『青春アタック』脚本⑲深山幽谷

全国から集まった参加選手を各地の港に降ろし、デゼスポワール号は海上へ消えた・・・
煙突からの煙は、これから始まる戦いの狼煙であった・・・



大会一日目――
栃木県北部の無人駅。
一両編成の蒸気機関車が引き返していく。
それを見送る、白亜高校バレー部。
駅は荒れ果てており、「動物注意!」の標識が倒れかけている。
ホームに獣が爪を立てた跡があることに気づく花原。
屈んで動物の毛をひろう。
花原「・・・・・・。」
華白崎「種類はわかりますか・・・?」
毛を眺める花原「・・・本州最大の捕食者・・・ツキノワグマだと思う。」
乙奈「まあ、おそろしい・・・」
海野「だ・・・だいじょうぶだよ、くまは基本的に臆病で、リュックサックに鈴をつけていてば向こうから逃げていくってスーパーJチャンネルのおじさんが言ってたよ。」
ちおり「海野さんものしり!」
糞を木の枝で突っつく花原「・・・野生動物は行動が読めない・・・」
華白崎「私も花原さんと同意見です。
この時期のくまは冬眠から覚めたばかりだから飢えている・・・
山中を進む際は十分注意したほうがいい。」
海野「・・・わたしたちバレーをしに行くんだよね・・・?ワンダーフォーゲル部じゃないよね??」
乙奈「・・・たぶん。」
花原「こんなこともあろうと、市販のスタンガンを改造して、くまでも一撃で行動不能にできる威力にしてきたわ・・・」
リュックサックから電気棒を取り出す花原。
ちおり「じゃあ、花原さんが先頭で行こう!」
花原「・・・え?」
山村「安心しろ。このマッスルが坂田金時のごとく、相撲をとってやる・・・」
山村に電気棒を渡す花原「じゃあ、これもあげるよ・・・」
華白崎「・・・そういえば監督は?」
海野「U字工事駅で待ってろって・・・」



その時ディーゼルエンジンの音が聞こえる。
軍用のトラックを駅のホームに荒々しく停車させるさくら。
標識にぶつかり、動物注意のパネルが飛んでいく。
さくら「おまたせ!さあいくわよ!」
海野「あ・・・あの・・・先生これって・・・軍用じゃないですか・・・?
SWATとか乗ってる・・・」
山村「レンコ社製のベアキャット装甲トラックだな・・・」
華白崎「なんで、そんなこと知ってるんですか・・・」
さくら「こっから先は獣道しかないからね。
暗くなったら、多分事故で死ぬから乗っちゃって!」
帰ろうとする花原「さ~て、私はそろそろ家に帰らないと・・・」
電気棒で花原を突っつくちおり。
花原「あんぎゃあああ!」
しびれて動けなくなる花原。
花原をひきずりトラックに載せるちおり「しゅっぱーつ!」
海野「・・・・・・。」



栃木県の山中は、中国の山水画のような勇壮な大自然が広がっている。
山中で地面を耕しているモンペを履いたセーラー服の女子高生。
茂みが揺れて、高校生の背後から巨大なくまが現れる。
立ち上がるくま「ガルルルルル・・・!!」

女子高生「あ・・・そこに差しといて。」
くま「わかりました・・・」
大木を地面につきたて、バレーボールのポールにする。
女子高生「はい、ご褒美のどんぐり。ご苦労さま。」
くま「いつもありがとうございます・・・!」
アライグマがシマリスと一緒にワラで編んだネットを引きずってくる。
シマリス「ネットが完成しましたよ。」
アライグマ「よおリオちゃん・・・これでいいのか?」
三畳農業高校女子バレー部部長、有葉理央「上出来。」
アライグマ「つーか、オレは気に入らねえな、バレーボールなんかおんな子どもの遊びだろ!?
オレは、これでも森のギャングって言われてんだ。忙しいんだよ・・・」
有葉理央「今週だけ付き合ってよ・・・」
アライグマ「・・・おい。」
シマリスがアライグマに手帳を渡す。
スケジュール帳をめくるアライグマ「マタタビの売人を締め上げるのは来週に回せるとして・・・
木曜日の外来生物イメージ向上会議は日程がずらせねえぞ・・・」
理央「そこをなんとか。」
アライグマ「しゃあねえな。だが、ブルーギルの野郎の機嫌次第だからな、約束はできねえぞ。」
理央「ありがとう。」
アライグマ「イノセとオジカはどうしたんだよ。」
理央「イノセくんは道路公団の仲間と、車両が通行できるように獣道の拡張工事をしてる。
・・・オジカくんは・・・見てないな。」
アライグマ「サボりか、あの野郎・・・」
くま「本当に、こんな山中の学校に人が来てくれるのかなあ・・・?」
理央「伝書鳩によれば・・・おそらく。
白亜高校のみなさんが・・・生きてここにたどり着ければだけどね。」
対戦チケットを取り出す理央。



木々をなぎ倒して、獣道を暴走する軍用トラック。
酒をかっくらいながら「一番星ブルース」を歌うさくら。
さくら「男の~旅は~一人旅~」
部員たち「ぎゃあああゆれる!!」
フロントガラスの視界が一気にひらけ、空が広がる。
急ブレーキを踏むさくら「おおっとおお!!」
崖っぷちでギリギリに停車するトラック。
華白崎「一体どこですか、ここは!!」
トラックから降りてくる一同。
さくら「わからん!完全に迷った!!」
地図を広げるちおり「ねー」
華白崎「助手席の会長がナビゲートしてましたよね・・・ちょっとその地図見せてください。」
地図を渡すちおり「おかしいなあ・・・」
華白崎「こ・・・これファイナルファンタジーの攻略本じゃないですか!!」
ちおり「どおりで目印の暗黒大陸が見つからなかったわけだ」
華白崎「ああ・・・完全に遭難した・・・」
崖っぷちのトラックに背中を預けるちおり「どんまーい!」
すると、トラックがゆっくりと前進し、崖から滑落してしまう。
華白崎「あああ~~~!!!」
崖下に落ちていき見えなくなるトラック。
華白崎「トラックが~~!!」
ちおり「・・・どんま~い!」
華白崎「帰りどうするんですかー!」
海野「ま、まあトラックの中に誰も乗ってなかったのが幸いだったよね・・・」
華白崎「乗ってたら大惨事ですよ!」

一同(・・・ひとり足りない・・・!?)

海野「しびれた花原さんが乗ってたーーー!!!」
震えるちおり「い・・・いやだよ・・・花原さん・・・」
華白崎「会長・・・ご自分を責めては・・・」
さくら「うん。サイドブレーキを引かなかった私も責めてはいけない。」
号泣するちおり「花原さああああん!!!」
その時、「三畳農業高校直進200m」の看板に気づくちおり。
ちおり「こっちだ!」
一同「た・・・助かった~!」
海野(え・・・花原さんは・・・?)



