回想
スバル「・・・・え?廃部・・・?」
顧問「せっかくソフトボールをやりに入学してくれたのにすまない。
実は本校では新たに女子野球部を立ち上げることが理事会で決まってね・・・
同じような部活動はいらないという判断で、ソフトボール部をたたむことにしたんだ・・・」
スバル「ちょっと待ってくださいよ!野球とソフトボールは全然違うよ・・・!」
顧問「理事会としては、ぜひ榛東さんに野球部の主将を・・・」
スバル「ほかの人をあたってください。」
部室を出て行くスバル。
河川敷で野球の試合を眺めているスバル。
日傘を指しているりかぜ「・・・野球部の主将を引き受ければよかったじゃない。
もともとプロ野球選手になりたかったんでしょう?」
スバル「おう、天才少女か。」
りかぜ「・・・となりいい?」
ベンチを開けてやるスバル「・・・いまさらソフトを裏切れねえよ・・・野球をやらせてもらえない女の子がやるスポーツとかさんざん馬鹿にされて・・・ここまで極めたってのに・・・」
りかぜ「・・・で、そこまで極めたあなたの実力は、もう日の目を見ることはないの・・・?」
スバル「そりゃ、あんたの方だろ。IQが200もあって、やってることは川原で三波石集めか。」
ビニール袋の石をかかげてりかぜ「・・・やることがないもの。
戦国時代や戦時中だったら、この頭脳も使いどころがあったのかもしれないけれど・・・」
スバル「なら、あんたもスポーツをやるといい。肉体と頭脳の戦いだよ。」
白い髪をかきあげ、赤い目をすがめるりかぜ「・・・この炎天下で大量の紫外線を浴びて?」
スバル「・・・死んじまうか。でも、戦略は考えられるだろ・・・?」
りかぜ「なら、あなたの下で働きたい。」
笑って、川に石を投げるスバル「うちはもう帰宅部だぜ?」
石は水を切ってバウンドする。
りかぜ「私はあなたとやりたいの。」
スバル「なんで?」
真剣な顔でりかぜ「・・・そういう運命だから。」
スバル「よせやい。いまさら野球部には入らねえぞ・・・啖呵切っちまった。」
りかぜ「イニング制の他の球技なら?」
スバル「・・・ソフトボールくらいしかねえだろ・・・」
りかぜ「・・・あったら?」
・
現在――伊勢崎華蔵寺公園球場
遠くには観覧車やジェットコースターが見える。
野球場のベンチに座っているスバル。
りかぜ「・・・お見えです。」
立ち上がるスバル。
球場に入ってくる鮎原姉妹
咲「ふえ~・・・本当にここで試合をやるの?」
スバル「たまには青空の下で体を動かすのも悪くないでしょ?」
ゲームボーイをしながら幹「・・・バレーボールをやるんだよね・・・?」
りかぜ「もちろん。」
・
白亜高校
生徒会室に駆けてくる小早川
「はあはあ・・・!」
ちおり「あ、チョロQが来たよ!」
小早川「ぜえぜえ・・・ついに詩留々高専が聖ペンシルヴァニアと戦います・・・!!」
今日の対戦カードを小早川から受け取る海野
海野「・・・約束守ってくれたんだ・・・」
さくら「義理堅いわね、あいつら。見直しちゃった・・・」
海野「・・・あれ?今日って、この試合だけなの?」
小早川「え?は、はい・・・」
海野「ほかの学校は・・・?」
生徒会室に入ってくる狩野「・・・もういないわ・・・」
海野「・・・レイちゃん!?」
ビビって通路を開ける花原。
狩野「ノックもせずに失礼いたします。」
さくら「ああ、いいよ。で、高体連のスタッフがわざわざうちみたいな貧乏高校に何のよう?」
狩野「祝福を言いに来ました。本日、白亜高校女子バレー部の準優勝が確定しました。
おめでとうございます・・・」
拍手をする狩野。
海野「ええっ・・・!!?」
華白崎「ほかの部は全て敗退したと言うんですか?」
狩野「・・・ええ・・・鮎原姉妹に・・・」
花原「本当に化物ね・・・」
さくら「・・・霧ヶ峰漸新と暁工業も?」
狩野「あの2校は季節性インフルエンザで出場停止です。」
さくら「寺島先輩のあほたれ・・・横浜でみんなと大皿をつついたから感染したんだ・・・!」
狩野「みなさんは、今日の試合の勝者と決勝戦で戦っていただきます。場所は東京体育館。
これは、バスチケットです。」
花原「うおおおおお!!!本当に、ここまで来た・・・!」
その時、黒服たちが生徒会室のテレビにチューナーを取り付ける。
華白崎「・・・なにを?」
狩野「・・・みなさんは今日の試合の結果がたいへん気になることでしょう・・・
そこで、試合の様子を衛星中継いたします・・・」
ちおり「見れんの?やったー!」
海野「レイちゃん・・・」
小声で狩野「海野さん・・・やったね・・・」
さくら「どうだ見たか!これぞ私の天下三分の計よ・・・!
聖ペンシルヴァニアが勝とうが、詩留々が勝とうが、どちらにせよ、今日の戦いで憔悴している・・・
そいつらに最後の止めをさせば、私らは優勝!
まあ、ここまで来たら12億がもらえる聖ペンシルヴァニアとやりてえけどな!」
花原「先生・・・!孔明先生・・・!」
華白崎「・・・信じられない・・・」
さくら「言ったでしょう?優勝するなら、負けなきゃいいだけ。簡単な話よ。」
乙奈「・・・海野さん泣いてるんですか・・・?」
海野「・・・だ・・・だって・・・ほんの数ヶ月前までは、一人でバレーをしてたのに・・・
生原さんがこの学校に来て・・・すべてが変わった・・・
サイエンスクラスの授業が変わり・・・
芸能クラスからはプロのアイドルがデビュー・・・
女子バレー部は活動を再開し・・・
生徒会室はみんなの憩いの場に・・・
栃木県の自然は守られ・・・
埼玉県のいじめはなくなり・・・
群馬県とは同盟が結べた・・・
そして・・・全国制覇の夢まで後一歩のところまで来ている・・・
こんなの奇跡だよ・・・」
微笑む花原「そういうセリフは、優勝してからでしょ・・・」
海野「だけど・・・」
ちおり「にゃー、なんかバレーじゃなくて野球してるよ!」
テレビ画面を指差すちおり。
花原「何言ってるのよ・・・チャンネルが違うだけでしょ・・・」
狩野「いや・・・そんなはずは・・・」
テレビ画面には野球のようなスコアボードが表示されている。
実況「最終回7回裏、詩留々高校の攻撃です!聖ペンシルヴァニアは守りきれるか!」
詩留々部員「ナイスサー、スバル!!」
咲「ばっちこーい!」
幹「この3点を死守しよう!」
下手打ちで強力なサーブを打つスバル「ウインドミルサーブだオラー!!」
ポカンとする花原「こいつら何やってるの・・・?」
狩野「正真正銘のバレーボールです。」
花原「いやいや・・・私が今までやってきたバレーと違うんだけど・・・」
さくら「イニング制バレーボールだ・・・」
華白崎「イニング制?」
さくら「もともとバレーボールってイニング制だったのよ。各チーム交互に攻撃と守備に入れ替わって得点を取り合うスポーツだった・・・そう・・・野球のように。
攻撃側がラリーを制すれば1点、守備側が制すれば1アウト。3アウトでチェンジ。」
花原「うそでしょ?」
さくら「・・・榛東スバルはもともとソフトをやってたって言ってたっけ?」
海野「・・・はい・・・」
さくら「・・・この試合・・・わからないわよ・・・」
花原「・・・・・・。」
実況「スバルのバックアタックが決まった~!同点!同点です!!
これで詩留々高専が聖ペンシルヴァニアに追いついた・・・!!
カウントは2アウト!ここで、詩留々高専がラリーを制すれば、逆転サヨナラ勝ちです!!」
ブラウン管にかぶりつく花腹「なんですって・・・・!!??」
華白崎「・・・あの鮎原姉妹が・・・負ける??」
・
華蔵寺公園球場
詩留々高専の応援団「あと一点!あと一点!!」
野球帽をかぶっているりかぜ(・・・やはり、聖ペンシルヴァニアは鮎原姉妹以外は脅威ではない・・・
確かにほかのメンバーも強いには強いが想定の範疇・・・
この勝負もらったわ・・・)
ネット越しに話しかけるスバル
「なあ鮎原さんよ、下のやつらに追いかけられるってのはどんな気分だい?」
咲「ん?楽しいよ。」
スバル「・・・あんた、この状況でどういうメンタルしてんだよ・・・
ルールに慣れてなかったから負けたっていう言い訳はよしてくれよ・・・」
咲「まさか・・・こんな楽しいルールを教えてくれて感謝したいくらいよ。
それに・・・私たちが負けたことがないとでも?
負けるのはいいことよ。勝ち方は負けなければ学べないからね。」
スバル「負けるのがいいこと・・・?」
昨年、海野に敗れた記憶が蘇る。
回想
笑顔の海野「はあはあ・・・ありがとう、いい試合だった・・・!」
スバル(3セットストレート敗けが・・・?)
スバル「負けるより勝つほうがずっといいだろうがあああ!!」
渾身のバックアタックを打つスバル。
それをひろう幹。
アタックを打つ咲。
咲の強烈なアタックを必死にブロックする詩留々高専の前衛。
球速が落ちたボールを立て直す。
もう一度バックアタックを決めるスバル。
エンドラインギリギリを狙うが、守備の天才の幹が超反応で飛び込みレシーブをする。
咲「ナイレシ幹姉!」
もう一度咲がアタックを決める。
そのアタックを根性で食らいついてひろうスバル「負けるかあ!!」
激しいラリーの応酬を見つめる白亜高校。
海野「すごい・・・あの鮎原姉妹と互角だなんて・・・!」
華白崎「それは違うわ・・・追い込まれてるのは明らかに鮎原姉妹です・・・」
なかなか終わらないラリー
咲「ずいぶんしぶといわね・・・!はあはあ・・・」
スバル「連戦の疲れが出てるんじゃないのか?ぜえぜえ・・・
こっちはな・・・仮想海野ロボを6台相手にして毎日特訓してんだ・・・
あんたたち2人なんて目じゃねえさ・・・」
幹「オール海野さんチームは確かにやばいね。うん。」
スバル「どうする?絶対王者・・・」
幹「このままラリーを続けていてもキリがない・・・終わりにしようか。」
そう言うと、幹がバックアタックをする。
スバル「勝負を焦ったな!アウトだ!!」
何かを察するりかぜ「・・・!!だめ・・・!!」
その時、強風が吹き、地面にボールが落ちる直前で風に煽られ向きが変わり、ぎりぎりコート上に落ちる。
ショックを受けるスバル「な・・・!なんだって・・・!!??」
幹「あ~よかった。午後になるまでラリーを粘ったかいがあったわ。」
スバル「あんた・・・風が出てくるのを、待ってたのか・・・?」
幹「群馬の名物は空っ風なんでしょ?まあ、これは春一番かな。」
咲「さすが幹姉・・・!」
膝をつくスバル「野外での試合という逆境を活かして・・・
な・・・なんてやつだ・・・」
りかぜ(・・・・・・あの姉妹は・・・バレーに愛されてる・・・)
実況「15分にも及ぶラリーは鮎原姉妹が制しました!これにより、この試合は引き分けです!!」
テレビにかぶりつく花原「ちょ・・・!ちょっと待ってよ!バレーボールで引き分け?」
さくら「イニング制でしか起こりえない結果ね。」
華白崎「・・・ということは・・・どうなるんです?」
気まずそうな狩野「・・・すいません・・・白亜高校の準優勝確定は撤回いたします・・・」
ちおり「バスチケット返すの?」
乙奈「みたいですわね・・・」
海野「スバルちゃんは同盟を結ぶ際に、条件をつけた・・・
聖ペンシルヴァニア大附属と戦う代わりに、次は私たちと戦いたいと・・・」
花原「ちょっと待った!じゃあ・・・」
華白崎「わたしたちの優勝は、詩留々高専と聖ペンシルヴァニア大附属の連勝しかなくなったってことです・・・」
ちおり「わーい!あと2回も戦える~!やったー!」
花原「うそでしょ・・・!これじゃあ立場が逆転よ・・・!」
ちおり「私たちも引き分ければ?」
花原「・・・いったい何がしたいのよ・・・」
海野「・・・監督・・・」
さくら「・・・うん。けっこうやばいね。」
花原「先生・・・策は・・・?」
さくら「・・・ない。つーか引き分けって・・・」
『青春アタック』脚本㉜我田引水
2024-02-28 19:29:19 (1 year ago)
詩留々高専の体育館
りかぜ「こちらが我がチームの練習場です。」
ちおり「ひれー!!」
体育館には様々なバレーボールのトレーニングマシーンが並んでいる。
花原「これ、全部作ったの・・・?」
りかぜ「うちは工科系なのでわけはないわ・・・
実は、本日最新作が完成したの。
どうです?少し遊んでいきませんか・・・?」
ちおり「いいの?わーい!!」
りかぜ「花原先生もどうぞコートへ・・・」
花原「え・・・?いやちょっとなんか嫌な予感が・・・」
りかぜがリモコンのボタンを押すと、ひときわ巨大なバレーボールマシンがこちらに動いてくる。
花原「あれは・・・」
りかぜ「仮想海野美帆子バレーボールロボよ。」
・
応接室
海野「あ・・・あたし、そろそろ帰るね・・・!」
スバル「あんたがこんな卑怯な手を打たないことは私はよく知っている・・・
海野さんはバレーボールバカだからね。
あんたを裏で操っている黒幕がいるはずだ。誰?」
海野「いないよ、いないって・・・!」
スバル「こっちだってせっかく作ったバレー部を廃部させたくねえんだ・・・
可愛い後輩たちに残していきたいんだよ。
廃部なんて・・・もうゴメンなんだ。」
胸が痛む海野「・・・スバルちゃん・・・うん・・・わかった・・・」
その時、応接室の扉が開く。
りかぜ「・・・白亜高校監督・・・吹雪さくら・・・元日本代表」
そう言うと、ボロボロになったちおりと花原を放り投げる。
海野「・・・・!生原さん、花原さん・・・!」
ちおり「にゃ~・・・」
花原「海野ロボに殺されかけた・・・本気の海野さんがあんなに強いなんて・・・」
二人に駆け寄る海野「一体二人に何を・・・!?」
りかぜ「ただのバレーボールの練習よ。」
スバル「おいおい・・・元全日本が監督にいるのか!」
りかぜ「素行不良ですぐに球界を追い出されたみたいだけどね・・・
勝利のためには手段を選ばない恐るべき参謀よ。」
スバル「お前より恐ろしい参謀はいないだろ。」
りかぜ「・・・まあね。」
スバル「・・・で?こいつらの目的は?心を読んだんだろ?」
りかぜ「海野は、予想通り私たちと鮎原を戦わせたかったみたい。
花原は、うちの学校を受験したかったらしいんだけど、逮捕歴があって受験資格なし。
未練があったみたい。
生原は、なんかよくわからないけど、ただ付いてきた・・・」
花原「なんで、そんなこと分かるの・・・!?」
りかぜ「・・・遺伝子操作の影響かわからないけど・・・私は人の10倍“勘がいい”の。」
震える花原「か・・・怪物だ・・・」
りかぜ「中学生で原子炉作ったあなたに言われたくないわ・・・
で、ボス・・・どうしますか?」
床に膝をつく海野「スバルちゃん、陥れるような真似をして本当にごめん・・・!
