『80日間宇宙一周 Galaxy Minerva』脚本⑧

調整室を追い出されるミグ
ミグ「おい!話は終わってないぞ!」
社長「こっちは終わった。」
マネージャー「まったく最近のファンはマナーがなっちゃいないですよね・・・」
調整室のドアが締められ鍵がかけられる。
ミグ「ファン・・・そうだ・・・!」
客席の方にかけていくミグ。

大熱狂の客席。
カメラを構えるファンに話しかけるミグ。
ミグ「なあ君らファンだろ!」
ファン「なんだこのおばさん」
「ライブ中ですよ。迷惑だなあ・・・」
「頼む、今日のライブの曲で最もジュリエッタが映える曲を教えてくれ!」
「それなら・・・今歌ってる曲だよ。」
ミグ「え・・・!?じゃあ、この曲のどの部分の振り付けが一番ジュリエッタを抜ける!?」
「二番のサビでしょ。だからもうそろそろどいてくれない?」
インカムを押さえるミグ「ライト分かった!この曲の二番のサビでジュリエッタは一人になる!」

バックステージ
猛スピードでステージへ駆け出すライト「ってもうやないか~~!!」



ステージ。
数え切れない観客の熱気に圧倒されるアリエル
目をつむって衛星ファーディナンドでライトにだけ歌ったコンサートを思い出す。

ライト「さあ、聞かせてくれ!客はオレだけや、これなら緊張もせんやろ!」

リラックスして歌いだすアリエル。
会場の空気が変わる。
ファン「なんだあの子・・・すげえ・・・!」



バックステージ
ステージ横のライトが、客席からステージの方に向かって銃を構える警備員を見つける。
ライト「いた!ミグ!今、お前のいる場所からステージの方へ10メートルいったところや!」
ミグ「分かった!」
ピストルの引き金に手をかける警備員。
ライト「あかん間に合わへん!!」
ライトがステージに飛び出してくる
「ジュリエッタふせろ~~~~!」
ライトがジュリエッタに飛びかかり押し倒す。

銃声

人が撃たれて倒れる音。
会場が絶叫する。逃げ惑う人々。
警備員「落ち着いて!落ち着いてください!!」
会場はパニックになる。

ステージ
ライト「はあはあ・・・大丈夫か!?」
ジュリエッタ「ええ、私は・・・でも・・・」
ジュリエッタがライトの後ろを指差す
振り返るライト「!」
二人の後ろでアリエルが倒れている。
ライト「アリエル!!」
アリエル「・・・え?」

殺し屋「なんだと!なぜ振り付けが変わった!!?」
殺し屋の背後からミグが体当たりする。
「ぐわっ!」
殺し屋を取り押さえるミグ「お前は本当に運がいい。昔の私ならお前を殺していた・・・」



ステージ
アリエルに駆け寄るライト「アリエル!!」
アリエル「生きてます・・・でも・・・これって・・・まずいですよね・・・」
口径の大きい銃で撃たれ上半身と下半身がちぎれてしまっているアリエル。
ライト「そんな・・・」
アリエル「そうか・・・私なんかがオーディションにあっさり受かったのは、私をジュリエッタさんの身代わりにするためだったんですね・・・うまい話ってないんだな・・・」
ジュリエッタ「だから事務所は直前に振り付けを変えたんだ・・・ひどい・・・」
ライト「アリエル・・・」
アリエル「・・・全て分かりました・・・私がなぜ生まれたのか・・・
私は最初からジュリエッタさんの模倣品として作られたんだ・・・
私の夢は・・・あらかじめプログラムされていたんですね・・・」
アリエルの胴体からは配線が飛び出ている。
涙を流すアリエル「私は・・・人間ですらなかったんだ・・・」
アリエルの上半身を優しく抱きしめるライト「・・・・・・。」



ライブ会場の地下駐車場
車に乗り込み逃げ出そうとする社長。
ゲオルグ「天王星に逃げ帰るのなら送っていくぜ」
社長「な・・・」
ゲオルグ「第7惑星プロ、ジェームズ・キャリバン。殺人容疑、及びロボット保護法違反で逮捕する。」
社長「何だお前ら・・・!?なんの証拠があってそんなこと・・・!」
ゲオルグ「ミグが捕まえた殺し屋が全て吐いたよ。言い訳は天王星で聞こう。」




その後・・・
オセロ第一警察署
喫煙エリアでタバコをふかすゲオルグ
ミグに新聞を見せる「ったく、またアイツがいいとこどりだ・・・」
「地球の冒険家、人気アイドルを救う!」の見出し。
新聞をめくるミグ。
二面には「九死に一生を得たジュリエッタ。天王星と土星の領土問題に平和的に取り組むことを宣言」のニュース。
ゲオルグ「取り調べの結果、土星の一部の過激派と第7惑星プロの犯行ということになった。」
ミグ「サーペンタリウスの関与は?」
ゲオルグ「・・・あの強欲社長に天王星が再軍備に向かうようにそそのかしたのは、どう考えても土星じゃないだろ。必ず真相を突き止めてみせるさ。」
ミグ「それで・・・あの子は・・・?」
ゲオルグ「ああ、あのアンドロイドか。第7惑星プロが事務所の命令に忠実に動くアイドルを作ったらしいが、機械で人の心は動かないと判断し持て余していたみたいだな。かわいそうに。」

