『風と翼:RESET』制作裏話

 いや~久々に新作をまるまる書き下ろした~楽しかった~。こんな面白いパズルゲームはないよね。
 もともと自分は、少年ジャンプでも政治の漫画を描いたくらいで、政治風刺とか好きなんだけど、今回はその『抽選内閣』とかでやろうと思っていた内容も使っちゃったというか。
 ただし、政治を題材にするのって、けっこうシビアなところがあって、無責任に茶化すのもどうかと思うし、かといって真剣に特定のイデオロギーを主張するのも、エンターテイメントとして違うじゃん。最近のディズニーとか『ゴーマニズム宣言』になっちゃうじゃん。
 あくまでも、政治ネタはテーマのメタファーに過ぎないのであって、別に実際の政党や団体を批判したいわけではありません。

 ただし、現代に即したテーマってのがあって、やっぱりLBGT法案とか取り沙汰されてるし、差別的な問題は扱ったほうがいいよなっていう。奇しくも、今回は朝鮮を攻めちゃった秀吉が敵だし、朝鮮出兵はやらなきゃいけないだろう、と。でも、反日や反韓にならずに、どうやって物語を作ればいいのか、ここが一番悩んだ。差別をやめましょうとか、偉そうにお説教するのも違うし。
 でさ、意外と若い人って韓国とか嫌いじゃないじゃん。むしろ芸能文化的には好きじゃん。実際に、自分が高校生だった時も金大中政権で、日韓共催ワールドカップとかやってて、別に反韓って感じでもなかったし。

 なので、主人公が高校生なわけだから、韓国人のキャラを出して友人ということにしよう。そして、長らく謎だった、カイトが野球をやめたきっかけでもある野球部のいじめ問題、これを韓国人差別だったってことにしようって、お話を組み立てていった感じ。
 今のユン・ソンニョル大統領もわりと日本に歩み寄ってくれそうだし。ロシアや中国、北朝鮮がちょっと怖い中、せめて日韓関係はうまくいってほしいよっていう、希望でもある。

 それと、この脚本のプロットは、事前にツイッターのDMで「かなっぺ」さんに見せたんだけど、そこで驚いたのは、北野武さんが自身の新作映画でなんと秀吉を演じるということを教えてもらってさ。
 これは、丹羽長秀=小日向さんの時と同様、超偶然です。もともと、秀吉と朝鮮が実はつながってたことにしようっていうのはあって、そうなると『アウトレイジ』の韓国の会長が思い浮かんでさ、じゃあ、秀吉はたけしさんだなっていう。
 それに、たけしさんももう高齢だから、さすがに秀吉の役はやらないだろうって思ってたんだよ。調べると秀吉よりも年上の信長役は加瀬亮さんとのことで、もう年齢はどうでもいいんだっていうw

 今回のサブタイトルは、五右衛門の話だし、長らく「からくり道中(仮)」だったんだけど、前作が「REVIVE」で、本編に「リセット」って言葉が出てきたから、これだ!って思って変更しました。
 ここまで来ると、次の話は「リミックス」とか「リベンジ」とかになるんだろうなっていう。

 それでは5年ぶりに復活した方々をご紹介。は~時間ってあっという間だなあ・・・いやんなるよ。

カイト&翼
忍者になりたいカイトと忍者をやめたい翼って感じで、対比させるアイディアはすぐ思いついたんだけど、あまりお互いを敵対関係にしないようにしようと、気を使った。
あと、今回はカイトの旧友たちがかなり出てくるから、二人の名コンビ感がわかるシーンは、わりと意識的に挟むようにした。

天井サラ
モデルは浅井茶々。茶々(淀殿)ということで、当初は秀吉と内通している設定だったが、秀吉の秘書のポジションは片桐且元と分けることにした。
また、当初は、彼女が恐ろしいラスボスで、カイトが巻き込まれたいじめの首謀者という設定だった。とんでもない魔性の女というか。
ただ、描いてみると、『王様のレストラン』の山口智子さんみたくなっちゃって、「こりゃラスボスの器じゃねえよ(C)大友組長」って、設定を変更しました。
そして「私はこの中の誰よりも野球がうまい!!」というセリフは自分でも面白いと思う。
まあ、今は女子の硬式野球部もあるらしいけどね。一昔前までは、女子はマネージャーかソフトボールって感じだったよね。

