『ラストパーティ』脚本⑩

ピカール「紳士淑女の皆様・・・本日はロト剣術魔法学校の年度末発表会にようこそおいでくださりました・・・!本校の生徒の日々の鍛錬の成果をぜひ最後までご覧ください!
発表会の最後には学生のオークションもあります!
それでは、まずは魔法学部の発表です!
学部長のテスタメント先生よろしくお願いします!」
魔女のテスタメント「魔法学部 黒魔術学科 攻撃魔法専攻の学生の総合火力演習となります。
ピカチュウのように強い光を放ちますのでくれぐれもご注意を・・・」
テスタメントが杖を振ると、来場者の手元に遮光板が現れる。
テスタメント「第一小隊整列!!」
魔法学部の学生が競技場の中心に整列し、遠くの山の方へ腕を上げる。
テスタメント「PKファイヤー 方位角3032 射角119 3連続 斉射!!」
そういうと、学生たちが一斉に山の山頂に向けて火炎弾を撃ち込む。
爆撃と轟音。
来場者の歓声。
山火事が起こる。
テスタメント「続いて第二小隊前へ!
PKアイスストーム 同一目標 斉射!!」
今度は別の学生が一斉に山火事に向けて氷系の魔法を放つ。
鎮火される山火事。
テスタメント「演習は以上となります。
来年度はより難易度の高い落雷系の全体攻撃魔法を履修させますわ・・・」
会場内が拍手に包まれる。
来場者「ブラボー!!」

来賓席の方へ引き上げる講師のテスタメント
「あら・・・そのマッシュルームヘアーはウィンロードじゃない。来てたんだ。」
ウィンロード「まあな。」
テスタメント「しばらく見ないうちに老けたわね~・・・」
ウィンロード「お前は変わらないな・・・美容魔法か。」
テスタメント「PKドモホルンリンクルよ。あんたもやる?」
ウィンロード「くだらねえ。」
テスタメント「で?うちの子たちの魔法はどうだった?
せっかく来たんだから一人くらい買って帰りなさいよ。」
ウィンロード「使い物にならんよ、あれじゃあ・・・」
テスタメント「いつも憎まれ口ばっか。だから結婚できないのよ・・・」
ウィンロード「では聞こう。火炎魔法と氷結魔法を放つ学生を入れ替えたのはなぜだ?」
テスタメント「・・・え?」
ウィンロード「あの威力だ。消費MPが高すぎて詠唱できるのは一度きりだからじゃないのか?」
テスタメント「なによ、あんたバトル・オブ・ナガシノを知らないの?」
ウィンロード「じゃあ、魔法使いを3000人もパーティに加えろというんだな。
いずれにせよ、あれでは必殺の一撃をかわされたらおしまいだ・・・
実践では役には立たんよ・・・」
テスタメント「はいはいそうですか・・・あんたは一体なにと戦おうとしてんのよ・・・」
ウィンロード「だが・・・一人だけファイアとアイスを打っていたやつがいたな・・・」
テスタメント「ああ・・・あの子は消費MPが少ないから・・・
でも、アルコールランプ程度の着火と冷えピタ程度の冷却しかできない落第生よ・・・」
ウィンロード「じゃあ、お前のクラスは全員落第だ。」
テスタメント「・・・くっ・・・!バーカバーカ!」
悪口を言って立ち去っていくテスタメント。
ため息をつくウィンロード「精神年齢も変わりやしねえ・・・」

ピカール「続きまして、勇者学部です!
剣術学科フェーデ専攻の学生によるトーナメント試合を開催します!」
諸侯たち「いよいよですな・・・」
「今年は即戦力の剣士がいるかな・・・」
ラム隊長「それではAブロック第一試合を始める!両選手の土俵入り!
はっけよい、残った!」

選手控室
控室の外からは競技中の歓声が聞こえる。
緊張でベンチにへたり込んで震えているヴィンツァー「始まってしまった・・・もうだめだ・・・」
ベオウルフ「いよいよだね、ヴィンツァーくん。
ぼくはどんな相手にも敬意をもって接する。わかるかね?
つまり、手加減をせずに全力で行かせてもらうということさ・・・」
ヴィンツァー「それはちょっと・・・
ぼく、わざと負けますので剣でたたくのは勘弁してもらえますか?」
ベオウルフ「なぜあの姫君はこんな腰抜けが好きなのか、さっぱり分からん・・・
きみにはプライドはないのか?愛する女性を守るために戦おうとは思わないのかね。」
ヴィンツァー「誰かを傷つけるくらいなら、ぼくは愛なんていりません・・・」
ベオウルフ「哀しい奴だな・・・愛のない人生に何の意味がある?
ようし、騎士の情けだ。君の無意味な人生を終わらせてやろう。
ボコボコにしてやる。」
ヴィンツァー「ひいいい!」
控室に入ってくる少女「ヴィンツァー・・・」
少女の顔は暗い。
ヴィンツァー「・・・ど、どうしたの?」
少女「あたし・・・攻撃魔法ぜんぜんできなかった・・・せっかくの発表会だったのに・・・
あたし・・・剣もダメ・・・魔法もダメ・・・字も読めない・・・
何もできない・・・」
ヴィンツァー「そ、そんなことないよ・・・」
涙を浮かべる少女「でも・・・あんたは違う・・・あんたは剣の才能がある・・・
あの時・・・あたしを守ってくれたじゃない・・・」




数年前――感染症で壊滅した村。
村人の死体を狙って舞い降りるハルピュイア。
少女「やめて!こないで!!」
ハル「チョーダイ。チョーダイ。」
少女「パパ!ママ!お姉ちゃん!!誰か助けて~~!!」
少女に向けてかぎづめを向ける。
その時、木の棒を持ってハルピュイアに向かっていく幼いヴィンツァー。
ヴィンツァー「うあああああ!!お前なんか怖くないぞ!あっちいけえええ!!」
そう言うと、泣きながら木の棒を振り回す。
その太刀筋を難なくかわしてしまうハル。
しかし、木の棒の速度があまりにも速く、風圧でハルの胸当てが外れてポロリしてしまう。
ポロリに気づいて一瞬意識が切れるハル。
そのチャンスを逃さず、木の棒でハルの脚を叩き、少女をかぎづめから守るヴィンツァー。
たまらず、少女を諦めて飛び去って行くハル。
恐怖でガタガタ震えて、失禁してしまう少女。
少女に近づくヴィンツァー「だいじょうぶ・・・もう戻ってこない・・・
も、もし・・・もう一度襲ってきたら・・・今度は墓を作って埋めてやる・・・」
ヴィンツァーに抱き着く少女「う・・・うわああああ!」




