『80日間宇宙一周 Sea of hope』脚本⑦

海の墓場を脱出するリンドバーグ号。
ミグ「ノーチラス号の位置は!?」
ライト「王宮の方へ引き返している感じやな・・・」
ルヴェリエ「ノーチラス号の無線周波数ってわかりますか?」
無線をいじるミグ「わかる。もとは我々の戦艦だからな。」



ノーチラス号
艦橋で紅茶を飲んでいるピカール
ナッシュ「そんな呑気でいいのか?海賊を逃がしちまったんだぜ?」
ピカール「我々がこの星に居座っている以上、連中は我々に接触してくるはずです。」
ナッシュ「どうしてわかる?」
ピカール「海賊というのはロマンチストでね。売られた喧嘩は必ず買うんですよ。その相手がどんなに巨大なネコでもね。」

通信兵「未確認航空機から無線電波を受信!」
ピカール「ほらきた。」

ライト「やい、このエンジン泥棒・・・!」
ピカール「その声は・・・ライトくんじゃないですか。
お久しぶりです。その節はお世話になりました。おかげさまで我々の計画も順調にいってますよ」
「相変わらず慇懃無礼を絵に書いたようなおっちゃんやな!」
「ありがとうございます。」
「でもな、その順調な計画もこれで終いや!あんたらが欲しい「なんたら」っていう隕石のかけらはこっちがもうとる。これが欲しいんやったらとっとと海王星から出ていくことやな!べろべろば~」

ピカール「彼の船の位置はわかりますか?」
通信兵「は。」

ピカール「ごほん、ライトくん。また交渉をしましょう。」
「うるさいわタヌキ親父!お前のいいようにはもうならんぞ!」
「そうですか。その隕石をこっちに持っていただけたら助かるんですけどね。
さもないとウチの短気な軍曹が王宮に向けてメイルシュトローム砲を撃つのを止められません。」

ルヴェリエ「!!」
ライト「なんやと!おい、これ以上たくさんの人間の命を奪うな!!」
ピカール「じゃ、待ってますよ。」
無線が切れる。

ライト「どう思うミグ・・・?ハッタリちゃうんか」
ミグ「確かにメイルシュトローム砲は何度も撃てるものじゃない、ピカールのブラフである可能性は高いが・・・もし本当にやられたら・・・海王国を軍事制圧できる上、圧政のランドマークを壊すことで、さらに労働者たちの心をつかむことができる・・・」
「母さん・・・」
ミグ「しかしそんなことは絶対にさせない。ここはピカールの要求を飲むしかない・・・
ルヴェリエ様、もう一度危険に身を晒す覚悟は?」
頷くルヴェリエ
ライト「上等や。」

海王星の王宮へ向かうリンドバーグ号。



海上キャラバンのレストランで酒を飲むロジャー
「ママ、おかわり。」
ママ「ちょっとあなた、そんなに飲んで体に毒よ。なにかあったの?」
新人「はい。テロリストに海王星が狙われているのに、立ち向かう勇気が出ないみたいなんす」
ママ「んもう、ゴツイ体して情けないわね。」
ロジャー「いいからもう一杯・・・!海賊も時に呑みたい夜があるんだ・・・!」
ママ「あら海賊なら、こういう時こそ男を見せるんじゃないの?」
ロジャー「なに!?」
ママ「この前この私を鈍器で殴りつけ飛行艇を奪っていった坊やがいたけれど、あんな根性のある男の子久々に見たわ。まるで昔のあなた・・・ロジャーちゃんのよう。」
「なんでオレの名を・・・」
「あらん、さびしいわね。この顔を忘れたっていうの?」
絆創膏をはがす
「その夏休みにちょっとした出来心で入れちゃったサザエさんの刺青・・・!
あ・・・あんたは・・・!」
海賊たち「伝説の海賊青ひげ・・・!」
ママ「お久しぶりね。
宇宙最強のテロリスト?それならこっちは宇宙最強の海賊団をやってみましょう。」
ロジャー「なんだって・・・?もしや四天王を集結させるのか!?」
ママ「お安い御用よ。この宙域周辺の昔の友達に集合をかけるわね。」
手帳を見ながらダイヤルを回す青ヒゲ。
「・・・あ、バーソロミューちゃん?お久しぶりです青ヒゲです~デッドマンズチェストの海賊監修の時はお世話になりました。明日辺り暇?ちょっと海王星に来れない?」
「え~ボニーちゃん、なにあなた結婚したの?いや~んおめでと~~!ちょっと水臭いわね、教えてくれたっていいじゃな~い!」
「いいからいらっしゃいドレイクちゃん!」

受話器を置く青ヒゲ「はい、三人は来るって言ってくれたわよ。あとはあなただけ。」
海賊たち「おかしら・・・!」
コンパスの紋章を見つめるロジャー「・・・・・・。」



王宮の上空にノーチラス号が浮いている。

ノーチラス号の前にホバリングするリンドバーグ号。
ライト「隕石は持ってきた。まずは海王星から出て行け。」
ピカール「本物かどうか確認しなければそれはできませんね。まあ中にお入りなさいな。」
ノーチラス号の搬入ハッチが開く。
ライト「いくで・・・」
ノーチラス号の船内に入るリンドバーグ号。

ノーチラス号応接室
ライトがつまむ隕石を眺めるピカール「ふむ・・・」
ライト「どや本物やろ!だから海王星でもう馬鹿な真似はすんな。」
「いや~私も鉱物学の専門家じゃないので本物かどうかわかりませんねえ。
とりあえずメイルシュトローム砲のリアクターにセットして試し撃ちでもしてみないと・・・」
ルヴェリエ「そんな!話が違う!!」
ライト「そう来る思うた。だがホンマにそんなことしてええんかな。」
「?」
「お前覚えてないんか?
生真面目な性格利用して俺のエンジンを盗ませた軍人がおったやろ。」
「そんな人もいたかもしれませんね・・・」
「そいつな、実は今この星に来てんねん。自分のやったことに落とし前つける言うてな。
わからんか?人の心を弄ぶっていうのはそれなりのしっぺ返しを喰らうってこっちゃ。」

ノーチラス号ブリッジ。
ミグ「はああああ!」
艦橋で乗組員を殴り倒していくミグ。
無線を掴むミグ「ライトか?こっちは制圧した。」
内側からロックした扉の向こうで武装したテロリストが叫んでいる。
ミグ「だが長くは持ちそうにない・・・ピカールにコンソールを壊して構わないか聞いてくれ。」

ブリッジの様子を映したモニターを無言で見つめるピカール
ライト「さあどうする?」
ピカール「ふむ・・・どうしてほしいんです?」
ライト「まずはお前らが人質にしてる王族の連中を解放しろ。」
ピカール「わかりました。飲みましょう。」
電話をかけるピカール「ナイアド女王をここへ。」

