『80日間宇宙一周 CRIMSON WING』没シーン

 今回の脚本には没シーンが数多くあります。
 その中でもとりわけ面白かったんだけど、物語のテンポが悪くなるということで使いようがなかった「オルドビス宮殿」のシーンを特別公開!
 制作裏話は、ちょっと時間がないのでまた今度。ではお楽しみください。

没だけど。

エド「社長くれぐれも発言には気をつけて・・・」
ヴィン「どうせこんな番組誰も見てねえよ」
「しっ!スタッフの人聞いてますから!!」
「だいたいオレが出たいって言ったわけじゃないからね。」
「そうですが、各方面からどうしても出て欲しいと・・・社長のメディアへの露出率で航空ショーの入場者数が大きく変わるので・・・」
「ふうん、土星の発展のためなら仕方ないか。」

「今夜のオルドビス宮殿は宇宙を股にかけたグローバル企業プロメテウス社長ヴィンセント・レイセオンが登場!年商1000兆ドルを稼ぐ宇宙最大のキャピタリストの成功哲学に迫る!」

司会「ようこそヴィンセント」
ヴィン「ありがとうダニー、ちなみに去年の年商は900兆ドルくらいだったと思うよ。みんな頑張ってくれたし、もうちょい稼ぎたかったんだけどね。」
司会「・・・航空ショーで発表した新型戦闘機ですが、そのコンセプトについてまずはお聞かせください」
ヴィン「ああ、あれね。あれがね、売れると思ったんだよ。でもさあどこも買ってくんねえの。
あれ、セレブ御用達の高級ホテルのドアと一緒だよな。」
「どういうことですか?」
「高級ホテルのドアって自動ドアじゃないんだよ。相変わらずドアマンが開けてくれんの。
アトラスホテルの社長にこの前聞いたんだ、なんでなのって?
そしたらあれ、ホスピタリティの精神が・・・とかは建前でさ、ドアマン雇ったほうが機械化するよりも安いんだって。それに人間に開けさせたほうが金持ちは優越感を感じるんだってさ。あのじじい面白いこと言うよな~って。あれ?これ言っていいんだよね?まあ適当に編集してよダニー」
「生放送です・・・」

エド「ゴードン氏これ見てたら卒倒するぞ・・・」

ヴィン「で、兵器もそうなんじゃないかなって。
本当は人が死なない戦争が理想なわけで、だからそういう戦闘機を作ったんだ。
でも死者が出てもいいから戦闘機に兵士を乗せたい奴らがいるんじゃないかって。オレはそういうのが嫌いなんだ。平和のための戦争って言うなら人死にが出ないほうがいいわけじゃない。
これからの目標は人の命を機械よりも重くすることだね。徹底的なコストカット。
そうすれば建前どうこうなんてものは事実にひれ伏すって。ミラージュ買ったほうが兵士雇うよりも安上がりだぞっていう事実にね・・・」
「多国籍企業が兵器製造を手がけるということで死の商人という批判もありますが、その点はどうお考えですか?ミラージュはパイロットは死にませんがたくさんの人間を殺すステルス爆撃機ですよね?」
「そうね。空から農薬まくもんじゃないからね。しかし我々はボーダーレスなグローバル世界に生きている。
公正なルールに基づく競争によって星によって格差ができるのは仕方がない事なんじゃない?
うちは金さえ払ってくれればどこにでも平等に売るからね。
土星の発展には一生懸命貢献してきたし、これからもそうするつもりだけれど。土星だけを依怙贔屓はしないよ。」
「ほかの星が購入したプロメテウスの兵器によって土星が攻撃されても?」
「それ以上に土星がうちの武器を買えばいいでしょって。」
「話を土星に移します。
昨今エコロジーが叫ばれていますが、都市部のエネルギーの大量消費が土星の環境を破壊しているという指摘は?」
「その手の批判はいつの時代にもあった。しかしデータを見たまえ。30年前と現代、死亡率はどっちが高かった?こんな住みにくい星はなかったよね?
当時の医師会や保険会社がどんなに批判してもラメトリーの登場で多くの人の命が救われたことには変わりがない。
君らの快適な生活は君らが叩いているテクノロジーによってなされたものだ。つまり僕の会社の技術だ。最近考えているんだ。そんなに土星にやさしくしたいならぼくはいつでも星中の電気を止める準備は出来ているってね。」
「それは極端な・・・」
「冗談だよ。そんな無責任なことはしない。私はこの星を愛している。だから最終的には責任をもって土星に住むすべての人々が健康で豊かに暮らせるようなインフラを整備したい。
現在文明の恩恵に預かっているのは全人口のたった二割に過ぎない富裕層だ。
しかし私はこれからもどんどん土星を開発し残りの八割も豊かにしていきたいね。
それを環境破壊と言いたいなら構わない。
今日はありがとうダニー」握手をしようとするヴィン。
「私の名前はジョンです・・・」

『80日間宇宙一周 CRIMSON WING』脚本⑧

プロメテウスタワー地下エリアに警報が鳴り響く
通路の警備装置を次々に破壊していくスカーレット。
振り返るスカーレット「遅いわよ傭兵!」
遅れて通路を走るミグ。背中に大きな銃を背負っている。
ミグ「はあはあ・・・無茶言うな、こっちは30過ぎてんだぞ・・・」
通路を走りながら尋ねるスカーレット「ねえ・・・あなたはなんで彼を許せたの・・・?」
ミグ「彼?」
スカーレット「ライトよ。」
ミグ「大した理由じゃないさ・・・」
「教えてくれたっていいじゃない」
「なんか・・・もう疲れちゃったんだよ・・・いちいち怒っててもしょうがないだろ?」
「え・・・?それだけ??」
微笑むミグ「だってめちゃくちゃだもんあいつ・・・」
釣られて微笑むスカーレット。

