99年の愛~JAPANESE AMERICANS~

 すごいぞ橋田壽賀子ドラマ!初めて見たけど本当に長ゼリフで全部説明しちゃってる!!つええ!

 私は昔編集者の人に「漫画は絵があるからなるべく字ではなく絵で表現してください」って言われたことがあります。
 橋田さんが手掛けたのは漫画じゃなくてドラマの脚本だけど、でも橋田さんの脚本は最終的にビジュアルイメージ込みのテレビドラマになるんだから、映像で表現することだっていくらでもできるはず。
 それをほとんど言葉で解説しちゃうんだから、橋田さんが「おしん」以来ロケ現場に行っていないのも分かる。橋田さんにとっては自分の脚本だけで仕事が完結しちゃっているんだろうな。

 とりあえず脚本では「ドイツ軍のSS戦車隊が日系アメリカ人の442部隊を砲撃する」とか気軽に書けるけど、それを映像化するのはとんでもない話だよね。ラジオドラマじゃないんだから。
 私も漫画は絵にする前にプロットや脚本を書くけど、そこではあまり絵にする時の面倒くささを考えないように好き勝手書いています。それを意識しすぎると物語がこじんまりとしちゃうから。
 とはいえいざ絵にする段階で「ケニアの狩猟隊が迫撃砲で敵の城を砲撃」とか脚本に書かれているのを見ると「うわ~これを絵にするのどれだけ大変か脚本書いてた俺は知らなかったな」って思っちゃう。
 
 話がそれちゃったけど、とにかく最初は登場人物が放つあまりの説明的口調に違和感があって「これはタブーだろ」と突っ込んでいたんだけど、だんだんこれはある種のメタレベルの芸なのか?って思えてきて、これこそが橋田ドラマの神髄なんだという結論に達しました。
 そういう意味じゃベタな設定をベタと知りながらもあえてキャラクターにやらせるような、ライトノベルや萌えアニメに形態が近いのかも。

 とにかく意外と慣れちゃうんですよ。口に出すのが恥ずかしいキザなことまでバシバシ言葉にしちゃう登場人物が、もう臨界点を超えると逆に清々しくて。
 私ってすっごいシャイな性格で、物語をまとめ上げる上ではクライマックスでちょっと恥ずかしいセリフを登場人物に言わせなきゃいけない流れになったりするんだけど、これがもう書いてて本当に恥ずかしい。
 でも橋田さんのように物語開始直後から「愛」とか「家族」とかバシバシ恥ずかしいこと言わせれば、この漫画は恥ずかしいことを常に言う作風なんだってなって、読んでいる人も納得してくれると思う。それはそれで面白い物語の作り方だなって思った。
 もちろんこの感想は真剣に人間ドラマを描いている橋田さんにとって失礼極まりないはなしだろうけど、私はそこが橋田さんの作家としての魅力だと感じてしまったんだから仕方がない。
 
 あと三谷幸喜さんの「わが家の歴史」といい、この手の家族を題材にした近現代史の勉強にもなるプチ大河ドラマって私は意外と好き。「不毛地帯」も楽しかったし。
 橋田さんは世代的にアメリカが嫌いらしいんだけど、そういうメッセージ性は抜きにしても、なんか惰性で見れてしまう。
 だって第一夜の冒頭からして、もうギャグなんだ。なんかアメリカ日系移民のちびっ子(小学三年生くらい)が出てくるんだけど、そいつが「昔の人は戦争や差別でとっても苦労したんだ。でもそういう人たちを可哀そうだとは思っちゃいけない。時代に負けずに生き抜いた強い人だったんだ」とかえなり節をいきなりかましてくれて、戦争を体験されたお年寄りに言われるのならまだ分かるけど、なんでお前みたいな子供に説教されなきゃいけないんだ感がすごかったもん。
 こんなセリフを子どもにやらせるセンスがすごい!

