『80日間宇宙一周 CRIMSON WING』脚本⑥

航空ショー
ガリレオガリレイ国際空港の広大なスペースに数々の新型戦闘機が展示されている。
新型機のそばではコンパニオンが笑顔で手を振っている。
マスコミのフラッシュがたかれる。

プロメテウス社のブースにエドが駆け込んでくる。
エド「社長大変です!昨夜飛び立ったミラージュが帰還していません・・・!」
ヴィン「迷子になっちゃったのか?」
ミグ「ライトは?見つかったのか?」
エド「いえ・・・途中から通信が途絶えて・・・」
ヴィン「バカな犬みたいな飛行機だな。」
エド「だから私は反対したんです・・・!航空ショーでのプレゼンはどうするんです!?」
ヴィン「まあ、どのみち制御できない欠陥品だったんだから、それがショーの直前に分かってよかったじゃん。そんなん飛ばしても恥かくだけだったよ・・・」
エド「そんな・・・私のプロジェクトチームは欠陥品など・・・」
ヴィン「でも帰ってこなかったんだろ?今は製造物責任法って言ってうるせえから。」
エド「・・・・・・。」
ヴィン「そんなに落ち込むなって。在庫はほとんどサーペンタリウスに押し付けちゃったわけだしさ」
ミグ「サーペンタリウス!?・・・あの戦闘機を死の商人に売りつけたんですか?
それはテロリストや犯罪組織に武器を流すことと一緒ですよ?」
ヴィン「格安でね。あいつら怒ってるだろうな・・・」
ミグ「欠陥品でよかったって言うんですか?」
ヴィン「そんなに怖い顔するなよミグ・・・こっちだって社員に給料払わなきゃいけないんだから・・・」
ミグ「もしサーペンタリウスがその戦闘機を改造したら?」
ヴィン「・・・あいつらにそんな技術ないよな?」
エド「私は知りませんよ・・・」
呆れるミグ「信じられない・・・」

プロメテウスのブースにやってくる軍服姿の将軍
アトラス将軍「やあ、ヴィン。昨日のパーティはまいったよ・・・」
ヴィン「やべえこういう時にかぎって・・・」
エド「どうするんですか?」
ヴィン「なんとか誤魔化せ」
エド「無茶言わないでください、こんなにマスコミがいては隠しとおせませんよ。」
ヴィン「あのポンコツを作ったのはお前だろうが・・・!」
将軍「しかし、キミの戦闘機は素晴らしいな、殺し屋に狙われるだけだ」
ヴィン「え?」
将軍「昨夜遅くに基地にミラージュから一報が入ったよ。」
テレックスの用紙を見せる将軍

「EKIA(作戦で敵を殺害):ニコライ・ベルゲルミル(緋色の旅団総帥)」

将軍「あっさり緋色の旅団のトップを探し出し抹殺するとは、さすがだな。」
テレックスを怪訝な顔で見るヴィン「・・・・・?(エドの方を向いて)お前?」
首を振るエド
将軍「我々としては早くミラージュの現物を見たくて仕方がないよ。
実地飛行でその性能をこの目で見ればすぐにでも軍に働きかけて20000機発注しよう」
ヴィン「二万・・・!?」
将軍「言っただろ?我が軍はいい兵器には金は出し惜しみしない。
・・・でミラージュはどこだね?」
ヴィン「こっちとしても売ってやりたいんだけど、あのミラージュには欠陥が・・・」
空を指差す将軍「あ、あれか!」
振り返るヴィン「え?」

航空ショーの会場に飛行してくるミラージュ
エド「帰ってきた・・・」
ヴィン「おい、信号出して着陸させろ」
ブースの奥に駆けていくエド「はい・・・!」

空港の上空では別の会社の戦闘機F88フェンリルが編隊を組んでアクロバット飛行をしている。
綺麗な飛行機雲を残す編隊。
観客が歓声を上げる。
フェンリルの編隊に接近するミラージュ

観客席
双眼鏡を掴んで空を見上げるミグ「なにか様子が変だ・・・」
ミグ「観客を逃がしたほうがいい・・・」
シャンパンを飲みながら真紅の機体をみつめる将軍「なにを言ってるんだ?」
フェンリルの部隊に速度を上げて向かっていくミラージュ。
観客「なんだあの赤い戦闘機?」
ミラージュの編隊に真正面から突っ込んでいく。
「ぶつかる・・・!」

すれ違いざまに編隊の一機を切り裂くミラージュ
翼がへし折れ回転しながら墜落していくフェンリル。
滑走路に落ちて爆発する。

将軍「今年のショーは激しいな」
戦慄するミグ「いいや、そうじゃない・・・」

フェンリルのパイロット「なんだあれは!?」
ミラージュがミサイルでもう一機のフェンリルを吹き飛ばす。
パイロット「暴走してる!全機散開!戦闘準備!」
フェンリルが編隊を崩しミラージュとドッグファイトをはじめる。
フェンリルの攻撃をきりもみ回転であっさりかわし、次々にフェンリルを撃ち落としていくミラージュ。
パイロット「なんてやつだ!歯が立たない・・・!」
撃墜されたフェンリルの機体が観客席のほうへ突っ込んでくる。
大爆発。場内に悲鳴が上がる。

駆け出すミグ「ほら言わんこっちゃない・・・!」

プロメテウス社のブース
将軍「おいミラージュの性能はもう十分わかった、やめさせろ!」
ヴィン「さっきからやってますよ・・・」
ヘッドセットを付けるエド「ダメです制御できません!」

