『アリス・イン・ワンダーランド』の脚本⑦

「第七章 チェックメイト」

空に巨大な飛行船が浮いている。
アリス「なんなのあれ!?」
白の騎士「最新鋭の蒸気式飛行船だ・・・!あんなものを隠れて開発していたのか!あいつら、あれに乗って直接白の女王の玉座を襲うつもりだ・・・!!」

赤の女王の飛行船
船員「先遣隊はジャバウォックに押されています・・・!陛下どうしますか!?」
赤の女王「ほうっておきなさい。あの怪物の気をそらしているのなら、捨て駒としては十分よ。さあ遊びはここまで。「あれ」を投入しなさい」

白の騎士「空に浮かれちゃ打つ手なしだ・・・!」
アリス「見て!」
地平線から赤の兵士を乗せた見たこともない怪物の群れが猛進してくる。
アリス「こっちに突っ込んでくる・・・!」
白の騎士「物陰に隠れるんだ!」
アリス「なんなのあれ・・・!」
ユニコーン「動物園でおなじみのバンダ―スナッチだよ!」
アリス「一角獣さん!」
ユニコーン「きみをずっと探してたんだよ。ここにいたとはな」
ライオン「ずいぶん盛り上がってるじゃないか。いっちょやったるか!」
ユニコーン「おうよ!騎士殿、乗るかい?」
ユニコーンにまたがる白の騎士「かたじけない!いくぞ!」
剣を高らかに挙げ、バンダ―スナッチの群れに突っ込んでいくライオンと白の騎士。
白の王国の柵をぶち壊し、突っ込んでくるバンダ―スナッチ。
分の悪い騎馬戦が始まる。
ジャバウォックはバンダ―スナッチを咥えあげほうりなげるが、数が多く、敵に足をつつかれ唸る。
アリス「だめ・・・いくらなんでも数が足りない・・・!」
アリスの背後で物音がする。
傷だらけの赤の騎士「やあ、アリス・・・殺してやる・・・」

不思議の国のアリス邸には国を捨てた白の王国の国民が多数押しかけ、玄関で不思議の国の住人と白の国民が言い合いをしている
マウス「おいおい・・・ここは我々の最後の砦だぞ・・・!」
ドードー「諸君らの行為は不法である・・・裁判所からの書類を見せたまえ。」
モックタートル「そうよ・・・出てってちょうだい!」
グリフォン「さあ帰った帰った!この屋敷はあんたら全てを泊められるほど広くはねえ!」
白の国民「まだいくつも部屋が空いているじゃないか!俺たち難民はどうなってもいいってのか!」
白の国民「大体こういう家は人間が住むものよ!あなたたち動物は外にいきなさい!」
マウス「なんだと・・・!おいトランプ軍曹!彼らを丁重に送り返せ!」
トランプ兵「イエッサー!失礼します!」
白の国民を押しのけるトランプ兵たち
国民「ずいぶん乱暴じゃないか!!」
わいわい揉め出す
マウス「いてて足で踏むな!」

屋敷にかけてくる白ウサギ「はあはあ・・・一体全体なんだこりゃ・・・!」
マウス「あ!白ウサギ!そっちはどうなった!?」
白ウサギ「きみらは一体何をやっているんだ・・・アリスが今大変なことになっていると言うのに・・・!」
モックタートル「この人たちがわたしたちを屋敷から追い出そうとするのよ!」
白の国民「動物は出ていけ~!!」
マウス「トランプ兵!もうぶってもいいから!追い払え!」

キャタピラー「あんたたちいい加減にしなさい!!!」
大声に驚き、静かになる玄関。
キャタピラー「白ウサギちゃん・・・詳しく話してちょうだい・・・」
白ウサギ「赤の軍隊が今白の王国に総攻撃を仕掛けています・・・!白の王国にはアリスがたった一人残って白の女王様を守ろうと・・・!」
キャタピラー「・・・あなたたち聞いた?
自分たちは国を捨ててこんなところでつまらない争いをして、白の女王を守っているのはたった一人の少女だけ?まったく笑わせないで頂戴・・・あんたたちの国でしょうが。」
白の国民「・・・・・・。」
マウス「そうだ!とっとと自分の国に帰りやがれ!」
キャタピラー「私たちも同じ!」
マウス「う・・・」
キャタピラー「アリスだけにこの戦争を押し付けて何とかしようとしている点はね・・・さて、この中で今から何をすればいいか分かる者はいるかしら?」
おびえる一同「・・・・・・。」
ため息をつくキャタピラー「は~・・・」
白ウサギ「みなさん、アリスの力になってやってください・・・!ぼくらに加勢してください!」
小鹿「ぼく・・・闘う!」
白ウサギ「ありがとう・・・!」
小鹿「ぼくは勇敢な馬だ!ウマは勇敢な騎士を乗せて戦場で戦う・・・!」
キャタピラー「情けないわね・・・こんなにたくさんの人間と動物がいて立ち上がるのは、こんな可愛い小鹿ちゃんだけ?」
小鹿「え?ぼく小鹿なの?」
白ウサギ「い・・・いや・・・う、馬だよ。」
マウス「小鹿が戦うんじゃ俺たちが戦わねえわけにはいかねえな・・・」
小鹿「ええええ!?」
マウス「みんな!ここはいっちょアリスの為・・・いや、この世界の為に赤の女王に一発くらわせてやろうぜ!」
一同「オー!!!」

炎が上がる白の王国
多勢に無勢で、膨大な兵力に押されていく白の騎士、ユニコーン、ライオン。
ライオン「はあはあ・・・くそ!倒しても倒してもきりがねえ!」
ライオンの背後の兵士を蹴とばすユニコーン「あぶない!うかつだぞ!」
ライオン「すまねえ・・・」
白の騎士「・・・アリスはどこだ!?」

