ライブこそオレの原点

 以下どうでもいいツイート。ただのヘタレ的言い訳なんで受け流してください。

 最近漫画製作の進みが遅い。とにかく遅い。まあ絵については史上最高に難しいことをやろうとしていて(画力ないのに・・・)、一コマのデッサン?を仕上げるのに何時間もかかっちゃうからなんだけど、それ以上にこのモチベーションの低さったらなかった。作業がなかなか進まないから、やる気がなくなったって言うのもあると思うけど。

 とにかくサイキックウサギの「ホワイト」とか可愛く描くには、眼の位置とか大きさとかを相当意識しないと、可愛くなくなっちゃうから(あのキャラは可愛くないとリアリストなセリフとギャップが出ずに面白くないキャラ)あんな線の少ない奴の方が『クオリア』の笹峰さんよりもずっと難しいわけです。ホワイト一匹描くのに2時間かかったりしているコマもある。

 なにかを作るにはやっぱり刺激が必要で「こんなのを自分も作りたい!」って思うような漫画やアニメや映画も最近は別にないし(というか見ていないし)、テンションが上がる曲とかもなかった。

 でも最大の理由は、漫画を定期的に友達に読ませていなかったことだと判明!

 やはり週一で進行状況をチェックしてくれる編集者のような人がいないと、なかなか漫画を描く気が起こらない。
 自分は漫画を自分一人で描いてて満足するような、絵を描くのが三度の飯よりも好きなタイプじゃないので、常に読み手のリアクションという刺激がないと、どう作業を進めていいか分からないんだよな。
 それだけに目の前で、友達が自分の描いた漫画を読み、笑ったりしてくれるライブ感こそが、必要だったわけです。つまりテレビのバラエティよりも、寄席が好きな芸人タイプ。八時だョ!全員集合型。

 うお!今懐かしい光景がフラッシュバックした!(なんでも人間って精神的に弱っている時って自分の子どもの頃とかノスタルジックなものに逃げる傾向があるらしい。まさにモーレツオトナ帝国)
 K氏なんかは知ってると思うけど、そもそも中学時代は、自分の机を囲むクラスメイトに漫画を描く様子を眺められている中、その場しのぎでネームを切っていた!あれこそがオレの原点・・・!

 descf氏もこのタイプだと思うけど、友達が自分のギャグで笑うのを見るのはやはり最高。モチベーションモリモリ。
 少なくても週二。できれば週一で友達に目の前で漫画を読んでもらうのが望ましい。来週あたりKO氏空いてないかな?彼の指摘が一番編集者然としていて、効果的なんだけどな。会うのが久しぶりすぎて漫画以外の話で盛り上がりそうだけどね。

 どうでもいい追記:今日友達に「伊勢谷友介(大河ドラマの高杉晋作役のひとです)に似ている」って言われた。あまり「誰かに似ている」って言われたことない顔なのに。着流し着てないのに。 確かに頬がやつれちゃっているところ(だけ)は似ている(伊勢谷さんは病気じゃないだろうけど)。

『リアルのゆくえ おたく/オタクはどう生きるか』

 講談社現代新書。オタク評論家の大塚英志さんと東浩紀さんの対談本。最近新書を積極的に読んで、好きになってやろうと思っています。
 私は「新書ブームで大衆にウケている新書は“教養本”ではなく、所詮はおせっかいな“生き方本”であって、著者の一方的な主観の押し付けでしかない(しかもマーケティングの理論も入っていて、けっこう無責任な本もある)。それを読む読者は読者で、新書の情報で効率よく自分の生き方なんて決めようとするのは、どうなのか?」と未だに思っています。
 この本もいわばオラオラ説教本なんですけれど、この本がとっても楽しいのは、そんな説教臭いおたく――大塚さんと、それに防戦一方?の説教嫌いなオタク――東さんのやりとりが、なかなか示唆に溢れたものになっているからです。

 普通のオラオラ新書は「東さんの位置(怒られ役)」に私たち「読者」が入ることになります。よって著者の意見がどれだけ説得力があるかが、その本のある種の評価につながるんですけど、こうやって他人(東さん)が説教されているのをのぞき見るという読書体験はなかなか新鮮で、企画としても新しいと思う。
 そういう意味で、この本を出した東さんの勇気に拍手。だって自分が人に説教されているような恥ずかしいところを、みんなにみせたいなんて普通は思わないじゃないですか。ああ東は大塚に叱られてるぞ、なんて嫌だもん。
 だから秋葉原事件をきっかけに東さんも思うところがあったんだと思う。自分はあくまでも傍観者のひとりとして評論活動をしてきたけど、もう少しステップアップして、自分が受け手の一人ではなく、送り手――表現者であることをもう少し自覚してやっていってやろうというか。