フェンリルの最後の一機を撃ち落とすミラージュ。
攻撃目標を地上に展示されている他社の新型戦闘機に移しミサイルで次々に吹き飛ばしていく。
爆音とともに火球が開く。逃げ惑う観客。

ヴィン「なんとかしろ!あんな真似したらオレたちが操縦しているって思われるだろ!」
エド「そんなこと言われてもシステムが暴走してるんだ!」
ミグ(インカム)「・・・イエーガーはどこにある?」
ヴィン「ブースの裏のC滑走路にあるけど・・・なにするつもりだ?」
ミグ「そいつでミラージュを止めてみる」
エド「打ち落とすんですか!?」
ミグ「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!このままじゃたくさんの人が殺される!」

会場の新型戦闘機を破壊し尽くしたミラージュ
コックピットの眼球状のカメラで次の標的を探す。
空港に着陸しようとするエアバスにミサイルの照準を合わせるミラージュ。
悲鳴を上げる乗客。

エアバスの前にイエーガーが立ちはだかる
ミグ「やめろ!私が相手だ!」
ミラージュがターゲットを変更しイエーガーに襲い掛かってくる。
イエーガーに機銃で集中砲火を浴びせるミラージュ
イエーガーの機体は頑丈だがどんどんゆがんでいく。
ミグ「ぐわああああ!」

地上
ヴィン「・・・なにをやってるんだ・・・」
エド「あの人、エアバスの盾になろうとしてるんです・・・」

まったく歯が立たないイエーガー号
しかし旅客機を守るために必死に盾になる
ミサイルでトドメを刺そうとするミラージュ

ミラージュのコンピューター
「敵機(UNKNOWN)の勝つ確率:0%・・・パイロットの行動:意味不明」

戸惑うミラージュ。
ミグにトドメを刺さずに航空ショーから飛び去っていく
ミグ「・・・撃たなかった・・・??」



航空ショーに急行するライトのリンドバーグ号。
航空ショーの会場の空港が紅く燃えているのに気づく。
ライト「なんてこった・・・」

火の手が上がるガリレオガリレイ国際空港。
消防車が大挙して押し寄せ消火、救助活動にあたっている。
警察の事情聴取を受けるヴィン
ヴィン「あれはサーペンタリウスがシステムを勝手に改造したんです。我が社の製品には何の問題もありません。
例えば誰かがテレビのブラウン管を修理しようとして感電して死んだとする、それは注意書きを無視して勝手にテレビを分解したやつの責任だ。会社はそこまでの責任を負う義務はない。」
警官「お話はわかりました・・・しかし・・・」
ヴィン「なにか?」
警官「戦闘機がそんなたやすく改造できちゃまずくないですか?ミニ四駆じゃないんですから」
ヴィン「サーペンタリウスの技術力をなめるな!」
警官「は、すいません・・・」
リンドバーグ号が滑走路に着陸するのに気づくヴィン「あ・・・続きはウェブで」
警官「ウェブじゃ困りますよ!」

リンドバーグ号から降りるライト
テントで救護班に手当を受けているミグもライトに気づく
腕に包帯を巻いてもらうミグ「ライト・・・!?生きてたんだ・・・!」
立ち上がるミグ
救護班「あ、動かないで」
ライトに駆け出すミグ「ライト!」

ライトに歩み寄るヴィン「ライト~!はっはっは、お前生きていたのか!よく緋色の旅団から逃げてきたな!」
ライト「緋色の旅団は壊滅したで。オレが作ったベガでな・・・」
ヴィン「へ?」

ヴィンを殴るライト
地面に倒れるヴィン。
その様子を見て立ち止まるミグ「!」

頬を押さえるヴィン「い・・・いきなりなにするんだ!!」
ライト「・・・・・・あの機体はどういうつもりや・・・」
ヴィン「どういうつもりって・・・ああ、お前が捨てたベガの設計図を応用したんだ」
ライト「・・・お前って最低やな、それがどういうことかわかっとんのか!?」
ヴィン「そんな怒らなくてもいいじゃないか・・・初恋の彼女に作ってやった飛行機を勝手に改造したのは悪かったよ・・・」
ライト「ああそうや。オレがどんな思いであれを作ったかなんてお前にはわからんやろ。
オレはな、戦争なんてどうでもいい、ただレオナに生きて帰ってきて欲しい一心でベガを設計したんや!」
「だからなんなんだよ・・・」
「まだわからんのか?このオレがどんな手段を使っても絶対に撃墜されないように作ったのがベガやったんや・・・レオナはたった一機で敵の前線基地を壊滅させたんやぞ。
それが暴走してたくさんの人間を殺した・・・周りを見ろ!」

炎に包まれる航空ショーの会場

「目を覚ませヴィン。お前の商売とやらで起きている現実がこれや。」
・・・だがオレたちはこの事態をなんとかする責任があるんちゃうんか?」
ヴィン「オレたち?」
「オレとお前で作った会社やろ・・・」
ヴィン「ライト・・・」

恐る恐るライトに近づくミグ「ライト・・・」
傷ついたミグに気づくライト「・・・・・・。」
いたたまれなくなるライト。
ミグを抱きしめて泣くライト「すまん・・・ミグ・・・!」
ミグ「・・・おかえり・・・」