警察署の庭。
ライトに修理されて一命をとりとめた車椅子のアリエルがぼんやりと空を見つめている。
アリエルの隣に座るライト。
ライト「なあ・・・また笑ってくれよ・・・」
アリエル「・・・・・・。」
ライト「オレ、アリエルの笑顔が大好きなんやけどな・・・
あんたの笑顔を見ていると・・・恥ずかしいけど・・・夢を決して諦めなかった初恋の人を思い出してまうねん・・・」
「・・・その人・・・夢は叶いました・・・?」
「ああ・・・絶対叶わへんとみんなに馬鹿にされた夢やったけど・・・叶えたよ。」
「・・・叶ったんだ・・・。」
「キミといっしょや・・・」
「そうでしょうか・・・」
「キミだって夢を叶えたやないか。
ジュリエッタのライブに出て大勢のファンの前で歌ったんやから・・・」
「でも・・・人間でもない私の歌なんて気味悪がって誰も聞きませんよ・・・私の声はジュリエッタさんのサンプリングでしかない。」
「そうかな、少なくともあの会場にいたお客はみんな感動したんちゃうんか?
それに海兵隊どもだって・・・アリエルが人間かどうかなんて関係ないんやないか?」
「じゃあ、私と結婚してくれますか?」
「え・・・?」
「人間かどうか関係がないなら、私と・・・!」
真剣な表情になるライト「ああ、お前がそれでええなら結婚でもなんでもしたる。
でもアイドルの夢はいいんか。お前の大事な夢やったんやないのか。
オレが大好きなアリエルは、どんなことがあっても決して夢をあきらめないんや。」
微笑むライト
アリエル「・・・・・・。」



警察署の窓から庭を見下ろすミグ
ミグ「あいつ・・・何日も何日も彼女を励ましてる・・・」
胸に手を当てるミグ。
ゲオルグ「ふん、いつまでやってんだ。ま・・・相変わらずだがな。」
ミグ「あの・・・ライトとは古いんですか?」
ゲオルグ「ああ、まあな。前にあいつがこの星に来たとき、あの野郎、オレが長年追ってた事件を勝手に解決してまた飛んでいっちまったんだ。オレの刑事のプライドはズタボロだよ。」
微笑むミグ
ゲオルグ「何がおかしい?」
ミグ「いえ、私も同じようなことをされましてね・・・空から突然降ってきて私の暮らしはシッチャカメッチャカ・・・」
ニヤリとするゲオルグ「ふん、どこに行ってもはた迷惑なやつだな・・・」
ミグ「ええ・・・でもアイツに会えてよかった・・・」

居酒屋フォンブラウン
デニス「でもライト君が来てからあなた変わったわ・・・前は機械のように無表情だったのに・・・感情が芽生えたというか・・・彼はきっととっても人間的な人なのね。」
ミグ「ふん、あいつが?秩序は乱すしどっちかというと人でなしだよ。」
デニス「そうかしら。私は好きだなあ。ああいう男性。
正直言うとね、うちの旦那に似てるんだ。普段はノーテンキけど、ひとつのことに夢中で取り組めて、なんだかんだで必ず私の味方でいてくれる・・・助けてくれる。」
「独身の私には理解できん世界だよ」
笑うデニス「ミグ、忘れてるみたいだけど、誰だって最初はひとりで生まれてくるのよ?」


ミグ「私・・・あいつに何度命を助けられたんだろう・・・?何度孤独から救ってくれたんだろう?」
ゲオルグ「あんたもあのアリエルといっしょってことか。」
ミグ「それならいいな・・・」



トポロ劇場
バックステージ
アリエルの背中を押すライト「さ、行ってこい。」
不安なアリエル
幕が開く。拍手と大歓声。席は満席で立ち見もいる。
ファン「アリエル~~~!」
アリエル「なんで・・・」
ファン「俺たちファンは機械だろうが人間だろうが関係ない!アリエルの歌が聞きたいんだ!もう一度歌ってよアリエル!」
涙ぐむアリエル「・・・はい・・・」



リンドバーグ号に乗り込むライト
「じゃあなアリエル、すっごいアイドルになれよ~!」
リンドバーグ号に駆け寄るアリエル「ライトさん、ありがとう・・・大好き!」
離陸するリンドバーグ号。

リンドバーグ号船内。
ミグ「大好きだって・・・天王星に残っても良かったんだぞ、ん?」
ライト「からかうなよミグ。それに・・・アリエルはもう立派なアイドルやないか。」
ミグ「・・・なあ、ひとつ聞いていいかな?」
ライト「なに?」
ミグ「お前は夢を諦めたことって一度もないのか?」
ライト「・・・ないね。」
「前から不思議だったんだ。どうしたらお前のような強い心をもてるんだ?」
「・・・オレはな、ある人と約束したんよ。絶対夢は諦めないって。」
「約束?」
「その人はオレの友人でもあり・・・憧れの人だった。」
口をあんぐり開けるミグ。
「なんやねん・・・」
「お、お前にまさかそんな人がいたなんて・・・破天荒を絵に書いた君が・・・!」
「うっさい、もうその話は終わり!」



教会。
レオナの葬式が終わり出席者がぞろぞろ帰っていく。
最後に教会から出て、振り返り、空を見上げるライト
ライト「・・・わかったよ・・・」



宇宙を進むリンドバーグ号
歯磨きしているライト「おはよ~ミグ・・・ん?なんやこの明細書・・・
ミグ・チオルコフスキー様あなた様のシングルが売れ、印税収入が発生したので振り込み額をご確認ください??」
慌てるミグ「あ、勝手に読むな!」
ライト「お前いつの間に天王星で歌手デビューしてたんや!?なに?初音ミグ、ファーストシングル“寿司屋”?宇宙オリコン6万位ってすごいのかなんなのかわからへんけど・・・ちょ、歌ってみて!」
ミグ「やだよ恥ずかしい。」
「一回!その寿司屋って曲聞かせて~や!俺はお前の歌が聞きたいんや!」
「怒るぞ!」