 いや、実際どう思っているのかは分かりませんが。そもそも東さんはこの前「朝まで生テレビ」に出てたなあ、ってくらいしか私は知りませんし、大塚さんに至ってはまったく知らなかった。オタク論壇なんて私オタクじゃないし知らないから。
 たから「第1章 消費の受容」で萌え漫画やアニメのタイトルだか作者だかの固有名詞が出てきても、よく分からず、ああ、「こげトンボ」は漫画タイトルじゃなくて制作会社のことかな、といちいち想像するのは非常に面倒くさく、どうでもいいやって感じでした。

 それに第1章で論じられている「物語ることの放棄」などは、オタク文化に無知な私が適当に考えても同じようなことがいえるんですよね。私コラムでほとんど似たような事を言っていて驚いたもん。いやこんなこと(こじつけ)誰でも考えつくんですよね。
 つまりオタクにのめり込んでコミケで、デジキャラっとのフィギュアを買わんでも、今やっているたった2,3本のアニメをサンプリングして、それを大雑把に分析すれば、傾向みたいなものは結構簡単にイメージすることができる。

 こんな事言うと「現代の情報社会は、我々個人の認識限界を超えるほど複雑化している」という東さんに批判されそう。
 ただ複雑化しているのは個別事例=情報の“量”であって、それは個人の価値観の多様化だったりするのですが、そういった近代的な自由主義に基づく価値観の多様化そのもののメカニズムは複雑ではあれ難解ではない。
 情報の“質”の方は私は案外クオリティが下がっていると思うし、それについてはこの二人も同意していると思う。
 「デジキャラっとなんて萌え記号のパッチワークにすぎず、作者性なんて萌え文化においてはない」っていうような東さんならなおさら。

 それに対して大塚さんは漫画原作もやっている作り手だから、そんなマーケティングの産物でしかないような萌えメディアですら、作者の精神性はあると言う。
 ある種のパブリックドメイン的記号キャラの「デジキャラっと」や「初音ミク(本書には出てこないけど、こいつもそうだろ)」なんかをいろんな人が描いても、そのイラストに作者性は確かにあるのだ、たとえばこの絵描きが描くデジキャラっとが可愛いとか。

 ・・・いや、本当にこんなどうでもいい話を大の大人二人が真剣に論じているんですよ、この本!

 ・・・ということで第1章はそこまで楽しくもないんですよ。オタクや萌文化なんて興味がなかったり、キモいと思う人ならなおさら。

 しかし!「第2章 言論の変容」で、議論は対談の体をなさなくなります!大塚さんがやたら東さんをいじわるに問い詰め始めるんですよ!なんだよ、こいつは急にねちねち嫌な野郎だな、と私も思っていたのですが、ここら辺から、だんだんこの本は二人の議論のかみ合わなさが面白くなってくるんですw!
 ああ、この本はこうやって読めばいいんだな、っていうのが分かったとたん、私はこの本が一気に面白く思えてきて、気付けば鉛筆片手に笑えるセンテンスに線を引いたり、ページを折ったりして読んでいる始末。
 だってここまで噛み合わないってすごくないですか?wちょっとした漫才より面白いもん。普通どっちかが空気読んで相手の意見にすり寄ったりしちゃうのに、東さんは大塚さんのいやらしい問い詰めに一見同調したふりをしているのかな?と思いきや、ものの見事にスルーしちゃうから、結局会話が積み上がっていかない。

 そして「第3章 おたく/オタクは公的になれるか」でついに大塚が動き出す!
 なぜ自分が東さんの言説に対してあそこまで苛立っていたのか、その根拠を明確に言ってくれるから、第2章で大塚英志いやだな、こわいな~(C)稲川淳二って思っていたのが、一変して「ああ、この人のいら立ちももっともだ」ってなって、今度は東さんの公共性に対する諦めみたいなのが際立って見えてきて嫌になっちゃう。

 東さんがどういう世代にいて今いくつの人か分からないけど、とにかく「ああネットに没頭している人なんだな」とは思った。このちょっと価値観の違う人へのスルーの仕方はネット特有の方法だよなと。ちょっと反対意見を言われたら、暴言はいて逃げちゃうことだってできるんだもの。
 で、そんな逃げちゃう奴を真剣に説得しようったって時間と労力の無駄だし、東さんの言うようにどうにもならない。