謝るから、許してください・・・!」
スバル「・・・顔を上げなよ海野さん・・・それに・・・白亜高校の提案も結構悪くない・・・」
海野「え?」
りかぜ「さすがボス。聡明ですわ。
聖ペンシルヴァニアには現在の我々がフルパワーでかかっても勝利は難しい・・・
そして、それは白亜高校も同じ・・・
しかし、我々と白亜高が協力して、鮎原姉妹を迎え撃てば・・・」
海野「それって・・・」
スバル「いいぜ、海野部長・・・鮎原姉妹と戦ってやる。ただし、ひとつ条件がある。」
海野「え・・・?」
スバル「鮎原と対戦する代わりに、その次は白亜高校と戦わせてほしい。
・・・どうだ?」
海野「でも・・・私の一存では決められない・・・みんなと相談して・・・」
りかぜ「白亜高校の部長は吹雪さくらではなく、海野さん・・・あなたでしょ?
あなたが今、決めなさい。」
誓約書を机に置くりかぜ。
スバル「でなければ、この話は無しだ。」
海野「・・・・・・。」
花原「ダメよ海野さん・・・!こういうシチュエーションでサインをしてよかった試しがなかったってうちの母さんが言ってたわ・・・」
りかぜ「・・・あなたのお母さんのように借金をするわけではないわ。」
花原「この子怖い・・・!全部心を読んでくる・・・!」
海野「・・・・・・。」
スバル「別に下心なんかないよ。あんたらの策略に乗っかってやったほうが、こっちも得だって思ったんだよ。どうすんだい?」
ちおり「海野さんはどうしたいの?」
海野「・・・わたしは・・・人を騙すようなことはしたくない・・・」
ちおり「なら、相手を信じてあげたら?」
海野「生原さん・・・
うん・・・そうだよね・・・」
サインをする海野。
りかぜ「では、こちらに主将のサインも。」
スバル「おうよ。」
サインをするスバル。
りかぜ「これで、詩留々高専と白亜高校の同盟が結ばれました。」
握手を求めるスバル「よろしくな、海野さん!」
海野「・・・うん・・・!」
・
白亜高校
生徒会室
華白崎「詩留々高専と同盟を結んだんですか?」
さくら「・・・うん。これが誓約書。」
華白崎「・・・白亜高校は、詩留々高専が聖ペンシルヴァニア大附属を倒せるように最大限援助する義務を負う・・・具体的には、聖ペンシルヴァニア大附属に、霧ヶ峰漸新と暁工業をぶつけるよう裏工作をすること。それが成功の後、詩留々高専は約束を果たし、鮎原姉妹と戦う。」
さくら「・・・ちょっと様子を見てこさせるはずが、相手にしてやられたわ。」
華白崎「これじゃあ、同盟どころか、詩留々が聖ペンシルヴァニアに勝利するお膳立てをうちがやるだけではないですか・・・」
さくら「ほんで、もし詩留々が勝っちゃったら6億円も取られちゃうしな。」
海野「・・・みんな・・・本当にごめん・・・」
華白崎「花原さん・・・あなたが部長についていながら、なぜ同盟を止めなかったんですか・・・?」
花原「・・・いや、止めようとはしたんだけど・・・向こうにとんでもないやばい奴がいて・・・」
華白崎「暴力で脅されたんですか?それなら、こんな契約は無効だ・・・」
花原「そういうのじゃない・・・なんというか・・・桁違いの天才の参謀がいるのよ・・・」
さくら「天才少女はめぐなちゃんでしょうに。」
花原「・・・いや・・・あのりかぜちゃんこそ本当の天才・・・」
ショックを受ける華白崎「・・・あの花原さんがそんなことを言うなんて・・・!」
さくら「マッスルくん。」
山村が出場選手の名鑑をめくる。
山村「むう、詩留々高専に網野りかぜなんていう選手はないないぞ・・・」
花原「マネージャーらしいわ・・・それに、あの子のことなら、16年前のニュートンや日経サイエンスを読んだほうが早い・・・」
科学雑誌を渡す花原。
華白崎「ウーマン・ジェネティック社が代理出産マシンで遺伝子操作された天才児を開発・・・」
花原「その研究で生まれた子が彼女よ。」
さくら「クローン人間かよ・・・すげえ時代だなあ・・・ちょっと前に羊が成功したばかりだろうに。」
花原「お母さんの子宮で生まれてきた私たちとは頭脳のスペックが違うのよ・・・」
さくら「花原さん。
私、この分野詳しくないんだけど、クローン羊のドリーちゃんがほかの羊と比べて優っていたところってあんの?」
花原「・・・・・・ない。」
さくら「そんなもんよ。その天才少女・・・この私がギャフンと言わせてやるわ。」
・
横浜の中華街
各地での激戦を制した全国の強豪校18校の監督が会食をしている。
会場に入ってくるさくら「・・・鮎原姉妹が関東エリアを蹂躙しているっていうのに、地方の連中はのんきに食事会?」
奥の席で飲茶を食べている霧ヶ峰漸新高校バレー部監督寺島明日香は、おっとりした美人監督。
「いや、なかなか東京に来ることないから・・・
久しぶりだね、さくらちゃん。まさか、監督をやるとは思ってもなかったよ・・・」
メニューを持った店員がさくらに近づく。
さくら「紹興酒。」
店員「かしこまりました。」
椅子を勝手に持ってきて、席に着くさくら。
北京ダックを食べる暁工業バレー部雷都光「おいおい、あんたを招待した覚えはないで・・・」
さくら「悪巧みに私も混ぜてよ。」
寺島「いや、本当にただの親睦会だよ。もう地方のチームは私たちしか残っていないから、じゃあみんなで上京しようかって呼びかけたんだ。」
さくら「・・・まあ、お人好しな先輩はそうだろうけど。ほかの監督方は、どう相手を出し抜いてやろうかって目をギラギラさせてるんじゃないかしら?」
呆れるライト「それはあんたやろ・・・」
寺島「こっちは仲良くバレーを楽しんでいるからさ・・・誰が勝っても恨みっこなし。」
さくら「負けたら廃部になるのに?
大人が楽しむのは結構だけど、それじゃあ部員に申し訳が立たないでしょうよ。」
突然笑い出すライト「にゃ~はっはっは!廃部がなんじゃい!
まだ2勝しかしとらん、あんたと違って、こちとら強豪校なんじゃ。
うちらは少なくとも10勝以上はしとる・・・!廃部期間はいくらやと思う?」
さくら「・・・3光年?」
ライト「姉ちゃん、それは距離の単位や。80日間や。そんなん部員の喫煙発覚より可愛いもんやで!」
寺島「うん・・・だから、ここまで来たら私たちにとっては普通のバレーの大会なの。」
さくら「なるほど・・・普通のバレーの大会か・・・」
ライト「あんたの得意な悪知恵なんか必要あらへんってこっちゃ!紹興酒代は払って帰りや・・・」
さくら「普通の大会だというのに、そろいもそろって鮎原に恐れをなす腰抜けってわけね・・・」
ライト「なんやと~!!」
さくら「そうでしょうよ。相手が6億だなんてとんでもない人参をぶら下げて挑発しているのに、あんたたちは誰も率先して、東京を撃破しようともしない。いい?地方のあんたたちは首都東京になめられてんのよ。」
ライト「大阪が地方なわけあるかい!地方ってのは、長野みたいなスキー場しか切り札がないところを言うんや!」
傷つく長野県の寺島「・・・ライトくん・・・」
ライト「すまん・・・言いすぎたわ・・・軽井沢も善光寺もいいところや・・・」
お冷を飲んでから寺島「昔から変わってないね、さくらちゃん・・・そうやって私たちをけしかけて、聖ペンシルヴァニアと戦わせたいんだろうけど・・・私もそこまでお人好しじゃないよ。誰と戦うかは好きにさせて欲しい。」
椅子を動かし寺島の隣に座るさくら「先輩とも、もうずいぶん長い付き合いになりますよね・・・
変わらずお綺麗で・・・私が全日本でぺーぺーだった頃は、先輩がプロの世界を教えてくれた。
よく、食事にも連れてってくれたし・・・あの頃は楽しかったなあ。
先輩はあの時、こう言った。このまま若ければいいのに。引退なんてゴメンだ、と。」
寺島「この状況で、よくそんな話ができるね・・・」
黒烏龍茶をついでやるさくら「それが、今や二人共高校バレーの監督だ。」
寺島「旧交を温めに来たわけじゃないんでしょう?」
さくらが「パンパン」と手を叩く。
山村が、台車に積まれた2億円をひいて入ってくる。
ライト「なんじゃあ・・・!?」
ざわつく監督たち。
さくら「ここにいるのは18人だったっけ?・・・じゃあ一人あたり1000万やるわ。」
ライト「買収すんのか!」
さくら「勝てとは言わない。鮎原姉妹と戦ってくれるだけでいい。どう?悪くはない話でしょう?」
寺島「・・・この部屋に、あなたの口車に乗るような監督はいないわ・・・みんなお金じゃ変えられないもののためにバレーを・・・」
監督A「乗った・・・!」
ライト「おい、福岡県・・・!」
監督B「私もやります!」
ライト「愛知県、お前も裏切るのか・・・!」
監督B「そもそも、私たちの上京の理由は鮎原姉妹と戦いたかったからだし・・・その上お金ももらえるなら、ラッキーかなって・・・」
監督A「それに、裏切るもなにも、この席はただの親睦会でしょう?寺島監督の意向に従わなければいけないわけじゃないし・・・大阪府はどうするの?」
気まずそうに寺島の方を見ながらライト「・・・しかたね~な・・・」
さくら「おっライトくんいいね~!お姉さんおまけしちゃう!2束もってけドロボー!」
ライト「にゃ~はっは~オレに~!任せとけ~!!」
札束に群がっている監督たちを見つめる寺島「・・・地方18鎮諸校はこれで崩壊ね・・・」
・
詩留々高専
りかぜが今日の対戦カードの一覧表をスバルに持ってくる。
スバル「りかぜちゃん、どうしたい。」
りかぜ「・・・異常事態よ・・・」
一覧表を受け取るスバル。
りかぜ「・・・地方の強豪校が一斉に聖ペンシルヴァニア大附属に試合を申請してるわ・・・」
スバル「これじゃあボスラッシュじゃねえか・・・でも、まあいいんじゃねえの?