あばら家のような三畳農業高校。
笑顔で白亜高校を迎える理央「ようこそ~!三畳農業高校へ~!
吹雪せんせ、おひさしぶりです!」
さくら「おっきくなったね~」
海野「白亜高校バレー部部長の海野です。」
扇子を広げてパタパタする理央「わたしは有葉理央!森のバレー部の主将やってます!
みなさんご無事に到着できてなによりです!
山が険しくて事故が多いんですよ。」
海野「あの・・・それが・・・」
理央「・・・え?」



ハンドル式の電話の受話器を置く理央
「麓の山岳救助隊に出動要請を出しましたが、ここから10kmもあるし、もう日没です。
明日の朝じゃないと救助に向かえません・・・」
海野「そんな・・・」
理央「夜の山は危険すぎる。しかしトラックが滑落した場所は、この山でもかなり治安が悪い・・・
朝まで待てない。」
ダウンジャケットをはおり、懐中電灯を手に取る理央。
理央「私が助け出してきます。」
海野「有葉さんも危険じゃ・・・」
華白崎「二次被害が出ますよ・・・!」
微笑む理央「私はこの山で生まれたんです。だいじょうぶ。」
学校の前に白亜高校の一行を残して、夕闇の山中に消える理央。

理央「森のみんな!鬼切崖から落ちちゃった背の高い女の子を探して!」
茂みが揺れて、ウサギやヤマネ、野鳥などが集まってくる。
アライグマ「なんだよ・・・ねみーな・・・」
理央「夜行性じゃなかった?」
アライグマ「北米から輸入された時の時差ボケで生活リズムが変わったんだよ。」
理央「バレー部の女の子がひとり遭難しちゃったの・・・!」
アライグマ「気の毒だったな。一週間で白骨になるから、火葬場は借りなくていいぜ。」
涙目になる理央「・・・・・・。」
アライグマ「はいはい・・・分かりました・・・野郎ども!仕事だ!!
空中部隊!編隊を組んで鬼切崖の800m四方を捜索・・・!できるだけ低空飛行を維持しろ。
地上部隊!まずは足跡だ!スニーカーのサイズは25.5センチ・・・!
やっこさんが馬鹿じゃなかったら、そのトラックにとどまっているはずだ。
滑落したトラックを探せ!」
頷いて散っていく野生動物たち。



木の枝をついて山をさまよう花原

・・・彼女は生きていた・・・!
装甲車だったことが幸いしたのである・・・
しかし、外車の構造がわからず車両を修理することを諦めた彼女は、食料の調達に向かった・・・

花原「あれはナヨタケ・・・食えるわね・・・」
可愛いきのこに気がつく花原。

役立つ知識・・・!

ゲロを吐いて倒れる花原「ナヨタケモドキだった・・・!」

しびれる興奮・・・!!

花原「夜になるとやばいわ・・・早く森から抜け出ないと、さっきから野獣の遠吠えが・・・」
すると、自分の背後に狼たちが集まっていることに気づく。
花原「ははは・・・ニホンオオカミさんは、たしか絶滅したのでは・・・?」
花原に飛びかかる狼の群れ。
花原「きゃああああこいつら絶対狂犬病ワクチン打ってない!!!」

狼が花原に噛み付く刹那、巨大な角を持つシカが突進し、狼を吹き飛ばす。
シカ「彼女は私の客人でな・・・悪いが失礼するよ。」
オオカミ「オジカか・・・貴様とはまだ決着をつけてなかったな・・・
偶蹄類の分際で食物連鎖に抗うとは、馬鹿とは言ったものよ・・・」
シカ「再絶滅したくなかったらやめておけ・・・お前らでは私には勝てんぞ。」
飛びかかるオオカミたち「ほざいたな!やっちめえ!!」
シカ「・・・乗れ!」
シカにまたがる花原「・・・は・・・はい・・・」
オオカミ「少しは個体数減らしとけやああああ!」
狼たちを突進して蹴散らすオジカ「つのアタック!!」
そのまま走り去るオジカと花原
オオカミ「く・・・くそ・・・あの食害クソ野郎!」
オオカミ「いてて・・・ゆうごはんが・・・!」
オオカミ「な~にが、つのアタックだ・・・もう少しかっこいい技にしてほしいよな・・・」



三畳農業高校の校舎にはまだ雪が残っている。
花原にとってきてもらったバレーボールを抱きしめるちおり
ちおりの頭を撫でる海野「大丈夫だよ・・・花原さんは賢いから・・・」
別の地図を取り出して悔やむちおり「私が地図を間違えなければ・・・」
華白崎「そっちはドラゴンクエストです。いい加減にしてください・・・」

白亜高校一行にかけてくる理央「花原さんが見つかりました!」
ちおり「ほんと!?」

校舎の外に出ると、たくさんの野生動物が集まっており、シカにまたがって花原が戻ってくるのが見える。
ちおり「すげえ!もののけ姫だ・・・!」
憔悴している花原「黙れ小僧・・・」
理央「それでは、こちらの部員も集まったので紹介いたします!」
海野「・・・部員?もしかして、この野生動物が・・・??」
理央「まず、シマダさん!」
キョロキョロする海野たち「・・・え?どこ??」
足元で声が聞こえる。
シマリスのシマダ「ここで~す、お~い!!」
海野「リスだ~~!!」
理央「シマダさんは少々小柄でして・・・」
理央の肩に乗るシマダ。
乙奈「・・・バレーボールの方が大きいと思うのですが、シマダさんはボールはあげられまして!?」
理央「そしてアライくん!!」
アライグマのアライ「おう、よろしくな。ちなみにおすすめの食器用洗剤はジョイだ。
よく研究されてる。」
理央「天才レシーバーのイノセくん!」
ニホンイノシシのイノセ「・・・せっかく道を工事したのに、崖から転落するなんて・・・」
理央「そして・・・チーム1のセンタープレーヤー・・・クマガイさん!!」
巨大なくまが立ち上がる。
逃げ出す白亜高校「うぎゃああああ!!」
ちおりとブーちゃんだけは逃げない。
ちおり「かわい~!プーさんだ~!!」
包丁を取り出すブーちゃん「・・・クマナベ・・・」
クマガイ「ひいいい食べないで・・・!!」
理央「クマガイさんはわりと臆病なんでよろしく・・・」
海野(あってた・・・)
理央「最後に副部長のオジカくん!」
ダンディなオジカ「どうも。そろそろ白馬から降りてもらえるかな、姫。」
慌ててオジカから降りる花原「あ・・・ああ、すいません・・・!助けてくれてありがとう・・・」
オジカ「彼女の怪我は軽傷だが、あの高さの崖から落ちている・・・
鞭打ちなどの後遺症が心配だ・・・」
白衣を着るさくら「了解、見てみる。ここに保健室は?」
アライグマ「東棟の1階にあるぜ。」
さくら「マッスルくん、手伝ってくれる?」
花原に肩を貸すマッスル「無論だ。」
校舎に入っていく、マッスルと花原とさくら。

理央「それでは、今夜は森のみんなで歓迎パーティを準備しました、どうぞ楽しんでください!」
動物たちに混ざってちおり「わーい!!」

切り株の椅子に座る一行。
草花で出来たなぞの料理を食べるちおり「うめー!なにこれ!?」
シマダ「どんぐりとたんぽぽのサラダです。こちらは菜の花のおひたし・・・」
ブーちゃんもひとくち食べて頷く。
ジョッキを傾ける乙奈「あら、これは上品なのどごしですわ・・・」
クマガイ「はちみつを発酵させてヤギのミルクを混ぜたなにかです。」

森の晩餐会の様子を遠巻きに見つめる華白崎と海野
華白崎「・・・なんかもう打ち解けてますよ・・・」
海野「まるでシルバニアファミリー・・・」

コンプリートジャックポット全滅

 結局二年前の高額コンプリートすべて消滅した。まあ、今月にカラコロッタは「まぼろしの桃源郷」に変わってしまうので、3枚のeパスともいけただけよかったが。
 フローズンアイランドは、DJペンタ登場以降のBGM(ファンタジックフィーバーの編曲)がすごい好きで、変わって欲しくないんだよな。なんとなく、とんでもない爆発力があるコロッタタワーの配当が下方修正されそうだし・・・

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 全然10万枚以上が出そうなんだよな。

 そういえば3日前、突然マイホでマイルドモードとエキスパートモードが実装され、マイルドモードでダラダラやってたらいきなり、最後の高額コンプリートが解禁され、5つのリンゴでワンダーチャンスに行けちゃうから、そのまま+10球とか取り続け、コンプリートジャックポットチャンスに強制的に挑戦させられ・・・

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 8万枚が200枚にかわりました。死ねやああああああ!!!