『80日間宇宙一周 CRIMSON WING』脚本⑤

プロメテウスタワー
航空機の格納バンカー
エド「これがSX32ミラージュです・・・」
ヴィン「全然売れなかったけどな」
ステップに上がってコックピットにあたる部分を覗くミグ。
ミグ「これが・・・本当にコックピットがないんですね・・・」
ヴィン「空飛ぶコンピューターだよ。
ある腕利きパイロットのフライトデータがインストールされているだけ。」

ステップからヴィンを見下ろすミグ「ではその腕利きに緋色の旅団の隠れ家を捜索させましょう・・・
もともと緋色の旅団を倒すために作った戦闘機なんでしょう?」
ヴィン「そうか・・・これで緋色の旅団からライトを救い出せばミラージュの最高のプレゼンになるな」
不安そうなエド「しかし・・・まだこのミラージュは最終調整が・・・」
ヴィン「なあに航空ショーまでには帰ってこさせるさ、戦闘証明だよ。」
エド「テロリストに撃ち落とされたら・・・?」
ヴィン「そんなことないよ、こいつの設計を誰がしたと思う?
ライト・ケレリトゥスだよ」
ミグ「・・・え?ライトが兵器を作ってたんですか?」
ヴィン「たった一度だけね。それがこいつだ。」

コンピューターのキーボードを叩くエド「索敵システム起動・・・目標緋色の旅団・・・」
ミラージュのヘッドライトが灯りふわりと垂直離陸する。
格納庫から飛んでいくミラージュ

社長室
ネクタイを取ってYシャツの襟を広げるヴィン
「あとは待つだけ。さて・・・暇だな・・・なにか話でもしようか。」
ミグ「あのライトが戦闘機を設計していたなんて・・・」
ミグに写真を渡すヴィン「それだけじゃないよ。」

ライトとヴィンの写真。二人とも若い。

ワインを開けるヴィン「19歳のころ、亡命先の地球で出会ったライトとふたりで立ち上げたんだ・・・会社といっても最初はウチのガレージだったけれどね。そこでライトはさまざまな発明をした。
電気水道ガスの供給網の効率化、低価格の自家用旅客機、燃料なしで永遠に電気を作れる発電システム、すべての病気やケガを治癒できる医療機器・・・あいつがアイディアを出して設計し、オレがその資金を集めた。」
ミグ「・・・・・・。」
ヴィン「しかしライトはあるとき急にスランプに陥った。アイディアが何も出なくなったんだ。
もしかしたら恋人を戦争で失ったことが原因だったのかもしれない」
ミグ「恋人・・・?」
写真を指差すヴィン「彼女さ。とびっきりの美女でとびっきりのじゃじゃ馬。あんたによく似てたよ」
ミグ「・・・それでライトは?」
ソファに座るヴィン「それ以来あいつは自分の楽しみのためにしか発明をしなくなった。
ライトフライヤー号とかいう子供のガラクタのような宇宙船を作って勝手に宇宙へ飛んで行っちまったよ。
相変わらず自由で無責任なやつだよ・・・」
写真の女性を見つめるミグ。
ライトとヴィンの肩に腕を乗せて笑うレオナ・イアハートは太陽のように情熱的な女性に見える。
ワイングラスを傾けてつぶやくヴィン「神様って不公平だよな・・・」
写真から目を離してヴィンの方に目をやるミグ「え?」
ヴィン「オレにはあいつの10分の1も才能がない・・・」



ハイペリオン教会
礼拝堂には万里の長城が描かれた巨大なステンドグラスが並んでいる。
星の光によってうっすらと光るステンドグラスを見上げるライトとスカーレット。
ライト「見事なもんやな・・・」
スカーレット「この星の万里の長城は、死を恐れた始皇帝サタンが女神キュベレイのお告げを受けて他の星の侵攻を防ぐために築いた防壁なの・・・」
ライト「ああ、ガイドブックに書いてあった」
「では万里の長城の伝説には続きがあるのを知ってる?」
「いや・・・」
「実は万里の長城の正体は残虐な暴君サタンをこの星に閉じ込めるための結界だったの。
それを知り怒り狂ったサタンは女神を殺しその肉を食らい、ついに不老不死となった・・・
王が神に祈ることはなくなった。自身が神の力を得たのだから。」
ステンドグラスを見上げるライト「ふ~ん・・・」
「しかし・・・やがてサタンを知る者が誰もいなくなったとき、サタンは自分に与えられた力が恐ろしい罰であったことを知った。鳥かごの中の永遠の孤独。
・・・プロメテウス社がやっているのはこれと同じよ。」

ニコライが礼拝堂に入ってくる。
ニコライ「人生が全て金に還元されてしまった。
この星では文字通り金があるだけ長く生きられる、金があれば幸せだと・・・
だが果たしてそれは幸せなことなのだろうか?
実際土星の富裕層は預金通帳の残高を見て常に不安と恐怖に怯えている。
いくら金があっても満たされない。いつか破産して命脈尽きるんじゃないかと悲観している。
連中の頭にはいかにたくさんの金をむしり取るかしかない。
死なないことに頭がいっぱいで生き抜くことを忘れてしまった。
・・・それはもう人間じゃないんじゃないか・・・?」
ライト「♪生きているだけで、死んでいる」
スカーレット「?」
ライト「あ、知らない?ミスタージョージ・トコロっていう有名なアーティスト」
スカーレット「バカバカしい・・・」
ライト「・・・で、このサタンはその後どうしたんやろな・・・」
スカーレット「え?」
ライト「やっぱりもう一度神様に祈ったんちゃうかな・・・」
スカーレット「・・・・・・。」