その直後いきなりミグがなにか巨大な腕にふっとばされる
スカーレット「ミグ!」

エド「なにを企んでいる?もしかして発電所をとめるのかな?」
スカーレット「それは・・・」
コントロールセンターに続く広大な資材搬入通路で、パワーローダーのようなマシンに乗ったエドが行く手を塞いでいる。
エド「あのバカ社長の置き土産だ。パワーアシスト型介護スーツ「SUNFOWER」お値段据え置き13000ドルだよ」
血を流すミグ「本来の用途と違うんじゃないか・・・」
倒れたミグに手を伸ばすスカーレット「ミグ立てる・・・?」
ミグ「はあはあ・・・胸を引き裂かれた・・・シスターはコントロールセンターへ。手負いの私はここであれを食い止める・・・」
スカーレット「いいえ・・・一緒に戦ってちょうだい。冥王星の軍人ってそんなヤワなの?」
ふらふらになりながら立ち上がるミグ「あいつを倒すのに殺し屋の助けなんていらないって言ってるんだよ・・・」
エド「なあにまとめて面倒見てやるさ・・・」
背中に背負っていた巨大な銃を構えるミグ。
エド「え・・・何それ?」
ミグ「離れてろ。聖職者は見ちゃダメ」
EM銃を発射するミグ。

エド「!!」
とっさにプラズマ化した弾道を避けるパワーローダー
エド「はははは外した!」
ミグ「・・・・・・。」
アームを振り上げるエド「ならばこっちの番」
頭上の天井が抜けて上の階の車庫に置いてあったゴルディオンハンマー12がパワーローダの上に落ちてくる。
建設重機の下敷きになるエド「ぎゃああああああ!」
ミグ「これは不幸な事故だ。」
ゾッとするスカーレット「あなたって・・・」



プロメテウスタワーの最上階を目指して飛ぶリンドバーグ号
ヘッドセットをつけたライト「・・・ミグたちが地下のコントロールセンターを制圧した、あとはお前の承認だけや!」
何かに気づくヴィン「あ、ライト!」
ヴィンが正面を指さす。
リンドバーグ号の進む先にミラージュが不気味に浮いて待ち構えている。

ミラージュと対峙するリンドバーグ号。
ライト「よう、久しぶりやな・・・レオナ・・・飛び方までそっくりや」
ヴィン「殺される・・・!」
ライト「滑走路でお前を下ろす余裕はなくなった。社長室の窓を機銃で割るから直接飛び移ってくれ。」
ヴィン「そんな曲芸できるわけないだろ!地上1000mだぞ!」
ライト「ヒーローにぴったりの高さやな。じゃ頼むで!」

プロメテウスタワーの最上階に接近するリンドバーグ号。
機銃で窓ガラスを割りヴィンに飛び移れと促すライト
「さあ飛べ!」
ハッチを開けるヴィン「無理だ!もうちょい寄ってよ!」
ライト「バカか!はよせい!ミラージュがこっち来てんねん!」
リンドバーグ号に機銃を発射するミラージュ。
衝撃で大きく揺れるリンドバーグ号。
リンドバーグ号から落ちるヴィン
ライト「ヴィン!!」

割れた窓のへりにつかまっているヴィン「ライトかなりやばいよ~~~!」
ライト「待ってろ今助ける!」
リンドバーグ号に体当たりをしかけるミラージュ。
急上昇してミラージュをかわすリンドバーグ号。
社長室のワンフロア下に突っ込むミラージュ。
力尽きヘリから手を離したヴィンがミラージュの上に落ちる。
ビルから機体を引き抜き上昇するミラージュ。

ライト「今や!」
タイミングを合わせてミラージュから社長室に飛び移るヴィン。
ヴィン「フィ~こんなワイルドな出社は初めてだぜ・・・」
ライト「うるさいボケ!とっとと発電所を止めろ!」

急旋回しリンドバーグ号に向き直るミラージュ。
リンドバーグ号に狂ったように突っ込んでいくミラージュ。
ミラージュと戦うリンドバーグ号。
ライト「なにをそんな怒っとる・・・!もうお前には会えへんのや!」
ミラージュの後ろを取ろうとするリンドバーグ号。
リンドバーグ号の機銃がミラージュをかすめる。
しかしなかなかミラージュの後ろが取れない。
リンドバーグ号とミラージュの一進一退の攻防が繰り広げられる。

社長室
認証装置を開け緊急停止コードを打つヴィン。最後のスイッチ。
ヴィン「これを押せばオレがこの星で積み上げてきたものが全て終わる・・・」

目で追えないスピードで飛ぶリンドバーグ号だが、ミラージュのコンピューターはそのリンドバーグ号の動きすら正確にトレースしていく。
徐々にライトの飛び方のパターンを学習していくミラージュ。
ミラージュの機銃がリンドバーグ号に当たり出す。
ライト「くっ強い・・・!」
ライトの動きを完全に読んだミラージュがリンドバーグ号にぶつかってくる。
「!」
その刹那ミラージュの動きが不安定になる。

ミラージュのコンピューター
「残弾ゼロ」の表示。
まるで苦しみもがいているかのようにガタガタ震えるミラージュに照準を合わせるライト

ライト「・・・これ以上オレの思い出を汚すのはやめてくれへんかな・・・」
ミラージュにミサイルを発射するリンドバーグ号。
爆発するミラージュ
ライト「あばよ、レオナ・・・」



万里の長城発電所が機能を停止していく。
首都カッシーニの美しい夜景が次々に消えて行く・・・
真っ暗な社長室
ヴィン「・・・階段で降りるのか・・・」



プロメテウス社の記者会見
包帯だらけのエド「つまり万里の長城発電所の復旧のめどは立っておらず、今後の電力供給は大幅に減り・・・その、輪番停電をすることに・・・」
マスコミ「なんで電気が来ねえんだよ!」
「ラ・メトリーが止まっていったい何人の患者が死んだと思ってるんだ!」
「責任取れ!」
大ブーイング。
エド(さんざうちの会社がエコに反するとか書いておいてこいつら・・・!!)