応接室へ入ってくる女王
ルヴェリエ「母さん・・・・!」
女王「ルヴェリエ!無事でしたか!」
抱き合うルヴェリエと王子。
ライト「よかったな、ルヴェリエ。よ~し、あんたらは先にこの船から脱出してくれ」
ルヴェリエ「ライトさんは!?」
ライト「オレはこのおっさんともう少し話すことがあるんや。あとは任せろ。」
「ライトさん・・・」
「心配するな。海王星は必ず守ったる。」

王族の人質がノーチラス号の連絡通路を歩いていく。ピカールの命令でテロリストたちは手出しができない。
アラゴ「まさか12歳の弟に救われるとはな・・・」
デスピナ「よくもこのわたくしをあんな狭い部屋に閉じ込めてくれたわね!バ~カバ~カ!」

ノーチラス号から人質の乗った船が飛んでいく
窓の外のノーチラス号を見つめるルヴェリエ「・・・・・・。」

応接室
ピカール「いやあ見事ですライトくん。正直驚きました。しかしこちらにも優秀な軍人がいるのをお忘れなく。」
ライト「なんやと?」

ブリッジの扉が爆発して吹っ飛ぶ
作戦台の影に隠れるミグ
ナッシュ「ここは第二艦橋だぜミグ。」
ミグ「・・・あ、あなたは・・・」
ナッシュ「しかし取り返しのつかないことをしたもんだ。お前には失望したよ」
ミグ「ナッシュ・ストライカー軍曹・・・」

ピカール「くっくっく・・・!この巨大な船に艦橋が一つだけだとお思いか?
彼女があの部屋を制圧しようが、我々の作戦には全く支障はないのですよ。」
ライト「じゃあなんで人質を逃がした?」
「あなたの喜ぶ顔が見たくてね・・・・・・母子の再会・・・感動しましたか?」
立ち上がるライト「お前・・・!」
ピカール「おっと、あなたの相棒の彼女がなぶり殺しにされてもいいのかね?」

第二艦橋
ナッシュと格闘するミグ
ナッシュ「懐かしいな、お前に格闘技術を教えたのはこの俺だ。」
ミグ「なぜこんなことを・・・!」
ナッシュ「なぜ?弱いものを救うためだよ」
ミグ「たくさんの人の命を奪った・・・!」
ミグを殴りつけるナッシュ「・・・それがどうした。」
腹を押さえて崩れるミグ
ナッシュ「ほら立てよ、昔はもう少しバイタリティがあっただろ?」
ミグ「はあはあ・・・両親はあなたを信頼していた・・・」
ナッシュ「ああ、しかし星に帰ったオレを待っていたのは誹謗中傷の嵐だった。
冥王星、いや太陽系のために命懸けで戦った報酬がそれだ。
白血病で軍を退役し、ほんのわずかな年金が振込まれるだけ・・・このオレがだ!!」
ミグ「あなたは間違っている・・・」
ミグを蹴飛ばすナッシュ「うるせえ!屋敷育ちのてめえにこの俺の気持ちがわかるか!」

ライト「ミグ!!おい、やめさせてくれ!」
ピカール「では隕石を差し出してもらおうか」
ライト「ミグを逃がしてからや!」
ピカール「わかりました。軍曹もういい加減いたぶるのはかわいそうだ。ひと思いにその女を射殺しなさい。」
ライト「ミグ!」

床にうつぶせの血まみれのミグ「ライト・・・!私のことはいい、絶対に希望の海を渡すんじゃないぞ・・・!」
銃を構えるナッシュ「ミグ。お前は落第だ。」
ナッシュの足を取るミグ「死んでたまるかあああ!」

銃声と同時にノーチラス号が大きく揺れる
ライト「ミグ!!」
ピカール「なんだ?」

ノーチラス号乗組員「か・・・海賊です・・・!」

『80日間宇宙一周 Sea of hope』脚本⑥

海賊船のカーゴ。
リンドバーグ号に乗り込むライト
「じゃあもう行くわ。ルヴェリエのこと頼むで。手のかからん子やから。」
ロジャー「あんたら正気か?こんな小さな船でテロリストと戦うなんて勝算はあるのか?」
「この船の例があるやろ。」
「そうだけど・・・」

警報がなる。
「船長!西から巨大な戦艦が接近!距離1500!」
「なに!?」

雲の中からノーチラス号が飛び出してくる。
甲板のミグ「ノーチラス号だ!!」
「あれが・・・!?」
「ルヴェリエ王子は中に入って!」
カーゴの方へかけていくミグ。
ルヴェリエ「ミグさん・・・!」

ノーチラス号
紅茶を飲むピカール「見つけた。」
ナッシュ「さ~てどうする?」
ピカール「海賊船の制圧はできますか?」
ナッシュ「まあやってみよう。全機出撃準備!!」

海賊船艦橋
ロジャー「これが冥王星の艦隊を一撃で沈めた宇宙最強の戦艦、ノーチラス・・・!」
「お頭!あいつら攻撃態勢を取っています!どうしますか!」
ロジャー「決まっているだろ!逃げろ!!」
モニターを指差す海賊「あ、ライトさんの船が・・・!」
海賊船のカタパルトから勢いよくリンドバーグ号が出撃していく
ロジャー「あのバカ・・・」
新人「どうしますか!」
ロジャー「決まってるだろ!あいつを囮にして、とにかく逃げろ!」
「アイアイサー!」

緋色の旅団の戦闘機が海賊船を取り囲む。
その隊長機にナッシュが乗っている。
ナッシュ「ようし、とりあえず2,3発お見舞いして、母船の動きを止めるぞ。
高角砲に注意!」
「了解!」

海賊船の母艦にミサイルをぶち当てるテロリストの戦闘機。
海賊船の中では海賊たちが右往左往している。
ロジャー「オレたち共産主義者の反感を買うようなことしたか~!?」
ノーチラス号が海賊船の横に回り込み、副砲を発射する。
爆発する海賊船

新人「お頭!とてもじゃないけど逃げきれないっす!!」
ロジャー「くそうパワーもスピードもあっちが上か・・・!?」

海賊船を攻撃する戦闘機をリンドバーグ号が機銃で撃墜する

テロリスト「な!」
ナッシュ「あれは・・・」

リンドバーグ号のコックピット
ライト「さすが海賊や、この船速攻で改造してミサイルと機銃をとりつけちまうんだからな!」
ミグ「海賊船を守るぞ!悪党に手を貸すのは癪だが中にルヴェリエ王子がいる!」
ライト「了解!」

ナッシュ「気をつけろ!母船を守っているのがいるぞ!」

海賊船の艦橋
新人「リンドバーグ号が援護してくれてます!我々も戦いましょう!」
ロジャー「バカ言え・・・あんな奴らに勝てるわけないだろ・・・」
「しかし・・・!」
「現実を見ろ!オレは船長だ!すこしでも生き残る可能性が高いほうにオレは賭ける・・・!」
コンパスをいじくるロジャー
コンパスを見ながら叫ぶ「進路を031246に取れ!!」
「アイアイサー!」

海賊船の前方に積乱雲のような塊が見える。
ロジャー(航空無線)「おい聞こえるかライト!あそこに逃げ込むぞ!」
ミグ「あれは・・・!?」
ロジャー「ガルフストリームだ!あの中では火器が使えないし、暴風で電場と磁場が発生するからナビゲーションシステムも狂っちまう!」
ライト「面白い・・・つかまってろミグ!!」