選手控室
少女「・・・だから、あなたは絶対に勝てる。わたしの・・・勇者様なんだから・・・」
ヴィンツァー「・・・リネット・・・」
そう言うと、何かを決心して立ち上がるヴィンツァー。
ベオウルフ(・・・こいつ、顔つきが変わった・・・)
ヴィンツァー「ベオくん。ぼくは、どんな相手にも敬意をもって接する。」
ベオウルフ「ほう・・・」
ヴィンツァー「つまり、お互い手加減をせずに全力で戦おう・・・騎士道精神に則って。」
ヴィンツァーと握手をするベオウルフ「いい試合にしよう。」

土俵に入場し、剣を握って向かい合うヴィンツァーとベオウルフ。
ラム隊長「はじめ!!」




学生のオークションが始まる。
ステージに並ぶ剣士と魔法使いの卵たち。
ボコボコにされているヴィンツァー。
ピカール「アダムス大臣が10万ゴールドを上げた!他はいないか?他はいませんね?
・・・ベオウルフ・レイセオンくん、王立騎士団がハンマープライス!!」
ハンマーを叩くピカール。
学生たち「さすがベオくんだ・・・6ケタをつけたぞ・・・オレなんか4ケタなのに・・・」
「オレは3ケタだぞ・・・」
「まあ、あそこで売れ残っている2人よりは幸せだろ・・・まがりにも騎士の従者になれるからな。」
そう言うと、ヴィンツァーとリネットに目をやる学生たち。
ピカール「残るは、黒死病で滅んだ貧しい農村から拾った孤児二人です!スキルは特に無し!
言い値でお売りしますが・・・」
しらける会場。
心細そうにヴィンツァーの手を握るリネット。
ヴィンツァー「大丈夫だよ、売れ残ったら学園に戻れる・・・」
リネット「それは成績のいい学生だけよ・・・あたしたち無能な在庫は処分される・・・」
ヴィンツァー「ごめん・・・ぼくがベオくんに負けたばっかりに・・・」

リネットに目をやるベオウルフ。
自分を買い取ったアダムスに声をかける。
ベオウルフ「あの・・・あそこにいる2人も買い取ってほしいのですが・・・」
アダムス「競争率の高い君を買い取ってもう予算がないよ・・・」
ベオウルフ「ぼくの友だちなんです・・・どうか・・・」
アダムス「これはわたしのポケットマネーじゃないんだ。国民の税金だ。
残念だが、私一人の判断でそんなことをしたら暴動が起こるよ。」
2人に向かって首を振るベオウルフ。

すると、太っていて下品そうな領主が名乗りを上げる。
領主「私が引き取ろう。」
ピカール「マンイーター男爵から30ゴールドが上がりました!
他にいないか?」
マンイーター男爵に向かってウィンロードが話しかける。
「あんた・・・あれを本当に騎士として雇うのか?」
男爵「ぶひひ・・・あの子たち・・・よく見ればなかなかのロリロリじゃないですか。
ぼくのリカちゃんハウスのコレクションにしようかな、と・・・」
ウィンロード(性的虐待をされた後に殺されちまうか・・・)
ピカール「それではマンイーター男爵がハンマープ・・・」
札を上げるウィンロード「二人まとめて20万ゴールドだ。」
ざわつく会場。
ピカール「・・・え?なんですって?みなさん静粛に!!」
ウィンロード「・・・22万ゴールドのがいいか?」
ピカール「な・・・なんと22万ゴールドが出ました!今回のオークションの最高額です!!」
参加者たち「おいおい・・・!あの最強の剣士ウィンロード卿が競り落とすということは、あの二人、もしかしてとんでもない逸材なんじゃ・・・!」
「買っときゃよかった!」
「でも、22万ゴールド以上も出せないぞ・・・!」
悔しがる男爵「ぶひょ~!ぼくの着せ替え人形が奪われたブー!」
ピカール「それでは、22万ゴールドでシドニア・ウィンロード卿がハンマープライス!!」

『ラストパーティ』脚本⑨

モンスターを差別するならず者の武器を一撃で切断してしまう騎士。
コンピテンシーリーダーをその騎士の方へ向けてレーザーを飛ばすヨシヒコ。
ゼリーマン「何者ですか?」
コンピテンシーリーダーを読み上げるヨシヒコ
「・・・ええと・・・
戦闘経験:レベル99
剣技レベル:カンスト
人間性:誠実で心根が優しいが、やや控えめで優柔不断
職歴:王立騎士団軍事顧問、勇者ギルドトップランカー、現在無職・・・」
ゼリーマン「・・・本物の勇者だ・・・」
ヨシヒコ「氏名:スナイデル・ヴィンツァー」




回想
ドリームワールドのスタッフルーム
「マジックキングダム」の資料の山に目を通しているガイドの小田順子。
背の高い精悍な女性が入ってくる。
女性「・・・あれ、残業?」
小田「あ・・・お嬢様・・・こんばんは・・・」
背の高い女性の名は「姫川桃乃」・・・コマキアミューズメント第二開発部長である。
分厚い古書を見て桃乃「どっかの修道院の写本?」
小田「はい・・・明日の最終現地確認の予習を・・・」
桃乃「真面目な子ね・・・私は昔から勉強はさっぱり・・・だから“遊び”を仕事にしたんだけどね・・・」
小田「あはは・・・」
桃乃「あら、でもこれ絵が入ってる。なにかの物語?」
小田「はい・・・伝説の勇者が破滅の邪神から世界を救ったお話です・・・」
桃乃「へ~面白そうね・・・」
すると、突然小田が興奮して立ち上がり桃乃に詰め寄る。
小田「聞きたいですか!!??」
桃乃「・・・え、ま、まあ・・・」
小田「このお話は・・・もうメルヘンオタクの私の中でも最高傑作ですよ・・・!!」
桃乃「メルヘンオタクだったんだ・・・」
小田「私がずっと憧れていた王子様はこの人だったんです・・・」
桃乃「そこまで言う。まあ私も今夜は暇だし・・・じゃあ聞かせてちょうだい。」
小田「部長・・・長くなりますよ?」
ソファに腰を下ろす桃乃「酒もつまみも用意済みよ。」
古書のページを嬉しそうにめくる小田
「ではまず、勇者様の出自を紹介しますね・・・
伝説の騎士「スナイデル・ヴィンツァーSNEIJDER WINZER」は、向こうの暦で1319年に、広大な所領を持つ名門諸侯と、王家の血を引く姫とのあいだに生まれた、由緒正しき貴族であったとされています。ヴィンツァー卿は、幼い頃から正義感が強く勇敢で、弱きを救うため、自ら積極的に剣の鍛錬に励みました。
その崇高な騎士道精神に一目置いたブリジッド国王陛下は、ヴィンツァー卿を自身の居城に召還し、世界を滅ぼさんとする邪神ニャルラト・カーンの討伐を命じました・・・
あれ・・・お嬢様、寝てませんか??」
桃乃「寝てない、寝てない!でもさ・・・その勇者様に憧れるより・・・自分が勇者になった方がずっと面白くない?」
小田「お嬢様はそう言うでしょうね・・・でも、本当にかっこいいんですって!」
桃乃「ごめん、ごめん・・・続けて・・・」
小田「勇者ヴィンツアァーはそこで、邪神を倒すために6人の精鋭を集めます・・・
彼らは円卓の騎士と呼ばれ・・・」



