物理学実験覚え書き⑤

 二週にわたった物理学の実験も、これまででござる。(C)北条氏政

金属の熱伝導率の測定
熱の伝わり方が金属の種類によってそれぞれ異なることを確かめる実験。L字型に成型された金属の棒を懐かしのアルコールランプで端から熱し、もう一方の端に取り付けた蝋が溶けるタイムを競い合う。
また、その結果を踏まえて、金属の中を熱が伝わる過程や、金属の種類によって熱の伝わる速さが異なる原因を解明する。
実験に用いる試料は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、真鍮(Cu-Zn合金)の4種類である。

実験方法
1.試料台加熱部はくぼんだ部分を下にしてスタンドに固定する。
2.L型試料棒を上向きに、試料台加熱部の穴に押し込んでしっかり固定する。
3.ステンレスのリングを試料棒の上端から1mm~2mmのところにピンセットを用いてささえ、ろうそくのろうをリングの内側に流し込んでリングを固定する。この時のろうのつけ具合で測定値に誤差が生じる恐れがあるので十分注意すること。
4.アルコールランプに点火し、炎が試料台加熱部のくぼみに当たるように位置や高さを調節する。この時注意することは炎が外的要因によって曲がったり安定しない場合は、その影響を取り除く努力が必要である。
5.だいたい2~10分で銅、アルミニウム、真鍮、鉄の順にリングが降下する。炎が試料台加熱部のくぼみに当てたときからリングが落ちるまでの時間をストップウォッチで測定する。(集中していないと値に誤差を生む要因となりうるので注意すること)
6.測定データの整理は6回測定して上限と下限の値をカットして、残ったデータの平均を取るのが一般的である。

金属中に熱が伝わる時間と熱伝導率の関係
4種類の試料におけるリングの落下時間について、測定回数ごとに表に整理すると同時に、その平均値を求めた(図1)。

図1 各試料ごとのリングの落下時間
リング落下時間.jpg

マスターカーブ
次に、あらゆる金属の熱伝導率と熱の伝わる時間との関係をグラフに描いた(図2)。
今回測定した3つの単一金属の測定点を通る線がマスターカーブ(太線)である。このカーブの意味は、金属合金の熱伝導率と熱の伝わる時間との関係は、ほとんどの場合、この線上のどこかにプロットされるということである。

図2 各金属のマスターカーブ
マスターカーブ.jpg

合金の成分の求め方
加熱時間を横軸に、それぞれの試料棒の熱伝導率を縦軸にとった、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)の純金属によるマスターカーブを基に、真鍮(Cu-Zn合金)の熱伝導率を求め、そこに含まれる単一金属の割合を求めた。

それぞれの金属の熱伝導率は
Cuが403(W/mK)
Alが236(W/mK)
Feが83.5(W/mK)
Znが121(W/mK)
である。

真鍮(Cu-Zn)の熱伝導率を、図2のマスターカーブに実験で測定した落下時間の187.8秒を代入することで求めると、その値は約185(W/mK)となる。
この熱伝導率の値から、実験で用いた真鍮に含まれる銅と亜鉛の割合を求めると、以下の式で表すことができる。

X=XA×a+XB×b・・・(1)


Xは合金の熱伝導率
XAは単一金属Aの熱伝導率
aは単一金属Aの含有率(%)
XBは単一金属Bの熱伝導率
bは単一金属Bの含有率(%) をそれぞれ表す。

金属の熱の伝わり方は電気の伝わり方と同じ原理であるため、式(1)は、異なる熱伝導率を持つ単一金属を混ぜた合金を、ある種の直列回路とみなしている。
したがって、直列回路全体の電流は各回路の電流の和となることから、合金全体の熱伝導率は、それぞれの単一金属の熱伝導率の和と考えることができる。

この式(1)を用いて、単一金属Aを銅、単一金属Bを亜鉛として、銅の含有率aを求めた。
銅の熱伝導率は403
亜鉛の熱伝導率は121
真鍮の伝導率は185
なので・・・

185=403×(a/100)+121×(100-a/100)
a=22.7(%)

b=100-aよりb=77.3(%)

よって実験で用いた真鍮は銅が22.7%、亜鉛が77.3%含まれていることがわかった。

合金の熱伝導率の求め方
さっきの逆パターンと考える。
今度は式(1)に、合金に混ぜた単一金属Aの割合(%)と、合金に混ぜた単一金属Bの割合b(%)を代入すれば、合金の熱伝導率が求められる。

フーリエの法則
実験では導電性が高い銅の熱伝導率が高く、導電性の低い鉄の熱伝導率が低いことから、電気と熱は同じメカニズムで伝わっていることがわかった。
つまり、電圧が2つの電極の電位差が大きいほど大きくなることと同様に、熱量Iは2つの物体間の温度勾配が大きいほど大きくなる(フーリエの法則)。したがって熱伝導率kは、同じ熱量が発生した場合は、温度勾配が小さいほど大きく、温度勾配が大きいほど小さい。

k=ID/T2-T1・・・(2)

kは熱伝導率
Iは熱量
Dは金属棒の直径(断面積の大きさ)
(T1-T2)は温度勾配  をそれぞれ表す。

これも電力(W)を電圧(V)で割れば、電流(A)の値(=電気抵抗の値≒電気伝導率ρ※)が求められることと同じである。

(※)電気伝導率は電気抵抗の逆数である。

物理学実験覚え書き④

各種電磁誘導の法則についての実験
中学校で習う電磁誘導の法則(エルステッドの法則によって磁石が電流から力を受けるならば、逆に電流も磁石から作用反作用の法則によって力を受けるはずだというやつ)を実験で確認するだけのボーナス課題だが、中学校ではなかなか教えてもらえないフレミングの右手の法則や、検流モーター、相互誘導とインダクタンスなどが追加されている。

検流計の仕組み
メーター類もモーター同様、電磁誘導の法則によって針が振れるようになっている。メーター類に電流が流れると、位置を固定された磁石に挟まれたコイル内部に電流が流れることで磁界が発生し、この時できるコイルの磁界と磁石の磁界との反発力、もしくは引き合う力によって、コイルが動き出し、そのコイルに取り付けられた針が振れる。
針の振れる大きさは電流の大きさに比例するために、針の振れ幅によって電流の大きさを調べることができる。

