コンカベナトールについて

 今年9月9日に発表された新種の恐竜コンカベナトール・コルコヴァトゥス。

 あまりに腰の部分がおかしくて、気がついたらイラストを描いてしまっていたのですが、骨格の写真をよく見ると、仙椎(骨盤部分の椎骨)の前の突起はほぼ直角に長く伸びているのに、仙椎の突起はほとんど長くない。そして尻尾の根元の突起がやや長く伸びている・・・
 だからニュースでは二つのコブがあるって言ったのか。
骨盤.jpg

 でもこれってやっぱりおかしいですよね。骨盤部分の突起がおっかけたって感じでもないので、まあ骨盤の部分は空間があってそこに脂肪を蓄えていたって言うのも一理あるかも・・・
 最初、骨盤前後に二つの突起があるだけの復元をしたら、あまりに不自然で(ださい)、この隙間は絶対なにかで繋がっていたと考えるのが自然だと思います(THEオレ解釈)。
脂肪.jpg

 こういうぶっとんだ種類がまだ新しく発掘されるのが面白いですよね。わたし今までの新種で一番驚いたかも・・・(羽毛恐竜より)

古生物学における本質主義

 相変わらず舌鋒鋭いサイエンスライターの金子隆一さんですが、それに関連して古生物学に本質はあるのか考えてみたいと思います。

 私の本質主義に対するスタンスは「学問に本質は存在しない」という『系統樹思考の世界』の著者の三中さんと若干違っていて(いや一緒か?ちょっと“本質”の定義によるんだよな)、まずもって自然現象には本質が先だって存在し、その本質に完全にたどり着くことは科学には限界があるので(不確定性原理、ゲーデルの不完全定理など)不可能だけれども、研究を重ねるごとに本質に近づくことはできると考えています。

 よって私はパラダイムシフトも「科学に対する認識が180度変わる革命」と捉えてはおらず、「これまでの理論の補正、それが大きいもの」としています。
 これはなぜかというと、進化論が発表され「生物は不変である」というこれまで生物の捉え方は大きく変化しましたが、だからと言ってこれまでの生物学が全否定されたわけではないと思うからです。
 ポストダーウィンの今日の生物学は、やはりアリストテレスなどの先人の理論を土台に、正しかったものは残し、誤っていたものは捨てながら、取捨選択をして、生物に対する認識が鮮明になっていったと捉えるべきです。

 つまり科学理論も生物の進化と同じようなパターンをとるわけですが、問題は生物の進化には決まった方向性があるのか?ということ。
 これがなく、まったくランダムの結果が現在の生態系だとするならば、科学理論には本質は全く存在せず、本質に近づくこともなく、その時代時代でぐるぐる流行が変わっていくだけとなります。
 ちなみに宇宙が消滅して、ふたたび無から宇宙が誕生した時、水がある地球のような星ができて、地球のような生物が同じような歴史をたどって人類のような知的生命体に進化するのは確率上ほぼ不可能とするのが、この意見です。

 もうひとつは私の主張なのですが、進化の原動力はランダムなのですが、生態系を取り巻くさまざまな内的外的要因によって、結局選択肢の幅があまりなく、進化のパターンは何度実験を繰り返してもある程度収斂するのではないか?というものです。
 例えば最近話題の量子進化論。トラやヒョウといった動物の模様のパターンは発生学をふまえた複雑系数学の数理モデルで、ランダムでも結局ああいう模様になることが証明されたようです。
 つまり進化の原動力はあくまでもランダムで運命論的な定向性はないが方向性のパターンはある程度絞られるのだと思っています。運命論でもないけど非決定論でもない。

 そう考えれば、私は科学理論にも生物進化と同じで方向性のパターンがあり、思考錯誤を重ねることで理論の方向性はかなり絞り込まれていくと思うのですが、どうなんだろう。
 新しい理論でも古い理論でも間違っているものは淘汰され、正しいのは理論の背骨や核となって残るから、本質は絶対分からなくても、本質らしきものにはなると思うんだけど・・・

 で、ここからが本題。では古生物学に本質はあるのでしょうか?私は無いと思います。だから金子隆一さんの言うような「正確な恐竜」なんて永遠に解らないと思います。これは学問本質主義のグールドですら著書『干し草のなかの恐竜』できっぱり否定しています(下巻23ページ)。
 もちろん恐竜の化石が発掘されていることから6500万年前には確かに本質はあった。しかしそれはもう失われた。よって科学の理論としては6500万年前の本質に近づくことはできるけど、本質にはならないということです。答え合わせができないから。