赤の騎士から逃げ出すアリス「はあはあ・・・」
赤の騎士「くくく・・・待ちな、かわいいアリス・・・」
オールドシープショップの中に隠れるアリス。
赤の騎士「どこに隠れたのかな~?アリス・・・」
棚をひっかき回すアリス「ケーキ・・・どこかにケーキがあるはず・・・」
店内に入ってくる赤の騎士
ケーキを見つけるアリス、ケーキをつかみ口に入れようとした刹那、腕をつかまれる
赤の騎士「・・・みつけた。」

店から引きずり出されるアリス「くっつ・・・離して!」
赤の騎士「ただお前を殺すのでは私の気はすまない・・・お前が最も愛するものをお前の眼の前で殺してやろう・・・さあ、誰がいい?お前は誰を愛している・・・??」
目をそらすアリス「・・・・・・。」

白の王宮最上階
眼下に広がる戦の様子を悲しげに見つめる白の女王「・・・・・・。」
白の王宮に赤の女王の飛行船の銛が突き刺さる。最上階にもやわれる飛行船。
白の女王の間に赤の兵士が突入してくる
白の女王「・・・ついに来たのね・・・」

飛行船の赤の女王「・・・チェックメイト。」

『アリス・イン・ワンダーランド』の脚本⑥

「第六章 約束」

白の王宮最上階
女王の間で一人座っている白の女王。
窓からの月明かりで照らされた白の女王はロングヘアーの美人でいつも哀しげな微笑みをしている。
こんこんと窓ガラスをたたく音がする。まどを開けるとアリスの巨大な顔がある。
微笑む白の女王「あら・・・これはまたとても大きなお嬢さんね・・・こんばんは」
アリス「はじめまして・・・窓から失礼します・・・」
白の女王「あなたはだあれ?」
アリス「アリスと言います。白の騎士さんがぜひ私をあなたに会わせたいと。」
白の女王「そう・・・こんな高いところにいてごめんなさいね・・・」
アリス「あの・・・女王様はそこにひとりぼっちでいてさみしくないんですか?」
白の女王「え・・・?」
アリス「そこだと誰もあなたに会えないし・・・おしゃべりもできないじゃないですか。」
白の女王「たしかにあなたの言う通りね・・・でも私は大丈夫。女王が敵国にやられるわけにはいきません・・・王国の為にも世界が果てるまで、ここで暮らし続けるつもり。」
アリス「そんな人生私には耐えられない・・・」
困った顔で微笑む白の女王「私はこの国の女王だから・・・仕方がないのよ。」
アリス「下に降りて戦争を終わらせようとはしないの?」
白の女王「私は争い事は嫌い・・・それに・・・私は臆病だから・・・」
アリス「でも・・・」
白の女王「アリス・・・あなたは勇敢だわ。白の騎士がわたしに合わせようとしたのも解ります。彼はわが国で唯一にして最も勇敢な兵士・・・彼は貴方のような戦士を求めていたのかもしれないわ。」
アリス「ええ。白の騎士さんは勇敢よ。ちょっと間抜けだけど、これじゃダメなんだって一生懸命頑張っている。だからあなたも・・・あなたの国のことはやっぱりあなたが何とかしなければいけないんじゃないの?」
白の女王「ええそうね・・・でも今はまだ動くべき時ではない・・・」
アリス「どうしてわかるの?」
白の女王「私が心から笑っていないからです・・・もし私が“喜び”を思い出せたならば・・・それは世界が平和を取り戻すことの前兆だわ」
アリス「??よくわからない」
白の女王「原因の後に結果が来るとは限らないの。時に因果律は逆転するのよ・・・だから私が偽りの微笑みをしている限り・・・世界は当分混沌としたままなの」
アリス「なんか落ち込んできちゃった・・・」
微笑む白の女王「気を悪くさせちゃったみたいね。ごめんなさい。」
アリス「一緒に戦ってくれない?」
白の女王「・・・今は力になれない・・・私は・・・臆病だから・・・」
背が縮んでいくアリス

元の大きさにもどる。城のふもとにいた白ウサギが駆け寄ってくる。
白ウサギ「どうだった!?アリス・・・」
首を振るアリス「だめ・・・頼りになりそうにないわ・・・あのひと・・・どことなく私のお姉さんに似てた・・・」
白ウサギ「そんな・・・白の王国がたちあがってくれないと、ぼくらの世界は赤の女王によってみんな平地にされてしまう・・・」
アリス「大丈夫。私が何とかする・・・」
白ウサギ「アリス…」

翌日。午前。晴れ。
アリス邸に馬車がやってくる
シャーロック・ホームズ「ここかいワトソンくん。」
馬車に駆け寄るパパ「いや~ようこそいらっしゃいました!」
馬車を降りるホームズ「え~あなたがヘンリー・リデルさん?んっふっふっふ・・・わたくしホームズ・・・私立探偵のシャーロック・ホームズと申します・・・え~こちらが助手で医者のワトソン先生。」
ワトソン「は、ワトソンです!」
ホームズ「えっへっへ・・・腰は低いんですが頼りにならない男でして・・・」
パパ「それではさっそく事の顛末の方を・・・」
ホームズ「え~結構です。馬車のなかで資料を読んで完全にインプットしました・・・さっそくですが昨日ガーデンパーティをやったという庭に案内していただけますでしょうか?」
パパ「はあ・・・こちらです・・・」
パパに耳打ちするレオポルド「ホームズ氏は少々変わりものなんです・・・」
パパ「はは・・・優秀な人はみんなそうだよ。」

