員「現在行方不明です・・・!」
マーガレット「ま、あの人ならだいじょぶか。行きましょう」
写真にはライトとマーガレット、クリス・・・そしてミグが写っている。






火星。
航空機の格納バンカーにライトアロー号が格納されている。
ライトアロー号を最終調整するライト。
機体にはノーチラス号のメイルシュトローム砲が取り付けられている。
ライト「ミグ・・・ええか・・・?」
ミグ「うん・・・」
首にかけているネックレスを外すミグ。
リアクターに“希望の海”をセットするライト。
ライト「すぐに返してやるから」

作業台にはサーペンタリウスの黒幕・・・スタータブレットのミスターアップルが置かれている。
アップル「・・・どうも理解できません。光速を超えるということは時間の文脈――すなわち因果律すら超えてしまうということです。
仮にこの太陽系を救えたとしても、救いたかった大切な人たちがどうなったか知ることができないんですよ。そんな行動に何の意味があるんですか?」
作業しながらライトが答える「いいか、オレたちには自分たちの結末を選ぶ自由がある。
最後までお前の言いなりになってたまるかい」
アップル「ああなんて、かわいそうな人類!
・・・たった80年程度しか生きられないのに・・・自ら自滅するなんて・・・」
ライト「あんたも災難やな。たった137億年しか生きてへん。未来は果てしないんや」
ピコピコしているミスターアップル



滑走路
ライトアロー号の周りにはライトとミグを見送りに多くの人が集まっている。
ルナ・マイヤース「あなたとのレースの決着はお預けらしいわね」
ライト「続きはまた今度な」
イワン「いよいよだなライト・・・」
イワンと握手するライト「あなたはオレの中では今もヒーローや。
いままでも、そしてこれからもな。」
イワン「光・・・超えろよ。ヴェルヌもそう願っている・・・」
ライト「わかった・・・」
ミグ「ライト・・・」
ライト「ああ・・・行こう!!」

ライトアロー号に乗り込む二人。
コックピットから手を振る二人
エンジンを作動させ滑走路を離陸していく。
観衆の声援
空を見上げるミュウ「行ってしまったわね・・・」
イワン「ああ・・・」
コインを取り出すイワン。トスしようとするが、やめてコインを握り締める。

『80日間宇宙一周 From Earth with Love』脚本⑭

レース会場にかけてくるミグ
ミグ「イワン・・・!!」
イワン「ミグ・・・」
イルミナとフレミングの死体に気づくミグ
ミグ「これは・・・!ヴェルヌ博士がフレミングさんを・・・!?
イワン「いや・・・彼女は怪物などではなかった・・・
(顔を上げる)・・・死者を弔うのはあとだ、もう時間がない、行くぞ!!」
ミグ「どこに!?」
イワン「宇宙サミットだ!!」



ウェルズ議事堂
議事堂前はマスコミや警察で騒然としている。
アストンマーティンを荒々しく止めるイワン。
車から急いで降りるイワンとミグ。
軍隊が会場への入口を封鎖している。
議事堂に入ろうとするイワンを止める兵士
「ダメだ!ここには誰も入れない!!」
手帳を見せるイワン「うるさい!TIAのイワン・ウェイドだ!」
兵士「誰であろうが通れんものは通れん!!
イワン「通せ!」
バーンズ提督「馬鹿な真似はよせ、ウェイド。
連中は太陽系を人質にしているんだぞ!
ピカールがスイッチを押したら、太陽は凍っちまう・・・!!」
イワン「お前がバーンズか?」
提督「ああ・・・」
バーンズの腹を思い切り殴るイワン。
崩れ落ちるバーンズ
イワン「言ったよな?今度会ったらぶっ飛ばすって」

