『80日間宇宙一周 From Earth with Love』脚本⑧

警察署のオフィス
警官から二人に所持品が返される。
ミグの方を向くゲオルグ「余計なことしちまったかな、まあオレの供述がなければあんたは一生塀の中だったがな。で、ええとあんたがTIAの・・・」
イワン「イワン・ウェイドだ」
ゲオルグ「天王警察のゲオルグだ。サーペンタリウスがこっちで悪巧みしているという情報が入ってな、TIAと共同で捜査に当たれとよ。」
ゲオルグと握手するイワン「よろしく・・・そちらで何かわかっていることは?」
懐から写真を取り出すゲオルグ「イルミナ・ヴェルヌ博士は知ってるか?」
写真を受け取るイワン「人類最高のIQをもつ科学者・・・確か専門は生物学・・・」
ゲオルグ「微生物だ。数年前うちの星でサーペンタリウスによるバイオテロ事件があってな。
まあ幸い未遂に終わったんだが、その生物兵器を開発したのがヴェルヌだ。」
ミグ「もしかしてその事件って・・・」
ゲオルグ「ああ、ライトが解決した事件だよ・・・そういえば、なんであいつがこの事件をあっさり解決できたのか言ってなかったよな。ライトにタレコミがあったんだ」
ミグ「?」
ゲオルグ「ヴェルヌは地球時代のライトの幼馴染だ。
ヴェルヌがサーペンタリウスを裏切りライトに情報を漏らしたのさ。
その後ヴェルヌは生物兵器開発の罪で刑務所行き。」
ミグ「・・・・・・。」
イワン「彼女は脅されて兵器を作らされていたのかもしれないな・・・」
ゲオルグ「ヴェルヌの公判記録を読んだんだが、ろくな裁判もせず有罪が確定。
宇宙一厳重な刑務所、月面のトランキュリティにぶち込まれた。
どう思う?」
イワン「静かな海に沈められた人魚姫ってとこか・・・
よほど重要な情報を握っているんだろう、サーペンタリウスにとって・・・そして」
ゲオルグ「月を管轄する地球連邦にとってもな。
トランキュリティ刑務所に入れたのは蛇使い共からかくまうためでもあったんだろ」
イワン「例の生物兵器はどうなった?」
ゲオルグ「地球連邦がすべて差し押さえた。少なくとも天王星のものは全て。」
ミグ「それで・・・その人をどうするんですか?」
ゲオルグ「ああ・・・死刑が確定したんだ。執行は三日後。
そしてこれを見てくれ。先週のヴェルヌの面会者だ」
刑務所の監視カメラの写真を見せるゲオルグ
ミグ「ピカール卿・・・!」
イワン「トランキュリティに行っていたのか・・・」
ミグ「ピカール卿が裏で動いて、彼女を死刑に??」
イワン「いや、死刑になる前になにか大事な情報のやり取りをした可能性もある・・・」
ゲオルグ「ヴェルヌが開発した生物兵器は太陽系すら滅ぼしかねない代物だ。
言っとくが、これは大げさな表現じゃねえぞ。」
ミグ「じゃあ・・・もし、そんなものがまだどこかに残ってたとしたら・・・」
ゲオルグ「なんとしても奴らの企みを阻止しねえと。
ヴェルヌが死刑になったら、生物兵器の手がかりは消えちまう」
写真を見つめるイワン「・・・・・・。
・・・で、TIAは何をすればいいのかな?」
ゲオルグ「冗談はやめろ地球野郎。こちとら警察だ。法に反することはできねえんだよ。
オレの言ってる意味わかるよな?」
イワン「なるほど・・・ようくわかったよ。」
ゲオルグ「わかればいい。」
頷いて部屋から出ていくゲオルグ。

ミグの方に向き直るイワン「ミグお別れだ。次の任務なんでね・・・」
ミグ「いえ、私にも手伝わせてください。貿易商の仕事、興味があるんです」
イワン「ダメだ・・・トランキュリティは危険すぎる。」
ミグ「だからこそ力になりたいんです・・・」
首を振るイワン「キミにはもっと大事な任務があるだろ。」
ミグ「・・・・・・。」
イワン「彼のそばにいてやれ・・・」
ミグ「今度は帰ってきますよね・・・?」
イワン「ああ、約束する。」



病院――夜。
ライトの個室。
ドアには「面会謝絶」のプレート
ベッドで横になりながら、テレビのチャンネルを回すライト
どのチャンネルも自分が誹謗中傷を受けている
ライト「まるで犯罪者になったような気分やな・・・」
一つだけライトのニュースではなく、惑星連合のサミットを報じている。
そのチャンネルで止めるライト。
キャスター「今月火星で行われる惑星連合首脳会議、通称“宇宙サミット”は宇宙温暖化問題がテーマで、宇宙に放射される熱源の世界的な削減目標について話し合われる予定です。
宇宙温暖化とは、宇宙全体が収縮していくことで銀河どうしが近づき、徐々に平均温度が上がっていくという仮説ですが、この宇宙の未来は研究者のあいだでも意見が分かれており、宇宙温暖化にどれだけ人為的な活動が影響しているのかはわかっていません。
しかし急進的なエコ派は先日のコズミックグランプリにも反対し大規模なデモを・・・」