おしまい

『80日間宇宙一周 Galaxy Minerva』脚本⑦

オセロ第一警察署
ファンの警官が書き出したジュリエッタの新曲「My little star」の歌詞を見るミグ。

守りたい 救いたい 私のたった一つの大切な星
力が欲しい 強さが欲しい 私を変えて
私は戦う 愛するこの星のために できることがある
マイリトルスター


ゲオルグ「こ・・・これは・・・まるで戦時中のプロパガンダじゃねえか・・・」
ミグ「・・・あなたがおっしゃっていた正義と同じですよ。」
ゲオルグ「オレはこういった文化が嫌いで知らなかったが・・・ジュリエッタはさりげなく天王星のナショナリズムを煽ってたってことか。」
頷くミグ
ゲオルグ「てことは、サーペンタリウスは天王星の芸能界と通じていたのか!?」
ミグ「そこまではわからない・・・所属事務所がもともと政治的にそう言うスタンスだったと言われればそれまでだし。」
警官「でもジュリ様が国家間の争いの火種になるような運動をするとは思えないなあ。」
ゲオルグ「その呼び方やめろ。」
「さーせん。」
ミグ「なぜ?」
警官「ジュリエッタさんは平和主義者でいろんな星に社会貢献しているんです。海王星の復興ライブも真っ先に行なったし、宇宙の恵まれない子供のために毎年巨額の財産を寄付してますし。」
ゲオルグ「ふん、成金はチャリティーが好きだからな。」
警官「それになにより、明後日ジュリエッタさんは土星で平和友好ライブをやりますよ。」
警官を揺さぶるゲオルグ「なんだと!?何処と言った!?」
警官「ど・・・土星・・・」
ゲオルグ「おい、ミグ!もし仮にだ、ジュリエッタの事務所が死の商人とつながっていたとして、ジュリエッタが勝手に土星との諍いをしずめようとしたら・・・ジュリエッタはどうなる?」
ミグ「どっちにとっても用済みだ。」
「おい!至急土星に行くぞ!!」



惑星連邦放送
土星。
惑星の周囲をぐるりと巡る巨大な環「万里の長城」
ジュリエッタ国際友好ライブの巨大な会場。
「パトラ・ジュリエッタの天王星土星の友好ライブがいよいよ土星時間本日午後から開演します!
このライブの模様は全宇宙で同時中継され、文字通り星の数の人間が宇宙の歌姫のパフォーマンスを堪能するわけです!
そしてなによりこれをご覧下さい!宇宙一の収容数を誇るサターン2型ホールが満席です!
土星政府によればこの劇場が満席になったことはいまだかつてないということ、歴史に残るライブになることは間違いありません!」
ものすごい観客の数。

ライブ会場の一般ゲート
土星の警備員「ダメダメダメチケットない人通れないアルヨ!」
警察手帳を見せるゲオルグ「バカやろう、オレは警察だ!ジュリエッタが暗殺されるかもしれんのだぞ!」
警備員「ニーハオ。」
ゲオルグ「おい、らちがあかねえぞ!」
ミグ「警備は徹底しているが・・・ジュリエッタの暗殺をもし土星政府が黙認していたら・・・」
ゲオルグ「ジュリエッタを守るものは何もねえ・・・!」

会場のゲートにやって来る「あ、ミグ!やっぱりあんたも土星に!」
ミグ「ライト!」
ライト「あのな・・・この前はすまんかったな。ちょっと言いすぎたわ。」
ミグ「いやもう気にしてないよ・・・それに私もいくらなんでもやりすぎた・・・
・・・あんな残酷なことはもう二度としない。約束する・・・」
ライト「・・・あ、そうや、実はお前にすっごいプレゼントがあるんや!」
「なんだ・・・?」
「じゃ~~ん!ジュリエッタのコンサートのプラチナチケットや~!」
ミグ「・・・・・・。」
ライト「いや、今度はマジで本物やぞ。どうや嬉しいか?」
ライトを抱きしめるミグ
ミグ「ライトでかした!!」
ライト「み・・・ミグ?」



ジュリエッタの控え室
社長「なぜ土星でのライブをわしに相談もせずに決めた!?」
気丈なジュリエッタ「無断でこのライブを開催したのは謝罪します。
しかしこの騒動は私が起こしたようなものです・・・ですから私自身が天王星と土星の友好関係を築き直さなければ・・・」
社長「しかし、トップアイドルのお前にもしものことがあったら・・・」
ジュリエッタ「私は歌で争いを煽りたくない。私は歌で宇宙を平和にしたいんです。失礼。」
部屋を出ていくジュリエッタ。

社長「たかが田舎娘がアーティストをきどりおって・・・」
奥の部屋から現れる殺し屋「なら殺したって未練はないだろ。ここ数年あんたの言うことなんてろくに聞いてないじゃないか。」
社長「・・・いくら生意気とは言え、看板アイドルのあいつを死なすのは惜しい。」
殺し屋「だが、こっちも土星の同志に金をもらっているんでね・・・きっちり仕事はさせてもらう。」
「分かった、勝手にしろ・・・おい、さんざんお前らに協力してきたんだ。わしに利はあるんだろうな?」
「ジュリエッタの追悼アルバムでも売ればいいだろ。」
殺し屋が部屋を出ていく。
マネージャー「どうするんですか、社長・・・本当にジュリエッタを見殺しにするんですか?」
社長「うるさい、手は打ってある・・・!」



会場内に入るライトとミグ
ミグ「警部たちは会場周辺を頼みます!」
ゲオルグ「分かった!気をつけろよ!」

会場エントランス
ライト「なんやて!?ジュリエッタの暗殺計画!?いくらなんでも無茶やろ。」
ミグ「ああ、あくまでも可能性だが・・・もしサーペンタリウスがジュリエッタを殺すなら今日ほどのチャンスはない・・・」
ライト「ジュリエッタ殺してどうなるっちゅうねん!」
ミグ「私がもし所ジョージさんを失ったら・・・どうなると思う?」
ライト「・・・なるほど。それは一大事や。」