これで、さすがの鮎原もかなり消耗するから、うちらにも勝ち筋ができるだろ。
りかぜちゃんの思惑通りだよ・・・」
りかぜ「それならいいのだけど・・・問題は万が一、聖ペンシルヴァニアが負けた時よ。」
スバル「それはそれで、強敵がいなくなってラッキーじゃん。」
りかぜ「・・・いや・・・白亜高校が、霧ヶ峰漸新と暁工業を動かしたのに、我々が聖ペンシルヴァニアと戦わなかった場合・・・契約違反として罰則金を請求してくる可能性がある・・・いや、可能性じゃない・・・狡猾な吹雪さくらは必ずそう出てくる・・・」
部員「主将、白亜高校からお電話です・・・」
りかぜ「ほら・・・」
電話に出るスバル「もしもし・・・」
さくら「あ~こんちは。白亜高校監督の吹雪なんですが・・・おたく・・・早く鮎原姉妹と戦ったほうがいいんじゃない?こっちは金払って、大阪と長野を突っついたんだからさ・・・これで、よくわからない学校に鮎原姉妹が負けちゃった日にゃあ、困るわけよ。」
スバル「そ・・・そんなん仕方がないでしょ!」
さくら「うん・・・確かに仕方がない。だから、罰則金なんてケチくさいことは言わないわ。うちの学校が買収に使ったお金だけ保証してくれればいいから。」
スバル「はあ・・・?一体いくらよ・・・」
さくら「2億円。」
がなり立てるスバル「そんな金、高校生が払えるわけ無いでしょう・・・!」
受話器をスバルから奪うりかぜ。
りかぜ「はい・・・分かりました・・・」
電話を切ってしまう。
スバル「ちょっとりかぜちゃん・・・!」
りかぜ「・・・主将。こういう時こそ冷静に。私たちはもう相手の毒をくらってしまった。
こうなれば相手のゲームに乗っかるしかない・・・2億失うか・・・6億を得るかのゲームに。」
スバル「・・・策はあるの?」
りかぜ「鮎原姉妹が今日の激戦を持ちこたえてさえくれれば・・・」
りかぜ「こちらが我がチームの練習場です。」
ちおり「ひれー!!」
体育館には様々なバレーボールのトレーニングマシーンが並んでいる。
花原「これ、全部作ったの・・・?」
りかぜ「うちは工科系なのでわけはないわ・・・
実は、本日最新作が完成したの。
どうです?少し遊んでいきませんか・・・?」
ちおり「いいの?わーい!!」
りかぜ「花原先生もどうぞコートへ・・・」
花原「え・・・?いやちょっとなんか嫌な予感が・・・」
りかぜがリモコンのボタンを押すと、ひときわ巨大なバレーボールマシンがこちらに動いてくる。
花原「あれは・・・」
りかぜ「仮想海野美帆子バレーボールロボよ。」
・
応接室
海野「あ・・・あたし、そろそろ帰るね・・・!」
スバル「あんたがこんな卑怯な手を打たないことは私はよく知っている・・・
海野さんはバレーボールバカだからね。
あんたを裏で操っている黒幕がいるはずだ。誰?」
海野「いないよ、いないって・・・!」
スバル「こっちだってせっかく作ったバレー部を廃部させたくねえんだ・・・
可愛い後輩たちに残していきたいんだよ。
廃部なんて・・・もうゴメンなんだ。」
胸が痛む海野「・・・スバルちゃん・・・うん・・・わかった・・・」
その時、応接室の扉が開く。
りかぜ「・・・白亜高校監督・・・吹雪さくら・・・元日本代表」
そう言うと、ボロボロになったちおりと花原を放り投げる。
海野「・・・・!生原さん、花原さん・・・!」
ちおり「にゃ~・・・」
花原「海野ロボに殺されかけた・・・本気の海野さんがあんなに強いなんて・・・」
二人に駆け寄る海野「一体二人に何を・・・!?」
りかぜ「ただのバレーボールの練習よ。」
スバル「おいおい・・・元全日本が監督にいるのか!」
りかぜ「素行不良ですぐに球界を追い出されたみたいだけどね・・・
勝利のためには手段を選ばない恐るべき参謀よ。」
スバル「お前より恐ろしい参謀はいないだろ。」
りかぜ「・・・まあね。」
スバル「・・・で?こいつらの目的は?心を読んだんだろ?」
りかぜ「海野は、予想通り私たちと鮎原を戦わせたかったみたい。
花原は、うちの学校を受験したかったらしいんだけど、逮捕歴があって受験資格なし。
未練があったみたい。
生原は、なんかよくわからないけど、ただ付いてきた・・・」
花原「なんで、そんなこと分かるの・・・!?」
りかぜ「・・・遺伝子操作の影響かわからないけど・・・私は人の10倍“勘がいい”の。」
震える花原「か・・・怪物だ・・・」
りかぜ「中学生で原子炉作ったあなたに言われたくないわ・・・
で、ボス・・・どうしますか?」
床に膝をつく海野「スバルちゃん、陥れるような真似をして本当にごめん・・・!
謝るから、許してください・・・!」
スバル「・・・顔を上げなよ海野さん・・・それに・・・白亜高校の提案も結構悪くない・・・」
海野「え?」
りかぜ「さすがボス。聡明ですわ。
聖ペンシルヴァニアには現在の我々がフルパワーでかかっても勝利は難しい・・・
そして、それは白亜高校も同じ・・・
しかし、我々と白亜高が協力して、鮎原姉妹を迎え撃てば・・・」
海野「それって・・・」
スバル「いいぜ、海野部長・・・鮎原姉妹と戦ってやる。ただし、ひとつ条件がある。」
海野「え・・・?」
スバル「鮎原と対戦する代わりに、その次は白亜高校と戦わせてほしい。
・・・どうだ?」
海野「でも・・・私の一存では決められない・・・みんなと相談して・・・」
りかぜ「白亜高校の部長は吹雪さくらではなく、海野さん・・・あなたでしょ?
あなたが今、決めなさい。」
誓約書を机に置くりかぜ。
スバル「でなければ、この話は無しだ。」
海野「・・・・・・。」
花原「ダメよ海野さん・・・!こういうシチュエーションでサインをしてよかった試しがなかったってうちの母さんが言ってたわ・・・」
りかぜ「・・・あなたのお母さんのように借金をするわけではないわ。」
花原「この子怖い・・・!全部心を読んでくる・・・!」
海野「・・・・・・。」
スバル「別に下心なんかないよ。あんたらの策略に乗っかってやったほうが、こっちも得だって思ったんだよ。どうすんだい?」
ちおり「海野さんはどうしたいの?」
海野「・・・わたしは・・・人を騙すようなことはしたくない・・・」
ちおり「なら、相手を信じてあげたら?」
海野「生原さん・・・
うん・・・そうだよね・・・」
サインをする海野。
りかぜ「では、こちらに主将のサインも。」
スバル「おうよ。」
サインをするスバル。
りかぜ「これで、詩留々高専と白亜高校の同盟が結ばれました。」
握手を求めるスバル「よろしくな、海野さん!」
海野「・・・うん・・・!」
・
白亜高校
生徒会室
華白崎「詩留々高専と同盟を結んだんですか?」
さくら「・・・うん。これが誓約書。」
華白崎「・・・白亜高校は、詩留々高専が聖ペンシルヴァニア大附属を倒せるように最大限援助する義務を負う・・・具体的には、聖ペンシルヴァニア大附属に、霧ヶ峰漸新と暁工業をぶつけるよう裏工作をすること。それが成功の後、詩留々高専は約束を果たし、鮎原姉妹と戦う。」
さくら「・・・ちょっと様子を見てこさせるはずが、相手にしてやられたわ。」
華白崎「これじゃあ、同盟どころか、詩留々が聖ペンシルヴァニアに勝利するお膳立てをうちがやるだけではないですか・・・」
さくら「ほんで、もし詩留々が勝っちゃったら6億円も取られちゃうしな。」
海野「・・・みんな・・・本当にごめん・・・」
華白崎「花原さん・・・あなたが部長についていながら、なぜ同盟を止めなかったんですか・・・?」
花原「・・・いや、止めようとはしたんだけど・・・向こうにとんでもないやばい奴がいて・・・」
華白崎「暴力で脅されたんですか?それなら、こんな契約は無効だ・・・」
花原「そういうのじゃない・・・なんというか・・・桁違いの天才の参謀がいるのよ・・・」
さくら「天才少女はめぐなちゃんでしょうに。」
花原「・・・いや・・・あのりかぜちゃんこそ本当の天才・・・」
ショックを受ける華白崎「・・・あの花原さんがそんなことを言うなんて・・・!」
さくら「マッスルくん。」
山村が出場選手の名鑑をめくる。
山村「むう、詩留々高専に網野りかぜなんていう選手はないないぞ・・・」
花原「マネージャーらしいわ・・・それに、あの子のことなら、16年前のニュートンや日経サイエンスを読んだほうが早い・・・」
科学雑誌を渡す花原。
華白崎「ウーマン・ジェネティック社が代理出産マシンで遺伝子操作された天才児を開発・・・」
花原「その研究で生まれた子が彼女よ。」
さくら「クローン人間かよ・・・すげえ時代だなあ・・・ちょっと前に羊が成功したばかりだろうに。」
花原「お母さんの子宮で生まれてきた私たちとは頭脳のスペックが違うのよ・・・」
さくら「花原さん。
私、この分野詳しくないんだけど、クローン羊のドリーちゃんがほかの羊と比べて優っていたところってあんの?」
花原「・・・・・・ない。」
さくら「そんなもんよ。その天才少女・・・この私がギャフンと言わせてやるわ。」
・
横浜の中華街
各地での激戦を制した全国の強豪校18校の監督が会食をしている。
会場に入ってくるさくら「・・・鮎原姉妹が関東エリアを蹂躙しているっていうのに、地方の連中はのんきに食事会?」
奥の席で飲茶を食べている霧ヶ峰漸新高校バレー部監督寺島明日香は、おっとりした美人監督。
「いや、なかなか東京に来ることないから・・・
久しぶりだね、さくらちゃん。まさか、監督をやるとは思ってもなかったよ・・・」
メニューを持った店員がさくらに近づく。
さくら「紹興酒。」
店員「かしこまりました。」
椅子を勝手に持ってきて、席に着くさくら。
北京ダックを食べる暁工業バレー部雷都光「おいおい、あんたを招待した覚えはないで・・・」
さくら「悪巧みに私も混ぜてよ。」
寺島「いや、本当にただの親睦会だよ。もう地方のチームは私たちしか残っていないから、じゃあみんなで上京しようかって呼びかけたんだ。」
さくら「・・・まあ、お人好しな先輩はそうだろうけど。ほかの監督方は、どう相手を出し抜いてやろうかって目をギラギラさせてるんじゃないかしら?」
呆れるライト「それはあんたやろ・・・」
寺島「こっちは仲良くバレーを楽しんでいるからさ・・・誰が勝っても恨みっこなし。」
さくら「負けたら廃部になるのに?
大人が楽しむのは結構だけど、それじゃあ部員に申し訳が立たないでしょうよ。」
突然笑い出すライト「にゃ~はっはっは!廃部がなんじゃい!
まだ2勝しかしとらん、あんたと違って、こちとら強豪校なんじゃ。
うちらは少なくとも10勝以上はしとる・・・!廃部期間はいくらやと思う?」
さくら「・・・3光年?」
ライト「姉ちゃん、それは距離の単位や。80日間や。そんなん部員の喫煙発覚より可愛いもんやで!」
寺島「うん・・・だから、ここまで来たら私たちにとっては普通のバレーの大会なの。」
さくら「なるほど・・・普通のバレーの大会か・・・」
ライト「あんたの得意な悪知恵なんか必要あらへんってこっちゃ!紹興酒代は払って帰りや・・・」
さくら「普通の大会だというのに、そろいもそろって鮎原に恐れをなす腰抜けってわけね・・・」
ライト「なんやと~!!」
さくら「そうでしょうよ。相手が6億だなんてとんでもない人参をぶら下げて挑発しているのに、あんたたちは誰も率先して、東京を撃破しようともしない。いい?地方のあんたたちは首都東京になめられてんのよ。」
ライト「大阪が地方なわけあるかい!地方ってのは、長野みたいなスキー場しか切り札がないところを言うんや!」
傷つく長野県の寺島「・・・ライトくん・・・」
ライト「すまん・・・言いすぎたわ・・・軽井沢も善光寺もいいところや・・・」
お冷を飲んでから寺島「昔から変わってないね、さくらちゃん・・・そうやって私たちをけしかけて、聖ペンシルヴァニアと戦わせたいんだろうけど・・・私もそこまでお人好しじゃないよ。誰と戦うかは好きにさせて欲しい。」
椅子を動かし寺島の隣に座るさくら「先輩とも、もうずいぶん長い付き合いになりますよね・・・
変わらずお綺麗で・・・私が全日本でぺーぺーだった頃は、先輩がプロの世界を教えてくれた。
よく、食事にも連れてってくれたし・・・あの頃は楽しかったなあ。
先輩はあの時、こう言った。このまま若ければいいのに。引退なんてゴメンだ、と。」
寺島「この状況で、よくそんな話ができるね・・・」
黒烏龍茶をついでやるさくら「それが、今や二人共高校バレーの監督だ。」
寺島「旧交を温めに来たわけじゃないんでしょう?」
さくらが「パンパン」と手を叩く。
山村が、台車に積まれた2億円をひいて入ってくる。
ライト「なんじゃあ・・・!?」
ざわつく監督たち。
さくら「ここにいるのは18人だったっけ?・・・じゃあ一人あたり1000万やるわ。」
ライト「買収すんのか!」
さくら「勝てとは言わない。鮎原姉妹と戦ってくれるだけでいい。どう?悪くはない話でしょう?」
寺島「・・・この部屋に、あなたの口車に乗るような監督はいないわ・・・みんなお金じゃ変えられないもののためにバレーを・・・」
監督A「乗った・・・!」
ライト「おい、福岡県・・・!」
監督B「私もやります!」
ライト「愛知県、お前も裏切るのか・・・!」
監督B「そもそも、私たちの上京の理由は鮎原姉妹と戦いたかったからだし・・・その上お金ももらえるなら、ラッキーかなって・・・」
監督A「それに、裏切るもなにも、この席はただの親睦会でしょう?寺島監督の意向に従わなければいけないわけじゃないし・・・大阪府はどうするの?」
気まずそうに寺島の方を見ながらライト「・・・しかたね~な・・・」
さくら「おっライトくんいいね~!お姉さんおまけしちゃう!2束もってけドロボー!」
ライト「にゃ~はっは~オレに~!任せとけ~!!」
札束に群がっている監督たちを見つめる寺島「・・・地方18鎮諸校はこれで崩壊ね・・・」
・
詩留々高専
りかぜが今日の対戦カードの一覧表をスバルに持ってくる。
スバル「りかぜちゃん、どうしたい。」
りかぜ「・・・異常事態よ・・・」
一覧表を受け取るスバル。
りかぜ「・・・地方の強豪校が一斉に聖ペンシルヴァニア大附属に試合を申請してるわ・・・」
スバル「これじゃあボスラッシュじゃねえか・・・でも、まあいいんじゃねえの?
これで、さすがの鮎原もかなり消耗するから、うちらにも勝ち筋ができるだろ。
りかぜちゃんの思惑通りだよ・・・」
りかぜ「それならいいのだけど・・・問題は万が一、聖ペンシルヴァニアが負けた時よ。」
スバル「それはそれで、強敵がいなくなってラッキーじゃん。」
りかぜ「・・・いや・・・白亜高校が、霧ヶ峰漸新と暁工業を動かしたのに、我々が聖ペンシルヴァニアと戦わなかった場合・・・契約違反として罰則金を請求してくる可能性がある・・・いや、可能性じゃない・・・狡猾な吹雪さくらは必ずそう出てくる・・・」
部員「主将、白亜高校からお電話です・・・」
りかぜ「ほら・・・」
電話に出るスバル「もしもし・・・」
さくら「あ~こんちは。白亜高校監督の吹雪なんですが・・・おたく・・・早く鮎原姉妹と戦ったほうがいいんじゃない?こっちは金払って、大阪と長野を突っついたんだからさ・・・これで、よくわからない学校に鮎原姉妹が負けちゃった日にゃあ、困るわけよ。」
スバル「そ・・・そんなん仕方がないでしょ!」
さくら「うん・・・確かに仕方がない。だから、罰則金なんてケチくさいことは言わないわ。うちの学校が買収に使ったお金だけ保証してくれればいいから。」
スバル「はあ・・・?一体いくらよ・・・」
さくら「2億円。」
がなり立てるスバル「そんな金、高校生が払えるわけ無いでしょう・・・!」
受話器をスバルから奪うりかぜ。
りかぜ「はい・・・分かりました・・・」
電話を切ってしまう。
スバル「ちょっとりかぜちゃん・・・!」
りかぜ「・・・主将。こういう時こそ冷静に。私たちはもう相手の毒をくらってしまった。
こうなれば相手のゲームに乗っかるしかない・・・2億失うか・・・6億を得るかのゲームに。」
スバル「・・・策はあるの?」
りかぜ「鮎原姉妹が今日の激戦を持ちこたえてさえくれれば・・・」
『青春アタック』脚本㉛泰山鳴動
2024-02-27 21:54:03 (1 year ago)
各校に届けられた、賞金付きのプラチナチケットはバトルロイヤル大会の戦局を大きく変えた・・・!
