『アリス・イン・ワンダーランド』の脚本⑨

「最終章 プロモーション」

赤の女王の玉座にやってくるアリス
赤の女王「これで役者がそろったわね・・・はじめましてアリス・・・あなたの武勇伝はいろいろ聞いているわ・・・」
アリス「すぐに白の王国から出ていきなさい!下ではあなたの軍隊はもうぼろぼろよ!」
赤の女王「いいのよ、兵隊なんてどうなっても・・・このゲームで重要なのは王をとること。そして私は王を取った」
力なく笑う白の女王
アリス「まだ私が残っているわ・・・!」
赤の女王「なんですって?」
玉座に姿を現すチェシャ猫「くっくっく・・・そうだな・・・あんたもこれで女王だなあ・・・」
赤の女王「どういうこと?」
にやつくチェシャ猫「知らないのか?女王の位置にまでたどり着いた歩兵は好きな駒になれるのさ」
アリスの頭上に大きな王冠がかぶさる。
チェシャ猫「これであんたはこの世界の王だ・・・さあどうする!?いっとくがこのゲーム引き分けはないぜ?どっちかを勝たせなければ終らねえ・・・」
アリス「そうなの?」
チェシャ猫「さあ選ぶがいい・・・“停滞”の白か・・・“変革”の赤か・・・それによって世界は変わる・・・」
白の女王「アリス・・・お姉ちゃんはいいのよ。別に自分の人生がどうなっても・・・あなたの好きなように決めなさい・・・結婚だけがすべてじゃないわ・・・」
アリス「え・・・ロリーナ姉さん??」
赤の女王「姉さんったらなにをいっているのかしら?この国は変わりつつあるの。良家の女はロンドンの実業家と結婚するしか生きる道がないんだから・・・そんなこと十分わかっているわよね?アリスお姉ちゃん?」
アリス「イーディス・・・???」
頭を抱えるアリス
チェシャ猫「さあ・・・あんたが決断しないと、戦争は永遠に繰り返されるぜ・・・?」
アリス「うるさい!!・・・キャタピラー先生は言った・・・あたしがこの世界の王になれば・・・この世界を私以外の人にも見せることができると・・・それって一体どういうこと・・・ああああ・・・思いつかないわ」
チェシャ猫「さあ!」
赤の女王「さあ!」
白の女王「さあ!」
白の騎士「アリス・・・!」
アリス「白の騎士さん・・・私にはもう分からない・・!なにを決めればいいの・・・!?なんで私は“それ”を決めなければいけないの??」
白の騎士「考えるんだ・・・!答えがない問いは裏をかえせばどんな答えも正解なんだ!」
アリス「え・・・!?」
兜を脱ぐ白の騎士。白の騎士はレオポルドそっくりだった
白の騎士「きみにはわかっているはずだ・・・!自分が何をすべきかを・・!アリス・・・!」
アリス「・・・そうか・・・解った・・・そうよ・・・この問いの答えは・・・!!」
(アリス・・・アリス・・・!)

レオポルド「アリス!アリス!」
クローゼットの部屋の全身鏡の裏で眠っているアリス
アリス「ん・・・ん~ん・・・」
パパ「よかった!目が覚めたかい?心配したんだよ?」
ホームズ「ん~ふっふ・・・御覧の通りでしょう?」
ママ「どういうことでしょうか?」
ホームズ「簡単なことです。彼女はあなた方家族にないがしろにされていると思った。そこでわざと隠れ姿を消すことによって、自分が家族の中でどれだけ重要視されているかを確認したかったわけです。
つまり彼女は最初から家出などする気はないわけで、いるとしたら屋敷の中になります。この時期日が暮れると冷えますからね。まあ、ずっと隠れ続けることは不可能ですから、お腹が減るのを待っても良かったのですが・・・」
レオポルドを見つめるアリス「白の騎士さん・・・?」
レオポルド「え??」
イーディス「幸せな奴・・・まだ寝ぼけてる。」
ママ「アリス!ごめんなさい・・・あなたの心をどれだけ傷つけているか母さん分からなかった・・・馬鹿だったわ・・・!」
アリス「いいのよ、ママ・・・私も心配させてごめんなさい・・・」
レオポルド「とにかく本当に良かった・・・!」
アリス「レオポルドさん・・・私にも解ったの・・・カラスと書きもの机の似ているところ。」
一同「??」
レオポルド「・・・なんだい?」
アリス「・・・それはどちらも“羽があれば自由になれる”・・・!!
・・・私・・・将来についてなにをすべきかわかったわ・・・」
微笑むレオポルド。