デモの様子が映る。
エコ派のプラカードに「ライトのクラッシュは宇宙を汚した当然の報い」と書かれている。

テレビを消す。
ため息をつくライト「これで全局制覇や・・・」
ノックのような音が聞こえる。
ライト「面会謝絶や・・・書いてあるやろ・・・」
ロープをつたって窓から入ってくるイワン「こんばんは」
ライト「・・・そんなことまでしてオレに悪口言いたいんか?」
部屋に降りるイワン「いや・・・」
ライト「あれ?あんたどこかで見たような・・・」
イワン「君と私は同じ女性を知っているようだね・・・」
ライト「そうや、ミグの元恋人やろ!あんた随分ひどい男みたいやな」
イワン「ああ、自分でも最低な男だと思うよ。
だからキミにお願いしに来た。
彼女を・・・ミグを守ってくれないか。幸せにしてやって欲しい・・・」
ライト「ミグをさんざ傷つけといて、随分虫がいいな・・・」
イワン「私はおそらくもうミグには会えない・・・だから・・・」
ライト「またどっかへ行っちまうのか?ミグを置いて・・・」
イワン「そうだ・・・おそらく生きて戻れない」
ライト「ざけんな!
ミグはお前のことをずっと思ってたんやぞ!!
十年間たったひとりでお前の帰りを待っていたんや!
ミグにとってはな、今もあんたは大切な人なんや、ええか、死ぬなんて俺が許さん!」
イワン「なるほど・・・思ったとおりの人間だ・・・
そういえば、昔キミに似た少年にあったことがあるよ」
ライト「・・・なんやと・・・?」
窓から出ていくイワン「さよならだ、ライト・ケレリトゥス。会えてよかったよ。」
ライト「もういくんかい!おいちょっと待てルパン三世・・・!」
カーテンが揺れる

ミュウが入ってくる「どうしたの?」
ライト「いや・・・」
ミュウ「そう・・・面会者よ」
ライト「え・・・?」

ミグが花束を持って入ってくる
ミグ「謝って済む話じゃないけれど・・・ごめんなさい・・・」
ライト「・・・・・・。」
微笑むライト「何言うとんねん。戻って来てくれるって信じてたで・・・」
ミグ「許してくれるの・・・?」
ライト「ミグ言ってたやろ・・・自分だけはオレのファンでいてくれるって・・・
オレはお前さえいれば十分や」
ミグ「ライト・・・」
ライト「それにな・・・まだレースに負けたわけやない・・・」
ミグ「え・・・?」
ライト「あれは第一戦や。コズミックグランプリは全5戦の総合順位で優勝を決めるんや。
まだ名誉挽回できる可能性はある・・・」
ミグ「で、でもその体じゃ・・・
(首を振る)ううん、キミならきっとこう言うんだね」
ライト&ミグ「なんでここで諦める?」



宇宙の果て。
強力な光を撒き散らす小さな天体が不気味にうごめいている。
その光を目の当たりにするひとりの宇宙飛行士。
(宇宙は何も変えられない・・・我々がどうあがいても・・・)


うなされて目を覚ますイワン。息を整える。
ベッドで汗グッショリのイワン「はあはあ・・・」
携帯電話が鳴る。
電話を取るイワン「ウェイドだ・・・」
フレミング「ダイヤル3に変えろ」
電話のボタンを押すイワン「変えた」
フレミング「よし、あんたの昔の女を調べたぞ。地球連邦のデータベースにはなかった。
ソースは驚くことなかれ惑星連合だ。
サー・ミグ・チオルコフスキー32歳。
冥王星宇宙軍将軍。
小惑星解体舞台ディープインパクト所属。
昨年起こった冥王星の軍事クーデターでは戦艦が惑星に衝突するのを命懸けで防ぐ。この功績が冥王政府に讃えられ名誉将軍に昇格。
海王星では王室からナイト爵を授与、天王星ではアイドル暗殺計画を阻止、土星では有名実業家を襲った殺し屋を撃退、暴走した自律型戦闘機を停止させている。最近では内戦状態の木星で和平への合意を裏で取り付けた・・・
まあ、とんでもない奴だ。何度世界を救ってるんだか・・・聞いてるか?」
イワン「ああ・・・かつての少女は私よりずっと腕の立つエージェントになっていたってことだな・・・」
フレミング「あんたも歳をとったのさ・・・」
イワン「そうだな・・・」

機内アナウンス「当機はまもなく月に到着します」



月面。
トランキュリティ(静かな海)宇宙刑務所
警備スタッフ「お疲れ様です、ええと・・・」
ライトで認識票を照らす警備員
イワン「国選弁護人のウェイドです」

刑務所の地下に続くエレベーター。
壁のフロアマップには地下の中央が球体になっていることがわかる。
イワン「・・・・・・。」
スタッフ「いわゆる“エコボール”ってやつですよ。
完全に外界から隔絶されています。
空気、水、食料、すべてがこの超強化ガラスの球体の中で循環している。
光と電波以外はエコボールの中へは入れないし、何も出れない・・・永遠に」
イワン「君たちはこんなところに若い女性を閉じ込めているのか」
スタッフ「若い女性と同時に宇宙で最も知恵の回るテロリストです。
万が一彼女があの球体から脱走した場合、この刑務所ごと核爆弾で焼却されるようになっています。いくら宇宙一の頭脳を持つ人間といえども生物である以上、核爆発には耐えられませんから」
イワン「まるで怪獣の檻だな」
スタッフ「ええ・・・我々が飼育しているのは正真正銘の怪物ですよ」
エレベーターが地下に到達し、扉があく。
スタッフ「つきました、どうぞ」

刑務所の地下管制室。監視モニターが数え切れないほど並んでいる。
正面の巨大なモニターには、吹き抜けのエリアの中央に設置された巨大な球体が映されている。
球体は直径15mほどで、植物が生い茂っている。
吹き抜けには青白い光が差しこみ、球体を上から照らしている。
イワン「球体の中とはどうやってやりとりをするんだ?」
面会ブースの中に入って受話器を差し出す看守
ブースに入るイワン「ありがとう」
看守「これまでにも何人かの先生がやってきましたけど・・・彼女は何も喋りませんよ」
イワン「まあやるだけやってみるさ」
ブースから出ていく看守「規則なので施錠させてもらいます。
では面会が済んだら、そのボタンで知らせてください」
イワン「わかった」
ブースの扉を閉める看守。機密ロックがかかる。
イワン「なにかあったら怪獣と一緒に燃やされるのか・・・」

