『80日間宇宙一周 From Earth with Love』脚本①

TIAのイワン・ウェイドへ緊急連絡
サオ・コーエン「こちらはMI8のサオ・コーエンだ。
長年のライバルにこんなメッセージを送るのは癪だが、サーペンタリウスはあまりにも強大な兵器を開発している。
連中はケチな武器商人じゃない。事態は相当逼迫しているぞ。
サーペンタリウスの情報はこちらが手に入れた。直接会って話したい。
気をつけてくれ、ウェイド!我々の敵はあまりに強大だ。」




ブリオーニのスーツを着こなしたハンサムな男がこちらに銃口を向け発砲する。
ふらつき倒れる・・・人型のターゲット。
射撃場の全景。
そこらじゅうに強力な武器が並んでいて、テロリストが試し撃ちしている。
ハンサムな男が振り返る「ま、悪かないな」
ピストルを武器商人に差し出すハンサム「ありがとう」
武器商人「どうだい、いい銃だろう?
地球連邦軍が採用した最新モデルだ。小型だが威力は絶大。こいつはどんな防弾チョッキも貫く。」
ハンサム「あいにくだが、そういうの持たない主義なんだ」
武器商人「TIAの諜報員が手ぶらってのはカッコ悪くねえか?」
ポケットからコインを取り出すハンサムな男「こいつがあるさ」
「1セント?」
コインをトスする男。射撃場を歩いていく。
訝しむ武器商人。ため息をついて武器を戻す。
武器商人「ま、1セントじゃ買えねえな」



TIA(地球情報局)本部
オペレーター「妨害衛星のシステムに侵入。
我が諜報員からの映像が入ってきました」
「現在地の座標を確認」
作戦室の巨大なマルチモニターを見上げるスタッフ。
作戦室にはTIA部長のフレミング、そして地球連邦軍の提督もいる。
フレア・バーンズ提督「あれは我が軍の銃だ。どうやって流れた?」
参謀と小声で話す提督。
フレミング「そのまま潜入を続けさせろ」
オペレーター「了解」



火星の衛星フォボスにあるサーペンタリウスの武器密売所
太陽系の各惑星で開発された大型の兵器が野外に並んでいる。
装甲車や戦車、といった特殊車両の他、冥王星の隕石迎撃用地対空ミサイル、海王星の海賊船、土星のミラージュも奥に見える。
兵器の周りにはテロリストやギャングがサザビーズのように兵器を競り落としている。
オークショニア「それでは次の商品です。ロット番号444番、無差別テロ用水爆ランチャー、最初の入札(ビッド)は90万ドルから!」
携帯電話を肩ではさみ、パドルを上げるテロリスト「100万ドルだ!」
「はい100万ドルが入った、110万ドルないか、110万ドル・・・!120万ドルないか!?
110万ドルでハンマープライス!」
武器密売所を直進するハンサムな男「水爆に無差別も差別もあるのかね・・・」



TIA本部
武器の競売所の映像が入ってくる。
モニターを眺める軍人「こいつはすごい・・・まるで太陽系中の兵器を集めた博物館だ」
フレミング「型番をデータと照合して確認させます」
コンソールを叩くオペレーター
提督「いや、もう十分だ。場所さえわかればあとはこちらで片付ける」
フレミング「待ってください。
あの武器の出処がわかればサーペンタリウスのシンジケートについてさらに情報が得られます。」
咳払いをする軍人たち
フレミング「なるほど・・・
ですが現地にはまだ諜報員が・・・」
提督「とばっちりを受けたくないなら早いところ引き上げさせろ。」
待機している部隊に命令を下す提督
「作戦開始だ。あそこにある兵器はひとつ残らず破壊しろ」
フレミングに向き直る提督「各惑星は平和への道を選んだ。
戦争の火種は早いうちに消さねばならん」
フレミング「全焼させて消すわけか」