書斎
羽ペンをはしらすアリス。

数年後。リデル邸。黄金の昼下がり。
純白のウェディングドレスに身を包んだ美女が幸せそうにブーケを持っている。
「おめでと~!」
受付「結婚式に参列する方は、こちらに御記帳願います。」
花の入ったかごを持つ少年「兄ちゃん、今日結婚する人って誰だけ?」
少年の兄「お前白ウサギやドードーを知らないのか?あの『不思議の国のアリス』を書いた女流作家・・・アリス・プレザンス・リデルさんだよ!」

『アリス・イン・ワンダーランド』の脚本⑧

「第八章 キャッスリング」

アリスを問い詰める赤の騎士「言え!さもなければ、お前ののどを掻っ切る!」
アリスを見つける白の騎士。交戦中の兵士を倒し、アリスの方に近づいてくる「アリス!」
アリス「来ちゃダメ!!」
赤の騎士「ほ~う・・・あの男のようだな・・・お前ら!ジャバウォックなど相手にするな!あの男を殺せ!八つ裂きにするのだ!!やれ!」
赤の兵士「はは!!」
アリス「やめて~!!」
帽子屋「赤の騎士殿!女王陛下から伝令が届いております!白の女王退位!」
赤の騎士「なに!?」
帽子屋「それと・・・お茶の時間です!」
ポットに入った熱いお茶をかける帽子屋
赤の騎士「ぎゃあああああああ!」
赤の騎士を振りほどき駆けだすアリス「ありがとう!」
帽子屋「いっぺんこいつにやってみたかったんだ。」

白の騎士に集中して向かってくる赤の兵士
ユニコーン「旦那やばいぜ!」
白の騎士「これまでか・・・!」
赤の兵士が白の兵士に吹っ飛ばされる。

マウス「まちやがれ!」
急停止する赤の兵士
振り返ると、不思議の国と白の王国の住人が武装して並んでいる。
アリス「みんな・・・」
マウス「今こそ団結し不思議の国を守る時・・・!!俺たちで俺たちの戦いを終わらせよう!そして・・・勝利するのだ~!!」
赤の兵に突撃してくる動物たちと白の軍団
笑いながら跳ねまわり兵士たちに蹴りを入れる三月ウサギ
足にかみつくマウス
疾走する鳥たちは、兵士たちを踏みつけていく
トランプ兵は槍で赤の兵士をひっくりかえす

二転三転する状況を楽しんでいるチェシャ猫「なるほど・・・」

赤の騎士「く!ひるむな!かえりうちにしろ!」
赤の兵士「しかし、これで敵の数は我々を大きく上回りました!撤退すべきでは!」
赤の騎士「騎士は退かぬ!!みておれ・・・」

白ウサギ「無事でよかった・・・アリス」
アリス「グッドタイミングだったわ・・・ありがとう・・・」
白の騎士「ウサギくん、勲章ものだぞ!」
白ウサギ「ぼくは臆病でひとりでは戦えないけど・・・みんなとなら・・・」
アリス「ええ・・・闘いましょう・・・!」
白の騎士「女王陛下を助けなければ・・・!」
アリス「でもどうやって上に・・・!」
グリフォン「よう、こっちはなんとかなりそうだぜ・・・」
アリス「ねえあなた・・・!飛べる?」

飛行船に連行される白の女王「・・・お久しぶりね・・・」
赤の女王「勝負はついたわ。これで私の勝ち。あなたの国もこれで“豊か”になるわ・・・」
微笑む白の女王「あのすすと埃だらけの汚い都市が豊かなわけね。」
赤の女王「まあそういうこと。変化は避けられないのよ・・・」
白の女王「いいでしょう・・・これも運命です・・・お好きになさい」
赤の女王「その態度が腹立つのよ・・・!なぜお前は感情が無い!?」
白の女王「さあ・・・全てをあきらめ続けてしまったからかしら・・・?あなたは変化を好み、私は変化がない・・・「変化がない」ということはつまりは「何もない」ことと同じだもの。」
赤の女王「我が姉とは言え哀しい女・・・」
微笑む白の女王「ありがとう・・・こんなつまらない人間の相手をしてくれて。」

アリスと白の騎士を乗せて羽ばたくグリフォン「まったくこれでも俺は大卒なんだぜ?」
アリス「あの飛行船に向かって!」
グリフォン「アイアイサー!キャプテン。」
赤の騎士「待て~!!!」
アリス「あいつまだ追ってくるわ!!」
振り返ると赤の騎士がジャブジャブ鳥に乗ってこちらに飛んでくる。
アリス「グリフォンさん急いで!!」
グリフォン「おいおい冗談じゃねえぞ!!これじゃあスピードが落とせねえ!飛行船にできるだけ近づくから飛び移ってくれ!」
アリス「ええええ!?」
アリスのすぐ横を銃弾がかすめる
ジャブジャブ鳥の上の赤の騎士がマケット銃で銃撃している
グリフォン「まじかよ、あいつ!!いかれてるんじゃねえか!」
グリフォンは旋回し銃弾をよける。
銃弾は雲のようにもくもくと立ち上った煙に当たる。
赤の騎士「ちょこまかと・・・!!」