バックステージの稽古場。
ジュリエッタのライブのダンサーやバンドが最後の打ち合わせをしている。
ダンサー「あ!ジュリエッタさん!」
アリエル「ウソ!?」
稽古場に入ってくるジュリエッタ「みんな今日はよろしくね・・・!」
一同「ハイ!!」
ジュリエッタ「あなたがサブボーカルのアリエル・スカイちゃんね・・・」
緊張するアリエル「は、はい!今日はよろしくお願いします!」
ジュリエッタ「なんて呼べばいい?スカっぺ?」
アリエル「あ・・・アリエルでいいッス・・・」
ジュリエッタ「本番まで1時間を切ったけど、軽くリハーサルをしましょう。特にアリエルはほぼ飛び入りだからね・・・」
アリエル「わ、わたしその、そこまで難しい振付は・・・」
ジュリエッタ「ダンスが苦手なのよね、大丈夫。社長とマネージャーがそこを考慮して振り付けを変えてくれたから。」
振り付けの段取りが書かれた紙を床に広げるジュリエッタ。
「あなたはほとんどこの位置から動かない。とにかく私が動くからあなたはバシバシその美しい歌声を宇宙中のファンに聴かせてやって。」
アリエル「美しい歌声ってそんな・・・」
ジュリエッタ「あなたのデモテープ聞いたよ。私は戦慄したね。とんでもないライバルが現れたって。」
アリエル「ジュリエッタさん・・・」
ジュリエッタ「なら敵になる前に手を組んじゃおうって、よろしくね。」
アリエル「はい・・・!」



開演前の会場。
ライト「こんな巨大なホールじゃどこに殺し屋がいてもわからんで!」
ミグ「もしジュリエッタの事務所が死の商人とつながっているのだとしたら・・・
ライト、事務所関係者を探すぞ!」
ライト「え?なんで?」
ミグ「もしライブ中に襲撃するなら、敵は振り付けの段取りを調べるはずだ!
そして最もジュリエッタを狙いやすいポイントで彼女を撃ち殺す!」
観客(いい加減前からどいてくれないかなあ・・・・)

場内警備員「ちょっとアンタラ、何シテルあるよ?」
ミグ「ライブのスタッフにはどこで会える!?」
警備員「NONOダメダメ、関係者以外立ち入り禁止ね。」
ライト「オレはアリエル・スカイのマネージャーや!」
警備員「ソナタもしかしてミスターライトか?」
「そうや!」
「ツイテマイレ。」

関係者専用通路を駆ける二人。
大歓声が聞こえる
ライト「あかんライブが始まったみたいや!」
ミグ「私は事務所関係者を探す!お前はジュリエッタを守れ!」
ライト「分かった!」



調整室に入るミグ。
たくさんのモニターがライブ会場の様子を様々な角度で映し出す。
マネージャー「なにしてるんですかあなた!ここは立ち入り禁止ですよ!
ライブはもう開演しているんです、出てってください!」
ミグ「今日のライブの曲目とその振り付けを教えろ!」
「はあ、あなたどういうファンですか!?
真似して踊りたいなら自分でDVDでも買って調べなさいよ!」
ミグ「そうじゃない!ジュリエッタが危ないんだ!」
マネージャー「この人頭がおかしい・・・警備員を至急。」
ミグ「あんたらのアイドル、ジュリエッタが殺されるかもしれないんだぞ!」
社長「はっはっは・・・面白いことを言う。会場の警備は完璧ですよ。
土星政府が威信をかけてジュリエッタを守ってくれてます。」

会場警備員の格好をした殺し屋が客席の間をぬってステージに近づく。



ステージの横で歌うジュリエッタを見て感動するアリエル
「すごい・・・これがずっと・・・ずっと憧れてきた宇宙一のアイドル・・・」

熱唱しながらステージを縦横無尽に駆け回るジュリエッタ。
ステージのジュリエッタにレーザーポインターの照準を合わせる殺し屋。

最初の曲が終わる。
笑顔でステージから消えるジュリエッタ。バックステージに戻ると慌てて衣装を着替える。
ジュリエッタ「いよいよ次の曲よ、アリエル!」
アリエル「あ、あうあうあう・・・あんなにお客さんが・・・私に出来るんでしょうか?」
ジュリエッタ「アリエル!リラックス。あなたはなんでアイドルを目指したの?
歌が好きだから?ダンスが好きだから?たくさんの人を喜ばせたいから?
このステージにはすべてがある。楽しもう!」
アリエル「ジュリエッタさん・・・」
ジュリエッタ「ジュリエッタでいい。私は精一杯あなたの引き立て役に回る。
宇宙を驚かせてやりなさい!」

二曲めの前奏が始まる。
ジュリエッタ「みんな行くよ!」

ステージにジュリエッタとアリエルが飛び出す。
会場のボルテージは最高潮。
ジュリエッタ「マイリトルスター!!」
「わあああああああ!」

『80日間宇宙一周 Galaxy Minerva』脚本⑥

天王星で最も遠い衛星ファーディナンド
地球連邦軍の前線基地の予備の滑走路にライブ会場が設営されている。
腕時計を心配そうに見つめるアリエルのマネージャー。
衛星ファーディナンドに着陸するリンドバーグ号。
リンドバーグ号に駆け寄るマネージャー。
「あ、アリエルこっちこっち!」
リンドバーグ号から降りるアリエル「マネージャーさん!」
マネージャー「こちらは?」
アリエル「私が一日お世話になったライトさんです。」
ライト「けっこうお世話しました。」
ライトに名刺を差し出すマネージャー「そうですか、うちのアイドルがお世話になりました。わたくしこういうものです・・・」
また名刺をもらうライト「どーも・・・」
マネージャー「あの、うちのアリエルがお世話になったお礼と言ってはなんですが、三日後土星で行われるジュリエッタの星間友好コンサートのチケットを受け取って頂けませんか?」
ライト「え!?マジ!」
マネージャー「ええ、二枚しかないのですが、どうぞ・・・」
アリエル「それプラチナチケットですよ!」
ライト「うわ~ありがとう・・・これアイツがすっごい喜ぶな・・・」
アリエル「ぜひお連れの方と見に行ってください」
ライト「で、今日のライブは?なんかジュリエッタ特別記念公演って書いてあるけど・・・アリエルのライブちゃうの?」
マネージャー「ええ、ジュリエッタはご存知のとおり多忙なので、うちの事務所で最もジュリエッタに似ている彼女にジュリエッタの格好をさせて、この星で戦う海兵隊さんにせめてジュリエッタの雰囲気だけでも味わわせてあげようと・・・」
ライト「そうなのか・・・」
アリエル「似てませんか?」
「いやそんなことはないけど・・・バレるんちゃうんか?」
マネージャー「いいんですよ。いくら脳みそ筋肉の海兵隊の人でもこんな星で本物のジュリエッタの慰問ライブがあるなんて誰も信じてないですから!はっはっは!」
ライト「な~る・・・」
マネージャー「では我々はライブの準備がありますのでこれで!楽しんでいってください!」
アリエル「ライトさんではまた!」
バックヤードにかけていくアリエルとマネージャー。