管制室で監視カメラの映像を見つめる看守
カメラが切り替わり球体の中からイルミナを探す。
看守「囚人番号7283、面会者だ」
球体の中央へ痩せた女性がよろよろと歩いてくる。
体には不必要と言えるほどの桎梏がついている。
看守「受話器を取れ」
球体中央の台にある受話器を取るイルミナ
看守「先生、どうぞ。
くれぐれも見た目に騙されないように」

『80日間宇宙一周 From Earth with Love』脚本⑦

コズミックグランプリのピットにアストンマーティンが突っ込んでくる。
スタッフ「コラ!止まれ!!」
通行止めのフェンスをぶち壊すイワン「公務だ!」

ライトのチームのピット
モニターを見ているクルーたち。
実況「いよいよマリネリス峡谷の最大のポイント、バンクアプローチです!
ここで勝負が決まります!!」

ピットに入ってくるミグ。
ミグ「ライトに言って機体を止めさせろ!!」
ミグに気づくアリエルとルヴェリエ。
ルヴェリエ「ミグさん!」
アリエル「こんばんは!」
ミュウ「あなた地球へ行ったんじゃ・・・!」
ミグ「ヘッドセットを貸して!!」
ミュウ「どういうつもり!?レース中よ!」
ヘッドセットを奪うミグ。
ミュウ「なにをするの!!」
ピットに入ってくるイワン「バンクアプローチに爆弾が仕掛けられているんだ!」
ミュウ「なんですって・・・?冗談でしょう」
ヘッドセットを付けるミグ「ライト!ライト!!」

リンドバーグ号のコックピット
ライト「あれ?ミグ、ピットに入れてもらえたんか?それはよかった。ミュウも粋なことするやんけ」
ミグ(無線)「呑気なこと言っている場合か!今すぐ機体を止めろ!」
ライト「ごめん、よく聞き取れへん・・・なんやって?」
ミグ「機体を止めろ!!」
ライト「何言うとんねん、これからが勝負どころなんや。」
ミグ「バンクアプローチに入るな!!」
ライト「理由を言えや。お前が言うから俺はこのレースに出場したんやぞ!」
ミグ「機体を止めろ!!!」
ライト「ええ加減にしろ!急に止められるわけないやろ!これは自転車ちゃうんや!
マッハ300出てるんやぞ!・・・あ、今マッハ301になった。」
ミグ「いいから私を信じて機体を止めろ!!
ライト「無理や!エンジンが吹っ飛ぶ!!」
ミグ「バカライト・・・」
無線を切ってしまうライト。

ピット
ミグ「・・・・・・。」
イワン「ミグ?どうした!?」
ミグ「無線を切られた・・・」
青ざめるアリエル「そんな・・・」

その時レース中継のモニターから爆音が聞こえる
ミグ「!!」
実況「おおっと何でしょう!リンドバーグ号が突然エンジンブロー!
どんどん速度を落としていき・・・バンクアプローチの前で停止しました!」
解説「そんな馬鹿な!直線コースで機体操作を誤ったなんて!!」
実況「リンドバーグ号から黒煙が立ち上っています!」
解説「あれでは完全にエンジンの方はダメでしょう・・・」
実況「大番狂わせです!レースの魔物が若きルーキーに牙を向きました!
ライト・ケレリトゥスが脱落!」


モニターを見つめるミグ「ライト・・・」
ライトのピットから出ていくイワン「まだ終わってない!後続の機体にも連絡しないと!!:
ミグ「私は軍に連絡します!」
ミュウ「私は警察に・・・!」

別のチームのピット
イワン「バンクアプローチに入れさせるな!」
ほかのチームのクルーは取り合ってくれない
クルー「なんだあんたは!」
イワン「私はTIAのスパイ、イワン・ウェイドだ!バンクに爆弾が・・・!」
警備員に取り押さえられるイワン
警備員「スパイが本名名乗るかよ、続きは警察署で言え!」
床に倒されるイワン
頭上のモニターを見る。後続機体が速度を落とさずにバンクに接近する。

コズミックグランプリ運営本部
ミグ「すぐに軍の出動を!バンクアプローチに爆弾が!!」
運営スタッフ「バンクアプローチに?・・・もう通過したよ」
実況「一位はライト・ケレリトゥスから変わってルナ・マイヤース、続いてマイケル・ヤング!各機バンクアプローチを通過しレースはいよいよ終盤戦に突入です!」
ミグ「え・・・?」



カジノのオフィス
モニターを眺めるロッソ「言っただろ・・・オレたちは何もしてねえってな・・・」

オフィスに入ってくる男「よくやった・・・」
ロッソ「あんたのおかげで儲かったぜ・・・」
男「ああ・・・」
ロッソに銃口を突きつける男
ロッソ「な・・・」
銃が火を噴きロッソの頭が吹き飛ぶ。



火を噴くリンドバーグ号から救助されるライト
リンドバーグ号の周りには消防車と救急車が取り囲み、警察も事情聴取をしている。
ストレッチャーで救急車に運ばれるライトに観衆が大ブーイング
「金返せばかやろー!」
「このレースに人生かけたんだぞ!!」
「死ねー!つーか殺してやる!」
「お前のせいで借金返せねえだろうが!お前も道連れにしてやるからな覚悟しとけクソガキ!」
ライト「レースに全財産賭ける方がおかしいやろ!働けボケ!!」
ライトを制止するミュウ「ライト!相手にしちゃダメ!!」
今度は記者たちが群がってくる。
ミュウとスタッフがライトから遠ざけようとする。
マスコミ「ライトさん!一体どうして直線でミスをしたんですか!?」
「大勢のファンの期待を裏切ったわけですが、どう釈明するおつもりですか!!??」
「ライトさん一言お願いします!」
救急隊員に救急車に乗せられるライト
マスコミ「ライトさん逃げるんですか!?答えてください!!」
ライト「病院行くんや!こちとら鎖骨折れてんやぞ!」