死の商人のボスのテントにふらりと入る男。
死の商人「ボス、TIAのスパイのイワン・ウェイドさんが来てます」
武器密売を取り仕切るボス、グレネード・ブレイズ「ウェイド?」
テントに入ってくるイワン「久しぶりだなブレイズ、相変わらず悪人面してやがる」
ブレイズ「なんの用だウェイド。TIAの武器でも発注しに来たのか?」
イワン「いや、今日は人探しでね・・・
最近コーエンのやつこっちに顔見せてないか?」
ブレイズ「海王星のスパイか?見てねえな。
あの星はこの前クーデターが起こって大変だろう」
折りたたみ椅子を広げて座るイワン「おたくが売った武器でね・・・」
ブレイズ「作ってんのはお前らだろう。こっちは流通させてるだけ」
イワン「それ言われちゃかなわないな。」
ブレイズ「で、コーエンのやつに何かあったのか?」
イワン「姿を消した。
あいつ・・・お前らサーペンタリウスが秘密裏に開発しているっていう兵器を追っていたらしい。
ケチな武器商人じゃないってよ」
葉巻を吸うブレイズ「ふうん・・・」
イワンにも葉巻を差し出す。
葉巻に火をつけるイワン「話せる範囲でいい。その兵器について教えてくれないか。
今まで色々悪さ見逃してきただろブレイズ」
ブレイズ「非合法なのはそっちの仕事も一緒だろ・・・」
イワン「こっちとしても、あまり裏でこそこそ最終兵器作られちゃかなわないんだよ。
例えば宇宙をまるまる吹き飛ばしちゃうような奴とか・・・」
ブレイズの目を見つめるイワン。
ブレイズ「そんな兵器需要があるわけねえよ。
それにこっちも惑星連合の和平合意とかで商売あがったりなんだ。
外で競り落としている奴らも半分はミリタリーマニアになっちまった・・・時代は変わったんだ。
昔みてえに骨のある悪党も骨のある英雄もいなくなったってことさ」
「ほう・・・じゃあサーペンタリウスの最終兵器は存在しないんだな?」
「何度も言わせんな。俺たちはメーカーじゃねえ。マーケットだ。」



宇宙
火星のフォボスに接近する地球連邦軍の機動戦艦。
艦長「海兵隊の投下準備!」



テント
酒を酌み交わすイワンとブレイズ。
ブレイズ「お前も知ってるとおり、サーペンタリウスってのはもともとは貴族の社交クラブだ。
その歴史は古く、17世紀には会員制のコーヒーハウスで情報を交換し貿易を取り仕切っていた。
それが戦争の近代化に乗じて武器の売買にも手を出すようになったってわけだ」
イワン「・・・なるほど。てことは、ただの社交クラブなら私が入会してもいいわけだな」
ブレイズ「スパイの次はフィクサーに転職か?」
イワン「似たようなもんだろ。いくらで入会できる?」
ブレイズ「・・・値は張るぜ」
イワン「なあに経費で落ちるさ・・・」



艦長「攻撃開始」
フォボスに機動戦艦から次々に海兵隊の輸送コンテナが投下される。
荒々しく着陸するコンテナ船
コンテナ船から地球連邦軍の特殊部隊がアサルトアイフルを抱えながら飛び出してくる。
パニックを起こすテロリストたち。
火を噴くアサルトライフル。
特殊部隊隊長「全員皆殺しにしろ!!」
撃ち殺されるテロリスト。
武器密売所を制圧していく海兵隊。
応戦するテロリストたち。
ロケット砲で上空のコンテナ船を砲撃するテロリスト。
ロケット弾が命中し煙を吹き、回転しながら火薬庫につっこみ大爆発するコンテナ船。
ジープに乗り込むテロリスト。
第二第三のコンテナ船がフォボスに降下し、装甲車を落としていく。
装甲車が密輸された兵器を破壊していく。
戦闘用ヘリのガトリングガンが逃げ惑うテロリストを倒していく。