石川五右衛門
キャラ造形の前に設定で面白いアイディアが思いついたタイプ。
SNSで盗んだ金を振り込んでいるのっておもしろいな、と。前澤社長じゃねえかっていう。悪趣味なところもいいじゃん。
政府が隠したい天下り先ばかり盗みに入るから、なかなか報道もされないという。

イ・ウォンイク(李元翼)
朝鮮出兵の時の朝鮮側の大臣から。漢字に直すと「翼」がつくので、カイトの相棒としてもいいなっていう。イメージは『ときめきメモリアル』の伊集院レイ。
すごい差別される、在日韓国人のいじめられっ子っていうイメージにはしたくなかった。
むしろ、日本の男子よりもモテモテで、それで僻まれるっていうw

大道寺ヨシヲ
戦国時代の北条家家臣、大道寺政繁から。苗字がえらく強そうなのでヤンキーにしちゃった。
ヤンキーって雨に濡れた野良の子猫とかにやさしいイメージがあるので、動物に詳しい設定にしました。こういうキャラクターってあんまり自分の漫画には出てこなかったけど、けっこう使い勝手がいいな。程よくバカだし。

安藤夏博
戦国時代の北条家家臣、安藤良整から。設定的には、『マネーボール』で、ジョナ・ヒルが演じた(重要)ピーター・ブランド。あと、『MOTHER2』のアンドーナッツ博士。

八重かをり
翼を凌ぐような強大なくのいちを出したいなってずっと思ってたんだけど、そもそも実在が確認されているくのいちって望月千代女しかいなくて、しかもそれも前作で登場させちゃったから、どうしようってなってたところ、あ、『がんばれゴエモン』に「ヤエ」っていたなってことで名前を付けた。実は彼女のポジションがもともとは茶々だった。秀吉に復讐するために、あえて秀吉の側近として働いていた、みたいな。

石田内閣
岸田内閣とは一切関係はありません。しかし、黒田、竹中とか都合のいい苗字がいたもんだ。

徳川家康
最終的に日本に260年の平和をもたらす人物だが、そんな人物にまったく似つかわしくない仕事をさせようということで、ああいう形になりました。徳川家の子孫の方、大変すいませんでした。マイクパフォーマンスは、とろサーモンのネタを何度も見て勉強した。
次があるなら、多分チャットGPTとかAIを盛り込んだシナリオになりそうなんだけど、そこに元風俗店店主がどう関わってくるのかは全くの未定である。

豊臣秀吉
モデルはたけしさんということで、今回の城は「風雲たけし城」だなって思ったら、奇しくも「風雲たけし城」もこの前30年ぶりに復活し、丸被りしました。
アマゾンプライムで新作も全部見たんだけど、最後の流鏑馬は本当に理不尽だと思う。せめて、相撃ちも攻撃軍の勝利にしないと希望がない。

『風と翼:RESET』脚本⑩

首都圏にJアラートが鳴る。
逃げ惑う東京都民。
「全裸になりたくねえ!!」



カイト「安藤くん、発射を止められそうか!?」
安藤「ダメです!一度発射コマンドを実行されたら取り消せない・・・!」
サラ「着弾地点を海上にそらせないの?」
キーボードを叩く安藤「やってみます・・・!」
大道寺「きたねえ東京湾がキレイになるならいい爆弾だよな」
ウォンイク「確かに・・・」
安藤「軌道変更コードは見つかりました!」
サラ「さすがハッキングの天才!」

その時、ミサイルが発射されてしまう。

安藤「ああっ間に合わなかった!すいません、着弾場所は神奈川県になりました!」
大道寺「何やってんだゴラア!!」
ウォンイク「発射後は制御できないのかね?」
安藤「ISO14001は破壊エリアが広域な戦略核兵器なので、慣性航法しかできないみたいです!」
大道寺「は?」
ウォンイク「もう制御できないそうだ。」
サラ「どうすんのよ!私たちの神奈川県が滅亡するじゃない!」