 明日はいよいよ最終話。SMAP草彅くんも戦死しちゃったし物語はどう収束するのだろうか?(絶対ラストでいじわるなアメリカ人ジェームズが味方になると思う!)
 とはいえ、こいつのおかげでせっかくの佐野浅夫さんの「水戸黄門」の再放送が見れなかったんだけど・・・(水戸黄門の時間帯にこのドラマの宣伝番組が入っちゃった)

水嶋ヒロ問題について

 元俳優で「これからは作家をやりたい」って言ってた水嶋ヒロさんが処女作で小説の賞を受賞して賞金2000万円をとったとか、この前ニュースでやってて「これは絶対ネットで嫉妬されたり叩かれてるな!」と思ったらやっぱり盛り上がったらしい。
 今はライトノベルブームで小説書いている人も多いだろうし、そういう人にとってみれば処女作で受賞って羨ましいにもほどがあるんだろうな。
 この人ルックスも良くて、スポーツ万能で、帰国子女で、奥さん歌手で、んで文才もあった?わけだから(性格も好さそう)まさに少女漫画に出てくる学園のアイドルそのものだよね。

 結局水嶋さんは賞金の2000万円を辞退しちゃったらしいんだけど(なぜか賞そのものは辞退しなかった)、この一連の騒動は「出来レース」って言えば確かにそうかもしれない。
 まじめに小説家を目指している人にとってはつらい話だけど、世の中って結局小説でも映画でも漫画でも売れなければ話にならないから、この出版不況のなか小説という商品を売るためにはこれも一つの手段だったと思う。

 でもそれが水嶋ヒロが賞をとった後、賞金額をいきなり10分の1にするとか、あまりにやらせな感じが露骨で、いくらなんでもこれはひどい!ってなったんだろうな。確かにワイドショーを見てて笑ってしまったもん。今の出版業界ってここまで追い詰められたか!って。
 一番かわいそうなのは良くも悪くも色眼鏡で見られちゃう水嶋さんだよな。もしかしたらガチで小説の内容が良くて受賞したという可能性もあるのに、出版社側の節操のない戦略によって、絶対叩かれちゃうもん。

 でもポプラ社は度胸あるし、なんだかんだでこの戦略は結局売れると思う。作者を水嶋ヒロとばらした小説はまずファンの女の子が買うし、受賞に懐疑的な奴も「本当に面白いのかよ」って買っちゃうと思う。ネットでは読まずに批判する人も多いけど、一定数はアンチ水嶋派も買っちゃうだろう。
 話題作りとしてはここで作者が水嶋ヒロだってばらした方が良かったのかもね。ばらさなかったら出版数は大幅に下がっただろう。おそらく100分の1とか。

 節操がないと言えば、『オタクはすでに死んでいる』に書いてあったんだけど、かつて少年漫画ってカラーのグラビアページがメカとか軍記物とかスポーツ選手だったらしいんだけど、マガジンが南沙織かなんかを表紙にしたら凄い売れて、それからどの雑誌もグラビアアイドル路線になっちゃったという。
 この事実は漫画の内容ではなく、とどのつまり水着少女で売れてしまうという辛い現実を漫画編集者に突きつけたそうだけど、やっぱりしょうがないんだ。
 
 これはいわば食玩現象で、お菓子のおまけだったおもちゃの地位が上がって、お菓子がおもちゃのおまけになっちゃったようなもので、そもそもは漫画雑誌のおまけがグラビアアイドルだったのに、もうグラビアあっての漫画雑誌になっちゃった。
 こうなると漫画家がどんなに頑張っても雑誌からグラビアアイドルを駆逐することはできない。食玩のお菓子のクオリティをいくらあげても、おまけのおもちゃはなくならないように。グラビアアイドルの雑誌を売る力って言うのは、漫画よりも強いんだ。
 少年マガジンの編集者ってけっこう自分の雑誌の漫画をニヒルに見ていて「こんな雑誌、部活の合間に読み捨てる程度ですよ」って言ってて、確かにそうかもしれないけど、そんな事言われちゃ作家のドーパミンは出ないよなあって思ったw。