ライブ会場の席に座るライト。
周りに海兵隊のごつい兵隊たちが集まってくる、

海兵隊「おい、あのジュリエッタがこんな最前線の基地に慰問に来ると思うか?」
「確かに。だがジュリエッタの生まれ故郷がこの星だからな。可能性はなくはないぜ。」
「ったく天王星の連中が軍を持ってないから、家族残してはるばるこんな星までやってきたが、やっといいことがあったな。」
「あ~オレジュリエッタの大ファンなんだ。二週間前から楽しみで・・・」
「死んだ戦友にも見せてやりたかったな・・・」

気まずくなるライト
「こ・・・これはエライ事になるで・・・」

慰問ライブが開場する。
アリエルが歌を歌おうとした途端、大ブーイングとゴミが飛んでくる。
海兵隊「ふざけんな~!死ね~~!!」
アリエル「や・・・やめてください!」
海兵隊「そのレベルのモノマネならオレの方がもっとうまいぜ!!」
「だいたいてめえは客に笑われてるだけなんだよ、馬鹿にされてるってわからねえのか?」
アリエル「え・・・」
「才能ねえんだからとっとと辞めて俺の彼女になれって!」
「ギャハハ!二等兵のスコットが面倒見てやるってよ!」
アリエル「れ、恋愛は事務所から止められているのでご勘弁を・・・」
「だからやめろっつってんだよ!
お前みたいなのが一生やったってジュリエッタみたいなトップアイドルになれねえよ!」
酒を煽りながらステージに上がりアリエルに抱きつく海兵隊
アリエル「ひいい!ライトさん助けて!」
ライト「もうええやろ!」
「ライトさん・・・」
海兵隊「なんだてめえは!」
ライト「決まってるやろ。その子のファンや」
アリエル「ライトさん・・・」
ライト「マイナーなアイドルを応援するって結局魂胆はそれかい。ファンならマナーを守って応援するんちゃうんか!」
「なんだと・・・!」

会場内に警報が鳴り響く
士官がホイッスルを吹く「楽しい茶番はそこまでだ!土星の艦隊が接近!海兵隊ども直ちに出動!」
海兵隊「ウーアー!」

配置につくため駆け出す海兵隊員。踏みつけられるアリエルのチラシやブロマイド。
誰もいなくなる会場。
むなしくボーカルなしの曲がかかっている。

ステージの上で無言でへたり込むアリエル。
ライト「アリエル・・・大丈夫か?」
肩を震わせるアリエル「はっきり言われちゃった・・・一生やったってジュリエッタさんのようにはなれないって・・・
笑っちゃいますよね・・・それが小さい頃からの夢だったなんて・・・」
ライト「・・・・・・。」
「私がいけなかったんだ・・・海兵隊さんたちの期待を裏切るようなことをして・・・あの人たちはジュリエッタさんを見るのをずっと楽しみにしていたんだ・・・
私を見に来たんじゃない・・・誰も私の歌なんか・・・」

ライトがアリエルに近づいてかがむ。
「なあ、アリエル・・・よかったら俺だけにその歌声聞かせてくれへんかな?
レコーディングスタジオのみんな言ってたで。あんたの歌声はもしかしたらジュリエッタを凌ぐかもしれんって・・・
人にはそれぞれ自分の道があるんや・・・あんたはジュリエッタやない。アリエル・スカイやろ。」
「ライトさん・・・」

ステージを降りて椅子を直して観客席の中央に座るライト
「さあ、聞かせてくれ!客はオレだけや、これなら緊張もせんやろ!」
立ち上がって客席に振り返るアリエル「・・・・・・。」
ライト「さあ!」
涙を拭くアリエル「ありがとう・・・」
マイクを持って歌いだすアリエル。
たった二人だけのコンサート。



オセロ第一警察署
オフィスに入って資料をめくるミグ。
ミグ「最初の被害者おてもやん、第二の被害者ローリング娘、そして第三の被害者ザ・パンチラーズ・・・」
ゲオルグ「ターゲットになったアイドルはどれも中堅若手・・・ファンの数も大したことはないよ。」
ミグ「これがもっと大きなテロのデモンストレーションだとしたら・・・」
ゲオルグ「おい、ちょっと待て・・・」
ミグ「パトラ・ジュリエッタってファンは一体何人いるんですか?」
ゲオルグ「おい!知ってる奴いるか!?」
警官「は、全宇宙に22億8260万人であります!」
ゲオルグ「なぜ貴様暗記してる!」
警官「いやその・・・妻がファンでして・・・」
ミグ「そんな超人気アイドルがサーペンタリウスに殺されたら?そしてそれを土星の過激派の仕業にしたてあげたら?」
警官「私、泣きながら土星に特攻します!」
ゲオルグ「こんなバカが22億人いたら、この星の再軍備は本当に実現しちまうぞ・・・!」
ミグ「・・・なぜジュリエッタはここまで天王星の世論を変えた・・・?偶然?」
ファンの警官の携帯電話の着信メロディが流れる

ジュリエッタ「♪守りたい、救いたい、私のたった一つの大切な星~」

ゲオルグ「バカやろう!その歌はムカつくからやめろって言ってるだろ!」
携帯を切る警官「すいません!」
ミグ「ちょっと待った!」
警官「?」
ミグ「キミ、その曲の歌詞全て覚えているか?」
警官「ええ・・・」
紙とペンをテーブルに置くミグ。
ミグ「ここに全部書き出してくれ。」