マジックキングダム暦1319年――
のどかな田園風景が広がるリーズガーデンの農村地帯。
どこかで羊の鳴き声が聞こえる。
粗末な納屋
農夫が畑に出ていこうとしている。
臨月の妊婦「あなた・・・!知事からステイホーム要請が出ているのよ・・・!
外に出るのは危険だわ・・・ここだって邪神の瘴気が漂って・・・」
窓の外を指差す農夫「ただののどかな昼下がりじゃねえか・・・!
自分の目で見て考えろ。政府の情報に踊らされるな。」
妊婦「でも・・・」
農夫「それに・・・ここで私が働かなかったら、誰がお腹の子を食わせてやるんだ・・・?」
妊婦「じゃあ、せめてマスクをつけてくださいな・・・」
鳥のくちばしのようなヘンテコなマスクを差し出す妊婦。
農夫「そんなもんつけて農作業ができるか!
外に出ただけで病気になって死ぬわけないだろう。
待ってな、私の可愛い息子よ・・・」
そう言うと、扉を開けて農場に出て行ってしまう農夫。



数年後
廃屋のようにボロボロになった納屋にスキップしながらやってくる少女。
ドアをノックする。
少女「ちょっと!いつまで引きこもってんのよ!!いい加減外へ出なさい!!」
廃屋からは返事がない。
すると、ボロボロの扉を蹴破る少女「オラー!!」
ベッドにくるまっている少年。
その汚いシーツを引っペがしてしまう少女。
「起きろヴィンツァー!!」
少年時代のヴィンツァー「や・・・やめてよ・・・!」
ヴィンツァーは痩せこけており、ガタガタ震えている。
少女「いい加減起きなさい!部屋を片しなさい!!窓を開けて換気しなさい!!」
ヴィンツァー「ほっといてよ・・・!」
少女「あら・・・あんた怪我してるじゃない・・・見せてみ。」
ヴィンツァーのアザだらけの腕を取る少女。
ヴィンツァー「平気だから・・・」
少女「また、やられたんでしょ・・・仕方ないわね・・・
痛いの痛いの飛んでけ~」
そう言って、ヴィンツァーの腕を撫でるとアザが消えてしまう。
微笑む少女「はい。これでだいじょうぶ。」
ヴィンツァー「あ・・・ありがとう・・・」
少女「あら、お礼が言えるのね。えらいえらい・・・じゃあ、学校に行くわよ。」
ヴィンツァー「ぼ・・・ぼくは学校になんか行きたくない・・・!
いつもいじめられるし・・・剣だって嫌いだ。」
少女「ヴィンツァー・・・あたしたちの家族の敵をとりたくないの?」
ヴィンツァー「ぼくら孤児がいくら頑張ったって、あの邪神には勝てないよ・・・」
そう言うと、シーツに手を伸ばす。その手をぴしゃりと叩く少女。
少女「勝てるさ。」
ヴィンツァー「なんで・・・」
少女「君は、人の痛みが分かるから。」



ロト剣術魔法学校――
邪神により家族を失った孤児を集めて、優秀な剣士や魔法使いを育成する教育機関である。
木刀を振るヴィンツァーと少女。
ビリー隊長のような筋肉ムキムキの講師サー・ラムマヤ
「体幹が真っ直ぐだとクリティカルヒットが出やすい・・・!
何度も繰り返し体に覚え込ませよ・・・!サークル!サークル!!」
ヴィンツァー「はあはあ・・・ぜえぜえ・・・」
少女「もう息が上がったの?・・・情けない・・・」
隊長「少年・・・!がんばるのだ!」
座ってしまうヴィンツァー「ラム隊長・・・ぼくには向いてません・・・」
隊長「いや、キミは筋がいい、あとはスタミナだけだ。自分に自信を持つのだ。」
少女「ほら、私のスタミナを見習って精進なさい。」
少女の方を向いて隊長「きみはもう帰っていいぞ。太刀筋が不安定で、周りの子に木刀が当たってみんな怖がっている・・・いたずらに人を傷つけてはならぬ。
騎士が剣を握るときは、弱きものを守るときだけだ・・・」
少女「うわ~ん!!」傷ついて泣き出してしまう少女。
ヴィンツァー「・・・・・・。」



昼休みの校舎の中庭
木のラケットでボールを壁打ちしている生徒たち。
木陰で本を読んでいるヴィンツァー。
パンを片手に近づいてくる少女「あなた、字が読めるの?」
ヴィンツァー「うん・・・ちょっとだけ・・・」
少女「すごい!ねえ、それどんな話?」
ヴィンツァー「アーサーという王様が騎士の仲間を集めて冒険をするんだ。」
少女「かっこい~!いいなあ、男の子は・・・あたしも騎士になりたかった。
高潔な精神と、卓越した剣技を併せ持ったわたしも性別(ジェンダー)には勝てずに魔法学科にクラス替えさせられたからね・・・」
ヴィンツァー「いや、円卓騎士団には女騎士もいたらし・・・」
少女「あ?」
ヴィンツァー「なんでもないです・・・」

二人に近づく長身でイケメンの青年。
「君たちここにいたか・・・」
ヴィンツァー「ベオウルフくん・・・」
ベオウルフ「きいたぞ、ヴィンツァーくん。女の子を泣かすなんて紳士のすることじゃないぞ。」
ヴィンツァー「ごめん・・・」
少女に手を出すベオウルフ「さあ、可憐な姫君・・・よろしければこの私と散歩でもしながら思索にふけりませんか?」
少女「い・・・いや・・・だいじょうぶ・・・」
ベオウルフの取り巻きの女子たち「まあ、なんて失礼な女なの!ベオさま、バラ庭園に行きましょうよ、また花言葉のおはなしを聞かせてくださる?」
ベオウルフ「なるほど・・・あなたはその同郷の少年に未練があるのですね・・・」
少女「・・・なんでも色恋沙汰にしないでくれる?思春期の乙女みたいな人ね。」
ベオウルフ「ふふ・・・ヴィンツァーくん。君はわたしの恋敵のようだ。
こうしようじゃないか。年度末の御前試合でわたしと君の一騎討ちをセッティングさせる。
その試合で勝利したほうが、その可憐な姫の寵愛を受ける。どうだね?」
少女「あたしは贈答品じゃないんだけど。」
ヴィンツァー「ぼ・・・ぼくには無理だよ・・・ベオくんは勉強も運動も一番だし・・・」
立ち去るベオウルフ「では、ごきげんよう。」
少女「・・・あんた・・・どうするの?」
ヴィンツァー「ベオくんは優しくてかっこいいから君にはぴったりだよ・・・」
泣いて走り去っていく少女「ばか~!!」