フレミングの左手の法則と右手の法則
フレミングの左手の法則も右手の法則も、左手の親指と人差し指と中指を使って、電磁誘導現象における、電流(中指)、磁界(人差し指)、力(親指)の向きを表すものである。
ただフレミングの左手の法則は電流と磁界の向きから定まる電磁力(力)の方向を、右手の法則はコイルを動かす(力の)方向と磁界の向きから定まる、誘導電流の方向を示している。

ファラデーの法則とレンツの法則
電磁誘導現象によって発生する電流を誘導電流という。ファラデーの法則によれば、この誘導電流が流れる強さ(e)は、コイルを通る磁束の時間あたりの変化量(コイルと磁石を近づけたり遠ざけたりする際の速さ)、と磁束の強さ、そしてコイルの巻数および磁界の存在する媒質に比例する。
ファラデーの法則が誘導電流の強さについての法則であるのに対し、レンツの法則は誘導電流の向きについての法則である。
レンツの法則によれば、誘導電流の流れる方向は、コイルを通る磁束の変化を妨げる向きに誘起される。
また、ファラデーの法則とレンツの法則をまとめて電磁誘導の法則という。

検流モーター
直流モーターでは、固定された磁極に挟まれたコイルに流れる電流の向きを整流子によって半回転ごとに切り替えることでコイルを決まった向きに回転させていたが、検流モーターでは逆にコイルの位置を固定し、コイルの中の磁石を回転させている(インバーターモーターっぽい)。
検流モーターのコイル位置は固定されているため、電流の向きは端子をつなぎ変えない限り変化しない。
つまり、検流モーターと直流モーターでは、原理が同じでも、時間的に切り替わる要素が検流モーターでは磁石の向き、直流モーターではコイル(に流れる電流)の向きと異なっており、電流に対して磁界を変えることと、磁界に対して電流を変えることは、どっちも同じ結果であるということが実験を通して具体的に確認することができる。

次の図は検流モーターを上から見たものである。

20160626140024.jpg

左右のコイルに流れる電流によって発生する磁界の向きは、右ねじの法則からAの箇所では反時計回り、Bの箇所では時計回りであるため、コイルに電流を流し続けると、磁石部の向きはN極が下、S極が上で静止する。

この状態からコイルに流れる電流をスイッチを連打することで点滅させると、磁石部が小さく振れ出すが、その上でさらに、タイミングよく磁石部のN極が図の右エリアに振れた時にスイッチをオン、図の左エリアに振れた時にスイッチをオフにすると、磁石部は時計回りに回転をはじめ(※)、逆に磁石部のN極が図の右エリアに振れた時にスイッチをオフ、図の左エリアに振れた時にスイッチをオンにすると、磁石部は反時計回りに回転をはじめる。磁石部の回転の勢いが強くなり、慣性で半回転するようになると、スイッチを点滅させるタイミングを間違わない限り、磁石部は一定の方向で回転を続けるようになる。

※検流モーターにおける磁石部の回転
20160626140119.jpg

相互誘導
電気的に接続されていない二つのコイルが磁束の変化によって相互作用をすること。
これにより片方のコイルに電気を流すことで、もう一方のコイルに誘導電流を生み出すことができる。また、その誘導電流の大きさはコイルの巻数で調整が効くため、電柱なんかのトランスはこれを利用している。

①検流モーター、手持ちコイル、電池ボックスを付属のケーブルで接続する。
②鉄心を手持ちコイルに通す。
③検流モーターの磁石部が、コイルと並行になるように配置する。
④電池ボックスのスイッチを押したままにする。すると、電池ボックスに接続されている手持ちコイルに電流が流れることになる。これにより、検流モーターに接続されている手持ちコイルに誘導起電力が発生し、その磁界によって磁石部が力を受け動き出す。
⑤わずかに動いた磁石部は、地磁気によって元に戻る。
⑥磁石部が元の状態(コイルに並行)になったときに電池ボックスのスイッチを離す。すると磁石の動きが加速する。
⑦④~⑥の操作を磁石部が半回転するまで続ける。
⑧磁石部が半回転したときに、スイッチを次の状態(押したり離したり交互にする)にして、磁石部が回転するようにスイッチを操作する。

コイルの中に鉄芯を入れると鉄芯が電磁石になるため、一次コイルの磁束の変化が、二次コイルに伝わり、二次コイルからの誘導電流によって検流モーターが動くが、鉄芯を入れないと一次コイルの磁束の変化が二次コイルに伝わらず、誘導電流が発生しないため検流モーターは動かない。

ペットボトルロケットを用いて放物線運動を考える
この班だけ神々の遊びがやれないのは可哀想、という優しきアシスタントの先生(教授の先輩)のお情けで、なんと急遽、振り子の重力加速度測定から予定変更。
こちら管制センター、フライトチェック完了、GOかNOGOか判断せよ、点火シークエンスを開始する、カウントダウン、これより打ち上げを実行・・・!(※たのしい)
ちなみに流体がない宇宙空間では別に翼はいらないのでつけない。じゃあどうやって姿勢を制御するんだ、と先生がJAXAに直撃したところ、コンピュータでスラスターのノズルの向きを調整しているのだという。

実験概要
ペットボトル型ロケットを用いて、放物線運動を再現し、その軌道を表す方程式で軌道計算を行い、軌道計算に用いたロケットの発射角度ならびに初速などの条件で打ち出したとき、実際と計算によるシュミレーションとを比較検討する。
このとき、ペットボトルが描く放物線運動に影響をあたえる因子について解明する。一方、その因子が一つではないことは容易に想像できるが、それだけに注意深く実験することが要求される。

実験器具
ペットボトル型ロケット
ロケットランチャー
空気入れ
スピードガン
レーザー放射距離計
給水用ペットボトル
計量カップ
角度定規

実験方法
①ロケットの後ろの栓をゆるめ逆さまにして計量カップで150ccの水を入れる。(BGM:キューピー三分クッキング)

②ペットボトルロケットをロケットランチャーにセットする。(注意:ランチャーの蝶ネジをゆるめ傾斜台をロケット発射角度に調整し、蝶ネジを締める。この時、ロケットの水がこぼれないようにランチャーを傾けてロケットノズルをジョインターにカチッと音がするまで確実に差し込む)

③ロケット内部に空気入れを使って空気を入れる。自転車用空気入れをジョインター・エアバルブにセットする。この時空気漏れがないことを確認。空気入れは15回ポンピングする。

④ロケットの発射はリモコンワイヤーを使って発射する。(注意:発射の前にロケットの前方・後方に人や動物がいないことを確認する。発射するときはランチャーの横方向に離れる。後ろにいると水がかかる場合がある。