メタンの雲に突っ込む一同。

ミサイルを発射しようとしたテロリストの戦闘機が爆発する。

ナッシュ「なんだこりゃあ!」
ピカール「深追い無用!」
追跡を諦めるノーチラス号

雲の中では所々で小爆発が起き、大気の状態が荒々しい、
空を飛んでいるのか海の中なのかもわからない。
海賊船の方へ帰ってくるリンドバーグ

ライト「おい、どこへいくつもりや!」
ロジャー「いいからついてこい!」
機器が使えないので、目視とコンパスと海図を頼りに進んでいく海賊船。
ミグ「視界が悪すぎる!危険だ!!」
ロジャー「なあにもっとおっかないのがこの海域にはいる・・・!」
コンパスを見るロジャー「頼むぜプクプク、今日は出ないでくれよな・・・」

メタンの雲が爆発する。虚無――ー





目を開けるライト「う、う~ん・・・」
リンドバーグ号が砂漠に突っ込んでいる。
「お、おいミグ起きい。」
意識が朦朧としているミグ「♪自殺~する~な~ら~飛び込み音頭で景気づけて~」
「なに言うとんねん、ここはどこや・・・?」
船から降りるライト
細かい砂が舞い上がる。
砂漠の所々には丸みを帯びた大きな石が転がっている。
コックピットで位置を確認するミグ「計器が完全に狂って場所が特定できないぞ・・・」
ライト「それよりお前も降りてこいて、なんか気持ちええぞ・・・」
リンドバーグ号から降りるミグ「本当だ、心なしか空気が新鮮のような・・・」
ライト「靴脱げよ、砂の感触が気持ちええから・・・」
ミグ「お前ってやつは本当にのんきだなあ・・・でも・・・」
はだしになるミグ「本当だ・・・すっごい心地いい・・・」
微笑むミグ「こういうところがこの世の天国っていうのかもな・・・って天国・・・!まさか私たち・・・!」
ライト「うお~これ見てみろよ!」

ライトの視線の先に砂浜に直角に刺さった巨大な難破船がある。
ミグ「おいおい・・・」
砂丘の丘の無効を指差すライト「これだけやない。向こうにも・・・」

数え切れないたくさんの船の残骸が砂の海に沈んでいる。

「すっげ~まるで船の墓場やな・・・こんな光景見れるなんて得したな!」
「こんな光景見たくなかったよ!早くここから出ないと・・・!カラカラで干からびて死ぬぞ!」
「そうか?なんか乾燥している感じがせえへんけど・・・それにこの青白い光・・・なんかおかしいなあ」
リンドバーグ号の方へ戻るミグ「冗談じゃない。私はここで死ぬわけには行かないんだ・・・!」

ミグのそばに巨大な動物の顎がある。
ミグ「!」
砂漠にクジラとワニを足したような動物の骨格が横たわっている。
ライト「すごいぞ・・・!なんやと思うこれ?」
ミグ「知らないよ、マッコウクジラかなんかかな・・・」
ライト「そういや海賊たちはどうなったんやろな・・・?」
ミグ「ルヴェリエ様も・・・ご無事だといいんだが・・・」

ライト「お、海賊船があったで・・・!」
砂漠の傍らに森が広がる。樹木は天まで届くほどに高い。
その森の木々から海賊船の垂直尾翼の先が見えている。

ミグ「ルヴェリエ様・・・!」
駆け出す二人
ライト「ほれ、森があるんやから水もあるんやって!」

ジャイアントケルプの森
その樹木に海賊船が引っかかって浮いている。
樹木というより・・・海藻・・・?

頭上の海賊船に向かって叫ぶミグ「ルヴェリエ様~!」
返事がない。
ミグ「ご無事でしたら返事を~~!」
ライトが地面に足跡がついているのに気づく。
ライト「おい、連中森の奥へ歩いてったようやで」
ミグ(聞いてない)「ルヴェリエ様~~!!」
森の奥から大きなうなり声が聞こえる。
二人「!」

ライト「おい、お前何を呼んだ・・・?」
森の奥で茂みが揺れてバキバキと木々が折れる音がする。
ライト「武器は・・・?」
ミグ「船に置いてきた・・・!」
ライト「逃げるで!!」
足跡をたどって一目散に駆け出す二人
後方で背筋が凍るような咆哮が聞こえる。
巨大な動物が接近する音。

ミグ「なんなんだここは・・・!」
転ぶミグ
立ち止まるライト「ミグ!」
「私のことはいい!逃げろ!!」
ライト「何言うとるんや・・・!」
二人の前にルヴェリエが飛び出て森の奥に閃光弾を撃つ。
その閃光を追って怪物が森の奥に引き上げていく。

ルヴェリエ「は~・・・お二人とも怪我はありませんか?」
ライト「ルヴェリエ!」
ミグ「無事だったんだね・・・!」
「はい、ご心配お掛けしました。海賊の皆さんもいますよ。」



伝説の海賊青ヒゲのほこら
ルヴェリエが二人を洞窟に連れてくる
ロジャー「ようお前たち、来たか。」
ミグ「ここは・・・?」
ロジャー「伝説の海賊青ヒゲ。かつてこの地の海賊の諍いをおさめ、海賊の誰もが恐れたプクプク・・・カイオウトケイワニを退治した唯一の男・・・
この場所はそんな青ヒゲをたたえてオレたち海賊が残したものだ・・・
そして・・・おそらくテロリストの狙いはこれだろう・・・」
ほこらに祀られている小さな青い宝石を取るロジャー
「これが隕石の核。・・・俺たちはこの宝石を「希望の海」と呼んでいるが・・・」
ライト「これが隕石!?随分小さいんやな。そんなんなら地球でもしょっちゅう落ちてるで」
ルヴェリエ「その鉱物・・・プリズマメテオタイトの純結晶の物理的特性は、膨大な質量やエネルギーを一点に圧縮することにあるんです。」
ミグ「この小さな結晶が巨大隕石の莫大なエネルギーすら圧縮してしまったというのか?」
ロジャー「ああ、ここに巨大なクレーターだけを残してね。」
ミグ「もしテロリストがこれをメイルシュトローム砲に応用したら・・・確かに地球を消し去ることができるかもしれない・・・」
ライト「何考えとるんや・・・」
ロジャー「もう察しは付いていると思うけれど、ここはもとは海底だったところだ。
それが隕石の衝突で海水が一瞬で蒸発し、この海の墓場が出来た。
我々はこの場所で海賊の誓いをし、海王星のために商売することを決めたのさ」
ルヴェリエ「じゃ、じゃあ・・・ぼくらの星のためにもう一度戦ってくれますか・・・?」
ロジャー「え?」
ルヴェリエ「お願いします!」
ロジャー「いやね、オレたちが誓ったのは、海王星の貧しい人に物資を送るってだけで、宇宙最強のテロリストと戦うってのはちょっと契約には入ってない・・・」
ルヴェリエ「そんな・・・!今こそ元近衛隊長のあなたの力が・・・!」
ロジャー「でも今は転職して海賊。海賊はリアリストなのさ。」
ミグ「ふん、あんたらは好きにしろ。」
宝石を取るミグ「だがこの宝石はもらうぞ。敵の狙いはこちらの切り札になる。」
ロジャー「まあいいけど・・・本気なのか?」
ミグ「なにが?」
ロジャー「さっきだっておかしいだろ、ノーチラス号相手に出撃しちゃって・・・人の星のことでなんでそこまで・・・」
ルヴェリエ「過去を清算するため・・・」
ミグ「・・・ルヴェリエ様・・・」
ルヴェリエ「ぼくはミグさんに教わりました。どんなに現実が辛くても決して逃げちゃいけないってことを・・・ぼくも最後まで戦います。・・・ライトさん・・・」
ライト「ん?」
ルヴェリエ「ぼくを・・・もう一度リンドバーグ号の乗組員にしていただくことはできませんか?」
ライト「ええで。ここが海底なら上を目指して飛べば、こっから出られるやろ」
ロジャー「ルヴェリエ王子・・・あなたまで・・・」
ルヴェリエ「海賊の皆さんお世話になりました。今の海王星があるのはみなさんのおかげです。」
海賊たち「坊ちゃん・・・」
ミグとルヴェリエがほこらを出ていく。
ロジャー「・・・よう、ライト。
あのミグって姉ちゃんはどういう精神状態の人なんだ。」
ライト「・・・あいつは優しい奴や。だから自分がこの星をめちゃくちゃにした思うとるんや。
あいつは必死に過去と向き合おうとしてる。
あんた・・・優秀な衛士やったんやろ?過去から逃げてるのはあんたちゃうんか。」