衛星ファーディナンド
二人きりのライブ会場。
コンサートで予定していた曲をすべて歌い上げるアリエル。
アリエル「・・・どうでした?」
ライト「・・・・・・。」
アリエル「な、なんかリアクションしてくださいよ・・・」
「あ、ごめん。見とれてたわ・・・鳥肌立ってもうた・・・」
「また、気を使うんですから・・・」
「いや、ほんまやて!アリエル、あんたは絶対すごいアイドルになる!」
「ありがとうございます・・・でも・・・私はこれを引退コンサートにします。」
マイクを置くアリエル
ライト「え・・・?」
アリエル「ライトさん・・・ありがとう・・・」
微笑みながら喋っていくうちに涙を流していくアリエル
「最後の最後に大切な人を歌で感動させることができた・・・私がずっと夢見ていたのはこれだったんです・・・」
「アリエル・・・」
「夢・・・叶っちゃいましたね・・・」
頭を下げるアリエル。
拍手をするライト。

次第にその拍手が大きくなっていく。
お辞儀をしたままのアリエル「・・・?」
顔を上げる。
海兵隊たちが戻ってきて拍手している。
「ブラボー!」
「馬鹿にして悪かった!感動しちゃったよ!」
「アリエル・スカイ!覚えたぜ!!」
「引退なんかするなよ!俺たちだけでもシングル買ってやるからさ」
「みなさん・・・」
携帯電話を切り、慌ててマネージャーがステージに駆けてくる「アリエル大変だ!」
「なんですか?」
「さっきキャリバン社長から電話があって・・・オーディション・・・合格したって・・・」
アリエル「えええ!!?」
マネージャー「ジュリエッタのライブに出れるんだよ!それもジュリエッタの相棒として!」
大歓声「うおおおおおおお!やったああああああ!!!」
ライト「見てる人は見てるんやなあ・・・」
アリエル「ライトさん・・・」
ライト「お前の夢や・・・」

『80日間宇宙一周 Galaxy Minerva』脚本⑤

防音ブースの中でレコーディングをするアリエル。
ミキサー「じゃ、さっきよりもうちょい高めのキーでもう2パターンほどとってみようか」
ブースの中のアリエル。楽譜を確認する「わかりました。」

コントロールルーム
ライトの方を振り返るミキサー「彼女、ダンスやライブはてんでダメですが、歌はなかなかうまいですよ。華がある。」
ライト「ホンマ?」
コンピューターのモニターを差す。
ミキサー「これは彼女の声の波形なんですがね・・・この部分、人に安らぎを与えるゆらぎが発生しているんです」
ライト「へ~・・・」
作曲家「でも極度のあがり症で客の前でまともに歌えないんだよなあ・・・まあシングルだけはそこそこ売れるからオレとしてはいいんだけど。」
一生懸命歌っているアリエルを見つめるライト。



刑務所の面会室。
ゲオルグ警部の交渉で爆弾魔の仲間と面会するミグ。
ゲオルグ「5分間だ。」
ミグ「わかりました・・・」

ミグ「この星の刑務所にいたんだな・・・」
ロイ「やあ久しぶりだね。ミグ・チオルコフスキー!」
ミグ「お前の仲間のボマーが殺されたぞ。ロイ・ヒューズ・・・」
ロイ「アンディが?それは残念だ・・・僕の友人だったのに・・・」
ミグ「なぜ無関係のアイドルを狙う?」
ロイ「あいつらはアーティストじゃない。」
ミグ「ああ、お前らよりはまともだもんな。」
「連中・・・文明社会に対する批判も、自己の内面性における葛藤やアンビバレントな矛盾もない。
た~だ平和ボケした馬鹿な大衆に迎合して金を巻き上げているだけだ。約束しよう。
今もてはやされているジュリエッタだって3年もすればみんな忘れて他のアイドルに熱狂しているだろうさ。なぜだかわかるか?『イリアス』や『オデュッセイア』とやつらの違いは?」
頬杖をつくミグ「・・・・・・。」
ロイ「芸術か紛い物(シミュラークル)かどうかだ。」
ミグ「美術館や博物館に飾られるものだけが芸術ではないだろう・・・」
ロイ「そのとおり。だからぼくらは一瞬の美を追求したのさ。」
ミグ「それが無関係な人を巻き込む爆弾テロか。」
ロイ「感謝して欲しいくらいだよ。ボケた天王星人どもの目を覚ましたのはアイドルじゃない。
ぼくたちアーティストだ。フルクサスを唱えたかのジョージ・マチューナスは・・・」
面会室の防弾ガラスをパンチで突き破るゲオルグ「ごちゃごちゃうるせえんだよ!ぶち殺すぞコノヤロウ!!」
ションベンを漏らすロイ。
ゲオルグを取り押さえるミグ「ゲオルグ警部落ち着いて、血圧が・・・!」
ゲオルグ「よくわかんねえ長台詞言いやがって!てめえを殺すのに1ラウンドもいらねえ!1分だ!」
ロイ「ごめんなさい!許してください!」
ミグ(せっかくの取り調べがメチャクチャだ・・・)
ロイ「お、教えますよ。アイドルを狙っているやつ・・・」
ミグとゲオルグ「?」



レコーディングスタジオ
ブースから出てくるアリエル
ミキサー「お疲れ様でした~」
アリエル「大丈夫でしたか?」
作曲家「この美声がライブで出ればファンの度肝を抜けるんだけどねえ。」
アリエル「頑張ります。」
ミキサー「じゃ、マスタリング終わったら連絡しますんで。」
ライト「・・・なにそれ?」
アリエル「は、はい了解しました!」



レコーディングスタジオから出るライトとアリエル。
ライト「次はどこや?」
手帳を開くアリエル「ええと・・・次はボーカルのオーディションなんですが・・・けっこう時間があきますね」
ライト「じゃあ好きなところ連れてったるよ」
アリエル「いいんですか?やった~!」
ライト「まだそんな元気あるんやな・・・」