 このeパス、二年間もトパーズが取れなくて、4万枚もメダルを使って、この仕打ち。なんだったんだ、この二年間は。
 
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 途中、高額コンプリートが崩れた、うさぎのカードで小さいやつが取れたけど、コイツで増えたメダル、トパーズのために全て使っちまったよ!
 でも、やっぱりうさぎは強いな。コンプリートに6回挑戦して4回撃破は大したものだ。桃源郷でも頼む。

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 あと、ハプニングとして、カラコロッタのこの部分って隙間があって、カードがスッポリ入ってしまい、しかも一度入ってしまうと、ネジをすべて外してタッチパネルを持ち上げないと、カードが取れないことが判明。みなさまも気をつけてください。

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 一時期、29万7500枚くらいあって、30万枚目前だったんだけど、バージョンアップ前に高額コンプリートの夢を見たいとこだわったあまりに、かなり減らした。本当にコナミは鬼。
 あと、やっぱり、ミリオンキーパーはイカサマをしていると思う。あれでメダルバンクとひもづけて、当たり外れを調整していると思われる。ミリオンキーパーでメダル転送してから、ストレートにメダルが減り続けているからね。
 あと、ベット数を上げても結局大当たりするまでにかなり回収されているので(9万枚使って8万2000枚が出るとか)、低ベットでジャックポットとって増えるのと、増加量は変わらないという。むしろ、大負けのリスクが高いだけ。

 あとエキスパートモードよ。
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 貴様はとりあえず死んどけ(ジャックポット枚数が二倍になる代わりに、ハズレ配当がキッズメダルになる)。

 新作のアメジストジャックポットチャンスに行けたらまた会おう!

『青春アタック』脚本⑱呉越同舟

白亜高校の校門にバスが入ってくる。
バスに荷物を詰め込むマッスル山村。
校舎に取り付けられた「がんばれ白亜高校」の横断幕。
全校生徒が白亜高校女子バレー部を見送る。
白衣を着た4組が花火を打ち上げ、チアガールの格好をした3組の女子が歌とダンスで盛り上げる。

4組女子「学期末まで理科の授業がない喜びでこの花火を作りました!」
4組男子「半年くらいは大会に行ってきていいからな!」
花原「あんたたち・・・覚えておきなさいよ・・・期末試験で復讐してやる・・・」

3組女子「乙奈先生!コートでも最高のパフォーマンスを・・・!」
乙奈「やるだけやってみます・・・」
3組女子「ブーちゃんさん、先生をよろしく・・・」
黙ってサムズアップするブーちゃん。

運動部の主将たち「頑張って来いよ。」
大此木「まあ、楽しんでこいや。」
海野「うん、行ってくるね・・・!」

羽毛田校長「吹雪先生、部員をよろしくお願いしますね。」
さくら「じゃあ、ちょっくら行ってくるわ。
(生徒の方へ)お前ら、あたしが帰ってくるまでケガや病気に気をつけろよな!」

1組の生徒会役員「生原会長、華白崎副会長・・・お気をつけて。」
華白崎「みんななら難関大の二次試験もばっちりだから・・・」
ちおり「みんな、当分出番がないけど元気でね!」

病田「そろそろバスが出ます・・・」
見送るみんなに手を振りながらバスに乗り込む女子バレー部。
バスが発車する。

羽毛田「行ってしまいましたね・・・」
京冨野「また忙しくなりますね、校長・・・」
羽毛田「と、言いますと?」
京冨野「優勝祝賀パーティの準備ですよ。」

校門から出て、どんどん小さくなっていくバス。



高体連本部ビル
ネコをなでながら窓からの眺めに目をやる破門戸「いよいよゲームの始まりですね・・・」
破門戸のグラスにワインを注ぐ狩野。
破門戸「新世紀の東洋の魔女はいったい誰か・・・高みの見物と行きましょう・・・」
狩野「・・・・・・。」



バスの車内。
缶チューハイで、もうできあがっているさくら「やい、乙奈ちゃん!一曲歌え!!」
乙奈「・・・え?」
カラオケのイントロが勝手にかかる。
花原「誰よ!沢田研二なんて入れたの!」
ちおり「勝手にしやがれ!」
花原「おまえか!」
賑やかな後ろの席を振り返る海野。
海野「みんな楽しそうだね・・・」
ため息をつく華白崎「・・・みなさん気を緩めすぎです・・・
吹雪先生が持ってきた内部リークの要項が正しいならば・・・
この大会・・・一般的な運動部の大会とは全く違う・・・
試合以外にも戦略的な駆け引きがいる・・・」
海野「なんで、こんな形式にしたんだろう・・・」
華白崎「おそらくは・・・通常のトーナメント戦では予選段階で消えてしまうような無名校の選手も主催者側は注目したいのでは・・・」
海野「じゃあ、素敵な大会だね!」
華白崎「それはどうでしょう・・・優勝校以外はバレーの道を断たれるバトルロイヤルであることには変わりはない・・・それに巨額のカネが動くマネーゲームです。油断は禁物ですよ。」
海野「私はバレーしかできないから・・・
頭のいい華白崎さんや花原さんが頼り。」
華白崎「そういう意味で・・・数々の修羅場を潜り抜けた経験のある吹雪先生は、確かに頼もしいかと。」

後部座席でどんちゃん騒ぎする監督。
さくら「よし、マッスル!景気づけに脱げ!」
山村「無論だ。本日は勝負パンツをはいてきた・・・乙女たちよ刮目せよ・・・!」
花原「きゃー!」
乙奈「まあ、ビキニパンツにスパンコールとは破廉恥極まりないですわ・・・!」

海野と華白崎「・・・・・・。」



夜の波止場
バスから降りるちおり「わーい!」
海野「・・・ここが開会式の会場・・・?」
パンフレットを見る病田「会場はあの船みたいです・・・」
霧の中から豪華客船が現れる。
花原「金かかっているわね・・・!」
入場ゲートには、黒服を着た長身の女が立っている。
ちおり「あそこに人がいるよ!」
花原「なんか、不気味な女ね・・・」
女「白亜高校女子バレー部御一行様ですね・・・お待ちしておりました。」
女を見て花原「うお、で・・・でかい・・・!私よりもあるってことは・・・180以上?
というか、日本人じゃない・・・?」
女「・・・あ、あの・・・なにか?」
小声で花原「あの受付の人、人間を二、三人殺してそうな異様なオーラがない?」
乙奈「わたくしもひしひしと感じますわ・・・」
さくら「まあ、昔からスポーツ大会の興行には反社会勢力はつきものだかんね。
アサシンの一人や二人はよくいるよ・・・」
華白崎「よくいるんですか・・・」
花原「よくいちゃダメだろ・・・」
海野「あ・・・レイちゃん・・・!」
狩野「・・・海野さん。待ってたよ。」
花原「もしかして・・・この人が例の恐竜カルノサウルス・・・?」
キョトンとする狩野「・・・恐竜?」
花原「・・・い、いえ・・・」
狩野「海野さんのチームを一目見たくて。
本当に、みなさん異様なオーラを背負ってますね・・・」
海野「そうでしょ!」
さくら「お前ら、ロシアの殺し屋に言われてんぞ。」
花原「・・・え?」
狩野「豪華客船デゼスポワールへようこそ・・・もうじき出港です。」



