初のコロナ感染

 あと、一週間ほどで30代が終わるというのに、ついに体調を崩した。しかも新型コロナ。まさかのコロナデビュー。コロナ童貞卒業。
 30代は一度も大きな病気をしたことがない奇跡の10年になるかと思われたが、惜しくも散った。

 しかし、コロナのやつめ。初期症状がマジでたいしたことがなく、花粉症のだるさかなと思っていたら、いきなり熱を上げてきて本当に卑怯なやつだと思った。
 幸い、市販の解熱剤が本当によく効くし、症状としてはただの風邪なんだけど(そういや、嗅覚や味覚がおかしくなるっていうのもなかった)、感染力がものすごく、同居する妻子にもスピード感染した。
 しかも、自分が熱を出したことで、2人は一時期実家に里帰りしていたのだが、その時にはすでに2人も感染していたため(赤ちゃん、私のマスクを外して遊んでいたしな)、妻の実家でもパンデミック。
 症状が軽い割に、感染力が高いという、コロナの恐ろしさを痛感することとなった。というか、よく今の今ままで感染しなかったな。

 心配だったのが、言葉が喋れず(バブ語のみ)、症状を訴えられない赤ちゃんだったんだけど、赤ちゃんが家族で最も軽症かつ回復が早く、わずか一日で完治。すぐに通常業務に戻り、いたずらと超高速ハイハイに勤しんでいます。
 自分ってけっこう潔癖症で、よく手洗いとかうがいをするんだけど、それでも伝染ったので、もう日本国民の年中行事になる日も近い。持病のある人とか高齢の人にうつさないように、自宅でおとなしく軟禁生活をしています。

 みなさんも、お気をつけて!(これでワクチン接種したことにならないだろうか)

『青春アタック』脚本㉚愛月撤灯

市営団地。
ホステスのような格好の派手な女が男を連れ込む。
女「愛してるわ♡」
若い男「ぼくもさ。」
室内でいちゃいちゃしている男女。
襖が開いて、女の子が入ってくる。
女の子「・・・お母さんおかえり・・・あ、まちがえた・・・」
もう一度襖を閉める女の子。
気まずい男女。

女「ダメじゃない。お店のお客さんには、こりん星出身の24歳独身という設定で押し通してるんだから・・・」
女の子「ご・・・ごめんなさい・・・」
女「夕食代は渡したでしょう?夜は出来るだけ、外に行っててくれないかな。」
女の子「・・・はい・・・」
女「・・・もう少しの辛抱よ・・・もう少し辛抱すれば・・・あんたにも最高のパパができるから。
いいわね?一咲。」
女の子「・・・うん。」



月明かりの下で時間を潰す小早川。
駅では警官に補導され、コンビニではやんちゃな男の子に絡まれる。
しかたなく団地に帰ってくるが、部屋に明かりがついている。
小早川「・・・まだか・・・」
団地の外で体育座りをして待っている小早川。

数時間後。部屋の電気が消える。
家に帰ってくる小早川「・・・ただいま・・・」
暗い部屋で泣いている母親「・・・また体目当てだった・・・くそう・・・次だ・・・!」
母親を抱きしめる小早川「・・・お母さん・・・」

小早川(・・・わたしは、こんな人にはならない・・・運命の相手を見つけるんだ・・・)



夜やることがないので、パーカーを着て、スパッツを履く小早川。
深夜のジョギングということにすれば、補導対象になりづらいことを思いつく。
月明かりの下で、ひたすら公園のジョギングコースをぐるぐる走る小早川。
時間が経つのも忘れて走っていると、やがて朝日が登ってくる。
マラソン選手のように呼吸をする小早川「はあはあはあ・・・」

そのまま、早朝に新聞配達を始める小早川。
雨の日も風の日も雪の日も、新聞を配達し続ける小早川。
配送センターのおじさん「感心な子だなあ・・・」

小早川(朝の5時半・・・この角を曲がった、小さな公園に・・・あの人はいつもいた・・・)
公園で孤独にポージングを決める若かりしマッスル山村。
小早川(あの人も・・・きっと私と同じで、家に入れない事情があるんだ・・・
がんばろうね・・・マッチョさん・・・)
笑顔になり、山村の公園を通り過ぎる小早川。



現在――
体育館
小早川「なんとかすべてのバイトのシフトを調整できました・・・!」
山村「はは・・・それはめでたい・・・」
海野「はい。これが小早川さんのユニフォーム。」
小早川「わあ、ありがとうございます・・・!」
さくら「そいで、リベロを誰にするかだけど、リベロはレシーブを専門とするポジションなので必然的に海野さんかブーちゃんになる。しかし、リベロは前衛時にプレーに参加ができない。
このチームで2番目に身長があるのは海野さんよ・・・
よって、ブーちゃんにリベロの大役を任せるわ・・・!」
ブーちゃんがリベロ専用のユニフォームを受け取る。
さくら「一同拍手・・・!」
拍手するメンバーたち。
海野「頑張ってねブーちゃん・・・!」
さくら「ブーちゃんのプレーは常に安定しているから心配ないっしょ。
バレーボールが身長の高いやつだけのスポーツじゃないことを知らしめてやりなさい。」
手を上げる小早川「あの・・・わたくしは何をすればいいんでしょうか・・・?」
海野「小早川さんはバレーボールはやったことある?」
小早川「ごめんなさい・・・そもそもスポーツ経験がないんです・・・」
山村「だから言ったではないか。
スポーツテストの結果などでメンバーを決めるなど荒唐無稽ぞ。は~はは!」
さくら「・・・小早川さん。
バレーさえ覚えてくれれば、あんたたちの結婚式の仲人をすることを約束するわ・・・」
目の色が変わる小早川「あたし・・・バレーに命をかけます・・・!!」
山村「・・・鬼である!鬼監督である!!」



営業再開した学食
さんま定食を食べながら花原「やっぱりブーちゃんの料理はどこの外食よりも美味いわ・・・」
メザシをかじるちおり「うめ~!」
花原「でも、あの小早川さん?ちょっと華奢だけど、けっこう可愛い子じゃん。」
海野「性格も健気だしね・・・」
花原「正直、山村くんなんぞにはもったいないと思うけど・・・なんで避けるようなことしてんのよ。」
骨も全て食べるちおり「うめ~!!」
マッシュポテトを食べる乙奈「そうですよ・・・女性に恥をかかせるなんて・・・山村さんらしくありませんわ・・・」
山村「・・・確かに彼女の好意は嬉しい・・・しかし、乙女たちよ・・・諸君らに問いたい。
愛とは何だ?」
とまどう花原「・・・え?そ・・・それは・・・海野さんあたりが詳しいんじゃ・・・」
あわてる海野「いや・・・私もバレーボール一筋で男性経験が・・・乙奈さん・・・」
乙奈「慈悲の心ですわ・・・常に弱い立場の人に寄り添い・・・共に歩むことです・・・」
花原「さすが実家が教会・・・!」
乙奈「愛の宗教ですから・・・」
山村「ならば・・・彼女を愛するためには、必ずしも結婚をして添い遂げる必要はないのではないか・・・?私はみなのアイドル、マッスル山村なのだから・・・」
花原「いや・・・別にあんたはみんなのアイドルでは・・・」
乙奈「・・・なら、しっかりと振っておやりなさい。」
花原「乙奈さん・・・?」
乙奈「それも相手を慮ることですわよ・・・さもないと・・・取り返しのつかないことになります。
わたくしは・・・それで大変な目にあったから・・・」
山村「いや・・・振っているのだ・・・で、その場では泣いて「諦めます」とかいうのだが・・・
明日にはまた頬を赤らめラブレターを持ってくるのだ・・・かれこれ半年以上だ・・・
証拠をお見せしよう・・・」
みかんのダンボール箱を机に乗せる山村。
海野「ええ!?これがすべてラブレターなの!!??」
山村「毎日振り続けているからな・・・」
花原「・・・なんて前向きな少女なんだ・・・!」
乙奈「あの子の異常性が垣間見えますわね・・・」
山村「このマッスルも、毎日乙女の涙を見せられては、辛くてな・・・
でも、翌日はケロッとしているから、あやつにはファミリーコンピューターで言うところのリセットボタンがついているのではないかと疑っている。」
花原「よし・・・山村。警察に相談しよう・・・」
海野「いやいや・・・!せっかくチームメイトになったのに、警察に突き出しちゃまずいよ・・・!」