兵士が集まってきて、イワンとミグに銃を突きつける。
ミグ「イワン・・・!」
バーンズを捕まえて人質にするイワン「議事堂に入れてくれ!
オレならあのピカールを止められる!
切り札があるんだ・・・!」
兵士「いいから降伏しろ!!」
イワン「オレを信じてくれ・・・!!!」
兵士「早く提督を離せ!!」
イワン「太陽系を救えるんだ・・・!
引き金に指をかける兵士「離せええ!!」
ミグ「イワン・・・!!!」

アリエル「二人共耳を抑えて!!
その瞬間、超高周波が議事堂前に響く
ガラスが次々に割れていく。
超音波を出して特殊部隊を制圧するアリエル。
ミグ「・・・!?」
警官隊を引き連れるゲオルグ
「テロを仕組んだのは、地球連邦軍だ!全員逮捕!!」
警官隊と軍隊がぶつかり合う。
次々と軍隊を袋叩きにしていくゲオルグ「天王警察をなめるな!!」
バーンズ提督「これは反逆だ!!警察といえども構わん!
撃ち殺せ!!」
しかし兵士たちは撃たない。
武器を次々捨てて投降していく。
提督「貴様ら!なにをやってる!!」
上空に武装した海賊船団が現れる。
キャプテンロジャー「まだやるか?」
諦める提督

逮捕されるバーンズ提督
ゲオルグ「警官生活最後にとんでもない大物がしょっぴけたぜ」
海賊船を見つめるミグ
ミグ「なんでみんなが・・・」
ルヴェリエ「ぼくが連絡したんです・・・!」
アリエル「さあ、お二人は早く中へ・・・!」
イワン「行こうミグ・・・!ライトを救うんだ!!」
頷くミグ
議事堂へかけていくイワンとミグ。



宇宙サミット会場
アルベド議長「どういうことだね、センチネル大統領・・・」
アラゴ「知っていることを話してもらおうか・・・?」
センチネル「・・・まさかキミに太陽系を人質にされるとはな・・・」
微笑むピカール「飼い犬に手を噛まれましたね・・・」
センチネル「事の発端はもう400年以上前の話だ・・・
月面でとある石版が発掘されたことから我々の計画は始まった・・・」
アルベド「石版・・・?」
センチネル「スタータブレットは存在したのだよアルベド議長・・・
そこには太陽系のすべての歴史が書かれていた・・・過去も・・・そして未来も・・・
そして我々は恐ろしい事実を知った。
我々の太陽系はもうじき滅ぶ運命にあると・・・いや既に滅ぼされていたのだ、20億年前に」
アラゴ「はあ?オレたちにも分かるように言ってくれ」
ピカール「生命は一度滅ぼされていたのですよ、ガンマ線バーストによって・・・」
アラゴ「なんだと・・・?」
ピカール「だから最初の生命の誕生から多細胞生物の出現までに大きな空白があったのです。
そして、宇宙に滅びをもたらした怪物の正体がこれです」
円卓に資料を置くピカール
「これは30年前にエンディミオン宇宙観測所で撮影されたものです・・・」
資料を見る首脳陣「これは・・・」
センチネル「フレッド・ホイル銀河という。」
ピカール「宇宙を移動しながら、銀河のエネルギーを奪い取り、ブラックホールに変えていく捕食性の銀河で、銀河数百個分もの強力なエネルギーを持っています・・・
例えるなら宇宙のがん細胞ですな。」
アラゴ「銀河数百個分だって・・・!?そいつが襲ってくるのか?」
センチネル「もう襲われたのだよ・・・
宇宙の果てでこの怪物はほかの銀河を食い、宇宙中に強力な光と熱と衝撃波を撒き散らした。
20億年前にまず真っ先にやってきたのは光とガンマ線だ・・・
これによって太陽系の生命体は一度死滅。
そしてこれからやってくるのが・・・」
ピカール「熱と衝撃波です・・・つまり宇宙温暖化は真実だったのです。
私はこの観測結果を地球連邦に報告し、ディスカバリー計画を発動させた」
アラゴ「アイザック・イエガーがアルファケンタウルスまで行った有人宇宙飛行計画か!」
ピカール「フレッドホイル銀河の存在を確認しなければ、予算は出せないと言われたのでね・・・
そして・・・」