⑤発射角度は45°、60°、70°の3つの角度について実験する。その時、角度は分度器で出来る限り正確に角度を決めセットする。ロケットの初速度を斜め前方からスピードガンを用いて測定する。

実験結果
ペットボトルロケットに詰め込む水の量と空気圧を一定にした時のロケットランチャーの飛距離を、発射角度とロケットの尾翼の数ごとに以下のグラフにまとめた。

ペットボトルロケット.jpg

考察
本実験は放物線運動についてペットボトルロケットを用いて理解することを目的としている。
ロケットの到達距離に影響を与える要因は、ペットボトルに入れる水の量と圧縮空気との関係で決まるロケットの初速度、ランチャーの発射角度、尾翼の数といったロケットの形状、さらに打ち上げ場所と方向によって決まる風の影響などが考えられる。
以下、それぞれの要因について考察する。

①圧縮空気と水の割合
まず、ペットボトルロケットを飛ばすために圧縮空気と水を入れる理由について考える。ペットボトルロケットに水を入れ、空気入れでさらに圧縮空気を入れるとペットボトルの内部の圧力が高くなり、この状態で栓を抜くと高圧の空気が水を押し付けることで、水が栓から勢いよく噴射し、作用反作用の法則によってペットボトルロケットが打ちあがる。
すなわち水はロケットの推進剤の役目を果たしているのだが、この水の量が多すぎるとペットボトル内に入る圧縮空気の量が減り、逆に水の量が少なすぎても、推進力が低下しやはり飛距離が落ちてしまう。

実験では発射角度が60°、尾翼の枚数が3枚での打ち上げ実験の時に、水と圧縮空気を入れた場合と、圧縮空気のみの場合で飛距離を比較した。(グラフの※1)その結果、初速度には大きな変化はなかったものの、飛距離は5倍以上の差があった。
この原因は、圧縮空気のみの場合は瞬間的な推力しか生まれず、初速度のみで飛距離が決まってしまうが(注1)、水を入れた場合は水の粘度が空気に比べて高いために、ロケットが発射した(栓を抜いた)後も水が噴射されロケットが加速するからである。

また、ロケットが飛んでいく推力はロケットが噴射する物質の速度と質量に比例するため、質量が大きい水を入れたほうがロケットの飛距離はあがるが、あまりに重い燃料を積むとロケット自体の重量が大きくなり、飛距離は落ちるので、ロケットに積み込む推進剤の適切な重量が存在する。実際、宇宙ロケットの打ち上げでは、空になった燃料タンクを飛行途中で切り離すことで、ロケットの重量を軽くさせ推進力を維持している。

よって発射前の質量と、燃料を使い切った発射後の質量の差が大きいほどロケットは遠くに飛ぶということになる。これは作用反作用の法則で、軽いものと重いものが互いに押し合った場合、軽いもののほうが遠くに飛んでいくことをイメージすると理解ができる。

注1:式(1)がそれで、物体を飛ばす際の角度と、初速度のみを考慮している。このモデルは、野球でピッチャーがボールを投げるといった、瞬間的な推力で飛んでいく物体の飛距離を求める際に使われる。(ピッチャーの手を離れたあとのボールは推進力を持たないため)

②尾翼の数
大気圏では空気や風の影響を受けるため、飛行機やロケットの機体の方向や姿勢を制御する尾翼の役割は非常に大きい。
本実験ではロケットの飛距離に尾翼がどれだけの影響を与えているかを調べるために、尾翼の数が異なるロケットを同じ条件で発射してそれぞれの飛距離を比較した。

図1の結果では、尾翼の数が2枚、すなわち垂直尾翼がない状態だと、機体の姿勢が安定せず、きりもみ状態となり飛距離はでなかったが、これに垂直尾翼をつけた、尾翼の数が3枚のロケットでは(45°の場合を除き)最も飛距離を出すことができた。さらに尾翼の数を増やしたロケットも打ち上げたが、尾翼の数が3枚の場合と、あまり飛距離の差は見られなかった。特に尾翼が3枚と4枚の飛距離はほぼ同じであった。尾翼の数が6枚の場合は、尾翼の数が3枚と4枚のロケットよりも若干飛距離が落ちたが、これは尾翼の数を増やしたことでロケットの重量が増加したことが原因だと思われる。

したがって、ロケットの尾翼の数は2枚よりも3枚の方が飛距離は伸びるが、3枚以上になると飛距離にあまり影響を与えず、なおかつロケットの重量を考慮すれば3枚が最も効率的であると結論付けられる。

③その他の要因
まず、圧縮空気を入れた際の空気漏れが考えられる。実験では空気入れに取り付けたジョインター・エアバルブがゆるかった。

次に、風の影響が考えられる。実験時にはかなり風が吹いていたため、たとえば、発射角度45°における尾翼の数が3枚のロケットと4枚のロケットの飛行距離の結果だけ、ほかの角度の結果と異なり、尾翼の数が4枚のロケットのが3枚のロケットの飛行距離を大きく上回っているが、これは4枚のロケットを打ち上げた際に、東向きの強い追い風が吹いていたことによるものと考えられる。また、発射角度が70°の実験の際には北向きの風が吹き、発射されたロケットの方向が大きく北によれていた。

三番目は、ランチャーの発射角度である。理論上では45°の時にもっとも飛距離が伸びるはずなのだが、実験では発射角度が60°の時に最も飛距離が伸びた。これはランチャーの傾斜台の角度が積んだロケットの重みで変化し、設定以下の角度になってしまったと考えられる。つまり発射角度45°の場合は45°以下、60°の場合は60°以下で発射された可能性がある。また、角度45°で最も飛距離が伸びるモデル(式1)では、発射する高さや、打ち上げる物体の形状、温度や気圧といった気象条件を考慮していない。したがって、打ち上げ角度45°よりも60°の方が、打ち上げたロケットの高度は大きいため、上空の気圧の関係(注2)で理論値よりも飛距離が伸びた可能性も考えられる。

最後に、ロケット自体の形状のゆがみが考えられる。ペットボトルでできているために機体が変形しやすく、またロケット後部や尾翼の取り付け部分が痛み、向きが変わりやすくなっていた。実験中に補修をしたが、これも飛行距離に少なからず影響を与えたと思われる。