「デゼスポワール」メインホール
全国からの参加者がひしめき合っている。
他のチームはみんなドレスを着て歓談しているが、白亜高校だけ制服で突っ立っている。
気まずい花原「・・・これ本当にバレーボール大会の開会式?船間違えたんじゃない?」
書類をめくる病田「そ・・・そんなことは・・・」
階段を下りて白亜高校のほうへ近づいてくる、ひときわ高級なブランドのドレスを着たポニーテールの美女。
美女の声は宝塚の男役のように低い。
「確かに正装とは書いてあったけど、まさか学校の制服で来るとはね・・・」
ちおり「すげー!シンデレラだ!!」
美女「今年も日本一のレシーバーと戦えるなんて、引退時期をのばして正解だったよ。」
海野「咲ちゃん・・・ひさしぶり!」
ちおり「だれ?」

周りが賑やかになる。
ガヤ「アユだ・・・!」
「間違いない、前回優勝校の聖ペンシルヴァニアの鮎原だよ・・・!」
「どっち?矛の方?盾の方?」
「矛だと思う・・・!」

美女「どうも、みなさん。鮎原姉妹の矛の方・・・鮎原咲です。
お会いできて光栄だ。今年もフェアプレーで行きましょう。」
力強く白亜高校の部員たちと握手する咲。
気まずい花原「はは・・・フェアプレーで・・・」
華白崎に気づく咲「あれ・・・?数年前、バレーボール千葉代表にいませんでしたか?」
目を背ける華白崎「ひ・・・人違いじゃないでしょうか・・・」
咲「そうかなあ・・・何年か前に千葉県にバレーボールがめちゃくちゃうまい広末涼子がいるって話題になったような・・・」
華白崎「千葉県に広末涼子はたくさんいるかと・・・」
咲「これはしたり。」
今度は乙奈に気づく。「・・・ん?テレビに・・・」
乙奈「ちがいます。」
咲「・・・そうですか・・・」

ひそひそ話が聞こえる。
ガヤ「なんであのスーパースター鮎原が、あんな貧乏くさい学校と交流があるの・・・?」
「というか、よくあんな汚い格好で入場ゲート通れたよね・・・ドレスコードでムリでしょ、普通。」

気を遣う海野「・・・私たちと離れてた方がいいんじゃない?」
咲「勝手に言わせておこう。
しかし、何度もうちにスカウトしたのに・・・
海野さんは最後まで私たちにとって最大のライバルなんだね。」
苦笑いする海野「あんな学費、私にはとても払えないよ・・・」
咲「まあ、いいわ。
おたがい、高校生活最後の大会。どちらが最強か・・・はっきり決着をつけようじゃない。」
海野「喜んで。」
咲「では決勝で。」
二階のVIP席に戻っていく咲。

花原「海野さん・・・私たち場違いなんじゃ・・・」
海野「・・・だからレイちゃんがゲートにいたんだ・・・」

ヴィバルディの「春」が鳴る。
黒服「みなさまステージ中央にご注目ください。
ただいまより、春の高校バレーバトルロイヤル大会の開会式を始めます。」
ステージに小柄の老紳士が現れる。
老紳士「えー・・・高校バレーに青春をかける淑女のみなさま、わたくし高体連の総裁を仰せつかっております、破門戸錠と申します。ただいまから、今大会のルールを説明いたします。
一度しか申しませんので、どうか集中力をもってお聞きいただきたい・・・」

各校の部長に黒服から要項が入った封筒が配られる。
部長を中心に集まる各校の部員たち。
封を切って要項を開く部長。

破門戸
「今回の大会には・・・リーグもトーナメントもございません。
開催期間中に参加各校が自主的に相手を決めて試合を行ってください・・・
試合の形式はバレーボールであれば自由・・・
9人制でも6人制でも、サイドアウト制でもラリーポイント制でも、リベロを導入しようが、ローテーションがなかろうが、ウイングスパイカーをアウトサイドヒッターと呼ぼうが・・・両校の合意があればいっこうに構いません。」

ざわつく会場。

破門戸「みなさまに課せられた条件はただひとつ・・・
封筒に入っている対戦チケットをすべて使用すること・・・」
封筒の中には、スポーツの観戦チケットのようなものが3枚入っている。
破門戸「他校と対戦する際は、このチケットが1枚必要となります。
つまり、どんなチームも3回は試合を組まなければならない・・・
4回戦以降は、わたくしどもからチケットが新たに支給されます。」

想像していたルールと異なり当惑する参加者たち。

破門戸「それでは・・・本大会の勝利と敗退についてご説明しましょう・・・
まず敗退。
一度でも試合に敗北した場合、即日その部は廃部となり、あまった対戦チケットは廃棄されます。
次に勝利。最後まで試合に勝利し続け、生き残ること・・・
以上で、本大会の説明を終わります。
みなさんのご健闘を祈ります。」
ステージを降りようとする破門戸。

参加者「ちょっと待って!そんな適当な部活の大会聞いたことないよ!」
「試合ごとにルールが違うんじゃ不公平よ!」
「開催期間中に1校まで絞られなかった場合は?」

破門戸「ご質問には一切お答えできません・・・」

参加者「答えなさいよ!こっちは賞金6億円がかかってんのよ!」
「私たちには知る権利がある!」
花原「・・・そーだ、そーだ!」
騒然とする会場。

破門戸「・・・殺しますよ。」

参加者「え・・・?」

破門戸「賞金がかかっているだと?その金はだれが払うと思ってる?
お前らのくだらない青春ごっこに6億だぞ・・・?破格の待遇だと思いなさい。
だいたい、何も生産しないお前たち未成年の部活動という思い出作りに、何人もの学校教員が土日も無給でつきあってやっていると思っている?」

ちおり「無給なの・・・?」
病田「日当で340円は振り込まれます・・・」
参加者「そんな言い方ひどいわ!私たちは高校三年間休まず一生懸命バレーに打ち込んできた!」

破門戸「それがどうした・・・?それを評価するのはお前らじゃない。我々だ。
お前らが、今までやってきたことに本当に信念や自信、矜持があるならば・・・
簡単なことだろう。勝利すればいい・・・」

参加者「う・・・」

続ける破門戸「・・・そんな覚悟もないのに、口だけはいっぱしのことを言う・・・
お前たちは、このままなんとなく部活動を引退して、なんとなく高校を卒業して、それでなんとなく感動して・・・何の夢もない・・・つまらない大人になるのか?
この国の権力者は、お前らをそうやって見くびっているから・・・年寄りだけを優遇し・・・未来を担う若者に負担だけを強いるのだ・・・」

泣き出す参加者も出てくる。

破門戸「だが・・・我々高体連は、諸君ら夢を追う高校生を決して見捨てない・・・
大人たちを見返したいのならば・・・勝って見せることだ。」
ステージから消える破門戸。

黒服「以上で開会式を終わります。ここで、ささやかですが皆さんに軽食を用意しました。
明日からの大会に向けて英気を養っていただけたらと思います。」

ホールに高級ビュッフェが運ばれる。
泣きながらバイキングを食べる参加者たち。「がんばろうね・・・!」
「優勝しよう・・・!!」
「美味しい・・・あのフリーザ、実はいい人なのかも・・・」