テント
イワン「なんだか外が騒がしいな・・・」
部下「ボス!位置が特定されました!地球連邦軍の総攻撃を受けています!」
ブレイズ「てめえ裏切ったな・・・!」
イワン「おい、人聞きの悪いこと言うなよ」
立ち上がってイワンに銃口を向けるブレイズ
ブレイズ「どういう真似だ。話してもらおうか」
座ったまま酒を注ぐイワン「まあ、落ち着けよ・・・オレがお前を軍に売ったっていうのか?」
ブレイズ「何が目的だウェイド。さもねえとこいつみてえになるぜ」
テントの奥に椅子に縛り付けられた男の死体が現れる。
イワン「コーエン・・・」
ブレイズ「こそこそ嗅ぎ回りやがって馬鹿な野郎だ。
今どきデータ通信なんてなにをやっても傍受されちまうのに・・・」
グラスを傾けるイワン「こりゃどっちもどっちだ」
ブレイズ「ウェイド、お前にはがっかりだぜ。てめえも同じ目に合わせてやるからな」
イワン「それはこっちのセリフだ」
撃たれる直前に足でテーブルを蹴飛ばしひっくり返すイワン。
銃弾がテーブルに当たる。
テーブルの影で一瞬イワンを見失うブレイズ「!」
イワン「キミも一杯どうだ?」
酒の瓶でブレイズの部下を思い切り殴りつける。
「ぎゃああああ!」
イワンに発砲するブレイズ「ウェイド!!」

その刹那付近で爆発が起きる。テントに火がつく。
振動でよろけるブレイズ。
椅子でブレイズを殴りつけるイワン。倒れるブレイズ。
ブレイズの銃を拾うイワン「確かにスパイが丸腰じゃカッコ悪いか・・・」
ブレイズに銃口を向けるイワン。
イワン「・・・こういうのも一度くらいは使ってみるかな」
ブレイズ「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
イワン「もうこうなっちまったもんは仕方がないさブレイズ。
こっちも同業者殺されて黙っているわけにはいかないんでね」
ブレイズ「よせ!こ・・・こいつは俺たちが見つける前から死んでたんだ!
本当だ!やったのは俺たちじゃねえ!!」
イワン「命乞いもここまで来ると感心するな。
では、お前らが作っている最終兵器について聞かせてもらおうか」
ブレイズ「オレはなにもしらねえ!」
背後から静かに近づいていたテロリストをとっさに撃つイワン
「確かにどんな防弾チョッキも貫くようだ」
ブレイズ「本当に最終兵器なんて知らねえ!信じてくれ!見逃してくれよ!」
イワン「・・・じゃあひとつゲームをしよう」
ブレイズ「え?」
コインを取り出すイワン。
イワン「表なら見逃してやる。コインに人生委ねるのも悪かないだろ」
コインをトスするイワン。



ジャケットを整えながらテントから出るイワン。
火の手が上がり阿鼻叫喚の密売所
無線(フレミング)「イワンか!?直ちにそこから脱出しろ。
小型核ミサイルで衛星ごと吹き飛ばす」
コンテナ船で引き上げていく特殊部隊
イワン「何考えてる!発射を中止させろ!!」
フレミング「すでに発射した。あと二分で到達する。軍のコンテナ船にピックアップしてもらえ!」
すでに全機離陸しているコンテナ船。
イワン「となりの奴に言っとけ!今度会ったらぶっ飛ばしてやるってな!」
横に立つ提督の方を向くフレミング。

慌てて近くの戦闘機(フェンリル)の方に駆け出すイワン。
フェンリルに近づいた瞬間、機体の燃料に火がつきフェンリルが爆発する。
イワン「くそ!!」
向きを変えてミラージュに乗り込むイワン
計器を素早く操作する「戦闘機の操縦は久しぶりだが・・・動いてくれよ」

オペレーター「ミサイル着弾まであと20秒・・・」

操縦桿を引くイワン「とっとと離陸しろこのじゃじゃ馬!!」
滑走路を速度を開けて進んでいくミラージュ。
離陸するミラージュ。
ミラージュの真横をかすめていくミサイル。
眼下で爆発する武器密売所。
衝撃で大きく揺れるミラージュ
命からがら核爆弾で燃えるフォボスから脱出するミラージュ
イワン「・・・本当に転職したいよ」