逃げるのをやめる東京都民。
「神奈川県くらいなら、まあいいか。」



サラ「どうしよう、カイトくん・・・!」
カイト「安藤くん、逆にもう一発発射することはできるの?」
安藤「え?」
サラ「こうなりゃ、東京も一緒に滅ぼす?」
カイト「そうじゃなくて・・・
ISOにISOをぶつければ・・・」
ウォンイク「お互い自然に帰るのか・・・!」
カイト「大道寺くんの言うとおり、打ち返そうぜ・・・!」
大道寺「しかしよ、間に合うのか?」
安藤「ロフテッド軌道で神奈川に向かっているので、低い斜角で第二発目を発射すれば間に合いますが・・・落下速度が尋常じゃないので、激突させるのは至難の業かと」
ウォンイク「外野のフライにホームからボールをぶつけるようなものだな」
カイト「・・・それならやったことがある・・・」
翼「カイトさん・・・」
カイト「やっと“野球”が見せられるね・・・」
安藤「では、そちらの制御パネルに、ISO14001の発射コマンドを転送します!タイミングよく発射してください!」
天守閣のコンソールに向かうカイト。
サラ「カイトくんがんばって!」
コンソールに座るカイト「このミートカーソルをあわせるだけでしょ?実況パワフルプロ野球みたいなもんさ」
安藤「ちなみに失敗すると、2発目は太平洋を超えてロサンゼルスが崩壊します!」
大道寺「プレッシャーを与えるんじゃねえ!」
カイト「エンゼルスと神奈川県は俺が守る!!」



宇宙空間で静止し今度は落下をはじめるミサイル。



安藤「神奈川に向かって落下を開始しました!現在高度3500km!!高度1000kmを下回ると迎撃は困難になります!」
サラ「早く発射しないと、どんどん加速するわよ!」
カイト「いや、このタイミングじゃ大谷翔平さんを全裸にしてしまう・・・!」
サラ「カイトくん!」
安藤「先輩!」
大道寺「カイト!」
ウォンイク「風間くん!」
翼「カイトさん頑張って!!!」
カイト「・・・ここだ!!」
発射ボタンを押すカイト。

二発目がディプレスト軌道で発射される。
安藤「マッハ15を超えました!」
カイト「頼む・・・!」

神奈川上空が青白く光る。
サラ「当たった!!」
カイト「ゲームセットだ」
カイトに抱きつく翼「カイトさんかっこい~~!」



ガレージを出て空を見上げる安藤。
「さすが先輩だ・・・」
神奈川県上空に爆発したミサイルから大量に何かが降ってくる。
それは、大量の1万円札だった。
1万円をひろう安藤。
1万円には「こんな兵器にマジになっちゃってどうするの」と書いてあった。
安藤「あの人らしいや・・・」



私設飛行場に秀吉のリムジンが入ってくる。
秀吉「なんだよ、リセットしなかったのかい。
まあいいや、あとの尻拭いは若い奴らに任せよう。
日本の未来は頼んだぜ、あんちゃん。」
自家用ジェット機に乗り込もうとリムジンを降りる秀吉。
すると、ジェット機の入口に殺し屋プラナスが立っていることに気づく。
殺し屋「やっと見つけた・・・石川五右衛門・・・」
秀吉「何だ、お前・・・」
とっさに秀吉をかばうSPたち。
拳銃で応戦するが、剣を持った殺し屋にあっという間に倒されてしまう。
真剣な顔になる秀吉「・・・・・・。」
秀吉に剣先を向ける殺し屋。
秀吉「・・・仮面をとってくれねえか。どんなやつが俺を殺したか、知りたくてよ」
マスクを外す殺し屋。
美しい長い髪が現れる。
秀吉「あんたは・・・警察の・・・」
八重「あなたのことはあなた以上に知っているわよ・・・
伊賀忍者の抜け忍であることもね・・・」
すべてを把握した秀吉「だから、百地の嬢ちゃんに近づいたのかい」
八重「20年間・・・ずっとこの時を待っていた・・・20年・・・
3億円事件の捜査の失態を糾弾されて警察官だった私の家族は職を失った・・・
一方、テレビや世間は、泥棒のあなたをヒーロー扱い・・・
何が、誰ひとり傷つけない天下の義賊よ、そんなのは詭弁よ!
あなたたち忍者がいる限り、この世の中は決して良くならない・・・!
せっかく織田信長が滅ぼしてくれたのに、それでも今もしぶとく残党がいる・・・!」
秀吉「そうか・・・あの時の子どもが・・・」
八重に近づく秀吉。
八重「・・・な・・・!」
秀吉「姉ちゃん、悪かったな・・・
オイラの首はくれてやる。次の警視総監はあんただ。」
いさぎよい秀吉の反応に、首を切るのを一瞬ためらう八重「・・・・・」
その背後から、八重の胸を撃ち抜く幸村。
秀吉「幸村・・・」
幸村「ご無事ですか、殿。」
秀吉「あ、ああ・・・」
八重の残した血痕を悲しげに見つめる秀吉。
「・・・あの姉ちゃんは忍者を恨むあまり、誰よりも恐ろしい忍びになっちまったな・・・」