 さて、答え合わせができないということは、「その存在を完全否定することは事実上不可能である」という「悪魔の証明」がかなりしゃしゃり出てきて、だから金子氏が憤慨するような「オレ基準」の稚拙な恐竜のイラストや、不親切な恐竜展がはびこってしまう。
 つまり日本の恐竜文化は心霊現象や超常現象と同じ問題を抱えているのです。
 映画『ジュラシック・パーク』の襟巻をつけたディロフォサウルスは、おそらくかなりの確率で存在しなかったでしょうが、存在した可能性を全否定は絶対にできません。

 つまり金子さんはそういう意味で「恐竜文化界の大槻教授」なのです。古生物界ではありません。あくまでも“恐竜文化界”です。
 そして科学の立場は基本的にニュートラルで、政治的、文化的啓蒙をしませんから、科学の世界にいる古生物学者は、恐竜文化など相手にしません。文化を自然科学のコンテキストで論じるのはおかしいのです(社会科学とかならOK?)。
 恐竜イラストレーターとして有名なG・ポールも「おもちゃとして売るなら好きにやればいいじゃん」とノータッチです。 
 よって金子隆一さんも恐竜における最新の研究だけ客観的に伝えていれば別にいいのですが、「日本の恐竜マニアのレベルは低い!」と主観的啓蒙を始めた時点で、彼の論はサイエンスからサブカルチャーにまで降格するのです。
 
 結論:金子さんが「恐竜文化評論家」ではなく「サイエンスライター」を自称するなら、自然科学の恐竜の本で自分の愚痴とかはしないでほしい。あれ余計なんだよな。
 愚痴だけで一冊の本にまとめた『知られざる日本の恐竜文化』はその点は評価できるけど。

 しかし私も矛盾してるな。同じサイエンスライターの竹内薫さんの愚痴はすっごい笑えて好きなのに・・・やはり文章表現の仕方かなあ。私も気をつけよう。

昇華について

 パラジクロロベンゼン。化学式はC6H4Cl2。融点53℃、沸点174℃。
 
 これは中学校の理科の状態変化のところで出てくる塩化化合物なのですが、ドライアイスのように空気中で昇華(固体からいきなり気体になること)します。中学校の理科では、昇華する物質でけっこうベタだから出している感じです。

 塾で生徒に「結局これってなんなんですか?」って聞かれたのですが、パラジクロロベンゼンは、トイレに昔あった消臭剤や、防虫剤に使われています。においがキツイやつ。だから教科書も防虫剤(パラジクロロベンゼン)ってかけばいいのに・・・

 あと炭酸水素ナトリウム(=重層。かなり弱いアルカリ性)の分解をやった時、重曹は熱すると、炭酸ナトリウム(けっこう強いアルカリ性)と、二酸化炭素と、水に分解されるって言ったら、「じゃあ炭酸水素ナトリウムはどうやって作るの?」とパンチのある質問。これは水酸化ナトリウムと二酸化炭素を化合させるとできます。

 ただベーキングパウダーの実験で学校の先生が「普通に熱しただけじゃできないから何か工夫してた」って言うのはちょっとわたし化学の専門家じゃないので分からない。調べてみよう。

 追記:ドライアイス(固体の二酸化炭素)ってどう作るか気になったのでまとめました。二酸化炭素は融点(-56℃)と沸点(-78℃)はとても低く、常温では気体の物質です。
 しかし融点や沸点は圧力によって変化するので、強い圧力をかけると二酸化炭素の沸点は上がり(気圧の低い富士山山頂でご飯が炊けないのとの現象)液体の二酸化炭素が得られます。
 この液体の二酸化炭素を急激に気化させると、強烈な潜熱(=帰化熱。気体になる時まわりから熱を奪って温度が下がる現象。うち水など)によって二酸化炭素の温度が下がり、固体(ドライアイス)になるそうな。