『80日間宇宙一周 Sea of hope』脚本⑤

波を切って海を進む海賊船
海賊「ギャハハハハいただいたぜ~!」
「あいつら今頃半泣きだろうよ!」
新人「この船、どこら辺で売りさばくんすか?」
ロジャー「土星あたりかなあ・・・いま景気いいらしいし。」
新人「お頭レーダー反応です!後方から飛空艇が追ってきます!」
ロジャー「なんだと!?」
マルチモニターにライトたちの顔が映る。
ロジャー「しつこいやつらだ・・・撃墜しろ!」
「アイアイサー!(c)ももいろクローバー」

猛スピードで海賊船に追いつく飛空艇。
ルヴェリエ「この船、けっこう性能いいですね」
ライト「せやな」

海賊船の母艦の側面に回りこむ。
母艦から大砲が出てくる。
ミグ「撃ってくるぞ!」
壁の操作盤に気づくルヴェリエ「このスイッチは?」
飛空艇からミサイルが発射されて大砲を破壊する。
ライト「!!お前何をした!?」
ルヴェリエ「え、いや、その・・・」
ミグ「ライト、この船は武装船みたいだぞ・・・!」
ライト「よっしゃ、あいつらにお見舞いしたれ!」

海賊船を攻撃する飛空艇。
海賊船の砲撃は飛空艇が小さくすばしこくてなかなか当たらない。
ロジャー「あんな小さい船相手になに手こずっている!」
砲弾を装填する海賊「さーせん!」
ロジャー「ダメか!?勝てそうもないのか!?どうなんだ!?」
「それは・・・」
ロジャー「はっきりしろ!」
「アイサー勝てません!」
ロジャー「よっしゃ逃げるぞ!!」
「イーエー!!」

海賊船内に無線でライトの声が入る。
ライト「コラお前ら~オレたちの船を返さんか~い!」
ロジャー「やなこった!こっちも商売なんだよ!」
ライト「お前ら~いい加減にせえへんとマジで地獄見せたるで~!」
ロジャー「え、それはやめて・・・」

飛空挺を海賊船のカタパルトにつっこませる。
そのまま船内に突入する飛空艇。慌てて逃げていく海賊たち。
飛空艇から出てスパナを振り回すライト「オラア海賊ども~!お礼参りじゃ~~!!」
三人を取り囲む海賊「ええい、ひるむな!数じゃこっちが勝ってるんだ、お前らは飛んで火にいる夏みかんよ・・・!」
ミグ「それはどうかな?このEM銃を船内で発火させてみろ。私も死ぬがお前らともども道連れだぞ」
海賊「ひいいいい!この人本気だ、怖いよ・・・!」
ライト「責任者はどいつや!」

海賊船艦橋。
扉を荒々しくあけライトたちが乗り込んでくる。
ライト「あんたが海賊ロジャーか!」
ロジャー「え・・・?ちがうよ?」
ライト「部下に言って俺らの船を返させろ!」
ロジャー「まあまあ落ち着けって。これにはふか~い事情があるんだよ」
「なんやな。」
「まあまあ座って・・・おい、この人たちにつめた~い飲みもんでも出してやれ!」
「へ、へい・・・!」
海図や計算機を机から落とし、テーブルクロスが敷かれ、楽団が演奏をはじめる。
ライト「そうやって丸め込もうったってそうはいかんからな」
ロジャー「違うって・・・」
ルヴェリエ「とりあえず話を聞いてみましょうよ。」
ライト「ええかルヴェリエ。こいつら海賊っていうのは宇宙で最も油断ならんやっちゃ、絶対気を許すんやないぞ。」

5分後
酒に酔ったライトがロジャーと肩を組んで大爆笑している。
ライト「ニャハハハハあんた気が合うなあ!」
ロジャー「おめーこそ気に入ったぜ!この船に乗り込むたあ海賊以上に血の気が多いぜ!!」
ため息をつくミグ「あのバカ・・・」
ルヴェリエ「すっかり友達になってますね・・・」
ミグ「で、なぜ人の宇宙船を掠奪するんだ?まだ話してもらってないぞ。」
ロジャー「それはだな、海王星のためにやってるんだって。」
ルヴェリエ「海王星のため・・・?」
楽団がお涙頂戴の短調の曲を弾きだす。
ロジャー「あんたらも20年前にこの星に隕石が衝突したのは知ってるだろ?」
ライト「ああ」
「あの隕石の事故処理をしたのが俺たち海賊だったんだよ。」
ルヴェリエ「え・・・?」
ロジャー「ほら衝突直後は海王星は治安もへったくれもなくてな、もう混乱の極みだったんだ。
政府も軍も衝突地点には恐れをなして近づきもしなかったしな。
でも誰かがやらなきゃいけなかったから、オレたちがクレーターの上から大量の土砂をかけて放射線を防いだんだ。あれでも1万分の1にまで減ったんだよ?」
ライト「ふ~ん、でもお前らがタダでそんなよいおこないするはずないやろ。どうせたんまりギャラをふんだくったんちゃうんか」
「まあね・・・
でもよ、その作業のおかげで俺たちの半数は重い病気や障害を抱えている。十分ギャラに見合った仕事はしたと思うぜ。」
周りを見ると海賊のほとんどが腕や足のどこかが失われている。
笑って義手を降る海賊
ルヴェリエ「王家が海賊に面倒な仕事を押し付けていたなんて・・・そういう時、真っ先に国民のために命をかけるのが貴族なんじゃないですか?」
ロジャー「あくまで理想はそうだがな・・・誰かの為に自分の身をなげうつのはなかなか出来ることじゃないんだぜ」
ルヴェリエ「でも・・・」
ルヴェリエを優しくなでるミグ「最後まで聞いてみよう・・・で、なぜ船を盗んだ?」
ロジャー「やっぱそこ行く?それはその・・・中古の宇宙船を集めて他の星に売るんだよ。おたくらの船さ、なかなかいいエンジン積んでいるじゃない?あれは金になるなあって・・・」
ライト「やっぱり金か!しょうもないやっちゃなあ・・・」
ロジャー「オレたちには金がいるんだよ。それも外貨が。」
「なんでやねん」
「それで海王星の支援物資を買っているのさ。何年もずうっとね・・・」
「・・・なんやと?」
「オレたちが命懸けで事故処理をして獲得した最大のギャラはそれさ。
まだわかりませんか?ルヴェリエ・ネプトゥヌス殿下。」
ルヴェリエのコンパスの針がロジャーを指している。