闇に包まれた連絡通路
胸を抑えながら、よろよろと逃げていく八重
「が・・・がはっ、あと少しで・・・あの男の首を取れたのに・・・あと少しで・・・」
冷たいコンクリートの床にうつ伏せに倒れる。
頭上に目をやると、目の前に人間がいることに気づく。
八重「・・・!」
翼「八重さん・・・」
八重「翼・・・ちゃん・・・
止めをさしに来たの・・・?」
翼「時代劇の見すぎです。」
かがんで八重の手当をする翼。
八重「後悔するわよ・・・私は忍者をぜったいに許さない・・・」
翼「いいんです、私はそれだけのことをしました・・・
人生にリセットボタンなんてない・・・自分の過去を受け入れて生きるしかないんだ・・・
だから・・・八重さんには私のようになって欲しくない・・・」



その後・・・東京ドーム。
日韓共催ワールドベースボールが開かれている。
会場には秀吉や翼が観戦している。
翼「日本に戻ってたんですか?」
秀吉「おお姉ちゃんか、この一戦は見るだろ!」
翼「・・・この一戦は見ますよね。」

サラ「ということで、とうとう決着の瞬間を迎えようとしております!
日韓共催ワールドベースボール決勝戦!
9回裏、アメリカメジャーリーグオールスターに対して、日韓合同チームが守りきれば、優勝が決まります!!」
「それでは、もう一度スターティングメンバーをご紹介しましょう!」
「9番ライト、防弾少年の異名をとる守備の天才イ・ウォンイク!!」
「3番ファースト、通称ホームランランチャーのパワープレイヤー、大道寺ヨシヲ!!」
「2番キャッチャー、二つ名はマネーボール!頭脳派バッテリー、安藤夏博!!!」
「そして、全てはマウンド上のこの男にかかっています!!
甲子園予選に流星のようにあらわれ、そのままどこかへ行っちゃって、忍者として、伊賀忍者と織田信長と豊臣秀吉と戦い、撃破した、天才的ピッチャー・・・
球種大図鑑の風間カイトに・・・!」
渾身の一球を投げるカイト。

おしまい

『風と翼:RESET』脚本⑨

大道寺「なんだって!!?」
秀吉「そいつは学者やってるオイラの兄貴の秀長だよ。」
豊臣「秀吉、お前の真似するのも疲れたよ~」
ピコハンで秀長を叩く。
秀吉「うるせえ、ばかやろう、全然似てなかったぞ」

カイト「なんで、こんなことを・・・」
秀吉「言っただろう?日本をよくするためさ。
確かに、オイラの会社が経済界を天下統一してから物価が上がっちまったが、それもこれもあそこにいる政府の連中の圧力があって、泣く泣くしたんだ。」
天守閣から出てくる石田総理「そ・・・それは・・・
一斉に物価をディスカウントしたら、デフレスパイラルになるって、竹中が・・・」
大谷官房長官「総理!生中継されています。
発言にはくれぐれも気をつけて・・・!」

秀吉「だからそのお詫びに、オイラは石川五右衛門として、みんなに現金を給付したんだよ。おかげで、景気はそこまで悪くならなかっただろ。
つまり、豊臣秀吉になっちまってからできなったことを、あんちゃんたちにやってもらったのさ・・・」
秀長「偉くなっちゃうと、しがらみが多くて、なにかと不自由なんだよ。」
秀吉「お前が言うな、このやろう!
・・・とにかく、日本のガンはあそこにいる政治家と官僚どもだ。
オレたちの税金で、ノーパンホルモンとかいう、よくわからねえ天下り機関ばっか作りやがって、挙げ句の果てに消費税を1000%に上げようとしているんだよ。」
石田総理「その法案はまだオフレコのはずじゃ・・・!」
大谷官房長官「お前は黙ってろ!!」