図書室
うきうきしてラブレターを書いている小早川「さあ~て・・・今日はどんな内容にしようかな・・・」
司書教諭の病田「あの・・・もうそろそろ閉館なんですが・・・」
小早川「先生・・・!先生は高校時代に好きな人とかいたんですか・・・?」
病田「ま・・・まあ・・・」
小早川「どう告白したんですか?それが今の旦那さんなんですか・・・!?」
病田「・・・へ?ち・・・ちがいますけど・・・」
小早川「旦那さんはどんな人なんですか?どうやって結婚したんですか・・・?」
病田「そ・・・そういうのは、男性に聞いたほうが・・・」
小早川「たしかに・・・!」



職員室に入ってくる小早川
京冨野「なんだ・・・出入りか・・・!?」
小早川「京冨野先生・・・校長先生・・・ご結婚は?」
京冨野「ああ。娘がいるぞ。」
羽毛田「私にはもう孫もいますけど・・・」

小早川のラブレターを読む京冨野
「お嬢ちゃん・・・これじゃあいけねえな・・・」
小早川「どこがまずいのでしょうか・・・」
赤ペンで添削をする京冨野「例えば、ここ。第2段落の4行目。
あなたは私を妻とし、健やかなる時も病める時も・・・・愛し、敬い、助け合い
死が二人を分かつ限り愛することを誓いますか?
・・・ってこれじゃあ結婚式じゃねえか・・・」
羽毛田「いけませんね・・・これでは恋文というよりは誓約書だ。
ここの、「母子の健康を考慮して、少なくとも25歳までには一人目が欲しいのです」の一文も、けっこうな異彩を放っていますね・・・」
小早川「個人的には自信作だったんですけど・・・」
京冨野「お嬢ちゃんが、結婚に夢や理想を抱く気持ちは分かる。
だが、男にとって結婚とは現実と責任だ。そう簡単に二つ返事はできねえ。」
小早川「でもそれが愛なんじゃないですか?私を先輩が愛しているなら・・・」
きょとんとする羽毛田「・・・むこうは愛しているんですか?」
小早川「・・・え?それは・・・たぶん・・・」
京冨野「・・・だいたい、お前さんらは学生だろ?
普通は、まずは彼氏彼女からなんじゃないか?なぜそんなに事を焦るんだ?」
羽毛田「ええ・・・人生の伴侶は真剣に選ぶべきですよ。
あなたをずっと守ってくれる誠実な人なのかをよく判断して・・・」
すると泣いてしまう小早川
「もう、10年以上も考えて真剣に決めたのに・・・ひどい・・・!え~ん!!」
あわてる羽毛田「あ・・・そうでしたか、す、すいません・・・!」
京冨野「校長、謝る必要はないです。
いいか、お嬢ちゃん・・・金も稼いだこともない学生が、結婚生活を甘く考えるんじゃねえ・・・!
所帯を持つということはな、組を構えるということと同じで覚悟がいるんだ・・・!」
小早川「・・・私は朝から晩まで誰よりも働いて、結婚資金も貯金したのに・・・!うえ~~ん!!」
平謝りする京冨野「そうか・・・悪かった・・・!指を詰めるから許してくれ・・・!」
慌てて止める羽毛田「京冨野先生、止めてください・・・!」
その様子を隣の席で会計処理をしながら無言で見つめている華白崎(・・・この女はヤバイ・・・)



放課後
下校する学生たち
山村の下駄箱に案の定ラブレターが入っている。
物陰から下駄箱の山村を見つめている小早川。
山村「・・・さあて今日の夕刊はどんなかな・・・」
その時、ラブレターを山村から取り上げる華白崎。
山村「むう・・・委員長・・・?」
物陰にいる小早川に近づいてラブレターを突き返す華白崎
「あなた・・・いい加減にしなさいよ・・・
相手が優しい山村先輩だからいいものを・・・一歩間違えれば、これは犯罪よ。」
小早川「ひどい・・・!あなたに私たちの何がわかるんですか・・・!」
華白崎「あなたの一方的な行動で、相手が迷惑しているんですよ?」
小早川「そうなの・・・?」
山村「いや・・・だから毎日そう言っているではないか・・・」
華白崎「それに、先生方がおっしゃってくれたように、あなたは家庭を持つことを軽く考えている。
男に甘えて生きられることが結婚ではないのよ・・・
あなたは、家事や育児の経験はあるの?」
小早川「・・・ないです・・・」
華白崎「なら二度と、結婚だなんて言葉を軽々しく口に出さないで欲しいわ。
それに、男の人は山村先輩以外にもたくさんいます。いい加減諦めなさい。」
小早川「次を当たれと・・・??」
華白崎「しかたがないでしょう・・・」
涙目になる小早川「それじゃダメ・・・それじゃダメなの・・・!
わたしは初恋の人と結婚しなきゃダメなの・・・!」
華白崎「そんな自分勝手な言い分の何が愛よ!」
泣き出す小早川「ダメなの~!うえ~ん!!」
胸が痛む山村。
女の涙にひるまない華白崎「泣くんじゃない!」
小早川「先輩の返事を聞かせてください・・・」
山村「われより君を幸せにできる男もいようぞ・・・」
泣きながら走り去ってしまう小早川「ばか~!!」
山村「・・・さすが50m走が6秒5だけあるな・・・あ、転んだ。」
華白崎「風紀委員に頼んで、ラブレターをひと月に最大1通までとするような条例をしいてもらわなくては・・・」
山村「・・・委員長すまなかったな。」
華白崎「いえ・・・嫌われるのは慣れていますので。」



体育館
海野「ええっ!?帰っちゃったの・・・!?」
華白崎「上履きのまま校門から出て行ったので、判断が難しいですが・・・
おそらく下校したのかと。」
花原「初日から幽霊部員とは・・・なかなかやるわね・・・」
ちおり「負けてらんねーな!」
花原「はりあわなくていいから・・・」
海野「本当に超高速で帰宅した・・・どうしよう・・・」
山村「部長よ、委員長を責めないでくれ。
彼女は、同じ女性という立場から、少女に失恋の味を教えたのだ。」
花原「たしかに、カッシーに口で勝てる学生はこの学校にはいないからね・・・」
乙奈「第一部の無双ぶりは今や伝説ですわ・・・」
ちおり「でも面白い子だよね!
今すぐ結婚しなくても、家も家族も、もうあるのにね!」
花原「・・・お前ならわかるけどな・・・」
ちおりの言葉でハッとする山村「・・・そうか・・・そうだったのか・・・
部長、私も早退していいかね?」
海野「・・・え?」
体育館を慌てて出ていく山村「生原会長・・・感謝する・・・!私が愚かであった・・・!」



小さな公園のブランコに乗って震えている小早川。

公園に入ってくる山村
「この公園でビキニパンツやプロテインを毎日そっと置いて行ってくれたのは、君だったんだな・・・」
小早川「・・・先輩・・・」
山村「3月とは言えまだ寒い・・・風邪をひくぞ・・・」
小早川が置いていった荷物とコートを渡す山村。
小早川「・・・ありがとうございます・・・」

並んでブランコに乗る2人。
小早川「何年も、誰もいない朝の街を走ってた・・・
この公園を通って最後の家に新聞を入れるとき・・・
いつも先輩がいました。
家に帰れない子は・・・私だけじゃないんだ・・・
そう思うと、勇気が出て・・・」
山村「なるほど・・・(そういう性癖であったとは言えまい・・・)」
小早川「わたしは・・・あたたかい家庭に憧れていただけなのかもしれない・・・
華白崎さんが言うとおり・・・現実から目を背けて・・・」
山村「ならば・・・キミが求めていたのは、このオレではなく・・・お母上の愛なんじゃないか?」
小早川「でも・・・どうすれば・・・」
山村「・・・お母上に手紙を書くのだ・・・毎日毎日・・・心を込めてな・・・きみの得意技であろう?」
小早川「・・・手伝っていただけますか・・・?」
微笑む山村「このマッスルは、か弱き乙女の味方・・・当然だ。」
目を潤ませる小早川「・・・私の思い込みじゃない・・・先輩はやっぱり優しい・・・」
山村「ラブレターの返事だが・・・今しばらく待ってくれないか・・・
この未熟な私が結婚できるくらい立派な大人の男になれるまで・・・」
笑顔で小早川「はい・・・お互いに・・・」