年度末の剣術・魔法発表会
国中の諸侯や領主が将来有望な騎士の卵を採用しに集結する一大イベントである。
トーナメント会場で来賓を出迎える職員。
ピカール学園長「これはこれは、ようこそおいでくださいましたアダムス主席大臣・・・」
アダムス大臣「まったくうちの王の戦争好きにも困りますよ・・・戦いが好きなのは結構だが毎回負けて敵国の捕虜ですからね・・・マグナカルタの関係で身代金を払う度に増税するにも限度がある・・・ゆえに特殊部隊を結成し秘密裏に王を救出することが閣議決定されたのです。」
ピカール「それは由々しき事態ですな。本校の学生は精鋭ぞろいです・・・ぜひご照覧あれ・・・」
アダムス「それは楽しみだ。」
ぞろぞろと会場に入る諸侯や貴族の中に、ひとり偏屈でみすぼらしい騎士が混ざっている。
ピカール「おや・・・あなたがここに来るとは珍しい・・・」
騎士「来ちゃ悪いか?」
ピカール「いえいえ・・・むしろ嬉しいですよ。
この国で最強の剣士がとうとう自身の後継者を探しに来られた・・・
どういう心境の変化ですか?ウィンロード卿・・・」
騎士「ただの気まぐれだよ。あいにく、おしゃべりは好きじゃねえんだ。
そろそろ入れてくれるかね。」
ピカール「ええ、どうぞ・・・」
そういうと、会場で受付をするみすぼらしい騎士。
受付「お名前と所領を・・・」
騎士「スノーフル辺境伯、シドニア・ウィンロードだ。」

『ラストパーティ』登場人物(ヴィンツァー編)

 なんと、ヨシヒコがヴィンツァーと合流するまでに4万字も使ってしまったため、あそこまでを「ヨシヒコ編」とすることに決めました。
 こっからは伝説の勇者ヴィンツァーの半生記となります。よろしくです!

登場人物
スナイデル・ヴィンツァー
かつて世界を救った勇者。平和な現在では特にやることがないので、村で引きこもっている。
実は人一倍臆病者で、誰も殺めたことがない。戦場を逃げ延びただけの生存者だった。
しかし、剣術などのステータスは最強ランクを誇る。

シルビア・アシュレイ
風の魔法使い。世話焼きな女の子。世界を救う大冒険に憧れているが、ヴィンツァーには止められている。

リネット・アシュレイ
ヴィンツァーの幼馴染の孤児の少女。明るく活発な性格。
成人になると高名な白魔術師となり、病に苦しむ人々に医療行為を施すようになる。

ベオウルフ・レイセオン
剣術学校時代のヴィンツァーの学友。成績優秀な騎士の卵。

マッスル・ラムマヤ
剣術学校時代のヴィンツァーの先生。両手剣のパワープレイを得意とする。

メグナ・テスタメント
魔法学部の先生。エステが好きな美魔女。

シドニア・ウィンロード辺境伯
仕官時代のヴィンツァーの師匠。偏屈で人間嫌いだがひょんなことから弟子を取ることに。

ヴィンツァーの円卓騎士たち
これに、伝説の勇者ヴィンツァーと風の巫女リネットを入れた7人で、邪神ニャルラト・ハーンに挑んだ。

・鉄の戦士ヴォルスング
 超強力な鉄拳で戦う戦士。短気だが優しい男。

・月の剣士セレスティア
 美しき女剣士。真っ直ぐな性格で忠義心が厚い。

・竜の狙撃手ジークフリート
 寡黙なドラグーンマスケット銃の名手。

・闇の科学者ヘルシング伯爵
 頭脳明晰な紳士。実は吸血鬼で不老長寿。

・炎の騎士サー・モルドレット
 悪魔と人間とのハーフ。強大な潜在能力を秘めるが事勿れ主義者。



ライオンハーテド王
ブリジッド王国の国王。戦が好きなわりに弱く、敵に捕虜にされることが多い。
身代金を支払う度に重税を課すので国民全員に嫌われている勇猛な王様。

姫川桃乃
コマキアミューズメント第二開発部長。コマキ社の社長の娘。

小田順子
ドリームワールドのガイド。メルヘンが好きで夢見がちな性格。

ハル
意地汚い怪鳥。攻撃的なモンスターではないが、幼き頃のヴィンツァーとリネットにトラウマを与える。

ゼリーマン
全スライムの英雄。戦闘力5のゴミだが、とにかく顔が広い。

邪神ニャルラト・ハーン
かつて世界を滅ぼそうとした恐るべき邪神。大量のネズミで病気を蔓延させ、ガリア大陸のほとんどを暗黒大陸に変えてしまった。
その後、ブリジッド島にまで魔の手を伸ばしたがヴィンツァー達に倒される。

『ラストパーティ』脚本⑧

エゼルバルド城中央ゲート
城門は戦時中ということで厳重に閉じられている。
堀の跳ね橋も上がっており、通行止めになっている。

門の前にゼリーマンのペガサスが舞い降りる。
衛兵「そこで止まれい!!現在、戦時中のため城下には入場制限がかかっている!!」
ゼリーマン「ガリアごときにビビッて街ごと引きこもりかい。」
衛兵「黙れ下級モンスター。ここで成敗してやろうか?」
ヨシヒコ「小田原城みたいだな・・・」
衛兵「異世界の連中がやっと引き上げたと思ったら今度はガリア軍だ・・・」
ゼリーマン「そのガリア軍の情報を持ってきたと言ったらどうだ?」
衛兵「本当か!?ようし、場内へ入れ!
とでも言うと思ったか!お前がトロイの木馬じゃない証拠を見せろ!」
ゼリーマン「やれやれだぜ・・・」
衛兵「勘違いするなよ下等生物・・・お前らモンスターが俺たち人間と対等に渡り合えるなんて思うんじゃねえ。てめえらは、原っぱで勇者パーティに通り魔的に惨殺されて、わずかな経験値を提供するだけの生ごみだ。」
哀れに思うヨシヒコ「きみ、モンスターにも人間にも罵倒されてるな・・・」
小声でゼリーマン(覚えてろよ・・・メドのように後でぶち殺してやる・・・)
衛兵「何か言ったか?」
ゼリーマン「い・・・いえ・・・旦那、金貨を・・・」
ペルセウスの金貨を衛兵に見せるヨシヒコ
「王立捜査局のものだ・・・国王ライオンハーテドの命で腕利きの戦士をリクルートしに来た・・・
この供のスライムも体中にゼリーを塗ったくった潜入捜査官だ。」
衛兵「これは確かにペルセウス殿のもの・・・し・・・失礼しました!!
人間だったんですね・・・!」
敬礼をして、部下に跳ね橋を下げさせる衛兵。
ゼリーマン「いいよ、馬で飛び越えるから。」
ペガサスにまたがるゼリーマン。
翼を広げるペガサス。
衛兵「・・・・・・。」