ハイペリオン教会
ろうそくの火が教会を灯す。
戦争で身寄りのない孤児が教会に集まりクリスマスパーティをしている。

所ジョージ「♪わたくしは23にな~るまで奈良の公園にいるのがトナカイだと思ってた~」

ミグ「はい、ではサンタさんの登場です!」
サンタの格好をしたヴィン「や~チルドレン、プレゼントだよ!」
トナカイの着ぐるみを着たライト「なんでオレが・・・」
子供が元気に集まってくる。
ヴィンが修理したおもちゃを喜んでもらう子供たち。

ヴィン「オレたちこれがやりたかっただけなのかもな・・・」
珍しくお酒を飲むライト「そうかもな・・・」

子供たちに取り囲まれるミグ
子供「ね~おばちゃん、お腹減った」
ミグ「あ、ちょっと待っててね、七面鳥が焼けるから・・・お、おい二人共仕事は終わったような感じで座ってないで手伝ってくれよ・・・!こっちは火から起こしてるんだぞ」
ソファから立ち上がるヴィン「料理のことなら任せろ!本場のオレンジソースを作ってやる」
ミグの方に歩み寄るヴィンを見てそっと教会を出て行くライト。

教会の外は静かに雪が降っている。
スカーレットが教会の外に立っている。
ライト「キミも入りなよ。あんたがずっと守った教会やろ?」
スカーレット「私には神に尽くす資格がないから・・・」
ライト「まだヴィンセントを許せへんのか・・・?」
スカーレット「・・・・・・。」
ライト「もうええんちゃうかな・・・
そりゃあいつの会社がしでかした罪は決して消えるものやないけれど・・・」
スカーレット「私・・・幼い頃教会で革命軍にリンチされたことがあるの。」
ライト「え・・・」
スカーレット「こいつらは強くない・・・武器があるからだ・・・
こんな残酷な人間には決してならないって神に誓ったのに・・・私たちは手を血に染めてしまった・・・
なんでこうなっちゃったんだろうな・・・」
教会を離れていくスカーレット
「いくのか?」
「ええ・・・いろいろありがとう。天国の首領もきっと喜んでいるわ。」
「なら・・・最後にあんたの名前を教えてくれへん?」
「・・・サーシャ」
「サーシャか・・・いい名前やね」
「ありがとう」

教会に戻ってくるライト。
ほろ酔いのミグ「おい、ライト何してるんだよ。お前もこっち来いよ!」
ライト「よ~し!じゃ、おっちゃんの飛行機乗る人~!」
子供たちが手を上げる「はいはいは~い!」
ヴィン「おいおいお前けっこう酒飲んでたけどちゃんと操縦できんのか?」
ライト「それはそうやな・・・じゃあお前が迎えに行ってやれや」
ヴィン「誰を?」

雪道をひとりで歩く殺し屋スカーレット。
彼女の前にイエーガーが着陸する。
戦闘機から降りて彼女に歩み寄るヴィン
ヴィン「サーシャ・・・?」
ヴィンセントの方へ駆け寄るサーシャ



暖炉にあたりながら窓の外を眺めるライト。
隣にはミグが座っている。
ライト「そういえば、また傷ができちゃったな。
スタンプラリーは全部押したから、またあのマシンで消してもらうか?」
首を振るミグ「ううん、もういいんだ。私はこの傷を受け入れるよ。」
ライト「そうか」
ミグ「私さ・・・昔好きな男の人がいてさ。まあ若いころちょっとだけ付き合っていたんだよ。
で、その人に胸の傷が気持ち悪いって言われちゃってさ・・・
それ以来その傷がコンプレックスだったんだ。
もしかしたらあんな危険な仕事を繰り返していたのも、ほかの傷をつけて胸の傷を目立たせないようにしていたのかもしれない・・・」
「そんなことせんでも・・・」
「馬鹿だってことはわかるんだ。でも・・・私は女なんだよ。
・・・なあ、ライト・・・私のこと・・・冷たいとか面倒くさいやつだって思ったことはないか?」
首を振るライト「一度も・・・」