校外走をする白亜高バレー部
バレー部に戻ってきた小早川「はっはっはっ・・・みなさん・・・あと1周です!ファイト!!」
なんとか小早川についてくる海野「ふうふう・・・これを毎日やってたなんて・・・」
華白崎「体がなまってましたね・・・情けない限りだわ・・・」
吐いている花原「おええええ・・・!」
道端でバテている、運動経験のないちおり、花原、乙奈、ブーちゃんの4人。
道草を食うちおり「うめえ・・・」
その様子を見るさくら「来年はホノルルマラソンでも参加させるか。」
校門でストップウォッチを持つ山村「人は走り続けるしかないのだ・・・人生という名のトラックを。」

『青春アタック』脚本㉙桃園結義

バスの車内
海野「・・・あんな大きいバレー部を廃部にさせちゃって・・・ちょっと心が痛むなあ・・・」
花原「いや・・・それくらいしないと、あのブラックな体質は変わらないと思うよ・・・
あいつら部員をリンチしてたんでしょう?
・・・海野さんは優しすぎよ・・・」
ちおり「だから私は海野さんが好き!!
あのお姉さんとも仲直りできてよかったね!」
後ろの席を振り返る海野「うん・・・みんな監督のおかげ・・・」
酔っぱらって寝ているさくら。
花原「遠征費の件・・・濡れ衣だってなんで言わなかったの?
そうすれば・・・あの学校でそのままバレーが・・・」
海野「だって・・・お金なくしちゃった人・・・きっと思いつめているだろうなって・・・」
感動して号泣する病田「・・・なんて徳の高い人なの・・・!!
わたしを家臣にしてください・・・!」
抱きつく病田をはなそうとする海野「ちょっ・・・よしてください先生・・・!」
海野「結果論だけど・・・私はこの選択に後悔はないよ。
みんなとバレーができたんだから。」

華白崎「これで、対戦チケットはあと1枚です・・・
しかし・・・監督の計画通り、これで決勝までいけるのでしょうか・・・?」
乙奈「あら・・・どういうことですか・・・?」
華白崎「数学でゲーム理論という考え方があって・・・」
花原「あるね・・・」
華白崎「つまり、私たちのような戦略をほかの部もとったとしたら・・・3戦目以降はこう着状態になる・・・このまま全チーム期限切れで失格にでもなったら・・・」
花原「今、どれくらい学校が残ってんの?」
華白崎「142校・・・なので・・・全チームがきれいに対戦したとして・・・(暗算をする)あと6戦はしないと2校にまでは減らない・・・」
花原「あの九頭が初戦のチームをだましまくってチーム数を減らしてくれていたんじゃ・・・」
山村「もう少し放置してもよかったかもな・・・」
ぶんぶんと首を横に振る病田



夜。
白亜高校に戻るバス。
出迎える校長と京冨野。
羽毛田校長「みなさん。お帰りなさい・・・試合の方は順調のようで・・・」
さくら「まあ、計画通りね。」
アタッシュケースを京冨野に渡すさくら。
さくら「そのまま返す。」
驚く京冨野「1円も使わずに、敵をだましたのか?」
さくら「賢いやつをだますのは簡単。」

バスを降りる花原「ほらついたわよ・・・」
花原におぶさって寝ているちおり「にゃ~・・・」
海野「みんな、初戦と第二試合、本当にお疲れ様・・・
今日は久しぶりにおうちに帰ってゆっくり休んでね・・・!」
表情が曇る花原「家か・・・あのボロボロで誰もいない・・・」
華白崎「・・・現実に引き戻されますね・・・でも、私は下の兄弟の面倒を見ないと。
みなさん、お先に失礼します。
それと・・・花原さん・・・崖で命を救ってくれてありがとう・・・ご恩は一生忘れません。」
深々とお辞儀をすると、自宅に帰る華白崎。
花原「できた子だなあ・・・」
乙奈「わたくしたちも失礼しますわ。
お父様が心配しすぎて泣いてしまいます・・・」
ブーちゃんと帰っていく乙奈。
花原「結局家族がいない私たちが残ったね・・・」
海野「花原さん・・・よかったら・・・生原さんと一緒に私が泊まっている学生寮に来ない・・・?」
花原「いいの・・・?」
海野「大丈夫ですよね・・・?」
微笑む羽毛田「もちろん。そっちの方がホームレスの生原さんも安全でしょうし・・・」



学生寮の海野の部屋
花原「おじゃましま~す・・・さすが、よく片付いているなあ・・・」
海野「物がないだけだよ。」
背中のちおりをベッドにおろす花原。
目を覚ますちおり「・・・あれ?草むらじゃない・・・?」
花原「・・・かなしいやつだな・・・ここは海野さんの部屋。」
ちおり「ほえ?・・・わーい!」
海野「目がさめちゃったみたいね。なにか、温かいものでも飲もうか・・・」
コンロでお湯を沸かす海野。
ちおりがこっそりと花原の腕をぎゅっとつかむ。
花原「・・・怖くないよ・・・」
ちおりをなでる花原。
花原「そういや、あんたが好きなお菓子まだあまっていたわよ・・・」
リュックサックを開ける花原。
喜ぶちおり「わ~い青1号だ!」
花原「それは成分であって商品名じゃないぞ・・・」
紅茶を入れる海野。
海野「ピーチティーでいいかな・・・」
花原「最高。」
ちおり「夜更かしパーティーだ~!!」

紅茶を飲む花原「・・・ぶっちゃけていい・・・?」
海野「え?ど・・・どうぞ・・・」
花原「私・・・今まで生きてて全然楽しくなかった・・・
みんな私を怖がって近づいてこなかったし・・・例外はこいつ。」
ちおり「ごっちゃんです。」
花原「わたし・・・海野さんが羨ましかったんだよ。
いつも明るくて、みんなに優しくて・・・こんな完璧な人間いてたまるかって思ってた・・・」
海野「・・・覚えてないのね・・・私・・・明るくなんてなかったよ・・・
このままバレーもできずに就職しちゃうのかって・・・ずっと落ち込んでた。」
花原「そうだっけ?」
海野「地震で両親を失って・・・高校では窃盗の疑いをかけられて転校だよ・・・?
とても明るくなんてふるまえないよ・・・」
花原「ご・・・ごめん・・・」
海野「・・・私以上の不幸な女の子はいない・・・ずうっとそう思ってたけど・・・
生原さんを見てたら・・・元気が出たんだ・・・」
ハイチュウを7粒すべて口に放り込むちおり「う・・・うめ~!」
花原「・・・こいつはいつでも幸せそうだもんな・・・」

海野「ねえ・・・私はもうすぐ卒業して、この高校からいなくなっちゃうけど・・・
これからもずっと・・・私の友だちでいてくれるかな・・・」
花原「何言ってるのよ先輩。当たり前じゃない・・・」
ちおり「今日から一緒に住むんだから、もう家族みたいなもんじゃんね。」
海野「・・・約束だよ・・・?わたし・・・こう見えて・・・けっこうさみしがりなんだ・・・」
ポットでお茶を注ぐちおり「よし!この紅茶で姉妹の契りをかわそう!」
花原「なんだそりゃ・・・」
ちおり「やくざの先生が教えてくれたの!」
花原「なんで極道の盃かわさなきゃいけないのよ・・・」
海野「・・・うん、やろうよ・・・」
ティーカップを掲げる3人。
ちおり「わたしたち姉妹は、同年、同月、同日に卒業することを得ずとも、願わくば同年、同月、同日に死せんことを願わん!」
笑う花原「・・・わたしたちはこれから戦場に出かけるんかい・・・」
海野「いや・・・これからの試合はきっと戦場のはげしさよ・・・」
ちおり「全国制覇だ~!」
3人「おー!!」