注2:高度が上がると気圧は下がる。飛行距離に影響を与える空気抵抗は空気密度に比例するため、気圧や湿度が低いと飛行距離は伸びると考えられる。

物理学実験覚え書き③

力学的エネルギー保存の法則を実験で理解する
ぐんまけん!には向井千秋記念館という科学館がある。そこに高さは同じだけれど角度が異なる2つのスロープに金属球を転がせて、どっちの球が先にゴールするか実験してみよう!みたいな装置があるんだけど、キャプションに正解とか原理がなくて、問題の出し方的に、おそらく高さが同じところから転がすわけだから、位置エネルギーは一緒で同時ゴールなのかなって思ってたら、もうダントツで角度が急なスロープの方が緩やかなスロープよりも距離が長いのにタイムが早いんだよね。
で、なんでなんだろうって学芸員さんに聞いたら、この装置は寄贈なのでオレもそもそも何を伝えたいかよくわからないみたいな衝撃的な返答が返ってきて、ますます謎が深まったんだけど、今回その謎がついに明らかにされました。

今回の実験では、このような二つのコースで金属球のゴールするタイムを比較した。
レール.jpg

この実験で使うのは中学三年生で習う、力学的エネルギー保存の法則オンリー。これについての詳細はリンク先で。

レール①
①スタート後B地点ではA地点とB地点の位置エネルギー差が運動エネルギーとなり速度Bを持つ。その速度を求める。

力学的エネルギー保存の法則により

A地点の位置エネルギー=B地点の位置エネルギー+B地点の運動エネルギー

※A地点では金属球は静止しているので運動エネルギー=0とする。

mghA=mghB+1/2mv2 ・・・(1)

なので、
重力加速度g=9.8
A地点の高さ =0.2メートル
B地点の高さ =0.132メートル
を式(1)に代入すると

m×9.8×0.2=m×9.8×0.132+1/2mv2
1.96m=1.2936m+1/2mv2
1/2mv2=0.6664m
mv2=1.3328

v≒1.15m/s

と速度の理論値が求められる。
また、実際の実験装置で金属球を転がし、その速度を赤外線センサーで測定すると0.93m/sとなった。
 
②その後BからGまでは平坦なため位置エネルギーに変化が無く等速直線運動(速度B)で運動する。G地点までの時間を測定して速度との関係からレールの長さを求める。
金属球がB地点からG地点までを通過するのにかかった時間 は1.3秒なので、これにB地点の速度の実測値(0.93m/s)とG地点の速度の実測値(0.88m/s)の平均速度(0.90m/s)をかければ、BからGのレールの長さが求められる。定規使えばいいじゃんとか野暮なことを言ってはいけない。

0.9×1.3=1.17メートル

レール②
①スタート後B地点では、A地点とB地点の位置エネルギー差が運動エネルギーとなり速度Bを持つ。

②その後BからCまでは平坦なため位置エネルギーに変化が無く等速直線運動(速度B)で運動する。

③従って、C地点ではレール②の金属球はレール①の金属球と同じ時間に到着する。

④その後CからDまでは斜面運動のため、速度が加速されD地点に達する。その結果、レール②の球がレール①の球を追い越すことになる。そこで、D地点での速度Dを求める。

mghA=mghD+1/2mv2 ・・・(1)

式にD地点の高さhD=6.2㎝(=0.062m)を代入すると、速度 は

v=1.64462761742・・
≒1.64m/s

となった。
また、実測値は1.3m/sであった。

すなわち速度D>速度Bということになる。

⑤DからE地点までは速度Dで等速直線運動で移動する。このときの速度差からレール②の球がレール①の球より速く距離D-E間を移動する。

⑥その後EからFまでは斜面を上るので速度は遅くなるが、力学的エネルギーはD地点からC地点に戻るのと同じである。従って、F地点の速度はC地点の速度(速度B)となる。

レール①VSレール②
上記の結果からレール①の金属球よりレール②の金属球の方が経路の長さに関わらず速くゴールに到着することが分かった。では一体何でそういうことになるのか、向井千秋記念館に変わって考えてみる。

まずレール①とレール②はC地点から距離が異なるので、その距離を測定した。

レール①のB~Gの距離
B~G:117cm

レール②のB~Gの距離
B~C:16.5cm
C~D:22.0cm
D~E:45.0cm
E~F:27.0cm
F~G:19.5cm
B~G:計130cm

よってレール②の距離の方がレール①の距離より13cm程大きいことが分かる。

次にレール①とレール②の速度変化の様子をグラフに示した。

各区間ごとの金属球の速度.jpg
このように、レール②の速度はどの区間においてもレール①の速度と同じかそれよりも速く、レール①の速度を下回ることはないということがわかる。
問題は二つのレールの速度の差(v②-v① )が、二つのレールの距離の差(d②-d① )を補えるほど大きいかである。

レール①の平均速度の実測値は0.905 m/s

レール②の平均速度の実測値は1.09 m/s

なので、G地点に到着するタイムは

レール①が t= d①/v①

1.17/0.905=1.29281767955…≒1.29秒

レール②が t= d②/t②

1.3/1.09=1.19266055045…≒1.19秒

したがってレール②の方が速くG地点に到着することが求められた。
この結果を応用させて考えると、同じ地面に球を転がす坂の傾斜角が大きいほど、速度が速い(運動エネルギーが高い)区間が大きくなり、そのタイムも短くなると言うことになる。
※理科の先生によれば、最終的に同じ速度で走るなら、いきなりアクセル踏んで加速させちゃったほうが燃費がいいのと同じらしいが、安全性についてはわからない。

また、傾斜角を大きくした場合、レールの道のりと落差が増加し、落差に伴って速度が増加するが、道のりの増加する割合と、速度が増加する割合を比較すると以下のようになる。

落差.jpg
また速度の増加量は、力学的エネルギーの式に、坂の角度が変わることによって生じる落差を代入した。落差は単位円上のタンジェントと考えて求めた。

よって、どの傾斜角度でも、道のりの増加する割合よりも、速度が増加する割合の方が大きいことが分かる。
しかし、その角度があまりにも急になると、ほとんど地面に自由落下することになり、球は弾んでしまい運動の振る舞いが変わってしまう。
また、坂から地面に切り替わる部分が直線的に折れ曲がっていると運動エネルギーが地面との衝突で失われてしまうので、切り替わり部分をなめらかな曲線にすると運動エネルギーのロスはなくなる(ジェットコースターのサイクロイド曲線の話)。

ゴール地点Gの速度
力学的エネルギーが保存されるとすればゴール地点Gでの両者の速度は同じはずである。それが同じ速度であることを確かめるには、どのような実験を行ったらいいか、いくつか考えてみました。

その1
ゴール地点Gに赤外線センサーを用いた速度測定器を置いて、レール①、レール②それぞれの金属球のG地点での速度を計測する。もっとも手っ取り早い方法である。
実測値はどちらも0.88 m/sであった。さすが精密機器!