電気のないクリスマスの夜。

おしまい

『80日間宇宙一周 CRIMSON WING』脚本⑦

プロメテウス社役員室
役員が会議をしている。
役員「我が社の株は75から22に大幅に下落。
航空ショーで与えた損害は23兆3000億ドル。土星の国家予算に匹敵します。」
ヴィン「ありがとう、チャン。
そういうことだ。我が社としてはただちにミラージュの生産を打ち切り、この異常事態に対処しなければ・・・」
席から立ち上がるエド「それはどうでしょうか?
あんな恐ろしい破壊兵器を公表してしまった以上、どの星もミラージュを買わないわけにはいかないでしょう。
我が社はミラージュを生産し続け、ミラージュの抑止力にするしかない。」
ヴィン「・・・どういうことだ?オレは社長だぞ。」
エド「昨日まではね。役員会はたった今あなたの解任を決めました」
ヴィン「なんだと!?」
エド「土星のために尽力したあなたが最終的に土星にこのような災厄をもたらしてしまったのは私としても大変に残念に思います。
しかし今、この星のいたるところで罪のない貧困層や少数民族がミラージュによって虐殺されている。レイセオンCEOにはその責任を取る必要があります。」
ヴィン「お前らあれを作り続けるっていうのか!?土星全土がローストになるぞ!」
気まずそうに目をそらす役員たち「・・・・・・。」
エド「兵器メーカーとしては優れた兵器があるなら売らないわけにはいかないでしょう。
あれが欲しい惑星はいくらでもあるんだ。
ミラージュがもたらす利益は今回の損失を補って余りある。」
ヴィン「航空ショーの惨状を見てまだそんなこと言うのか・・・」
エド「あなたの言ってたとおりだ、ヴィン。ミラージュは戦争を変えますよ。」
ヴィン「・・・お前・・・もしかしてお前がミラージュを意図的に暴走させたのか・・・?」
エド「人聞きの悪い。あの試作機を強引に動かしたのはあなたでしょう。」

エドの私設オフィス
ミラージュのコックピットからの映像をリアルタイムで他の星のテロリストに中継する
他の星の独裁国家やテロリストからたくさんの発注が来る
裏口座の売上額が天文学的な数字にまで膨れ上がっていく



リンドバーグ号のコックピット。
コックピットの奥でミグの缶ビールを飲むヴィン。
それを横目で見つめるミグ「あの人大丈夫か・・・」
Yシャツ姿のヴィン「もうダメだ・・・エドの野郎にまで裏切られるなんて・・・」
操縦桿を握るライト「裏切られたって・・・お前はどれだけあの副社長を信じていたんや・・・」
ヴィン「・・・え?」
ライト「人を信じてない奴に誰が心を開く思う・・・まあ過ぎたことを言ってもしゃあないけどな。
今はオレたちにできることをやろう。」
ヴィン「ライト・・・お前って優しいな」
ライト「うるさいわ」

ハイペリオン教会
教会の前にリンドバーグ号が着陸する
ヴィン「ここは?」
ミグ「ハイペリオン教会だ・・・」
ライト「ああ、ミラージュの秘密を知る最後の手がかりや・・・」
ヴィン「最後は神頼みってか・・・」

廃墟
ドヤ街があった場所に降りていくライト
スカーレット「おかえりなさい。言われたとおり探しておいたわよ」
ライト「ありがとな・・・」
スカーレット「土星のためよ・・・」

ヴィン&ミグ&スカーレット「あ!!」
ライト「へ?」

ヴィンに気づくスカーレット「ヴィンセント・レイセオン!よくも・・・!」
ライト「おいそれはあとでいいやろ。」
ヴィン「もう殺してくれていいよ・・・」
かつてのターゲットは髪はボサボサでYシャツのえりは汚れている。
スカーレット「・・・?なんか随分みすぼらしくなったわね」
ライト「会社乗っ取られちゃったんや」
スカーレット「資本主義なんてそんなものよ・・・当然の報いね」
ライトに耳打ちするミグ「おい、お前・・・その女は緋色の旅団の暗殺者だぞ・・・」
ライト「緋色の旅団はもうないんや。彼女はただの動けるシスター」
スカーレット「よろしくね、ミス・傭兵」
ミグ「誰が傭兵だ・・・」

ライト「・・・でミラージュに関する情報は?」
汚れたオープンリールテープのケースを差し出すスカーレット
「これしか残ってなかったけど・・・」
ヴィン「・・・なんだそれ?」
ライト「緋色の旅団はここでお前の会社の情報を傍受していた・・・そのデータを遡ればなにか分かるかもしれんやろ」

礼拝堂
レコーダーにテープをセットする。

ミラージュ開発プロジェクトチームのやり取り
「4月14日。開発段階522日目。
ミラージュのアビオニクスは大変高性能だが、パイロットコンピューターがエネルギーを食いすぎて、すぐにエネルギー切れになってしまう。CPUの冷却システムについてはおおよそ問題はない。」

「554日目。またエネルギー切れになって墜落した。だが搭載されたオートパイロットの技術はとんでもないレベルだ。エネルギー問題さえ克服できればこのミラージュは冥王軍を抜き宇宙最強の航空部隊となるだろう。」

「562日目。また墜落。あまりに持久力がない。
これではいくら戦闘で負けなしでも空母に引き返す前に落ちてしまう。
ここまで進捗状況が悪いと、気まぐれなヴィンセントが計画を打ち切る可能性もある。ここまで来て開発中止にされてたまるか」

「599日目。冥王星から来たある男と出会う。彼は死の商人サーペンタリウスとコネがあるらしい。相手が死の商人だろうがなんだろうが今の我々にはパトロンがいる。」


ミグ「サーペンタリウス・・・」
ヴィン「エドのやつ、やっぱり死の商人とグルだったんだ」
ライト「まあ、続きを聞いてみよう」
スカーレット「そうね、そうしましょう」

「733日目。サーペンタリウスの資金協力で無事ミラージュのエネルギー問題は解決した。
社の上層部も、まさか万里の長城の太陽光発電所から電子パイロットに直接信号を飛ばすとは思わないだろう。
つまりミラージュの動力源は太陽ということになる。太陽がある限りミラージュは作戦を実行し続ける。素晴らしい!」