 こういったグラビアアイドルと同じで、「水嶋ヒロ」って名前は小説を強力に売るリーサルウェポンなんだ。もし水嶋さんが純粋に作品の内容だけで勝負したいなら、意地でも水嶋ヒロの名は伏せてもらうはず。
 でも「この小説をあの水嶋ヒロが書いた!」(ゴーストライターが手伝っているかもしれないけど)っていう事実込みで評価されたというならば、そうもいかないのが恵まれた者のみが知る不幸と言うもんだよね。

素数の魔力に囚われた人々

 サブタイトルは「リーマン予想・天才たちの150年の闘い」。NHKの科学ドキュメンタリーで深夜に再放送してました。タイトルからもう面白いよね。

 素数の魔力って・・・確かに数学が得意な人にとってみれば、いまだに世界中の数学者が解明できないアポリア(難問)は危険でありながらも魅力的なんだろう。
 1とその数字自身の数でしか割れない数を「素数」って言うんだけど(2とか3とか5、7、11、13・・・)、その素数の規則性って未だによく分かっていないから、現代のテクノロジーでは暗号として利用されているんだって。
 確かにとんでもない大きな桁の素数もある。数字のカウントに終わりがない限り、素数も無限にあるんだろう。

 NHKの科学を題材にしたドキュメンタリー番組って素人の人には大体わかりやすいように作られているけど、その分野のマニアや専門家が見るとちょっと細かい点が違ってたりするので、この番組だけを見て150年の数学史を理解しきったって思っちゃまずいんだろうけど、とりあえず面白かったからいいや。
 細かい突っ込みはその道のマニアがやってくれるに違いない。

 それにそもそもこの番組だけでは「ゼータ関数」も「リーマン予想」も解ったようで、よく解らない。
 とりあえず素数の並びの一見不規則な間隔と、量子のエネルギーの不連続な飛び飛びな数値が大体一致したって言うのは分かった。
 この出会いによって純粋数学と物理学が融合したんだ!とか70年代の学者は喜んだみたいなんだけど、これには驚いた。・・・数学と物理学ってそんな疎遠だったの?
 私てっきり物理学も数学使うから、美術と図工くらいの関係だと思ってたよ。全然分野が違うんだ・・・最初っからもっと交流すればよかったよな(ちなみに美術と図工でさえ仲が悪い)。
 科学ってもう分野が細分化され過ぎちゃってバベルの塔状態なんだよね。私はその現状はネット技術でなんとかなるとか半ば冗談でSFで論じたけれど、どうなんだろう。

 数学ってある種の本質主義だと私は思っていて、それに命や人生をかける数学者たちはかっこよくもあり滑稽でもある。失礼かもしれないけど、やっぱりそう思うよ。
 なんか数学と言う人間が作ったパズルゲームにハマった数学少年が、そのまま数学を卒業できずにマニアになっちゃったというか。
 だから楽しそうでもあり、その反面孤独でストレスもたまるのだろう。いくところまでいくとその努力や偉業を理解し共感してくれる人の絶対数はかなり減ってしまうから・・・だから学会とかやってんだろうけど。
 そういう意味でストイックな芸術家に近いよね。数学者って。遊びをいい歳して真剣にやっているところとか、どうやって食っているか収入源が謎なところとか・・・

 リーマン予想は、ポアンカレ予想やNP問題と同じく数学の世界では超難問で、数々の数学者の挑戦を退けてきたらしい。
 そしてプライドが高い天才数学者の鼻を見事にへし折り、あるもの(ノーベル経済学賞受賞者のジョン・ナッシュ博士)は統合失調症になり、あるもの(チューリングマシンのあのチューリングですよ!)は自殺したという。ほんまかいな。
 そういえばポアンカレ予想を解いた人はすっかりいかれちゃったとか・・・これもNHKでやってたんだけど。ほんまかいな。
 とにかくそれくらいの魅力があるんだろうね。彼らは自然界は全て数学で説明できる!って本気で信じているだろうし、それくらいじゃないと自分の人生を数学に捧げられないよ。