 しかしプロの評論家であるあなたの評論や議論すらも、そのレベルのものなの?ネットのやり取りはそんな子供っぽい痴話げんかのレベルのままでいいの?公共性という観点をないがしろにしていいの?って大塚さんは東さんに一生懸命問題提起しようとしているんだけど、東さんのニヒリズムは強固で全く心に届かない。
 それはコミュニケーションのツールでしかないネットに対して、現代人のコミュニケーションそのものだと勘違いしちゃっているからなのかな、って思う。

 だから私もネット上の議論はあまり意味がないと思うし、実際にその人に会って話す対話の優位性を感じている。ネットの議論って結局自分の価値観から抜け出さないで、妥協が無いんだ。そんな奴が今大人で、現実の社会でディスコミュニケーションに直面しているわけでしょ。

 しかしなぜ東さんがああも、「公共性の議論を引き受けるのはやだよ~」って駄々をこねるのかが分からない。別にガンダムに乗り込んで戦うわけではなかろうが。
 そういう公的な面倒くさい話は、全部専門家か技術的なシステムに任せて、自分はひたすら閉じた世界、小さな物語の世界で生きていきたいんだろうけど、その閉じた世界を保障し構成しているのも、結局は今のところ国家であり、社会であり、人間だったりする。

 東さんは今日の複雑化した社会システムを、まるで引力の法則や化学反応の法則、もっといえば進化論や自己組織化といった複雑系科学のように科学的に捉えていて、それはいいんだけど、一つ違うのは社会科学的なシステムは、自然があらかじめ用意してくれるような決定論的な法則(帰納法だけで導かれる法則)じゃなくて、人間が主体的に関わり、対象のありかたが変わっていく流動的なシステムであるということ。
 一人一人の自分勝手な欲望に合わせて、社会が自分の思い通りに変わっていってはくれないけど、実は個人の振る舞いはしっかり社会全体に波及し作用している。それが複雑系の複雑系たる所以でしょ?

 それをぼくらは常に世界の傍観者っていうスタンスを取るのは、不確定性原理を考えれば不可能だってすぐに解るのに、世界や国家、社会は、僕ら個人とは断然した位置にいるって、短絡的に考えちゃうのは、やっぱり幼い。
 東さんはそういう人たちの代弁者として出てきたから、そういう人たちを批判するのは、すなわち自分のファンや読者をへらすことになり、怖くて言えないのだろうけど、大塚さんなんかは平気でやっちゃうだろうし、私もやっちゃう。
 それで自分が漫画家としてプロになれなくても、自分の求める公共性の概念や、自分の表現自体を自分で問い続けることを捨ててまで、漫画を描いてなにが楽しいんだ?って思うから。

 マーケティングなんてそっちのプロの編集者とかに任せりゃいいし、その人たちがダメって言うならダメでいいんだって。
 それを無理に捻じ曲げて編集サイドに自分の表現をすりよせても、面白い漫画ってできないもん。つ~かできなかったもん。
 実際今の漫画をはじめとするサブカルが既存の記号のパッチワークだから、物語を求める人は退屈だし、つまらないって言うんだって。

 あと東さんが明らかに矛盾しているのは、もし自分をただの「いち消費者」として捉えて、プロの表現者、評論家としての責任を負いたくないって言うならそれはそれで、好きなこと言えるんだから、自分の読者層なんて意識せずにもっと好き勝手に論評してもいいんじゃないか?ってこと。
 変にスマートに構えてないで、道徳だ!公共性だ!って崇高なことを言いながらも美少女フィギュアを買いあさっている大塚さんのみっともなさを見習えばいんじゃない?所詮オタクなんだからさ。

『文系バカと理系バカ』③

 次は理系バカチェック

①できれば他人と深く関わらないで生きていきたい
× 信じられん。これ絶対強がりだな。

②新型、最新テクノロジーの商品を買うために徹夜してでも並ぶ
× 愚の極みだと思う。
奥さんのクリスマスプレゼントに毎年ipodの新型モデルを代々送り続けなんで毎年同じなの!ひとつあればいいのよ!と怒られた竹内さん。ナイスです!

③相手が関心のないことを延々と話す――女性との会話も下手
○ 相手の教養レベルを見て科学の話は厳しいなと思ったらハナからしません。だから女性との会話がはじまりません。

本文にもあるように・・・
合コンの女「大学で何を勉強しているの?」
男「量子力学です」
女「・・・・・・。」
男「・・・・・・。」
これはとっても分かる。んで女は携帯を取り出して帰っちゃうんだよね。