王宮
テロリストが書庫から書類の束を持ってくる「どうぞ」
ピカール「拝見。」
何かを見つけ笑うピカール
「なるほど・・・海王星の財政のからくりが解けましたよ。」
ナッシュ「どういうことだ?」
一枚の書類を見せる「ご覧なさい。」
「これは・・・私掠行為許可証・・・!」
「あの女王なかなかの悪党のようだ。
しかしこれで海王国政府と海賊がつながっていることがわかった。」
「ああ、海賊の居所を聞き出せるな、」
「さっそくお願いします。」



海賊船、艦橋。
ルヴェリエ「え・・・?もしかして僕が探していたのは・・・この人???」
ロジャー「はじめまして殿下。お会い出来て光栄です。」
ルヴェリエ「でも、なぜエガリテ隊長はあなたを訪ねろと・・・」
ロジャー「エガリテは私が近衛隊の隊長をやっていた頃の親友です。そのコンパスは私が仕事をやめた時にあいつに渡したものです・・・」
コンパスを裏返すルヴェリエ。海王国の紋章が刻印されている。
「あなたが・・・海王星の救世主・・・?」
ミグ「そうか・・・海王星の逼迫した財政では、国民全てに十分な生活物資は供給できなかった。
だから海賊を使って非合法な手段で物資を集めさせた・・・私掠行為を許可して。」
ロジャー「すべては海王星のためです。」
ルヴェリエ「僕らの星はあなたがた海賊によって養われていたってことですか・・・!」
ロジャー「え、い、いや、その・・・」

部屋を飛び出すルヴェリエ
海賊「あ、坊ちゃん!」
ロジャー「ほっといてやれ!」
ライト「・・・ショックやったろうな・・・」
ロジャー「俺なんかに会わなかったほうがよかったのかもな。」
ライト「そんなことないって・・・あいつは体はちっこいけれど強いから。」
ミグ「・・・・・・。」


甲板の縁に座って海を眺めているルヴェリエ。
ミグ「いいかな・・・」
隣に座るミグ
「確かに海賊を憎む気持ちはわかる」
「海賊が憎いんじゃないんです。
ボクら王族がこんな汚いことをしていたなんて・・・」
「きっとお母さんも国民を救うために必死だったんだと思うよ。」
「でも・・・何の罪もない他の星の人々を襲って物資を集めてたなんて・・・」
ルヴェリエの肩に軽く手を乗せるミグ「・・・・・・。
キャプテンロジャーがリンドバーグ号を返してくれるそうだ。いつでも出発できる。」
ルヴェリエ「それで僕はどこへ行けばいいんですか・・・?僕の目的地はここだったんですよ」
「そうか・・・じゃあここでお別れだな。」
「ミグさんたちは?」
「ノーチラス号を止めに行くよ。海王星を救わなくては・・・」
「なんで海王星人でもないミグさんがそこまでするんですか?」
「言っただろ・・・私は過去に決着を付けなければいけない。
海王星をこんな状況にしたのは私の責任でもあるんだよ」
「え・・・?」
「あなたに打ち明けるのがずっと怖かった・・・でもここで別れるのなら、勇気を出して告白します。」
「・・・・・・。」
「私の名はミグ・チオルコフスキー。冥王星の軍人。海王星の隕石衝突を止められなかったチオルコフスキー将軍の娘です。そして・・・テロリストのノーチラス号強奪に手を貸してしまった・・・」
「ミグさんが・・・」
「私には償いきれないほどの罪がある。その罪を少しでも償いたいから私は戦う。」

『80日間宇宙一周 Sea of hope』脚本④

夜。
海王星のたくさんの衛星が夜空に輝いている。

リンドバーグ号の寝室。
眠っているルヴェリエに毛布をかけてやるライト
小声のライト「ミグ見てみい、可愛い寝顔やな~」
「お前ってけっこう面倒見いいんだな・・・」
「そうか?」
「なあライト・・・ちょっといいかな。」

コックピット。
「どうした?寝れんの?今日の見張り役は火曜だからオレやで。」
「怖いんだ・・・」
「怖い?泣く子も黙る冥王星の軍人が?」
頷くミグ「・・・・・・」
「・・・・・・。
そうそう、あんたが冥王星人だっていうのはあの子にいつまで隠しておけばいいんや?」
「・・・・・・ルヴェリエ王子を見ていると・・・罪悪感で胸が押しつぶされそうなんだよ・・・
私はこの星の人たちに顔向けができない・・・」
「いやええけど・・・あの子は賢い。薄々感づいていると思うで」
「え・・・?」
「あんま気負うなよ。あんたはあの件に関しちゃ悪くないって。過去は過去や。
いくら自分を傷つけても、もう変えられないんやで。」
「・・・」
「・・・そうやなあ、一度あの王子と話してみたらどうや?
あの子は今、親御さんと離れ離れで不安やろ、あんたならその気持ちがわかるんちゃうかな。」
「私が・・・」
「頑張れミグ。」