ライト「!」
ヴィン「万里の長城だって!?」
スカーレット「そう言ったわ・・・!」

テープを止めるライト。
ライト「さてと・・・どうする?」
スカーレット「決まってるでしょ。万里の長城を止めましょう。それしかない・・・」
ヴィン「ちょっと待て!あの発電所は土星の65%の電力を供給しているんだぞ!
それを停止するってことは首都カッシーニを中心に土星の6割以上が停電することに・・・」
スカーレット「ほかにミラージュのパイロットを止める手段があるの?
こうしている間にもミラージュは土星の各地で虐殺を繰り返しているわ・・・
あなたはどう思うの天才発明家?」
ライト「電気を止めて戦争が終わるなら安いもんやろ。オレは彼女に賛成や。」
スカーレット「ありがとう」
ライト「約束したしな・・・」
ヴィン「おいおい・・・」
ミグ「で、どうやって実行する?」
ヴィン「あんたもやる気かよ」
ミグ「あなたはパーティでこう言った。戦争で失われる命を救うためにミラージュを作ったと。ならば、我々がやるべきことは決まっているはずだ・・・」
スカーレット「ふん、資本主義者の詭弁ね」
ミグ「私はリアリストな軍人だ。世界から完全に戦争や兵器がなくなるとは思えない・・・
・・・だが、手段は違えど少しでも世の中をよくしていこうとする志は、緋色の旅団もプロメテウス社も一緒だったんじゃないか?」
スカーレット「この女なんてこと言うの!こんな金の亡者と一緒にされちゃたまらないわ!
この男の会社がいったい何人の人間を殺したと思ってるの!」
ミグ「それはお互い様だろ・・・」
スカーレット「・・・え?」
ミグ「緋色の旅団が私の星でやったこと・・・私は一生忘れない」
スカーレット「・・・あれは一部の過激派が・・・」
ミグ「でも私はあなたたちを許す。許さなきゃいけないんだ・・・」
スカーレット「・・・・・・。」
ミグ「あなたはまるで昔の私だ・・・
実は私も、最初はこのライトとは思想の面で違いがあって対立ばかりしていたんだ・・・
でもそれは、あまりにも自由なライトに私があこがれと嫉妬を感じていただけだった。」
スカーレット「なにが言いたいのよ」
ミグ「国家や思想が違っても・・・許す強さがあれば、人は分かり合えることはできるんだよ」
スカーレット「・・・・・・。」

ライト「ヴィンセント?」
破壊された礼拝堂をぼんやり見つめるヴィンセント
ヴィン「そういえば聖書にそんな話があったな・・・ルカの福音書第23章だっけ。
ずっと忘れていたけれど」
スカーレット「え・・・」
意を決したように立ち上がるヴィン「万里の長城の発電所をとめるのは、そう簡単じゃない。
・・・というか永久に止めるつもりはなかったからね。二重のロックを施した。
あれを止めるにはプロメテウスタワー地下にある発電所のコントロールセンターで認証装置のロックを外し、私だけが知っている緊急停止コードを打たなければならない。」
ミグ「認証装置はどこに?」
ヴィン「タワー最上階の社長室に隠している。」
スカーレット「・・・ミラージュが妨害する可能性があるわ・・・」
ライト「あいつはオレに任せろ・・・オレも過去にケリをつけなきゃな。」

『80日間宇宙一周 CRIMSON WING』脚本⑥

航空ショー
ガリレオガリレイ国際空港の広大なスペースに数々の新型戦闘機が展示されている。
新型機のそばではコンパニオンが笑顔で手を振っている。
マスコミのフラッシュがたかれる。

プロメテウス社のブースにエドが駆け込んでくる。
エド「社長大変です!昨夜飛び立ったミラージュが帰還していません・・・!」
ヴィン「迷子になっちゃったのか?」
ミグ「ライトは?見つかったのか?」
エド「いえ・・・途中から通信が途絶えて・・・」
ヴィン「バカな犬みたいな飛行機だな。」
エド「だから私は反対したんです・・・!航空ショーでのプレゼンはどうするんです!?」
ヴィン「まあ、どのみち制御できない欠陥品だったんだから、それがショーの直前に分かってよかったじゃん。そんなん飛ばしても恥かくだけだったよ・・・」
エド「そんな・・・私のプロジェクトチームは欠陥品など・・・」
ヴィン「でも帰ってこなかったんだろ?今は製造物責任法って言ってうるせえから。」
エド「・・・・・・。」
ヴィン「そんなに落ち込むなって。在庫はほとんどサーペンタリウスに押し付けちゃったわけだしさ」
ミグ「サーペンタリウス!?・・・あの戦闘機を死の商人に売りつけたんですか?
それはテロリストや犯罪組織に武器を流すことと一緒ですよ?」
ヴィン「格安でね。あいつら怒ってるだろうな・・・」
ミグ「欠陥品でよかったって言うんですか?」
ヴィン「そんなに怖い顔するなよミグ・・・こっちだって社員に給料払わなきゃいけないんだから・・・」
ミグ「もしサーペンタリウスがその戦闘機を改造したら?」
ヴィン「・・・あいつらにそんな技術ないよな?」
エド「私は知りませんよ・・・」
呆れるミグ「信じられない・・・」

プロメテウスのブースにやってくる軍服姿の将軍
アトラス将軍「やあ、ヴィン。昨日のパーティはまいったよ・・・」
ヴィン「やべえこういう時にかぎって・・・」
エド「どうするんですか?」
ヴィン「なんとか誤魔化せ」
エド「無茶言わないでください、こんなにマスコミがいては隠しとおせませんよ。」
ヴィン「あのポンコツを作ったのはお前だろうが・・・!」
将軍「しかし、キミの戦闘機は素晴らしいな、殺し屋に狙われるだけだ」
ヴィン「え?」
将軍「昨夜遅くに基地にミラージュから一報が入ったよ。」
テレックスの用紙を見せる将軍