会場に入ってくるイワン「怪物は存在した・・・」
首脳陣「キミは・・・」
イワン「アイザック・イエガー・・・ディスカバリー計画のテストパイロットだ・・・」
会場に入ってくるミグ「え・・・??」
イワン「そうか・・・オレのミッションにはそういう裏があったんだな・・・ピカール博士。」
うなずくピカール
イワン「10年前オレが地球に帰還したとき、地球連邦軍はオレの調査結果を廃棄して、子供たちに夢を与える冒険としてマスコミに報道させた・・・なぜだ?
災厄の規模が大きすぎて太陽系すべての惑星は救えないと判断したからだ。
そうだろう?」
センチネルに詰め寄るイワン「すべての黒幕・・・!」
センチネル大統領「・・・我が地球にこれ以上移民を受け入れる余裕はない・・・!」

騒然とする会議場
アラゴ国王「なるほど・・・どのみち消滅する星に復興支援なんてしたって焼け石に水だもんな!」
ハデス天皇(冥王星のトップ)「うちの星の予算をケチったものそういうことか~!!」
アラゴ「あんたの星はそもそも惑星じゃないだろ!!」
ハデス「長年太陽系を守ってもらってその口の利き方はなんだ!
私の星だったらキミは打首獄門ものだぞ!」
モウタクサン国家主席(土星のトップ)「ええい、準惑星は黙っててもらおう!
センチネル大統領、なぜフレッドホイル銀河の存在を隠した!?
答えたまえ、もし彼が言ったことが事実なら・・・」
センチネル「隠してはいない、宇宙温暖化はマスコミがさんざん取り上げたはずだ。
まともに相手をしなかったのは各国政府の責任だろ!」
水掛け論をはじめる首脳たち

呆然とするミグ「・・・・・・。」
アルベド「やめないか!みっともない!!!」
静まる首脳たち
アルベド「すべて放送されてるぞ・・・」
惑星連合放送のカメラがサミットの様子を撮影し続けている。
秘書官「だ・・・誰だ!?あんなカメラを入れたのは!!」
ピカール「くっくっく・・・
あなたがたがこのように醜態を晒すことも我が主ミスターアップルはお見通しですよ。
我々サーペンタリウスが歴史の影で戦争をプロデュースしたのは、結局あなたがたがなんの役にも立たないことを見抜いていたからです・・・」
首脳たち「・・・・・・。」
ピカール「我々は軍拡競争によって、来るべき日のために兵器を進化させた。
すべてを焼き尽くす熱と衝撃波から太陽系を守るのに必要なものは、剣と盾と矢・・・
光の矢でフレッドホイル銀河に行き、盾を設置し、剣で怪物に止めを指す。
武器は全て揃った。
私のメイルシュトローム砲が剣、ヴェルヌ博士のジオメトリカルホウサンチュウが盾、そして・・・ライトくんのリニアエクシードエンジンが矢・・・」
センチネル「全てキミの筋書き通りに行くとは限らんぞ・・・
何度も言ったようにその計画は、あまりにリスクが大きすぎる・・・
光の速さを超えて帰ってきた人間は未だかつてひとりもいないんだからな」
イワン「だが誰かがいずれやることだ・・・
0なのか、それとも0に限りなく近いのか、は大きく違うぞ。」
センチネル「そんな危険な賭けで地球を危機にさらすわけにはいかん・・・!
我々が宇宙についてあれこれ議論するのは、ちっぽけな細菌が冷戦を議論するのと等しい。
そして細菌がいくら束になってかかっても核ミサイルを止めることはできない。」
イワン「だからオレたちスパイを使って他の惑星の軍事技術を盗ませ、自分の星にだけシェルターを造って逃げるのか?
彼女は言っていた・・・小さな世界にも尊い宇宙は広がっていると・・・」
センチネル「・・・・・・。」