夜の王宮。
懐中時計を見るピカール「日が変わってしまいましたよ。まったく強情な人たちだ。」
ピカールとチェスを打つ女王「あなたがたの主砲のエネルギーを増幅するのにあの鉱物が必要だと聞いて、あっさり私たちが教えると思いますか?それに・・・地球を滅ぼしても楽園は訪れませんわ。」
チェス盤を見つめるピカール「・・・らちがあきませんな。」
閣議室に入ってくるナッシュ「隕石の場所は海の墓場と言われる秘密の海域だ。」
デスピナに銃を突きつけるテロリスト「この女が吐きました。命乞いしながらペラペラと」
ピカール「くっくっく・・・で、その海の墓場とは?」
ナッシュ「どこだ?」
デスピナ「あ、あたしは知らない・・・本当よ!海の墓場はもともと宇宙海賊の秘密のたまり場だったのよ」
ナッシュ「ということは海賊しか知らないってことか・・・あんまりあの連中とは関わりたくないんだけどなあ」
ピカール「海賊ですか・・・ちょっと面倒なことになりましたね。」
ナッシュ「ああ。まず宇宙を放浪している海賊どもを探し出すのがな。」
デスピナ「話したんだから、私は返してよ!」
ナッシュ「返すかよ馬鹿。地下牢に戻せ」
デスピナ「あそこのベッドは固くていや~!枕の高さもあってないし!」
テロリスト「うるせえとっとと歩け!」
ナッシュ「どうするよ、先生。」
ピカール「ふむ・・・
女王陛下。私にはむしろ、隕石によって汚染されたこの星が20年間も国体を保てたのが不思議でならないのですがね。かつては鋼の女性と呼ばれたあなたのことだ。一体どんなウルトラCを使ったのですか?」
女王「政治の世界にそんな魔法はありません。」
ピカール「そうですか。ならばゆっくり考えてみることにしましょう。」
女王の前にビショップを動かすピカール「チェックメイト」
女王「わたしにクイーンをわざと取らせたのね・・・」
微笑むピカール



夜明け。海上のリンドバーグ号。
甲板で洗濯物を干すエプロン姿のルヴェリエ。
ルヴェリエ「おはようございます」
ミグ「あ、おはようございます。ゆっくりお休みになれましたか?」
「おかげさまで・・・」
「洗濯ならわたくしがやります、どうか殿下は・・・」
「じゃ、ふたりでやりましょう。」
二人で選択物を干す。
ミグ「あの・・・ひとつ聞いてもいいでしょうか?」
ルヴェリエ「ええ・・・それに、もうその敬語は勘弁してくださいよ。」
「しかし・・・わたくし柔らかい言葉遣いが・・・苦手でして・・・」
「ようし、ライトさんに教えてもらった最終手段だ。伍長よ。これは命令である。」
「・・・・・・。ごほん、失礼。海王星に衝突した隕石のことを聞きたいんだけど・・・いいかな?」
微笑むルヴェリエ「はい。」
ミグ「海王星人は隕石のことをどう思っているのかなあ?」
真剣な顔になるルヴェリエ「憎んでいますよ。」
「・・・そうだよな・・・」
「でも・・・ぼくは正直わからないんです」
「・・・・・・。」
「当時のこと。生まれていませんでしたから。
ぼくは昔の海王星を知らない。だから衝突を目の当たりにした人たちの心の苦しみを本当に理解することはできません。」
「・・・」
「皇太子の兄はかつては明るく前向きな性格だったそうですが、隕石によってすっかり変わってしまいました。いや兄だけじゃない。母も大臣たちも・・・保身にきゅうきゅうとしていて民のことまで思いやれる余裕がないんです。自分たちの心を壊さないようにするので精一杯だから。」
「ルヴェリエ王子・・・」
「ずっと思っていた。ぼくはこの星のために何ができるんだろうって・・・」
「できますよ。王子はお若い。辛い過去がないからこそ前向きにやれることがある。」
「ミグさんは・・・?」
「私は・・・私は自分の過去に決着をつけるためにこの星にやってきたのかもしれない。」
「自分の過去・・・?」
ミグの顔に朝日が当たる「ずっと見て見ぬふりをしていて・・・時には自暴自棄にもなったけれど・・・私はもう過去からは逃げない。諦めない。」
「ミグさん・・・」

海の向こうに島のような影が見えてくる。
尾翼の上に登って双眼鏡をひつかむライト「オーイこっちきてみ~。なんか見えたで~」
ミグ「あれは?」
ルヴェリエ「海上キャラバンだ・・・!」
ライト「え?あれ島ちゃうんか?」
「ええ、行商の船をたくさんくくりつけて人工島のようになっているんです。」
「へ~面白そうやなあ。行ってみるか。」
「本当ですか!?一度行ってみたかったんです・・・!わあ~」
ライト「よしおっちゃんがなんでも買ったる。」
ルヴェリエ「悪いですよ」
ミグ「子供のうちは甘えておくものだよ。遠慮することはない」
「わあい、やった~!」

海上キャラバンはまるでベネチアのようになっている。船と船の隙間をゴンドラが行き交う。
船を降りてキャラバン内を歩く一行。
「は~まるで街やなあ。」
バザーに並ぶ屋台の一つを指差すルヴェリエ
「これはなんですか?空の雲をちぎったみたいですけど・・・綺麗だなあ」
「ああ、わたあめや。つまりはキャンディーやな。」
「え?あれは食べ物なんですか!?」
「甘くてうまいで~食ってみたいか?」
「はい・・・!」
「おっちゃん、この綿菓子いくらや」
おっちゃん「毎度!220ポンドだね」
「高っ!!」
「なにしろ輸入品だからね」
ミグ「食料も全部輸入しているのか?」
おっちゃん「まあモノによるな。砂糖が高いんだよ。」
ルヴェリエ「あ・・・じゃあいいです・・・」
「遠慮するなて!おやじ、三つくれ。」
「700ポンドです」
「高くなっとるやんけ!」
「嗜好品には特別税が加算されるんだよ」
ルヴェリエ「やっぱりいいです・・・」
「わ~ったナンボでもはろうてやるわ!」

綿菓子を食べながら屋台の間を歩く三人。
「おいし~でも溶けてあっという間ですね」
「そうか、じゃオレのもやるわ」
「あ、じゃあ私のも」
「え・・・?」
「食っとけ食っとけ。」
「これってとっとけないんでしょうか?・・・こんな綺麗なお菓子があるなんて母さんに見せてやりたいなあ・・・」
二人「・・・・・・。」

ミグ「王子、手をつなごうか。」
「え・・・?」
ミグ「今は楽しもうよ、ね?」

バザーの客に紛れて三人を見つける海賊。
りんご飴を持ってお祭りのプリキュアのお面をかぶる海賊「お頭、いました。」
ロジャー「でかした新人。」

小物屋
ルヴェリエ「ミグさん、このネックレス似合いますよ」
喜ぶミグ「え?本当?ちょっと私には可愛すぎやしないかなあ・・・」
「綺麗ですって、ね?ライトさん」
「う~ん、オレはお前にはこの宝石のブローチが似合う気がするけどなあ」
「それはさすがにミグさんの歳じゃ厳しいですって・・・ハッ!」
「ガ~ン・・・」
「ミグそんな泣くなよ、子供が言ったことやないか~」
「泣いてないよ馬鹿・・・!」