銃撃されるグリフォン「いて!羽根に当たった!」
白の騎士「大丈夫か!!」
グリフォン「あのペリカン野郎・・・ゆるせねえ!」
ジャブジャブ鳥の方に引き返すグリフォン
ジャブジャブ鳥とすれ違う刹那、ジャブジャブ鳥の顔をひっ掻くグリフォン
ジャブジャブ鳥はひるんでコントロールを失う
赤の騎士からヴォーパルの剣を盗むグリフォン「へっへ~いいもん頂き~おっさん銃に頼り過ぎだよ。」
赤の騎士「おのれえええ!!」

飛行船に急接近するグリフォン「いいか!うまい具合に飛んでくれよ!」
アリス「怖いわ・・・」
白の騎士「大丈夫、きみならできる・・・!」
アリス「一緒に飛んでくれないの?」
白の騎士「私はこの怪獣と共に赤の騎士の相手をせねばならん。さあいくんだ!」
飛行船の開きっぱなしの搬入口に近づいた瞬間、飛行船に飛び移るアリス
飛行船の床にぶつかり、転がるがパイプを掴んで、落下を防ぐ

白の騎士「見事!!」
銃に弾を込める赤の騎士「まだ終わってない!」
ヴォ―パルの剣を構える白の騎士「その通りだ!物語はまだ始まったばかりだ!」

飛行船に乗り込むアリス
船員「きさま!どこから入った!!」
アリス「私の名前はアリスよ!女王に会わせなさい!!」
船員「う・・・」

『アリス・イン・ワンダーランド』の脚本⑦

「第七章 チェックメイト」

空に巨大な飛行船が浮いている。
アリス「なんなのあれ!?」
白の騎士「最新鋭の蒸気式飛行船だ・・・!あんなものを隠れて開発していたのか!あいつら、あれに乗って直接白の女王の玉座を襲うつもりだ・・・!!」

赤の女王の飛行船
船員「先遣隊はジャバウォックに押されています・・・!陛下どうしますか!?」
赤の女王「ほうっておきなさい。あの怪物の気をそらしているのなら、捨て駒としては十分よ。さあ遊びはここまで。「あれ」を投入しなさい」

白の騎士「空に浮かれちゃ打つ手なしだ・・・!」
アリス「見て!」
地平線から赤の兵士を乗せた見たこともない怪物の群れが猛進してくる。
アリス「こっちに突っ込んでくる・・・!」
白の騎士「物陰に隠れるんだ!」
アリス「なんなのあれ・・・!」
ユニコーン「動物園でおなじみのバンダ―スナッチだよ!」
アリス「一角獣さん!」
ユニコーン「きみをずっと探してたんだよ。ここにいたとはな」
ライオン「ずいぶん盛り上がってるじゃないか。いっちょやったるか!」
ユニコーン「おうよ!騎士殿、乗るかい?」
ユニコーンにまたがる白の騎士「かたじけない!いくぞ!」
剣を高らかに挙げ、バンダ―スナッチの群れに突っ込んでいくライオンと白の騎士。
白の王国の柵をぶち壊し、突っ込んでくるバンダ―スナッチ。
分の悪い騎馬戦が始まる。
ジャバウォックはバンダ―スナッチを咥えあげほうりなげるが、数が多く、敵に足をつつかれ唸る。
アリス「だめ・・・いくらなんでも数が足りない・・・!」
アリスの背後で物音がする。
傷だらけの赤の騎士「やあ、アリス・・・殺してやる・・・」

不思議の国のアリス邸には国を捨てた白の王国の国民が多数押しかけ、玄関で不思議の国の住人と白の国民が言い合いをしている
マウス「おいおい・・・ここは我々の最後の砦だぞ・・・!」
ドードー「諸君らの行為は不法である・・・裁判所からの書類を見せたまえ。」
モックタートル「そうよ・・・出てってちょうだい!」
グリフォン「さあ帰った帰った!この屋敷はあんたら全てを泊められるほど広くはねえ!」
白の国民「まだいくつも部屋が空いているじゃないか!俺たち難民はどうなってもいいってのか!」
白の国民「大体こういう家は人間が住むものよ!あなたたち動物は外にいきなさい!」
マウス「なんだと・・・!おいトランプ軍曹!彼らを丁重に送り返せ!」
トランプ兵「イエッサー!失礼します!」
白の国民を押しのけるトランプ兵たち
国民「ずいぶん乱暴じゃないか!!」
わいわい揉め出す
マウス「いてて足で踏むな!」