ステンドグラスに描かれた万里の長城の色が変わる。
ステンドグラスの後ろの大きな影に気づくライト
ライト「!」

スカーレットを押し倒すライト「危ない!!」
スカーレット「きゃっ」

その直後ステンドグラスの向こうから巨大なステルス戦闘機が機銃掃射してくる。
粉々になるステンドグラス。
荘厳な礼拝堂が吹き飛んでいく。
ライト「ふせろじいさん!!」
ニコライ「ミラージュ・・・!」

機銃掃射をやめ旋回し教会の裏に回り込むミラージュ。
とあるポイントを定め空中で静止する。

ライト「墓地の上で止まったで、何をするつもりや?」
何かに気づくスカーレット「ハッ」
教会から飛び出していくニコライ「いかん!!」
ライト「じいさん!!」

教会の裏の墓地
ミラージュの方へかけていくニコライ「やめろ~~~!やめんか~~~!!!」
機体から姿勢制御のジェットを噴射させて空中で位置を固定するミラージュ

ニコライを追いかけるスカーレット「首領!危険です!」
ミラージュの真下で腕を振るニコライ「やめてくれ!!この下には貧しい民が・・・!!」
ライト「!ドヤ街の上なのか!」

ニコライの方へ駆け出すスカーレットを止めるライト
スカーレット「はなして!!」
ライト「あかん!もう間に合わへん!!」

墓地の上から真下に向けてパイルバンカーミサイルを発射するミラージュ
地面が陥没し地下で大爆発が起こる。
二人に爆風が襲いかかる。
スカーレット「首領~~~!!」
ライト「じいさん・・・!」

ニコライのいた場所にはクレーターが残っている。
くるりと向きを変え、引き返していくミラージュ。
カタコンベのドヤ街は一瞬で消滅してしまった。

夜の闇に消えていくミラージュの影を見つめるライト「あの機体は・・・」
がくりと膝をつき泣き出すスカーレット「ひどすぎる・・・」
スカーレットに近づくライト「なあ・・・」
肩を震わせるスカーレット「近づかないで・・・!」



焼け野原となったハイペリオン教会
墓標を作るスカーレットとライト。
スカーレット「これから宇宙の至る所で同じことが起きるわ・・・もうミラージュは誰にも止められない・・・この星はまた同じことを繰り返すんだ・・・」
ライト「わかった・・・協力する。」
スカーレット「・・・・・・。」
ライト「だがひとつ約束してくれ」
「・・・なに?」
「お前はもう誰も殺すな。」
「そんな甘いこと言えるような相手じゃないでしょ・・・」
「ああ。あの機体のパイロットはこのオレが必ず倒す。だからあんたはこれ以上手を血に染めるな。
キミの本職は聖職者なんやろ・・・?」
「私に出来ることはある?」
「祈っててくれへんかな・・・」

『80日間宇宙一周 CRIMSON WING』脚本④

カッシーニ郊外、フェーベ
ハイペリオン教会
廃墟のような寂れたゴシック様式の大聖堂。
スカーレット「あそこに着陸して」
ライト「ガイドブックの教会やんか・・・」

リンドバーグ号を着陸させるライト。
ライト「ついたで。運賃は800ドルになります。」
「あら楽しい冗談ね」
「じゃオレは帰るから・・・」
スカーレット「いいえ、次はお待ちかねの注射の時間。」
ライトに針を突き刺すスカーレット
ライト「ニャ!?」
眠ってしまうライト。



知らない場所で目を覚ますライト
気づくとテーブルの席に着いている。
テーブルの奥に誰かが座っている。
?「ようこそライト・ケレリトゥス・・・」
ライト「なんでオレの名を知っとるんや」
?「キミは我々の世界ではちょっとした有名人だからね・・・」
「・・・?あんた誰や?」



首都カッシーニ
クレーンでビルに刺さったイエーガー号を引き抜く作業員。
地上で作業を見上げるヴィン「衝撃テストにはなったよな」
ヴィンのもとにかけてくるヘルメットをかぶったエド「社長を襲ったのはおそらく彼女でしょう」
写真を差し出す「コードネーム:スカーレット。緋色の旅団の腕利きの殺し屋です。」
ミグ「間違いない、この女だ・・・てことは緋色の旅団が復讐のためにライトを・・・」
ヴィン「この子、どっかのキャバクラで見た気がするんだよなあ・・・」
ミグ「・・・心当たりが?」
ヴィン「う~んありすぎてわからない・・・」
エド「また女性をてひどくふったんじゃないんですか?」
ヴィン「バッカ、オレはいつだって真剣だよ!」
首を振るミグ「ライトの言ったとおりの人なのかもしれない・・・」
エド「とりあえずスカーレットは警察に手配させました。あとは彼らに任せましょう。
明日は大事な航空ショーがある・・・
ミラージュの戦闘証明をしなければ、我が社の航空部門は大赤字です。」
ヴィン「そうだな」
ミグ「ちょっと待ってください、ライトを助けないんですか?」
ヴィン「助けるって言ったって相手は殺し屋だよ?
誘拐事件ならきっと向こうから連絡してくるだろうし。いや、もちろん身代金は出すよ?友のためだ、当たり前だ。エドいくらまでなら出せる?」
エド「とりあえずウチのネゴシエイターに身代金の額は限界まで引き下げさせますが・・・
我が社に関係のない身元不明の外国人旅行者ですし8000ドルが妥当かと・・・」
ヴィン「あいつの命はもうちょい高いだろ。8200ドルくらいは出してやれない?」
手帳にメモをするエド「8200・・・」
ため息をつくミグ「・・・・・・。」
ミグ「行きましょう。いい加減このドレスを脱ぎたいんです。やっぱり今の私には似合わないや。」