翌朝
学校のポストに送られてくる新しい対戦チケット。

生徒会室
華白崎「学校のポストにこれが・・・」
10枚つづりの対戦チケットを会長の机に置く。
花原「・・・なんか最初にもらったやつと違う?」
チケットを手に取る海野「このチケットを消費して試合に勝利した場合、1勝あたり10万円を獲得・・・」
身を乗り出す花原「え?うそ!?」
海野「ほら・・・しかも、敗退して廃部になっても、獲得した賞金は没収されないってよ・・・」
花原「マッスル!まだ生き残っている出場校で、すごい弱そうなチームを探すのよ!」
さくらに相談する華白崎「・・・監督・・・」
さくら「破門戸のやつ・・・よく考えるわ・・・」
海野「どうしましょう・・・?」
さくら「当初の計画通りにいく。マッスルくん、君が探すのは弱小校ではなく、とびきりの強豪校よ。
絶対王者、聖ペンシルヴァニアを消耗させられるね・・・」
出場校リストをめくる山村「了解した。」
さくら「金に目がくらんだチームは勝手につぶしあってくれるわ。都合がいい・・・
それと・・・今回の遠征で大きな課題が見つかった。
うちは選手層が薄い。上武高にはそこを突かれた・・・」
華白崎「メンバーを増やすと?」
さくら「この学校に運動できる女子はいないの?2組フィジカルクラスの担任。」
海野「え?そうですね・・・バレーボールってことになるとちょっと・・・」
ちおり「いればバレー部の活動、はなからできたもんね!」
海野「うん・・・」
さくら「去年から正式導入された後衛特化型選手、リベロ制を相手校が要求してきた場合に備えて・・・少なくとも一人はリザーブがほしいのよね。」
花原「華白崎さんのクラスにはいないの?」
華白崎「私のクラスは3年生がほとんどで、大学の二次試験の後期日程の真っ只中ですからね・・・仮にいても頼めないですよ・・・4組はどうなんです?」
花原「・・・男子で威勢のいいのがいるくらい・・・3組は?」
乙奈「・・・芸能活動でほとんど学校に登校していません・・・」
腕を組む山村「・・・なかなか運動ができる女子生徒というのはいないものだな・・・」
さくら「海野部長、去年の春の校内スポーツテストの結果ってわかる?」
海野「職員室からとってくれば・・・」
山村「監督・・・それはお勧めしないぞ。」
さくら「あらなんで?参考になるかもしれないじゃない・・・」
山村「・・・あんな茶番で国民の体力や運動能力の現状は分からないと思うが。」
にやりと笑うさくら「・・・。海野さん。とってきて。」
海野「わかりました・・・」
山村「よすのだ・・・!」
花原「なんで、スポーツテストを目の敵にしてるのよ・・・わたしも嫌いだったけど、あれ。」



学食
学食に久しぶりにブーちゃんが入ると、それに気づいた付近の学生が集まり歓喜の声を上げる。
学生「うおおおおお!料理長降臨・・・!!」
感涙する学生たち。
ブーちゃん「・・・?」
学生「料理長が不在時のランチタイムは本当に地獄でした・・・」
学生「ホールの子が厨房に入ったんだけど、毎日ひどい料理ばかりで・・・
のべ14人もの学生が腹痛と下痢を訴えて入院を・・・」
キッチンでフライパンを振るスレンダー体型の少年のような女の子。
女の子「へい!A定食お待ち・・・!!」
そのA定食を奪って、箸を付けるブーちゃん。
食べ物をおもちゃにされた怒りで震えるブーちゃん「・・・!」
女の子「はれ・・・?料理長・・・??」
おたまで女の子をぶん殴るブーちゃん。
慌ててブーちゃんを止める学生たち「料理長・・・!料理長そのへんで・・・!!」



スポーツテストの結果をめくるさくら
「おい・・・5組にスポーツテスト全項目A判定の化け物がいるじゃない・・・」
とぼける山村「さて・・・我がクラスにそんなアスリートがいたかな。」
海野「私も知らなかった・・・一体何部の子なんだろう・・・?」
さくら「超高速帰宅部・・・1年小早川一咲・・・」
華白崎「なんですか、その部は・・・」
青ざめる山村「それだけは絶対にやめてくれ・・・!」
花原「あの山村くんがここまで怯えるって・・・どんだけ恐ろしいやつなのよ・・・」
さくら「担任。5組の小早川さんを呼んできて・・・」
山村「いや~・・・実はもう退学したらしいぞ。」
さくら「軍師の命令は絶対よ。呼んできなさい。」
山村「・・・御意・・・」



中庭
小早川「あ~あ、学食のバイトもクビになっちゃったなあ・・・てへ。
次のバイトを探さないと・・・
でもブーちゃん先輩が帰ってきたということは・・・」
気まずそうな山村「こ・・・ここにいたか・・・かずさよ・・・」
顔を赤くする小早川「・・・!先輩!!??
ついに私を迎えに来てくれたんですね・・・!嬉しい・・・!」
山村「いや・・・ちが・・・」
山村に抱きつく小早川「わたし・・・
学校が終わったら速行で帰って、死ぬほどバイトして結婚費用集めたんですよ・・・!
がんばったねってほめてください・・・!!」
山村「離れてくれ・・・!ゼクシィを2冊も買うんじゃない・・・!!」



生徒会室
小早川を連れてくる山村。
大爆笑の花原「ぎゃははははははははは!!!」
海野「花原さん笑いすぎだって・・・!」
花原「だ・・・だって・・・こいつのどこがいいのよ・・・お腹痛い・・・」
山村と腕を絡ませてうっとりする小早川「・・・結納はどうしますか?」
恥ずかしくてたまらない山村「・・・殺してくれ。」
乙奈「なぜ山村さんのことが好きなんですか?」

回想する小早川
小早川(先輩とは小学校の時から一緒で・・・兄弟のいない私のお兄さんがわりでした・・・
先輩は、昔から運動神経がよくて・・・その美しいフォームに、私はずっと憧れていました・・・
それに比べて私はドジばかりで運動会ではいつもビリ。)
クラスメイト「あ~あ・・・またあいつのせいで負けたよ・・・」
運動会で転んで涙を拭う小早川「もう、走るのなんてきらい・・・」
小早川に手を差し伸べる小学生時代の山村
「人生は勝つことよりも負けることのほうが多い。気にするな。
共に走ろう、青春という名のトラックを。」
手をつないで二人で走ってゴールする。
小早川(先輩が教えてくれた・・・走ることの楽しさを・・・それ以来わたしは・・・)

回想終わり。
微妙な表情をする花原「・・・う~ん・・・ちょっとありきたりね・・・」
乙奈「次はもう少し頑張って作ってきてくださいね!」
ショックを受ける小早川「・・・ええっ!!??ちょっこういうのって作るんですか!??」
花原「でも山村にも責任あるわよ・・・なんなのよ、青春という名のトラックを一緒に走ろうって・・・
この子、勘違いしちゃうじゃない。」
ちおり「絶妙にダサいしね!」
山村「・・・その運動会がまったく記憶にないのだ・・・」
さくら「ほいで、かずさちゃん。バレーボールって知ってるかい?」
小早川「・・・へ?」
さくら「勝てば、今よりもいいところで挙式できるわよん。」

『青春アタック』脚本㉘佳人薄命

タクシーの中で汗ダラダラの病田
運転手「お客さん、病院のほうがいいんじゃないですか・・・??」



高校時代の病田。
病気の治療でほとんど学校に通えなかったので、友達がいない。
誰もいない裏庭に隠れて、詩集を読んでいる。
女子たちが病田を取り囲んで詩集を取り上げる。
病田をうつ伏せに倒して、蹴飛ばす。
病田のセーラー服から、持病の薬が落ちる。
その薬を踏みつけてぐしゃぐしゃにする。
病田「はあはあ・・・なんで・・・」
いじめっ子の女子「生きる価値のない女を殴るのに理由なんてある?」