 私は科学の素人なりに量子力学を面白おかしく話す自信はあるけど「半導体機器動かす割に原理がすっごい胡散臭い学問だ」とか言っても、その相手がそもそも興味ないんじゃ、どうしようもないんだ。合コンはもっと頭の悪い話をする場だしな。
 大体俺たちだって女の「ちょっと聞いてよ~この前マユミがさ~」なんて愚痴が興味ないのと同じでね。
 あとはデリカシーだよね。話を合わせたやったり、聞いてあげるのは。あ、この相手に気を使って自分が知らない知識の話も知ったふりをするって言うのは文系バカの思考らしい。

④独善的で、いつのまにか相手を怒らせている
× これはない。ないけど、理系のdario氏いわく、私が人(例えば大学教授)を怒らせるときはこういった理系よりもたちが悪いそうだ。
 理系は自分が信じる科学イデオロギーみたいなのをはなから主張し、それこそ独善的にゆずらないけど、私は相手の理論をまずは全部受け入れて、それから「あれ?あなたの言い分はあなたのルールで食い違っていませんか?」ってやるってdario氏は言ってたな。そんな嫌な奴か!?私。

⑤「もっと分かりやすく説明して」と言われる
○ これは塾で子どもに教えている以上避けられないし、この前もvicさんに「アメリカは相対主義を絶対主義として掲げている」という言葉の意味がピンとこないって言われちゃって、こういう言葉のトラブルは理系も文系も関係ないかも。どちらの分野も専門用語ってあるから。
 そういう意味で理系の世界に比喩はないというが、哲学者や現代思想家のくだらない言葉遊びも似たようなもの。
 この前『カントを読む』って本を読んだけど、この人はなんで比喩を使って説明しないんだろう?って読んでて思ったもん。この人のような哲学のプロにとっては前提でも、一般の人はアプリオリな直観形式とかコペルニクス的転回とか言ってもイメージがつかないんだから。

⑥分からないことは、何でもネットで検索してしまえ
× ネットも使うけど主に本を当たる。まあ専門家が描いた文章ならばネットでも読むけど、ウィキペディアは信じてない。自分が全くその知識がない分野なら、なおさらウィキペディアは胡散臭い。

⑦感動するポイントが人とずれている。
○ 理系はイルミネーションを見て光の美しさではなく、LEDをつくった同士たちの技術力に涙するらしい。これはこれで素敵じゃないか。

⑧文系よりも理系の方が人間として「上」だと信じている
○ 私は理系じゃないけど、自己中心的な芸術ばたの人間の連中よりは頭はいい感じがする。でもこの本で理系にもおそるべきバカがいることを知りました。分野は関係ないですね。
 でも独善的な理系の悪いところと、説明が適当な文系の悪いところを兼ね備えた究極のバカが芸術家っぽいよな。バカじゃなきゃ、あんな非合理的な創作活動なんてできないもん。

⑨UFOや心霊現象について語ることは犯罪に近いと思う
× いいんじゃない??・・・別に・・・どうでも・・・

⑩意外とオカルトにハマりやすい
× 笑ってしまった。これは同じことをうちの教授も言ってて面白いと思ったんですよ。オウム真理教の信者ってけっこう理系いたんですよね。
 すべては科学で説明できるとか言っている人は、科学哲学やケンブリッジ大学の物理学者ジョン・D・バロウさんの本なんか読めばいいのに。

 こっちは○が4つ、×が6つか・・・私は文系も理系もどっちも極めて文理融合しているのではなくて、どっちも中途半端みたい。

『理系バカと文系バカ』②

 さてここで私は理系馬鹿なのか、文系バカなのかチェックしてみようと思います。

文系バカチェック

①血液型診断や占いが気になって仕方がない
○ 気になって仕方がなくはないけど、けっこう好き。

②取扱説明書は困ったときにしか読まない
○ もちろん。困っても読まない。なんとなくで機械を使う文系ですw。

③たいていのことは「話せば分かる」と信じている
○ 大抵は。無駄なこともあるけど、とりあえず言っちゃう。でも話しても分からないバカがいるのは大学の教授で分かったからこっちが大人になってやることにした。

④ダイエットのためカロリーゼロのドリンクをがぶ飲みしてしまう
× しない。そもそもどんな飲み物もがぶ飲みできない私。

⑤アミノ酸、カルニチン、タウリンなどのカタカナ表記にすぐ飛びつく
× 飛びつかない。これ④と質問の性質が似てないか?