ハイペリオン教会の秘密基地
ライト「あんた何もんや?」
テーブルの奥の男「私はニコライ・ベルゲルミル・・・緋色の旅団の最高幹部だ」
ライト「緋色の旅団って・・・」
ニコライ「その通り、キミに計画を邪魔された悪の秘密結社だよ・・・!」
「なんやと・・・!お前があいつらのボスか!」
「海王星では確かにキミたちが勝ったが、あれは悲劇のほんの序章に過ぎない・・・!」
「まだなんか企んどるのか!」
「ふははライトよ、命が惜しかったら我々に協力するのだ~~!!」
幹部の部屋に小さい子供が入ってくる
ちびっこ「じいじ、お腹減った」
ニコライ「・・・貴様にはプロメテウスの火を消す・・・」
子供がニコライの服を引っ張る
ニコライ「ちょっと今じいじ大事な話をしてるから・・・」
ちびっこ「ごはん」
ニコライ「わかった。もう少ししたらわしがボルシチを作ってやるから待ちなさい・・・」
スカーレット「あ、首領すいません!・・・ほらご飯もうすぐできるからおいで」
子供を抱きかかえ隣の部屋に連れて行くスカーレット
ニコライ「・・・でなんの話だっけ」
ライト「プロメテ・・・がなんたらまでや」
ニコライ「そう・・・キミにはミラージュを破壊してもらいたい。」
ライト「ミラージュ?なんやそれ」
ニコライ「プロメテウスが灯す永遠の業火だ。まあ詳しくは食事をしながら話すことにしよう」

質素な食事を持ってくるシスター姿のスカーレット
「すいませんレイセオンの暗殺はしくじりました・・・
あの男プロの軍人を護衛につけていて・・・女性だったので油断しました。」
ニコライ「お前がしくじるとは珍しいな。向こうには相当の腕利きがいるようだ」
ライト「あれ?こんどはシスターのコスプレか?」
水を注ぐスカーレット「これは本業、どうぞ召し上がれ」
ライト「・・・・・・。」
ニコライ「毒など入っておらんよ。ほら食べてみたまえ・・・」
食事を口に入れるニコライ
ニコライ「うっ!ぐ、苦しい・・・!」
ライト「おい!」
ニコライ「な~んてな・・・はっはっは・・・」
「それがギャグになる歳ちゃうでじいさん・・・」

食事をほおばるライト「・・・つまり、そのミラージュちゅう戦闘機が軍に導入されるとあんたらテロリストは永久に土星の社会を転覆できないってことやな」
ニコライ「その通りだ」
ライト「・・・もう諦めたらどうや?」
「わしの心臓が止まるまでわしは絶対に諦めん・・・!」
「じゃあもう2、3年ってところやな」
スカーレット「あなたはなんてことを言うの!」
立ち上がるニコライ「今何とかせねばならんのだよ・・・きたまえ」

地下墓地カタコンベの通路を歩くスカーレットとニコライとライト
先頭のスカーレットがランタンをかざしている。
カタコンベには貧しい人や病んだ人、身寄りのない子供たちが暮らしていて、まるでドヤ街のようになっている。
貧民街の住人「ニコライ師・・・」
ニコライ「そのままでよい・・・」
ライト「なんやおたくら下水道に住んどんのか?」
スカーレット「こんなところ好きで住んでるわけ無いでしょ・・・」
ニコライ「カタコンベだよ・・・科学大革命で殺されたたくさんの人間を弔ってきた・・・」
ライト「ああ、あれは大変やったようやな」
ニコライ「犠牲になるのはいつも弱い者たちだ・・・革命で殺された人間は4300万人にものぼる」

母親「ニコライ様・・・先日は私の子の病気を診ていただきありがとうございました!
おかげで命を取り留めることができました・・・」
子供を撫でるニコライ「うむ処方した薬を飲めばきっと良くなるだろう」
皺くちゃなお札を差し出す母親「これ僅かですが・・・」
ニコライ「そのお金でこの子に栄養のつくものを食べさせてあげなさい・・・」
ライト「あんた医者なのか」
ニコライ「免許は剥奪されたがね・・・ラ・メトリーとやらの登場でわしらはお払い箱だ」
どう考えても衛生状態がいいとは言えない貧民街を見渡すライト
「ここにその機械があればいいのにな」
ニコライ「実際にあれで救われるのはごく一部の金持ちだけだ・・・」

ニコライ「・・・こっちだライトくん」

階段を下りとある部屋に入るニコライとライト。
部屋では電子機材を使って通信士が電話や無線通信を傍受している。
録音を再生するニコライ「この通信記録を聞きたまえ。
プロメテウス社が裏で死の商人サーペンタリウスとつながっている証拠だ。」

「ミラージュが一度に500機発注されました」
「どこから?」
「わかりません。暗号化された非公式な回線を使っています・・・」
「死の商人かなんかが一度に購入してブラックマーケットに下ろすのかな」
「おそらくは」
「まあいいや、どうせ在庫になりそうだし2割引で全部売りつけちゃえ。1000機買うと100機タダとか言ってさ」