その2
ゴール地点Gにおけるレール①とレール②の高さを比べ、それが等しいかを調べる。二つのレールの高さが等しいならば位置エネルギーと運動エネルギーの割合も等しいということなので、速度は計算上等しくなるはずである。

その3
G地点付近の平坦な区間のレールの長さと、その区間を金属球が横切る時間をレール①とレール②でそれぞれ計り、金属球の速さを求め比較する。

その4
レール①とレール②に用いる金属球の質量を統一した上で、ゴール地点にそれぞれ同じ質量の障害物を置く。(障害物はレールを滑るような物にする)
この障害物に、各レールを転がった金属球をぶつけ、障害物が動いた距離を測り、レール①とレール②の運動エネルギーを比較する。
仮に二つの金属球の速度が等しいならば、その運動エネルギーも等しく、障害物が動く距離は一致するはずである。

力学的エネルギー保存の法則は、摩擦や空気抵抗を無視できるならばコースの形状の影響を受けないので、どのような経路を経ても、最終的にレール①とレール②の終点G地点の高さが等しいならば、金属球は等しい運動エネルギーを持つ。
したがって、レール①もレール②もG地点は同じ高さなので、赤外線センサーを用いた速度計測器が示した金属球の速度はどちらも0.88 m/sになったと考えられる。

スロープの傾斜と速度の関係
スロープの角度(=位置エネルギー)を4段階に設定できる実験装置を使って、それぞれの位置エネルギーがすべて運動エネルギーに変わったとして力学的エネルギーの保存の法則を用いて金属球の速度を計算で求める(理論値)。また、赤外線センサーを用いた速度測定器を用いて金属球の速度を実測する。

計算で求めた速度(理論値)と実測値とを表にまとめ比較検討した。

レール変更.jpg
まず、レールの高さが上がり、斜面の傾斜角度が大きくなると、速度は理論値も実測値も増加することが分かる。しかし、その増加する割合は理論値よりも実測値の方が小さい。
理論値よりも実測値の速度の方が遅い理由としては、摩擦力と空気抵抗が考えられるが、理論値と実測値の誤差を調べると、その誤差はレールの高さが高いほど大きいことが分かる。

仮に速度の実測値を理論値よりも下げている原因が摩擦力だった場合、傾斜角が急なほど大きく摩擦がかかっていることになるが、このとき運動を妨げる力である動摩擦力fは動摩擦係数μと垂直抗力Nの積となるため、金属球にかかる垂直抗力がレールの高さが高くなるにしたがい低下する以上、これは考えられない。

次に空気抵抗であるが、空気抵抗は物体の速度がある程度大きい場合は、速度の二乗に比例して大きくなることが知られている。つまり速度が2倍になると空気抵抗は4倍に、速度が3倍になると空気抵抗は9倍になる。
上の表のレールの高さ0.05mと0.10mの結果を比較すると、速度の理論値は1.41倍に、誤差は2.22倍となっている。また、0.05mと0.15mの結果を比較すると速度の理論値は1.72倍、誤差は3.26倍となり、誤差が速度の理論値の二乗分だけ生じていることがわかる。したがって理論値と実測値との誤差の原因は空気抵抗であると考えられる・・・と私は願いたい。

ギャラクシー街道

 「面白い度☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆ 三谷幸喜バーストアナザークロニクル☆☆☆☆☆」

 宇宙でうまくいかなかった人がどこに行ったってうまくやれるわけないじゃない。

 私は三谷幸喜作品が好きで、最近はNHK大河ドラマの『真田丸』くらいしか生きがいがないくらいなんだけど、この映画の評価はとにかく酷評の嵐で、どうした三谷幸喜!?とか、初の駄作!!とか色々言われてて、そこまで言われちゃ三谷先生を弁護するのがファンの責務だってことで(※『宇宙ターザン』での野比のび太先生の教え)、絶対映画館で見ようと思ってたんだけど、これは決して言い訳でもなんでもなく、公開時に仕事がちょっと忙しくて結局見逃してしまっていたんだ。

 で、今回とうとうDVDで借りることができたんだけど、ホントにネット上では酷評を通り過ぎて暴言的な感想に溢れていて、レンタル店での人気は、むしろそこまで酷いなら見てみたいという好奇心によるものなんじゃないかっていう嫌な予感もしたんですが、観てみてびっくり、めちゃめちゃ面白い。腹がよじれるほど笑ってしまったじゃないか!
 そして私の中で強い憤りの感情がこみ上げてきた。この映画の面白さがわからないってマジかっていう。まさにアルフじゃないけど、「お前らのレベルにはこの面白さはわからねえよ。笑いには知性と教養が必要なんだ」って悪態のひとつもつきたいよっていう(ついたけど)。

 今さ、『ズートピア』がヒットしてるじゃん。異なる人種や文化の人たちを受け入れよう、差別はいけないよっていう、まことにヒューマンライツなメッセージのある映画なんだけど。でも、それ(文化多元主義)を言うなら、この『ギャラクシー街道』を評価してこそだろっていう。それくらいこの映画は観客の差別心を試すものだと思う。
 価値観の異なる人なんてなかなか受け入れられないのが普通であって、実際、『ズートピア』の舞台のアメリカではドナルド・トランプが大フィーバー、『パディントン』の舞台のイギリスではまさかのEU離脱(加盟国は独自の金融政策が打てないという事情もあるけれど移民問題も原因だろう)、そして『ギャラクシー街道』の日本では移民排斥もなにも、そもそも移民を受け入れていないっていうね。
 やっぱり日本人はとんでもなくレイシストな連中なんだって、この映画の感想を読んでつくづく思った。別にそれを糾弾しようとかじゃなくて、ま、そうなんだろうな、それだったらこの映画が低評価なのも当たり前だよな、と。