病田「・・・確かに・・・こんな不祥事をした私に生きる価値なんてなかった・・・
名言だったな・・・ふふ・・・」
心配する運転手「お客さん、心療内科にしますか??」

その時、タクシーに女子高生が飛び込んでくる。
病田「危ない・・・!」
急ブレーキを踏む運転手。
女子高生を引いてしまうギリギリで停車するタクシー。
運転手「ばかやろー!!死にてえのか~~!!」
涙を浮かべる女子高生「そうよ・・・」
病田「・・・え?」



公園のベンチに座って、女子高生に暖かい缶紅茶を差し出す病田
「どうしてあんな危ない真似を・・・その制服・・・上武高校ですよね・・・?」
女子高生「初対面の方に話せることでは・・・ご迷惑がかかりますし・・・」
病田「・・・わたし・・・こうみえて高校の先生なんです・・・もしかしたらお力になれるかも・・・」
女子高生「・・・そうなんですか・・・?」
病田「それに・・・あなたの気持ちはよくわかるよ・・・」
女子高生の体中のあざを見る病田
女子高生「どんな大人も最初はそういうのよ・・・」
病田「ううん・・・私も・・・いじめで死にたかったから・・・でも・・・あなたのように勇気がなかったの。」
女子高生「・・・・・・。」
目が潤む病田「今だって・・・けっこう死にたい・・・ねえ、どうすれば車の前に飛び出せるの・・・?
そのあとの迷惑とかそういう悩みは、どう払拭できたの・・・?
教えて・・・一緒に死のう・・・!!」
女子高生にしがみつく病田「ひいい!なんか、話がおかしなことになってませんか・・・!!」

自己紹介をする女子高生
「私は、上武高校女子バレー部の鶴橋美羽です・・・」
病田「病田代和香です・・・」
鶴橋「じつは・・・わたしだけ部でカンパするお金を払えなくて・・・
先ほど、壮絶なリンチにあったんです・・・」
病田「わたしの未来かもしれない・・・
で、金額は?」
鶴橋「ひとり10万円。うちは部員が多いから、合計で1000万円集めないと、今日の試合には勝てないとか・・・でも私の家は貧乏だから・・・」
病田「ほかの子は集められたんですか?」
鶴橋「はい・・・なかにはリンチを恐れて窃盗や売春などでお金をかき集めた子もいるそうです・・・
でも・・・あたしは・・・臆病だし・・・こんなに地味だから売春だってできない・・・」
泣きながら眼鏡のレンズを吹く鶴橋。
病田「・・・そんなことは、絶対にやる必要はないです。」
鶴橋「ううう・・・私なんか生きる価値なんかないんだ・・・」
病田「・・・それ、私たち底辺にとって永遠のテーマだよね・・・」

鶴橋(・・・励ましてくれない・・・??)

病田「・・・監督には相談したの?」
鶴橋「何を言ってるの??あの監督こそすべての首謀者よ・・・
この前も、病田っていう馬鹿な女をカモにしてやったって・・・
やまいた・・・」
話していてその人物が、隣の女性教員だと気づく鶴橋。
病田「わたし・・・小学中学と長いこと闘病生活をしていたの・・・
だから学校で友だちが作れなかった・・・
誕生日パーティもいつもひとりぼっち・・・
みんなについていけるように一生懸命院内学級で勉強して・・・
やっと高校に入学できたと思ったら・・・
ガリ勉が気に食わなかったみたくて・・・いじめられた。
・・・私は、この薬がないと生きていけない・・・」
懐から薬を取り出す病田。
「あるとき、いじめがエスカレートして・・・これを隠されちゃってね・・・
私はあそこで一度死んでしまったのかもしれない・・・」
鶴橋「な・・・なんで、そんな目にあって、今も頑張って生きているんですか・・・?」
病田「高校の担任の先生がいい人でね・・・
どんな人間にも必ず味方になってくれる人がいる・・・そう言ってくれたんだ・・・
私・・・その人のことが好きになっちゃって・・・卒業式の日に告白したけど・・・
職員室で机を並べられる日を待っているって・・・
ていよく断られちゃった・・・へへ・・・」
鶴橋「私の学校には九頭に逆らえる教師なんて一人もいない・・・!」
立ち上がる病田。
病田「・・・その教師に・・・私がなってもいいかな・・・」



上武高校
ホスト「え?お金はいらない?」
受話器をおく。
ホスト「あの女・・・感づいたらしい。」
部員「どうすれば?」
ホスト「拐っちゃえ。」



さいたまスーパーアリーナ
海野「え・・・?出場できない・・・?」
黒服「うむ・・・上武高対白亜高は9人制バレーで申請が出ている・・・」
海野「9人制・・・?普通、高校バレーは6人制では・・・!」
黒服「この大会では試合形式は自由だ。
つまり、あと3人を選手登録しなければ試合は認められない・・・」
乙奈「そんな・・・いったい誰が上武高校とそんな申請を・・・」
山村「病田先生だ・・・」
華白崎「これは、上武高校の罠ですよ・・・!
きっと先生を騙したんです・・・!」
ちおり「6人でやっちゃダメなの?」
黒服「一度9人制で申請している以上それは認められない・・・
試合開始時刻までに9人集まっていなければ・・・お前たちは不戦敗だ・・・」
海野「そ・・・そんな・・・!」
花原「あ・・・あのやろ~・・・」

ニヤニヤしながら近づいてくる九頭「あら、みなさんお揃いで・・・」
花原「船の時といい、もう許さない・・・!」
九頭「なんのことかしら?みなさんと9人制バレーができることを楽しみにしてるわ・・・ふふふ・・・」
山村「1000万円で負けてくれるのではないか?」
九頭「そのつもりだったよ。そのつもりだったけど・・・試合ができないんじゃ仕方がない・・・」
花原「なら金を返せ・・・!」
九頭「なんで?」
花原「う・・・」
立ち去る九頭。

海野「・・・どうしよう・・・」
華白崎「そういえば、監督の姿が見えませんが・・・」
山村「ちょっと、よるところがあるとか言ってたな。
諸君らは午後の試合にむけて練習をしていろと言っていたぞ・・・」
花原「練習したって、試合に出れないんじゃ意味がないじゃない・・・!」
海野「いや・・・さくら先生を信じよう・・・
先生は監督を引き受けるときに私たちに条件を出した・・・
指示には必ず従ってほしいと・・・」
花原「海野さん・・・」



千葉県織戸高校
体育館では女子バレー部が活動をしている。
部員「キャプテン・・・お客様が・・・」
キャプテン「誰?」
体育館に入ってくるさくら「・・・織戸高校キャプテンの葛城ユリさん?」
葛城「ええ・・・あなたは?」
さくら「あんたたちが追い出した海野さんが通っている白亜高校の監督。」
葛城「・・・その名前は忘れました・・・」
さくら「あんたたちは、最後の試合にも出ないで引退?」
葛城「私たちは勝つことよりも楽しむことを大切にバレーをしているんです・・・
もう帰ってくれませんか?」
さくら「まあ・・・青春にもいろいろあるからね・・・
ただし・・・2年前の事件の真相を知りたくない・・・?」
葛城「・・・あれは海野さんが全国大会の遠征費を盗んだんです。
私の推理では、彼女ははなからそれが目的でうちの高校を強豪校にした・・・
あの子は両親もいないし、金に困っていた・・・
犯行の同機は十分にある・・・」
さくら「名推理ね・・・で、そんな大切な遠征費はどこに管理していたのかしら?」
葛城「・・・?大金ですからね・・・金庫かなんかじゃないですか?」
さくら「・・・コインロッカーよ。」
葛城「そんなところに入れないでしょう・・・」
さくら「知らないの?結構安全なのよ。コインロッカーって・・・
そして、当時の部長にそれを提案して、家の都合で転校した部員がいたはず・・・
覚えてない?」
葛城「・・・なにがおっしゃりたいの?」
さくら「私は、うちの学校に海野さんが転校してきたときから、すぐに分かったわ。
・・・あんたの推理はくそってことよ。」