白の王国の朝。
白の王国の国民はみんな荷物をまとめて、移動の準備をしている
アリス「なんでみんな引っ越しちゃうの?」
白ウサギ「どうやらここに赤の女王が攻めてくるらしくて、みんな逃げちゃうんだよ」
アリス「国を捨てちゃうの?白の女王様を置いて!?」
白ウサギ「うん・・・」
アリス「赤の軍隊もメチャクチャだけど、こっちも信じられないわね・・・あれ?白の騎士さんは?」
白ウサギ「それが・・・昨日の夜ハンプティ・ダンプティさんに詩を解説してもらった後、どこかにいっちゃって・・・」
アリス「またジャバウォックを倒しに行っちゃったのかしら?無茶しなきゃいいけど・・・」
白ウサギ「ぼくらはどうする・・・?」
アリス「私は逃げないわ・・・」

白の王国に進軍する赤の軍隊
赤の騎士「進め!いまこそ白の王国をねだやしにするのだ!!」
その様子を見つめるチェシャ猫「おもしろくなってきやがった・・・」

白ウサギ「ひいい・・・来た…!」
おびえる白ウサギをなでるアリス「大丈夫・・・・・・」
赤の騎士「カノン砲前に…!照準合わせ・・・放て!!」
白の王国が砲撃され爆発する
樹木で出来ているのであっという間に燃えてしまう建物
白の王国になだれ込んでくる赤の兵
赤の騎士「敵は!?」
兵士「誰もいません!みんな逃げだしたようです!」
赤の騎士「王宮に女王はいるはずだ!王宮を探せ!」
建物の陰に隠れているアリスと白ウサギ
白ウサギ「あああ・・・大変だ・・・!」
アリス「大丈夫・・・あの木はとっても高いの。一日やそこらでたどり着けないわ・・・!みてて」
井戸で水を汲むアリス。水を如雨露に入れて、王宮にかける。むくむくと成長していく白の王宮。
白ウサギ「なるほど・・・」
アリス「あなたも手伝って!」

赤の騎士「ほう・・・なかなかずるがしこい真似をするじゃないか、アリス・・・」
白ウサギ「ひいい!見つかった・・・!ご・・・ごめんよアリス・・・ぼく一人ではとても戦えない・・・!」
逃げ出してしまう白ウサギ
アリス「ウサギさん!」
兵士「あのウサギをつかまえろ!」
赤の騎士「あんな雑魚構わぬ!捨ておけ!それよりもこの女だ。砦の借りをかえすのをずっと待ちわびていたんだよ・・・」
笑って剣を抜く赤の騎士「はじめから大人しくこちらの言いなりになっていれば、死なずに済んだものの・・・ほとほと馬鹿な女だ、お前は・・・」
アリス「わたしは誰のいいなりにもならない・・・私の運命は私が決める・・・!」
赤の騎士「ほう・・・怖くないのか?」
アリス「あなたなんて怖くない!!」
アリスの前に飛び出す白の騎士「その通りだアリス!」
アリス「白の騎士さん・・・!」
白の騎士「そなたは私が守ると約束したはずだ・・・!」
赤の騎士「くくく・・・またやりあおうというのか・・・貴様は私には勝てん・・・!」
白の騎士「その通りだ。」
赤の騎士「?」
白の騎士「お前には普通の剣が通用しないのだからな・・・!確かに私は貴様より弱かった!しかしそれはお前が強かったのではない!その剣が強かったからだ・・・!」
赤の騎士「ほう?」
白の騎士「お前のその剣こそ、我が白の王国から奪った伝説の剣ヴォーパルの剣だ・・・!!」
赤の騎士「くくく・・・よくぞ。その通りだ。この剣はケンカの仕方も分からない貴様らが持っていても仕方あるまい?私のような戦士が持ってこそその力を発揮するのだ・・・」
赤の騎士が白の騎士に切りかかる。赤の騎士の攻撃を受け止め、剣をはねのける白の騎士。
白の騎士「いいや、違うな・・・お前は臆病だ・・・なぜその剣を持っていながらジャバウォックを退治しない・・?」
赤の騎士「なんだと・・・?」
白の騎士「貴様は最強の剣を持ってしても、まだ敗れることを恐れているのだ!」
赤の騎士「たわけ!」
強烈な斬撃を加える赤の騎士。
倒れる白の騎士
アリス「白の騎士さん!」
赤の騎士「アリス!この男の首がはねられるところを見ておけ!」
白の騎士「私は勝利したぞ・・・!そんな剣が無くても、心に宿る勇気と絶対に諦めない強い意思で!」
赤の騎士「くはは!それが今生最後の言葉か!」
その刹那、恐ろしいうなり声が上がる。
地響きを上げて、白の王国にジャバウォックが突っ込んでくる。
赤の騎士「な・・・!なんだと・・・!!」
ジャバウォックの額には剣で切り付けられた傷が付いている。
白の騎士「よくぞ来てくれた、わが友!」
赤の騎士に襲い掛かるジャバウォック
赤の騎士「ひいいいいい!!くるなあああ!!!」
剣をふるう赤の騎士。しかしジャバウォックは赤の騎士の脚を咥えてふりまわす。
頸を振るい赤の騎士を放り投げてしまう。
兵士「ば・・・化けものだああ!!!」
赤の軍隊が攻撃を加える。
ジャバウォックは顎を開き、炎を吹いてカタパルトを吹っ飛ばしてしまう。
白の騎士を起こすアリス「やったね・・・」
白の騎士「私がジャバウォックに打ち勝てたのはキミのおかげだ・・・」
アリス「いいえ・・・あなたの力よ・・・」
何かに気付く白の騎士「ア・・・アリス・・・!あれを!!」