「じゃあ飯でも食ってくか!」
(まだちょっと凹んでるミグ)
レストラン喫茶に入る三人。
オカマのママ「いらっしゃ~い!な・ん・に・ん?」
ライト「三人。禁煙席で。」
ママ「あら~ご家族~?ぼく、いいわね~」
ライト「家族ってわけやないんやけど・・・」
ルヴェリエとミグ「はい、家族です。」
ママ「これがメニューね。おすすめはBランチ。安心で美味しい魚介類が地球から入ったわよん。」
ミグ「地球・・・?」
ママ「ええ。昔はシーフードと言ったら海王星だったんだけどね。地球の魚介類はけっこうあっさりしていてヘルシーよ。ソテーして白ワインソースて食べるのが地球風。トマトと一緒にパスタに絡めてもいいわね。」
「ほ~イタリアンやな!」
「あら兄さん地球の方?」
「そうや」
ライトの体をペタペタ触るママ「やだ~♡ちょっといい体してるじゃな~い!」
「なんやねんな・・・」
「あたしも地球に行ったことあるのよ~そこで料理の修行してこの星に戻って店を構えたの。」
ライト「じゃ、じゃあBランチを三つでええか?」
ルヴェリエ「はい」
ミグ「異議なし。」
ママ「Bランチ3!じゃ、ちょっと待っててね。兄さん愛してる!」
ミグ「モテモテだなライト・・・」
ライト「なにニヤついてんねん。めっちゃオカマやないかい。」

料理を運んでくるママ「おまたせ~」
ミグ「これが地球の料理・・・」
ルヴェリエ「すっごい美味しそうですね!」
ママ「あ・り・が・と♪
兄さんのにはいろいろサービスしておいたから・・・ウフ」
ライト「やめろや気色悪い。」

ルヴェリエ「うわ~本当に美味しい!味付けが海王星とだいぶ違うんですね。」
ライト「オリーブオイルやからな・・・どうしたミグ?口に合わんか・・・」
窓の外をじっと見つめるミグ「なあ・・・外のあれって・・・」
窓の外で海賊船にリンドバーグ号が引きずられていく。
「!!あ!!俺の船!!」

店を飛び出すライト
ロジャー「は~はっは!今度海賊に喧嘩を売る時はよ~く考えな~!!」
海賊「あばあばあばよ~!ヒャッハーー!!」
リンドバーグ号を船内に格納し波止場を出航する海賊船

ライト「あいつらオレらの船を盗んで行きよった~~!!」
ミグ「やっぱり!!」
ルヴェリエ「どうしましょう!?」
ママ「あら飛行艇なら店の裏にあるわよ。」
ライト「マジで!?ママ、貸してくれへんか!?」
ママ「お安い御用よ、じゃあチューして♡」
「えええ!?」
ミグ「ライト一刻の猶予もないぞ!」
ルヴェリエ「ライトさん、ここは心を殺してください!」
ライト「わ~った!どこにすりゃいいんや、ほっぺか!?」
ママ「・・・左乳首(ポッ)」

フライパンで殴られてピクピクしてるママ。
ライト「ついていけへんわ。追っかけるで~!」
レストランの飛空艇に乗り込んでりエンジンをかけるライト。
離陸する飛空艇。

ライト「さすが海王星人、飛空艇は生活の必需品なんやな」
ルヴェリエ「あの人大丈夫でしょうか・・・」
ミグ(料理半分も残しちゃった・・・)

『80日間宇宙一周 Sea of hope』脚本③

海上。
海の上に飛空艇が着水している。
そのとなりにリンドバーグ号を横付けするライト。
ライト「いや~あんたのおかげで助かったわ~」

飛空艇のドアが相手パイロットが降りてくる。
ルヴェリエ「それはよかった・・・」
ミグ「え・・・!?こども??」
ルヴェリエ「す、すいません・・・」
ミグ「い、いや謝ることじゃ・・・(気まずそうにライトの方を向く)
ルヴェリエの頭を撫でるライト「可愛いボーズやな~。とーちゃんとかーちゃんはどうしたんや?」」
ルヴェリエ「それが・・・」
ライト「なんや迷子か。」
ルヴェリエ「ある場所に向かう途中飛空艇の燃料が切れてしまって・・・」
ミグ「ギリギリの燃料であのドッグファイトをしたのか・・・」
ルヴェリエ「ええ・・・」
ライト「は~とんでもないボーズやな~あんた名前は?」
「え?」
「ええって、助けてくれたよしみや。おっちゃん達がそこまで送ったる。」
「いいんですか?」
「ええよな、ミグ?」
飛空艇の紋章を見るミグ「え?あ、ああ・・・構わないけど・・・」
ライト「すまんな、あいつどっかボーッとしてて・・・」
ルヴェリエ「奥様ですか?」
ライト「うん。オレの第三夫人。」
ミグ「違う!!」
ライト(冗談なのに・・・)

「俺の名はライト・ケレリトゥス。地球出身。宇宙一の冒険家や、どや、かっこええやろ。」
「冒険家・・・?」
「で、こいつがツレのミグ。冥王星の・・・」
「え~っと!!ミグです。よろしく・・・」
「よろしくお願いします。ぼくはルヴェリエ・・・ルヴェリエ・ネプトゥヌスです」
ミグ「やはり・・・」
ライト「なんや知り合い?」
ミグ「いやいや、いいんだ。」
「お世話になります。ライトさん、それに・・・ミグさん」
ミグ「どうも・・・」

リンドバーグ号のドアを開けるミグ
「いや~しかしこの船って飛空艇だったんだな。武器はてんでないけれど、そういうところはちゃんと作ってるんだなあ。」
ライト「え?」

リンドバーグの船内。
ミグ「バカやろう!めちゃくちゃ浸水してるじゃねえか!
ぎゃあああ、すでに絶版となっている所さんのレコードがあああ!!
なぜ飛空艇じゃないのに海の上に着陸した!?」
ライト「いや~助けてくれた彼を見捨てるのはかわいそうやと思って」
ミグ「それで共々漂流か!我々には太陽系を救う使命があるんだぞ!」
ルヴェリエ「・・・え?」
ミグ「あ、いやその・・・」
ライト「別に隠すことでもないやろ、言うたらええやん。」
ルヴェリエ「一体お二人はどういう方たちなんですか?」
ライト「あんな、オイラ達は悪いテロリストから太陽系を守ろうとしてるんや。この宇宙最速の船でな」
イライラしながら濡れた服をテーブルの上にのせるミグ「そう、水洗いされてとっても綺麗。」
ライト「あのお姉さんは無視して~」
ルヴェリエ「太陽系を救おうとしているんですか・・・!?」
ライト「ああ。な?」
ミグ「それだけは私も彼と同意見です。おいドライヤーは二階だっけ?」
「じゃあ・・・」
二人「?」
ルヴェリエ「ぼくの星を救ってください・・・!!」
二人「!」
ライト「・・・・・。まずは一階の荷物を上に運んでからでいい?」
ルヴェリエ「あ、すいません、なんか・・・手伝います」
ミグ「いえいえ助かります・・・」
ライト「ありがとな~」