チームA「どうせ負けるなら戦って10万円とるぞー!」
チームB「10万円で残念会やってカニでも食べようね!」
積極的に試合をする参加チーム。
減っていくチーム数・・・
しかし、このプラチナチケット導入の恩恵を最も受けたのは、他でもない絶対王者聖ペンシルヴァニア大附属だった・・・!
東京都田園調布
ヴェルサイユ宮殿のようなロココ調の聖ペンシルヴァニア大附属高校の部室。
プラチナチケットを握る鮎原咲「・・・この手があったか・・・!」
二つ縛りの物静かな美少女がたまごっちをしている。
「どうしたの咲ちゃん・・・」
咲「・・・幹ねえ!うちの部で今すぐ使えるお金はいくら?」
咲の双子の姉、鮎原幹「金庫の中に6000万円・・・」
幹のたまごっちを取り上げる咲。
幹「ああっ私のアメリゴヴェスプっちが・・・!」
咲「大会が始まって、幹姉がやったことといえば、たまごっちを100周プレーしただけじゃない!」
幹「・・・多くの死を看取ってきました・・・」
咲「少なくとも3回はバレーをしないと負けちゃうのに、私たちは1枚もこのチケットを使えてないのよ・・・!」
幹「誰も戦ってくれないんだからしょうがないじゃない・・・絶対王者の宿命だね。」
咲「だから、私たちもこのプラチナチケットを独自につくるのよ・・・!」
幹「へ?」
咲「うちのメインバンクからはいくらまで引っ張れるの?」
幹「・・・さすがに1兆は厳しいと思うよ。」
咲「そんなにいらないわ!・・・私たちと戦って勝てたら大会とは別に、私たちからも6億円を支払うってすればどうかしら・・・?もう、私はバレーがしたくてたまらない・・・!」
幹「咲ちゃんあなたは本当に帝王学を学んだの?・・・そんなはした金で人の心は動かないわよ。」
咲「プラス・・・たまごっちの白もつける。」
幹「それは間違いないわね・・・」
こうして、聖ペンシルヴァニア大附属は独自にダイアモンドチケットを発行――
これにより、聖ペンシルヴァニア大附属を倒して優勝すると、賞金額が二倍になるという、とんでもない展開になったのである・・・!
このダブルアップチャンスを目指し、多くのチームが聖ペンシルヴァニアに挑み――
・
高体連本部ビル
狩野「・・・総裁。チーム数が激減しています・・・」
波紋戸「ほほほ・・・ついに覇王が動き出しましたか・・・
バトルロイヤルも後半戦のようだ・・・」
狩野(・・・海野さん・・・)
・
白亜高校
校門の前に止まっているスポーツバイク。
保健室
スポーツ誌記者のつよめ
「とうとう聖ペンシルヴァニアが動き出したわよ・・・」
ダイアモンドチケットを眺めるさくら「・・・金のある学校はいいわね・・・」
つよめ「これで、あんたの思惑通りにことが動くんじゃない?」
さくら「・・・いや・・・雑魚がいくら束になってかかっても、聖ペンシルヴァニアは消耗しないわ・・・
強豪校をぶつけないと・・・」
つよめ「いくつかみつくろってきました。」
資料を机に乗せる。
つよめ「・・・ええと、まず長野県の霧ヶ峰漸新高校・・・高校総体に20年連続・30回出場、春高バレーに15年連続・20回出場の実績を持つ強豪校・・・監督の寺島明日香監督は、人徳があり部員から慕われていて・・・」
さくら「あれは、敗軍の将。墓の中の白骨よ。」
つよめ「・・・じゃあ、ここは?大阪府の暁工業高校・・・部員も設備も一流で、雷都光監督は天才発明家でもあり通称優勝請負人・・・」
さくら「東京に大阪をぶつけるのはなあ・・・さすがに死人が出たらまずいわ」
つよめ「う~ん・・・ダメか」
さくら「ここは?京都府の減夢(へるむ)学園高校・・・部長の妖鳴由良(あやなきゆら)は、平安時代の陰陽師の末裔で・・・呪術や式神を使って相手を操ることができる。」
つよめ「・・・らしいけど、そこ初出場校よ。その情報もどこまで本当か・・・」
さくら「マッスルくん。」
山村「御意。」
山村が減夢高校の対戦履歴を調べる。
山村「おおっすごい・・・!初戦ではヤマタノオロチを召喚して圧勝しているぞ・・・!」
呆れるつよめ「そんなことしていいんかい・・・」
さくら「こいつらに聖ペンシルヴァニアを呪わせれば、けっこう相手のHPを削れそうね・・・
山村くん、この妖鳴って巫女さんに電話よ!」
山村「ああっダメだ・・・2回戦で上武高校の九頭りりあに騙されて負けている・・・!」
さくら「クソの役にも立たねーな・・・!
・・・前言撤回・・・寺島先輩とライトくんに電話を・・・5000万円くらい積んで土下座すれば聖ペンシルヴァニアとやってくれんだろ・・・」
つよめ「さくら・・・ここはどう?群馬県の詩留々高専。」
さくら「そんな強豪校あったっけ?」
つよめ「あんたは知らないだろうけど、数年前から少ない女子生徒をかき集めて女子バレー部を作って、総体で全国ベスト8、昨年度の春高でベスト3という、驚異的な成績を出しているの・・・多分、おたくの海野さんは知ってるんじゃないかな・・・」
資料を手に取るさくら「へ~・・・」
・
体育館
部員たちが練習をしている。
華白崎「基礎連を怠らない・・・!」
素直に従う小早川「はい・・・!」
海野「知ってますよ。主将は榛東スバルちゃんです。」
さくら「どんな人?わりとクズ?」
海野「・・・いやいや・・・体育会系の元気がいい女の子でしたよ。確か・・・もともとはバレーじゃなくてソフトボールをやってたんじゃなかったかな。冬なのに肌が真っ黒でビックリしましたけど・・・」
さくら「そのスバルちゃんのチームを、鮎原姉妹にぶつけたいんだけど、なんとかならんかね。」
海野「・・・スバルちゃんの携帯電話の番号は知っているので、連絡は取れますけど・・・
どう持ちかければいいかなあ・・・」
さくら「無理にその話を出さなくていいから、ちょっと接触してきてくれない?」
海野「それだけでいいんですか?それならお安い御用です。
大会で顔を合わせて、わりと意気投合したんですよ。」
モジモジしながら近づいてくる花原「海野さん、詩留々高専に行くの・・・?群馬県の?」
海野「うん。」
花原「・・・あの、古くはゼロ戦やペンシルロケットを生んだ航空宇宙の最高学府の?」
海野「・・・え?そ・・・そうなんだ・・・」
花原「・・・行きたい・・・」
海野「ええっ・・・?」
ひざまずく花原「安西先生・・・兵器が見たいです・・・」
海野「・・・うん・・・じゃあ一緒に行こうか・・・」
・
群馬県藤岡市
国立科学博物館の航空宇宙館のような詩留々高専の校舎。
校舎の裏にはラムダ式ロケットの打ち上げセクションが広がっている。
工作機械だらけのガレージに電話が鳴り響く。
詩留々高専の学生「・・・スバル!あんたの衛星電話じゃない?」
安全ゴーグルをつけて得体の知れないロボットをガス溶接している、筋肉質な少女。
スバル「・・・NASAなら納期には間に合うって言っておいて!!
今アセチレンガス使ってんだよ!!」
学生「違う!白亜高校の海野さん!!」
スバル「海野?・・・折り返しかけるって伝えといて!!」
汚れたつなぎを脱いで、汗を拭う榛東スバル。
「ふ~休憩すっか・・・」
スバルに缶コーヒーを差し出す、アルビノの少女。
スバル「おっサンキューな。りかぜちゃん。」
詩留々高専バレー部マネージャー網野りかぜは、ちおりのように小学生のような見た目。
「・・・白亜高に会うの・・・?」
缶コーヒーをグビグビ飲むスバル「連中の狙いはなんだと思う?」
りかぜ「わたしはエスパーじゃない。」
スバル「よせやい、似たような能力があるんだろ?」
りかぜ「・・・タイミング的には、聖ペンシルヴァニアの件かしら・・・」
スバル「うちもそう思う。ただ、試合の申し込み以外で、会いたい目的は何だ?
まさか世間話じゃねえだろ。」
りかぜ「・・・獲得賞金二倍の権利は譲るから、我々にペンシルヴァニアを倒して欲しいってところでしょうか。」
缶をゴミ箱に放り投げるスバル「それだな。」
りかぜ「・・・この大会でのパレート最適解は、戦わず戦況を眺めることです。
我々はすでにチケットを2枚消費している。最後の1枚を決勝で使えばそれでおしまい。」
スバル「ああ・・・しかし妙なのは、海野って女はそんな卑怯な手を打ってくるような子じゃねえってこった。バレーのテクニックは脅威だが、あいつは賢くない。駆け引きなんかできねえさ。」
りかぜ「裏で糸を引いているものがいるのね。」
立ち上がって作業着を羽織るスバル「よし・・・とりあえず会ってやるか・・・」
衛星電話を渡すりかぜ。
スバル「・・・もしもし?白亜高校の海野さんですか?あ~久しぶり・・・!
いきなり電話が来たんで驚いちゃったよ!元気?うん、こっちは、ぼちぼち・・・
うん、全然来てくれて大丈夫だよ!飯でも行こうや。
な~に、言ってるんすか・・・!海野先輩のバレーを勉強させてもらいたいだけっすよ・・・ははは・・・」
りかぜが無言で、スバルが作っていたロボットを見つめている。
衛星電話を切るスバル。
スバル「明日早速来るそうだ。スケジュールを空けといてくれ。しかし、お人好しなやつだよ。
このうちが心を開いていると思ってやがる・・・
去年の大会で、うちらのチームを完膚なきまでに叩きのめしたのは誰だと思ってやがるんだ・・・なあ。」
ロボットはバレーボールの発射ロボットで、機体には「打倒海野美帆子」と刻印がされている。
・
詩留々高専の中にある航空宇宙博物館
館内の展示を目を輝かせながら眺める花原
「すげ~・・・!これが大鑑巨砲主義を終わらせた最強の戦闘機・・・」
ちおり「かっけー!」
スタッフIDカードを首にかけ白衣を着た学芸員が話かける。
「とんでもない。
・・・重装備と軽量化を両立させるため、開発者は防御力と耐久性を犠牲にした・・・
急降下すれば主翼は折れるし、エンジンの出力は連合軍のそれに大きく劣る・・・
一撃必殺の攻撃がかわされたらパイロットは死ぬしかない。
それでも、敵国はこの戦闘機を恐れた・・・
優秀な熟練パイロットの腕と・・・彼らの命を粗末に扱う非情な軍部に・・・
ようこそ、詩留々高専へ。
ここでキュレーターをしております。網野りかぜです。」
握手する花原「白亜高科学研究部の花原めぐなです。」
りかぜ「・・・ご高名はかねがね・・・」
花原「え?あたしを知ってるの?」
りかぜ「小学生の時から珍妙な発想で、理科研究を荒らしていた、あの花原さんでしょう?」
花原「・・・私としては真面目に研究していたつもりなんだけどな・・・」
ちおり「ねえ、なんで髪の毛が全部真っ白けなの?いろいろ苦労が多かったの??」
花原「お・・・おい・・・」
戦中の戦闘機を眺めるりかぜ
「・・・日本の科学技術は人命を軽視することで発展してきた・・・戦時中も・・・そして、今も。
・・・わたしは、遺伝子操作で作り出されたクローンなんです。」
花原「えっ、じゃああなたが噂の、超人類?」
ちおり「なあに?スーパーサイヤ人みたいなやつ?」
花原「どっかの研究機関が秘密裏に天才の遺伝子をパッチワークして人間を作ったって話は聞いたことあんのよ・・・群馬県だったんだ・・・」
りかぜ「・・・群馬県民は愚かよ。いくら新製品が好きだからといって神の真似事をするなんて・・・
生み出されるこっちはいい迷惑だわ・・・」
手を上げるちおり「分数の通分できますか・・・?」
りかぜ「フェルマーの最終定理も解けるよ。」
花原「ホントですか!?ポアンカレ予想は?」
りかぜ「・・・あと少しね。あれは問題へのアプローチの仕方にコツがあって、位相幾何学ではなく解析学を使うらしいの。」
花原「・・・ちおり。この人、マジでスーパーサイヤ人だぞ。」
・
詩留々高専応接室
スバルが来客に缶ジュースを出す。
スバル「いや~しかしすごいですよね・・・鮎原姉妹は。自腹で6億円払うって言うんだから。」
海野「本当だよね・・・やっぱりお金があるところは違うよね・・・」
スバル「海野さん、とっとと倒しちゃえばどうですか?賞金が12億円になりますよ?
残っている学校で鮎原と互角にやりあえるのは、もはや海野さんだけだと思いますがね。」
海野「そんな・・・スバルちゃんだって、バレー強いじゃん。」
スバル「私なんかまだまだっすよ・・・でも、いいんですか?