花原「・・・なんか異様な空気になってるんだけど・・・」
華白崎「あのフリーザがいい人なはずがない・・・
ここで口車に乗せられたら、それこそフリーザ軍の思うつぼです。」
ドリアンをほおばるちおり「でも美味しいよ!」
すでに奥のバーカウンターで飲んだくれているさくら。
ブーちゃんも一口かじって頷く。
乙奈「せっかくのご好意ですからいただきませんか・・・?」
海野「うん・・・」
花原「・・・委員長どうする?」
おなかが鳴る華白崎「・・・・・・。」
みんなで料理をがっつく。
涙を流す華白崎「こんなおいしいもの食べたことがない・・・」
花原「・・・それはよかったね・・・」

白亜高校に絡んでくる他校のバレー部員。
「女のくせに必死にがっついてみっともないわね・・・
ちょっとあなたたち不潔だから料理を触らないでくれる?」
傷つく海野「・・・え?」
華白崎「確かに我々のかっこうは制服ですが、毎日しっかり洗濯をしています・・・」
ちおり「わたしは入学してからそのまま!」
冷笑する他校の部員たち。
他校の部員に近づくちおり「言うて、そんなにくさくないよ。嗅いでみ、トライミー。」
他校のバレー部員がちおりを蹴とばす「くさいわね、私たちに近寄るな!」
「にゃああああ!」
ちおりに駆けよる花原「ちょっと何すんのよ!!
こいつがくさいのは、食べているドリアンのせいよ!誤解だわ!」
他校「くさいやつが腐った料理を食べるんじゃない!」
ドリアンを踏み潰す。
地面に突っ伏しながらちおり「あああ、私のドドリアさんが・・・!ザーボンさんも!!」
そのとき、食べ物を粗末にしたことに憤ったブーちゃんが歩み寄る。
慌ててブーちゃんを止める乙奈。
二人の前にさりげなく山村が割って入る。
山村「楽しい食事の場だ。仲よくしようぜ・・・」
海野「食事のマナーが悪かったのは謝ります・・・なので許してください・・・」
他校「試合の時にはしっかりと風呂に入りなさい。」
立ち去る他校のバレー部。

怒りに震える花原「な・・・なんだあいつら~!」
乙奈「あんな失礼な方々、白亜高校には一人もいませんわね・・・
いったいどちらの学校なのかしら・・・」
歩いてくるさくら「あれが上武高校。本当にクソでしょ?」
納得して頷く一同。
海野「あの子たちが・・・」



甲板
水平線を眺めながら破門戸「会場にあなたの姿があったから驚きましたよ・・・吹雪さん。」
シャンパングラスを持ちながらさくら「久しぶりっすね、監督。白髪増えました?」
破門戸「ほとんどは、あなたのせいですよ・・・
私のチームをめちゃくちゃにしてバレー界から姿を消して・・・
いったいどういう風の吹き回しですか?」
破門戸の隣に立つさくら「風ゆえの気まぐれよ。」
破門戸「ほほほ・・・あなたが参加するなら、退屈はしなさそうだ・・・」
さくら「今度はどんな悪いこと企んでるのよ。」
破門戸「それはお互い様です。なんですか、三畳農業高校って・・・」
さくら「面白いでしょ?
しかし、監督も変わりませんね。死ぬまでオリンピックで金を取りたいんだ。」
酒を注いでやる破門戸。
さくら「おっと、すいません。」
破門戸「わたしの夢ですからね。」
さくら「金を取ったら?」
破門戸「他の惑星のバレーチームを倒しに行きますか・・・あなたはどうなんです?」
酒を飲むさくら「上がまだまだ元気だからなあ・・・」
破門戸「さて、誰のことでしょうか。」
微笑むさくら「誰だろうね・・・
ただ・・・白亜高校はつぶさせないよ・・・」
破門戸「それが今の吹雪さくらの夢ですか。」
さくら「そうかもね。」

『青春アタック』脚本⑰三顧之礼

体育館
花原「・・・海野さんは?」
華白崎「また臥竜岡(がりょうこう)へ行ってますよ・・・」
花原「またか・・・東京から帰ってきてからずっと保健室に入り浸ってるなあ・・・」
ちおり「怪我しすぎだよね!」
花原「ちがうわよ・・・さくら先生を監督にスカウトしようとしてんのよ・・・」
華白崎「あの人が本当に全日本代表とは思えませんが・・・」
乙奈「あら、人は見た目じゃありませんわ・・・」
山村「うぬが言うと説得力があるな。」
華白崎「待っていてもしょうがない・・・今日も海野さん抜きで練習をしましょう。」
花原「え~また基礎練・・・?」
ちおり「あきた~」
華白崎「基礎を軽んじる者に勝利はない・・・」
山村「それに、そもそも人数的に基礎練しかできないしな・・・」
黙って一人でトスの練習をするブーちゃん。
乙奈「・・・やりましょう。」
ちおり「今日も顔でレシーブするの?」
花原「うるさい・・・
くそ~・・・海野さんがいないと華白崎さんのストイックな練習を止める人がいないのよ・・・」

体育館に入ってくる海野「みんな・・・」
花原「海野さん・・・!今日は練習に混ざってくれるのね!」
海野「やっぱりさくら先生に誠意を見せなきゃいけないと思うのよ!
生原さんと花原さん・・・一緒に保健室へ行こう!」
ちおり「わ~い!」
花原「・・・し・・・しかたないな~・・・」(ちょっとラッキー)
華白崎「・・・いいかげんにしてください海野部長。」
海野「・・・え?」
華白崎「東京で古い友人に何を吹き込まれたのか知りませんけど・・・
仮に吹雪先生が全日本代表だとしても、監督に迎えたからって魔法のようにチームが強くなるわけじゃない・・・大切なのは私たちは今、どう努力するか・・・」
海野「そうだけど・・・全日本代表といえば・・・私たちにとっては雲の上の存在・・・神のような人よ。
誠意を持って接しないと・・・
先生が監督を引き受けてくださるまで、私はあきらめないわ・・・」
目をパチクリする華白崎。
顔を見合わせるちおりと花原。
華白崎「冷静に考えましょう。選挙ポスターにらくがきを推奨していた人ですよ・・・?」
ちおり「酒を密造しようともしてたよ!」
海野「二人共行こう。」
小声で花原「・・・海野さんには私からうまく言うよ・・・」
華白崎「花原さん・・・お願いします・・・
海野部長までが変な方向に行ったらいよいよチームは終わりだ・・・」
花原「までって・・・」



保健室
扉の前でさくらが出てくるのを待つ海野とちおりと花原の3人。
花原「・・・留守なんじゃない?」
海野「いつもこうだから。」
ちおり「立ってるの疲れた~花原さんおんぶして。」
花原「まったく・・・」
ちおりをおんぶしてやる花原。
花原「華白崎さんじゃないけれど・・・
さくら先生を監督にしてもそこまで劇的に変わらないんじゃない?」
海野「・・・運動部の強豪校には必ず優秀な指導者がいるの・・・
中学時代もそうだった・・・
今の私たちに欠けていたのはそこだったんだ・・・
私たちは個々の能力は決して低くない・・・
むしろ全国的にも高いと思う。
男子チームとも試合になったんだから・・・
さくら先生と・・・バレーについて語り合いたいな・・・」