 数学の世界ではその理論の証明が正しいとされるには、約二年間に及ぶ世界中の数学者の厳しい検証作業を受けなければいけないらしい。
 そう考えると数学の教科書に載っている古代ギリシャとかの理論(原理とか定理とか)ってすげえな。いまだに反論されてないんだから。
 いや先人のあいつらがもう証明しやすい数学の真理はほとんど見つけちゃったって感じがするよな。オタクは死んだって数年前にオタキングは宣言したけど、もう何千年も前に数学って死んでたんだな。

名古屋議定書について

 地球温暖化と生物多様性の議論はとにかく似ている。
 欲深い人間の後ろめたさや、それでもなおも善人でありたいという欺瞞の心をうまくついて、「人類のエゴではなく、地球や、そこに生きる全ての生命の為に取り組むべき美しい環境問題」と言うイメージをマスコミはせっせと植え付けているけど、ばっかじゃないの。なんのことはない。これはどっちも経済問題。 
 結局生物多様性は金になるから保全しようってこと。こんな野暮なことは恥ずかしくて言いたくないんだけど、意外とマスコミのイメージをあっさり信じている善意の人もいるからなあ・・・

 COP10は生態系保全を世界目標にすること(愛知ターゲット)に同意したけど、これもなかなか国同士がみっともなく揉めて面白い。
 EUは「生態系の破壊を20年までにすべてやめるべきだ」とジャスティスかつ無茶なことを言い、日本や途上国は「20年までに生態系保全を確保する目的で、生物多様性の損失を止めるための行動を起こす」となんかこれはこれで実行力に乏しい中途半端なことを言っている。
 夏休みの宿題における努力目標をこんなノリで言ったら絶対夏休み最終日が修羅場になること請け合いだ。

 この議論にはポイントが二つある。ひとつは「生態系の破壊」の定義が曖昧なこと。生態系に何も影響を与えずに人間が活動することは不可能だから、どこまでが生態系の破壊なのかを検討しなければならない。
 どうも彼ら政治家は生態系の複雑さを理解していないようだから、国際的な会議でこの基準を考える時はかなり面倒くさくなりそう。
 例えば、その生きものが生態系にとってどれほど重要な種類かどうかって、乱獲して減らしてみたりしないと分からなかったりする(キーストーン種の記事を参照)。それでああ、こいつはこの生態系に必要なんだって。
 でもEUの言うように2020年で生態系の破壊を禁止してしまうならば、今後10年で地球全ての生物種が生態系に与える影響をまとめあげてデータベース化しなければいけないことになる。そんなことをEUが本気でできると思っているとは私には到底思えない。
 そしてそれについて「生態系の現状をどうやって調べるんだ」と的確な突っ込みをした途上国は先進国よりもよっぽど賢い。

 二つ目のポイントはなんでそんな無茶なことをEUはつきつけようとするのか?そもそも京都議定書の時も議論の主導権を握り、地球温暖化を巨大なビジネスマーケットにしたのは何を隠そうイギリスをはじめとするヨーロッパだ。
 竹内薫さんも言っているけど日本なんてエコの技術に関しては世界最高レベルで、もうこれ以上は省エネできないって臨界点まで来ているのに、無茶なCO2削減目標を掲げてしまった。
 だから京都議定書って日本がイニシアチブ取って採択した感じするけど、まんまと国際社会にはめられて温室効果ガスの排出権取引で金を絞り取られるはめになっただけなんだ。
 
 EUはそもそも環境保全に対する意識はかなり進んでいて、それで生物多様性についても「それくらいの大きなことを目標にしなければ到底守れない!」と言っているのかもしれない。これは政治的な理想論としてあると思う。
 でももうひとつの理由は、生物多様性が最も豊富である熱帯雨林がたくさんあるのは、南米とかの発展途上国だから、そう言った国を他人事のようにけん制しているのかもしれない。
 たとえばクジラを特に食べようとも思わない国は「クジラがかわいそうじゃないか!」って捕鯨禁止運動を仕掛けてくるけど、それと似た感じがするんだ。
 生物多様性を守るのはあくまでもジャングルを切り開く途上国の問題。だからお前ら2020年までにそういう破壊活動をやめないとひどいぞ(ジャイアン)みたいな。
 