「EKIA(作戦で敵を殺害):ニコライ・ベルゲルミル(緋色の旅団総帥)」

将軍「あっさり緋色の旅団のトップを探し出し抹殺するとは、さすがだな。」
テレックスを怪訝な顔で見るヴィン「・・・・・?(エドの方を向いて)お前?」
首を振るエド
将軍「我々としては早くミラージュの現物を見たくて仕方がないよ。
実地飛行でその性能をこの目で見ればすぐにでも軍に働きかけて20000機発注しよう」
ヴィン「二万・・・!?」
将軍「言っただろ?我が軍はいい兵器には金は出し惜しみしない。
・・・でミラージュはどこだね?」
ヴィン「こっちとしても売ってやりたいんだけど、あのミラージュには欠陥が・・・」
空を指差す将軍「あ、あれか!」
振り返るヴィン「え?」

航空ショーの会場に飛行してくるミラージュ
エド「帰ってきた・・・」
ヴィン「おい、信号出して着陸させろ」
ブースの奥に駆けていくエド「はい・・・!」

空港の上空では別の会社の戦闘機F88フェンリルが編隊を組んでアクロバット飛行をしている。
綺麗な飛行機雲を残す編隊。
観客が歓声を上げる。
フェンリルの編隊に接近するミラージュ

観客席
双眼鏡を掴んで空を見上げるミグ「なにか様子が変だ・・・」
ミグ「観客を逃がしたほうがいい・・・」
シャンパンを飲みながら真紅の機体をみつめる将軍「なにを言ってるんだ?」
フェンリルの部隊に速度を上げて向かっていくミラージュ。
観客「なんだあの赤い戦闘機?」
ミラージュの編隊に真正面から突っ込んでいく。
「ぶつかる・・・!」

すれ違いざまに編隊の一機を切り裂くミラージュ
翼がへし折れ回転しながら墜落していくフェンリル。
滑走路に落ちて爆発する。

将軍「今年のショーは激しいな」
戦慄するミグ「いいや、そうじゃない・・・」

フェンリルのパイロット「なんだあれは!?」
ミラージュがミサイルでもう一機のフェンリルを吹き飛ばす。
パイロット「暴走してる!全機散開!戦闘準備!」
フェンリルが編隊を崩しミラージュとドッグファイトをはじめる。
フェンリルの攻撃をきりもみ回転であっさりかわし、次々にフェンリルを撃ち落としていくミラージュ。
パイロット「なんてやつだ!歯が立たない・・・!」
撃墜されたフェンリルの機体が観客席のほうへ突っ込んでくる。
大爆発。場内に悲鳴が上がる。

駆け出すミグ「ほら言わんこっちゃない・・・!」

プロメテウス社のブース
将軍「おいミラージュの性能はもう十分わかった、やめさせろ!」
ヴィン「さっきからやってますよ・・・」
ヘッドセットを付けるエド「ダメです制御できません!」

フェンリルの最後の一機を撃ち落とすミラージュ。
攻撃目標を地上に展示されている他社の新型戦闘機に移しミサイルで次々に吹き飛ばしていく。
爆音とともに火球が開く。逃げ惑う観客。

ヴィン「なんとかしろ!あんな真似したらオレたちが操縦しているって思われるだろ!」
エド「そんなこと言われてもシステムが暴走してるんだ!」
ミグ(インカム)「・・・イエーガーはどこにある?」
ヴィン「ブースの裏のC滑走路にあるけど・・・なにするつもりだ?」
ミグ「そいつでミラージュを止めてみる」
エド「打ち落とすんですか!?」
ミグ「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!このままじゃたくさんの人が殺される!」

会場の新型戦闘機を破壊し尽くしたミラージュ
コックピットの眼球状のカメラで次の標的を探す。
空港に着陸しようとするエアバスにミサイルの照準を合わせるミラージュ。
悲鳴を上げる乗客。

エアバスの前にイエーガーが立ちはだかる
ミグ「やめろ!私が相手だ!」
ミラージュがターゲットを変更しイエーガーに襲い掛かってくる。
イエーガーに機銃で集中砲火を浴びせるミラージュ
イエーガーの機体は頑丈だがどんどんゆがんでいく。
ミグ「ぐわああああ!」

地上
ヴィン「・・・なにをやってるんだ・・・」
エド「あの人、エアバスの盾になろうとしてるんです・・・」

まったく歯が立たないイエーガー号
しかし旅客機を守るために必死に盾になる
ミサイルでトドメを刺そうとするミラージュ

ミラージュのコンピューター
「敵機(UNKNOWN)の勝つ確率:0%・・・パイロットの行動:意味不明」

戸惑うミラージュ。
ミグにトドメを刺さずに航空ショーから飛び去っていく
ミグ「・・・撃たなかった・・・??」



航空ショーに急行するライトのリンドバーグ号。
航空ショーの会場の空港が紅く燃えているのに気づく。
ライト「なんてこった・・・」

火の手が上がるガリレオガリレイ国際空港。
消防車が大挙して押し寄せ消火、救助活動にあたっている。
警察の事情聴取を受けるヴィン
ヴィン「あれはサーペンタリウスがシステムを勝手に改造したんです。我が社の製品には何の問題もありません。
例えば誰かがテレビのブラウン管を修理しようとして感電して死んだとする、それは注意書きを無視して勝手にテレビを分解したやつの責任だ。会社はそこまでの責任を負う義務はない。」
警官「お話はわかりました・・・しかし・・・」
ヴィン「なにか?」
警官「戦闘機がそんなたやすく改造できちゃまずくないですか?ミニ四駆じゃないんですから」
ヴィン「サーペンタリウスの技術力をなめるな!」
警官「は、すいません・・・」
リンドバーグ号が滑走路に着陸するのに気づくヴィン「あ・・・続きはウェブで」
警官「ウェブじゃ困りますよ!」