秀吉「こんな政府は国民にとって害悪でしかない。
そろそろ議院内閣制というシステム自体廃止したほうがいいと思うぜ。」
観客が歓声を上げる。
「そーだそーだ!秀吉が正しい!!!」
石田総理「そ、そんな・・・」
秀吉「・・・これからは国会や内閣に変わって我が木下財団、いや、社名あらため株式会社SDGsが、この日本国を経営する!
賛成してくれる人はリモコンのDボタンで投票してくれ。
抽選で1万名の方に、この銀の延べ棒プレゼント!」

秀吉支持率が99%を超える。
インカムの安藤「すごい!ほぼ100%の国民が秀吉を支持しています!」

秀吉「はい、というわけで結果が出ました!日本政府は廃止!石田内閣は全員贈収賄で逮捕!」
控えていた警察に捕まる政治家たち。
小声で石田総理に囁く秀吉「国民の政治不信をここまで下げてくれてありがとな。
助かったぜ。すぐに出してやるからよ。」
石田総理「殿のためなら。」

カイトに近寄る秀吉。
「言っただろ?日本を盗むって。」
カイト「まさか本当にやるなんて・・・」
「これで、オイラは立法、行政、司法、財界すべてを手に入れた。
どうする、二代目五右衛門。
自分が正しいと思うことを、誰にも邪魔させずにやれるんだ。」
カイト「・・・ど・・・どうしよう・・・」
サラ「好きな日本が作れるのよね?」
秀吉「うん。」
すると、カメラの前にサラが飛び出す。
サラ「性別で差別をしないで欲しい!」
カイト「え?」
サラ「私は、女子というだけで野球選手の夢を諦めた・・・
女子部員=マネージャーという価値観はなくして欲しい!
・・・そして、私はこの中の誰よりも野球がうまい!!」
カイト「サラちゃん・・・」
振り返るサラ「ほら、みんなも!今のうちなら新しい日本が作れるよ!
言いたいこと言いな!」
大道寺「人を見た目で判断するな!おれは不良じゃねえ!
そもそも学校は休まず皆勤賞だ!」
インカムの安藤「ぼ・・・ぼくも、オタクをいじめないでほしいです!」
ウォンイク「在日韓国人差別も問題だねえ・・・」
カイト「あれ?韓国といえば、秀吉さんはなんで朝鮮出兵を・・・?
ホテルでは許せねえとか言ってたのに・・・」

秀吉「へっへっへ・・・君らは青いねえ。まったく青い!
日本を手に入れて最初にやるのが、青少年の主張ってかい。
この国の差別がそう簡単になくなるわけねえじゃねえか。
貧乏で、指に障害があったオイラを人間扱いしてくれたのは先代の信長さんと、イ・スンシン会長だけだったよ。
この国を根本から変えるには、荒療治しかねえ。すなわち、もう一度戦後の焼け野原に戻して、みんな平等に貧しくするのさ。そうすりゃ少しは助け合うだろ。」
そう言って、マルチビジョンのリモコンを操作する秀吉。

天守閣が変形してミサイルの発射台が現れる。
その様子をマルチビジョンに映し出す。

秀吉「朝鮮出兵で反日ムーブが高まったおかげで、日本を懲らしめる兵器の開発資金はあっという間に集まったぜ」
サラ「テポドン!!??」
秀吉「そんな物騒なもんじゃないよ。オイラは殺しが嫌いだからな。
あれこそ、韓国のイ・スンシン会長の全面協力のもと、秀長が開発した、究極エコな最終兵器、人呼んで“持続可能爆弾ISO14001”だ・・・!」
サラ「エコ爆弾・・!?いろいろ矛盾したワードのような・・・」

秀長「あの爆弾は、すべての人工物を天然素材に戻す原子分解爆弾なんだよ。
人体への影響も一切なし。まあ、洋服が人工物なんで分解されちゃうから、みんなフルチンになっちゃうけど」
秀吉「そりゃ受けるな。
おい、秀長、とりあえずどんな威力か、エコが大好きなEUに落としてみようぜ。
デモンストレーションだ。」
秀長「いってみよう、やってみよう」
ルイス・フロイスEU大使「やめるんだ、ミスター秀吉!」
ピコハンで叩く秀吉「うるせえ、お前ら、そんなに自然が好きなら原始時代に戻りやがれ!」
欧州に発射されるISO14001。
ドイツの文明は崩壊し、美しい緑の魔境に戻ってしまう。
秀長「成功だ!」