笑うアラゴ「ははは・・・!」
驚く首脳たち
アラゴ「あんたは汚染された地球の地下で未来永劫モグラのように生きていくつもりか?
どのみち遅かれ早かれ人類は絶滅するぞ・・・」
立ち上がるアラゴ「オレはピカールのオヤジに賭ける。
冥王星人は嫌いだがな」
ピカール「どうも・・・それでは大統領、ここはひとつ投票と行きましょう・・・
地球は自由と民主主義の星でしょう?」
センチネル「・・・・・・。」
ピカール「投票のタイムリミットはライトくんが太陽を折り返すまで・・・
それまでに結論がまとまらなかったら・・・」
アタッシュケースのスイッチを指差すピカール
「このスイッチを押して、ライトくんに太陽系ごと凍らせてもらいましょう・・・」
センチネル「・・・地球はテロリズムに屈しない・・・!」
ナッシュ「お前がオレたちテロ組織を作ったんだろうがバーカ」
椅子に座るピカール「さあ宇宙の運命を決めようじゃありませんか・・・!」

イワン「ミグ・・・」
ミグ「はい・・・」
イワン「神はサイコロを振ると思うか・・・?」
ミグ「私は神じゃありません・・・あなたは・・・?」
首を振るイワン「信じるしかないだろ・・・」

『80日間宇宙一周 From Earth with Love』脚本⑬

レース会場
時計を確認して立ち上がるイルミナ「・・・私、そろそろ行きますね・・・」
イワン「レース最後まで見ていかないのか?」
イルミナ「もう十分です。ひと目でもライトくんが見れただけで私は満足だから・・・
賭けはチャラでいいですよ。きっとライトくんが優勝するから・・・」
イワン「そうか・・・これからは?」
イルミナ「何も考えてません・・・広い世界を自分自身の力で生きていくつもりです。
あなたが自由をくれたから・・・」
イワン「そうか・・・」

惑星連合放送
「実況の途中ですが、ここで臨時ニュースです!
現在火星で行われている宇宙サミットが二人のテロリストに占拠されました・・・!
現地警察の発表では、実行犯は冥王星の退役軍人ナッシュ・ストライカーと
太陽系科学学会のトリエステ・ピカール博士で、彼らは軍や警察の制止を振り切り会場にいる惑星連合の首脳陣を人質に・・・」


イルミナ「え・・・?」
イワン「・・・あれは・・・!!」

モニターに結晶化した警備員の死体が映る。

イルミナ「そんな・・・生物兵器のストックはないはずなのに・・・!」
イワン「だがあった・・・!」
逃げ出そうとするイルミナ
イワン「待て!!」
イルミナの背中に銃を突きつけるイワン。
立ち止まるイルミナ
イルミナ「銃・・・持つようになっちゃったんですね・・・」
イワン「この前ピカール博士が面会に来ただろう?何を話した?」
イルミナ「私の研究は素晴らしいって・・・宇宙の運命を変える力だと・・・」
イワン「それだけか!?彼に残りの生物兵器の場所を教えたんじゃないのか!?」
イルミナ「そんなこと知りません・・・!!」
イワン「いい加減本音で話したらどうだ!?キミは一体何を企んでいる!?」
声を荒げるイルミナ「撃つなら撃ってよ・・・!!!」
イワン「!」
イルミナ「まだ・・・まだ私のことを信じてくれないんですか・・・?」
イワン「・・・・・・」
振り返るイルミナ「ウェイドさんは口では信じるって言いながら、いつも言葉の裏を探ってばっかり・・・
最後の最後で、いつも人を信じることから逃げてしまう・・・
私の言葉が嘘に聞こえるのは、あなたが私に嘘をついているから・・・!
さあ本音を聞かせてください・・・」
イワン「・・・・・・」
涙を流すイルミナ「私は無罪なんですか?それとも犯罪者??」
考え込むイワン
何かに気づく
イワン「・・・ちょっと待て、キミはどこでその生物の研究を行ったんだ・・・?」
イルミナ「公的な研究施設です・・・地球連邦の・・・」