屋敷にかけてくる白ウサギ「はあはあ・・・一体全体なんだこりゃ・・・!」
マウス「あ!白ウサギ!そっちはどうなった!?」
白ウサギ「きみらは一体何をやっているんだ・・・アリスが今大変なことになっていると言うのに・・・!」
モックタートル「この人たちがわたしたちを屋敷から追い出そうとするのよ!」
白の国民「動物は出ていけ~!!」
マウス「トランプ兵!もうぶってもいいから!追い払え!」

キャタピラー「あんたたちいい加減にしなさい!!!」
大声に驚き、静かになる玄関。
キャタピラー「白ウサギちゃん・・・詳しく話してちょうだい・・・」
白ウサギ「赤の軍隊が今白の王国に総攻撃を仕掛けています・・・!白の王国にはアリスがたった一人残って白の女王様を守ろうと・・・!」
キャタピラー「・・・あなたたち聞いた?
自分たちは国を捨ててこんなところでつまらない争いをして、白の女王を守っているのはたった一人の少女だけ?まったく笑わせないで頂戴・・・あんたたちの国でしょうが。」
白の国民「・・・・・・。」
マウス「そうだ!とっとと自分の国に帰りやがれ!」
キャタピラー「私たちも同じ!」
マウス「う・・・」
キャタピラー「アリスだけにこの戦争を押し付けて何とかしようとしている点はね・・・さて、この中で今から何をすればいいか分かる者はいるかしら?」
おびえる一同「・・・・・・。」
ため息をつくキャタピラー「は~・・・」
白ウサギ「みなさん、アリスの力になってやってください・・・!ぼくらに加勢してください!」
小鹿「ぼく・・・闘う!」
白ウサギ「ありがとう・・・!」
小鹿「ぼくは勇敢な馬だ!ウマは勇敢な騎士を乗せて戦場で戦う・・・!」
キャタピラー「情けないわね・・・こんなにたくさんの人間と動物がいて立ち上がるのは、こんな可愛い小鹿ちゃんだけ?」
小鹿「え?ぼく小鹿なの?」
白ウサギ「い・・・いや・・・う、馬だよ。」
マウス「小鹿が戦うんじゃ俺たちが戦わねえわけにはいかねえな・・・」
小鹿「ええええ!?」
マウス「みんな!ここはいっちょアリスの為・・・いや、この世界の為に赤の女王に一発くらわせてやろうぜ!」
一同「オー!!!」

炎が上がる白の王国
多勢に無勢で、膨大な兵力に押されていく白の騎士、ユニコーン、ライオン。
ライオン「はあはあ・・・くそ!倒しても倒してもきりがねえ!」
ライオンの背後の兵士を蹴とばすユニコーン「あぶない!うかつだぞ!」
ライオン「すまねえ・・・」
白の騎士「・・・アリスはどこだ!?」

赤の騎士から逃げ出すアリス「はあはあ・・・」
赤の騎士「くくく・・・待ちな、かわいいアリス・・・」
オールドシープショップの中に隠れるアリス。
赤の騎士「どこに隠れたのかな~?アリス・・・」
棚をひっかき回すアリス「ケーキ・・・どこかにケーキがあるはず・・・」
店内に入ってくる赤の騎士
ケーキを見つけるアリス、ケーキをつかみ口に入れようとした刹那、腕をつかまれる
赤の騎士「・・・みつけた。」

店から引きずり出されるアリス「くっつ・・・離して!」
赤の騎士「ただお前を殺すのでは私の気はすまない・・・お前が最も愛するものをお前の眼の前で殺してやろう・・・さあ、誰がいい?お前は誰を愛している・・・??」
目をそらすアリス「・・・・・・。」

白の王宮最上階
眼下に広がる戦の様子を悲しげに見つめる白の女王「・・・・・・。」
白の王宮に赤の女王の飛行船の銛が突き刺さる。最上階にもやわれる飛行船。
白の女王の間に赤の兵士が突入してくる
白の女王「・・・ついに来たのね・・・」