海野さんの高校3年間のライバルを、私みたいなよくわからない脇役が倒しちゃって・・・」
海野「あはは・・・」
スバル「・・・で、今日の用件は?」
海野「用件?いや、本当にただ遊びに来ただけで・・・」
スバル「んなわけないでしょう。敵チームへの視察?それとも・・・」
海野「・・・え?」
目つきが変わるスバル「我々を鮎原姉妹と戦わせて、どちらかをこの大会から敗退させたい・・・とか?」
チームA「どうせ負けるなら戦って10万円とるぞー!」
チームB「10万円で残念会やってカニでも食べようね!」
積極的に試合をする参加チーム。
減っていくチーム数・・・
しかし、このプラチナチケット導入の恩恵を最も受けたのは、他でもない絶対王者聖ペンシルヴァニア大附属だった・・・!
東京都田園調布
ヴェルサイユ宮殿のようなロココ調の聖ペンシルヴァニア大附属高校の部室。
プラチナチケットを握る鮎原咲「・・・この手があったか・・・!」
二つ縛りの物静かな美少女がたまごっちをしている。
「どうしたの咲ちゃん・・・」
咲「・・・幹ねえ!うちの部で今すぐ使えるお金はいくら?」
咲の双子の姉、鮎原幹「金庫の中に6000万円・・・」
幹のたまごっちを取り上げる咲。
幹「ああっ私のアメリゴヴェスプっちが・・・!」
咲「大会が始まって、幹姉がやったことといえば、たまごっちを100周プレーしただけじゃない!」
幹「・・・多くの死を看取ってきました・・・」
咲「少なくとも3回はバレーをしないと負けちゃうのに、私たちは1枚もこのチケットを使えてないのよ・・・!」
幹「誰も戦ってくれないんだからしょうがないじゃない・・・絶対王者の宿命だね。」
咲「だから、私たちもこのプラチナチケットを独自につくるのよ・・・!」
幹「へ?」
咲「うちのメインバンクからはいくらまで引っ張れるの?」
幹「・・・さすがに1兆は厳しいと思うよ。」
咲「そんなにいらないわ!・・・私たちと戦って勝てたら大会とは別に、私たちからも6億円を支払うってすればどうかしら・・・?もう、私はバレーがしたくてたまらない・・・!」
幹「咲ちゃんあなたは本当に帝王学を学んだの?・・・そんなはした金で人の心は動かないわよ。」
咲「プラス・・・たまごっちの白もつける。」
幹「それは間違いないわね・・・」
こうして、聖ペンシルヴァニア大附属は独自にダイアモンドチケットを発行――
これにより、聖ペンシルヴァニア大附属を倒して優勝すると、賞金額が二倍になるという、とんでもない展開になったのである・・・!
このダブルアップチャンスを目指し、多くのチームが聖ペンシルヴァニアに挑み――
・
高体連本部ビル
狩野「・・・総裁。チーム数が激減しています・・・」
波紋戸「ほほほ・・・ついに覇王が動き出しましたか・・・
バトルロイヤルも後半戦のようだ・・・」
狩野(・・・海野さん・・・)
・
白亜高校
校門の前に止まっているスポーツバイク。
保健室
スポーツ誌記者のつよめ
「とうとう聖ペンシルヴァニアが動き出したわよ・・・」
ダイアモンドチケットを眺めるさくら「・・・金のある学校はいいわね・・・」
つよめ「これで、あんたの思惑通りにことが動くんじゃない?」
さくら「・・・いや・・・雑魚がいくら束になってかかっても、聖ペンシルヴァニアは消耗しないわ・・・
強豪校をぶつけないと・・・」
つよめ「いくつかみつくろってきました。」
資料を机に乗せる。
つよめ「・・・ええと、まず長野県の霧ヶ峰漸新高校・・・高校総体に20年連続・30回出場、春高バレーに15年連続・20回出場の実績を持つ強豪校・・・監督の寺島明日香監督は、人徳があり部員から慕われていて・・・」
さくら「あれは、敗軍の将。墓の中の白骨よ。」
つよめ「・・・じゃあ、ここは?大阪府の暁工業高校・・・部員も設備も一流で、雷都光監督は天才発明家でもあり通称優勝請負人・・・」
さくら「東京に大阪をぶつけるのはなあ・・・さすがに死人が出たらまずいわ」
つよめ「う~ん・・・ダメか」
さくら「ここは?京都府の減夢(へるむ)学園高校・・・部長の妖鳴由良(あやなきゆら)は、平安時代の陰陽師の末裔で・・・呪術や式神を使って相手を操ることができる。」
つよめ「・・・らしいけど、そこ初出場校よ。その情報もどこまで本当か・・・」
さくら「マッスルくん。」
山村「御意。」
山村が減夢高校の対戦履歴を調べる。
山村「おおっすごい・・・!初戦ではヤマタノオロチを召喚して圧勝しているぞ・・・!」
呆れるつよめ「そんなことしていいんかい・・・」
さくら「こいつらに聖ペンシルヴァニアを呪わせれば、けっこう相手のHPを削れそうね・・・
山村くん、この妖鳴って巫女さんに電話よ!」
山村「ああっダメだ・・・2回戦で上武高校の九頭りりあに騙されて負けている・・・!」
さくら「クソの役にも立たねーな・・・!
・・・前言撤回・・・寺島先輩とライトくんに電話を・・・5000万円くらい積んで土下座すれば聖ペンシルヴァニアとやってくれんだろ・・・」
つよめ「さくら・・・ここはどう?群馬県の詩留々高専。」
さくら「そんな強豪校あったっけ?」
つよめ「あんたは知らないだろうけど、数年前から少ない女子生徒をかき集めて女子バレー部を作って、総体で全国ベスト8、昨年度の春高でベスト3という、驚異的な成績を出しているの・・・多分、おたくの海野さんは知ってるんじゃないかな・・・」
資料を手に取るさくら「へ~・・・」
・
体育館
部員たちが練習をしている。
華白崎「基礎連を怠らない・・・!」
素直に従う小早川「はい・・・!」
海野「知ってますよ。主将は榛東スバルちゃんです。」
さくら「どんな人?わりとクズ?」
海野「・・・いやいや・・・体育会系の元気がいい女の子でしたよ。確か・・・もともとはバレーじゃなくてソフトボールをやってたんじゃなかったかな。冬なのに肌が真っ黒でビックリしましたけど・・・」
さくら「そのスバルちゃんのチームを、鮎原姉妹にぶつけたいんだけど、なんとかならんかね。」
海野「・・・スバルちゃんの携帯電話の番号は知っているので、連絡は取れますけど・・・
どう持ちかければいいかなあ・・・」
さくら「無理にその話を出さなくていいから、ちょっと接触してきてくれない?」
海野「それだけでいいんですか?それならお安い御用です。
大会で顔を合わせて、わりと意気投合したんですよ。」
モジモジしながら近づいてくる花原「海野さん、詩留々高専に行くの・・・?群馬県の?」
海野「うん。」
花原「・・・あの、古くはゼロ戦やペンシルロケットを生んだ航空宇宙の最高学府の?」
海野「・・・え?そ・・・そうなんだ・・・」
花原「・・・行きたい・・・」
海野「ええっ・・・?」
ひざまずく花原「安西先生・・・兵器が見たいです・・・」
海野「・・・うん・・・じゃあ一緒に行こうか・・・」
・
群馬県藤岡市
国立科学博物館の航空宇宙館のような詩留々高専の校舎。
校舎の裏にはラムダ式ロケットの打ち上げセクションが広がっている。
工作機械だらけのガレージに電話が鳴り響く。
詩留々高専の学生「・・・スバル!あんたの衛星電話じゃない?」
安全ゴーグルをつけて得体の知れないロボットをガス溶接している、筋肉質な少女。
スバル「・・・NASAなら納期には間に合うって言っておいて!!
今アセチレンガス使ってんだよ!!」
学生「違う!白亜高校の海野さん!!」
スバル「海野?・・・折り返しかけるって伝えといて!!」
汚れたつなぎを脱いで、汗を拭う榛東スバル。
「ふ~休憩すっか・・・」
スバルに缶コーヒーを差し出す、アルビノの少女。
スバル「おっサンキューな。りかぜちゃん。」
詩留々高専バレー部マネージャー網野りかぜは、ちおりのように小学生のような見た目。
「・・・白亜高に会うの・・・?」
缶コーヒーをグビグビ飲むスバル「連中の狙いはなんだと思う?」
りかぜ「わたしはエスパーじゃない。」
スバル「よせやい、似たような能力があるんだろ?」
りかぜ「・・・タイミング的には、聖ペンシルヴァニアの件かしら・・・」
スバル「うちもそう思う。ただ、試合の申し込み以外で、会いたい目的は何だ?
まさか世間話じゃねえだろ。」
りかぜ「・・・獲得賞金二倍の権利は譲るから、我々にペンシルヴァニアを倒して欲しいってところでしょうか。」
缶をゴミ箱に放り投げるスバル「それだな。」
りかぜ「・・・この大会でのパレート最適解は、戦わず戦況を眺めることです。
我々はすでにチケットを2枚消費している。最後の1枚を決勝で使えばそれでおしまい。」
スバル「ああ・・・しかし妙なのは、海野って女はそんな卑怯な手を打ってくるような子じゃねえってこった。バレーのテクニックは脅威だが、あいつは賢くない。駆け引きなんかできねえさ。」
りかぜ「裏で糸を引いているものがいるのね。」
立ち上がって作業着を羽織るスバル「よし・・・とりあえず会ってやるか・・・」
衛星電話を渡すりかぜ。
スバル「・・・もしもし?白亜高校の海野さんですか?あ~久しぶり・・・!
いきなり電話が来たんで驚いちゃったよ!元気?うん、こっちは、ぼちぼち・・・
うん、全然来てくれて大丈夫だよ!飯でも行こうや。
な~に、言ってるんすか・・・!海野先輩のバレーを勉強させてもらいたいだけっすよ・・・ははは・・・」
りかぜが無言で、スバルが作っていたロボットを見つめている。
衛星電話を切るスバル。
スバル「明日早速来るそうだ。スケジュールを空けといてくれ。しかし、お人好しなやつだよ。
このうちが心を開いていると思ってやがる・・・
去年の大会で、うちらのチームを完膚なきまでに叩きのめしたのは誰だと思ってやがるんだ・・・なあ。」
ロボットはバレーボールの発射ロボットで、機体には「打倒海野美帆子」と刻印がされている。
・
詩留々高専の中にある航空宇宙博物館
館内の展示を目を輝かせながら眺める花原
「すげ~・・・!これが大鑑巨砲主義を終わらせた最強の戦闘機・・・」
ちおり「かっけー!」
スタッフIDカードを首にかけ白衣を着た学芸員が話かける。
「とんでもない。
・・・重装備と軽量化を両立させるため、開発者は防御力と耐久性を犠牲にした・・・
急降下すれば主翼は折れるし、エンジンの出力は連合軍のそれに大きく劣る・・・
一撃必殺の攻撃がかわされたらパイロットは死ぬしかない。
それでも、敵国はこの戦闘機を恐れた・・・
優秀な熟練パイロットの腕と・・・彼らの命を粗末に扱う非情な軍部に・・・
ようこそ、詩留々高専へ。
ここでキュレーターをしております。網野りかぜです。」
握手する花原「白亜高科学研究部の花原めぐなです。」
りかぜ「・・・ご高名はかねがね・・・」
花原「え?あたしを知ってるの?」
りかぜ「小学生の時から珍妙な発想で、理科研究を荒らしていた、あの花原さんでしょう?」
花原「・・・私としては真面目に研究していたつもりなんだけどな・・・」
ちおり「ねえ、なんで髪の毛が全部真っ白けなの?いろいろ苦労が多かったの??」
花原「お・・・おい・・・」
戦中の戦闘機を眺めるりかぜ
「・・・日本の科学技術は人命を軽視することで発展してきた・・・戦時中も・・・そして、今も。
・・・わたしは、遺伝子操作で作り出されたクローンなんです。」
花原「えっ、じゃああなたが噂の、超人類?」
ちおり「なあに?スーパーサイヤ人みたいなやつ?」
花原「どっかの研究機関が秘密裏に天才の遺伝子をパッチワークして人間を作ったって話は聞いたことあんのよ・・・群馬県だったんだ・・・」
りかぜ「・・・群馬県民は愚かよ。いくら新製品が好きだからといって神の真似事をするなんて・・・
生み出されるこっちはいい迷惑だわ・・・」
手を上げるちおり「分数の通分できますか・・・?」
りかぜ「フェルマーの最終定理も解けるよ。」
花原「ホントですか!?ポアンカレ予想は?」
りかぜ「・・・あと少しね。あれは問題へのアプローチの仕方にコツがあって、位相幾何学ではなく解析学を使うらしいの。」
花原「・・・ちおり。この人、マジでスーパーサイヤ人だぞ。」
・
詩留々高専応接室
スバルが来客に缶ジュースを出す。
スバル「いや~しかしすごいですよね・・・鮎原姉妹は。自腹で6億円払うって言うんだから。」
海野「本当だよね・・・やっぱりお金があるところは違うよね・・・」
スバル「海野さん、とっとと倒しちゃえばどうですか?賞金が12億円になりますよ?
残っている学校で鮎原と互角にやりあえるのは、もはや海野さんだけだと思いますがね。」
海野「そんな・・・スバルちゃんだって、バレー強いじゃん。」
スバル「私なんかまだまだっすよ・・・でも、いいんですか?