日が暮れてあたりが暗くなる。
花原「今日はもう帰ろう・・・本当に出張なのよ・・・」
ちおりは眠っている。
海野「・・・私はまだ待っているから・・・先に帰ってていいよ。」
花原「・・・信じているのね・・・」
海野「・・・信じてる。」
帰らない花原「・・・・・・。」
海野「・・・?」
微笑む花原「・・・あの人には私も恩があるからな・・・」
スカートをめくって太ももを見せる花原。
目立たないがやけど跡がある。

深夜
ふらふらと学校に戻ってくる教職員
「校長!このハゲ!今夜は朝まで付き合え!学校で飲みなおすぞお!」
さくらを抱える羽毛田「かんべんしてください・・・」
京冨野「俺たちはもう帰るぞ・・・」
目をこする病田「ねむい・・・」
さくら「はくじょーもの!刺青はがすぞ!」

校舎に電気がついていることに気づく。
羽毛田「おや・・・誰かまだいますね・・・」
京冨野「アルソックかけたよな・・・?」
病田「きっと生徒です・・・そうですよね、吹雪先生・・・」
さくら「・・・・・・。」



保健室の前の廊下に歩いてくるコートのさくら。
振り返る海野たち。
さくら「・・・負けた。
大切な大会の前に風邪ひくわよ・・・入りなさい・・・」

保健室
ストーブをつけるさくら。
「私の同期は、実業団や名門大学・・・強豪高校・・・いろんなところに監督として就任したけど・・・
私は全て断ってきた・・・私から見れば・・・すべて三流だったからね・・・
この私が仕えるほどじゃない・・・」
海野「この海野美帆子・・・高校三年間チームに恵まれずくすぶっていました・・・
私にとって、学生時代はもうわずか・・・どうか・・・お力を・・・!
誠意というなら、私たちは髪を丸刈りにします・・・!」
花原「・・・ちょ・・・何言って・・・」
さくら「・・・私の現役時代の愛称を知ってる?」
海野「ええ・・・確か・・・闘将・・・」
さくら「私は中途半端な戦いは嫌い。
やるからには私のやり方で徹底的にやらせてもらう・・・
でも、どいつもこいつも、なまじプライドが高くてごちゃごちゃウルサそうでね・・・」
ちおり「私たちはプライドの欠片もないよ!」
花原「お前、言ってて情けなくないのか・・・」
微笑むさくら「うん・・・強豪校に仕えるより・・・
強豪校を作るほうが楽しいかもね・・・それもひと月足らずで・・・」
海野「で・・・では・・・」
さくら「・・・約束が一つだけあるわ・・・
優勝したら・・・とびきり旨い酒をおごってちょうだい・・・」
海野「ありがとうございます・・・!!」
さくら「・・・後悔はないわね・・・?やっぱりやめたはナシよ。」
海野「はい・・・!」
ちおり「やったー!」
つばを飲む花原「ど・・・どんな厳しい練習が・・・」

さくら「さて・・・私がどこに出張に行ってたかわかる・・・?」
ちおり「駅前の、よろこんで庄屋でしょ!」
さくら「ご名答。」
そう言うと、机に大会の要項と強豪校の資料をばら撒く。
さくら「元チームメイトにスポーツ誌の記者がいてね・・・そいつと呑んでた。
今から話すのは優勝へのサクセスルートよ・・・」

机に近づく三人の女子高生。
さくら「今回の春高バレーにはリーグもトーナメントもないのはご存知?
いや・・・知らないわよね・・・開催時に突然発表されるのだから。」
海野「え・・・じゃあどうやって対戦カードを・・・」
さくら「出場校どうしが試合を取り付けるのよ・・・練習試合のようにね・・・」
花原「でも、両者の合意がない場合は・・・?
例えばいきなり強豪校から試合を申し込まれたら、そこで終わっちゃうわけだし・・・」
さくら「その場合、強豪校は弱小校にハンデキャップを設定することができるの。
そのハンデで相手が了承すれば、対戦カードは成立・・・
参加校は開催期間中に最低でも3校と対戦しなければ失格・・・
最後まで生き残った学校が優勝・・・
はい、どうすればいい・・・?」
花原「まずはレベルの近い学校と試合を取り付けて・・・」
さくら「ちがーう!優勝するために試合をする必要はないってこと・・・」
海野「で・・・でも、最低でも3校と対戦しないと失格なんじゃ・・・」
さくら「優勝するためには、決勝戦の一戦だけ戦えばいい。
それまでは期間ギリギリまで試合から逃げ続けて、ライバル校のつぶしあいを待つ。」
海野「決勝以外の2校はどうするんですか・・・?」
地図を置くさくら「栃木県の北部の山中に三畳農業高校という学校がある・・・」
花原「奥日光に・・・?そんな高校、聞いたことないけど・・・」
さくら「それはそうよ。私が作ったんだから。」
花原「作った・・・??」
さくら「この学校とまず戦う。練習試合ね。
勝敗はいくらでもでっち上げられる。誰も知らない秘境高校だからね。
もともと野生動物しかいないし、敗退させて部を潰しても大丈夫。」
海野「も・・・もう一校は・・・?」
さくら「埼玉県の上武(かんぶ)商業高校。
ここは本当にクソみたいな学校で、金さえ払えばどんな汚いこともやってくれる。
1000万円で八百長に乗ってくれたわ・・・
これで2勝できる・・・」
海野「・・・決勝は・・・?」
さくら「おそらく・・・決勝まで残るのはこいつらね・・・」
長身の双子美少女の写真を置く。
さくら「東京都の聖ペンシルヴァニア女子大学附属高校・・・」
海野「鮎原姉妹・・・春高バレー常連校ですね・・・」
さくら「こいつらはさすがにタイマンでは勝てない。絶対に無理。
普通にバレーが強いし、清く正しいから汚い金でも動かない。
そこで・・・ほかの強豪校や中堅校に金を払って、聖ペンシルヴァニアと積極的に戦ってもらう。
そして、体力を消耗させたところで、HP満タンの我々が容赦なく叩き潰す。
裏工作の費用の試算は・・・学校の設立も含めて・・・1億6752万円・・・
優勝賞金で充分返せるわ。」

言葉を失う三人。
あまりに卑怯なやり方にドン引きの花原「・・・やっぱり監督やめてもらおうか・・・」
海野「・・・うん・・・」
ちおり「スポーツマンシップの欠片もないね!」
さくら「・・・え?」

――こうして、白亜高校女子バレー部に天才的戦略家の吹雪さくらが加わったのである・・・



翌日
生徒会室
華白崎「・・・学校を・・・作った・・・?定款に当たる寄付行為は?文部省の認可は?
そもそも資金はどうするんです?」
花原「通信制高校ってことにすれば数万円で設立できるらしいよ。」
奥日光の地図を開く華白崎「・・・インターネットどころか、電線も通っていなさそうなんですが・・・」
ちおり「車道もないよ!」
華白崎「校舎はどうするんです?設立申請の際に県教委の立ち入り調査があるはず・・・」
花原「廃校になった分校を譲ってもらったって・・・
当局が詳しく調査するころには、この集落はダムに沈んでいるから証拠も隠滅できるってさ。
大会出場申請もすでに済ませたって。」
書類をめくる華白崎「・・・なんと・・・」
華白崎「しかし・・・この、裏工作費の1億6千万円は法外です。
そんな金があったら、そもそもこの大会に出場していない・・・」
花原「なんとかするらしいよ・・・」