『アリス・イン・ワンダーランド』の脚本⑤

「第五章 ジャバウォックの詩」

うす暗い森の中を客車を引いた蒸気機関車が進む。
汽車のライト以外は光るコケやキノコが暗い森をほんのり照らしているだけだ
白の騎士「あの馬のおかげで汽車に間に合ったな」
客車の窓の外を見るアリス「パパたち今頃なにしているのかしら・・・」
白の騎士「君には父君がいるのか」
アリス「それはもちろんよ・・・立派な人よ。それにママも・・・」
白ウサギ「アリスのお母さんはアリスに早く結婚してもらいたいみたいだけど・・・」
アリス「うん・・・それが悩みの種・・・なんで知ってるの?」
白ウサギ「ちょこちょこキミの庭に行っていたから・・・君らが言い争っているのが聞こえたんだ・・・」
アリス「私・・・大人になるのが怖いんだと思う・・・」
白ウサギ「・・・結婚したくないの?」
アリス「・・・そういうわけでは・・・お姉ちゃんは私にもきっとぴったりの王子様がいるって言うけれど・・・とにかくこの世界を何とかするのが先よね。」
白の騎士「大丈夫だ・・・君のことはこの私が守って見せる。そなたは安心して我が道を行くがいい」
アリス「ありがとう、白の騎士さん」

砂漠の薔薇が点在する砂漠にかこまれて、歯車や蒸気機関によって機械化された要塞のような都市が広がる。その中心部にある赤の王宮
赤の女王の玉座
赤の女王「何!?前線基地が陥落した!?」
赤の騎士「申し訳ございません、陛下・・・白の王国は恐ろしく巨大な化け物を手なづけたようです・・・・」
赤の女王「なんと・・・あの女がそのような大それたことをするとは・・・!して、その化け物の名は・・・!?」
赤の騎士「アリス・・・」
赤の女王「アリス!?なんとおそろしい響き・・・」
赤の騎士「陛下・・・白の王国が新たに強力な味方を手に入れた今、ここは勝負を長引かせては危険です・・・!一気に白の王国に総攻撃を仕掛けては・・・!」
赤の女王「あせるな。そのアリスの弱点を探ってからの方がよかろう・・・帽子屋!」
帽子屋「へいへい・・・」
赤の女王「お前アリスを知っているな?」
帽子屋「カラスとかきもの机は何が似ている?」
赤の女王「訊いているのはこっちだ!!」
帽子屋「ああ、そうでございやしたか・・・ええ、知っておりますよ」
赤の女王「奴の弱点はなんだ!?」
帽子屋「それは自明でございますよ・・・あんた様でございます」
赤の女王「私だと!?」
帽子屋「すこし難しいですか?」
剣を向ける赤の騎士「そう思うなら最初からわかりやすく言え!」
帽子屋「へへへ・・・そうでございますね・・・これでございます(時計を取り出す帽子屋)」
赤の女王「それは?」
帽子屋「日の解る時計、日計ですな。つまり“変化”でございますよ。アリスの弱点は変化なのです。
“変化”はお得意でございましょう?女王陛下は。」
顔を見合わせる赤の女王と騎士「?」
赤の騎士「この男すっかりいかれておるようですな。」
赤の女王「もうよい。さげよ」
衛兵に連れて行かれる帽子屋
赤の女王「変化・・・赤の騎士・・・!例のものは!?」
赤の騎士「じきに完成するようでございます・・・」
赤の女王「お前の言う通り、早めに仕掛けた方がいいかもしれぬ・・・」

日が暮れ、あたりは暗くなっている。
雪原にそびえる巨大な樹木。その樹木を改造し、森の隠れ家のようにしている白の王宮
巨大樹のそばにはキノコや切り株を改築した家が並んでいる
白の騎士「すっかり日が暮れてしまったな。これが白の王宮だ。」
アリス「すごい立派な樹ね・・・」
城の周りの兵たちを指さす白ウサギ「あれは?」
城のふもとでたくさんの兵士が如雨露で水をかけている
白の騎士「ああ・・・ああやって我が王宮を“建築”しているのだ」
アリス「建築というより栽培ね・・・」
白の騎士「なんでもよかろう、ああして常に城を高くすれば、赤の軍隊も早々最上階の玉座へはたどり着けん」
アリス「でもそれでは私たちも登れないわ」
白の騎士「・・・・・・。きみは賢いな」
白ウサギ「では、白の女王さまはもしかしてずっとあの木のてっぺんに・・・」
白の騎士「うむ。戦争が始まってこのかた我が陛下には指一本触れさせてはおらぬわ!ははは!」
アリス「なんてかわいそうなことを・・・」
白の騎士「しかしまいったな、陛下に接見させたかったのだが・・・」
アリス「それをいうなら“謁見”ね・・・いいわ。この国にはケーキはあるかしら?」
白の騎士「さて・・・」
白ウサギ「あ、あそこにお店がありますよ・・・「ないものはない」って書いてあります。」