モンスターハンターギルド
店内は酒場のようなにぎやかさで、壁には、お尋ね者のモンスターの張り紙がたくさん掲示されている。
「メデューサ  討伐難易度:高  賞金額:25万ゴールド  容疑:違法賭博胴元
(※討伐されました。ご協力ありがとうございました。)」の張り紙。
ゼリーマン「ここなら、腕自慢のウォリアーがたくさんいますよ・・・」
ヨシヒコ「よくモンスターを駆除する連中の店に入れるな・・・」
カウンターのマスターに話しかけるゼリーマン
「よう、マスター。あんたの店に金に困っている腕利きはいないか?」
マスター「一人いる・・・リオレウス卿だ。ふたつ名は竜殺し。腕は確かだ。」
ゼリーマン「そいつを雇いたい。報酬は弾む。」
マスター「残念だったな。先週、異世界からやってきた連中に雇われて出てっちまったよ。」
ヨシヒコ「異世界だって・・・?」
ゼリーマン「いつ戻ってきそうだい?」
首を振るマスター「今頃はジャバウォッキーのフンだ。」
ヨシヒコ「コマキ社の第9救助隊だ・・・」
ゼリーマン「他の連中は?」
マスター「腕の立つ奴はほとんど徴兵されちまったよ。
残ったのは野盗崩れの飲んだくれだけさ・・・(店内の客を見渡して)こいつらならオレでも勝てる。
店がなかったら、俺が手を貸してもよかったがな。悪いなゼリーマン。」
マスターにチップを渡すゼリーマン「いいさ、また今度飲みに来るわ。」

階段から中年の騎士と若いシスターがギルドホールに降りてくる。
採用担当「今後のご活躍をお祈り申し上げます。」
シスター「無慈悲に不採用にしといて、これ以上心の傷をえぐらないでよ。」
騎士「もういいから・・・」

振り返るヨシヒコ「彼らは・・・?」
マスター「うちで働きたいとかいう無職だ。」
ゼリーマン「立派な騎士に見えるが、不採用なのか?」
マスター「エントリーシートの志望動機が、ギルドは安定していて福利厚生がしっかりしている、クビがない、しか書かれてなくて、企業分析が全くなかったからな・・・
確かにうちの賞与はデカいが、それは危険手当がついているだけで、決して楽な仕事じゃねえ。
自己PR欄も、「かつて世界を救った」とか抽象的なことしか書いてないから、具体的にどんな冒険をしてどういったスキルがあるかが不明確・・・」
ヨシヒコ「それはぼくでも落とすな・・・」



城下町の市場で強者を探すヨシヒコとゼリーマン。
首を振る街の民。
ゼリーマン「なかなか勇者って見つからないもんすね・・・」
ヨシヒコ「だから勇者なんだろうな・・・」
ゼリーマン「旦那も収穫なしですか。」
ヨシヒコ「何人かの町民が、勇者ならリーズガーデンのスナイデル・ヴィンツァーがいいのではと言っていたが。」
ゼリーマン「ヴィンツァー卿ですか?それは論外だ。」
ヨシヒコ「知っているのか?」
ゼリーマン「ライアー・ナイト。あれは嘘つきで臆病者の根性なしですよ。」
ヨシヒコ「かつての戦乱で世界を救ったと言っていたが・・・」
ゼリーマン「証人がいない。」
ヨシヒコ「では、なぜ彼が救ったことになっているんだ?」
ゼリーマン「あいつ以外の勇者パーティがラスボス戦で全員死んじまったからです。
結果的に邪神による世界の破滅は免れたが・・・
別の原因かもしれないし・・・そもそも世界の破滅自体が誰かの陰謀論だったのかも。」
ヨシヒコ「世界人口の3分の1が減ったらしいから、陰謀論じゃないんじゃないか??」
ゼリーマン「俺はこれでも情報リテラシーが高いんです。
そんなソースが薄弱なおとぎ話は信じねえ。」
ヨシヒコ「そうか・・・もしそんな人材がいたら即中途採用だったが・・・」
ゼリーマン「旦那。よく考えてもみてください。
世界を滅ぼすほどの力を持った存在をたったひとりの勇者が剣一本で倒せると思いますか?」
ヨシヒコ「・・・そういう世界だろう?」
ゼリーマン「そういうデマが蔓延する世界ってだけです。
あいつは自分だけが生き残ったのをいいことに、世界の救済を自分の手柄にしやがった。
こっちは毎日汗水たらして泥棒してるってのに、あいつは生涯勇者年金で悠々自適のFIREですよ。」
ヨシヒコ「・・・羨ましいの?」
ゼリーマン「とにかく、あいつはやだ!みんなにチヤホヤされやがって!」
ヨシヒコ「わかったよ・・・ぼくは君を信じる。別の人材を探そう。」

その時、中央の広場に人だかりができているのに気づく2人。
ゼリーマン「なんだ?大道芸か?」
ヨシヒコ「ちがう・・・」
そういうと、背伸びをして人だかりの向こうを覗くヨシヒコ。
ゼリーマン「なんですか?」
ヨシヒコ「きみの友だちだ・・・」