雑居ビルの中の裏カジノ
美しい女性を侍らせた富裕層が楽しそうにギャンブルに興じている。

VIPルームに案内されるスーツの京冨野とドレスのさくら。
出迎える店長「こ・・・これはこれは・・・京冨野さん・・・」
京冨野「世間は不景気なのに、ここはずいぶん景気がいいじゃねえか、徳川店長・・・」
店長「お・・・おかげさまで・・・」
さくら「あんたさ、京ちゃんに口きいてもらって、この店やらせてもらってんでしょう?
ちょっと2億円くらいわたしたちに貸しなさいよ。」
店長「いや、それは・・・」
さくら「二か月後には絶対返すから!絶対!」
店長「そんな2千円のノリで言われても・・・」
さくら「賭けてんでしょう?今度の大会。」
店長「ま・・・まあ・・・うちは、昔からプロ野球もJリーグもすべてやらせてもらってますんで・・・
最近では高校部活動も・・・」
さくら「春高バレーの現在のオッズを教えて。」
店長「おい見せてやれ・・・」
ホール主任「わかりました・・・」
オッズ票を受け取るさくら。
京冨野「我が白亜高校は・・・?」
さくら「すばらしい!ダントツで人気最下位!オッズは250.3倍!」
ニヤリとする京冨野「悪くねえな・・・」
さくら「店長・・・この学校が優勝したらどうする?」
店長「胴元としてはぼろ儲けですけど・・・」
さくら「・・・なら、私たちと組みなさい。」



生徒会室に入ってくるさくら。
アタッシュケースを机の上に乗せる。
さくら「御所望の“矢”を集めてきたわ・・・金庫に入れときなさい。」
華白崎「御冗談を・・・」
無言でアタッシュケースを開ける花原。札束が詰め込まれている。
さくら「色を付けて2億5千万円融資してくれたわ・・・」
さくらの前でひざまずく花原「先生・・・!孔明先生・・・!!」
ちおり「・・・もし大会に負けちゃったらどうなるの?」
さくら「良くて全員ソープランドね。」
ソープランドを知らないちおり「わーいやったー!」
一転、青くなる花原「・・・“良くて”??」
華白崎「生徒を風俗に売るなんて・・・とんでもない教師だ・・・」
さくら「よくてね。
なあに、負けなきゃいいだけ。簡単な話でしょ?」
ちおり「今度は戦争だー!」

『青春アタック』脚本⑯邂逅相遇

白亜高校の校門
バイクにまたがった二人乗りの昭和のバンカラがマッスル山村と対峙している。
「オレッチ、樹羅高校で番長やらせてもらってるジョニーってもんだけどよ、ここに海野美帆子っていう女子生徒がいるって聞いてよ、連れてきてくんねえか?」
山村「なんだ貴様ら・・・
剃り込みと木刀がトレードマークのお前たちに大切な学友をハイそうですかと差し出すわけなかろう・・・」
ジョ二ー「ほう・・・オレッチとやんのか、おお?」
ブレザーを脱ぐ山村「拳を交えたいのなら・・・このマッスルが相手になるぞ・・・」
後ろの木刀を持った細身のバンカラが止める。
「やめるのだジョ二ーよ・・・他校の学生とのトラブルは、あのお方に固く禁じられているはずだ・・・」
バイクを降りるジョ二ー「固いこと言うな久蔵・・・って、おめえどこまで脱ぐんだ!!??」
ブリーフ一枚になっているマッスル山村。
山村「お前も遠慮せず脱ぐがいい・・・」
久蔵「気をつけろジョ二ー・・・目の前にいるのは本物の変態なのやもしれぬぞ・・・」
ジョ二ー「あ・・・あの・・・別の人呼んできてもらえますか・・・?」

駆け寄ってくる女子たち
華白崎「こちらです・・・」
ちおり「うわー本物のくにおくんだ!かっけー!」
ちおりの腕章に気づくジョ二ー「・・・もしや、おめえがこの学校のヘッドか?」
ちおり「夜露死苦!」
華白崎「生徒会長の生原です・・・
わたくし共としては、本校の学生の個人情報を他校の学生に伝えることはできません。
おひきとりを・・・」
華白崎にすごむジョ二ー「あああ!!??」
たじろいで後ずさる華白崎「・・・け・・・警察を呼びますよ・・・!」
ジョ二ー「気の強い姉ちゃんだな・・・どうする?」
ちおり「いいアイディアがあるよ!」

校庭に土俵を作り、シコを取るジョ二ーと山村。
ジョ二ー「オレっちは相撲で負けたことがねえ・・・」
山村「奇遇だな・・・俺もだ。」

小声で華白崎「どうするんですか・・・山村先輩が負けたら・・・」
ちおり「そしたら昔剣道をやってた華白崎さんが、あの居合の先生みたいな人と二回戦。」
華白崎「・・・なんで、こういう時に不良の扱いがうまい京冨野先生と吹雪先生がいないんだ・・・」
ちおり「みあってみあって・・・!はっけよーい・・・!のこった!!!」

ぶつかり合う両者。
ジョ二ー「やるなオメエ・・・!」
山村「お前こそ、なかなか可愛い乳首をしているではないか・・・!」
ちおり「のこったのこったー」

相撲を見に来る海野「一体何の騒ぎ・・・?」
ちおり「あ、海野さん!つっぱり大相撲春場所。」
海野「へ~私おすもう大好き!枡席に座っていい?」
久蔵「お主が海野氏か・・・?」
海野「はい・・・そうですけど・・・」
久蔵「実は我が主から手紙を預かっておってな・・・」
海野「てがみ?」
久蔵「・・・狩野レイを覚えているかね・・・」
海野「・・・え?今なんて・・・」
久蔵「狩野レイだ。彼女は我が樹羅高校に通っている・・・もうじき卒業で番長は引退したが・・・」
目をうるめる海野「・・・し・・・親友です・・・生きてたんだ・・・」
久蔵「そなたのことを忘れたことは一時もないと申しておったぞ・・・」
海野「れ・・・レイちゃんのこと・・・もっと教えてください・・・こ、こちらへ・・・!」
ちおり「私も聞きたい!」
海野「茨城県のヤンキーとも戦ったんですか・・・?」
久蔵「その話は長くなるな・・・まずレイ殿は成人式で暴れる馬鹿どもをひとり残らず・・・」
学校の中に入っていく一同。

校庭に取り残されるジョ二ーと山村。
がっぷりよつで硬直状態。
ジョ二ー「もう降参したらどうだ・・・!?」
山村「お前こそ、鳥肌がたっているぞ・・・」




電車を降りる海野。
東京駅から丸の内のビルディング街を歩く。
久蔵からもらった手紙を開く。
海野「このビルが・・・高体連本部ビル・・・」



屋上に駆け上がる海野。
扉を開けると、スーツを着た長身の旧友が立っている。
狩野「・・・覚えている・・・?」
涙を流す海野。
「もちろんよ・・・」
狩野「・・・もういじめられてない・・・?」
頷く海野「強くなったもの・・・」
駆け寄って抱きしめ合う二人。
狩野「・・・ただいま・・・」