飛行船の赤の女王「・・・チェックメイト。」

『アリス・イン・ワンダーランド』の脚本⑥

「第六章 約束」

白の王宮最上階
女王の間で一人座っている白の女王。
窓からの月明かりで照らされた白の女王はロングヘアーの美人でいつも哀しげな微笑みをしている。
こんこんと窓ガラスをたたく音がする。まどを開けるとアリスの巨大な顔がある。
微笑む白の女王「あら・・・これはまたとても大きなお嬢さんね・・・こんばんは」
アリス「はじめまして・・・窓から失礼します・・・」
白の女王「あなたはだあれ?」
アリス「アリスと言います。白の騎士さんがぜひ私をあなたに会わせたいと。」
白の女王「そう・・・こんな高いところにいてごめんなさいね・・・」
アリス「あの・・・女王様はそこにひとりぼっちでいてさみしくないんですか?」
白の女王「え・・・?」
アリス「そこだと誰もあなたに会えないし・・・おしゃべりもできないじゃないですか。」
白の女王「たしかにあなたの言う通りね・・・でも私は大丈夫。女王が敵国にやられるわけにはいきません・・・王国の為にも世界が果てるまで、ここで暮らし続けるつもり。」
アリス「そんな人生私には耐えられない・・・」
困った顔で微笑む白の女王「私はこの国の女王だから・・・仕方がないのよ。」
アリス「下に降りて戦争を終わらせようとはしないの?」
白の女王「私は争い事は嫌い・・・それに・・・私は臆病だから・・・」
アリス「でも・・・」
白の女王「アリス・・・あなたは勇敢だわ。白の騎士がわたしに合わせようとしたのも解ります。彼はわが国で唯一にして最も勇敢な兵士・・・彼は貴方のような戦士を求めていたのかもしれないわ。」
アリス「ええ。白の騎士さんは勇敢よ。ちょっと間抜けだけど、これじゃダメなんだって一生懸命頑張っている。だからあなたも・・・あなたの国のことはやっぱりあなたが何とかしなければいけないんじゃないの?」
白の女王「ええそうね・・・でも今はまだ動くべき時ではない・・・」
アリス「どうしてわかるの?」
白の女王「私が心から笑っていないからです・・・もし私が“喜び”を思い出せたならば・・・それは世界が平和を取り戻すことの前兆だわ」
アリス「??よくわからない」
白の女王「原因の後に結果が来るとは限らないの。時に因果律は逆転するのよ・・・だから私が偽りの微笑みをしている限り・・・世界は当分混沌としたままなの」
アリス「なんか落ち込んできちゃった・・・」
微笑む白の女王「気を悪くさせちゃったみたいね。ごめんなさい。」
アリス「一緒に戦ってくれない?」
白の女王「・・・今は力になれない・・・私は・・・臆病だから・・・」
背が縮んでいくアリス

元の大きさにもどる。城のふもとにいた白ウサギが駆け寄ってくる。
白ウサギ「どうだった!?アリス・・・」
首を振るアリス「だめ・・・頼りになりそうにないわ・・・あのひと・・・どことなく私のお姉さんに似てた・・・」
白ウサギ「そんな・・・白の王国がたちあがってくれないと、ぼくらの世界は赤の女王によってみんな平地にされてしまう・・・」
アリス「大丈夫。私が何とかする・・・」
白ウサギ「アリス…」

翌日。午前。晴れ。
アリス邸に馬車がやってくる
シャーロック・ホームズ「ここかいワトソンくん。」
馬車に駆け寄るパパ「いや~ようこそいらっしゃいました!」
馬車を降りるホームズ「え~あなたがヘンリー・リデルさん?んっふっふっふ・・・わたくしホームズ・・・私立探偵のシャーロック・ホームズと申します・・・え~こちらが助手で医者のワトソン先生。」
ワトソン「は、ワトソンです!」
ホームズ「えっへっへ・・・腰は低いんですが頼りにならない男でして・・・」
パパ「それではさっそく事の顛末の方を・・・」
ホームズ「え~結構です。馬車のなかで資料を読んで完全にインプットしました・・・さっそくですが昨日ガーデンパーティをやったという庭に案内していただけますでしょうか?」
パパ「はあ・・・こちらです・・・」
パパに耳打ちするレオポルド「ホームズ氏は少々変わりものなんです・・・」
パパ「はは・・・優秀な人はみんなそうだよ。」

白の王国の朝。
白の王国の国民はみんな荷物をまとめて、移動の準備をしている
アリス「なんでみんな引っ越しちゃうの?」
白ウサギ「どうやらここに赤の女王が攻めてくるらしくて、みんな逃げちゃうんだよ」
アリス「国を捨てちゃうの?白の女王様を置いて!?」
白ウサギ「うん・・・」
アリス「赤の軍隊もメチャクチャだけど、こっちも信じられないわね・・・あれ?白の騎士さんは?」
白ウサギ「それが・・・昨日の夜ハンプティ・ダンプティさんに詩を解説してもらった後、どこかにいっちゃって・・・」
アリス「またジャバウォックを倒しに行っちゃったのかしら?無茶しなきゃいいけど・・・」
白ウサギ「ぼくらはどうする・・・?」
アリス「私は逃げないわ・・・」