各国の首脳が慌てて秀吉に膝まづく。
ヘンリー・ハドソン大統領「す・・・素晴らしい兵器だ!ぜひ我がアメリカ合衆国に譲ってくれ!」
万暦国家主席「通商条約を拒んで悪かった!ぜひ、我が明国と取引しましょう!」
秀吉「じゃあ、なかよく1個ずつな。
・・・て、ことで、オイラはこんな日本からは、おさらばするぜ。
せいぜい、国民の皆さんでもう一度日本史をやり直してくれよな。
秀長、発射だ!目標は東京だな、とりあえず首都圏を湿地帯にしとくか。」
秀長「ポチッとな。」
カイトに振り向く秀吉「あんちゃん、これがオイラからの最後の挑戦状だ。
あのミサイルをどうするか、決めさせてやる。」
SPに囲まれて、天守閣から立ち去る秀吉。

カイト「行っちゃった・・・」
マルチビジョンを指差す翼「は・・・早くあのミサイルを止めないと・・・!」
カイト「いや、これは止めるべきなのか・・・?」
翼「・・・え?」
カイト「あのミサイルで社会を一度リセットすれば、この国は本当に生まれ変わるのかも・・・」
翼「本気ですか・・・?」
カイト「だって・・・」
叫ぶ翼「私は、街の図書館で静かに本を読みたい!それが私が望むささやかな幸せなの!別に森の中で動物たちと暮らしたくはない・・・!」
カイト「・・・翼さん・・・」
翼「そして、私は球場で活躍するカイトさんを見たいの・・・!!!」
カイト「・・・!」
ウォンイク「・・・そうだね。日本は間違っていることもあるけど、滅ぼすまでじゃない。
理不尽ないじめから弱い者を守ってくれる君のような人間もいるじゃないか。」
サラ「カイト君、秀吉は極端なのよ。今なら間に合う!」
ラップトップを開く安藤「ミサイルの巡航システムにハッキングします!日本を救いましょう!」
大道寺「あんなミサイル、打ち返そうぜカイト!ああん!!??」
カイト「打ち返す・・・か・・・!」

『風と翼:RESET』脚本⑧

天守閣
玉座から立ち上がる豊臣「これでファイナルステージの顔ぶれが揃ったか・・・」
ギャンブルに買って大はしゃぎする石田総理「やった!152倍配当だぞ・・・!」
大谷官房長官「やめてください、これも放送されていたらどうするんですか。」
悔しがる各国の代表たち。

片桐「選ばれし挑戦者の皆さん!IR大阪天守閣にようこそ!!
いよいよファイナルステージとなります!
このゲームの勝者が、豊臣秀吉の財宝200兆円相当を獲得できるのです!
最後のゲームは“ウォール・オブ・フリーダム”!
3つのドアのうち好きな一つを選んで入ってください!
1つだけが財宝への金庫につながっております!
大道寺「最後は運ゲーかよ!!」

片桐「ドアを決めるのは先着順です!」
五右衛門「なんだって!?じゃあオイラはここだ!」
真ん中のドアを選ぶ五右衛門。
サラ「あっずるい!」
大道寺「じいさん、スタッフに正解のドアを教えてもらってんじゃねえか?」
片桐「ほかの方はどうしますか?」

サラ「こういうのって心理学的な傾向ってあるの?」
ウォンイク「左を選ぶ人が多いって言うけどね・・・」
翼「では、裏をかいて正解は右なんでしょうか・・・?」
サラ「どうするカイトくん?」
カイト「う~ん・・・」
プラナス「私は左にするわ・・・」
サラ「とられちゃったよ!」
片桐「プラナスさんが左、旧五右衛門さんが真ん中、新五右衛門チームが右となりました!
では、最初にドアを選んだ真ん中から入ってもらいましょう!」

五右衛門「それじゃあ、ちょっくら行ってくるわ。」
大道寺「あの緊張感のなさ・・・絶対にヤラセだぜ!」
サラ「じじい~!」
五右衛門「貧乏人のみなさんごきげんよう」
五右衛門がドアを開けると、その先は熱湯風呂になっており、頭から落ちてしまう。
あわてて熱湯風呂から脱出し、氷水をかける五右衛門。
翼「でも外しましたよ!」