雑貨屋オールドシープショップに入る
アリス「ごめんくださ~い・・・」
年老いた羊が編み物をやっている「もう店じまいだよ・・・」
アリス「あの・・・体が大きくなるケーキが欲しいんですけど・・・」
羊「なんだいそれ?」
アリス「ありませんか?」
羊「ないものはないんだ、この店には。どこかにあるさ・・・」
アリス「あなたはわからないの?」
羊「店の人間が店の品物を全て知っているわけはないだろう?わたしももう歳でね・・・勝手に探しな」
アリス「ありがとう。」
棚で卵を見つける白の騎士「こ・・・これは・・・!」
白ウサギ「なんですか?この卵?」
白の騎士「これはかのジャバウォックの伝説の詩の謎を解き明かすハンプティ・ダンプティでは・・・!これはいくらだね?」
あくびをする羊「一個5ペンス。二個で2ペンス」
白ウサギ「一個の方が高いんですか?」
白の騎士「買おう!」
アリス「そんな卵よりもケーキを探してよ!」
ハンプティ・ダンプティ(H.D)「そんな卵!?なんて失礼な娘だ!このわしを卵よわばりするとは!」
白の騎士「これは供のものが失礼を。彼女はまだこどもなので。」
H.D「それはそうだろう、で騎士殿?わしに何が聞きたい?」
白の騎士「ジャバウォックの詩という詩をご存知でしょうか?」
H.D「知らんな。だが任せなさい。わしはこれまでに発表された全ての詩が解る。みせてみなさい」
白の騎士はハンプティ・ダンプティに詩の書かれた巻物を見せる
アリス「なんなの、その詩?」
白の騎士「ジャバウォックを倒す方法が描かれた伝説の詩だ・・・」
アリス「あの森の大きな怪物ね」
白の騎士「さよう。あの怪物を倒すことが私の使命だ」
アリス「なんで・・・?」
白の騎士「それがわたしの定めだからさ・・・あれを倒せば赤の騎士ももう私を馬鹿にはできまい・・・!」
アリス「そうかしら」
H.D「ちょっと静かにせんか!」
アリス「はいはい、ごめんなさい。ウサギさんケーキを探してくれない?」
白ウサギ「うん・・・」

ジャバウォックの詩の巻物を広げるH.D「これは興味深い・・・なにか意味がありそうだな」
白の騎士「さすが・・・」
アリス「あの・・・逆さに持ってますよ・・・」
H.D「横からうるさい!ええとだな、これはつまり・・・動物図鑑だな」
白の騎士「動物図鑑?」
H.D「さよう。一段、二行目「すべらとうぶはこまかりあなきる」から行こうか・・・これは、「トウブ」という動物の生態を記しておる・・・これはアナグマの一種で尻尾はトカゲ。日時計の下が住みかで・・・」
白の騎士「あの・・・ジャバウォックについては・・・」
H.D「せかすな騎士殿。ええとジャバジャバジャバジャバ・・・ジャバウォック・・・ああここだ・・・「ジャバウォックに気をつけろ息子。油断するなバンダ―スナッチに、怒りクルクルジャブジャブ鳥・・・」まったく興味深い・・・」
白の騎士「バンダ―スナッチ?」
H.D「それにジャブジャブ鳥とある。お主見たことは?」
白の騎士「いえ・・・」
アリス「宿敵が増えちゃったわね・・・」
H.D「諸君、次が面白いぞ。「ヴォーパル剣を手にしたおのこ、思いにふけりてしばし立つ。かのジャバウォックまなこランラン、森より出でぬ。えいやあえいやあ・・・!」」
羊「あんたらうるさいね!」
H.D「すいません・・・」
白の騎士「ヴォーパルの剣・・・なるほど・・・だからあの弓で放った剣が効かなかったわけか・・・」
H.D「どうやらジャバウォックを倒すにはこの剣が必要のようだな。」
アリス「そういう問題ではなかったような・・・あ、あった(ケーキを見つける)。」
H.D「次。「ヴォーパルの刃、ぐっさり、するり、倒れし敵をば、斬り捨てて、首をとって誇りて戻らん。汝ほふりたるや、あのジャバウォック!我が腕に晴れめく息子!おおフラジャズの日かな、むせびくばかりのこの喜び・・・!」なるほど・・・これは・・・」
白の騎士「ど・・・どういう・・・!」
店の中で大きくなるアリスにつきとばされるハンプティダンプティ「うぎゃ!」
棚から落ちてぐしゃりと割れてしまう。
元の大きさにもどるアリス「うん。たしかにこのケーキね」
白の騎士「なるほど・・・ジャバウォック討伐のカギは「ヴォーパルの剣」か・・・たしかあの剣はどこかで・・・」
羊「ちょっとあんたたち!もう出てってちょうだい!」

『アリス・イン・ワンダーランド』の脚本④

「第四章 赤の砦」

赤の軍隊の砦
赤の兵士に取り囲まれているアリス、白ウサギ、ユニコーン。
赤い鎧をつけた騎士が砦の奥から早歩きでやってくる。
赤の騎士「なんだ、騒々しい!」
赤の兵士「白の兵士が襲撃してきました!」
赤の騎士「はっはっは!そのようなことがあるものか!白の王国の兵はみな腰抜けで間抜けと言うことは知っておろうが!」
アリス「なんか失礼な人ね。」
赤の騎士「おおお?これは驚いた!本当に単身乗り込んできた上に女とは・・・白の王国にも気骨のあるものがいるようだ!これは女王陛下に報告せねばならんな。」
白ウサギ「ひいい!赤の女王・・・」
赤の騎士「次に赤の王宮に帰還するのは何手目だ?」
兵から羊皮紙をうけとり、作戦を確認する騎士
赤の騎士「よろしい。・・・この白い娘は気に入った。食事に招待しよう。そのウマは外に追い出しておけ。馬糞でもされたらかなわん。」
赤の兵士「は・・・!」
ユニコーン「お前とは違うよ」
槍でユニコーンをつつく赤の兵士「うるさい!いいから歩け喋る馬!」
ユニコーン「おい!俺は動物園の動物じゃないぞ!」
アリス「友達に乱暴しないで!」
白ウサギ「アリス・・・ここは彼らの言うとおりに・・・」
赤の騎士「なあに少しの間、大人しくしてもらうだけだ、案ずるな白い娘」
アリス「わたしの名前はアリスよ。」
赤の騎士「これは失礼。アリス。王宮に比べれば大したものはないが、できる限り最高のもてなしをしようぞ。おい!お茶の準備だ!」