プロペラをスクリューにして海上を進むリンドバーグ号
ライト「そうか・・・辛かったろうなボーズ・・・よっしゃボーズの星のことは俺達に任せとけ、悪いようにはせん。な?」
ミグ「ああ。ノーチラス号がこの星に停泊していることもわかったしな。」
ルヴェリエ「ありがとうございます!!」
ミグ「しかし緋色の旅団が海王星の労働者の心も掴んでいたとは・・・革命は成功したんですか?」
首を振るルヴェリエ「わかりません・・・クーデターの最中にぼくだけ王宮から逃げ出したんです・・・」
ミグ「そうでしたか・・・」
ライト「おい」
「なんだよ」
「さっきからなんであんた敬語使ってんねん。俺にはタメ口なのにおかしーやろ」
「バカ!このお方は・・・海王星の王侯貴族だぞ!」
「フンフン、へ~・・・ところでボーズ腹減ってるやろ、缶詰食うか?」
「いいんですか?」
「だからお前は上流階級に馴れ馴れしいんだよ!!」
「いえ、ミグさん気になさらないでください。ぼくは人生経験の未熟なただの子供ですから・・・」
「しかし・・・失礼ですがルヴェリエ様のご両親は・・・」
「父はいません。母はナイアド・ネプトゥヌス、ぼくはその次男なんです。」
「でででっででででででで・・・殿下・・・!」
「ボーズ缶詰開いたで~」
「ありがとうございます」
「お前~~~!!この方は女王陛下の・・・」
缶詰を一口食べるルヴェリエ「はっ!」
ミグ「ほら見ろ!王家のお口にこんなものが合うわけ無いだろう!失礼をば・・・!」
「お・・・美味しい・・・!こんな美味しいものがあったなんて・・・」
「美味いか!ニャハハ、もっとあるで~」
ミグ「え・・・」
「本人がそう言ってるんやからええやん。なあ!」
微笑むルヴェリエ「はい!とっても美味しいです!」

ミグ「・・・私、海図で現在地を確認してきます・・・失礼します。」
ライト「おう苦しゅうない。行って参れ」
「お前に言ってるんじゃないんだよ。では殿下。」
リビングから出ていくミグ。
「あの人・・・ボクのこと・・・」
「ああああ、気にすんな、俺ん時も会ったばっかりはあんな感じやったから」
「でも怒ってませんか・・・?」
「怒ってないない。ああ見えてあいつ結構のんびり屋でいい奴やから。
それよりかーちゃんが心配やろ・・・」
「はい・・・でも・・・ボクにはやらなきゃいけない事があるんです。」
コンパスを取り出すルヴェリエ。




海王国王宮
閣議に使う部屋でピカールと女王が机をはさんで座っている。女王の隣にはアダムスとアラゴ、ピカールの隣にはナッシュが立っていて、部屋の周りには武装したテロリストが囲んでいる。
女王「お話はわかりました。」
微笑むピカール
女王「惑星連合の議長星、地球を消し去ると・・・」
ナッシュ「あんたらも大災害の際に惑星連合には非情な仕打ちをされたわけだろ。トカゲのしっぽ切りをされたのは俺たちの星、冥王星と変わらねえんじゃないか?」
アラゴ「それは一理あるね、だがな、そもそもお前らが職務を全うして俺たちの星に隕石をぶつけなければこんなことにはならなかったんだがな」
武装テロリスト「なんだと・・・!」
女王「アラゴ!」
ピカール「はっはっは・・・皇太子殿下はなかなか言いますな」
女王「で、私たちがそんなことに賛同すると・・・?」
ピカール「ほう、断るおつもりですか」
アラゴ「俺たちにもプライドがあるんだよ、それにお前ら冥王星人が俺は嫌いだ。」
ナッシュ「ずいぶん嫌われちまったなあ、先生。」
ピカール「そのようだ」
ナッシュ「いいかバカ殿下、オレはお前らの星を救うために大小あわせて172の隕石を解体してやったんだ、安い給料でな。つまりオレが白血病にならなきゃ、てめえの星はこんなもんじゃすまなかったってことだ。ちったあ感謝して欲しいもんだがな」
アラゴ「じゃあ、あんたみたいなプロがどうしてあの隕石は止められなかった!?」
ナッシュ「・・・最後の最後まで止めようとしたさ、あいつらはな・・・」
女王「その話はもうよしましょう。過ぎてしまったことを蒸し返しても仕方がない」
ピカール「同感ですな。」
女王「で、何が狙いなんです?この星にはあなたがたの欲しいものなど何もありませんよ。文字通り海だけの見捨てられた星なのですから」
ピカール「いいえ・・・我々の計画に重要な物質がこの星にはあります」
アラゴ「放射能か?」
ため息をつくナッシュ。
首から下げたネックレス状の小さな鉱物を見せるナッシュ「俺たちが欲しいのはこれだよ」
アラゴ「石ころじゃねえか。」
ナッシュ「仲間の形見なんだけどね・・・」
ピカール「角柱頑火輝石・・・プリズマメテオタイト。これはナッシュ軍曹が持ち帰った原石ですがね。」
アラゴ「だからそれは何なんだよ?」
ピカール「・・・20年前に落ちた隕石ですよ。我々はその落下海域が知りたい。」



海上を進むリンドバーグ号
窓から手を伸ばし海の水をすくうミグ
「しかしこの星の海は澄んでいて綺麗だな・・・
確か海王星の海は淡水なんだよ。ミネラルウォーターみたくて飲めるんだ、ライトお前もどうだ?」
水を口に含むミグ
ルヴェリエ「でも汚染されてるのできっと体に毒だと思いますよ・・・」
ライト「ミグはよ吐け・・・!!」
ミグ「ごほっごほっ!!」
「隕石が海王星のほとんどを汚染してしまったんです・・・パッと見はとっても美しいんですが・・・」
涙ぐむミグ「殿下、それを先におっしゃって頂けましたら・・・」
「ごめんなさい・・・この星の海の水を飲む人は誰もいないので・・・」
ライト「こんなに水があるのに、あんたらは水が飲めんの?」
「ええ、一部汚染をまぬがれた海域はあるらしいんですが、基本的に飲料水は他の星から輸入しています。」
「難儀やな・・・」
「僕らの星の海は赤みがかってますけれど、地球の海はもっと青いんですよね?」
「せやね。」
「一度見てみたいなあ・・・」
ミグ「・・・・・・。」
ライト「ボーズが大人になったらおっちゃんがいつでも連れてったるよ。」
ルヴェリエ「本当ですか!?」
ライト「ああ。地球をなくすとかいう連中をオレたちが何とかしたらな」
ルヴェリエ「早く大人になりたいなあ・・・」
ライト「みんなそう言うよな、なれるなれる。大人になるのに試験とか資格とかないからw」
ミグ「殿下は立派な大人になりたいとおっしゃってるんだよ。」
ルヴェリエ「ええ、お二人のような。」
ライト「ニャハハ!あんたのパイロットの腕ならいくらでもオレのような冒険家になれるで!なあ!」
「本当ですか?」
机の絵の海図に線を引き計算をするミグ「あまりこの男に憧れない方が・・・」
「どう言う意味や」
海図を持ってくるミグ「殿下。方角はこれであっていますか?」
コンパスを見るルヴェリエ「はい・・・」
ライト「また年代物やなあ。」
「これは私たち王族に仕える戦士に代々受け継がれてきたものだそうです。
きっとこの海路をたどれば、海王星を救ってくれる勇敢な戦士が・・・」
「そのコンパスの持ち主ってことやな。」
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