人だかりの真ん中では葬儀屋と商人が何やらもめている。
葬儀屋は魔女のような黒づくめの格好をしており、一方の商人の方は二人組の中年で、どことなくアジアンテイストの格好をしている。
葬儀屋のメグナ・テスタメント「ごめんね・・・葬儀は取りやめよ・・・」
商人のトクガワ「なに?」
テスタメント「墓も掘ったし柩も用意したんだけど・・・」
トクガワの相棒のマサノブ「なら早いとこ埋めてやれよ!」
トクガワ「渡した金じゃ足りないのか?」
テスタメント「金じゃないんさね・・・
そりゃ20ゴールドくれりゃあ、あたしゃどんな人間のクズだって弔ってやる。
でもダメなのよ。」
そう言うと、トクガワに金貨を返すテスタメント。
トクガワ「どうなってやがる・・・あいつを埋めてやりたいのはあんたも同じだろう。」
テスタメント「信心深いわね・・・きっと天国に行けるわ。」
トクガワ「おい、そういうことじゃないんだよ!オレたちはおっぱいパブのチェーンを各地で経営しているケチな商売人だ。
で、ここに来る道すがら裸の女の死体が転がってて、なのにみんな知らん顔だ・・・葬ってやるのが三河商人じゃないか。」
マサノブ「・・・もう、いいんじゃないすか?」
トクガワ「そうはいかん!あのまま、ここに置いといたらそれこそ腐って、ただでさえ不衛生な中世の城塞都市がますますウンコだぜ!」
テスタメント「あたしだってウンコは嫌だけど、この街ではそれができないんだ。
当局があの死体は墓場にふさわしくないんだってさ。」
トクガワ「はあ・・・?あんたんとこの墓場で眠っているのは、人殺しや盗人やサイコパスの類だよ?」
マサノブ「人のチンコを切ってソーセージにして食っていたやつの墓もありました。」
テスタメント「それでもみんな人間なんだ・・・あの子は、モンスターなのよ・・・」
トクガワ「たまげたね・・・死んだあとも差別されるのか。」
テスタメント「みんなモンスターが怖いのさ・・・スタッフもみんな逃げちまった。」

その様子を複雑な表情で見つめるゼリーマン。
広場に横たわっているのはハルの死骸だったからだ。
ヨシヒコ「何とかしてやろう・・・」
広場に出ていこうとするヨシヒコ。
それを制止するゼリーマン。
ゼリーマン「旦那、ダメだ。」
ヨシヒコ「・・・あそこにいるのは君の友達じゃないか。」
ゼリーマン「俺に友達なんかいねえ。
それに・・・こんなつまらねえことで旦那を巻き込むわけにはいけねえ。」
ヨシヒコ「つまらないって・・・」
ゼリーマン「これは俺たちモンスターの問題です。異世界の旦那には関わりのねえことだ。」
ヨシヒコ「ゼリー・・・」
ゼリーマン「旦那は、スライムを殺して毎回葬儀を上げている勇者を見たことがありますか?」
ヨシヒコ「・・・私は、そういった人物こそ・・・本当の勇者だと思うが。」

マサノブ「じゃあ、代わりの社員を呼んでこいよ・・・!あんた、それでも送り人か!」
テスタメント「冗談じゃない!この街に何人差別主義者がいると思ってるのよ!
モンスターを弔ったとなれば、うちは営業停止じゃすまない・・・」
その時、広場の脇から誰かが声を上げる。
騎士「私がやろう・・・」
そう言うと、ギルドで就活をしていた無職の騎士が、ハルの死体をお姫様だっこのように優しく持ち上げて、霊柩馬車に乗せてやる。
テスタメント「ちょっとあんた・・・!勝手なことはやめてちょうだい!
この霊柩車は高級なんだ、もし反魔物主義者にぶち壊されたら・・・」
そう言うと、テスタメントに金貨を投げるヨシヒコ。
ヨシヒコ「これで弁償する。」
ヨシヒコの方を向いて会釈をする騎士。
霊柩馬車に乗り込む騎士。
すると、若いシスターも馬車に近づく。
シスター「葬儀のミサができる人間もいるでしょう?」
騎士はシスターに腕を貸してやり、シスターをステップに上げる。
騎士「行こうか・・・共同墓地へ。」
シスター「あたしはまだ入りたくないからね・・・」
そう言うと、馬車を発進させる騎士。

街の中央通りを通過する馬車。
民家が道の左右にひしめいており、どこからも霊柩車が狙える危険な状況。
どこからか罵声が聞こえる。
市民「お前らも魔物なんだろ!」
市民「井戸に毒でも入れに来たのか?」
シスター「ゴミみたいなツイートね・・・」
手綱を握る騎士「無視無視・・・」

とある窓に人影ができる。
騎士「左側、3軒先の2階に弩弓を持った市民がいるぞ。」
弓を構えるシスター「素人の弓なんて怖くないわ・・・もう少しで射程に入る・・・」
騎士「教会で習ったのか?」
シスター「忘れたの?私の血筋はケルト系よ。弓のセンスはDNAに刻まれてる・・・」
その時、弩が発射され霊柩車に火矢が飛んでくる。
シスターは弓をうち、その火矢を矢で跳ね返し、進行方向を変えてしまう。
騎士「やられたか?」
シスター「バカね・・・矢に火をつけたら軌跡が丸見えじゃない・・・」

共同墓地にたどり着く馬車。
すると、墓地の前にモンスターハンターたちが集まっている。
騎士「歓迎員だ・・・」
シスター「どっかのバカが通報したのよ・・・」
馬車から降りる騎士「どうかしました?」
馬車に立ちふさがるハンター「止まれ・・・誰の許可で魔物を埋葬しようとしている・・・」
騎士「保健所です・・・」
槍やハンマーやバトルアックスを構えるハンター「馬鹿にするんじゃ・・・」
その刹那、騎士が剣を抜くやいなやハンター達の武器がすべて真っ二つにされてしまう。
ハンター「・・・!!」
剣を鞘に戻す騎士。
シスター「現役時代よりも早いんじゃないの?」
騎士「なんか、たまにやるとうまくできるね。」

すると騒ぎに気づいてパトロール中の兵士が駆けつけてくる「何事だ?」
シスター「なにも。(ハンター達の方を向いて)そうよね?
・・・柩を埋めるのを手伝ってくれる?」
偏見のない町民が馬車に駆け寄ってくる。
金貨を掲げるテスタメント「あたしの奢りよ!飲んでちょうだい!」
歓声が上がる。
騎士の方に駆け寄るトクガワ「おい!いいもん見せてもらったぜ!」
マサノブ「とんでもねえ居合抜きだ・・・!すげ~な・・・!」
マサノブに剣を渡す騎士「剣お返しします・・・」
騎士の周りに人だかりができる。

その様子を眺める二人。
ヨシヒコ「・・・あの太刀筋・・・見えたか?」
首を振るゼリーマン「恐ろしい・・・気づいたときには敵はあの世だ・・・」
コンピテンシーリーダーを騎士の方へ向けてレーザーを飛ばす。
ゼリーマン「何者ですか?」
コンピテンシーリーダーを読み上げるヨシヒコ
「・・・ええと・・・
戦闘経験:レベル99
剣技レベル:カンスト
人間性:誠実で心根が優しいが、やや控えめで優柔不断
職歴:王立騎士団軍事顧問、勇者ギルドトップランカー、現在無職・・・」
ゼリーマン「・・・本物の勇者だ・・・」
ヨシヒコ「氏名:スナイデル・ヴィンツァー」