紅茶セットを運んでくる帽子屋「はいは~い!ただいま~」
白ウサギ「ぼ・・・帽子屋さん・・・!」
赤の騎士「ほう、帽子屋の知り合いか。この男は我が赤の王国の伝令として働いておるのだ。」
帽子屋「赤の騎士殿には頭が上がりませんぜ~・・・」
赤の騎士「まったく調子のいい奴だ」
お茶を雑に注ぐ帽子屋の耳元でささやく白ウサギ(な・・・なんでよりによって赤の女王の手下に・・・)
帽子屋「牢にぶち込まれてあたしも改心しやしたよ~やっぱ赤の王国が正しい!」
赤の騎士「はっはっは・・・その通りだ。」
騎士に愛想良く微笑むを投げかける帽子屋
白ウサギの方に顔を向ける帽子屋(・・・このわしがこの程度で懲りるわけないじゃろ・・・!バカな騎士だ・・・くっくっく・・・)
赤の騎士「どうかしたか?」
帽子屋「いや~このウサギが赤の騎士様は勇敢でお上品ですな~と申しておりますので、お前の思ってる二倍はカッコいいぞと。やあ、アリス。久しぶりだね?“ケーキはいるかい?”」
アリス「今はお腹は空いてないわ・・・」
帽子屋「そんな事言わずに、若いうちはケーキをたらふく食べることじゃよ!」
アリス「でも・・・」
服を引っ張る白ウサギ「アリス・・・」
テーブルの上の皿を押しやるアリス「・・・・ケーキよりも私は、あなたに聞きたいことがあるの」
紅茶を飲む赤の騎士「なんだね?アリス」
アリス「あなたが赤の騎士団を率いているのよね?」
赤の騎士「そうだが・・・」
アリス「なら赤の女王様に戦争をやめるように言ってくれないかしら?」
いきなり笑いだす赤の兵士たち。
アリス「・・・・・・?」
赤の騎士「なにを言いだすのかと思えばお嬢さん。戦争屋に戦争をやめろと?」
アリス「喧嘩は良くないわよ・・・」
赤の騎士「ははははは!いいかね?男とは戦うために生まれたのだ!闘わずして何をする?」
アリス「バッカみたい。なんで闘っているのよ。」
赤の騎士「国家の発展だ。森を切り開き、鉄道を敷き、我が国をさらに豊かにする。そのためには白の王国から搾取せねばならん。いいか、我々は白の兵が一人残らず降伏するまで、戦い続ける・・・!」
アリス「じゃあ、白の軍隊をみんなやっつけちゃったら?」
赤の騎士「・・・え?ああ、そのときは・・・まあその時考えるが、戦いをやめることはないのだ。それが戦士だ。」
机の下にいるチェシャ猫「そんなことできるわけないんだよ・・・こいつらも所詮能なしだからな・・・白の女王が逃げ続ける限り、赤の王国は白の王国に負けはしないが、勝てもしないのさ・・・」
剣を握る赤の騎士「誰だ!!」
帽子屋「わしじゃないです!」
白ウサギ「ぼぼぼ、ぼくでもありません!」
赤の騎士「じゃあ、誰だ!」
アリス「ちょっと・・・私じゃないわよ・・・」
赤の騎士「いいや、お前だアリス・・・!他のものはそんな口を利く度胸がない・・・!」
帽子屋「ははは・・・」
赤の騎士「私を侮辱するならともかく我が女王陛下が統治する王国を馬鹿にするとは許せん!決闘だ!剣を取れ!」
アリス「むちゃくちゃいわないでよ!」
帽子屋「それよりケーキとお茶はいかが?」
アリス「あなたは少しは状況を見なさい!」

白の騎士「助けに来たぞ~姫~!」
窓をぶち破り砦に入ってくる白の騎士。ガラスの破片が刺さり床を転げまわる。
白の騎士「いてててててててててててて!」
扉から入ってくるユニコーンとライオン「だからやめとけっていったのに・・・」
白の騎士に肩を貸すアリス「白の騎士さん大丈夫?」
白の騎士「ああ、かたじけない・・・」
赤の騎士「ははは!今日はなんて日だ!白の王国最高の馬鹿も攻めてくるとはな!」
剣を抜く兵たち
赤の騎士「お前たちは動物どもをやれ!私はこの愚かな騎士の首をはねる!」
赤の兵たちが襲ってくる。
白の騎士「君たちは私の後ろに隠れていなさい!」
チェシャ猫「そこが一番危険だな」
白ウサギとアリスと帽子屋は白の騎士から離れて机の下に隠れる
白の騎士と赤の騎士が斬り合いを始める
赤の騎士「ほう・・・少しはまともに剣がさばけるようになったじゃないか!」
白の騎士「私はもう昔の私ではない!覚悟!」
ユニコーンは突進して赤の兵士を蹴散らし、ライオンも怪力で兵士たちを吹っ飛ばす。
ライオン「大丈夫か、あの騎士!?」
ユニコーン「威勢だけはいいからな・・・」
部屋の中は様々なものが飛び交い、ほこりが舞っている

机の下の一同
アリス「ウサギさん、なんとかならない・・・?」
白ウサギ「どうしようどうしよう・・・」
帽子屋「こういう時は落ち着いてお茶にしようや」
アリス「もう・・・」
その時はっと気付くアリス「そうね・・・帽子屋さん。お茶にしましょう。」
笑う帽子屋。

白の騎士の件をはじく赤の騎士「しかし、その程度では姫を救う騎士にはなれんな!死ね!!」
赤の騎士が白の騎士に剣をふるう瞬間、横から巨大な脚が付きだしてきて赤の騎士を蹴とばす。
赤の騎士は壁に叩きつけられる
アリスの背がぐんぐん大きくなって部屋の天井に頭がぶつかる
アリス「あたた・・・これであなたたちなんて怖くないわ」
赤の兵たちが悲鳴を上げる「ひいい・・・怪獣だ・・・!」
白の騎士「敵の気を食った!この機を逃すな!反撃!!」
その瞬間アリスのもうひとつの足に蹴飛ばされる白の騎士「ぎゃっ!」
アリス「あら、ごめんなさい・・・」
ライオン「おいおい、やばいぞ・・・!」
ユニコーン「ああ・・・逃げよう!!」
赤の兵士と共に逃げていくライオンとユニコーン
帽子屋「わ・・・わしもおいていかないでくれ~!!!」
アリス「ちょっとみんな待ってよ!あいてててて・・・まだまだ背が伸びるわ・・・!」