 だから決してこの映画は駄作ではない。むしろこのシュールでナンセンスな世界観は、あの三谷先生がついに吹っ切れてくれた!って心底嬉しかった。
 映画冒頭のパックンフラワーみたいな珍生物がガラ悪く窓ガラスに唾を吐くシーンとか、やっぱりものすごい天才だっていう。
 3年前の『ステキな金縛り』の時も書いたんだけど、三谷さんの映画って超面白いんだけど、なんというか観客のレベルやニーズに合わせて、やりたいことをセーブしてるなあっていうのをいつも感じていて、いつかバーストすればいいのにって思ってたんだ。
 で、バーストしたらやっぱり観客はついてけなかったっていう。三谷さんはシャイだから、この映画が受けなかったことで、もう二度とこういうアクセル全開の映画は作らないんだろうけど、私は一回でもこういう映画を作ってくれたことに感謝したい。

 というか、あれなのかな。面白いつまらないとかいう話じゃなくて、いつもの三谷幸喜作品の客層と、この映画が受ける客層にズレがあったのかもしれないよね。
 私が強く感じたのは、この映画の雰囲気ってなんというか松本人志さん的なんだよね。ウルトラセブンとかのレトロな特撮をシュールなネタに変換するようなところとか。だからダウンタウンの『ごっつええ感じ』とかで爆笑した人なんかは、この映画すごい面白いと思う。半魚人みたいなのも出てくるしw
 自分は頭でっかちなところがあるから、こういう肩の力が抜けた、ナンセンスでシュールなものって思いつかないんだよな。IPPONグランプリとかの大喜利とかも、この人たちどういう瞬発力してんだって思うし。実際、三谷さんってIPPONグランプリの姉妹番組のオモジャンで優勝とかしてたしな。

 それと男女の恋愛に対する徹底的に冷めたシニカルな態度。舞台を場末感漂う宇宙のハンバーガーショップにしたアイディアも秀逸。カップルの痴話喧嘩がこれほどまでにしっくりくる舞台設定はないよ。これって窓の外は宇宙ってことになっているけれど、ぶっちゃけ深夜のマクドナルドだもんね(サンドサンドさんってw)。
 こういう毒のあるネタって確かに今までの三谷幸喜らしからぬけれど、三谷さんって絶対に深層心理に恐ろしい魔物を飼ってそうな気がしたから、あ、やっぱり飼ってた、飼ってた!って一安心、まさにブラック三谷ワールド!
 私は全宇宙がこの映画を駄作だと言っても、三谷幸喜についていく!たとえクレジットカードの情報がすべて消えてしまうくらい磁場が強くても。

「ノア」
サンドサンドバーガー・コスモ店のオーナー。ハンバーガーに囲まれて暮らすのが夢なほどハンバーガーが好きなため、ハンバーガーの食い方が恐ろしく汚い優香をあっさり捨てた。
恋愛沙汰なんて傍から見ればそういうどうでもいい小さなことであっさり破局するもんである。身勝手なのはお互い様っていう。
でもラストで「お前の卵は俺の卵だ」と急にカッコよくなった。どういうセリフだw

「ノエ」
登場キャラクターの中で最も地味だが、ハンバーガーの食べ方は綺麗なためノアと結婚した。でもモスバーガーとかって絶対にミートソースがクリーム多めのシュークリームみたいに飛び出すよね。あれが上手に食べられたら免許皆伝感あるよね。

「レイ」
花のように美しい女性だが(実際に頭に咲いてる)ハンバーガーを豚のように食べる。

「ババサビブ」
バルカン星人風。自分たちの星の挨拶みたいな感じで顔を舐めてくるが特に意味はないらしい。
女性の生理的な周期で脱皮する。

「ハナさん」
チーズサンサンバーガーセットににダブルチーズサンサンバーガーを追加するのと、ダブルチーズサンサンバーガーセットにチーズサンサンバーガーを追加するので、なぜ代金が違うのかと素朴な疑問を店長に打ち明けたところ、「そんなことを末端のお前が疑問に思う必要はない」的なあしらわれ方をされたため、号泣、EMPを放射し店内の動力システムを落とす。

「堂本博士」
AI。セリフのバリエーションがおそらくペッパーの1万分の1しかない。抱きしめたい!お前を抱きしめたい!しかし私には首から下、ないからね!!

「ゼット」
あのクールな石田治部が「ビンビンですよ・・・」といつもの不敵な笑みで語っているだけで爆笑。

「メンデス」
あのクールな上杉景勝がまさかの出産・・・つーか産卵!!日本映画史に残るおぞましいシーンかと思いきや、まるでウミガメの産卵シーンのような謎の感動があった。しかし卵の一つはハナさんにダストシュートであっさり宇宙に捨てられた。こんな時キャプテンソックスがいてくれたら・・・!!!

「ズズ」
ヌルヌルしてる西川貴教。産卵シーンで彼の出番かと思いきや、マイクル・クライトンの『スフィア』的に優香に昆布を召喚されてしまった。

「ハトヤ隊員」
ウルトラセブンを知ってるなら彼のたどる展開に腹がよじれるほど笑える。「だけどなハトヤ、ハンバーガーショップで打ち明けるような話じゃないだろ」ってww
キャプテンソックスがとにかく絶妙にダサい。このダサさはなかなか狙って出せるもんじゃない。三谷幸喜おそるべし・・・!!
「ヘア!」という掛け声は小栗旬さんのアドリブっぽくて面白く、また、なぜか「ソックス!」の掛け声はSE的なエコーがかかっていたのも大爆笑。最後まで全くいいところがなく、キャスト全員に「チェックすんなよ!」「役立たず!」と暴言を吐かれて退場した。

 とにかく全キャラクター不思議の国のアリスのようにいかれていて、どれも某差別はヤメよう映画のウサちゃんやキツネさんのように、すぐには受け入れられそうにないのがいい。異文化理解とはそんなに甘いもんじゃないんだっていう。でも最後は歌で強引に着地させたところは似ている(^_^;)

物理学実験覚え書き②

 生還しました。

 教授のキャラが先週の利根川先生から、マスターキートンのユーリースコット先生になってました。Dマイナーだよ、これは君が本気で取り組んだものとは到底思えない(※実際はBでした)。昼が無理なら夜学びたまえ(※ネットカフェで)。
 とにかく今回の受講生のレベルは低い、と。こんなレベルのお前らに今後の科学技術を担う子どもたちの理科教育は任せられねえ!みたいな。
 これに関しては少なくとも私は返す言葉ないよ。当日にエクセルの表計算の仕方やグラフの作り方調べてたから。
 でも、2回目となると、さすがにエクセルの使い方にもなんとなく慣れてきたので、最終日には多摩ズーに繰り出す余裕も見せました。