『ラストパーティ』脚本⑦

甲冑を着けるヨシヒコ。
ランスを渡すゼリーマン「ほいで、これが槍です。」
ヨシヒコ「・・・めちゃくちゃ重いな・・・」
ゼリーマン「やっぱり俺が代わりましょうか??」
ヨシヒコ「・・・やりたいのか??」
そう言うと、馬のドードー鳥にまたがるヨシヒコ。
ゼリーマン「ずいぶん脚が短い馬っすね・・・」
手綱を引くヨシヒコ「でも、脚は速そうだ・・・どうどう・・・」

支配人室からトーナメント会場を見下ろすメド
(バカね・・・あのデュラハン卿に勝てるわけがないじゃない・・・
あまりに圧勝しすぎてギャンブルとして成立せずブリジッド政府に禁止されたくらいなのだから・・・
それに、あの異世界人が仮にチート技を使用しても、ベット額の5倍は絶対に不可能・・・
デュラハン卿はケンタウロス族・・・そう、下半身が馬・・・!
絶対に落馬はないのよ・・・)
メド「・・・それでは両者スタンバイが完了したようです・・・!
コロシアム中央のウィル・オー・ウィスプが赤から青になったらスタートです!!
エト・ヴ・プレ?(準備はいい?)」

青コーナー
ゼリーマン「旦那!リラックス!一騎撃ちは臆病風邪に吹かれたほうが負けます!
負けたって、せいぜい肋骨粉砕骨折だ・・・!人生、生きてりゃ勝ちよ!!」
ヨシヒコ「にわかに緊張してきたぞ・・・」

赤コーナー
ミノタウロス「人間の体は信じられないくらいひ弱だ・・・加減はしてくれ・・・」
デュラハン「私はプロだ。心得ている。さあ、正々堂々いざ勝負勝負!!」

ウィル・オー・ウィスプのシグナルが青に変わる。
メド「ア・ヴォ・マルケス・・・アロン!!(始め!)」
互いに突進するデュラハンとドードー。
ぐんぐん接近していく・・・
が、デュラハンのオーラに臆して、ドードーがくるりと向きを変えて逃げ出してしまう。
慌てて手綱を引くヨシヒコ「おい!何処へ行く!!」
逃げ出すドードーをそのまま追いかけるデュラハン。
円形コロシアムをぐるぐると回る、追いかけっこが始まってしまう。
観客の大ブーイング。
スケルトン「ふざけんな~~!!もう骨がねえよ、バカヤロー!!!」
怒りが収まらないギャンブル狂の魔物たちが観客席からコロシアムに飛び降りて、追いかけっこに加わり出す。しっちゃかめっちゃかなコーカースレース。

その様子を呆然と見つめるサイクロプス「兄弟・・・この場合は勝敗はどうなるんだ?」
無線をかざすミノタウロス「姐御・・・無効試合ですか?」
メド「青の負けにしなさい!!これで24000ゴールドはいただきよ!」
勝敗をアナウンスしようとするミノタウロス「この勝負・・・」

そのとき会場に精悍な騎士が現れる。
騎士「待った!!」
ミノタウロス「なんだあんた・・・!大事なギャンブル中に!!」
すると、身分証を見せる騎士。
「王立捜査局主席捜査官のペルセウス警部補だ!
賭博目的のジュースティング開催は風営法で禁止されている!!
ただちに試合を中止し、おとなしくお縄に付けい!!」
サイクロプス「さ・・・サツだ!!!」
会場に悲鳴上がり、モンスターたちが逃げ出す。
しかし、巨大な盾を持った王立機動隊の騎士が会場になだれ込み、魔物の行く手を阻む。
モンスターたち「違法賭博は極刑だ・・・!もうやるしかねえ!!」
魔物と騎士たちが乱戦を繰り広げる。

メド「くそ・・・なんでここがバレたのよ!!」

ペルセウスがゼリーマンに近づく。
ペルセウス「寝返ってくれて感謝するスライムくん。
なかなかジュースティングが現行犯で押さえられなかったんだ。
これで私も警部になれる・・・」
ゼリーマン「礼はいい・・・約束の金は?」
ペルセウス「セリポス島の5万ゴールド金貨だ・・・持って行きなさい。」

その様子を眺めて怒りに震えるメド「あのクソゼリー・・・!はなからあたしをハメやがった!!」
すると、デスクの中にしまっていた尻尾を引き抜く。
尻尾の先にはごついガトリングガンがついており、窓越しにゼリーマンに一斉掃射を試みる。
メド「死に晒せええええ!!!!」

あわてて銃弾をかわすゼリーマン。支配人室のデッキを指差す。
ゼリーマン「あの人が主犯です・・・!」
ペルセウス「わかった!君は危ないから下がってなさい!!」
ゼリーマン「勇敢な警部補にアテナの加護があらんことを。」
ペルセウスは頷くと、剣を抜いてメデューサと戦いをはじめる。
ペルセウスなど眼中にないメド「待てやゼリー!!」
ペルセウス「お前の相手はこの私だ!!」
メド「どきなさいよ!!邪魔よ!!」

とうとう、コロシアムの壁に勢い余って激突してしまうドードー。
ドードーから落馬し地面に転がるヨシヒコ。
ヨシヒコ「あたた・・・!」
後ろを振り返ると、ランスを抱えたデュラハンが突進してくる。
デュラハンのランスが届く寸前、ペガサスに乗ったゼリーマンがヨシヒコの手を取って、ペガサスの背中に乗せる。
ペガサスはその白い翼を広げて、コロシアムの上空を飛んで行き、天窓を突き破って「ハリーハウゼン」を脱出する。
ゼリーマン「12ゴールドが4100倍になりましたよ。」
ヨシヒコ「馬に乗るのは誰でも良かったんだな・・・」
天窓を見上げるメド「覚えておきなさい・・・ゼリーマン!!」
その直後、ペルセウスに首を切られてしまうメド「ぐえええ!!」
振り返って微笑むゼリーマン「地獄で会おうぜ!」