とうとう巨大化しすぎて砦を内側から破壊してしまうアリス。
赤の騎士「あの怪獣を倒せ~!!」
アリスに向かって野外の巨大な木製カタパルトが石を投げつけてくる
アリス「いてて・・・もうやめて!」
カタパルトを手で払うアリス
兵士「ぎゃあああ!駄目です~!!」
赤の騎士「撤退!撤退だ~!!」

前線基地が静まりかえる
アリス「ふう・・・あれ?みんないなくなっちゃった・・・」
白ウサギを抱える白の騎士「は~はっは!正義は勝つ!」
アリス「あなたは怖いものが無いのね・・・」
白の騎士「どんな大きさでも、あなたはチャーミングなお嬢さんだ。しかしまさか赤の砦をおとしてしまうとは・・・恐れいった!我が女王陛下も喜ぶであろう!ぜひ白の王宮に招待したい!」
遠くを見渡すアリス「白の王宮・・・?ああ、あれね」
北の方の雪原に巨大な樹木のような塔が立っている。
アリス「今の私ならあそこまで10歩でいけそうだわ・・・」
アリスが一歩を踏み出そうとすると背がどんどん縮んでいく
アリス「あれれ・・・?元の大きさに戻っちゃった。」
白ウサギ「いや・・・もっと小さいみたいよ?ぼくの方がちょっと大きいから・・・」
アリスは白ウサギくらいまで小さくなってしまう「まあ、これじゃ何が大きくて何が小さいのか解らなくなってくるわね・・・あの帽子屋さん何を食べさせたのかしら」

白の騎士「まあいいまあいいい!ここは馬で行くとしよう」
アリス「でも一角獣さんはどこかに逃げちゃったわ」
白の騎士「ふうむ・・・おっ、あそこの樹の陰にいるではないか!」
木に陰に隠れてこちらを見ている小鹿「え・・・ぼ・・・ぼく・・・?」
白の騎士「うむ。こちらへ参れ」
小鹿「ぼくって馬なの??」
白の騎士「ああ、立派な駿馬だ。」
白の騎士に囁くアリス(あれはかわいい小鹿よ・・・)
白の騎士「そうか?まあ乗れればいいじゃないか。きみは立派な馬だよ」
小鹿「そうか・・・ぼくは馬だったんだ・・・!ありがとう、騎士様・・・!」
白の騎士「なあに礼には及ばん」
小鹿「きみはなんて動物?大きくなったり小さくなったり・・・すごいんだね・・・ぼくらの森を赤の軍隊から守ってくれてありがとう!」
アリス「え?私のこと?」
白の騎士「そうらしいな。で、我々を乗せてくれるかね?」
小鹿「もちろん!鉄道の駅まででいいかな?」
アリス「大丈夫かな・・・」
小鹿「ぼくはウマだよ、えっへん、心配しないで!」
アリスと白ウサギを抱えて小鹿に乗る白の騎士「じゃあ、失礼しよう。」
小鹿「こんな気分生まれて初めてだ・・・!しっかりつかまってて!」
白の騎士を乗せて小鹿は力強く駆けだした。

『アリス・イン・ワンダーランド』の脚本③

「第三章 走り続けろ」

現実世界のリデル邸
パパ「え?アリスがいない?また庭の外で一人で遊んでいるんだと思うけどな・・・」
レオポルド「それが・・・屋敷の敷地中探したんですけど、みつからないんです・・・」
パパ「王子殿はアリスに興味を持たれたのかな?」
レオポルド「とても魅力的な女性ですよね」
ママ「ぜひ結婚してやってください!」
パパ「ママ!・・・とにかく使用人に言って捜させましょう。遠くには行ってないと思うけど」

不思議の国
不思議な虫が飛ぶ森の中を歩く一同
白ウサギ「で・・・どちらに行けば・・・?」
ライオン「女王の城だよ!あんたもう忘れたのか?」
白ウサギ「いえ・・・そういうわけではなく・・・」
?「白か赤かってことだよ・・・」
アリス「誰」?