海野さんの高校3年間のライバルを、私みたいなよくわからない脇役が倒しちゃって・・・」
海野「あはは・・・」
スバル「・・・で、今日の用件は?」
海野「用件?いや、本当にただ遊びに来ただけで・・・」
スバル「んなわけないでしょう。敵チームへの視察?それとも・・・」
海野「・・・え?」
目つきが変わるスバル「我々を鮎原姉妹と戦わせて、どちらかをこの大会から敗退させたい・・・とか?」
初のコロナ感染
2024-02-27 16:33:08 (1 year ago)
-
カテゴリタグ:
- 雑記
あと、一週間ほどで30代が終わるというのに、ついに体調を崩した。しかも新型コロナ。まさかのコロナデビュー。コロナ童貞卒業。
30代は一度も大きな病気をしたことがない奇跡の10年になるかと思われたが、惜しくも散った。
しかし、コロナのやつめ。初期症状がマジでたいしたことがなく、花粉症のだるさかなと思っていたら、いきなり熱を上げてきて本当に卑怯なやつだと思った。
幸い、市販の解熱剤が本当によく効くし、症状としてはただの風邪なんだけど(そういや、嗅覚や味覚がおかしくなるっていうのもなかった)、感染力がものすごく、同居する妻子にもスピード感染した。
しかも、自分が熱を出したことで、2人は一時期実家に里帰りしていたのだが、その時にはすでに2人も感染していたため(赤ちゃん、私のマスクを外して遊んでいたしな)、妻の実家でもパンデミック。
症状が軽い割に、感染力が高いという、コロナの恐ろしさを痛感することとなった。というか、よく今の今ままで感染しなかったな。
心配だったのが、言葉が喋れず(バブ語のみ)、症状を訴えられない赤ちゃんだったんだけど、赤ちゃんが家族で最も軽症かつ回復が早く、わずか一日で完治。すぐに通常業務に戻り、いたずらと超高速ハイハイに勤しんでいます。
自分ってけっこう潔癖症で、よく手洗いとかうがいをするんだけど、それでも伝染ったので、もう日本国民の年中行事になる日も近い。持病のある人とか高齢の人にうつさないように、自宅でおとなしく軟禁生活をしています。
みなさんも、お気をつけて!(これでワクチン接種したことにならないだろうか)
30代は一度も大きな病気をしたことがない奇跡の10年になるかと思われたが、惜しくも散った。
しかし、コロナのやつめ。初期症状がマジでたいしたことがなく、花粉症のだるさかなと思っていたら、いきなり熱を上げてきて本当に卑怯なやつだと思った。
幸い、市販の解熱剤が本当によく効くし、症状としてはただの風邪なんだけど(そういや、嗅覚や味覚がおかしくなるっていうのもなかった)、感染力がものすごく、同居する妻子にもスピード感染した。
しかも、自分が熱を出したことで、2人は一時期実家に里帰りしていたのだが、その時にはすでに2人も感染していたため(赤ちゃん、私のマスクを外して遊んでいたしな)、妻の実家でもパンデミック。
症状が軽い割に、感染力が高いという、コロナの恐ろしさを痛感することとなった。というか、よく今の今ままで感染しなかったな。
心配だったのが、言葉が喋れず(バブ語のみ)、症状を訴えられない赤ちゃんだったんだけど、赤ちゃんが家族で最も軽症かつ回復が早く、わずか一日で完治。すぐに通常業務に戻り、いたずらと超高速ハイハイに勤しんでいます。
自分ってけっこう潔癖症で、よく手洗いとかうがいをするんだけど、それでも伝染ったので、もう日本国民の年中行事になる日も近い。持病のある人とか高齢の人にうつさないように、自宅でおとなしく軟禁生活をしています。
みなさんも、お気をつけて!(これでワクチン接種したことにならないだろうか)
『青春アタック』脚本㉚愛月撤灯
2024-02-25 18:23:32 (1 year ago)
市営団地。
ホステスのような格好の派手な女が男を連れ込む。
女「愛してるわ♡」
若い男「ぼくもさ。」
室内でいちゃいちゃしている男女。
襖が開いて、女の子が入ってくる。
女の子「・・・お母さんおかえり・・・あ、まちがえた・・・」
もう一度襖を閉める女の子。
気まずい男女。
女「ダメじゃない。お店のお客さんには、こりん星出身の24歳独身という設定で押し通してるんだから・・・」
女の子「ご・・・ごめんなさい・・・」
女「夕食代は渡したでしょう?夜は出来るだけ、外に行っててくれないかな。」
女の子「・・・はい・・・」
女「・・・もう少しの辛抱よ・・・もう少し辛抱すれば・・・あんたにも最高のパパができるから。
いいわね?一咲。」
女の子「・・・うん。」
・
月明かりの下で時間を潰す小早川。
駅では警官に補導され、コンビニではやんちゃな男の子に絡まれる。
しかたなく団地に帰ってくるが、部屋に明かりがついている。
小早川「・・・まだか・・・」
団地の外で体育座りをして待っている小早川。
数時間後。部屋の電気が消える。
家に帰ってくる小早川「・・・ただいま・・・」
暗い部屋で泣いている母親「・・・また体目当てだった・・・くそう・・・次だ・・・!」
母親を抱きしめる小早川「・・・お母さん・・・」
小早川(・・・わたしは、こんな人にはならない・・・運命の相手を見つけるんだ・・・)
・
夜やることがないので、パーカーを着て、スパッツを履く小早川。
深夜のジョギングということにすれば、補導対象になりづらいことを思いつく。
月明かりの下で、ひたすら公園のジョギングコースをぐるぐる走る小早川。
時間が経つのも忘れて走っていると、やがて朝日が登ってくる。
マラソン選手のように呼吸をする小早川「はあはあはあ・・・」
そのまま、早朝に新聞配達を始める小早川。
雨の日も風の日も雪の日も、新聞を配達し続ける小早川。
配送センターのおじさん「感心な子だなあ・・・」
小早川(朝の5時半・・・この角を曲がった、小さな公園に・・・あの人はいつもいた・・・)
公園で孤独にポージングを決める若かりしマッスル山村。
小早川(あの人も・・・きっと私と同じで、家に入れない事情があるんだ・・・
がんばろうね・・・マッチョさん・・・)
笑顔になり、山村の公園を通り過ぎる小早川。
・
現在――
体育館
小早川「なんとかすべてのバイトのシフトを調整できました・・・!」
山村「はは・・・それはめでたい・・・」
海野「はい。これが小早川さんのユニフォーム。」
小早川「わあ、ありがとうございます・・・!」
さくら「そいで、リベロを誰にするかだけど、リベロはレシーブを専門とするポジションなので必然的に海野さんかブーちゃんになる。しかし、リベロは前衛時にプレーに参加ができない。
このチームで2番目に身長があるのは海野さんよ・・・
よって、ブーちゃんにリベロの大役を任せるわ・・・!」
ブーちゃんがリベロ専用のユニフォームを受け取る。
さくら「一同拍手・・・!」
拍手するメンバーたち。
海野「頑張ってねブーちゃん・・・!」
さくら「ブーちゃんのプレーは常に安定しているから心配ないっしょ。
バレーボールが身長の高いやつだけのスポーツじゃないことを知らしめてやりなさい。」
手を上げる小早川「あの・・・わたくしは何をすればいいんでしょうか・・・?」
海野「小早川さんはバレーボールはやったことある?」
小早川「ごめんなさい・・・そもそもスポーツ経験がないんです・・・」
山村「だから言ったではないか。
スポーツテストの結果などでメンバーを決めるなど荒唐無稽ぞ。は~はは!」
さくら「・・・小早川さん。
バレーさえ覚えてくれれば、あんたたちの結婚式の仲人をすることを約束するわ・・・」
目の色が変わる小早川「あたし・・・バレーに命をかけます・・・!!」
山村「・・・鬼である!鬼監督である!!」
・
営業再開した学食
さんま定食を食べながら花原「やっぱりブーちゃんの料理はどこの外食よりも美味いわ・・・」
メザシをかじるちおり「うめ~!」
花原「でも、あの小早川さん?ちょっと華奢だけど、けっこう可愛い子じゃん。」
海野「性格も健気だしね・・・」
花原「正直、山村くんなんぞにはもったいないと思うけど・・・なんで避けるようなことしてんのよ。」
骨も全て食べるちおり「うめ~!!」
マッシュポテトを食べる乙奈「そうですよ・・・女性に恥をかかせるなんて・・・山村さんらしくありませんわ・・・」
山村「・・・確かに彼女の好意は嬉しい・・・しかし、乙女たちよ・・・諸君らに問いたい。
愛とは何だ?」
とまどう花原「・・・え?そ・・・それは・・・海野さんあたりが詳しいんじゃ・・・」
あわてる海野「いや・・・私もバレーボール一筋で男性経験が・・・乙奈さん・・・」
乙奈「慈悲の心ですわ・・・常に弱い立場の人に寄り添い・・・共に歩むことです・・・」
花原「さすが実家が教会・・・!」
乙奈「愛の宗教ですから・・・」
山村「ならば・・・彼女を愛するためには、必ずしも結婚をして添い遂げる必要はないのではないか・・・?私はみなのアイドル、マッスル山村なのだから・・・」
花原「いや・・・別にあんたはみんなのアイドルでは・・・」
乙奈「・・・なら、しっかりと振っておやりなさい。」
花原「乙奈さん・・・?」
乙奈「それも相手を慮ることですわよ・・・さもないと・・・取り返しのつかないことになります。
わたくしは・・・それで大変な目にあったから・・・」
山村「いや・・・振っているのだ・・・で、その場では泣いて「諦めます」とかいうのだが・・・
明日にはまた頬を赤らめラブレターを持ってくるのだ・・・かれこれ半年以上だ・・・
証拠をお見せしよう・・・」
みかんのダンボール箱を机に乗せる山村。
海野「ええ!?これがすべてラブレターなの!!??」
山村「毎日振り続けているからな・・・」
花原「・・・なんて前向きな少女なんだ・・・!」
乙奈「あの子の異常性が垣間見えますわね・・・」
山村「このマッスルも、毎日乙女の涙を見せられては、辛くてな・・・
でも、翌日はケロッとしているから、あやつにはファミリーコンピューターで言うところのリセットボタンがついているのではないかと疑っている。」
花原「よし・・・山村。警察に相談しよう・・・」
海野「いやいや・・・!せっかくチームメイトになったのに、警察に突き出しちゃまずいよ・・・!」
・
図書室
うきうきしてラブレターを書いている小早川「さあ~て・・・今日はどんな内容にしようかな・・・」
司書教諭の病田「あの・・・もうそろそろ閉館なんですが・・・」
小早川「先生・・・!先生は高校時代に好きな人とかいたんですか・・・?」
病田「ま・・・まあ・・・」
小早川「どう告白したんですか?それが今の旦那さんなんですか・・・!?」
病田「・・・へ?ち・・・ちがいますけど・・・」
小早川「旦那さんはどんな人なんですか?どうやって結婚したんですか・・・?」
病田「そ・・・そういうのは、男性に聞いたほうが・・・」
小早川「たしかに・・・!」
・
職員室に入ってくる小早川
京冨野「なんだ・・・出入りか・・・!?」
小早川「京冨野先生・・・校長先生・・・ご結婚は?」
京冨野「ああ。娘がいるぞ。」
羽毛田「私にはもう孫もいますけど・・・」
小早川のラブレターを読む京冨野
「お嬢ちゃん・・・これじゃあいけねえな・・・」
小早川「どこがまずいのでしょうか・・・」
赤ペンで添削をする京冨野「例えば、ここ。第2段落の4行目。
あなたは私を妻とし、健やかなる時も病める時も・・・・愛し、敬い、助け合い
死が二人を分かつ限り愛することを誓いますか?
・・・ってこれじゃあ結婚式じゃねえか・・・」
羽毛田「いけませんね・・・これでは恋文というよりは誓約書だ。
ここの、「母子の健康を考慮して、少なくとも25歳までには一人目が欲しいのです」の一文も、けっこうな異彩を放っていますね・・・」
小早川「個人的には自信作だったんですけど・・・」
京冨野「お嬢ちゃんが、結婚に夢や理想を抱く気持ちは分かる。
だが、男にとって結婚とは現実と責任だ。そう簡単に二つ返事はできねえ。」
小早川「でもそれが愛なんじゃないですか?私を先輩が愛しているなら・・・」
きょとんとする羽毛田「・・・むこうは愛しているんですか?」
小早川「・・・え?それは・・・たぶん・・・」
京冨野「・・・だいたい、お前さんらは学生だろ?
普通は、まずは彼氏彼女からなんじゃないか?なぜそんなに事を焦るんだ?」
羽毛田「ええ・・・人生の伴侶は真剣に選ぶべきですよ。
あなたをずっと守ってくれる誠実な人なのかをよく判断して・・・」
すると泣いてしまう小早川
「もう、10年以上も考えて真剣に決めたのに・・・ひどい・・・!え~ん!!」
あわてる羽毛田「あ・・・そうでしたか、す、すいません・・・!」
京冨野「校長、謝る必要はないです。
いいか、お嬢ちゃん・・・金も稼いだこともない学生が、結婚生活を甘く考えるんじゃねえ・・・!
所帯を持つということはな、組を構えるということと同じで覚悟がいるんだ・・・!」
小早川「・・・私は朝から晩まで誰よりも働いて、結婚資金も貯金したのに・・・!うえ~~ん!!」
平謝りする京冨野「そうか・・・悪かった・・・!指を詰めるから許してくれ・・・!」
慌てて止める羽毛田「京冨野先生、止めてください・・・!」
その様子を隣の席で会計処理をしながら無言で見つめている華白崎(・・・この女はヤバイ・・・)
・
放課後
下校する学生たち
山村の下駄箱に案の定ラブレターが入っている。
物陰から下駄箱の山村を見つめている小早川。
山村「・・・さあて今日の夕刊はどんなかな・・・」
その時、ラブレターを山村から取り上げる華白崎。
山村「むう・・・委員長・・・?」
物陰にいる小早川に近づいてラブレターを突き返す華白崎
「あなた・・・いい加減にしなさいよ・・・
相手が優しい山村先輩だからいいものを・・・一歩間違えれば、これは犯罪よ。」
小早川「ひどい・・・!あなたに私たちの何がわかるんですか・・・!」
華白崎「あなたの一方的な行動で、相手が迷惑しているんですよ?」
小早川「そうなの・・・?」
山村「いや・・・だから毎日そう言っているではないか・・・」
華白崎「それに、先生方がおっしゃってくれたように、あなたは家庭を持つことを軽く考えている。
男に甘えて生きられることが結婚ではないのよ・・・
あなたは、家事や育児の経験はあるの?」
小早川「・・・ないです・・・」
華白崎「なら二度と、結婚だなんて言葉を軽々しく口に出さないで欲しいわ。
それに、男の人は山村先輩以外にもたくさんいます。いい加減諦めなさい。」
小早川「次を当たれと・・・??」
華白崎「しかたがないでしょう・・・」
涙目になる小早川「それじゃダメ・・・それじゃダメなの・・・!