ライト「あのバカ・・・」
ニコライ「サーペンタリウスは新型戦闘機を1000機も維持できるような組織じゃない。
連中はハナから短期の転売が目的で入札したに違いない」
ライト「ということは買った連中はミラージュが値上がりすることを前提にしているってことか?」
ニコライ「連中には確信があるのだ。
この兵器をいずれ宇宙中の軍隊やテロリストが欲しがることを・・・」
ライト「それはいつやねん・・・」
ニコライ「戦闘証明をする格好の舞台があるではないか。明日の航空ショーでの実地飛行だ」
ライト「航空ショー?」
ニコライ「お前にはそのプレゼンテーションの最中にミラージュを撃墜してもらいたい。
そうなればミラージュは値崩れ、プロメテウスとサーペンタリウスの計画は灰になる・・・」
ライト「それは無理やな~」
ニコライ「いいからやれって」
ライト「だって俺の船、戦闘機やないもん」
ニコライ「ノーチラス号を撃墜してそれは通らんぞ。武器だらけに改造されているじゃないか・・・」
ライト「ロジャーのやつ・・・」
ニコライ「やってくれるな。」
ライト「いやだから無理やて。あんたなんか勘違いしてるようやけどノーチラス号を落としたのはバカでかいワニらしいで」
ニコライ「そんなワニはこの世にいない!
お前は冥王星に戦艦が墜落するのを防ぎ、海王星で我々のクーデターを阻止し、天王星のアイドルの命を救い星間戦争を食い止めた・・・お前にできないことはない」
ライト「それ全部うちの相棒がやったんやけどな・・・」
スカーレット「・・・本当にできないの?あなた宇宙一の発明家なんでしょう?」
ライト「そうや、オレは自分が楽しいから発明をするんや。
国家のためとか社会のためとか正義とか・・・
そんなきな臭いことに巻き込まれるのはもうゴメンやな・・・」
スカーレット「・・・無責任ね・・・」
ライト「・・・ああ、確かに君の言うとおりかもしれんな・・・
・・・ほなら、ひとつ聞いていいか?
なんであんたらはそこまであの会社を目の敵にするんや・・・?」
ニコライとスカーレット「・・・・・・。」
スカーレット「・・・地上に出ましょう」
ライト「え?」
スカーレット「プロメテウス社がやっていることを教えてあげる」

『80日間宇宙一周 CRIMSON WING』脚本③

細胞修復機から出るミグ
技師「お疲れ様でした。これで終了となります。」
胸を触るミグ「本当に治った・・・あのグロテスクな跡が・・・!」
目が潤むミグ「絶対消えないと思ってたのに・・・」

待合室にかけ出すミグ
ミグ「ライト!見てくれ、私の傷が・・・あれ?いなくなっちゃった・・・」
ヴィン「やあミス・チオルコフスキー、さらに美しくなりましたね!」
「あ、ありがとうございます・・・あのライトは?」
「さあ・・・退屈で帰っちゃったんじゃないですか?」
「なんだよあいつ・・・せっかく私が綺麗になったのに・・・」
「あいつはそういう男です。では行きましょうか。」
「え?」
「決まっているじゃないですか。・・・パーティですよ。」



プロメテウスタワーの機械室
ライトを縛り付ける看護婦「抵抗しなければ傷つけはしないわ・・・」
ライト「嘘つけ、どうせ針ブッ刺したりするんやろ」
看護婦「あとでね・・・」
看護婦の制服を脱ぎ出す若い女性
「あんたなにしてんの?」
「着替えてるのよ、あなたもするでしょ」
女性バーテンダーのような衣装を着る。
「じゃあ私はパーティに行ってくるから。そこで待ってなさい」
手のひらサイズの改造銃に銃弾を装填する。
「そんなおもちゃでなにをするんや?」
「・・・社会を平等にするの・・・」



プロメテウスタワーのパーティ会場。
司会「いよいよ太陽系最大の航空ショーが明日開催されます!
今夜はみなさん存分にお楽しみください!」
土星の政財界の名だたるセレブが談笑している。
胸元の開いたドレスを着るミグ「こんなパーティに参加するの子供の時以来です・・・」
ヴィン「ドレスお似合いですよ」
ミグ「あの・・・なんでそんなに私に優しくしてくれるんですか?」
ヴィン「だってこんな美しい女性がいたら誰だって心を奪われますよ」
「そんなこと私一度も言われたこと・・・」
「冥王星の男は女性を見る目がないんじゃないですか?
それにあなたはクールなように見えてとっても優しそうだ。」
「そんなことは・・・」
「いいえ、おおらかで気が長くなければライトとなんか付き合えませんよ。」
「それは・・・まあ・・・そうなのかなあ」
「あいつ本当に自由でしょ?好き勝手なことばっかやって生きてる。昔からそうだった・・・」
「あの・・・ライトとは何かあったんですか?」
ミグが尋ねようとすると、美女をはべらせた軍人がヴィンに話しかけてくる。

将軍「やあヴィン。今夜はまた美人をつれてるじゃないか!」
ヴィン「アトラス将軍。あんたも妻子がいながら愛人を引き連れてご機嫌ですね」
将軍「はっはっは・・・ミラージュの明日の実演、楽しみにしているよ。」
ミグ「ミラージュ?」
ヴィン「ああ、うちで作っている最新鋭の戦闘機・・・」
将軍「我が軍はいい兵器には金は出し惜しみしない。頑張りたまえ・・・」
ヴィンから離れ、ほかのに声をかけるアトラス将軍。
将軍「ひさしぶりだなホイヘンス議員、今夜はまた美人を連れているじゃないか」
議員「将軍こそ美女に囲まれて・・・」