 さて名古屋議定書とは、生物の遺伝資源が生む莫大な利益を、その生物の生息地のある国(遺伝資源原産国=それは大抵が途上国だ)に配分しようというルールを定めたものだ。
 これは先進国と途上国の経済的な格差をなくすいい目標って気もするけど、そういうイメージの裏に国家間のえげつない思惑が交錯している・・・と思う。京都議定書がそうだったから。
 たとえば途上国は自分たちの国に生息する生物どもが金になることを知り、できるだけ先進国から使用料を踏んだくろうとする。だから途上国は植民地時代の利益配分も求めたわけだ。これはさすがに先進国の経済的負担が莫大で棄却されちゃったけど(ただ基金を設立してというアフリカの要望は通った)。

 でも生物遺伝資源を利用して作った製品(派生物。その生物の遺伝子を持たない複合物も含まれることになった)にも原産国の使用料(利用料?)がかかるのか?っていうのはまだ具体的なところまで詰め切れてないみたいだ。
 遺伝資源って例えばDNAの塩基配列なんかはPCR法で大量に複製できたりもするから、鉄などの鉱物資源や、石油、ガスなどのエネルギー資源よりかは、デジタル情報と性質が似ているんだよね。ネット上で違法コピーやダウンロードされちゃうとまずい。良くも悪くも共有しやすいんだ。

 その為に、遺伝資源を利用する際にはその原産国に法的許可を取っているかどうかを確認する監視部署を各国はひとつ設立しなければならない。
 経産省は「これで企業の生物資源利用の手続きがスムーズにできる」って言ってるけど、一方の企業側は「この国のこういう遺伝資源を使わせてください」って監視部署に届け出て原産国の許可証を取得するのはライバル会社に手の内の明かすことにはならないのか?とかなり不安だという話もある。

 なんにせよ、ついにバイテクも国際基準で法整備がなされるようだ。マイクル・クライトンが危惧したバイテクが野放しになっている『ジュラシック・パーク』の時代は終わるのかも。

アイランド

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆」

 『すばらしい新世界』のよくできたリメイク!

 ・・・いやこの小説が原作かどうか分からないけど。

 『すばらしい新世界』って言うのは、昔ハクスリー一族っていう生物学とかで有名な一族がいたんだけど(ダーウィンの進化論を支持したヘンリー・ハクスリーは特に有名)、一人だけなぜか小説家になった人がいて、その人(オルダス・ハクスリー)が書いたSF小説。
 ある種のユートピア社会を描いた作品なんだけど、その世界もメタ的に見ればかなり印象が変わるよって言う、実存主義的な内容だった。
 オルダスはおそらく当時の進歩主義や優生学に基づくユートピア思想に警鐘を促したかったんだと思う。
 当時は優秀な人間だけを集めて平和で善良な社会を本気で作ろうとしていて、これ(優生学)は今でこそ無かったことにしたい科学の黒歴史とされているけど、当時は本当に世界的ブームだったんだ。

 そして今なおそれに似たユートピア思想(宇宙船地球号とか)は形を変えて生き続けている。まあよりよい生活、よりよい社会を実現したいっていう目標はいいんだろうけど、それはあくまでも目標のままとどめといたほうがよかったりする。
 『ちびまる子ちゃん』のさくらももこ先生が「夢とはかなうまでが夢。かなったらただ現実なのである。」とかうまいことを言っていたけど、今はかつての優生学が達成しようとした理想の(ままにしといたほうがいい)社会が遺伝子工学などの発達によって、やる気になれば実現できそうだからかなり怖い。

 江崎ダイオードの江崎玲於奈さんは、中教審かなんかで「学校は優秀な遺伝子を持つ子とそうでない子でスクリーニングするべきだ」とか言っててかなりラディカルだ。
 このような遺伝子至上主義はかなり危険なので、遺伝子なんて大したことねえよくらいに思っておいた方がいい。
 だからこの遺伝子があると犯罪を起こしやすいとか言う研究も、科学リテラシーのないバカが誤解するとかなり恐ろしい。
 え?バカって誰かって?理系に弱い日本のマスコミのことだよ!
お前らこれを報道する時は本当に頼むぞ!!お前らがしくじると恐ろしい差別が始まっちゃうから!