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 ペコ(以下:ペ)「ええ、この園でろくろを回して10年ほどになります。」

 この動物園、チンパンジーの檻のキャプションがキャバクラとかホストクラブっぽくて面白い(宣材写真っぽい)。絶対インタビュー答えている時の写真だよねw
 というわけで(どういうわけだ)、エスポワールで繰り広げられた6つの実験について内容と感想をまとめていきます。

たわみによるヤング率の測定
アルミニウム、銅、鉄、真鍮(銅と亜鉛の合金)といった金属棒の年齢・・・じゃなくて強度を調べる実験。
金属棒のブリッジに一個200gのおもりを一個ずつ吊り下げ、金属棒がどれだけたわんだかを、光てこ法(金属棒に当てた反射光がどれだけズレたかを調べる測定方法)や、ダイヤルゲージ法(目盛り付きのバネを金属棒の上に当て、どれだけバネが戻ったかでたわみを測る方法)で調べる。
金属のヤング率Eは、金属棒の長さl3×荷重M×重力加速度g÷(金属棒の厚さa3×金属棒の幅b×ダイヤルゲージの目盛りe)と、非常にしちめんどくさい計算をしなければ算出できないので、実測データをまとめた表の値からヤング率をエクセルに計算させようとしたんだけど、エクセルってほとんどいじったことがなくて、当日に提出できず、近隣のネットカフェで大苦戦。ビターな初戦となった。
ちなみにエクセルってセルA×セルBをA✽Bって書くんだね。アスタリスクなんだ。

以下は測定データ。
吊るした荷重(おもり)がXgの時の、下に引っ張られた度合い(cm)とヤング率を各金属棒でそれぞれ求めた。
しかし単位をセンチメートルでヤング率を求めると(dyne/c㎡)というマイナーな単位で値が出てしまうので、この時の10につく指数をひとつ減らして(N/㎡)に変換した(1dyne=10-5N、c㎡=10-4㎡なので、1(dyne/c㎡)=10-1(N/㎡)になる)。
また、金属棒の厚さや幅はマイクロメーターを使って測定した。

ヤング率表.jpg
ということで、吊り下げたおもりによって試料(金属棒)が変形する度合いは、おもりの重さに比例し、また、形状の異なる真鍮の測定結果がほとんど同じ値であることから、形状によらず金属ごとに決まっていることがわかる。

オシロスコープを用いた電気信号測定に関する実験
オシロスコープの使い方をお勉強するだけのボーナス課題。
オシロスコープってそもそもなんなんだっていう話だけど、よく科学研究所とかに心電図的なモニターがあるじゃん。あれ。
つまり、時間的に変化する電気現象を波形に変換し、それをモニターに表示するマシーンがオシロスコープ。

オシロスコープの構造
オシロスコープを分解すると、最近の若い小説家志望者には死語になったらしいブラウン管が組み込まれていることがわかる。
平成世代のために説明すると、ブラウン管とはドイツのブラウンさんが発明した陰極線管のことで、真空のガラス管の中で、電子銃から陰極線(電子線)を発射し、それを蛍光板に当てることで画像を表示させる装置。このようにブラウン管を使った表示システムをCRT(カソード・レイ・チューブ)とも言う。

オシロスコープの原理
①カソード(陰極)と加速電極の間に高い電圧を加え、カソードをヒーターで加熱する。

②カソードから電子が放射され電子ビームになり、加速電極に向かって速度を加速させる。

③加速電極には中央に穴が空いているため、電子ビームは加速電極を通過してブラウン管の奥にある蛍光膜にぶつかり、そこに輝点を生じさせる(電子ビームは蛍光膜の所で収束するようになっておりシャープな輝点が描ける)。

④蛍光膜状に波形を描かせるために、垂直偏向板に信号電圧を加え、さらに水平偏向板に一定速度で大きくなっていく電圧を加えると輝点が左から右へ一定速度で移動し(スウィープ)、縦方向に電圧、横方向に時間軸を取ったギザギザの波形(のこぎり波)が描かれる。(スウィープはA→Bで繰り返し行われて、BにいったらすぐにAに戻しているため波形がのこぎり状になっている。)

同期
このように垂直偏向板に加えられた電圧信号は波形としてブラウン管面上に描かれるが、観測しようとする信号が同じ波形の繰り返しの場合には、一回目のスウィープと二回目のスウィープで表示する波形の書き出し位置(周期のタイミング=位相)が異なってしまうため、ブラウン管上に波形がいくつも重なってしまい見苦しい。
そこで、観測信号の波形をブラウン管面上で静止させるために、観測信号とのこぎり波のタイミングを合わせる工夫(同期)をする必要がある。全く同じ形の波が周期的に現れれば、画面上の波は止まって見えるからである。
じゃあ、具体的にどうやるかというと、トリガー回路を使って、任意の電圧になったら、観測信号に対しパルス信号を定期的に発生させるようにする。これによってスウィープ信号を発生させる。
さっきも言ったように、スウィープ信号は通常、ブラウン管の右端(に相当する電圧)に達すると、急速にもとの左端(に相当する電圧)に戻り、再びスウィープを開始するようになっているが、次のパルスBが来るまでスウィープを休止させる(待ちの時間を与える)と、オシロスコープは各スウィープのたびに同じ波形を描くことができる。
まさにMYST4。

参考サイト:『オシロスコープの原理 岩通計測株式会社』https://www.iti.iwatsu.co.jp/ja/support/05_07.html

オシロスコープの操作パネル
インテンシーボタン:線の輝きを調整する。
フォーカスボタン:輝線のピントを合わせる。
ポジションボタン:グラフの位置を上下に移動させる。

TIME/DIVボタン
テレビリモコンのチャンネルや音量をザッピングするボタンに似ている。
モニター上の格子1マス(ディビジョン=DIV)あたりの単位時間(TIME)を変更できる(波形の横幅が変わる)。
モニター上では0.2ms/DIVのように表示される。

VOLT/DIVつまみ
このつまみを回すと、モニター状の格子1マス(ディビジョン=DIV)あたりの電圧(V)を変更できる(波形の振れ幅が変わる)。
※プローブの倍率を×10(減衰率×10)にした場合は、実際の電圧は1/10になるため、モニターに表示される値を1/10に直すのに注意!
例:0.5V→0.05Vとして計算。