⑥「社会に出ると因数分解なんね必要ないよね」と言ったことがある
◎ 今も言ってる。実際勉強なんか全部必要ないだろ。損得で教養を図るんじゃねえ!って塾で熱弁してます。

⑦「インド式算数」を学ぶより、電卓を使えばいいと思っている
○ そりゃあ。好きな奴だけ学べばいいじゃん。

⑧なんでも平均値で物事を判断してしまう
× しない。民主主義に懐疑的だから。

⑨抗菌コートのトイレじゃないと入りたくない
× ウンコできればどうでもいいよ。

⑩物理学と聞いただけで「難しくて分からない」と思ってしまう
× 物理学者がバカで分かりやすく説明できないだけだと思っています。

 う~ん・・・半分つくなあ・・・

『理系バカと文系バカ』①

 サイエンスライター竹内薫さんの新書です。

 やっぱりこの人の文は面白い!

 この前新書は嫌いって言ったけど、それは昨今の新書ブームで、どこもかしこも新書をたくさん出版してて、まるで玉石混交の情報の塊と化したネットと変わらないと私が思っているからです。
 読書嫌いな人にも気軽に読ませようとする新書は、内容が薄く読み応えが無いものも多いし、それにしては700~800円は高いよなあ、と。
 読解するのに2週間かかった『進化の存在証明』なんて600ページで2800円ですよ?こっちのほうが読み応えあってお得だと思うんだけど・・・

 しかしなかにはいい新書があって、結局本の良し悪しはハードカバーや新書がどうこうじゃなくて、著者の実力次第ってこと。
 この本はそういう意味でかなりお勧め!笑って読めるし、この前読んだ小飼さんの新書が一冊20分で読み切れちゃったのに対して、この本はちゃんと読めば3時間はかかるので、720円にしては読み応えもあってかなりお得なんです。
 特に理系馬鹿と文系バカの傾向を分析する第1章は秀逸で、あとは現在の日本の科学の現状分析の話なんで、竹内さんが後に出した『なぜ科学はウソをつくのか』と結構かぶるんだけど(私はこっちを先に読んだ)それでも新書価格だし買う価値はあり!

 この本の言いたいことは至って単純。バランスの取れた知性には、理系的思考と文系的思考どっちも大切だよねってこと。
 だから理系の人は「文学なんて大雑把でつじつまがあってない」なんて言わずにもっと文系学問を学んで、文系の人は「数学は役に立たないし小難しい」とか言って理系学問を避けてはいけない。じゃないと文系は文系の価値観にしがみついた文系バカだし、理系も理系バカになるよってこと。
 竹内さんは理系、文系バカを文系か理系どちらか一方の狭い価値観だけしかないバカな奴と定義していますが、読み進めていくとそれは単にそいつの人間性の問題なんじゃねえか?っていう話もちらほら・・・wこれがとにかく面白い。

 特に理系バカのコミュニケーション能力の下手さ=無礼さ=わがままさは本当に五歳児レベルで、世界的に有名な科学者同士がどっちが先に論文を読むかでケンカし、熱湯の入ったケトルを投げつけ傷害罪で捕まったなんて話は、何で物理のプロが熱湯の入ったヤカンを人に投げつけたらどうなるか分からないんだ?って思うんだけど、とにかく理系には、自分の研究分野のことになるともう周りが見えなくなる人が多いってことらしい。真のオタク気質なんだな。
 そういえば福岡伸一さんの『生物と無生物のあいだ』でも、そんな科学者同士の意地のはり合いや、しょうもないケンカのエピソードはけっこうあったし、こんなこと知っちゃますます「将来は科学者になろう!」なんてちびっ子は現れないし、科学離れも加速するっての。

 竹内さんは大学で哲学と物理学をどっちも学んだ稀有な人だけど、やっぱり根は科学少年だと思うから、文系バカの分析は理系の立場から冷静に(そもそも分析自体が理系の十八番だけどね)、そして理系馬鹿の分析はかなり自虐的に書いているのが笑える。
 だいたい理系じゃないと、文系への突っ込みでしかし、レモンの酸っぱさの最大の要因はビタミンCではなく、クエン酸であることを忘れないでいただきたい(46ページ)なんてイカした文は書けません!

 竹内薫さんって結局のところこういう理系バカが出た不器用なところが可愛い。んで福岡伸一さんは同じ科学者でも生物やっているだけあって文学的。
 だから女性と一緒に夜空を眺めて「太陽は核融合によって徐々に膨張し、50億年後には地球を飲み込んでその時に生命は宇宙に帰る」とか身も蓋もないことを言う不器用な理系が竹内さんなら、女を口説くために星座に纏わる神話の話とか非科学的なことをリップサービス出来ちゃう器用な理系が福岡さんなんだろうな。
 福岡さんが「動的平衡状態にある生命はみな美しいんだよ」とか言うと女は「福岡はん素敵やわ~」ってときめくかもしれんが、その女がイメージする生命の枠に果たしてミミズやゴキブリやムカデが入っているのかって話だよね。おそらくトイプードルとかなんだろうな。
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