 話がそれてしまった・・・私は、こういうセンスオブワンダー(モノの見方をずらせば、自分たちの世界の印象がガラッて変わるような話。SFの醍醐味!)って結構好きで、私も一回漫画で描いたことあるんだけど、正直これを観てから描けばよかったな。それくらいこの映画はよくできてる。

 冒頭から30分までの舞台となるクローンプラントのデザインはとにかくかっこいい。
 前にこの映画を見た時は、あの白を基調としたかっちょいい地下施設のシーンがもっと見たくて「なんだよ、意外とすぐにアイランドの秘密ネタばれしちゃって、ただの逃避行モノになっちゃたなあ」ってガッカリした覚えがあるんだけど、今改めて見たらその逃避行のシーンもアクション性が高くてなかなか面白かったりする。
 私はSFでもファンタジーでも、その作品独特の世界観を出せれば勝ちだって思っていて、この映画の世界観を象徴するのは、なんだかんだでやっぱりあのクローンプラントだと思うんだ。
 都市部の空飛ぶ電車や自動車は『フィフスエレメント』かなんかでやってたしね。

 後この映画『ダイ・ハード4.0』に比べて敵側の印象がなかなか強いよね。
 アイランドの秘密を知って地下施設から逃亡した主人公たちを執拗に追う傭兵「ローラン」も、最初は敵として描かれながら、最後はクローンの味方になってくれるという、自分なりの哲学のある人でかなり魅力的だし(やっぱりクローンビジネスに言葉にはできない違和感を感じたんだろうな)、敵の親玉である「メリック医師」もなかなかリアリティのある悪役だと思った。
 ああやってクローンを作り続ければ、それこそ半永久的な人生が約束されるわけで、そんなことに実際なったら、彼のように自分を神だと勘違いしてしまう人も意外と出てくると思う。クローンを作る側と買う側の違いはあれどね。
 とにかく科学による寿命の克服ってすごいよね。実際人類の平均寿命って伸びてるわけだし、今だってできることなら永久に健康で生き続けたいって言うゲスな欲望のある人(私だ)はけっこういると思うし。これは戦国時代や第二次大戦中には考えられない価値観だよね。

 ただメリック医師って、クローンが自分の存在する世界に疑問(それはすなわちメタ的な視点=哲学)を持たないように、クローンの精神年齢を15歳の子どもに設定したって言うんだけど、アイランドの崩壊の原因はそこにあるよね。
 ダメだよ8歳くらいにしとかないと!メリック先生が15歳の頃は、牧歌的でみんな純粋だったかもしれないが、今日びの15歳って人生でもっとも暴力的でSEXのことしか考えていないぜ!(15歳を誤解してます)
 実際クローンのあいつらも脱走して外の世界の刺激に触れたとたん、鉄道の車輪をドンキーコングのように高速道路に転がすわ(あれで何人の民間人が犠牲に…)、女とバカスカやっちゃうわ・・・
 つまりは、あんな見た目は大人、中身は中学生日記のクローンが最後は大量に解放されちゃったというのか・・・おっかねえ・・・

 ちなみにこの映画では、意識も感情も人間と変わらないクローン(人工的な双子のようなものだから)を一度作って、それをわざわざ殺して臓器を頂戴するなんて無慈悲で回りくどい方法をとっていたけれど、現実にはips細胞のようにもっと手軽に自分の組織のコピーが作れる技術が存在する。このips細胞は受精卵や胚を利用するES細胞と違って倫理的にも問題がないそうだ。
 そういう意味で素晴らしい新世界の夜明けは近いのだ。
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