ケプラー「人の人気と一緒だイワン。
何か重要なものがあると思って蓋を開けたら中身は空っぽなんてことはよくあるもんだ。
思い込みってやつはそれだけ強大だ。
世界を動かしているのは案外そんなものなのかもしれない・・・」


イワン「!やられた・・・!」
イルミナ「え?」
イワン「オレは自分自身で勝手に架空の筋書きを書いていたんだ・・・!」

コーエン「気をつけてくれ、ウェイド!我々の敵はあまりに強大だ。」
ブレイズ「今どきデータ通信なんてなにをやっても傍受されちまうのに・・・」


イワン「なぜコーエンが簡単に傍受される通信回線を使ったのか・・・
それがあいつからの最大のヒントだったんだ。
不可能だからだ・・・!なぜならオレたちの敵は宇宙最大のスパイ組織・・・」

銃声
背中から撃たれるイルミナ
観客が絶叫する。
イルミナに駆け寄るイワン「ヴェルヌ博士!!」
銃を構えるフレミング「やっと見つけたぜ・・・」
イワン「そうか・・・オレも腕が落ちたもんだ・・・
この無差別バイオテロはハナからTIAと地球連邦が仕組んでいたんだな・・・
サーペンタリウスのテロのお膳立てをして、連中を壊滅させる口実をでっち上げるってわけか・・・
オレたちのやり方は昔から全く変わってないってことだな」
フレミング「世論を味方につければ戦争くらいわけはないからな」
イワン「これでまた出世か。コーエンを殺したのもお前の仕業だな」
フレミング「上の命令でな。
宇宙サミットまでにサーペンタリウスを知る者は殲滅しろとさ。」
イワン「実体のない組織を作り、汚れ仕事を押し付けた挙句、用が済んだらそのまま消しちまうのか。どうせ地球連邦が隠蔽したい情報でもあるんだろう・・・」
フレミング「まあ、そんなところだ」
血を流して倒れているイルミナを見るイワン「・・・・・・・。」
フレミング「・・・よくやってくれたウェイド。
お前のおかげでブレイズもロッソも・・・そしてヴェルヌすら始末できた。
残りはあのピカールだけだ。さあ本部に戻ろう」
イワンに背を向けるフレミング
イワンを見つめる死にかけのイルミナ「・・・・・・。」
イワン「・・・・・・。」

フレミングの後頭部に銃を突きつけるイワン
フレミング「おいおい・・・どういうつもりだ?」
イワン「スパイがテロ計画を聞いて黙っているわけにはいかないだろ。
ピカールに言って計画を中止させろ。」
フレミング「お前は何もわかっちゃいない。これは高度に政治的な問題だ・・・」
イワン「無差別テロも国家のためか?
オレたちの仕事はいつもこんなことばっかりだ・・・いつまで繰り返す??
オレたちは一体“何と”戦っているんだ?」
フレミング「冷静になれウェイド・・これは世界を守るために必要なことなんだよ・・・」
引き金に指をかけるイワン「そんな世界じゃ不十分だ」
フレミング「またコインで決めるのか?」
イワン「いや・・・。
自分の意志だ」
引き金を引くイワン。