片桐「初代五右衛門さん失格です!
ここで追加ルールです!ドアを選びなおすことができます!
どうしますか?」
サラ「なんですって?」
大道寺「意味あるのか?」
安藤「これはモンティ・ホール問題だ。」
サラ「なにそれ。」
安藤「確率論的には、最初の選択は1/3ですが、今度は2/3になるので、選び直したほうが勝率が上がるという研究があって・・・」
翼「で・・・でも、向こうとまったく同じ立場なのに、確率は上がるんですか?」
プラナス「面白いわね・・・私はあなたたちの好きでいい・・・」
ウォンイク「何度も試行するならともかく、一発勝負だし、1/3も確率としてはけっこう高いからね・・・」

ドアに近づくカイト「・・・・・・」
何かに気づく。
翼「カイトさん・・・?」
カイト「みんな・・・ぼくは右で行こうと思う・・・」
サラ「なんで!?」
カイト「理由は言えないけど・・・ぼくを信じて欲しい」
ウォンイク「まあ、もともと運否天賦のゲームだ。好きにしたまえ。」
大道寺「最後は直感・・・いいじゃねえか、俺達らしくて」
サラ「ちょっと待ってよ!200兆円がかかってるのよ・・・!?」
安藤「確率が高い方を選ぶべきじゃ・・・」
大道寺「好きな男の言うことを信じろよ」
サラ「あんた・・・まあ、いいわ、わかった。カイトくんを信じる」
カイト「翼さんもいい?」
微笑む翼「・・・私も右だと思います。」
片桐「それでは運命の瞬間です!二つのドアを同時にオープンします!」

カウントダウンが始まる。
「3」
「2」
「1・・・!」
「オープン!!!」
すると左のドアから本多忠勝が現れる。
「アイルビーバック!・・・ん?」
見ると、プラナスは姿を消していた。

サラ「・・・ということは!!??」
片桐「コングラッチュレイションズ!!!
豊臣秀吉の財宝は新五右衛門チームの獲得です!!」
サラ「やったーーー!!」
翼「ドアの前でかすかにリングが鳴ってたんですね・・・」
カイト「うん・・・」

扉の奥には数え切れないほどの銀のインゴットが並んでいる。
片桐「それでは、ご紹介いたしましょう!
木下財団の総帥、経団連の終身会長であり、この大阪城の城主であられる大殿、豊臣社長です!!」
門が開いて、200兆円の小切手を持った豊臣が現れる。
片桐「豊臣社長から賞金の授与です!」
豊臣「くそ~!石川五右衛門め!オイラの完敗だ!まいった!
あんたは偉い!世のため人のために200兆円を使ってくれ。」
サラ「ついにやったね、カイトくん・・・!」
カイト「う・・・うん・・・」
うちわを仰いでいる五右衛門「あんちゃんはえらい!」

カイト「・・・国家予算並みのお金を、ずいぶんあっさり泥棒に渡しちゃうんですね・・・
秀吉さん・・・」
豊臣「オレはフェアな人間だからね」
豊臣の横を通り過ぎ、五右衛門にもう一度尋ねる翼。
カイト「そうでしょうか・・・自分から自分にお金を渡すなら、それこそ全財産だって関係ない・・・」
大道寺「カイトは何を言ってるんだ??」
慌てる片桐「そ、それでは、優勝は石川五右衛門チームということで番組は終了です!ありがとうございました~!」
五右衛門「・・・もういいよ片桐。
あんちゃんは全部お見通しのようだ。」
片桐「殿・・・」
五右衛門「そのとおり。オイラが豊臣秀吉だ。」

『風と翼:RESET』脚本⑦

IR大阪最上階
片桐「ステージ4にやってまいりました!
残るチームはとうとうたったの3チーム!
フランス代表、怪盗ルポン!」
ルポン「コマンドール!」
片桐「風間カイトくん率いる神奈川代表石川五右衛門チーム!」
ぼろぼろのカイト達。
サラ「マジでサラ・コナークロニクルだった・・・」
片桐「最後に・・・!
初代石川五右衛門・・・!」
五右衛門「からくり道中!」
カイト「・・・って参加してたんですか!!???」
五右衛門「うん♪驚いたろ、へへっ」