わたしは初恋の人と結婚しなきゃダメなの・・・!」
華白崎「そんな自分勝手な言い分の何が愛よ!」
泣き出す小早川「ダメなの~!うえ~ん!!」
胸が痛む山村。
女の涙にひるまない華白崎「泣くんじゃない!」
小早川「先輩の返事を聞かせてください・・・」
山村「われより君を幸せにできる男もいようぞ・・・」
泣きながら走り去ってしまう小早川「ばか~!!」
山村「・・・さすが50m走が6秒5だけあるな・・・あ、転んだ。」
華白崎「風紀委員に頼んで、ラブレターをひと月に最大1通までとするような条例をしいてもらわなくては・・・」
山村「・・・委員長すまなかったな。」
華白崎「いえ・・・嫌われるのは慣れていますので。」
・
体育館
海野「ええっ!?帰っちゃったの・・・!?」
華白崎「上履きのまま校門から出て行ったので、判断が難しいですが・・・
おそらく下校したのかと。」
花原「初日から幽霊部員とは・・・なかなかやるわね・・・」
ちおり「負けてらんねーな!」
花原「はりあわなくていいから・・・」
海野「本当に超高速で帰宅した・・・どうしよう・・・」
山村「部長よ、委員長を責めないでくれ。
彼女は、同じ女性という立場から、少女に失恋の味を教えたのだ。」
花原「たしかに、カッシーに口で勝てる学生はこの学校にはいないからね・・・」
乙奈「第一部の無双ぶりは今や伝説ですわ・・・」
ちおり「でも面白い子だよね!
今すぐ結婚しなくても、家も家族も、もうあるのにね!」
花原「・・・お前ならわかるけどな・・・」
ちおりの言葉でハッとする山村「・・・そうか・・・そうだったのか・・・
部長、私も早退していいかね?」
海野「・・・え?」
体育館を慌てて出ていく山村「生原会長・・・感謝する・・・!私が愚かであった・・・!」
・
小さな公園のブランコに乗って震えている小早川。
公園に入ってくる山村
「この公園でビキニパンツやプロテインを毎日そっと置いて行ってくれたのは、君だったんだな・・・」
小早川「・・・先輩・・・」
山村「3月とは言えまだ寒い・・・風邪をひくぞ・・・」
小早川が置いていった荷物とコートを渡す山村。
小早川「・・・ありがとうございます・・・」
並んでブランコに乗る2人。
小早川「何年も、誰もいない朝の街を走ってた・・・
この公園を通って最後の家に新聞を入れるとき・・・
いつも先輩がいました。
家に帰れない子は・・・私だけじゃないんだ・・・
そう思うと、勇気が出て・・・」
山村「なるほど・・・(そういう性癖であったとは言えまい・・・)」
小早川「わたしは・・・あたたかい家庭に憧れていただけなのかもしれない・・・
華白崎さんが言うとおり・・・現実から目を背けて・・・」
山村「ならば・・・キミが求めていたのは、このオレではなく・・・お母上の愛なんじゃないか?」
小早川「でも・・・どうすれば・・・」
山村「・・・お母上に手紙を書くのだ・・・毎日毎日・・・心を込めてな・・・きみの得意技であろう?」
小早川「・・・手伝っていただけますか・・・?」
微笑む山村「このマッスルは、か弱き乙女の味方・・・当然だ。」
目を潤ませる小早川「・・・私の思い込みじゃない・・・先輩はやっぱり優しい・・・」
山村「ラブレターの返事だが・・・今しばらく待ってくれないか・・・
この未熟な私が結婚できるくらい立派な大人の男になれるまで・・・」
笑顔で小早川「はい・・・お互いに・・・」
・
校外走をする白亜高バレー部
バレー部に戻ってきた小早川「はっはっはっ・・・みなさん・・・あと1周です!ファイト!!」
なんとか小早川についてくる海野「ふうふう・・・これを毎日やってたなんて・・・」
華白崎「体がなまってましたね・・・情けない限りだわ・・・」
吐いている花原「おええええ・・・!」
道端でバテている、運動経験のないちおり、花原、乙奈、ブーちゃんの4人。
道草を食うちおり「うめえ・・・」
その様子を見るさくら「来年はホノルルマラソンでも参加させるか。」
校門でストップウォッチを持つ山村「人は走り続けるしかないのだ・・・人生という名のトラックを。」
ホステスのような格好の派手な女が男を連れ込む。
女「愛してるわ♡」
若い男「ぼくもさ。」
室内でいちゃいちゃしている男女。
襖が開いて、女の子が入ってくる。
女の子「・・・お母さんおかえり・・・あ、まちがえた・・・」
もう一度襖を閉める女の子。
気まずい男女。
女「ダメじゃない。お店のお客さんには、こりん星出身の24歳独身という設定で押し通してるんだから・・・」
女の子「ご・・・ごめんなさい・・・」
女「夕食代は渡したでしょう?夜は出来るだけ、外に行っててくれないかな。」
女の子「・・・はい・・・」
女「・・・もう少しの辛抱よ・・・もう少し辛抱すれば・・・あんたにも最高のパパができるから。
いいわね?一咲。」
女の子「・・・うん。」
・
月明かりの下で時間を潰す小早川。
駅では警官に補導され、コンビニではやんちゃな男の子に絡まれる。
しかたなく団地に帰ってくるが、部屋に明かりがついている。
小早川「・・・まだか・・・」
団地の外で体育座りをして待っている小早川。
数時間後。部屋の電気が消える。
家に帰ってくる小早川「・・・ただいま・・・」
暗い部屋で泣いている母親「・・・また体目当てだった・・・くそう・・・次だ・・・!」
母親を抱きしめる小早川「・・・お母さん・・・」
小早川(・・・わたしは、こんな人にはならない・・・運命の相手を見つけるんだ・・・)
・
夜やることがないので、パーカーを着て、スパッツを履く小早川。
深夜のジョギングということにすれば、補導対象になりづらいことを思いつく。
月明かりの下で、ひたすら公園のジョギングコースをぐるぐる走る小早川。
時間が経つのも忘れて走っていると、やがて朝日が登ってくる。
マラソン選手のように呼吸をする小早川「はあはあはあ・・・」
そのまま、早朝に新聞配達を始める小早川。
雨の日も風の日も雪の日も、新聞を配達し続ける小早川。
配送センターのおじさん「感心な子だなあ・・・」
小早川(朝の5時半・・・この角を曲がった、小さな公園に・・・あの人はいつもいた・・・)
公園で孤独にポージングを決める若かりしマッスル山村。
小早川(あの人も・・・きっと私と同じで、家に入れない事情があるんだ・・・
がんばろうね・・・マッチョさん・・・)
笑顔になり、山村の公園を通り過ぎる小早川。
・
現在――
体育館
小早川「なんとかすべてのバイトのシフトを調整できました・・・!」
山村「はは・・・それはめでたい・・・」
海野「はい。これが小早川さんのユニフォーム。」
小早川「わあ、ありがとうございます・・・!」
さくら「そいで、リベロを誰にするかだけど、リベロはレシーブを専門とするポジションなので必然的に海野さんかブーちゃんになる。しかし、リベロは前衛時にプレーに参加ができない。
このチームで2番目に身長があるのは海野さんよ・・・
よって、ブーちゃんにリベロの大役を任せるわ・・・!」
ブーちゃんがリベロ専用のユニフォームを受け取る。
さくら「一同拍手・・・!」
拍手するメンバーたち。
海野「頑張ってねブーちゃん・・・!」
さくら「ブーちゃんのプレーは常に安定しているから心配ないっしょ。
バレーボールが身長の高いやつだけのスポーツじゃないことを知らしめてやりなさい。」
手を上げる小早川「あの・・・わたくしは何をすればいいんでしょうか・・・?」
海野「小早川さんはバレーボールはやったことある?」
小早川「ごめんなさい・・・そもそもスポーツ経験がないんです・・・」
山村「だから言ったではないか。
スポーツテストの結果などでメンバーを決めるなど荒唐無稽ぞ。は~はは!」
さくら「・・・小早川さん。
バレーさえ覚えてくれれば、あんたたちの結婚式の仲人をすることを約束するわ・・・」
目の色が変わる小早川「あたし・・・バレーに命をかけます・・・!!」
山村「・・・鬼である!鬼監督である!!」
・
営業再開した学食
さんま定食を食べながら花原「やっぱりブーちゃんの料理はどこの外食よりも美味いわ・・・」
メザシをかじるちおり「うめ~!」
花原「でも、あの小早川さん?ちょっと華奢だけど、けっこう可愛い子じゃん。」
海野「性格も健気だしね・・・」
花原「正直、山村くんなんぞにはもったいないと思うけど・・・なんで避けるようなことしてんのよ。」
骨も全て食べるちおり「うめ~!!」
マッシュポテトを食べる乙奈「そうですよ・・・女性に恥をかかせるなんて・・・山村さんらしくありませんわ・・・」
山村「・・・確かに彼女の好意は嬉しい・・・しかし、乙女たちよ・・・諸君らに問いたい。
愛とは何だ?」
とまどう花原「・・・え?そ・・・それは・・・海野さんあたりが詳しいんじゃ・・・」
あわてる海野「いや・・・私もバレーボール一筋で男性経験が・・・乙奈さん・・・」
乙奈「慈悲の心ですわ・・・常に弱い立場の人に寄り添い・・・共に歩むことです・・・」
花原「さすが実家が教会・・・!」
乙奈「愛の宗教ですから・・・」
山村「ならば・・・彼女を愛するためには、必ずしも結婚をして添い遂げる必要はないのではないか・・・?私はみなのアイドル、マッスル山村なのだから・・・」
花原「いや・・・別にあんたはみんなのアイドルでは・・・」
乙奈「・・・なら、しっかりと振っておやりなさい。」
花原「乙奈さん・・・?」
乙奈「それも相手を慮ることですわよ・・・さもないと・・・取り返しのつかないことになります。
わたくしは・・・それで大変な目にあったから・・・」
山村「いや・・・振っているのだ・・・で、その場では泣いて「諦めます」とかいうのだが・・・
明日にはまた頬を赤らめラブレターを持ってくるのだ・・・かれこれ半年以上だ・・・
証拠をお見せしよう・・・」
みかんのダンボール箱を机に乗せる山村。
海野「ええ!?これがすべてラブレターなの!!??」
山村「毎日振り続けているからな・・・」
花原「・・・なんて前向きな少女なんだ・・・!」
乙奈「あの子の異常性が垣間見えますわね・・・」
山村「このマッスルも、毎日乙女の涙を見せられては、辛くてな・・・
でも、翌日はケロッとしているから、あやつにはファミリーコンピューターで言うところのリセットボタンがついているのではないかと疑っている。」
花原「よし・・・山村。警察に相談しよう・・・」
海野「いやいや・・・!せっかくチームメイトになったのに、警察に突き出しちゃまずいよ・・・!」
・
図書室
うきうきしてラブレターを書いている小早川「さあ~て・・・今日はどんな内容にしようかな・・・」
司書教諭の病田「あの・・・もうそろそろ閉館なんですが・・・」
小早川「先生・・・!先生は高校時代に好きな人とかいたんですか・・・?」
病田「ま・・・まあ・・・」
小早川「どう告白したんですか?それが今の旦那さんなんですか・・・!?」
病田「・・・へ?ち・・・ちがいますけど・・・」
小早川「旦那さんはどんな人なんですか?どうやって結婚したんですか・・・?」
病田「そ・・・そういうのは、男性に聞いたほうが・・・」
小早川「たしかに・・・!」
・
職員室に入ってくる小早川
京冨野「なんだ・・・出入りか・・・!?」
小早川「京冨野先生・・・校長先生・・・ご結婚は?」
京冨野「ああ。娘がいるぞ。」
羽毛田「私にはもう孫もいますけど・・・」
小早川のラブレターを読む京冨野
「お嬢ちゃん・・・これじゃあいけねえな・・・」
小早川「どこがまずいのでしょうか・・・」
赤ペンで添削をする京冨野「例えば、ここ。第2段落の4行目。
あなたは私を妻とし、健やかなる時も病める時も・・・・愛し、敬い、助け合い
死が二人を分かつ限り愛することを誓いますか?
・・・ってこれじゃあ結婚式じゃねえか・・・」
羽毛田「いけませんね・・・これでは恋文というよりは誓約書だ。
ここの、「母子の健康を考慮して、少なくとも25歳までには一人目が欲しいのです」の一文も、けっこうな異彩を放っていますね・・・」
小早川「個人的には自信作だったんですけど・・・」
京冨野「お嬢ちゃんが、結婚に夢や理想を抱く気持ちは分かる。
だが、男にとって結婚とは現実と責任だ。そう簡単に二つ返事はできねえ。」
小早川「でもそれが愛なんじゃないですか?私を先輩が愛しているなら・・・」
きょとんとする羽毛田「・・・むこうは愛しているんですか?」
小早川「・・・え?それは・・・たぶん・・・」
京冨野「・・・だいたい、お前さんらは学生だろ?
普通は、まずは彼氏彼女からなんじゃないか?なぜそんなに事を焦るんだ?」
羽毛田「ええ・・・人生の伴侶は真剣に選ぶべきですよ。
あなたをずっと守ってくれる誠実な人なのかをよく判断して・・・」
すると泣いてしまう小早川
「もう、10年以上も考えて真剣に決めたのに・・・ひどい・・・!え~ん!!」
あわてる羽毛田「あ・・・そうでしたか、す、すいません・・・!」
京冨野「校長、謝る必要はないです。
いいか、お嬢ちゃん・・・金も稼いだこともない学生が、結婚生活を甘く考えるんじゃねえ・・・!