瀕死のイルミナ「ウェイドさん・・・」
イルミナを抱きかかえるイワン「もういい喋るな、すぐに医者が来る・・・」
イルミナ「実は・・・私はあなたにひとつだけ嘘をつきました・・・
生物兵器の開発を強要したのは地球連邦軍なんです・・・
彼らは私の両親を殺してジオメトリカルホウサンチュウを遺伝子操作させた・・・」
イワン「なぜ地球連邦がそんなことを・・・」
イルミナ「地球を救うシェルターを作りたいから・・・」
イワン「シェルター・・・?」
イルミナ「すべてはピカール博士が知っています・・・
お願い・・・宇宙を・・・ライトくんを守って・・・」
弱っていくイルミナ「う・・・」
イワン「しっかりしろ!」
首を振るイルミナ
イルミナ「もういいんです・・・ありがとう・・・私は十分幸せでした・・・
最後の最後にあなたに暗く深い海の底から救ってもらえた・・・」
イワン「私はいい人間じゃない・・・刑務所からキミを自由にしたのはキミを・・・」
微笑むイルミナ「・・・最初から分かってましたよ・・・あなたはスパイなのに嘘が下手ですね・・・」
イルミナの手を握るイワン。
イワン「この仕事はもう引退だな・・・」
微笑みながら目を閉じるイルミナ
静かに息を引き取るイルミナ「大事に生きて・・・」

『80日間宇宙一周 From Earth with Love』脚本⑫

ライトのピット。
TIAのフレミングもいる。
ミグに挨拶しようとするフレミング「私はTIAの・・・」
ゲオルグ「挨拶はいい。説明してやれ」
会場の見取り図を広げるフレミング「脱出ポッドの微弱な信号をこの会場でキャッチした。
つまりこの会場のどこかにウェイドとヴェルヌはいる・・・」
ミグ「なぜレース会場に・・・」
フレミング「ライトへの復讐だ・・・!
彼女は自分を刑務所に入れたライトに残酷な死を与えようとしている!」
ミグ「でもテロ計画の情報をライトにリークしたのは彼女自身じゃ・・・」
フレミング「彼女は彼に一緒に逃げて欲しかったとしたら・・・?」
ミグ「え・・・?」
フレミング「ヴェルヌは幼い頃からライトに好意を抱いていたらしい。
しかしライトは彼女を相手にすることもなく、警察に突き出してしまった・・・」
ゲオルグ「女の恨みは恐ろしいからな・・・」
フレミング「それに彼女は宇宙一知恵が回る・・・」
ミグ「しかし彼女はライトにどんな復讐を・・・」
ゲオルグ「それはこの公爵閣下が説明してくれる。」
テーブルに自然科学の雑誌や図鑑、論文を置くルヴェリエ。
ルヴェリエ「イルミナ・ヴェルヌ博士の論文を読んだことがあるんです。」
ページをめくるルヴェリエ
「これです・・・」
論文にはとある微生物の顕微鏡写真が載っている。



観客席
イルミナ「私は知らなかった・・・この小さな世界は私だけのものだと思っていたから・・・
でも・・・そうじゃなかった・・・」
イワン「キミはその顕微鏡で・・・一体どんな世界を覗いてしまったんだ?」
イルミナ「ジオメトリカルホウサンチュウ・・・」
イワン「ジオメトリカルホウサンチュウ・・・?」
イルミナ「私が見つけた、宇宙でもっとも神に近い生き物・・・
オリハルコンの結晶で出来ていて、熱エネルギーを瞬時に代謝と自己増殖に用いてしまうんです。
一切の老廃物もなし。エネルギー変換効率は100%。」
イワン「だからあの時、ピストルを撃ったスタッフが結晶化して殺されたんだ・・・
・・・つまりそれは超小型の反応炉みたいなものじゃないか、バイオテロにはもってこいだ」
イルミナ「どれくらいの熱で反応するかは種類によって決まっているんですが、遺伝子操作を施せば太陽の中心温度にも、人間の体温を好むようにも作り替えられる・・・」
イワン「なんて恐ろしいものをキミは作り出してくれたんだ・・・」
イルミナ「作ったのは私じゃありません。もともと太陽系にいた生物です。
私はただそれを研究しただけ・・・」
イワン「だが、結果的にキミはそれをテロリストに流してしまったことになるんだぞ。
人類を滅ぼしかねない神の力を・・・」
イルミナ「知らなかったんです・・・この技術は平和利用されると思っていたから・・・」
イワン「・・・ライトにもそう言えるのか?」
イルミナ「・・・・・・」