火星の軌道を回る惑星連合放送の中継ステーション。
オフィスでほかの上層部と打ち合わせしながら、タバコを吸うケプラー
ケプラー「なに?ライト・ケレリトゥスが最下位!?そりゃあ面白い。」
担当ディレクター「レースは大荒れです。
なにしろ観客のほとんどがライトに賭けてましたから・・・」
ケプラー「さんざん注目を集めたが、結局口だけだったってことだな。
おい、例の熱愛スキャンダルがあったろ。あれとあわせて報道しろ・・・
そうだな、“冥王星のオンナに入れあげた自称天才レーサー
bang(性交)してbank(バンク)にbang(ドカン)”でどうだ?」



救急車の中
医者「命に別状はありません・・・」
ミュウ「よかった・・・」
ライト「いつも世話かけるな・・・」
ミュウ「仕事ですから・・・」
ライト「ミグを責めんでくれ・・・きっとなにか事情があるんや・・・」
ミュウ「分かってるわ・・・」
ライトの手を握るミュウ。
ミュウ「大丈夫だから・・・私が守ってあげる・・・」
悔しくて涙目になるライト



火星のマーズローバー警察署
留置場に入れられているミグとイワン
イワン「ロッソのやつにいっぱい食わされたな・・・」
留置場の隅で座り込み、ショックで何も喋らないミグ。
イワン「・・・君のせいじゃない・・・」
ミグ「・・・・・・・・」
イワン「彼のこと愛していたんだな・・・」
ミグ「・・・・・・
なんでわかるんですか?・・・」
イワン「キミのことなら何でもわかる・・・
きっと彼もキミのことを恨んじゃいないさ・・・」
ミグ「・・・私はいったい何度ライトの夢を壊してしまったんだろう・・・
その度にいつもライトは笑ってくれた・・・
その優しさにずっと甘え続けていたんだ・・・」
イワン「好きあっているのなら、そんなこと関係ないだろう・・・」
顔を上げるミグ。涙を流している。
「・・・じゃあ、なんであなたは私の前から姿を消したんですか!?」
イワン「それは・・・」
ミグ「今ならその答えが私にもわかります・・・
自分が愛する人をこれ以上傷つけないためです・・・
あなたはそうやっていつも私を守っていてくれたんですよね・・・?」
イワン「そんなヒューマニストじゃないさ・・・
冥王星で君に近づいたのもご両親の機密データが欲しかったからだ・・・」
ミグ「嘘ばっかり・・・だからあなたはずっと孤独なんです・・・」
イワンに腕を回すミグ
優しくミグの手を取り首を振るイワン
「・・・キミを抱きしめる相手はもう私じゃないんじゃないか・・・?」
ミグ「・・・・・・。」
イワン「・・・なあ、サーペンタリウスについてキミが知っていることを教えてくれないか?
キミはピカール博士と面識があるな。彼は一体何を企んでいる?」
ミグ「こんな時まで任務なんですか・・・?」
イワン「国家のためだ・・・」
ミグ「・・・・・・。」

?「そうだ、国家のために釈放してやる」
扉の方を見る二人
ミグ「あなたは・・・」
ゲオルグ警部「ようチオルコフスキー、お仕事の時間だぜ」

『80日間宇宙一周 From Earth with Love』脚本⑥

バーのダンスホールで踊るミグとイワン
イワン「よくキミの屋敷でこうしてふたりっきりで踊ったな・・・」
ミグ「はい・・・あの時は背伸びしてましたけどね・・・」
イワン「はは・・・」
ミグの顔に、顔を近づけるイワン
驚くミグ
イワン「でも今は立派なレディだ・・・」
ミグ「ウェイドさん・・・」
イワン「イワンでいい・・・」
ミグを抱きしめるイワン
イワンの胸に顔をうずめるミグ「10年間・・・ずっと・・・ずっと待っていたのに・・・」
イワン「・・・・・・。」

抱き合う二人に近づく男
男「ちょっとお取り込み中悪いんだがな」
イワン「うん、ホント迷惑・・・」
ほかの客に見えないようにイワンの背中に銃を突きつける男
男「ダンスのあとはカジノで遊んでいかないか?」