レベルつまみ
うまく調整すると波形の動きを止めることができる。

INPUT CH
入力チャンネル。発信機からの配線をここに接続する。チャンネルは2つある。

キャリブレーション(校正)
測定を始める前に行うオシロスコープの動作チェック。
電圧と周期を表示面から読み取るために、波形が画面外に行かないようにする目的がある。
以下、キャリブレートの手順について示す。

①プローブ(電気探針)をオシロスコープの CH1 INPUT に接続する。プローブの部分には倍率を切り替えるスイッチがあるが、これは通常10倍(×10)にする。

②オシロスコープの電源を入れる前に、操作パネルのスイッチ類を基本ポジションにセットする。

③電源を入れる。

④操作パネルの CH1 VARIABLE を右に回し切る(軽くロックがかかる)。

⑤輝線調整を行う。 
TRIGGER MODE が AUTO 、 TRIGGER SOURCE が[CH1]、VERTCAL MODEが[CH1]になっていることを確認し、 CH1 GND のボタンを押して押し込まれた状態にする。
CH1 TIME/DIV を操作し 1[ms]程度にする(この値は画面上に表示される)。

※画面中央の水平目盛線付近に横一本の輝線が表示されない場合は、 INTENSITY と CH1 POSITION を調整する。

※画面に太い輝線が現れた場合は、 INTENSITY と FOCUS で輝線を細くする。

※画面に傾いた輝線が現れた場合は、中央水平目盛線と輝線が平行になるように TRACE ROTATION をドライバーで調整する。最終的に線が細くなるように調整する。

⑥CAL信号を観測する。 
PROBE ADJUST にプローブを接続し(※つまりプローブのついたケーブルはオシロスコープからオシロスコープにつながっている)、 CH1 GND を押し込まれていない状態、 CH1 AD-DC を[DC]へ切り替える。

波形観測の方法
キャリブレーションが終了したら、発振器を用意し、発振器を、「正弦波」、「周波数1[kHz]」、「ATTENUATOR 20[dB]」、「AMPLITUDE(のダイヤルを右いっぱいにひねる)」、に設定する。

①使用CHのGNDのスイッチを押し込まれていない状態にする。 

②発振器のOUTPUTと、オシロスコープのINPUTをプローブでつなぐ。その際、プローブはGND端子(オシロスコープにつなぐ側)からつなぐ。

③使用チャンネル(CH)に合わせて、TRIGGER SOURCE を選択(CH1を使用する場合は[CH1]を押した後にTRIGGER LEVEL を調整)して、波形を表示(停止)させる。
 
④表示された波形が観測しやすい太さになるように TIME/DIVとVOLTS/DIVを調整する。

⑤現れた信号から必要な測定(電圧と周期)を行う。

電圧の測定
波のピークの下端が画面上の適当なグリッド線に、ピークの上端がセンターグリッドに合うように、波形の位置を動かし、合わせた後に何[DIV]あるのかを読み取る。

電圧[ⅤP-P(ピーク・トゥ・ピーク)]は次の式(1)で求められる。

ⅤP-P = X[VOLT/DIV]×L[DIV]×A・・・(1)
 
 X:[VOLT/DIV]のレンジ
 L:波形の上端から下端までの距離(振幅の二倍の大きさでマス目の数を数える)
 A:プローブの倍率(×1と×10に設定できる)

周波数の測定
画面上の水平目盛線(GND線)と波形の交点を二つ決めて、その二点間の距離L[DIV]をマス目の数から読み取る。

周期[T]は次の式(2)で求められる。

T=Y[TIME/DIV]×L[DIV]・・・(2)

 Y:[ms/DIV]のレンジ
 L:GND線と交差する二点間の距離

リサジュー図形の測定
オシロスコープには「X―Yモード」と呼ばれる測定モードがあり、CH1INPUTとCH2INPUTに入力された信号を、それぞれY軸(垂直方向)信号、X軸(水平方向)信号としてリサジュー図形を描くことができる。

操作手順
①VERTCAL MODEとTRIGGER SOURCEを[CH1]にする。
②CH1INPUTに発振器1を接続し、見やすい波形になるように発振器1を操作する。
③VERTCAL MODEとTRIGGER SOURCEを[CH2]にする。
④CH2INPUTに発振器2を接続し、見やすい波形になるように発振器2を操作する。
⑤VERTCAL MODEを[CH1]にする。
⑥HORIZONTAL MODE の[ALT]と[B]を同時に押し、X-Yモードに切り替える。
⑦発振器1と2の周波数調整つまみを微調整し、画面上の波形ができるだけゆっくりした動きになるようにする。ここで表示されたものがリサジュー図形。
⑧発振器の周波数調整つまみを調整し、周波数比を変更してみる。

リサジュー曲線の仕組み
リサジュー図形とはオシロスコープによって同時に測定している2種類の波形(単振動)のひとつを縦軸、もう一つを横軸に表示することにより描かれる平面図形である。
この時のふたつの波形の周波数や位相を変えることによって、リサジュー図形はシンプルになったり複雑になったり、回転したり静止したりする。
1855年にフランスの科学者リサジューによって考案された。

リサジュー図形から分かること
リサジュー図形の形状から2つの波の振幅、位相差、周波数の違いを調べることができる。

1.振幅
図形の縦と横のふれ幅を見れば普通に分かる。

2.位相差
二つの波の周波数が同じ(1:1)場合

①リサジュー図形が右肩上がりの直線
→二つの波の山と山がぴったり合っている。(位相差0°)

②リサジュー図形が円
→二つの波はsinとcosの関係のようにずれている。(位相差90°)

③リサジュー図形が楕円
→二つの波のずれが、①と②の中間である。

ちなみに、位相差φはリサジュー図形の高さをA、リサジュー図形とY軸の二つの交点の距離をBとすると以下の式で求めることができる。

φ=sin-1(B/A)

3.周波数
二つの波の周波数がずれると、それに伴い位相もずれ、リサジュー図形の形が変化する。例えば周波数比が1:1の時では直線→楕円→円→楕円→直線と移り変わる。
リサジュー図形の形から周波数比を調べたい時は、リサジュー図形を四角形で囲み、縦の辺と横の辺でそれぞれいくつの波が接しているかをカウントする。

リサジュー図形.jpg
例えば、上の図のようなリボン状のリサジュー図形は縦の辺に波がひとつ、横の辺に波が二つ接しているので(波形のブレは無視してくれ)、周波数比は1:2だということがわかる。
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