ホストクラブに監禁される病田と鶴橋。
病田「・・・ここから出してください・・・!試合が9人制であることをみんなに伝えないと・・・!」
ホスト「試合が終わるまでは、ここにいてもらうよ・・・そして、そこのお前。
よく、ぼくのりりあを裏切ってくれたね・・・
君たち・・・焼きが足りなかったんじゃないか?」
上武高バレー部員が鶴橋を取り囲む。
鶴橋の前で手を広げる病田「や・・・やめて・・・!
こんな部活動間違ってる・・・!
部員同士で傷つけあって・・・こんなの悲しいよ・・・!」
笑顔で病田に近づくホスト「病田先生・・・」
病田をひっぱたくホスト。
鶴橋「先生・・・!」
病田の群青色の髪をつかむホスト「他校のことに口を出すんじゃないよ・・・
それに昨日の金はどこにやった・・・?」
病田「それは・・・」
ホスト「あれはこの店の売り上げだ・・・返してもらえないかな・・・」
病田「だって、あれはりりあちゃんが・・・」
ホスト「気が変わったってさ・・・」
病田「・・・そんな・・・」
もう一度ひっぱたくホスト「さあ、金を返せ。」
鶴橋は部員たちにリンチされている。
部員「この裏切り者!あんたのせいで部がなくなるところだったのよ・・・!」
床でうずくまる鶴橋「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・!」
病田「やめて・・・!」
何かに気付くホスト「・・・おい。」
病田の胸ポケットを触るホスト。
ボイスレコーダーが入っている。
青筋を立てるホスト「・・・なんだ、これは・・・?」
病田「し・・・知らない・・・!」
立ち上がってスーツの襟をなおすホスト「・・・二人ともぶち殺せ。」
部員「しかし・・・」
ホスト「1000万円を紛失した挙句、こんなくそみたいな真似しやがったんだ・・・
この女は心臓が弱い・・・スタンガンの一つでもあてておけば、病死ってことになるさ・・・
お前は・・・タクシーにひかれて死にたかったんだよな?」
病田「私はどうなってもいい・・・でも・・・美羽ちゃんだけは助けてあげてください・・・!」
ホストにすがり付く病田「お願いします・・・!
まだ、ほんの子どもじゃないですか・・・!!」
ホスト「じゃあ、お前は死ぬんだな。」
ぼろぼろの鶴橋「先生・・・!」
覚悟を決める病田「私なんかの命で生徒が守れるなら・・・」

その時、ホストクラブに野良ネコや野良犬が大挙して入ってくる。
ワンワン吠える凶暴な野良犬の群れ。
倒れるシャンパンタワー。
絶叫して逃げ出す部員たち。
ホスト達「な・・・なんだ、こいつら・・・!」
一羽のカラスが飛んできて、ホストからボイスレコーダーを奪ってしまう。
カラスはそのまま、入り口にいるセーラー服の高校生の腕にとまる。
ホスト「なんだお前は!!」
有葉理央「・・・これで、あなたはもう終わり。
新宿の動物に食われたくないなら、二人を解放しなさい。」



さいたまスーパーアリーナ
コートに並ぶ白亜高校と上武高校
黒服「もう15分で試合が始まるが・・・」
九頭「人数が集められなかったのなら残念だけど、私たちの勝ちね。」
?「待ちなさい!」
九頭「誰?」
誰も知らない女子高生がコートに入ってくる。
「神奈川県立第四高校女子バレー部、風間ケイト推参・・・!
義によって白亜高校の助太刀に参ったぞ・・・!」
ちおり「・・・だれ?」
首を振る海野
ケイト「お前たちの非道な振る舞い・・・目に余っていた・・・!
不戦敗で部を失った数々の高校の恨みをこの私が晴らす・・・!」
海野「どなたかはよく存知ませんが・・・風間ケイトさん、感謝します・・・!」
花原「・・・でも、まだ2人足りないわよ・・・!」
ちおり「ねえ、なんで3人でこなかったの・・・?」
ケイト「・・・え?」

その時、コートに理央と葛城が現れる。
葛城「私たちもいるわ・・・」
海野「!!ゆ・・・ユリちゃん・・・!!??なんでここに・・・」
ちおり「第1話のお姉さんだ!!」
葛城「・・・海野さん・・・謝って済むことじゃないけど・・・ごめんなさい・・・」
海野「・・・え?」
葛城「・・・うちの学校の遠征費を盗んだのは・・・あなたよ!」
九頭を指さす葛城。
葛城「海野さん、覚えてない・・・?
この子はうちの学校のバレー部でマネージャーをやってたりりあよ。」
海野「あ・・・確かに・・・!船であった時、どっかであったことあるなって思ったの・・・!」
葛城「あんたはコインロッカーに遠征費を保管させ、カギを紛失したと嘘をつき遠征費を盗んで転校した・・・そしてその罪を海野さんになすりつけたんだ・・・!」
九頭「記憶にないわね・・・」

こちらに歩いてくるさくら「それは通用しないんじゃない?昨日もやってたんだから・・・」
九頭「しょ・・・証拠はあるのか!」
理央「・・・私の動物たちが全部見てたよ・・・」
病田「私もコインロッカーにくるりりあちゃんを見ました・・・」
九頭「うそでしょ・・・!」
さくら「・・・私は病田先生にこうお願いしたの・・・あえて騙されてやれ、と・・・」
九頭「・・・騙しやがったな・・・!」
さくら「私とやりあうには役不足だったわね、小娘・・・」

花原「なんか、続々人が増えているけど・・・いったいどういうこと?さっぱりわからないわ・・・」
海野「で・・・でも、これで9人集まった・・・理央ちゃんも来てくれてありがとう・・・!」
理央「いえいえ。都会の動物もかわいいですね・・・」
さくら「・・・これで文句はないわね、審判?」
黒服「ああ。」
さくら「さあ、あなたが大好きな9人制バレーをしましょう・・・」
九頭をにらみつける、ケイトと理央と葛城
葛城「・・・9人制は確かローテーションはないはずよね?
海野さん・・・私たち3人を前衛にしてくれない?
私は勝ち負けにはこだわらないけど、スパイクで時速150㎞が出せるわ・・・」
理央「いいですね・・・本当の弱肉強食を教えてあげましょう・・・」
ケイト「成敗・・・」

怯える九頭「じょ・・・冗談じゃないわ・・・!
こんな試合やってられるか!」
上武高の部員「で・・・でも、試合を放棄したらうちの部は廃部に・・・!」
部員「そんなのいやです・・・!!」
九頭「うるさい!なら、あんたたちで勝手にやってなさい!私は帰る・・・!!」
コートから逃げ出そうとする九頭。

破門戸「おやおや・・・彼女ですか・・・レイさんが言っていたスポーツマンシップのかけらもないお馬鹿さんというのは・・・」
狩野「はい・・・」
九頭「あんたは・・・」
破門戸「・・・連れて行きなさい。」
狩野に取り押さえられる九頭「ちょっと・・・!離してよ・・・!」
破門戸「安心なさい。警察には突き出しませんよ。」
九頭に微笑む狩野「・・・うれしいわ・・・やっとあなたを殴れる。」
絶望する九頭「・・・・・・!!」

ちおり「クズの部長いっちゃったよ?」
花原「うん・・・」
海野「せっかく再会できたのにな・・・」



さいたまスーパーアリーナを後にする白亜高校の面々。
病田のあとを追ってくる鶴橋。
「病田先生・・・!」
病田「美羽ちゃん・・・」
頭を下げる鶴橋「ありがとうございました・・・わたし・・・先生がいなかったら・・・今頃は・・・」
病田「わたしの方こそ美羽ちゃんに会えてよかった・・・
わたし・・・教師としてもう少し頑張ってみます。」
鶴橋「先生のこと・・・一生忘れません。・・・また、会えますよね?」
微笑む病田「待っています・・・職員室で机を並べられる日を。」



白亜高校
くしゃみをする羽毛田校長「はくしょい!」
京冨野「校長・・・花粉症ですか・・・?」
羽毛田「はは・・・失敬・・・」

『青春アタック』脚本㉗表裏比興

ついに幕を開けた春の高校バレーバトルロイヤル大会――!