火星マフィアの大物ルチアーノ・ロッソが取り仕切るカジノ
ホールの奥のVIPルームに連れてかれる二人。
部屋の奥にボスのロッソが座っている。
ロッソは大柄な男で、顔に大きな傷跡がある。
ロッソ「ようウェイド、我がカジノへようこそ。久しぶりだな。」
イワン「こんばんはロッソさん・・・今夜のレースの方はリンドバーグで決まりだろ。
胴元としてはおもしろくないだろうな」
ロッソ「わからんぞ・・・
さて美しい女性と一緒のところ悪いんだがな・・・
お前さんが何で呼ばれたかはわかるよな?」
イワンに小声で話しかけるミグ「誰なんですか・・・」
イワン「火星マフィアのドン、ルチアーノ・ロッソ・・・」
ミグ「なんでそんな犯罪者と面識があるんですか・・・??」
ロッソ「犯罪者とは心外だな。この星ではギャンブルは合法だ。
お前のやっていることは非合法だがな、ええそうだろTIAのイワン・ウェイド」
ミグ「TIA・・・?」
イワン「とっとと用件を言え」
ロッソ「また女の前でかっこつけやがって・・・てめえよくもブレイズをやってくれたな」
イワン「好きでやったわけじゃない・・・」
ロッソ「いつもの“祖国のために”か?くだらねえ・・・」
ミグ「イワン、一体あなたは・・・」
ロッソ「彼女に言ってやれ、自分はうすぎたねえ地球のスパイだってよ」
ミグ「え・・・!?」
イワン「彼女は関係ない・・・復讐はオレだけでいいだろ」
ロッソ「いちいちクラシックなんだよお前は。そうやってかっこつけて自己満足に浸ってればいいさ。
だがこっちにもこっちのやり方がある」
マフィアの手下がミグを取り押さえて銃口を突きつける
身を乗り出すイワン「やめろ!」
二人の周りにマシンガンを持ったマフィアの構成員が集まってくる。
ロッソ「おっと動かないほうがいいぜ。
お前さんはもはやTIAの能力査定では全項目不合格の落ち目のスパイだ・・・
10年前とは違うんだ」
諦めて腕を上げるイワン
ミグ「イワン・・・」
イワンの体を調べるマフィア
首を振る「なにも持っていません・・・」
イワン「スーツが崩れちゃうからね」
ロッソ「ずっと復讐する機会を待っていた・・・お前にやられた傷がうずくんだよ」
イワン「なら、とっととやったらどうだ・・・その傷をつけた時から覚悟は出来てるんだ」
ロッソ「いや・・・死ぬのはこの女だ。
これからは女を死なせた絶望感を味わいながら生きていくんだな」
イワン「彼女はさっき会ったばかりだ、何も知らない・・・!」
ロッソ「いや・・・この女も我が組織に打撃を与えていてね・・・」
イワン「?」
ミグ「私は火星のマフィアなんて知らない・・・!」
ロッソ「そうかな?サーペンタリウスの商売をことごとく潰してきた女ミグ・チオルコフスキー・・・」
イワン「なんだと・・・?」
ミグ「サーペンタリウス・・・この星にも手を伸ばしていたのか・・・」
ロッソ「結局お前らは似た者同士だったって事だな・・・
さて女を殺す前に・・・お前の大好きな賭けをしねえか?」
カジノのモニターが映る。
コズミックグランプリのレース中継。
ロッソ「イワン・・・あんたさっきレースはリンドバーグで決まりだって言ったな?」
イワン「・・・・・・」
ロッソ「だが、それはどうかな・・・レースはまだ終わっちゃいない・・・」
イワン「なにを企んでいる?」
ミグ「まさか・・・!」
モニターを見るロッソ「おうおう、随分飛ばすな、このライト・ケレリトゥスってのは・・・
だがそんな速度で次のバンクにさしかかったら・・・あぶねえんじゃねえか?」
レース中継を見るイワンとミグ。
モニターの中ではリンドバーグ号がどんどん速度を上げていく。
ロッソ「地球の天才レーサーライト・ケレリトゥスはマリネリス峡谷のバンクを曲がりきれずにクラッシュ。調子に乗って操縦を誤った自業自得の事故でした・・・」
イワン「機体に細工したのか・・・」
ロッソ「誰がそんなこと言った?
(ミグの方を向いて)大好きなお友だちが事故死すると同時にお前も撃ち殺してやるからよ。
ありがたく思いなチオルコフスキー」
ミグ「・・・イワン・・・」
イワン「すまない・・・私のせいでキミの友人まで・・・」
ミグ「伏せて・・・」
イワン「え・・・?」
一瞬の隙をついて銃を突きつけているマフィアを殴りつけるミグ。
マシンガンが暴発し、他のマフィアにあたる。
マフィアの銃を奪い撃ち合いを始めるミグ。
すかさずその場で屈みこむイワン。
輪を描いていた二人を取り囲んでいたマフィアたちはお互いを誤射してしまう。
ロッソ「馬鹿野郎!撃つんじゃねえ!!」
マフィアの足を取り押し倒すイワン。
勢いよく倒れガラスのテーブルに頭を打つマフィア。テーブルが砕け散る。
立ち上がり、マフィアの銃を蹴り飛ばすイワン。
イワンの後ろからマフィアが銃を向けて近づく。
そのマフィアを撃つミグ。
イワン「やるなチオルコフスキー!」
ミグ「軍にいましたから・・・!」
背中合わせになってマフィアと戦う二人。
カジノのチップを回収するスティックでマフィアを殴りつけるイワン。
イワン「ベット」
敵のスーツの襟を引っ掛け、そのまま振り回し、別のマフィアにぶつける。
マシンガンで天井のシャンデリアを撃つミグ。
落ちてきたシャンデリアの下敷きになるマフィア。
手下を全部のしてしまうイワンとミグ。
イワン「雑魚に用はない」
デスクのロッソに近づく二人。
ロッソ「あんた、まだまだ動けるじゃねえか・・・」
イワン「能力査定、あれは偽情報だ」
笑うロッソ「くっくっく・・・
その姉ちゃんがいなかったらヤバかったんじゃないのか?」
イワン「・・・・・・。」
ロッソ「誰からも相手にされない孤独なスパイ・・・
国家の命令に従ったってなんの見返りもねえのに、なぜ無駄なあがきをする?」
イワン「なにかのためにやってるんじゃないさ・・・さあ話してもらおうか。
なぜリンドバーグ号がクラッシュするんだ?」
ロッソ「オレたちは何もしてねえよ・・・」
ロッソにマシンガンを突きつけるミグ「話せ!!さもないと殺す!!!」
イワン「どうだ?私よりも彼女の方がずっと怖いぞ」
ロッソ「バンクアプローチに爆弾を仕掛けた・・・」
スティックでロッソの頭を殴りつけるイワン「ごくろうさん」
スティックがへし折れる。
部屋から急いで出ていくイワンとミグ。
モニターではレースの模様が流れている。
実況「さあ、先頭のリンドバーグ号がマリネリス峡谷に差し掛かった・・・!」

カジノの裏口からレース場へ向かうミグとイワン
駐車場のアストンマーティンに乗り込むミグとイワン。
イワン「ピットに向かおう!リンドバーグ号がバンクアプローチに差し掛かる前に止めなければ!」
エンジンをかけてギアを変えるイワン。
ミグ「もう時間がない・・・!」
イワン「スパイの秘訣を知ってるか?運を天に任せることさ!」
車を急発進させるイワン。ピットに向けて爆走する。



マリネリス峡谷のコース。
リンドバーグ号が先頭で突っ切っていく。
コックピットに貼られたミグの写真を見るライト。
ライト「待ってろよ、優勝カッププレゼントしたるからな・・・」
さらに機体を加速させていくライト。

『80日間宇宙一周 From Earth with Love』脚本⑤

火星――イーグルモーターウェイ。
太陽系最大のモータースポーツの聖地は宇宙一速いレーサーを決める「コズミックグランプリ」の予選コースになっている。
赤い荒野に切り開かれた宇宙ロケットのコースはバンクアプローチから空を裂き、緩やかなカーブを描きながらねじくれている。
観客席の大歓声。