将軍を見つめるヴィン「あの様子じゃ買わねえな。コンバットプルーフだよ。
パイロットなしの戦闘機が的確に任務をこなすか信じてないんだ。アナクロ世代め。」
ミグ「仕方ないですよ。無人戦闘機なんて導入したら軍人がみんな失業しちゃいます。」
ヴィン「それっていけないことなのかな・・・戦場で死ぬ兵士がいなくなるんだよ?」
ミグ「すべての星がその兵器を導入すれば・・・そうなるかもしれませんね・・・」
ヴィン「いずれそうなるって。ミラージュは戦争を変えるよ。
きっと未来の宇宙戦争は誰も死ななくなる。」
ミグ「・・・・私はライトにいろいろな星に連れてってもらって、星によって様々な事情を抱えていることを知りました・・・中には兵器を買う余裕すらないとても貧しい星もあった・・・
一部の国家が強力な武器を持つことで世界全体の均衡状態が崩れて緊張状態になることだってある。もしその戦闘機が無分別な独裁国家やテロリストに渡ったら・・・?
自分の手を全く汚せずに他人を殺せる危険なおもちゃを子供が手に入れてしまったら?」
「・・・それは・・・」
優しく諭すように喋るミグ「絶対ないといいきれますか・・・?」

二人のもとにグラスを乗せたトレーをもった女性が近づく。
女性バーテンダー「お飲み物はいかがですか?」
ヴィン「いや私は結構・・・」
バーテンダー「そうですか・・・」
バーテンダーの怪しい動きを察するミグ「!」
バーテンダーがトレーの裏でキューブ状のものを握っている。
すかさずミグがバーテンダーのトレーをハイキックで蹴飛ばす。
ミグに蹴られてトレーで隠された改造銃の照準がそれる。
ボタン(引き金)を押す殺し屋。
プシュッという静かな音とともに銃弾が発射される

美女の腰に腕を回し酔っ払っている将軍。
議員「アトラス将軍、奥さんに見つかったら殺されるんじゃないですか?」
将軍「はっはっは確かにそこらの反政府ゲリラよりもウチのかみさんは怖いな!」
将軍の尻に銃弾が突き刺さる。倒れる将軍。
議員「本当だったんだ・・・」

ヴィン「!!」
殺し屋スカーレット「ちっ!」
ミグ「頭を下げて!」
ミグに向かって改造銃を発射するスカーレット
銃弾がミグの肩をかすめる
ミグ「ぐわっせっかく傷を治したのにまたできた!」
ミグをかすめた銃弾が窓ガラスを割る。

異変に気づきパニックになるパーティ会場。
悲鳴を上げて客が逃げ出す。
会場のSP達をものすごいスピードであっさり倒していくスカーレット
ミグ(この女、殺しのプロだ・・・!)

ヴィンに銃口を向ける殺し屋
スカーレット「最期の言葉は?」
引きつり笑いのヴィン「きみ可愛いね・・・どっかの店で会ったっけ?」
スカーレット「ありがとう、さようなら」
殺し屋の腕を取るミグ
殺し屋「ぐっ!」
改造銃が床に落ち、すかさずヒールで踏み潰すミグ。
その隙にミグに頭突きをくらわす殺し屋
よろけるミグ
ミグから離れた殺し屋が太ももからナイフを取り出してミグに切りつける。
スレスレで殺し屋のナイフ攻撃をかわす。
バイキングのステーキナイフを取り応戦するミグ。

警報が鳴り拳銃を持った警備員がガラス張りの壁際の二人を取り囲む。
「武器を捨てろ!」
殺し屋とナイフで格闘するミグ「早く撃て!」
ミグの方へ撃ってくる警備員
身をかがめるミグ「こっちじゃないよバカ!」

すかさずミグから離れて割れた窓の淵に飛び乗る殺し屋
「私たちは宇宙一の発明家を拉致した・・・もうあなたたちの思い通りにはならない・・・」
ミグ「ライト・・・?」
窓から飛び降りる殺し屋「この勝負預けた」
ミグ「待て!!!」



殺し屋が消えたパーティ会場では厳戒態勢の警備員が無線で連絡を取り合っている。
パーティドレスのすそを引き裂くミグ「ライトがさらわれた!滑走路へはどう行くんだ!?」
警備員「滑走路は30階下のBフロアです」
ミグ「案内を頼む、あと武器を貸してくれ。そこまで殺傷能力が高くないもの、22口径がいい。」
警備員「32口径しかありません」
ミグ「じゃ、それ。貸してくれ。」
ヴィン「あんた一体何者?」
「ミグ・チオルコフスキー・・・冥王星の軍人だ」



プロメテウスタワー私設滑走路
滑走路にパラシュートで降下するスカーレット。
リンドバーグ号のハッチを開けてライトに銃を向けるスカーレット「離陸準備よ!」
ライト「・・・で、どこへいくんや?マクドナルドか?」
スカーレット「いいから早くしなさい・・・」
離陸準備をするライト「わ~ったから眉間にしわ寄せるのやめたらどうや?可愛い顔が台無しやで・・・そや、あんたの名前は?オレはライト。」
スカーレット「殺し屋が本名明かすわけ無いでしょ。」
「ふ~ん・・・で何人殺したんや?」
リンドバーグ号のコックピットに乗り込むスカーレット「・・・失敗した」
「プークスクス」
ライトの後頭部を押さえ操縦桿に思い切り叩きつけるスカーレット。
ライト「あいた~~~!!」
スカーレット「信じてくれた?さあ出発よ」