白の王国に進軍する赤の軍隊
赤の騎士「進め!いまこそ白の王国をねだやしにするのだ!!」
その様子を見つめるチェシャ猫「おもしろくなってきやがった・・・」

白ウサギ「ひいい・・・来た…!」
おびえる白ウサギをなでるアリス「大丈夫・・・・・・」
赤の騎士「カノン砲前に…!照準合わせ・・・放て!!」
白の王国が砲撃され爆発する
樹木で出来ているのであっという間に燃えてしまう建物
白の王国になだれ込んでくる赤の兵
赤の騎士「敵は!?」
兵士「誰もいません!みんな逃げだしたようです!」
赤の騎士「王宮に女王はいるはずだ!王宮を探せ!」
建物の陰に隠れているアリスと白ウサギ
白ウサギ「あああ・・・大変だ・・・!」
アリス「大丈夫・・・あの木はとっても高いの。一日やそこらでたどり着けないわ・・・!みてて」
井戸で水を汲むアリス。水を如雨露に入れて、王宮にかける。むくむくと成長していく白の王宮。
白ウサギ「なるほど・・・」
アリス「あなたも手伝って!」

赤の騎士「ほう・・・なかなかずるがしこい真似をするじゃないか、アリス・・・」
白ウサギ「ひいい!見つかった・・・!ご・・・ごめんよアリス・・・ぼく一人ではとても戦えない・・・!」
逃げ出してしまう白ウサギ
アリス「ウサギさん!」
兵士「あのウサギをつかまえろ!」
赤の騎士「あんな雑魚構わぬ!捨ておけ!それよりもこの女だ。砦の借りをかえすのをずっと待ちわびていたんだよ・・・」
笑って剣を抜く赤の騎士「はじめから大人しくこちらの言いなりになっていれば、死なずに済んだものの・・・ほとほと馬鹿な女だ、お前は・・・」
アリス「わたしは誰のいいなりにもならない・・・私の運命は私が決める・・・!」
赤の騎士「ほう・・・怖くないのか?」
アリス「あなたなんて怖くない!!」
アリスの前に飛び出す白の騎士「その通りだアリス!」
アリス「白の騎士さん・・・!」
白の騎士「そなたは私が守ると約束したはずだ・・・!」
赤の騎士「くくく・・・またやりあおうというのか・・・貴様は私には勝てん・・・!」
白の騎士「その通りだ。」
赤の騎士「?」
白の騎士「お前には普通の剣が通用しないのだからな・・・!確かに私は貴様より弱かった!しかしそれはお前が強かったのではない!その剣が強かったからだ・・・!」
赤の騎士「ほう?」
白の騎士「お前のその剣こそ、我が白の王国から奪った伝説の剣ヴォーパルの剣だ・・・!!」
赤の騎士「くくく・・・よくぞ。その通りだ。この剣はケンカの仕方も分からない貴様らが持っていても仕方あるまい?私のような戦士が持ってこそその力を発揮するのだ・・・」
赤の騎士が白の騎士に切りかかる。赤の騎士の攻撃を受け止め、剣をはねのける白の騎士。
白の騎士「いいや、違うな・・・お前は臆病だ・・・なぜその剣を持っていながらジャバウォックを退治しない・・?」
赤の騎士「なんだと・・・?」
白の騎士「貴様は最強の剣を持ってしても、まだ敗れることを恐れているのだ!」
赤の騎士「たわけ!」
強烈な斬撃を加える赤の騎士。
倒れる白の騎士
アリス「白の騎士さん!」
赤の騎士「アリス!この男の首がはねられるところを見ておけ!」
白の騎士「私は勝利したぞ・・・!そんな剣が無くても、心に宿る勇気と絶対に諦めない強い意思で!」
赤の騎士「くはは!それが今生最後の言葉か!」
その刹那、恐ろしいうなり声が上がる。
地響きを上げて、白の王国にジャバウォックが突っ込んでくる。
赤の騎士「な・・・!なんだと・・・!!」
ジャバウォックの額には剣で切り付けられた傷が付いている。
白の騎士「よくぞ来てくれた、わが友!」
赤の騎士に襲い掛かるジャバウォック
赤の騎士「ひいいいいい!!くるなあああ!!!」
剣をふるう赤の騎士。しかしジャバウォックは赤の騎士の脚を咥えてふりまわす。
頸を振るい赤の騎士を放り投げてしまう。
兵士「ば・・・化けものだああ!!!」
赤の軍隊が攻撃を加える。
ジャバウォックは顎を開き、炎を吹いてカタパルトを吹っ飛ばしてしまう。
白の騎士を起こすアリス「やったね・・・」
白の騎士「私がジャバウォックに打ち勝てたのはキミのおかげだ・・・」
アリス「いいえ・・・あなたの力よ・・・」
何かに気付く白の騎士「ア・・・アリス・・・!あれを!!」