所帯を持つということはな、組を構えるということと同じで覚悟がいるんだ・・・!」
小早川「・・・私は朝から晩まで誰よりも働いて、結婚資金も貯金したのに・・・!うえ~~ん!!」
平謝りする京冨野「そうか・・・悪かった・・・!指を詰めるから許してくれ・・・!」
慌てて止める羽毛田「京冨野先生、止めてください・・・!」
その様子を隣の席で会計処理をしながら無言で見つめている華白崎(・・・この女はヤバイ・・・)
・
放課後
下校する学生たち
山村の下駄箱に案の定ラブレターが入っている。
物陰から下駄箱の山村を見つめている小早川。
山村「・・・さあて今日の夕刊はどんなかな・・・」
その時、ラブレターを山村から取り上げる華白崎。
山村「むう・・・委員長・・・?」
物陰にいる小早川に近づいてラブレターを突き返す華白崎
「あなた・・・いい加減にしなさいよ・・・
相手が優しい山村先輩だからいいものを・・・一歩間違えれば、これは犯罪よ。」
小早川「ひどい・・・!あなたに私たちの何がわかるんですか・・・!」
華白崎「あなたの一方的な行動で、相手が迷惑しているんですよ?」
小早川「そうなの・・・?」
山村「いや・・・だから毎日そう言っているではないか・・・」
華白崎「それに、先生方がおっしゃってくれたように、あなたは家庭を持つことを軽く考えている。
男に甘えて生きられることが結婚ではないのよ・・・
あなたは、家事や育児の経験はあるの?」
小早川「・・・ないです・・・」
華白崎「なら二度と、結婚だなんて言葉を軽々しく口に出さないで欲しいわ。
それに、男の人は山村先輩以外にもたくさんいます。いい加減諦めなさい。」
小早川「次を当たれと・・・??」
華白崎「しかたがないでしょう・・・」
涙目になる小早川「それじゃダメ・・・それじゃダメなの・・・!
わたしは初恋の人と結婚しなきゃダメなの・・・!」
華白崎「そんな自分勝手な言い分の何が愛よ!」
泣き出す小早川「ダメなの~!うえ~ん!!」
胸が痛む山村。
女の涙にひるまない華白崎「泣くんじゃない!」
小早川「先輩の返事を聞かせてください・・・」
山村「われより君を幸せにできる男もいようぞ・・・」
泣きながら走り去ってしまう小早川「ばか~!!」
山村「・・・さすが50m走が6秒5だけあるな・・・あ、転んだ。」
華白崎「風紀委員に頼んで、ラブレターをひと月に最大1通までとするような条例をしいてもらわなくては・・・」
山村「・・・委員長すまなかったな。」
華白崎「いえ・・・嫌われるのは慣れていますので。」
・
体育館
海野「ええっ!?帰っちゃったの・・・!?」
華白崎「上履きのまま校門から出て行ったので、判断が難しいですが・・・
おそらく下校したのかと。」
花原「初日から幽霊部員とは・・・なかなかやるわね・・・」
ちおり「負けてらんねーな!」
花原「はりあわなくていいから・・・」
海野「本当に超高速で帰宅した・・・どうしよう・・・」
山村「部長よ、委員長を責めないでくれ。
彼女は、同じ女性という立場から、少女に失恋の味を教えたのだ。」
花原「たしかに、カッシーに口で勝てる学生はこの学校にはいないからね・・・」
乙奈「第一部の無双ぶりは今や伝説ですわ・・・」
ちおり「でも面白い子だよね!
今すぐ結婚しなくても、家も家族も、もうあるのにね!」
花原「・・・お前ならわかるけどな・・・」
ちおりの言葉でハッとする山村「・・・そうか・・・そうだったのか・・・
部長、私も早退していいかね?」
海野「・・・え?」
体育館を慌てて出ていく山村「生原会長・・・感謝する・・・!私が愚かであった・・・!」
・
小さな公園のブランコに乗って震えている小早川。
公園に入ってくる山村
「この公園でビキニパンツやプロテインを毎日そっと置いて行ってくれたのは、君だったんだな・・・」
小早川「・・・先輩・・・」
山村「3月とは言えまだ寒い・・・風邪をひくぞ・・・」
小早川が置いていった荷物とコートを渡す山村。
小早川「・・・ありがとうございます・・・」
並んでブランコに乗る2人。
小早川「何年も、誰もいない朝の街を走ってた・・・
この公園を通って最後の家に新聞を入れるとき・・・
いつも先輩がいました。
家に帰れない子は・・・私だけじゃないんだ・・・
そう思うと、勇気が出て・・・」
山村「なるほど・・・(そういう性癖であったとは言えまい・・・)」
小早川「わたしは・・・あたたかい家庭に憧れていただけなのかもしれない・・・
華白崎さんが言うとおり・・・現実から目を背けて・・・」
山村「ならば・・・キミが求めていたのは、このオレではなく・・・お母上の愛なんじゃないか?」
小早川「でも・・・どうすれば・・・」
山村「・・・お母上に手紙を書くのだ・・・毎日毎日・・・心を込めてな・・・きみの得意技であろう?」
小早川「・・・手伝っていただけますか・・・?」
微笑む山村「このマッスルは、か弱き乙女の味方・・・当然だ。」
目を潤ませる小早川「・・・私の思い込みじゃない・・・先輩はやっぱり優しい・・・」
山村「ラブレターの返事だが・・・今しばらく待ってくれないか・・・
この未熟な私が結婚できるくらい立派な大人の男になれるまで・・・」
笑顔で小早川「はい・・・お互いに・・・」
・
校外走をする白亜高バレー部
バレー部に戻ってきた小早川「はっはっはっ・・・みなさん・・・あと1周です!ファイト!!」
なんとか小早川についてくる海野「ふうふう・・・これを毎日やってたなんて・・・」
華白崎「体がなまってましたね・・・情けない限りだわ・・・」
吐いている花原「おええええ・・・!」
道端でバテている、運動経験のないちおり、花原、乙奈、ブーちゃんの4人。
道草を食うちおり「うめえ・・・」
その様子を見るさくら「来年はホノルルマラソンでも参加させるか。」
校門でストップウォッチを持つ山村「人は走り続けるしかないのだ・・・人生という名のトラックを。」
- Calendar
<< March 2025 >> Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31
- search this site.
- tags
-
- 漫画 (363)
- 映画 (235)
- 脚本 (222)
- 雑記 (158)
- ゲーム (148)
- 本 (116)
- 教育 (107)
- 生物学 (105)
- 科学 (92)
- 社会学 (81)
- 歴史 (72)
- テレビ (70)
- 芸術 (61)
- 政治 (50)
- 進化論 (40)
- 数学 (40)
- 情報 (38)
- サイト・ブログ (37)
- 語学 (37)
- 映画論 (36)
- 資格試験 (33)
- 物理学 (33)
- 哲学 (32)
- 恐竜 (29)
- 文学 (26)
- 育児 (25)
- 化学 (25)
- 論文 (22)
- PIXAR (22)
- 心理学 (18)
- 地学 (16)
- 地理学 (15)
- 気象学 (15)
- 技術 (13)
- 経済学 (12)
- 医学 (11)
- 玩具 (9)
- 司書 (8)
- 法律学 (7)
- 対談 (5)
- スポーツ (4)
- 映画の評価について (1)
- プロフィール (1)
- archives
-
- 202503 (2)
- 202502 (2)
- 202501 (1)
- 202412 (2)
- 202411 (6)
- 202410 (2)
- 202409 (4)
- 202408 (4)
- 202407 (7)
- 202406 (27)
- 202405 (11)
- 202404 (4)
- 202403 (23)
- 202402 (22)
- 202401 (15)
- 202312 (4)
- 202311 (7)
- 202310 (2)
- 202309 (8)
- 202308 (9)
- 202307 (8)
- 202306 (5)
- 202305 (15)
- 202304 (4)
- 202303 (4)
- 202302 (2)
- 202301 (4)
- 202212 (15)
- 202211 (7)
- 202210 (5)
- 202209 (4)
- 202208 (4)
- 202207 (7)
- 202206 (2)
- 202205 (5)
- 202204 (3)
- 202203 (2)
- 202202 (5)
- 202201 (6)
- 202112 (6)
- 202111 (4)
- 202110 (6)
- 202109 (7)
- 202108 (5)
- 202107 (8)
- 202106 (4)
- 202105 (8)
- 202104 (4)
- 202103 (6)
- 202102 (10)
- 202101 (3)
- 202012 (12)
- 202011 (3)
- 202010 (4)
- 202009 (5)
- 202008 (6)
- 202007 (4)
- 202006 (4)
- 202005 (4)
- 202004 (7)
- 202003 (5)
- 202002 (6)
- 202001 (8)
- 201912 (6)
- 201911 (5)
- 201910 (3)
- 201909 (4)
- 201908 (10)
- 201907 (3)
- 201906 (6)
- 201905 (10)
- 201904 (3)
- 201903 (7)
- 201902 (8)
- 201901 (5)
- 201812 (7)
- 201811 (12)
- 201810 (7)
- 201809 (5)
- 201808 (10)
- 201807 (5)
- 201806 (19)
- 201805 (14)
- 201804 (11)
- 201803 (15)
- 201802 (4)
- 201801 (6)
- 201712 (4)
- 201711 (3)
- 201710 (11)
- 201709 (9)
- 201708 (15)
- 201707 (7)
- 201706 (4)
- 201705 (5)
- 201704 (6)
- 201703 (7)
- 201702 (6)
- 201701 (3)
- 201612 (3)
- 201611 (7)
- 201610 (7)
- 201609 (2)
- 201608 (8)
- 201607 (8)
- 201606 (7)
- 201605 (3)
- 201604 (4)
- 201603 (8)
- 201602 (3)
- 201601 (2)
- 201512 (3)
- 201511 (3)
- 201510 (4)
- 201509 (4)
- 201508 (8)
- 201507 (17)
- 201506 (2)
- 201505 (5)
- 201504 (9)
- 201503 (20)
- 201502 (7)
- 201501 (4)
- 201412 (5)
- 201411 (3)
- 201410 (2)
- 201409 (3)
- 201408 (3)
- 201407 (3)
- 201406 (12)
- 201405 (6)
- 201404 (7)
- 201403 (5)
- 201402 (12)
- 201401 (9)
- 201312 (6)
- 201311 (9)
- 201310 (8)
- 201309 (6)
- 201308 (6)
- 201307 (6)
- 201306 (10)
- 201305 (10)
- 201304 (23)
- 201303 (17)
- 201302 (16)
- 201301 (5)
- 201212 (10)
- 201211 (4)
- 201210 (18)
- 201209 (4)
- 201208 (30)
- 201207 (7)
- 201206 (4)
- 201205 (6)
- 201204 (4)
- 201203 (4)
- 201202 (3)
- 201201 (3)
- 201112 (4)
- 201111 (7)
- 201110 (3)
- 201109 (9)
- 201108 (3)
- 201107 (7)
- 201106 (2)
- 201105 (11)
- 201104 (7)
- 201103 (14)
- 201102 (19)
- 201101 (27)
- 201012 (25)
- 201011 (70)
- 201010 (34)
- 201009 (30)
- 201008 (42)
- 201007 (44)
- 201006 (29)
- 201005 (37)
- 201004 (50)
- 201003 (44)
- 201002 (48)
- 201001 (38)
- 200912 (20)
- recent trackback
- others
-
- RSS2.0
- hosted by チカッパ!
- HEAVEN INSITE(本サイト)
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 | 41 | 42 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | 57 | 58 | 59 | 60 | 61 | 62 | 63 | 64 | 65 | 66 | 67 | 68 | 69 | 70 | 71 | 72 | 73 | 74 | 75 | 76 | 77 | 78 | 79 | 80 | 81 | 82 | 83 | 84 | 85 | 86 | 87 | 88 | 89 | 90 | 91 | 92 | 93 | 94 | 95 | 96 | 97 | 98 | 99 | 100 | 101 | 102 | 103 | 104 | 105 | 106 | 107 | 108 | 109 | 110 | 111 | 112 | 113 | 114 | 115 | 116 | 117 | 118 | 119 | 120 | 121 | 122 | 123 | 124 | 125 | 126 | 127 | 128 | 129 | 130 | 131 | 132 | 133 | 134 | 135 | 136 | 137 | 138 | 139 | 140 | 141 | 142 | 143 | 144 | 145 | 146 | 147 | 148 | 149 | 150 | 151 | 152 | 153 | 154 | 155 | 156 | 157 | 158 | 159 | 160 | 161 | 162 | 163 | 164 | 165 | 166 | 167 | 168 | 169 | 170 | 171 | 172 | 173 | 174 | 175 | 176 | 177 | 178 | 179 | 180 | 181 | 182 | 183 | 184 | 185 | 186 | 187 | 188 | 189 | 190 | 191 | 192 | 193 | 194 | 195 | 196 | 197 | 198 | 199 | 200 | 201 | 202 | 203 | 204 | 205 | 206 | 207 | 208 | 209 | 210 | 211 | 212 | 213 | 214 | 215 | 216 | 217 | 218 | 219 | 220 | 221 | 222 | 223 | 224 | 225 | 226 | 227 | 228 | 229 | 230 | 231 | 232 | 233 | 234 | 235 | 236 | 237 | 238 | 239 | 240 | 241 | 242 | 243 | 244 | 245 | 246 | 247 | 248 | 249 | 250 | 251 | 252 | 253 | 254 | 255 | 256 | 257 | 258 | 259 | 260 | 261 | 262 | 263 | 264 | 265 | 266 | 267 | 268 | 269 | 270 | 271 | 272 | 273 | 274 | 275 | 276 | 277 | 278 | 279 | 280 | 281 | 282 | 283 | 284 | 285 | 286 | 287 | 288 | 289 | 290 | 291 | 292 | 293 | 294 | 295 | 296 | 297 | 298 | 299 | 300 | 301 | 302 | 303 | 304 | 305 | 306 | 307 | 308 | 309 | 310 | 311 | 312 | 313 | 314 | 315 | 316 | 317 | 318 | 319 | 320 | 321 | 322 | 323 | 324 | 325 | 326 | 327 | 328 | 329 | 330 | 331 | 332 | 333 | 334 | 335 | 336 | 337 | 338 | 339 | 340 | 341 | 342 | 343 | 344 | 345 | 346 | 347