美しい朝焼けの空を飛行するペガサス
ヨシヒコ「また、火事場泥棒でこんな白馬を盗んだのか・・・」
ゼリーマン「オレのたった一つの取柄なんでね・・・」
ヨシヒコ「金貨をもらうよりも、あの捜査官を味方につけた方がよかったんじゃないのか?」
ゼリーマン「ペルセウスって・・・何をした人か知ってますか?」
ヨシヒコ「・・・アキレス腱を痛めた人だっけ・・・?」
首を振るゼリーマン「あいつの知名度はそんなもんです。
それに・・・出世の為にオレみたいな薄汚ねえモンスターと司法取引するような奴だ。
信用ならねえ・・・警視総監を約束されたら親だって裏切りますよ。」
ヨシヒコ「なるほど・・・」
ゼリーマン「その点、旦那は信用できる。金でも地位でも動かねえ。
実直な兄貴だ。いや、愚直なのかな・・・?」
ヨシヒコ「・・・どうも。」
ゼリーマン「そんな強い信念のある人物はこの世界には貴重だ・・・
弱気を助け、強きをくじく気高い勇者を見つけないと・・・」
ヨシヒコ「そんな勇者がその金貨につられて仲間になるか?」
ゼリーマン「勇者はまっすぐすぎて、社会で冷遇されているもんです。
なのでだいたい金に困っている。」
ヨシヒコ「悲しい世界だな。」



サントノーレ修道院
「タックスフリー」の看板。
駐車場にペガサスの手綱を結ぶゼリーマン。
ドアを叩くゼリーマン「休憩。大人二名。」
ヨシヒコ「・・・モンスターを泊めてくれるのか?」
ゼリーマン「修道士はそんな差別はしません。宿泊料さえ払えば。」
扉の小窓が開く。
小窓の隙間からカギを出す修道士「この時間だと宿泊料金になるが・・・」
ゼリーマン「じゃあ、モーニング付けてくれや。」
修道士「スタンダード?デラックス?デラックスならミートパイに半熟卵が乗っかるけど・・・」
ゼリーマン「デラックスで。エールもくれ。」
修道士「あいよ・・・お熱い夜を・・・」
小窓を閉める。
ヨシヒコを見つめるゼリーマン。
ヨシヒコ「ぼくにそんな趣味はないからな・・・」

粗末なベッドのあるツインルーム。
ゼリーマン「二段ベッドだ!旦那!どっちにしますか?」
ヨシヒコ「わたしが上でいいかな・・・きみの体液が垂れてくるから・・・」
ベッドに転がるゼリーマン「ラジャー!」
シーツがにわかにびしょびしょになる。
ヨシヒコ「うまいぞ・・・机と筆記用具がある・・・」
机の上には、小鳥大の妖精がカゴに入っており、ほのかに明かりをともしている。
羽ペンをとるヨシヒコ。
ゼリーマン「誰かに手紙ですか?」
ヨシヒコ「冒険の記録をつけようと思ってね・・・
いや、冗談だ。コマキ社に手紙を転送する。
近くに転送ポイントがあるからね。」
ゼリーマン「手紙を送れば、向こうから加勢が来るとか?」
ヨシヒコ「・・・そんなものは期待してないが・・・
これが湯浅専務に届けば・・・少なくとも結城の妨害は防いでくれる・・・
あいつの嫌がらせで、小田さんは亡くなった。やつはその罪を償うべきだ。」
紙を丸めると、妖精をかごから出して、手紙を脚に括り付ける。
ヨシヒコ「向こうの中年のメガネをかけた紳士まで頼む・・・
しかし、アロハシャツの男には気をつけるんだ。」
妖精は頷くと、窓から飛んでいく。



夜が明ける。
修道院の食堂。
朝食のミートパイをがっつくゼリーマン。
その様子を宿泊客の紳士が見つめる。
新聞紙を開きながら紳士「巡礼かね?」
くちゃくちゃしてモーニングを食べるゼリーマン「この俺が巡礼者に見えるか?」
紳士「いや・・・むしろ罰当たりな軟体生物だ・・・出身は湖水地方かね?」
ゼリーマン「そんなとこだな・・・あんたは?」
紳士「ガリア大陸から。帝国軍の進軍に混ざってきたんだ。」
ゼリーマン「あんた・・・その見た目で軍人か?」
微笑む紳士「この私が軍人に見えるか??私は学者だよ・・・
ゴート大学の歴史学者でね・・・勇者学を研究している。」
ゼリーマン「・・・勇者学だって??あんた・・・勇者に詳しいのか?」
紳士「まあね・・・」
ゼリーマン「ズバリ、この世界で一番の勇者は誰だ?」
紳士「その勇者に会いたくて私はブリジッド領にやってきた・・・
かつて世界の崩壊を食い止めた伝説の勇者・・・」
ゼリーマン「おい、あんたもしかしてサー・ヴィンツァーの伝説を信じているのか?
ぎゃっはっは・・・!あいつはただのホラ吹き男爵だよ!
破滅の邪神ニャルラト・カーンを殺せるわけがない!」
紳士「では・・・なぜこの世界はまだ終焉を迎えていないのかね・・・」
ゼリーマン「答えは簡単だ。そんな邪神はそもそも存在しなかったんだ。」
紳士「では、ガリア大陸北東部をゴッソリえぐりとったエリスクレーターはなぜできた?」
ゼリーマン「ああ言えばこう言うインテリゲンチャだな・・・」
紳士「君が言うとおり、勇者といえどたかが人間・・・神は殺せまい。
彼の人柄に惹かれて優秀な戦士や高名な魔導師がパーティに加わったらしいが、邪神との戦いで生き延びたのはサー・ヴィンツァーだけ・・・彼は生き証人なのだよ。
私は歴史学者として彼の証言を後世に残す義務がある・・・」
ゼリーマン「ふうん・・・で、ヴィンツァーはどこにいるんだい?」
紳士「おそらく、ここからずっと北のローク地方だと思われる。」
ゼリーマン「じゃあ、あんたはそこを目指すのか?」
紳士「ああ・・・ガリア軍とは別れてね・・・連中は残虐極まりない・・・
ああいう暑苦しいのは好きじゃないのだよ。」
ゼリーマン「俺たちも勇者を探してるから・・・もしヴィンツァーに会ったら・・・あんたが会いたがっていることを伝えておくよ。」
紳士「それは助かる。」
ゼリーマン「あんたの名前は?」
紳士「ゴート大学リベラルアーツ学部、学部長のローワン・ウイリアム主席司祭だ・・・」
そう言うと、祈りを捧げて食堂から出ていくローワン。
入れ違いに食堂に入ってくるヨシヒコ。
風呂上がりで機嫌のいいヨシヒコ「まさか、こんな修道院に温泉があるとはな・・・生き返ったよ・・・
どうした?誰かと話してたのかい?」
ゼリーマン「勇者マニアの変なおっさんがいました。」
ヨシヒコ「?」
ゼリーマン「それより・・・勇者を探すのにうってつけの場所を思い出しました。」
ヨシヒコ「どこ?」
ゼリーマン「モンスターハンターのギルドです。」
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