リンドバーグ号から降りるライト
テントで救護班に手当を受けているミグもライトに気づく
腕に包帯を巻いてもらうミグ「ライト・・・!?生きてたんだ・・・!」
立ち上がるミグ
救護班「あ、動かないで」
ライトに駆け出すミグ「ライト!」

ライトに歩み寄るヴィン「ライト~!はっはっは、お前生きていたのか!よく緋色の旅団から逃げてきたな!」
ライト「緋色の旅団は壊滅したで。オレが作ったベガでな・・・」
ヴィン「へ?」

ヴィンを殴るライト
地面に倒れるヴィン。
その様子を見て立ち止まるミグ「!」

頬を押さえるヴィン「い・・・いきなりなにするんだ!!」
ライト「・・・・・・あの機体はどういうつもりや・・・」
ヴィン「どういうつもりって・・・ああ、お前が捨てたベガの設計図を応用したんだ」
ライト「・・・お前って最低やな、それがどういうことかわかっとんのか!?」
ヴィン「そんな怒らなくてもいいじゃないか・・・初恋の彼女に作ってやった飛行機を勝手に改造したのは悪かったよ・・・」
ライト「ああそうや。オレがどんな思いであれを作ったかなんてお前にはわからんやろ。
オレはな、戦争なんてどうでもいい、ただレオナに生きて帰ってきて欲しい一心でベガを設計したんや!」
「だからなんなんだよ・・・」
「まだわからんのか?このオレがどんな手段を使っても絶対に撃墜されないように作ったのがベガやったんや・・・レオナはたった一機で敵の前線基地を壊滅させたんやぞ。
それが暴走してたくさんの人間を殺した・・・周りを見ろ!」

炎に包まれる航空ショーの会場

「目を覚ませヴィン。お前の商売とやらで起きている現実がこれや。」
・・・だがオレたちはこの事態をなんとかする責任があるんちゃうんか?」
ヴィン「オレたち?」
「オレとお前で作った会社やろ・・・」
ヴィン「ライト・・・」

恐る恐るライトに近づくミグ「ライト・・・」
傷ついたミグに気づくライト「・・・・・・。」
いたたまれなくなるライト。
ミグを抱きしめて泣くライト「すまん・・・ミグ・・・!」
ミグ「・・・おかえり・・・」

『80日間宇宙一周 CRIMSON WING』脚本⑤

プロメテウスタワー
航空機の格納バンカー
エド「これがSX32ミラージュです・・・」
ヴィン「全然売れなかったけどな」
ステップに上がってコックピットにあたる部分を覗くミグ。
ミグ「これが・・・本当にコックピットがないんですね・・・」
ヴィン「空飛ぶコンピューターだよ。
ある腕利きパイロットのフライトデータがインストールされているだけ。」

ステップからヴィンを見下ろすミグ「ではその腕利きに緋色の旅団の隠れ家を捜索させましょう・・・
もともと緋色の旅団を倒すために作った戦闘機なんでしょう?」
ヴィン「そうか・・・これで緋色の旅団からライトを救い出せばミラージュの最高のプレゼンになるな」
不安そうなエド「しかし・・・まだこのミラージュは最終調整が・・・」
ヴィン「なあに航空ショーまでには帰ってこさせるさ、戦闘証明だよ。」
エド「テロリストに撃ち落とされたら・・・?」
ヴィン「そんなことないよ、こいつの設計を誰がしたと思う?
ライト・ケレリトゥスだよ」
ミグ「・・・え?ライトが兵器を作ってたんですか?」
ヴィン「たった一度だけね。それがこいつだ。」

コンピューターのキーボードを叩くエド「索敵システム起動・・・目標緋色の旅団・・・」
ミラージュのヘッドライトが灯りふわりと垂直離陸する。
格納庫から飛んでいくミラージュ

社長室
ネクタイを取ってYシャツの襟を広げるヴィン
「あとは待つだけ。さて・・・暇だな・・・なにか話でもしようか。」
ミグ「あのライトが戦闘機を設計していたなんて・・・」
ミグに写真を渡すヴィン「それだけじゃないよ。」

ライトとヴィンの写真。二人とも若い。

ワインを開けるヴィン「19歳のころ、亡命先の地球で出会ったライトとふたりで立ち上げたんだ・・・会社といっても最初はウチのガレージだったけれどね。そこでライトはさまざまな発明をした。
電気水道ガスの供給網の効率化、低価格の自家用旅客機、燃料なしで永遠に電気を作れる発電システム、すべての病気やケガを治癒できる医療機器・・・あいつがアイディアを出して設計し、オレがその資金を集めた。」
ミグ「・・・・・・。」
ヴィン「しかしライトはあるとき急にスランプに陥った。アイディアが何も出なくなったんだ。
もしかしたら恋人を戦争で失ったことが原因だったのかもしれない」
ミグ「恋人・・・?」
写真を指差すヴィン「彼女さ。とびっきりの美女でとびっきりのじゃじゃ馬。あんたによく似てたよ」
ミグ「・・・それでライトは?」
ソファに座るヴィン「それ以来あいつは自分の楽しみのためにしか発明をしなくなった。
ライトフライヤー号とかいう子供のガラクタのような宇宙船を作って勝手に宇宙へ飛んで行っちまったよ。
相変わらず自由で無責任なやつだよ・・・」
写真の女性を見つめるミグ。
ライトとヴィンの肩に腕を乗せて笑うレオナ・イアハートは太陽のように情熱的な女性に見える。
ワイングラスを傾けてつぶやくヴィン「神様って不公平だよな・・・」
写真から目を離してヴィンの方に目をやるミグ「え?」
ヴィン「オレにはあいつの10分の1も才能がない・・・」