実況「ついに始まりました!宇宙最速のレーサーを決めるコズミックグランプリ第一戦!
今シーズンのコズミックグランプリはとんでもないサプライズがありました。
太陽系を冒険中に冥王星付近で消息を絶っていた人気レーサー、ライト・ケレリトゥスが新たに開発した新型機リンドバーグ号で緊急参戦したのです!」
解説「これはファンにはたまらないでしょうね。なにしろライトは地球と火星では有名レーサーにして発明家。あのアイザック・イエガーの宇宙最速記録を超える唯一の男と言われていますからね。」
実況「オッズもマイヤースを抜いて一気に一番人気です!」
解説「いや~当然でしょう」




特別に用意されたVIP席
ガラス張りでピットの全景が見えるVIP席は豪華なペントハウスになっている。
頭上の巨大なモニターにはコース上の各機の現在位置や賭けのオッズなど、レースの詳細なデータが表示されている。「賭けはまだまだ受付中!」の電光表示。
高級ドレスを着てVIP席に一人座っているミグ。
テーブルに肘をつき、ぼんやりとピットを眺める「・・・・・・」

スピーカーから流れる惑星連合放送の実況
実況「さて、現在各チームのレースクイーンによるギャルオンが行われていますが・・・
見てくださいライトチームのレースクイーンを!
なんと天王星で人気急上昇中のアイドルの新星、アリエル・スカイです!超人気アイドルにレースクイーンをやらせてしまうとはなんとも贅沢!」
解説「それだけじゃありません、ピットでクルーチーフと話をしている少年は海王星のルヴェリエ・ネプトゥヌス公爵です!」
実況「さすが宇宙の人気者ですね~彼の周りにはセレブが集まるのでしょう!」


ミグ「宇宙の人気者、か・・・
私なに勘違いしてたんだろう・・・」



コズミックグランプリのピットでは燃料タンクが並び、それぞれの出場レーサーのロケットをクルーがせわしなく動き回り最終点検している。

ライトのチームのピット
クルーたちと一緒にルヴェリエとアリエルがライトに声援を送っている。
アリエル「ライトさ~ん!こっちこっち!」
ピットに入ってくるライトが二人に気づく。
ライト「アリエル、ルヴェリエ!いや~久しぶりやな~!」
ルヴェリエ「お久しぶりです。」
ライト「なんでまた火星に?」
ルヴェリエ「宇宙サミットがこっちであるんで、兄と一緒に来ているんですよ」
ライト「兄さんはもう海王星の王様やもんな。相変わらずひねくれてんのか」
ルヴェリエ「ははは・・・海王星を救った英雄によろしく言っておいてくれって言ってました。」
ライト「そうか・・・」
アリエル「ライトさん頑張ってください!」
ライト「アリエルもわざわざ見に来てくれてありがとな。キミも最近忙しいんちゃうんか?」
アリエル「大ジョブです!来たるこの日のために仕事前倒ししてきました!」
ライトの前で一回転するアリエル
「見てください、ほら、今日は私、ライトさんのレースクイーンやりますから・・・!」
ライト「お~カワイイで」
アリエル「ピットは日差しが強いんで・・・この・・・傘を・・・」
パラソルがなかなか開かない。
ルヴェリエ「ここ押せばいいんじゃないですか?」
アリエル「そっか、ありがとうござ・・・」
勢いよくパラソルが開いて骨組みが逆さになったパラソルがミサイルのように飛んで行き、となりのピットクルーに当たる。
ライト「・・・じゃ、いってくるわ」

グリッドには各レーサーの宇宙船が入ってくる。
グリッドのリンドバーグ号に乗り込むライト。
となりのグリッドで機体に乗り込むルナ・マイヤース
ルナ「おかえりライト、でも優勝カップはこの私がもらうから」
ライト「望むところや」
ルナ「レオナに負けた借りはあなたで返すわ・・・じゃあフィニッシュラインで」

実況「各機グリッドにつきました!いよいよ宇宙最速のレーサーが決まります!
シグナルが点灯し・・・マーズ・コズミックグランプリ、スタートです!!」


シグナルが変わり宇宙ロケットが一斉に発進する。
エンジンが火を吹きどんどん加速していく機体。
リンドバーグ号が先頭に躍り出る

ピットのモニターにリンドバーグ号がトップの様子が映される。
ルヴェリエの手を取って飛び跳ねるアリエル「うわあ見てください一番ですよ!」
ファンの大歓声「ライト~~!」

惑星連合放送の調整室
スタッフ「カメラ切り替えろ。よし」
二位以下をぐんぐん引き離していくライト



ライト・ケレリトゥスのピット
クルーチーフ「いいぞライト。順調だ」
ミュウがヘッドセットでライトと通信する
ミュウ「冥王星では女性とイチャイチャしていただけじゃなさそうね」

コース
リンドバーグ号をドリフトさせるライト「機体を改良してたんやって・・・!」

ルヴェリエの方を向くアリエル「そういえばミグさんは・・・?」
ルヴェリエ「VIP席が用意されてるみたいですよ」
アリエル「さすがライトさん、やることが素敵ですね~」



VIP席
ウエイターが高級ワインを注ぐ
「失礼します」
ミグ「あ、どうも・・・」
退室するウエイター。
一人になるミグ。
豪華な食事が乗ったテーブル。
実況「ライトが後続との差をどんどん広げていきます!やはり当初の予想通りぶっちぎりですね!」
解説「ライトはイエガーですら15年かかったアルファケンタウルスまでたった80日で往復するとビッグマウスを叩きましたからね。つまり光の速さを超えるということですが、彼ならやれる気がするのが恐ろしいんですよ。」
実況「実際イエガーの時代とは比べ物にならないほど、宇宙ロケットのスペックは大きく向上しました。宇宙世紀は新たな時代に突入しているのかもしれません!」