『アリス・イン・ワンダーランド』の脚本⑤

「第五章 ジャバウォックの詩」

うす暗い森の中を客車を引いた蒸気機関車が進む。
汽車のライト以外は光るコケやキノコが暗い森をほんのり照らしているだけだ
白の騎士「あの馬のおかげで汽車に間に合ったな」
客車の窓の外を見るアリス「パパたち今頃なにしているのかしら・・・」
白の騎士「君には父君がいるのか」
アリス「それはもちろんよ・・・立派な人よ。それにママも・・・」
白ウサギ「アリスのお母さんはアリスに早く結婚してもらいたいみたいだけど・・・」
アリス「うん・・・それが悩みの種・・・なんで知ってるの?」
白ウサギ「ちょこちょこキミの庭に行っていたから・・・君らが言い争っているのが聞こえたんだ・・・」
アリス「私・・・大人になるのが怖いんだと思う・・・」
白ウサギ「・・・結婚したくないの?」
アリス「・・・そういうわけでは・・・お姉ちゃんは私にもきっとぴったりの王子様がいるって言うけれど・・・とにかくこの世界を何とかするのが先よね。」
白の騎士「大丈夫だ・・・君のことはこの私が守って見せる。そなたは安心して我が道を行くがいい」
アリス「ありがとう、白の騎士さん」

砂漠の薔薇が点在する砂漠にかこまれて、歯車や蒸気機関によって機械化された要塞のような都市が広がる。その中心部にある赤の王宮
赤の女王の玉座
赤の女王「何!?前線基地が陥落した!?」
赤の騎士「申し訳ございません、陛下・・・白の王国は恐ろしく巨大な化け物を手なづけたようです・・・・」
赤の女王「なんと・・・あの女がそのような大それたことをするとは・・・!して、その化け物の名は・・・!?」
赤の騎士「アリス・・・」
赤の女王「アリス!?なんとおそろしい響き・・・」
赤の騎士「陛下・・・白の王国が新たに強力な味方を手に入れた今、ここは勝負を長引かせては危険です・・・!一気に白の王国に総攻撃を仕掛けては・・・!」
赤の女王「あせるな。そのアリスの弱点を探ってからの方がよかろう・・・帽子屋!」
帽子屋「へいへい・・・」
赤の女王「お前アリスを知っているな?」
帽子屋「カラスとかきもの机は何が似ている?」
赤の女王「訊いているのはこっちだ!!」
帽子屋「ああ、そうでございやしたか・・・ええ、知っておりますよ」
赤の女王「奴の弱点はなんだ!?」
帽子屋「それは自明でございますよ・・・あんた様でございます」
赤の女王「私だと!?」
帽子屋「すこし難しいですか?」
剣を向ける赤の騎士「そう思うなら最初からわかりやすく言え!」
帽子屋「へへへ・・・そうでございますね・・・これでございます(時計を取り出す帽子屋)」
赤の女王「それは?」
帽子屋「日の解る時計、日計ですな。つまり“変化”でございますよ。アリスの弱点は変化なのです。
“変化”はお得意でございましょう?女王陛下は。」
顔を見合わせる赤の女王と騎士「?」
赤の騎士「この男すっかりいかれておるようですな。」
赤の女王「もうよい。さげよ」
衛兵に連れて行かれる帽子屋
赤の女王「変化・・・赤の騎士・・・!例のものは!?」
赤の騎士「じきに完成するようでございます・・・」
赤の女王「お前の言う通り、早めに仕掛けた方がいいかもしれぬ・・・」

日が暮れ、あたりは暗くなっている。
雪原にそびえる巨大な樹木。その樹木を改造し、森の隠れ家のようにしている白の王宮
巨大樹のそばにはキノコや切り株を改築した家が並んでいる
白の騎士「すっかり日が暮れてしまったな。これが白の王宮だ。」
アリス「すごい立派な樹ね・・・」
城の周りの兵たちを指さす白ウサギ「あれは?」
城のふもとでたくさんの兵士が如雨露で水をかけている
白の騎士「ああ・・・ああやって我が王宮を“建築”しているのだ」
アリス「建築というより栽培ね・・・」
白の騎士「なんでもよかろう、ああして常に城を高くすれば、赤の軍隊も早々最上階の玉座へはたどり着けん」
アリス「でもそれでは私たちも登れないわ」
白の騎士「・・・・・・。きみは賢いな」
白ウサギ「では、白の女王さまはもしかしてずっとあの木のてっぺんに・・・」
白の騎士「うむ。戦争が始まってこのかた我が陛下には指一本触れさせてはおらぬわ!ははは!」
アリス「なんてかわいそうなことを・・・」
白の騎士「しかしまいったな、陛下に接見させたかったのだが・・・」
アリス「それをいうなら“謁見”ね・・・いいわ。この国にはケーキはあるかしら?」
白の騎士「さて・・・」
白ウサギ「あ、あそこにお店がありますよ・・・「ないものはない」って書いてあります。」