『80日間宇宙一周 From Earth with Love』登場人物

神よ 変えることのできるものについて、
それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
変えることのできないものについては、
それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。
そして、
変えることのできるものと、変えることのできないものとを、
識別する知恵を与えたまえ。


ミグ・チオルコフスキー
冥王星の由緒正しい軍人。所ジョージを敬愛。
かつては自分の人生を諦観していたが、今ではすっかり明るくなった。
自分とは遠い存在になってしまったライトに複雑な感情を抱いている。
さらにかつての恋人に再会して・・・

ライト・ケレリトゥス
宇宙一の発明家であり冒険家。空飛ぶばかやろう。
実はばかやろうどころか、地球では大人気の有名レーサーだった。
冥王星での著名な冒険家の失踪で地球は騒然としていた。
自由奔放な性格だが、ミグの幸せのために何ができるか考えることに・・・

イワン・ウェイド
サーペンタリウスを追うTIA所属のスパイ。自称「宇宙一嘘をついた男」
10年前冥王星でスパイ活動をしていた際、ミグと付き合っていた。
長年のスパイ稼業のせいでかなりニヒルな性格だが今も腕は立つ。
ベレッタの代わりに常に“幸運のコイン”を持ち歩き、重要な決断はコインで決めてしまう。
それが何を信じていいかわからないスパイの世界で生き残る彼なりの知恵だった。

イルミナ・ヴェルヌ
宇宙最高IQを持つ生物学者。
ライトの幼馴染で、幼い頃ともにおとなしい性格だったライトとよく遊んでいた。
現在は生物兵器開発の容疑でトランキュリティ月面刑務所に服役中。
見た目は薄幸そうな美少女だがスタータブレットも一目置くほどの高い知能指数を持つ“怪物”。幼い頃からライトにほのかな恋心を抱き続けている。

ヘルマン・ゴダード
ロケットエンジン開発のプロ。かなりの高齢でライトの師匠。イエガーのテスト機「Xー零」の設計者。
理論上不可能と言われる超光速飛行を研究し続け、皮肉にも壊したロケットの数でギネス記録を作ってしまった変人。近年は資金繰りに行き詰まり開店休業状態。

ダグ・リリエンタール
構造担当。こちらも高齢。ゴダートとは悪友同志。

ロン・クーロン
ライトの馴染みの小さな電気屋の主人。電気系統のプロ。

トリエステ・ピカール博士
太陽系で暗躍し続ける宇宙物理学者。ミスターアップルに仕えるサーペンタリウスの幹部。

アイザック・イエガー
伝説のテストパイロット。宇宙最速記録保持者。ライトやレオナの憧れの存在。

レオナ・イアハート
ライトの幼馴染で恋人。天真爛漫な女の子。後に地球連邦軍初の女性パイロットになる。

ヴィンセント・レイセオン
ライトの幼馴染であり、ライバルの発明家。ただ発明家の才能よりは会社経営の才能の方が高い。

ミュウ・カミオカ
ライトの美人マネージャー。マスコミ対策の専門家。

ルナ・マイヤース
月出身の女性レーサー。

ルヴェリエ公爵
アラゴの弟。ライトとミグを尊敬している。幼いが礼儀正しく大人顔負けの知識と行動力がある。

アリエル・スカイ
天王星の人気アイドル。明るく優しい性格。売れない時代にライトに世話になった。

ジェイソン・フレミング
TIA(地球情報局)のイワンの上司。イワンの腕を信頼しているが強大な圧力がかかる。
彼も元は現場型で冥王星ではイワンとコンビを組んでいた。