片桐「これは世紀の映像になりました!初代五右衛門と二代目五右衛門がついに共演!」
翼「あなたが有名な石川五右衛門さんですか・・・」
五右衛門「嬢ちゃん、百地んとこの娘だろう?赤ん坊の時に実は会ってるんだよ。
覚えてねえだろうなあ。」
サラ「あんたが出場するなら、私たちに頼む必要はなかったじゃないの!」
ウォンイク「しかし、あのステージをあなたが全てクリアしたとは・・・」
大道寺「インチキしたんじゃねえか?」
五右衛門「な・・・何を言う!冗談じゃあないよ」

片桐「それでは、ステージ4は“ブレイブマン・ストレイト”です!
ビルの屋上と屋上にかけられた不安定な橋を渡って、向こう側の天守閣に到達できればクリア!財宝の獲得に挑戦できる最終ステージに進むことができます!」
大道寺「じゃあ、じいさん最初にやってみろ。」
五右衛門「バカヤロウ、星になっちまうよ」
?「もう1人いる・・・」
片桐「なんと、失礼しました!謎の仮面プラナスさんもステージ4進出です!」
翼「・・・!あなたは・・・」
カイト「翼さんを襲った殺し屋だ・・・!」

プラナスは躊躇なく、不安定な橋をかけ渡る。
プラナスに向けて、砲弾が次々に発射されるが、人間離れした身のこなしで全てかわしていく。
唖然とする一同。

片桐「プラナスさん、ファイナルステージ進出!!」
ルポン「私は辞退させていただく。こんなバカバカしいことで人生を終わらせたくはないね。ジュテーム。」
プラナス「あなたたちはどうするの?忍者さんたち・・・」
カイト「あの人の攻略で発射タイミングはだいたいわかった・・・」
翼「いけそうですか・・・?」
カイト「多分。」
サラ「ちょ、ちょっと正気!?あんなのできっこないわよ!」
カイト「殺し屋ができて、プロの忍者ができないことはない・・・」
サラ「死んじゃうって!」
カイト「だいじょうぶ、足の速さには自信がある。一気に駆け抜けちゃうよ」

片桐「それでは、新五右衛門チームの挑戦です!いけー!」
プラナスを超える足の速さで橋を駆けていくカイト。
片桐「すごい速さで橋を駆けていきます!!」
カイトに向けて砲弾が発射される。
カイトは最初の砲弾をジャンプしてかわすが、次の砲台がカイトのジャンプを見越して砲弾を撃ち込む。
ウォンイク「いけない、さっきとタイミングが違う!」
安藤「砲台に人工知能が搭載されているんだ・・・!」
空中のカイトの腕に砲弾が当たる。
カイト「ぐっ!」
翼「カイトさん・・・!」
バランスを崩し、橋から落ちかけるカイト。
青ざめるサラ。
その時、対岸のプラナスがとっさにカイトに手を伸ばし、引き上げる。
カイト「・・・!」

片桐「プラナスさんのサポートで、新五右衛門チームもなんとかクリアです!」
翼「助けてくれた・・・?」
プラナス「腕は大丈夫・・・?」
カイト「な・・・なんで・・・」
プラナス「あなたはプロの忍者じゃないから。」
カイト「え・・・」
プラナス「悪いことは言わない。真剣に進路を考えることね・・・」
カイト「ぼくは・・・!」
プラナス「次に忍者の真似事をしたら・・・」
カイト「・・・・・・。」
プラナス「・・・殺す。」

翼たちが駆け寄る。
「カイトさん!」
サラ「カイトくん!?大丈夫・・・?」
カイト「あ・・・ああ・・・」
翼「ありがとうございます・・・」
プラナス「・・・あなたなら助けなかった。」

片桐「・・・で、どうしますか?初代五右衛門さん。挑戦しますか?」
五右衛門「ん?うん」
片桐「最後に、伝説の義賊初代石川五右衛門さんの挑戦です!」
五右衛門「じゃあ、マイルドモードで」
片桐「スタッフの皆さん、マイルドモードでお願いします!」
そう言うと、橋に手すりができ、橋のすぐ下には防護ネット、砲台は撤去される。
サラ「あ!ずる!!」
難なく橋を渡る五右衛門「いや~手に汗握るスリルと冒険だった!」
片桐「おめでとうございます!」
五右衛門を見るカイト「もしかして、あの人・・・」
頷く翼「あの人も忍者ですから・・・」
カイト「信用してはいけない・・・」
翼「はい・・・」
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