ピット
ミグ「熱エネルギーをオリハルコンの結晶に変える生物・・・」
ゲオルグ「知ってるのか?」
ミグ「い、いえ・・・」
ルヴェリエ「つまりこの生物は熱を与えれば、与えた分だけ増殖してしまうんです。
強力な熱を与えたら、その暴走はもう止められない・・・」
ミグ「でもこの生物兵器は地球連邦がすべて差し押さえたんじゃ・・・」
フレミング「盗まれたんだ・・・」
ゲオルグ「なんだって!?」
フレミング「サーペンタリウスに・・・
それで我々TIAはサーペンタリウスを急遽リストのトップにおいて、マークしていたんだ」
フレミングに殴りかかるゲオルグ「揃いも揃って貴様ら地球連邦はバカばかりかー!!
ゲオルグを取り押さえるミグ「け・・・警部落ち着いてください・・・!
ルヴェリエ「今この人を責めてもどうにもならないですよ・・・!」
息を整えるフレミング「ヴェルヌは刑務所でピカールにライトへの復讐を持ちかけられたに違いない・・・ヴェルヌはライトの最大の晴れ舞台で復讐を完遂させる気だ・・・」
ミグ「最大の晴れ舞台・・・」

ハッとするミグ「もしかして・・・いや馬鹿な・・・」
ゲオルグ「なんだ?」
ミグ「太陽・・・
このレースの折り返し点は太陽だった・・・!」
ゲオルグ「太陽なんかにあの生物兵器を撒かれたら・・・!」
ルヴェリエ「太陽の熱エネルギーはすべて物質に置き換わって・・・」
ミグ「太陽系は滅びてしまう・・・!!
つまり生物兵器が仕掛けられた場所は・・・
ライトアロー号・・・リニアエクシードエンジン・・・!?」
フレミング「ヴェルヌはライト自身をテロの実行犯にするつもりなのか・・・!」
ゲオルグ「すぐにレースを中止させろ!」
ミグ「で・・・でもあのエンジンに生物兵器があると決まったわけじゃ・・・」
ゲオルグ「ああ!?お前何言ってる!これは太陽系の危機なんだぞ!!
とっととライトのバカに運動会は終わりだって言っとけ!!」
ミグ「・・・・・・。」
ゲオルグ「フレミング、あんたらはすぐに会場の二人を見つけ出せ!
生物兵器の弱点を聞き出すんだ!!」
TIAのエージェントたちと共にかけていくフレミング。
無線を持って立ち尽くすミグ。
ゲオルグ「なにをぼさっとしてるチオルコフスキー!お前がやらないならオレから言う!
貸せ!!」
ミグ「いえ・・・私から言います・・・」
ルヴェリエ「ミグさん・・・」



太陽へ一直線に進んでいくレーサーたち。
ライトアロー号のコックピット
ミグ「・・・ライト、聞こえるか?」
ライト「ああ、ミグ。どうした?」
ミグ「今から私が言うことを信じて聞いて欲しい・・・」
ライト「ええよ。何?」
ミグ「レースを中止してくれ」
ライト「またかい!!!
あんな・・・今度はどこに爆弾があんねん!」
ミグ「キミの機体だ・・・!それも今度は太陽系を滅ぼしかねない生物兵器だ!」
ライト「生物兵器ってなんやねん・・・」
ミグ「それは・・・その・・・キミの・・・」
ライト「イルミナか」
ミグ「え・・・?」
ライト「天王星のこと誰かに聞いたんやな・・・
言っとくけどイルミナはテロリストなんかちゃうぞ。
生き物を愛する優しい女の子や!」
ミグ「しかしキミを恨んでた・・・!キミは・・・
キミは・・・彼女の遠くへ行ってしまったから・・・」
ライト「・・・・・・。」
ミグ「その生物兵器が太陽の周りでばらまかれたら、太陽の熱は全てクリスタルになってしまうんだ。頼むライト・・・もう一度私を信じてくれ・・・!」
ライト「・・・それは直接イルミナに確認したんか・・・?」
ミグ「え・・・?」
ライト「オレは信じへんぞ!
イルミナはそんなことするような子じゃ絶対にない!!」
ミグ「だが・・・!!」
ライト「今度はオレを信じろミグ!!」
ミグ「ライト・・・」
無線が切れる。
「電波射程圏外」の表示
ミグ「ダメだ・・・」
ルヴェリエ「そんな・・・!」