 で、このドライアイスを常温1気圧に置くと、昇華して一気に気体になるらしい。これは温度と圧力を下げると、融点と沸点はどんどん下がっていくんだけど、その下がり具合が沸点より融点の方が激しくて、決まった温度と圧力で融点が沸点と重なってしまう。
 この点を三重点って言って気体、液体、固体が共存できる点とか言ってるんだけど、私にはよく分からない。
 三重点ではどんな状態で物質が存在しているのかが。水なら水蒸気と水と氷が同時にいるってこと?じゃあなんで三つに分かれてるの??どれか一個でもいいじゃん。
 まあなんにせよ二酸化炭素の三重点は「-56.6 ℃、5気圧」なので1気圧では沸点と融点の間が無いのでいきなり固体から液体に昇華する。
 本当は分子の性質(二酸化炭素は分子を作る力が弱い)とかいろいろあるらしいけど、大雑把に言うとこんな感じ。

 つまりドライアイスの生成は、圧力を調整することで物質の状態や温度を変えているんだけど、実は冷蔵庫の冷媒がこれをやって食品を冷やしていたりする。

ブログのカウンター本サイトを抜く

 サイトにカウンターをつけたのは去年の秋だったからだいたい一年前。それが二か月前につけたブログのカウンターに抜かれた!
 しかもサイトのカウンターは二重カウントしちゃうけど、ブログは二重カウント禁止のやつ。そんなハンデ付きであっさり抜いちゃった。すごいぞHEAVEN INSITE's Blog。サイトが過疎すぎるだけか。

 おそらく本サイト画像でできているのに対し、ブログはテキストなので検索エンジンに引っ掛かっているんだろうな、と、なすぼねさんの真似してアクセス解析をしてみたら、確かに検索エンジンからが8割以上。一部「お気に入り」から来てくれているリピーターの方もいてとってもありがたいけど、ほとんどは一見さんだった・・・

 ちなみに一番多かった検索ワードは「アウトレイジ ネタばれ」・・・あと「アリス」「ヒックとドラゴン」「動滑車」など。意外なのは「福岡伸一」さんや「武谷三男」さんなんかも。
 すごいところでは「サンガー法」で検索して訪れている人もいる。すいません、私はバイオ系の大学に行ってないので、サンガー法は全然詳しくないです!
 とはいえやっぱり科学よりも映画の記事を見ている人が多い。だから前は一日120人くらい来ていた人も、今は80人前後になっちゃったのは、最近映画館で映画見ていないからだな。

 とにかくこれからも面白い記事が書けるよう頑張ろう。

『カラー版徹底図解 恐竜の世界』

 金子&山本の国内最強タッグがオールカラーで再び参上!

 今日は塾の帰りに乙武洋匡さんの本を買おうと思ったら近所の本屋に売ってなくて、こんな濃ゆい本がなぜかエッセイコーナーにあって衝動買い。ナイスTSUTAYA。
 これ今年出たばかりの本みたいですね。とはいえトロサウルス騒動は書かれてないけど。トリケラトプスは襟飾りに穴が無いのが特徴って書いてあるし・・・
 
 著者の金子隆一氏は恐竜オタクなら一度は聞いたことのあるサイエンスライター。あのけっこうヒットした「チョコラザウルス」の恐竜や古生物の解説をしていたから、食玩ブームで知った人もいると思うけど、チョコラザウルスの「ですます調」の文体から勝手に人物像を想像すると、この人の本性を見失う。
 この人は昔っからなんというかサイカニアばりに棘げ棘げしい批判的な文章を書く人なんだ。
 有名なのはNHKの「生命40億年はるかな旅」批判。これは「花に追われた恐竜」って回を、まあ、ボロカスに叩いていて、いくら番組側が間違っていたとはいえ、キッツイ文章書く人だな~と思っていた。

 さらに近年では日本の恐竜文化および恐竜ファンの体たらくぶりに嫌気がさし、海外の論文の逐一チェックするような真の恐竜マニアはこの国にはほとんどいない!と愚痴りまくっていました。歳のせいなのかな・・・?

 とはいえ私にとって金子さんは「恐竜マニア」の立場からいろいろ濃い情報を教えてくれる貴重な人。なんだかんだ言ってこの人は、海外の論文なんて逐一読まないけどそこそこ恐竜には詳しい、ファン以上マニア未満の私のような「微妙な層」に、最新の情報を玉石混淆で提供してくれているし、実のところ金子さんが言うような真の恐竜マニアには、金子さんの書く本は無用だったりする。専門的な論文といった一次資料を直接読んじゃうから。
 だからこの人は、自分が批判するしょうもない恐竜ファンを相手に本を書いているっていうのが皮肉。