ウラヌスショッピングプレイス。
観覧車やジェットコースターに乗るライトとアリエル
風船を持って駆け回るアリエル「ああ、たのし~ステキ~♪」
「ちょっとおっちゃん疲れてもうた・・・休んでかまへん?」
ベンチに座るライト
「あ、すいません!なんか一人ではしゃいじゃって・・・じゃ、なにか飲みもの買ってきます!」
元気にワゴンにかけていくアリエル。
「若いつもりやったけど・・・10代の女の子ってやっぱエネルギーがちゃうなあ・・・
ミグはもっとのんびり屋だからなあ・・・」
ミグのことを思い出すライト。

「夢なんだ・・・地球に行くこと。」
「生まれた時から私の運命は決まっている・・・私もいずれ小惑星とともに宇宙で死ぬ。ならば生に執着することなどないじゃないか」
「この傷もう治らないんだ・・・気持ち悪いだろ?」
「お前こそ甘すぎるんだ。命懸けで戦ったことがないから・・・!」
「私は生きたい。」


ライト「そういやあいつ今頃何してるんやろ・・・無茶してなきゃいいけど・・・」
ジュースを持ってくるアリエル「はいどうぞ!」
ライト「あ、ありがとう」
ライトの横に座るアリエル。
アリエル「へへへデートみたいですね!」
「大人をからかうなって」
「でも私こういうことって初めてなんで楽しくて・・・」
「恋愛したことないの?」
「アイドルはそういうのNGじゃないですか。」
「まさか生まれた頃からアイドルやないやろ。」
「でも、私・・・物心がついた時からジュリエッタさんのようなアイドルになりたかったですから・・・」
「本当に子供の頃からの夢なんや。」
「だから今日のオーディションは絶対合格したいなあ。今日のに合格するとですね、あのジュリエッタさんのライブにサブボーカルとして出られるんですよ!」
「へ~!共演や!」
「はいっ!共演です!」

「・・・なあアリエル。アリエルはなんでアイドルになりたいん?」
「え?」
「いや一日中働き通しで・・・そこまで頑張れるには何か理由があるんちゃうのかなって・・・」
「そうですねえ・・・え~っと・・・そういえばなんでなんだろう?もう忘れちゃいました。」
「そうか・・・」
「ライトさんは?」
「オレ?」
「なんで発明家を目指されたんですか?」
「そやな・・・自分の作った宇宙船に好きな女の子を乗せたかったんだよなあ・・・」
「そ、その話詳しく!」
「なんで君にオレの初恋の話を公開せなあかんねん・・・」
「その手の話は10代の女子の大好物ですよライトさん!」
「そうやったのか・・・勉強になったな・・・さ、オーディションに行くで!」
「え~もう終わり!?」



オーディション会場
メガホンを持つライト「いいかアリエル。今日の柔軟を思い出せ!」
嫌な気分になるアリエル「え・・・?」
ライト「お前の体だってその気になればあそこまで曲がるんや!なんでもできる!行ってこい!」
アリエル「はい!」

試験場の部屋に入っていくアリエルを見送るライト。
部屋から出てくるアリエル。
半泣きのアリエル「全然ダメだった~・・・」
ライト「ガーン」

廊下でアリエルを慰めるライト
「ま、まあ次があるやん。」
えづくアリエル「このオーディションだけはもう二度とないですよ~オエ~」
背中をさするライト「なあ、ある人が言ってたで。生きてる限りは何度だってやり直せるって。」
涙を拭うアリエル。
「そ、そうですよね!死んだわけじゃないですもんね!」
ライト「そうや。気を取り直して次の仕事に行こう?な?」
アリエル「そうだ、今日最後の仕事はジュリエッタさんの故郷で慰問ライブなんだった・・・!これで挽回しなきゃ!」
「・・・それでこそいつものアリエルや!」
微笑むアリエル。



オセロ第一警察署
廊下を歩くゲオルグとミグ
ゲオルグ「まさかサーペンタリウスが天王星と土星双方をそそのかしていたとはな!!」
ミグ「連中としては天王星と土星が戦争を始めるのが一番いい。なぜなら武器が売れるから。」
ゲオルグ「土星には天王星に軍隊がないことを強調し、領土問題に踏み込ませる。」
ミグ「それだけじゃない。」
ゲオルグ「何?」
ミグ「アイドルを暗殺してファンの復讐心を煽ったんです。」
ゲオルグ「それで戦争が起きるかあ?」
ミグ「被害者の資料を見せていただけますか?」

『80日間宇宙一周 Galaxy Minerva』脚本④

屋上から戻ってくるライト。
ライトに駆け寄るアリエル「ライトさん・・・大丈夫でした!?」
ライト「あ、ああ・・・で、あんたはこれからどうするの?バスが燃えちまったけど・・・」
「いまマネージャーさんに連絡しているんですが電話に出なくて・・・」
「あんたのマネージャーなのに??」
「はい、マネージャーさん、私以外にもたくさんのアイドルの卵の面倒を見ているのでお忙しいんですよ・・・どうしよう次の仕事に間に合わない・・・」
「バスでどこへ行くつもりやったんや?」
「え?」
「俺が乗せてったる。」