火星の宇宙サミットの会場――ウェルズ議事堂。
会場の前に高級車が止まる。
車から降りるアタッシュケースを持ったスーツの男。
銃を持った警備員「失礼ですが・・・」
ピカール「太陽系科学学会のトリエステ・ピカールと申します。
惑星連合の皆さんに至急お伝えしたいことがありまして参りました。」
警備員「しかし名簿にない方を通すわけには・・・」
ピカール「宇宙温暖化問題ですか・・・けっこう。
しかし、そんなくだらない政治的駆け引きよりも、もっと深刻な危機について彼らには考えてもらわねばなりません。」
警備員「え?」
警備員に銃を突きつけるナッシュ・ストライカー軍曹「オレたちの宇宙は本当に滅びるんだよ」
異変に気づき集まってくる会場警備の警察や軍隊。
銃を突きつける特殊部隊「そこの二人!おとなしく手を上げろ!!」
ピカール「軍曹、ここは頼みます。」
ナッシュ「わかった。」
会場に入っていこうとするピカール
特殊部隊「動くな!!」
ナッシュ「撃つのか・・・悪いことは言わん。やめといたほうがいいぜ?」
特殊部隊「勝てないぞ!こっちは大勢だ!!」
ナッシュ「じゃあやってみろ」
特殊部隊が発砲する。
その瞬間彼らの武器が結晶化していく
「なんだ・・・!!?」
「撃て!!撃ちまくれ!!!」
集中砲火を浴びるが、すべての銃弾がナッシュに届く前にオリハルコンになってしまう。

くるりと向きを変え扉の方へ歩いていくナッシュ。
ナッシュの背後には結晶と化した警察、特殊部隊・・・そして戦車や装甲車が、まるで時間が凍ったかのように並んでいる。



宇宙サミットの会場に入ってくるピカール
円卓には各惑星の首脳が席についている。
スタッフ「なんなんだ君たちは!!」
アタッシュケースを持ち上げるピカール「宇宙の未来について話に来ました」
秘書官たち「ふざけるな!!」
ナッシュ「ふざけてるのはてめえらの方だろ。誰ひとり宇宙の未来なんか考えちゃいねえ。
ただの利権じゃねえか」
秘書官「なんだと・・・キミ達、口の利き方に気をつけたまえ・・・!」
ナッシュ「お前と話したいわけじゃねえよ。オレたちが用があるのはそっちの・・・」
ンゴロ・アルベド議長(木星のトップ)「わかった・・・聞こう・・・」
ナッシュ「話がわかる政治家もいるな。」
席を持ってきて勝手に座るピカール「では失礼して、会議に参加させてもらいますよ・・・」
アラゴ国王(海王星のトップ)「またあんたらかよ・・・俺たちを人質にして今度は何をしたいんだ?」
ピカール「いえ・・・我々の人質はあなたがたではありません・・・」
アタッシュケースを開けるピカール。
ケースの中には何かの起動スイッチが入っている。
ピカール「我々の人質は太陽系全土です。あなたはお分かりですよね?
・・・地球連邦大統領、ハワード・センチネル閣下・・・」
ハワード・センチネル大統領「・・・・・・。」
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