 とにかくこの本も一体どの層に向けて書かれたか分からない感が最高!これが金子さん。
 単に恐竜が好きというライトなファンには内容がディープすぎるし、コアなマニアにとってはもう知っている情報がほとんど(アンチ隕石衝突説やダイノバード仮説など)。そして恐竜研究者は絶対これを読まない。常識だろうから。
 だからやっぱり私みたいな微妙なマニアが買うんだろうな。そして金子さんがそんな絶対数の少ない層を相手に本を書いている以上、日本の恐竜文化はまったく改善されないよな。まあ、別にいいけど・・・

 読んでて笑ったのが、コラム「古環境をいかに復元するか」。

 恐竜の生態復元画を描くとき、恐竜そのものが正確に描けていなければならないのはいうまでもないが、それにもまして重要なのは、恐竜が暮らしている生活環境をいかにリアルに再現するかという点である。

 爆笑。恐竜そのものが正確に描けていなければならないのは言うまでもないって『魁!男塾』かよ。
 こういうマニアが行き過ぎた馬鹿馬鹿しい文章がいいよね。だいたい恐竜そのものを正確に描くってどういうことよ?骨をふまえろってこと?デッサンをとれってこと??
 仮に最新の学説を総動員して骨格をできる限りふまえても、誰一人恐竜の生きた姿を見てない上に、学説なんてコロコロ変わるんだから、正確もくそもない。
 結局「なんかリアルな感じがする」とか「かっこいい」とか漠然とした、主観的イメージで恐竜の復元画なんて良し悪しが決まってしまう。そこが面白い点だろうし。だからこそ魅力があると思うのですが、金子さんの脳内では正確な恐竜が存在しているのでしょうw。さすがマニア。

 もっと言えば、恐竜以上に中生代の環境は謎。謎すぎる。G・ポールなんて背景は植物を遠景にして空を多めにとればごまかせるよって言ってるくらい。
 プロですらこれなんだから、アマチュアに金子基準を適用したら、中生代の環境なんてうかつに描けなくなっちゃう。
 
 さらにこの人の暴走は続き・・・

 アメリカのデンバー自然科学博物館では、恐竜時代の情景を再現したジオラマを作るにあたり、恐竜の発掘現場で見つかった大量の木の葉を1枚1枚型にとり、虫食いの穴まで再現したものを木の枝にとりつけるという膨大な手間をかけ、非常にリアルな情景を再現した。

 すごい。だから何?感が(笑)。いや、私も博物館のバックヤードを見学したこともあるし、尾瀬のジオラマがこれとほとんど同じくらいこだわって膨大な手間とお金をかけて制作させたのは知っています。たしかウン億円レベル。
 でもあんたはそれを誰に向けて言ってるの?プロの画家?研究者??愛好家?

 恐竜画を志す人は、恐竜の勉強だけをしていたのではどうにもならない。植物を中心に、当時の古環境に関するトータルな情報を収集する努力を常に怠らないことが重要なのである。

 みんなそんな暇じゃない。いいじゃん。どうせ日本には恐竜のプロになれるカリキュラムはないし、世界には凄い恐竜研究者と恐竜アーティストがいくらでもいるし、あんたには山本聖士さんがいるだろ。とはいえ山本さんもあまり背景を描き込んでいない・・・
 山本さんは、一時期拒食症のような痩せた恐竜描いていた時もあったけど、もう日本の恐竜イラストの頂点だと思う(私は市川章三さんが一番好きだけど)。
 肉食恐竜の唇復元も、顎を開いて牙をむいている絵にすることで上手く回避してますよね。1枚も口を閉じた肉食恐竜の絵が無い(鳥に近いタイプ除く)ことから分かるもん。
 とにかくパキケファロサウルスのイラストが超カッコいいので、恐竜に興味ある人買ってみてください(安いし)。山本さんのイラストだけで買う価値ありです!

 最後に恐竜の種類の数について。2009年4月24日の時点で恐竜の属は1094らしい(種の数じゃないですよ!)。私400位だと思ってたので相当多い。そして属に対して種数はちょっと算出時期が異なるけど、2006年9月29日時点で1844種らしい。
 ・・・これって系統樹思考的にどう考えてもおかしいよね?1094の属に対して種が1844って尋常じゃないと思うんだけど、やっぱりドラコレクスやナノティランヌス、トロサウルスのように一属一種記載って今後どんどん見直されていくと思う。

 ・・・トロサウルスと言えば、復元画にホーンレットつけた(しかもわざと)私は絶対金子さんにぶっ飛ばされる~!
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