フレア・バーンズ提督
地球連邦軍の提督。功利主義的な考え方の持ち主。

ハロルド(ハル)・ケプラー
惑星連合放送の敏腕プロデューサー。スピード主義で裏を取らずに面白ニュースを無責任に電波に乗せてしまう。「報道は娯楽だ」がモットー。

サオ・コーエン
海王星のスパイ。イワンとはライバル関係であり友人でもあった。

グレネード・ブレイズ
サーペンタリウスの幹部。火星の衛星フォボスで武器密売をする死の商人の元締め。

ルチアーノ・ロッソ
サーペンタリウスの幹部で火星マフィアの大ボス。
火星で行われるギャンブルは裏で彼がほとんど取り仕切っている。

ハワード・センチネル大統領
地球連邦のトップ。積極的な反移民政策が支持されている大統領。

アラゴ国王
海王星のトップ。頭はきれるが、かなり疑い深い性格。ルヴェリエの兄。

ンゴロ・アルベド議長
木星のトップ。思慮ぶかい人格者。

バーニー・オルクス
冥王星人。小惑星解体のプロでミグの同僚。エンジニア出身で機械にも詳しい。

デニス・エヴァンジェリスタ
ミグの友人の天体物理学者。宇宙の専門家として公聴会に召還される。

キャプテンロジャー
ライトの友人の宇宙海賊。ノア計画を実行するため宇宙船を集める。

ナッシュ・ストライカー
冥王星人。百戦錬磨の軍人でかつてのミグの上官。

青ヒゲ
謎のオカマ。

マーガレット・アレゴリー
ライトの母親。大学教授。かなりマイペース。

ゲオルグ警部
天王星人。サーペンタリウスを長年追っている、今年定年のベテラン警官。捜査は足で稼ぐタイプ。

ミスターアップル
某タブレットに激似のサーペンタリウスの最高大総監。ピコピコうるさい。
椅子に立てかけてあるが、よく倒れる。
すべての時間軸を完全に演算しており、人間の自由意思について興味を持つ。
正式名称は天使ガブリエルで、月面から発掘されたスタータブレット。

火星
マスメディアとモータースポーツの星。
昔から賭け事が盛んで、それに伴い数学や物理学における確率解釈が発展した。

サーペンタリウス
死の商人。
その実態は政治家、貴族、科学者、芸術家たちで構成された、太陽系を影で操る秘密結社。歴史の影にサーペンタリウスあり。宇宙最強の武器開発を企み、そのためには手段を選ばない。

ディスカバリー計画
月面の宇宙観測所で観測された謎の天体を調査するために、恒星間ロケットを開発し、アルファケンタウルス星まで有人飛行を試みた計画。
地球連邦から多額の予算が降り、ゴダートが豊富な資金の元「X-零」を完成させた。

ジオメトリカルホウサンチュウ
熱エネルギーを用いて幾何学的な骨格を作る不思議な生き物。太陽系の惑星がどのように形成されたかを知る上で重要な生物でイルミナが研究していた。

ブラックホール
運動エネルギーを失った銀河は星星に働く重力によって潰れてしまう。
その結果できる暗黒の領域。クエーサーのエネルギー源。
強力な重力で物質を吸い込み、そこで生まれる運動エネルギーを光やX線として放射している。
宇宙で最も合理的なダムだと言われる。

クエーサー
宇宙に強力な光を撒き散らす小さな星。ただそのエネルギー値は銀河数百個分にも及ぶ。

宇宙温暖化問題
宇宙全体は徐々に収縮しており、それに伴い銀河どうしが近づき平均温度が上がっていくという仮説。何年か前にマスコミが大々的に取り上げ、宇宙に熱源を増やさないという国際的な取り決めができた。が、宇宙温暖化にどれだけ人為的な活動が影響しているのかはわかっていない。
宇宙全体と比較して太陽系の及ぼす影響力はほぼ0だという否定的な意見もあるが・・・