ハイペリオン教会
礼拝堂には万里の長城が描かれた巨大なステンドグラスが並んでいる。
星の光によってうっすらと光るステンドグラスを見上げるライトとスカーレット。
ライト「見事なもんやな・・・」
スカーレット「この星の万里の長城は、死を恐れた始皇帝サタンが女神キュベレイのお告げを受けて他の星の侵攻を防ぐために築いた防壁なの・・・」
ライト「ああ、ガイドブックに書いてあった」
「では万里の長城の伝説には続きがあるのを知ってる?」
「いや・・・」
「実は万里の長城の正体は残虐な暴君サタンをこの星に閉じ込めるための結界だったの。
それを知り怒り狂ったサタンは女神を殺しその肉を食らい、ついに不老不死となった・・・
王が神に祈ることはなくなった。自身が神の力を得たのだから。」
ステンドグラスを見上げるライト「ふ~ん・・・」
「しかし・・・やがてサタンを知る者が誰もいなくなったとき、サタンは自分に与えられた力が恐ろしい罰であったことを知った。鳥かごの中の永遠の孤独。
・・・プロメテウス社がやっているのはこれと同じよ。」

ニコライが礼拝堂に入ってくる。
ニコライ「人生が全て金に還元されてしまった。
この星では文字通り金があるだけ長く生きられる、金があれば幸せだと・・・
だが果たしてそれは幸せなことなのだろうか?
実際土星の富裕層は預金通帳の残高を見て常に不安と恐怖に怯えている。
いくら金があっても満たされない。いつか破産して命脈尽きるんじゃないかと悲観している。
連中の頭にはいかにたくさんの金をむしり取るかしかない。
死なないことに頭がいっぱいで生き抜くことを忘れてしまった。
・・・それはもう人間じゃないんじゃないか・・・?」
ライト「♪生きているだけで、死んでいる」
スカーレット「?」
ライト「あ、知らない?ミスタージョージ・トコロっていう有名なアーティスト」
スカーレット「バカバカしい・・・」
ライト「・・・で、このサタンはその後どうしたんやろな・・・」
スカーレット「え?」
ライト「やっぱりもう一度神様に祈ったんちゃうかな・・・」
スカーレット「・・・・・・。」

ステンドグラスに描かれた万里の長城の色が変わる。
ステンドグラスの後ろの大きな影に気づくライト
ライト「!」

スカーレットを押し倒すライト「危ない!!」
スカーレット「きゃっ」

その直後ステンドグラスの向こうから巨大なステルス戦闘機が機銃掃射してくる。
粉々になるステンドグラス。
荘厳な礼拝堂が吹き飛んでいく。
ライト「ふせろじいさん!!」
ニコライ「ミラージュ・・・!」

機銃掃射をやめ旋回し教会の裏に回り込むミラージュ。
とあるポイントを定め空中で静止する。

ライト「墓地の上で止まったで、何をするつもりや?」
何かに気づくスカーレット「ハッ」
教会から飛び出していくニコライ「いかん!!」
ライト「じいさん!!」

教会の裏の墓地
ミラージュの方へかけていくニコライ「やめろ~~~!やめんか~~~!!!」
機体から姿勢制御のジェットを噴射させて空中で位置を固定するミラージュ

ニコライを追いかけるスカーレット「首領!危険です!」
ミラージュの真下で腕を振るニコライ「やめてくれ!!この下には貧しい民が・・・!!」
ライト「!ドヤ街の上なのか!」

ニコライの方へ駆け出すスカーレットを止めるライト
スカーレット「はなして!!」
ライト「あかん!もう間に合わへん!!」

墓地の上から真下に向けてパイルバンカーミサイルを発射するミラージュ
地面が陥没し地下で大爆発が起こる。
二人に爆風が襲いかかる。
スカーレット「首領~~~!!」
ライト「じいさん・・・!」

ニコライのいた場所にはクレーターが残っている。
くるりと向きを変え、引き返していくミラージュ。
カタコンベのドヤ街は一瞬で消滅してしまった。

夜の闇に消えていくミラージュの影を見つめるライト「あの機体は・・・」
がくりと膝をつき泣き出すスカーレット「ひどすぎる・・・」
スカーレットに近づくライト「なあ・・・」
肩を震わせるスカーレット「近づかないで・・・!」



焼け野原となったハイペリオン教会
墓標を作るスカーレットとライト。
スカーレット「これから宇宙の至る所で同じことが起きるわ・・・もうミラージュは誰にも止められない・・・この星はまた同じことを繰り返すんだ・・・」
ライト「わかった・・・協力する。」
スカーレット「・・・・・・。」
ライト「だがひとつ約束してくれ」
「・・・なに?」
「お前はもう誰も殺すな。」
「そんな甘いこと言えるような相手じゃないでしょ・・・」
「ああ。あの機体のパイロットはこのオレが必ず倒す。だからあんたはこれ以上手を血に染めるな。
キミの本職は聖職者なんやろ・・・?」
「私に出来ることはある?」
「祈っててくれへんかな・・・」
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