高体連本部ビル
狩野「参加した全国1350校は2日間で624校にまで半減しました・・・」
破門戸「ほほほ・・・全国にはびこる無用な部活をこれほどまで簡単に処分できるとは。」
部屋に入ってくる黒服「失礼します。
試合の結果に不服だという高校が、廃部を拒否して醜く騒いでおりますが。」
狩野「・・・どういたしますか・・・?」
破門戸「・・・懲らしめてやりなさい。」



さいたまスーパーアリーナ
つかみ合いの喧嘩をしている女子バレー部員たち。
黒服の審判「こら!やめんかみっともない!!」
泣き喚く部員「こんな卑怯な真似して許さない・・・!」
部員「ふん、騙される方が悪いのよ!」
部員「殺してやる!!」
審判「よさないか・・・!離れろ!!」
部員「・・・高校最後の大会で試合もできずに廃部なんて・・・!あんまりよ!!」

もめてる女子部員たちに近づく狩野。
審判に話しかける。
狩野「駄々っ子はこいつ?」
審判「は・・・」

部員「廃部なんて私は絶対認めない・・・」
その直後、部員が後頭部を殴られて地面にうつぶせに倒れる。
ネットを張る鉄製のクランクを持っている狩野。
部員「あが・・・」
部員の髪をつかんで、契約書を差し出す狩野。
血まみれの頭を朱肉にして、拇印を押させてしまう。
契約書を黒服に渡す狩野「廃部手続きを。」
審判「わかりました・・・」

狩野「・・・で?事情は・・・」
黒服「試合形式で両者に相違がありまして・・・」
書類に目を通す狩野「・・・ふうん・・・」
黒服「こちらを。6人制の6の左に小さく1と・・・」
狩野「16人も部員がいなかったわけね・・・」

詐欺まがいのやり口で勝利した部員
「そもそも日本のバレーボールは16人制でしょう?」
狩野「・・・個人的にはあんたを殴りたかったわ・・・
詐欺師の名前を聞いてあげる・・・」
ニヤリと笑う部員「上武高校バレー部監督・部長の九頭(くず)りりあよ・・・」



東京の傾国ホテルのロビー
次の試合に向けてチェックインする白亜高校バレー部。
病田「明日はさいたまスーパーアリーナで上武高校との第二試合になります・・・」
花原「船のあいつらか・・・気が重いなあ・・・」
ちおり「じゃあお風呂入らなきゃ。」
花原「毎日入りなさい・・・」

ホテルのロビーにある巨大なテレビには、NHKのニュースが写っている。
ニュースではダム建設の強硬手段に出た建設大臣が謝罪会見を行っている。
建設大臣「現場の暴走を把握できず、遺憾に思います・・・」
テレビを見て花原「うそばっか。」

記者「建設予定地の土地収用は大臣の指示だったんじゃないんですか!」
建設大臣「まったく把握しておりませんでした・・・」
記者「音声や映像も残っているんですよ!しらを切るんですか!」
紛糾する記者会見。

華白崎「ダム建設は中止になりそうですね・・・」
乙奈「本当に良かったですわ・・・」
海野「万石先生がダム建設が生態系に与える影響を告発したらしいよ・・・
そのうえで、建物ごと私たちを口封じしようとした、つよめさんの記事が出ちゃったから・・・」
華白崎「・・・これ、現政権倒れるんじゃないですか・・・??」

フロントから戻ってきたさくらが部員にカギを渡す。
「ほい、部屋のカギ。三年と、一年・二年で部屋を分けたから。」
バスから荷物を下ろす山村「花原さんよろしくな・・・」
少し戸惑う花原「・・・え?」
さくら「男のあんたは、私たち教師の部屋で酒をつぎなさい。」
山村「では、ご相伴にあずかろうか・・・」
病田「山村君は未成年です、先生・・・」

アタッシュケースを持ってロビーに入ってくる京冨野
「・・・部屋はスイートにした方が安全だぞ・・・」
さくら「あら、京ちゃん早かったわね・・・」
アタッシュケースを渡す京冨野「約束の金だ。」
ざわつくロビーの客たち。
さくら「これほどまでに、そのセリフが似合う教師もいないわよ・・・」
病田(ミンボーの女みたい・・・)
さくら「京ちゃんも一杯やってく?」
京冨野「そうしたいのはやまやまだが、卒業式と入学式の雑務が残っててな。
また、誘ってくれ。」
さくら「あら、残念。年度末だもんね。」
駆け寄るちおり「ヤクザのせんせー!」
ちおりをなでる京冨野「お嬢。がんばれよ。お前を入学させたオレの目に狂いはなかった。」
さくら「さあ、部屋で悪だくみでもしようか。」



教師とマッスル山村のスイートルーム
上武高校の資料を並べる病田。
病田「妹によれば、上武高校は対戦形式の合意書で詐欺まがいの行為をして、戦わずして勝利を重ねているそうです・・・」
さくら「いいねえ・・・嫌いじゃないわ、そういう汚いやり口・・・」
病田「監督は、この・・・部長を兼ねる高校3年生の九頭りりあさんで、女子バレー部員120人の頂点に立っている実力者です。」
酒をさくらにそそぐ山村「・・・なんと、ずいぶん部員数が多いではないか。部員数実質一人のうちとは対極にあるな。」
病田「上部高校は女子高ですからね・・・バレーの強豪校ともあって女子バレー部に入部する子が多いみたいです・・・」
さくら「ほいで、この九頭ってやつはどんな性格?」
言いづらそうな病田「・・・い・・・妹によれば、人間のクズだと・・・」
さくら「教育者としてどうなの?今の発言・・・」
山村「聞き捨てなりませんな。」
慌てる病田「・・・い・・・妹が言ってたんですって・・・!
ミスをした部員へのしごき、いじめ、暴行など、なんでもありで、残忍な性格な上に、非常に頭が切れると・・・」
さくら「実際に頭がいいかは置いておいて・・・こいつはそれを自覚してそうかな。」
病田「定期試験の成績も上位なので・・・おそらくは・・・」
さくら「船でもうちの子たちを見下してたから、だいじょうぶか。
・・・よし。」
病田「どういうことでしょう・・・」
アタッシュケースを渡すさくら「病田先生にこのお金を託すから、九頭と八百長の交渉を取りまとめてくれない?」
病田「わわわ・・・私がですか・・・?私には絶対ムリです・・・!!
・・・口下手だし・・・臆病だし・・・頭悪いし・・・」
さくら「慶応大学文学部卒が何言ってんのよ・・・」
山村「こういう汚れ仕事は、監督が向いているのでは・・・?」
さくら「マッスルくん、兵法を分かってないわね。
孫子いわく、ヨゴレ芸人、熱湯風呂に飛び込んでも、肥溜めには落ちず、よ。」
涙目になる病田「あたし・・・肥溜めに飛び込むんですか・・・!?」



アタッシュケースを抱えてタクシーに乗り込む病田
「こんな仕事ばっかり・・・もう・・・なんなのよ・・・」



スイートルーム
上武高校に携帯を入れるさくら。
さくら「もしもし・・・上武高校の九頭監督ですか・・・?
白亜高の監督をしております吹雪です・・・はい・・・お世話になっています。
例の件ですが・・・わたくし、都合が悪くなりまして・・・顧問の病田という者を行かせますので・・・
ええ・・・よろしく。」
携帯を切る。
さくら「・・・これで、連中は病田先生の素性を調べるはず・・・」
山村「われが護衛につかなくてよかったのか・・・?」
さくら「ムキムキのあんたがいたらやつらは委縮しちゃうわ・・・
ああいう連中は相手が弱い時こそ隙を見せる・・・まあ、見ていなさい。」