丸の内のカフェで話し合う狩野と海野。
海野「手紙読んだよ・・・高体連で働いているってすごいね・・・」
狩野「・・・バレーボール・・・続けてるんでしょう。
あの大会に出場するの?」
海野「うん・・・」
狩野「・・・海野さんなら優勝できるよ。」
海野「レイちゃんといっしょにやりたかったな・・・」
狩野「そうだね・・・」
海野「ね・・・ねえ・・・よかったらうちの学校で一緒にやらない?」
苦笑いする狩野「相変わらずだね・・・もう何年もやってないよ・・・」
狩野の脚の古傷に目が行く海野。
海野「・・・ごめん・・・」
狩野「・・・悩んでいるの・・・?チームのことで・・・」
海野「・・・え?」
狩野「海野さんのことなら何でも分かるよ・・・」
海野「まいったな・・・みんな素質はあるんだけど・・・個性が強すぎて・・・」
狩野「・・・確かに大会の選手名簿をみたら・・・海野さん以外は女子バレー部じゃないよね・・・」
海野「メンバーは、家なき子と、狂った科学者と、元アイドルと、料理人と、全国模試一位の秀才。」
ドン引きする狩野「それ・・・どこまでが本当の話?」
海野「・・・え?」

狩野「なるほど・・・
私のアドバイスが役に立つかはわからないけど・・・」
海野「お願いします。」
狩野「あの二人に聞いたと思うけど・・・震災のあと・・・私は樹羅高校に入学したんだ・・・」
海野「全国の元気な子が集まるビーバップ的なハイスクールだよね・・・」
狩野「・・・どんな無法地帯なんだろうって不安だったんだけど・・・
今までで一番秩序があったんだ・・・」
海野「みんな喧嘩自慢のツッパリなのに??」
狩野「どうしてか分かる?」
海野「う~ん・・・」
狩野「・・・誰が一番強いかハッキリしていたからよ・・・
樹羅高校は喧嘩が強い新入生が来ると、まず学校の番長がタイマンをはるんだ・・・
勝負に勝ったほうが次の番長。それでおしまい。」
海野「それでレイちゃんが勝っちゃったの・・・?」
照れて赤くなる狩野「わ、私は一応、女の子だから・・・みんな女子には優しいんだ。」
海野(なんか久蔵さんの話と違うけど・・・まあいいか・・・)
狩野「何が言いたいのかというと・・・チームのボスをはっきりさせたほうがいいってこと。」
海野「そうか・・・確かにな・・・
部長の私か、生徒会長でセッターの生原さんか・・・スキルが高い華白崎さんか・・・」
狩野「ちがうちがう・・・」
海野「・・・え?」
狩野「部員じゃない・・・監督を付けるの・・・それもとびきり優秀な・・・」
海野「・・・監督・・・?」
狩野「中学時代に私たちが勝てたのも、素子さんのおかげでしょう・・・?」
海野「たしかに・・・でも・・・うちの学校にはそんな先生は・・・」
狩野「・・・おかしいな・・・いるはずだけど・・・」
海野「・・・え?」
狩野「若干15歳で日本代表に選ばれ、輝かしい成績を残したセッターで二つ名は“闘将”・・・」
海野「ほ・・・ほかの学校の先生じゃない・・・?」
狩野「そうだったかなあ・・・
オリンピック予選で未成年なのに飲酒したまま試合に出て、熱くなって相手の選手を殴って、女子バレー界から一瞬で姿を消した、伝説の選手が確か・・・」
突然思い当たる海野「・・・いるかも・・・」
狩野「その人は今なにをしてるの・・・?」
海野「・・・保健室で飲んだくれてます・・・」
椅子から立ち上がる海野。
海野「こうしちゃいれない・・・!東京に来た甲斐があった・・・!
ありがとうレイちゃん!!また絶対連絡するね!」
狩野「お役にたててよかった・・・」

海野の後ろ姿を見送る狩野。
狩野「がんばれ、バレー少女・・・」



職員室
さくら「はくしょん!・・・風邪ひいたかな・・・熱燗であったまろう・・・」
とっくりを傾ける。
脚立に乗って不器用に窓に横断幕を飾り付ける羽毛田と病田。
病田「こっち・・・」
位置を調整する羽毛田「そっち?こっち?」
さくら「誰かの誕生パーティ?」
羽毛田「女子バレー部が大会に出るんですよ。」
さくら「こんな年度末に?」
病田「学校を挙げて応援してあげたくて・・・」
遠くから横断幕を眺める京冨野「ちょっと傾いてねえか・・・?」
病田「どっち・・・??」
横断幕を読むさくら「がんばれ白亜高校・・・」
羽毛田「病田さんが書いたんですよ。達筆でしょう?」
さくら「さすが国語教師・・・」
病田「顧問の私にはこんなことしかできないですから・・・」
京冨野「この学校にバレーを教えられる教員がいればな。」
羽毛田「生徒にいい思い出を作ってやれるんですけどね・・・」
タバコに火を付けるさくら「そうねえ・・・」

バーンと職員室の扉を勢いよく開けて入ってくる海野。
羽毛田「おや・・・」
病田「美帆子ちゃん・・・」
京冨野「東京に行ってたんじゃねえのか?」
荒い足取りで、さくらの前に近づく。
さくら「・・・?」
海野「・・・日本代表だったんですよね。」
さくら「・・・ま・・・まあ・・・」
深く頭を下げる海野
「うちのチームの監督になってください・・・!!」
タバコを口からポロリと落とすさくら「あつ・・・」



保健室の人気教師のさくら先生が女子バレー日本代表だったことは即座に全校に知れ渡った・・・

人目を気にして、窓から保健室に忍び込むさくら。
保健室の前の廊下では海野が立って待っている。
保険室のドアには「バレー部勧誘お断り」というパネルがかかっている。

さくら「・・・あの子本当にしつこいな・・・しかし・・・なんであの黒歴史がバレたんだろう・・・
全日本バレー連盟の選手データも抹消したはずなのに・・・
もしかして・・・高体連の方には残っていたのか・・・」

廊下の海野に声をかける病田。
病田「今日はもう諦めたら・・・?」
海野「それでは、明日また来ます。」
病田「吹雪先生は監督はやらないと思うよ・・・」
海野「・・・輝かしい実績があるのになんで・・・」
病田「・・・きっと吹雪先生の中ではそうじゃないんじゃないかな・・・」
海野「・・・全日本が?」
病田「スポーツ選手には・・・必ず引退があるから・・・
その競技に人生を懸けていたほど・・・やりきれない思いがある・・・」
海野「・・・私にとってそれは今なんです。」
保健室に一礼して歩いていく海野。

保健室の扉が開く。
さくら「行った・・・?」
病田「・・・はい。」

保健室の中で話し合う女教師たち。
さくら「諦めてくれたかな・・・?」
病田「美帆子ちゃんを見くびりすぎです・・・
きっと先生が監督になるまで、通い続けますよ・・・」
さくら「そのまま卒業させちゃおうぜ・・・」
病田「・・・やってあげればいいのに。」
酒を煽るさくら「私のやり方はもう古いよ・・・」
震える病田「・・・ずるい。」
さくら「病田先生・・・?」
泣き出す病田「さくら先生は・・・いつも生徒から人気があって・・・
私は見向きもされない・・・
私は・・・あの子達に何も教えてやれないから・・・」
慌てるさくら「ちょ、ちょっと大の大人が泣かないでよ・・・」
病田「私が自慢できることは・・・人よりも闘病生活が長かったことだけ・・・」
さくら「・・・す・・・すごいじゃない・・・」
病田「・・・今、この時を摘め・・・」
さくら「・・・は?」
病田「古代ローマの詩人ホラティウスの一節です・・・人はいずれ死んでしまう・・・
私はきっと長生きできないけれど・・・
自分が生きた意味をほかの人に残せるってことは・・・幸せなことだと思いますよ。」
さくら「・・・そうかもね・・・」
病田「・・・監督やってあげたら?」
でも断るさくら「・・・いや・・・いいかな・・・」
病田(・・・え?)
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