フレッド・ホイル銀河
ほかの銀河団に移動し、そこで銀河のエネルギーを奪い取ってブラックホールに変え、宇宙にボイド(虚無)を開ける捕食性の銀河。

ライトアロー号
リンドバーグ号をさらに改造したライトの最新機。
超光速航行を可能にするリニアエクシードエンジンがとりつけられた。

リンカーン

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆」

 ようこそ。皆さんの下院です。

 『戦火の馬』に続く映画の天才スピルバーグ監督の歴史映画。一言で言って圧倒!!もうこの人ハナから娯楽映画の文脈で作ってないというか・・・w自分の人生のっけて撮ってるからパワーが違う(結構チャチャっと撮っちゃうらしいのにね)。
 ずっと『アイアンマン3』とこれ、どっち見ようか迷ってたんですが、vicさんが「イマイチ面白い映画じゃなかった」って言ってて、さらに「この映画の何が面白いのか教えて」とか言われたから、これはもう見に行くしかないってなって急遽レイトショーで鑑賞!踏ん切りがついたw
 確かに「面白い映画」っていう感じではないんだけど、「素晴らしい映画」って言えばいいのかな・・・文学的というか・・・

 とにかく強く感じたのは、アメリカ人って本当アメリカ愛してるってことだよね。日本ってこういう一政治家を題材にした映画って聞かないじゃん。
 とはいえ作中描かれるリンカーン大統領は『ナイトミュージアム2』のような決して超人的な英雄じゃない。石でもない。

 あの演説は凄かった。
 内容は聞こえた?
 あんまり。


 すっごいシビアなジレンマに葛藤する、ごく普通の政治家として歴史的な偉人リンカーン大統領を描いている。これ知り合いの政治家の人とかと見に行けば絶対面白いよねw泣くんじゃないかな政治家の人w
 私も泣きそうになっちゃったしw「わかる!わかるぞ」ってwでも立場上なかなか愚痴れないもんね。政治家が「日本の政治がダメなのはお前ら国民のせいだろ」とは口が裂けても絶対言えないしw

 今思えば当たり前だろってことを当たり前にするのがどれだけ大変か。アメリカで国民皆保険を実現させたら絶対オバマさんはこんな感じで映画になってるよね。『OBAMA』みたいな。監督はJ・J・エイブラムスなのかなwでもあの人スピさんのSFオタク魂は模倣できるけどこういうのどうなんだろ?作れない気がするw

 ・・・で、これって今の日本でも見られるべき大作だと思う。私たちって人生を決めかねるような重要な選択を他人に任せて、文句ばっかり言ってるけど、結局それは誰かが決めてくれてるんだよね。責任押し付けてるだけで。
 この映画では現状に即していないきれいごとの正論を「コンパスの針」に例えていたんだけど、この比喩ってすごいうまいよね。
 進むべき方角は示してくれるけど、その最短距離のあいだに谷や沼があることをコンパスは教えてくれないっていうw沼に落ちちゃったらどうするんだって。
 結局正論でどうにかなると思っている人は、あまり責任ある立場に立ったことがない人なんじゃないか。でも今って民主主義だからね。天つばなんだよね。

 しかし日本って何で政治の映画とかドラマって当たらないんだろう。三谷幸喜さんの『総理と呼ばないで』とか風刺が効いててすっごい好きだったのに、視聴率取れないんだよな。難しいのかな?映画館でも「よくわからなかった」とか言ってた人いたし。
 それを見越したのか、冒頭で特別にスピさんが「ハロージャパン」って南北戦争の背景を説明してくれたんだけどねw
 確かにアメリカ史の本にも書いてあるんだけど、当時奴隷反対してたの共和党勢力なんだよね。すっごいややこしいんだけど。民主党の方が民主的じゃないっていうwんで田中角栄ばりの多数派工作やるんだけどさw
 あの人って「正直者のエイブ」とか言われてるくらいだから、ああいう汚いことやるのってけっこう精神的に辛かったんじゃないかな。変な夢みてるし。

 そもそも南北戦争の早期終結と修正憲法13条の可決がなんでアンビバレントな問題になるのか分からなかったけど、映画を見て納得。あれはすっごい勉強になった。
 政治的な決断をうやむやにしちゃうのって日本の政治家の得意技だって思ってたけどアメリカも似たようなもんだったんだね。
 でもこれで修正13条が通らなかったら、お前ら一体何のために南北戦争始めたんだってことになっちゃうじゃんwここまで来たらやり遂げないとっていうのがあったんだろうね。妥協はできないぞっていう。
 そのジレンマを演出する要素として息子の軍への志願っていうのがあったわけで、すっごいスピさん大統領を追い込んでくんだよねw
 最後の方で温厚な大統領が「いいかげんにしろ!」って怒るのは面白かったなあ。保身のことばっかり考えてたりするからねw