ミグ「・・・・・・。」

VIP席に入ってくるミュウ「ごめんなさいね・・・ピットではマスコミがうろついているから・・・」
ミグ「いえ・・・私はここで十分です。ありがとうございます・・・」
ミュウ「好きなものを注文してください。ライトのおごりなんで・・・」
ミグ「はい・・・」
ミュウ「あなたのために優勝カップ持ってくるって言ってましたよ・・・
もしチオルコフスキーさんが本気でライトと一緒になりたいなら、わたくし共も・・・」
首を振るミグ「私はもう・・・」
ミュウ「そう・・・
それで本当に後悔はないの?」
ミグ「ライトによろしく言っておいてください。一緒にいろんな冒険ができて楽しかったって。
この恩は一生忘れないって・・・」
ミュウ「必ず伝えるわ・・・」
テーブルに地球行きのチケットを置くミュウ
チケットには地球の写真が印刷されている。
ミュウ「地球は美しい星よ・・・」
ミグ「ありがとうございます・・・」



火星の地平線を飛行するリンドバーグ号。
実況「メリディアニ平原を抜けて、レースは中盤を迎えました!
トップはなおもライト・ケレリトゥスのリンドバーグ号です!!」

VIP席のモニターを見るミグ「宇宙最速の男・・・か・・・」
席を立ち、荷物をまとめるミグ「夢を叶えてね、ライト・・・」
VIP席から退室しようとすると、ドアがノックされる
ボーイ「チオルコフスキー様、お手紙が届いております。」
ミグ「・・・ライト・・・?」



レース場にあるバー。
店内は薄暗く大人の雰囲気になっている。
ホールでは男女が踊っている。
カウンター席に座るミグ
バーテンダー「何にしましょう?」
ミグ「生中・・・じゃなくて・・・」
男性「リトルプリンセス」
バーテンダー「かしこまりました。」
ミグの隣に座る男性「私はマティーニ、シェイクして、ステアせず」
となりの男性に振り向くミグ「え・・・?」
シックなパーティスーツを着たイワン「こんばんは・・・」

バーのカウンターで二人で酒を飲む
イワン「おとなしかった君が軍に入隊とはね・・・ご両親の跡を継いだわけだ」
ミグ「ウェイドさんはまだ貿易商をやっているんですか?」
イワン「・・・相変わらず世界を飛び回っているよ」
ミグ「そうですか・・・十年前と変わってないんですね・・・」
イワン「あの時はキミを悲しませた・・・すまない・・・」
ミグ「いえ、いいんです・・・
あの時のあなたの気持ち・・・よくわかるから」
イワン「・・・なにか悲しそうだね・・・」
ミグ「・・・え?」
イワン「君の瞳を見ればわかるさ・・・
なあ、踊らないか?」
ミグ「・・・・・・。」
イワン「・・・今のキミには愛する人がいるのかな・・・?」
ミグ「いえ・・・私でよかったら・・・」

『80日間宇宙一周 From Earth with Love』脚本④

輸送船の船内。
輸送船のカーゴにリンドバーグ号を固定させる。
コックピットから降りるライト「もう大丈夫や・・・」
ミグ「私には何がなんだか・・・」
ライト「驚かせちまったみたいやな、ごめんな」

無線の女性がカーゴに現れる「あなたが突然姿を消して地球や火星は大騒ぎよライト」
ライト「すまんすまん。冥王星でちょっと足止めを食っちまって・・・」
女性「まったく、いつもあなたはそうなんだから・・・」
ライトと親しげに話すタイトスカートの似合うスーツの女性を見つめるミグ。
ミグ「ライト・・・この人は?」
ライト「ああ、ミュウや・・・オレのなんというか・・・」
ミュウ「マネージャーです。さて、その人のこと・・・詳しく話してもらえるかしら?」



輸送船の応接室。
豪華な調度品が並んでおり、壁やキャビネットにはライトのトロフィーや写真、グッズなどがたくさん飾られている。
「レース界の新星ライト・ケレリトゥス」
「快挙!アースラリー3連覇!」
「GT選手権で優勝!」

唖然とするミグ。状況がいまいち飲み込めない。
メロンソーダを冷蔵庫から取り出すミュウ
「コズミックグランプリが近いからマスコミの宇宙船が火星付近をうろついているのよ」
ソファに座るライト「あ、もうそんな時期なんや・・・」
ぼーっと立ち尽くしたままライトのポスターや新聞記事を見つめるミグ。
ライト「ミグ、座ったらどうや?」
ミグ「え?は、はい・・・」
メロンソーダをライトに渡すミュウ
「それで、うちの天才レーサーはコズミックグランプリに間に合わせるために戻ってきたのかしら?」
ライト「いや、たまたま・・・オレ今年は出るつもりないで」
ミュウ「少しはファンのことも考えなさい・・・
チオルコフスキーさんは何を飲みますか?」
居づらそうなミグ「いえ・・・私は・・・お構いなく・・・」
ライト「ミグには紅茶にアプリコットジャム入れたって」
ミグ「ライト・・・」
ミュウ「あら、彼女のことは随分詳しいのね」
ライト「一年間一緒にいると嫌でも覚えるんやって」
ミュウ「ライト・・・これはまずいわよ・・・冥王星くんだりまで行って恋人連れ帰るのは・・・」
ライト「なんやねん」
ミグ「恋人なんて、わ、私はそんな関係では・・・」
ミュウ「あら、恋人じゃなかったらなんなんですか?婚約者?」
ミグ「ち、違います・・・!」
ミュウ「単刀直入に申し上げます。あなたはライトとどういうご関係かしら?」
メロンソーダを飲むライト「第三夫人」
ミグ&ミュウ「あなたは黙ってて!」