樹の上に猫が乗っている
チェシャ猫「くっくっく・・・おたくらが白か赤かによって目的地は変わるんじゃない?」
アリス「あの猫は、にやにや何が面白いのかしら?」
チェシャ猫「あんたたちさ。なんでもこの戦争を止めるんだって?」
アリス「ええ・・・」
チェシャ猫「くっくっく!それはいい!戦争を止める!そもそもこの戦争も決着がつかずに退屈していたんだけど・・・あんたらのおかげでもう少し楽しめそうだ・・・!」
アリス「まあ、なんてことをいうのかしら。」
アリスを乗せて歩きだすユニコーン「無視無視。」
チェシャ猫「おいおい・・・待てよ。おもしろいよあんたら。わかった、この戦場の歩き方ってのを特別に教えてあげるよ」
アリス「戦場の歩き方?」
チェシャ猫「そのためには、あんたらが赤か白にならなければならないな。どっちにつく?赤は乱暴、白は腰抜け、まあどっちもいかれているがね!」
アリス「乱暴者は嫌だわ」
チェシャ猫「じゃあ、あんたは今から白の歩兵(ポーン)だ!」
アリスの服が真っ白になる。
チェシャ猫「いいかい、戦場で進みたいのなら歩いていちゃダメだ。そんなことじゃ同じ場所にもとどまれない。進みたいのなら力の限り走らないとね!」
アリス「なにをいっているのかしら?止まっていれば場所は変わらないわ。」
チェシャ猫「なにをいっているのかしら?」
アリス「私の言ったことを復唱しないでよ!」
チェシャ猫「君は同じ場所が変わらなかったことを見たことあるのかい?」
アリス「わからないけど、すぐには変わらないと思うわ」
チェシャ猫「くっくっく・・・!そんなぼんやりさんは戦争で取られちゃうぜ!ここではね、動き続けなきゃダメなんだ!」
アリス「なんで?」
声だけ残して消えるチェシャ猫「それがこのゲームのルールだからだよ!」
ライオン「あいつの言ってることの半分も分からなかったな・・・」
チェシャ猫「すぐに解るよライオン君。この森では背後に注意しろよ。食われちまうぞ。」
ライオン「馬鹿な、俺は仮にも百獣の王だぞ!」
おびえる白ウサギ「あああ・・・あの・・・みなさん走った方がいいのでは・・・?」
ユニコーン「同感だな。」
ライオン「おいおい、あの猫の言いなりになるのか?」

一行の後ろにはよだれをたらした大きな怪物が立っている。
一同「に・・・逃げろ~!!!」
失神して倒れる白ウサギを角に引っ掛け背にのせ疾走するユニコーン。ライオンもそれに続く。
唸り声を上げ、木々を押し倒しながら怪物が追いかけてくる。
怪物の眼はヘッドライトのように光り、暗い森をてらしている。
ライオン「なんだ!?あの怪獣は!!」
ユニコーン「ジャバウォック!」
ライオン「なんだそれ!?なんの仲間だ!?」
ユニコーン「ジャバウォックはジャバウォックの仲間だよ!!お前動物園行ったことないな!」

その時ジャバウォックの前にさっそうと白馬にまたがった騎士が現れる。
白の騎士「ジャバウォック覚悟おおおお!!いやあああああ!!」
白の騎士は剣を抜き、構えると、馬から落馬した。

アリス「大変!止まって!あの人を助けないと!」
ライオン「なんだ、あいつは!?馬鹿か?」

落馬した騎士に追いすがるジャバウォック。あぎとを開き、牙をむく。
動じず巨大なボウガンのようなものを取り出す騎士「は~はっは!見ろ!これぞおまえを倒すために発明した「矢の代わりに剣を放つ弓」である!くらえ!」
ボウガンで剣を飛ばす騎士。狙いが下手すぎて、怪獣の頭から大きくそれてアリスの背後の木に突き刺さる。突き刺さった剣は「ビーン」と小刻みに揺れた。
騎士「・・・うむ、よくぞかわした!それでこそわが宿敵!」

アリス「・・・あの調子じゃあの人きっと食べられちゃうわ!ライオンさん!なんとかして!」
騎士がジャバウォックにかまれる刹那、ライオンが飛び出しジャバウォックの顔に体当たりをぶちかます。ジャバウォックがひるんだすきに、アリスの乗ったユニコーンがジャバウォックの脚を角で突き刺し、怪物の注意をこちらに向ける。ジャバウォックは首を曲げ、ユニコーンの方に頭を向ける。
白の騎士「あの娘・・・なんて勇ましい・・・!」
ライオン「俺に乗れ!今のうちに逃げるんだ!」
白の騎士「いいや、騎士は退かぬ!」
騎士に吠えるライオン
びびってライオンの背に乗る白の騎士「そなたの言うとおりにしよう。」

ユニコーンを追いかけてくるジャバウォック
アリス「もっと早く・・・!追いつかれちゃうわ!」
ユニコーン「はあはあ・・・」
ユニコーンの隣に顔だけ出すチェシャ猫「くっくっく・・・背中にうるさいのを乗せてりゃそりゃあ遅いわな・・・」
アリス「もうちゃかさないでよ!それより、あの怪物から逃れられる場所はない!?」
チェシャ猫「それなら森を抜けたところにいいところがあるぜ・・・」

森を抜け野原に出るユニコーン。柵を飛び越え石造りの建物に入る。
ジャバウォックは森から出ずに唸り声をあげて、引き返していった。
アリス「はあはあ・・・助かった・・・で・・・ここは?」
赤の兵士「ここに白の兵がいます!!」
赤の兵士たちに取り囲まれ槍の先を向けられるアリス。
ユニコーン「やばいな・・・」
そこは赤の軍隊の前線基地だった。
チェシャ猫「“怪物からは逃れられた”だろ?」

午後三時を回った現実世界では使用人や家族がアリスを探している。
庭で娘を呼ぶパパ
パパ「アリス~パーティはもう終わったよ~おうちに帰っておいで~!」
レオポルド「噴水広場の方にもいません・・・!」
ママ「本当にどこへ行っちゃったのかしら?」
パパ「もう一度探そう・・・」
ママ「まさか家出・・・最近私はアリスに辛く当たっていたのから・・・」
パパ「きみのせいじゃないよ・・・」
ママ「でも・・・!「あなたは女として崖っぷちだ」って・・・」
イーディス「そりゃ言い過ぎだわ」
パパ「イーディス、屋敷の中は?」
首を振るイーディス「そろそろ警察に連絡した方がいいんじゃない?」
レオポルド「そ、それならこの手の事件の専門家がいます・・・私の知り合いの探偵なのですが・・・マスグレーブ家失踪事件って知ってますか?」
パパ「あれを解決したんですか?」
イーディス「やるじゃん。」
ママ「ぜひその人を呼んでください・・・!アルバード様・・・!」
レオポルド「わかりました。君。シャーロック・ホームズ氏に電報だ。」
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