雑貨屋オールドシープショップに入る
アリス「ごめんくださ~い・・・」
年老いた羊が編み物をやっている「もう店じまいだよ・・・」
アリス「あの・・・体が大きくなるケーキが欲しいんですけど・・・」
羊「なんだいそれ?」
アリス「ありませんか?」
羊「ないものはないんだ、この店には。どこかにあるさ・・・」
アリス「あなたはわからないの?」
羊「店の人間が店の品物を全て知っているわけはないだろう?わたしももう歳でね・・・勝手に探しな」
アリス「ありがとう。」
棚で卵を見つける白の騎士「こ・・・これは・・・!」
白ウサギ「なんですか?この卵?」
白の騎士「これはかのジャバウォックの伝説の詩の謎を解き明かすハンプティ・ダンプティでは・・・!これはいくらだね?」
あくびをする羊「一個5ペンス。二個で2ペンス」
白ウサギ「一個の方が高いんですか?」
白の騎士「買おう!」
アリス「そんな卵よりもケーキを探してよ!」
ハンプティ・ダンプティ(H.D)「そんな卵!?なんて失礼な娘だ!このわしを卵よわばりするとは!」
白の騎士「これは供のものが失礼を。彼女はまだこどもなので。」
H.D「それはそうだろう、で騎士殿?わしに何が聞きたい?」
白の騎士「ジャバウォックの詩という詩をご存知でしょうか?」
H.D「知らんな。だが任せなさい。わしはこれまでに発表された全ての詩が解る。みせてみなさい」
白の騎士はハンプティ・ダンプティに詩の書かれた巻物を見せる
アリス「なんなの、その詩?」
白の騎士「ジャバウォックを倒す方法が描かれた伝説の詩だ・・・」
アリス「あの森の大きな怪物ね」
白の騎士「さよう。あの怪物を倒すことが私の使命だ」
アリス「なんで・・・?」
白の騎士「それがわたしの定めだからさ・・・あれを倒せば赤の騎士ももう私を馬鹿にはできまい・・・!」
アリス「そうかしら」
H.D「ちょっと静かにせんか!」
アリス「はいはい、ごめんなさい。ウサギさんケーキを探してくれない?」
白ウサギ「うん・・・」

ジャバウォックの詩の巻物を広げるH.D「これは興味深い・・・なにか意味がありそうだな」
白の騎士「さすが・・・」
アリス「あの・・・逆さに持ってますよ・・・」
H.D「横からうるさい!ええとだな、これはつまり・・・動物図鑑だな」
白の騎士「動物図鑑?」
H.D「さよう。一段、二行目「すべらとうぶはこまかりあなきる」から行こうか・・・これは、「トウブ」という動物の生態を記しておる・・・これはアナグマの一種で尻尾はトカゲ。日時計の下が住みかで・・・」
白の騎士「あの・・・ジャバウォックについては・・・」
H.D「せかすな騎士殿。ええとジャバジャバジャバジャバ・・・ジャバウォック・・・ああここだ・・・「ジャバウォックに気をつけろ息子。油断するなバンダ―スナッチに、怒りクルクルジャブジャブ鳥・・・」まったく興味深い・・・」
白の騎士「バンダ―スナッチ?」
H.D「それにジャブジャブ鳥とある。お主見たことは?」
白の騎士「いえ・・・」
アリス「宿敵が増えちゃったわね・・・」
H.D「諸君、次が面白いぞ。「ヴォーパル剣を手にしたおのこ、思いにふけりてしばし立つ。かのジャバウォックまなこランラン、森より出でぬ。えいやあえいやあ・・・!」」
羊「あんたらうるさいね!」
H.D「すいません・・・」
白の騎士「ヴォーパルの剣・・・なるほど・・・だからあの弓で放った剣が効かなかったわけか・・・」
H.D「どうやらジャバウォックを倒すにはこの剣が必要のようだな。」
アリス「そういう問題ではなかったような・・・あ、あった(ケーキを見つける)。」
H.D「次。「ヴォーパルの刃、ぐっさり、するり、倒れし敵をば、斬り捨てて、首をとって誇りて戻らん。汝ほふりたるや、あのジャバウォック!我が腕に晴れめく息子!おおフラジャズの日かな、むせびくばかりのこの喜び・・・!」なるほど・・・これは・・・」
白の騎士「ど・・・どういう・・・!」
店の中で大きくなるアリスにつきとばされるハンプティダンプティ「うぎゃ!」
棚から落ちてぐしゃりと割れてしまう。
元の大きさにもどるアリス「うん。たしかにこのケーキね」
白の騎士「なるほど・・・ジャバウォック討伐のカギは「ヴォーパルの剣」か・・・たしかあの剣はどこかで・・・」
羊「ちょっとあんたたち!もう出てってちょうだい!」
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