ミグにロシアンティーを入れるミュウ
ミュウ「ご存知のとおりうちのライトは人気レーサーでしてね。
コズミックグランプリのシーズン中にスキャンダルは困るんですよ」
ミグ「スキャンダルだなんてそんな・・・私はただ、彼に地球に連れてってもらいに・・・」
ミュウ「あなたもいい年なんだからわかりますよね?
今のマスコミは人気者の足をすくうことが大好きだってことくらい・・・
それに地球と冥王星の政治的な状況はご存じのはずです。
冥王星の一部の過激派が地球を攻撃しようとして・・・」
ライト「それはミグが責任もって止めたったからええやん。
このミグはなんだかんだで3回は世界救っとるからな。」
ミュウ「・・・と、そんな感じで、ありもしないことまで作りあげられてしまうんです・・・」
ミグ「私、知らなかったんです、その、ライトさんが有名なレーサーだったってこと・・・」
ミュウ「さすが太陽系の果てからきた人ね・・・ライトを知らないなんて・・・」
ミグ「・・・・・・。」
ミュウ「いいわ、でもはっきりさせときましょう。あなたとライトに男女の関係はあったの?」
ライト「ええと・・・」
ミグ「そんなの一度もなかっただろ!!」
ミュウ「その言葉を信じていいのかしら?
ここで手を打っておかないと、チオルコフスキーさん・・・あなたもマスコミの餌食よ?
ライトの輝かしい実績が飾られた応接間を見つめるミグ「・・・・・・。」

ライト「ミグ言ったれ、俺とお前とは恋人以上の・・・」
ミグ「私はただ彼に地球まで送ってもらっていただけで、個人的な関係は一切ありません」
ミュウ「本当なのね?」
ミグ「はい・・・」
ライト「ミグ・・・!」
ミグ「うるさいな・・・そもそもお前と私はそれだけの仲だったはずだろ・・・?」
ライト「お前と俺とは戦友やったんちゃうんか」
ミグ「戦友?そうか・・・そう思っていたのか・・・なら任務が終わればお別れだな。
私も地球に連れてってもらったら、そこで別れるつもりだったし・・・
男女の関係は本当にないし・・・」
ライト「じゃあオレが地球に三日で送ったら・・・」
ミグ「三日の付き合いだったってことさ・・・」
複雑な表情のライト
ミグ「・・・なんだ?
そのあとも私と一緒にいるつもりだったのか?
冗談じゃない、キミは今まで一体いくつ私の屋敷の調度品を壊したと思っているんだ・・・
その代金として地球に送ってもらうのは当然さ。安いくらいさ。」
ライト「屋根は直したやろ、昔のこと言うなんて卑怯やぞ。」
ミグ「ああ、私なんて生真面目で融通のきかない堅物の女さ・・・もともとキミとは相性が悪いんだよ」
ライト「あんた急に変やぞ。ケーキに当たったんちゃうんか。」
ミグ「当たってないよ・・・」
ミュウのほうを向くライト「まあ、とにかく火星のレースは今回はパスするわ。オレはこいつと一緒に地球へ行くから。」
受話器を取るミュウ「そう・・・まあ、あなたたちが男女の仲じゃないってことはわかったわ。
でも、ファンはがっかりするでしょうね・・・」
ミグ「いえ、もう地球へは一人で行きます。
ライトをレースに出してやってください」
ライト「・・・へそ曲げるのもええかげんにせえよコラ」
ミグ「お前はなんにもわかってない!」
ライト「わかってないのはお前やろ!」
ミュウ「あ~もう、痴話喧嘩はやめて!私はどうすればいいの?レースに出場するのしないの?
スポンサーにだって迷惑がかかるのよ!」
ライト&ミグ「出ない!!」「出ます!!」
ライト「あ~そうかい、オレが嫌いなら理由を言え!」
何かにハッとするミグ「え・・・」

屋敷のドアで男性を引き止めるミグ
ミグ「私が嫌いなら理由を言ってください!」


ミグ「・・・・・・。」
ライト「じゃないとオレは納得せえへんからな!
俺はお前に約束したんや、俺の船でお前に地球を見せたるって・・・!」
ミグ「バカ・・・」
ライト「言うてみろ!」
涙目になるミグ「もうほっといてくれ!」
応接室から出ていくミグ。



ライトのチームの輸送船の応接室。
応接室に戻ってくるミュウ。
ミュウ「彼女は来客室に案内させたわ・・・」
ライト「そうか・・・ありがとな。飲むか?」
ミュウに紅茶を入れてやるライト。
ミュウ「いただきます、ありがとう」
ソファーに座るミュウ。
ミュウ「あの人と結婚するならレースのあとにしてね・・・」
ライト「あんたさっきと言ってること違うやんけ」
ミュウ「私の専門はハリウッドセレブの愛人スキャンダルのもみ消しよ?
あなたたちが恋人以上の関係だってことくらいわかります・・・
“戦友”ね・・・」
ライト「・・・オレの船で地球を見せて・・・プロポーズするつもりやった」
紅茶をかき回すミュウ「そう・・・
最愛の恋人を失ったあなたが、もう一度人を好きになるなんてね・・・」
ライト「レオナが死んで、両親が離婚して・・・幼馴染の女の子が逮捕されて・・・
そんなボロボロになった俺を癒してくれたのがミグやった・・・
ミグは、自分の身に起きた不幸を決して人のせいにしないんや・・・
オレはイヤなことからすぐに逃げてまうけどな・・・あいつは向き合ってた。命懸けで・・・」
ミュウ「・・・しかしどうしたものかしら・・・マスコミには撮られてしまったし・・・」
ライト「そんなん構うもんか。オレはあいつを地球へ連れて行く」
ミュウ「・・・彼女はそれを喜ぶかしら?」
ライト「なんやと?」
ミュウ「彼女はあなたにレースに出てもらいたいから、あんなことを言ったんじゃないの?」
ライト「そりゃわかるけど・・・」
ミュウ「あの人の性格を考えてみなさい。」
ライト「・・・・・・。
あいつを招待してもらえるか?」
ミュウ「VIP席を用意するわ」
ライト「ありがとう」
紅茶を飲むミュウ「美味しい・・・冥王星の飲み方悪くないわね」
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