離陸するリンドバーグ号
アリエル「うわ~すっごい速い!これなら次の現場に間に合います!ありがとうございます!」
ライト「ええってええって。」
アリエル「あの・・・お連れの方は・・・?」
ライト「ああ、あいつ?あいつは警察官に再就職しました。」
アリエル「そうなんですか!?」
「あんたらアイドルを狙う悪党をとっ捕まえるって」
「あの人すごい身のこなしでしたよね・・・」
「ああ、正義感がものすごくてなあ・・・俺はちょっと心配や・・・」
「かっこいいですよね」
「あんたのアイドルもかっこいい仕事やないけ。夢売ってるんやから。」
「アイドルといっても私はアイドルの卵ですから・・・それだけでは生活できないのでアルバイトを掛け持ちしてるんです」
「だから定食屋で働いてたんやな」
「はい、他にも家政婦、家庭教師、喫茶店のウエイトレス、清掃員、ケーキ屋さん、パン屋さん、お花屋さん、コンビニ、居酒屋、雑居ビルの警備員、漫画のアシスタント、そして土木作業員もたまに・・・」
「は~!あんた働き者っていうか・・・多才なんちゃう!?」
微笑むアリエル「丈夫な体だけが取り柄ですから」
「それで充分食っていけるちゃうんか?」
「ええ・・・よくうちで就職しないか、とは言われるんですけど・・・アイドルが私の夢ですから」
「そうか・・・」
「いつか・・・あのジュリエッタさんのようにたくさんの人に私の歌を聴いてもらいたい・・・こんな夢追いかけるの恥ずかしいですかね?」
「ぜんぜん・・・」

ダッシュボードの所さんのシングル盤を見つけるアリエル
アリエル「これなんですか?」
ライト「あ、そこらへんあいつの私物やから・・・」
「あ、すいません・・・」
「ま、別にええか。」
「知らないアーティストですね。聴いていいですか?」
レコードプレイヤーを指差すライト「あ、そこにセットすれば聴けるで。」
レコードをプレイヤーの本体に強引に押し込むアリエル「入らないなあ・・・これどこにスロットがあるんです?」
ライト「ちゃう!上に乗せるんや!!」
「あ、ごめんなさい!」
ちょっと曲がったレコード盤
レコードを手にとって息を吹きかけるライト「大丈夫かなあ、聴けるかなあ・・・」
アリエル「ごめんなさい、ごめんなさい!」
ライト「大丈夫大丈夫。世代的に知らないもんな、これ。」
プレイヤーの上にレコードを乗せて針を落とすライト。

音楽が流れる
♪(カメがウサギに勝ったのは~カメの力じぇねえじゃねえの~のろまな奴には何かが起きなきゃ勝てねえっちゅうことかい?)

ライト「な?バカバカしいやろ?」
アリエル「・・・・・・。」
ライト「アリエル?」
アリエル「なんて楽しそうなんだろう・・・」

♪(意味ないじゃ~ん、意味ないじゃ~ん)



ミューズダンススクール
駐車場に着陸するリンドバーグ号。
ライト「ついたで~」
ポシェットをつかみリンドバーグ号を降りて駆けていくアリエル「ありがとうございます!」
「ここでなにするの?」
「ダンスのレッスンなんです。よかったら見てってください!」
「へ~」

先生「1,2,1,2・・・」
他の練習生とともにダンスのレッスンをしているアリエル。
それを稽古場のハジの椅子に座って見ているライト

別のアイドルのマネージャー「おたく、アリエルの新しいマネージャー?」
ライト「へ?」
「いやいやこれは失礼。
わたくしポエニ・パー子のマネージャーをしております、カンネー小林と言います。」名刺を差し出す。
ライト「あ、これはどうもおおきに・・・」
カンネー「しかしニュース見ましたか?バスの爆弾テロ。またアイドルがターゲット。
おっかないですな~」
ライト「そんな頻繁に起きとるんか?」
カンネー「ええ。今回は中堅アイドルのパンチラーズでしょう?
まあ起きてしまったものは仕方がない。彼女たちがいなくなれば我々のアイドルがのし上がるチャンスができるってことですしね!」
ライト「あんたが仕掛けたんちゃうやろな~」
カンネー「はっはっは!ま~たご冗談を!まあお互い恨みっこなしでいきましょうや。」

先生「スカイさん、相変わらずあなたは体が硬すぎよ!もっと滑らかに動けないの・・・?」
一人だけワンテンポずれているアリエル「す、すいません・・・毎日ストレッチはしているんですが・・・」
先生「ちょっとマネージャーさん!」
ライト「・・・・・・。」
隣のカンネー小林がライトをつつく。
ライト「あ、オレか。」

ライト「ど~かしましたか?」
先生「ど~もこ~もないですよ、この子ここに通って二年ですけど、ダンスが1ナノメートルたりとも上達しないんです!これでは他の練習生の迷惑ですのでやめて頂けませんかね?」
ライト「そんな先生、この子はこの子なりに一生懸命頑張ってるんですよ~なあ?」
頷くアリエル
先生「あなたやる気だけじゃこの世界やっていけないのよ?残念だけどダンスの才能が全くない人を上達させるのは不可能よ。この世界でやっていくのは諦めなさい。」
ライト「そんな言い方無いやろ!」
先生「なんです、あなた。第7惑星プロはちゃんとしているから今まで多めに面倒見てあげたけど・・・そんな態度とられたら、もうそちら様のアイドルの担当は降りさせてもらいますよ・・・」
アリエル「やめてくださいライトさん!私だけじゃなくてほかのアイドルの子にも迷惑が・・・!」
ライト「あんた先生やろ。先生が生徒を見限るっていうのはちょっとなあ~・・・ほらアリエル座ってみい。」
アリエル「え?」
「お前の本当の力を見せたるんや。」
床に座るアリエル「はい・・・」
ライト「足伸ばして。このオバちゃんに体が柔らかいこと教えたれ。」

力づくでアリエルの背中を押すライト「おらあああああああああああ!」
背中が折れて床に顔がめり込むアリエル「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!」

先生「わ、わかった!もうわかりましたからやめてください!ちょっと誰か~虐待事件よ~~!!」
大爆笑のカンネー小林。



巨大な水道橋の下をくぐるリンドバーグ号。
リンドバーグ号船内。
ライト「あのオバハン分かってくれてよかったな」
背中を押さえているアリエル「ありがとうございました・・・
これでまたダンスのレッスンに励めます・・・背中に障害が残らなければですが・・・」
ライト「なんか言った?」
アリエル「い、いえ!」
ライト「で、次はどこや?」
アリエル「ええと・・・40分後にスタジオキケロでレコーディングが・・・」
ライト「本当分刻みのスケジュールなんやな。つかまってろ!」
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