新宿にあるホストクラブ
タクシーを降りる病田「こ・・・ここが待ち合わせ場所・・・??」

シャンパンタワーが並ぶ店内。
イケメンホストに囲まれながらドレスを着て奥のシートに座っている九頭
「お待ちしてましたわ、病田先生・・・!わたくし、上武高監督の九頭です。
お会いできてうれしいわ・・・」
汚れたリクルートスーツを着て落ち着かない病田「顧問の病田です・・・」
九頭「こういうお店は初めてかしら?何を飲みます?」
病田「・・・わたし・・・お酒が苦手なので・・・」
九頭「じゃあ、ソフトカクテルかなんかを・・・」
ホスト「かしこまりました。」
病田「ああ、いえ・・・おかまいなく・・・あいにく持ち合わせがないので・・・」
病田のアタッシュケースに目をやる九頭「またまた~あ・・・」
カクテルを持って来て、病田の隣に座るホスト「お隣失礼します・・・」
赤くなって照れる病田「ち・・・近いのでは・・・」
ホスト「御迷惑ですか?」
病田「い・・・いえ・・・そんなことは・・・
こんな美男子の方が、わ・・・私なんかのお隣に・・・ありがとうございます・・・」
微笑む九頭「当店ナンバー1ホストのナカノオオエノオウジです。」
ホスト「ナカノオオエノオウジです。病田先生は、うるんだ瞳が素敵な方ですね・・・」
病田「そ・・・そうですか・・・?」
ホスト「すいこまれそうだ・・・この群青色の髪の毛も、青白い肌も美しい・・・」
調子に乗る病田「よ・・・よく言われるの・・・」
ホスト「なにか注文してもよろしいでしょうか・・・」
システムをよく知らない病田「え?ええ・・・何でもご自由に・・・」
ホスト「シャンパンタワー入りまーす!!」
ホスト達「病田先生ありがとうございまーす!!」
病田「あはは・・・」
九頭「・・・で、約束の前金は・・・?」
アタッシュケースを机の上に置く病田「このケースに1000万円が入っています・・・
このうち200万円を前金として支払い・・・
本校が勝利した際に、残りの800万円を当座預金に振り込む形で・・・」
九頭「あら?私たちを信用していないの?」
病田「い・・・いえ・・・決してそういうわけでは・・・」
九頭「私は、120人の部員を預かりながらも、廃部の腹を決めたのですよ?
前金が1000万円でも正直足りないくらいだわ。」
病田「確かに・・・そうですが・・・」
九頭が咳払いをする。
ホスト達が退室していく。
九頭「よわかちゃん・・・って呼んでも?」
病田「え?ええ・・・」
九頭「腹を割ってお話ししましょうよ。よわかちゃん。
私は、あなたを買っている。
確か大学時代の作品が芥川賞の最終選考にまで残っていましたよね?」
病田「な・・・なんでそれを・・・?」
九頭「わたし、先生の処女作『ウェーイの森』の大ファンなんです。」
一気に心を開く病田「ほ、本当ですか!?」
九頭「自身のつらい闘病生活を題材にした結末は涙が止まりませんでした・・・
あなたの才能はもっと世間に評価されるべきです。
最近は、作品は執筆してないんですか?」
病田「・・・教師の仕事が忙しくて・・・」
九頭「本当にもったいないわ・・・
よわかちゃんみたいな天才文学者が、こんな小間使いみたいなことをやらされて・・・
白亜高校の給料は?」
病田「それは・・・」
九頭「それで、ご病気の治療費は賄えるんですか?難病なので保険適用外ですよね?」
病田「ローンをしてます・・・」
九頭「よわかちゃん・・・わたしはあなたに長生きをしてもらいたいの。
この1000万円はそのままお返しします。
さらに、1000万円を支払います。」
アタッシュケースを机に乗せる九頭。2つになるアタッシュケース。
病田「・・・ええっ??」
九頭「だから・・・私の“おともだち”になってほしいの・・・」
ホストが伝票をわたす「代金はこちらになります。」
伝票を見て酔いがさめる病田「270万円って・・・!」
ホスト「つけにしますか?」
九頭「私が払っておくわ。下がりなさい。」
ホスト「かしこまりました。」
病田「そんな・・・こんな大金・・・」
微笑む九頭「いいのよ・・・おともだちなんだから・・・」



ホスト「お嬢様おかえりお気をつけて・・・」
頭を下げるホスト達「ありがとうございました!!」
笑顔でタクシーに乗る病田を見送る九頭。
タクシーが走り去ると、表情を変える。
九頭「ちょろい女・・・とっとと病気でくたばれ。」



ホテルに戻ってくる病田。
さくら「どうだった首尾は?」
病田「え・・・ええ、まあ・・・」
さくら「八百長には乗ってきた?」
病田「はい・・・最終セットでさりげなく負けてくれるそうです・・・」
さくら「なめてるわね。第一セットからぼろ負けしろよ。」
山村「直前で裏切るんじゃないのか?」
病田「そ・・・それはないかと・・・」
山村「アタッシュケースは?」
病田「前金は要らないということなので、駅のコインロッカーに預けちゃいました・・・」
さくら「あら、1000万円すべてふんだくると思った。」
山村「しかし、コインロッカーに貴重品は不用心ではないか?」
さくら「いや・・・賢い。あの手のコインロッカーにはだいたい防犯カメラが設置されてるからね。
駅前なら常時駅員がいるし、交番も近いしね。」
病田(アタッシュケースが二つに増えたなんて言えない・・・)



駅のコインロッカー
駅の窓口に現れる九頭「すいません・・・コインロッカーのカギを紛失してしまったんですけど・・・」
駅員「では、管理会社につなぎますので、ロッカーの番号を教えてください。」
九頭「119です。」
受話器を取る駅員「・・・では、こちらに住所、氏名、電話番号を・・・」
九頭「はい・・・」
病田先生の個人情報を書く九頭。
駅員「管理会社がマスターキーで開けてくれるそうですが、鍵の弁償で2000円かかるそうです。」
九頭「そうですか、わかりました・・・」
駅員「気をつけてくださいね、病田さん・・・」
九頭「御迷惑をおかけしました。」
九頭(たった2000円で2000万円をいただきよ・・・)



翌朝
コインロッカーが開いていることに気づき青ざめる病田
「そんな・・・!」

動転して、公衆電話で九頭に電話をする病田
「本当にごめんなさい・・・わたし・・・九頭さんにいただいたお金を紛失しちゃって・・・」
九頭「いいから、落ち着いて・・・わたしたちはお友だちじゃない・・・」
号泣する病田「ううう・・・」
九頭「白亜高校のみんなにはどう説明するつもり・・・?」
病田「1000万円なくしちゃったって素直に謝ります・・・」
九頭「それはやめた方がいいわ・・・あなたを顎でこき使う連中よ。」
病田「そんなことは・・・!
部員のみんなは優しい子たちばかりで・・・」
九頭「心優しい先生はともかく、お金が絡むと人は変わるの。
もともと、白亜高校の資金は反社会勢力から借りた金でしょう?」
病田「裏カジノって言ってました・・・」
九頭「・・・きっと殺されるわよ。」
病田「りりあちゃん・・・わたし殺されたくない・・・!」
九頭「だいじょうぶ、学校に1000万円のアタッシュケースを用意するわ。
でも、今回はさすがにそのままあげるわけにはいかない・・・」
病田「貸していただけるだけで、けっこうです・・・!」
九頭「では印鑑登録をした実印を持って来てね。」
病田「はい・・・!」

背後から声をかけるちおり。
「せんせーいくよー!」
受話器を切る病田「はい・・・ただいま・・・!」



バス乗り場
海野「・・・え?電車で会場に向かうんですか?」
病田「はい・・・ちょっと急用がありまして・・・みなさんは先に向かっててください。」
ちおり「せんせーとバスであそびたかったな~」
病田「はは・・・帰ってきたウルトラマンごっこはまた今度で・・・」
ちおり「あたし、先生大好き!
顔色がいつも悪くてかいじゅう役にぴったりだもの。
今日は特に青ざめてて、青色発泡怪獣アボラス役にピッタリ・・・」
病田「そういっていただけると光栄です・・・」
海野「試合は午後三時開始です。
私たちは午前中はアリーナ第2小ホールで練習をしていますので。」
ちおり「絶対来てね!」
病田「わかりました・・・」
さくら「病田先生・・・」
ビクッとする病田「・・・ひいいい!はいいい!!」
さくら「・・・頼んだわよ。」
病田「バッチリです・・・!!」

出発するバスを見送る病田。
クルリと振り向き、タクシー乗り場に手を振る。
病田「タクシー!!上武高校まで~~!!」
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