 最近の研究では、マクロ経済学的には南部の奴隷制ってもともと非合理的で割に合わなかったって説もあるらしいんだけど、そんなこと当時の人は知ったこっちゃないもんね。
 生活という利権が絡んでいるんだから大変だよな。
 しがらみを切り捨てて意見を変えた政治家がエライって感じで演出されてるけど裏切られた方たまったもんじゃないよねwオレの今までの根回しはなんだったんだっていうw
 何人かはポストであっさり寝返ったけどwこういう政治家が一番信用ならないんじゃないか?wwでもそういう強欲な人のおかげでリンカーン大統領は歴史に残る偉業を達成できたわけで・・・歴史って面白いよなあ。
 あと作中に出てくるロビイスト…つーかロビイストってああいう感じなんだwあれやってることフィクサーだよね?w

 それとスピさんお得意の冒頭の戦場のシーン。あの時代ってまだ機関銃とかないんだよね。だからプロ野球の乱闘みたいなことになってて意外と新鮮だった。考証通りなんだけどw
 時代考証と言えば、大統領の末っ子が「フィンチの嘴は環境によって変わるんだって」とか言ってたんだけど、時代的にはあの時イギリスでは進化論が物議を醸してたのかって。1861年から南北戦争なんだけど『種の起源』の出版は1858年だからあの子はかなりタイムリーなネタを喋ってたことにw

 まあとにかくトミー・リー・ジョーンズさんがかっこよかったって事だよwあいつ狡いよなあw美味しいところ持ってっちゃって。
 ネタバレになっちゃうからよすけど、あんなことされたら惚れちゃうよね。信念を曲げれない頑固者って言うと日本だと誰になるんだろう・・・亀井静香さん??

ご愛読ありがとうございました

 しばらく(たぶん1年)サイトの漫画コーナーを閉めることになりました。今後はYELLに発表することにします。脚本は、これまで通りこのブログにて公開します。
 またサイトにアップされた作品の続き(『走れシンデレラ』など)は、公開アドレスをこのブログで発表するかもしれません。とりあえずトップページから行けなくなったので、よろしくお願いします。

アメリカのスーパーヒーローコミックはなくならないな

 日比谷公園の図書館で行われた小野耕世氏講演イベント「アメリカンコミック最前線 ~アメリカンコミックから見る文化の違い~」を聴いてきました。
 ここのところ新しい仕事を覚えたり、脚本が行き詰まってたり、その内容がトゥモローネバーダイにかぶってたりと、いろいろあって多少疲れていたのですが、こういう機会はなかなかないので参加してきました。
 以下はそのメモ。聞き取り間違いの可能性もあるのでご了承ください。

 コミックストリップ(アメリカの新聞掲載漫画)は19世紀末から存在。
 1948年には米軍から流れて日本でも出版。
 アメリカはほとんど地方紙で、日本のような全国紙は少ない。ちなみにNYタイムズには漫画は無し。

 コミックストリップは、子供(特に男の子)だけを対象にしたヨーロッパの漫画と異なり、老若男女すべての読者をターゲットに描かれる。ミッキーやスター・ウォーズなども掲載。
 また人気のある古い作品が新聞に再掲載されることもある。
 著作権はシンジケート持ち。

 アメコミがカラーなのは、もともと多色刷りの日曜版の新聞で掲載が始まったから。その後白黒印刷の平日版にも掲載、アメリカの漫画はカラーが最初でありそれが慣例となった。

 コミックブックは1930年代に子供向けのスーパーヒーロー漫画として誕生。全ページカラー。
 またコミックストリップを再録したコミックブックもできる。その後戦争に突入、黄金時代を迎える。
 コミックブックは月刊もしくは隔月で新聞のスタンドに売っており、本屋では扱っていなかった(本とみなされていなかった)。

 小野さんはSF作家の星新一さんから個人的にコミックブックを譲ってもらったらしい。いくつかは小野さんのコレクションとかぶるものもあったが、初期のXメンなど持っていないものもあった。星先生はSFのショートショートのネタのヒントに、子供向けなのに話の出来がいいコミックブックを読んでいたらしい。

 戦後の原子力の描き方。『子どもの科学』『児童百科事典』などで明るい未来の象徴として取り上げられた。
 1970年代には『世界の原子力行政』という原子力の光と影(原潜の沈没および政府のもみ消し)を取り上げた本が出版される。

 スーパーマンで描かれる世界も戦後では変わった。平和の時代となりSF性は徐々に薄れていく。宇宙などにはいかず、倒すのはアメリカの犯罪者(たとえロボットが敵でも裏にいるのは普通の人間)。
 また目が見えずスーパーマンの存在を信じない少女とスーパーマンの交流という、キャラクターの心情を掘り下げたドラマ性の高いエピソードも作られた。
 この1950年代をシルバーエイジという。

 1960年代に登場した『マイティ・ソー』はさらに善悪について問いを投げかけた。こういったマーベルのコミックブックは70年代に出版された『指輪物語』に夢中になった学生たちが読んでいた。

 1970年代漫画の専門店が登場。NYには75年出店。アメリカの出版業界は再版制度ではなく買取製なので、出版予告を破ると裁判沙汰になってしまう。よって原稿が落ちるということはありえない。

 日本の漫画は1930年代に100ページ以上のハードカバーの漫画本(のらくろ)を出版。これは世界初。1980年代には『AKIRA』がアメリカに進出する際にコンピュータ着色された歴史がある。

 日本の漫画は実在の政治家などを出さずあまり時事的なものを取り上げない。その反面当時の風俗に近すぎ、時代が過ぎると急に色あせてしまう作品が多い。
 またアメリカでは商業的に失敗でもシンジケートが押し続ける作品もある。
 小野さん一押しのクリス・ウェアーの『ビルディング・ストーリー』などは箱に入ったリーフレットや新聞、小冊子などで構成された実験的な漫画作品で、これは日本では商業ベースにまず乗らないという。
 また『ジミーコリガン』は、スーパーマンを演じた役者の子供時代から自殺するまでを描いた叙情性のある作品。もちろん『スーパーゴッズ』もオススメ!



 ・・・というわけで、今回も例のごとくパキPさんと行ったんですが、講演のあと喫茶店でいろいろと相談とか愚痴に突き合わせちゃって、なんか近年稀にみるみっともなさ、いやいつもみっともないけど、今回は特に疲れてた上にハイになってたらしい。冬眠シェルターがあったら入りたいよ。
 でもツイッターでは難しい微妙な言葉のニュアンスが伝わったらしくて、それだけはよかった。文字でしかやり取りができないツイッターではしばしばロジックとロジックのぶつかり合いになりがちだけど、冷静客観なはずのロジックがなぜ平行線をたどったり、感情的な水掛け論になりがちかの話をしたんだ。
 つまりロジックのレベルとモチベーションのレベルが違うという。私の漫画を作るスタンスもどう考えても二律背反で、パキPさんに「それはごまかしですよ~」とか言われちゃったんだけど、クリエイティブな活動のすべてをロジックでは説明しきれないし、ものを作るモチベーションを上げるのは感情レベルの話だからロジックでは奮い立たないんだっていう。自然科学というロジックの原動力になったのはキリスト教なんだってことなんだけどね。
 こういう微妙な細部って文字だけじゃやっぱり伝わってくれないんだなあってつくづく思った。

 それとコミックコードの時期が意外と早かったのは驚いた。これについては本で調べたほうがいいなあ。なんでアメリカがコミックを規制したのかいまいち見えてないから(日本の方も見えてないけど)。
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