リンドバーグ号が発進する。
滑走路へつながるエレベーターからその様子を眺めるヴィンとミグ
ヴィン「離陸してる!」
ミグ「!!」
ヴィンとミグが滑走路にたどり着くと同時にリンドバーグ号が離陸する。
ヴィン「間に合わなかったな・・・」
ミグの方を振り向くヴィン「なにしてる?」
イエーガー号に乗り込むミグ「ライトを追う!」
ヴィン「え?」

イエーガー号に乗り込むヴィン「なんでオレまで・・・」
計器をいじくるミグ「ライトの友達だからだよ。」
ヴィン「で・・・あなた操縦できるの?」
ミグ「訓練で一度乗った。落ちた。」
ヴィン「・・・じゃ僕とかわってくれる?」



首都カッシーニの上空。
リンドバーグ号を追いかけるイエーガー号

リンドバーグ号コックピット
計器が後方からイエーガー号が接近していることを表示する。
ライト「あ、あいつや」
スカーレット「ちっ追いかけてきたわ・・・速度を上げて」
ライト「ニャハハ!オレの船があいつに抜かれると思うか?
「え?」
「シートベルトしたほうがいいで。」

ラムジェットエンジンを起動させ吹っ飛んでいくリンドバーグ号
イエーガー号をどんどん引き離す。

イエーガー号コックピット
ヴィン「なんだあれ!?」
ミグ「ラムジェットだ・・・!」
どんどん引き離される
ミグ「見失うぞ!これ以上スピード出ないのか!?」
ヴィン「こういう仕様ですから・・・」
ミグ「このスイッチは?」
ヴィン「あ、それは試作品のスペシャルエンジンだから押しちゃ・・・」
ミグ「もう押した」
イエーガー号の翼が引っ込みロケットエンジンが火を噴く。
一方向に猪突猛進するイエーガー号。
イエーガー号の前に高層ビルが現れる。「ホテル不夜城」
ヴィン「ぶつかる!」
助手席から操縦桿に手を伸ばし切ろうとするミグ「よけろ!」
音声ガイド「このモードではヨーイングできません」

ホテルのスイート
若いセレブのカップルがベッドの上で抱き合っている。
女「愛してるわダン・・・」
男「オレは危険な男だぜ・・・?」
部屋に突っ込んでくるロケットモードのイエーガー号。
吹っ飛ぶ裸のカップル。

イエーガー号のコックピット。
席の上からポンと酸素マスクが落ちてくる。
ミグ「なんか野暮なことしちゃったな」
ヴィン「あんたがライトと付き合えるのわかった・・・ライト並みにメチャクチャなんだよ・・・」

『80日間宇宙一周 CRIMSON WING』脚本②

土星の夜空をバックに首都カッシーニの上空を飛行するリンドバーグ号。
カッシーニは香港のような美しい夜景を灯している。
コックピットのライト「どうや、スタンプは溜まったか?」
ガイドブックを広げるミグ「あとはハイペリオン教会とフェーベの歴史的町並みと、プロメテウスタワーだな・・・」
「それ全部たまるとなんなん?」
「それはいくらお前でも言えない。最重要機密事項だ。」
ガイドブックを取り上げるライト。
「土星の名所スタンプを集めて、太陽系最高の医療技術を誇る豪華アンチエイジング三昧をゲット・・・あ!だからこの星に寄りたいって言ったんやろ!」
あせるミグ「え、ちがうよ?」
ライト「土星は今金持ちの間でアンチエイジングとか美容が流行っとるって聞いたことあるで!」
ミグ「な、なんだよ私がキレイでいちゃダメっていうのか!私ももう三十を過ぎただろ、最近なんか疲れやすいし、動きのキレもなくなっちゃったし、お肌のハリも・・・」
「・・・ミグお前は大丈夫や」
「え?そうかな・・・」
「よく持ちこたえている方やと思うで。」
「どういう意味だこのやろう・・・
それに土星のエステって高額だから・・・スタンプラリーならタダじゃないか。」
「海王星や天王星で散々おばはんって言われたのがそこまでショックだったんや・・・」
「お・・・お前女心わからなさすぎだぞ!」
「ニャハハ面白いやつ」

その瞬間警報がなる。
コンソールを叩くミグ「未確認航空機が猛スピードでこちらに接近!」
ライト「ああ、もう見えとる!」
リンドバーグ号の方へ流線型のデザインをしたロケットのような宇宙船が突っ込んでくる。
急旋回して正面衝突をかわすリンドバーグ号
リンドバーグ号の方へ引き返してくる機体
ミグ「追いかけてくるぞ!」
「なんやねん!」
「敵か!?」
「わからん!」
速度を上げて引き離そうとするリンドバーグ号。
向こうも速度を上げてくる。
ミグ「なんか悪質じゃないか?」
ライト「変なのに絡まれてもうたな」

ロケットの機体が航空ランプをチカチカさせる
ライト「あれはスピードバトルの挑戦や・・・!」
ミグ「スピードバトル?」
ライト「ほ~う、俺の船と競争しようって気か、おもしろい!」

ビルの隙間をぬって飛ぶ二機。
リンドバーグ号にぴったりと付いてくるロケット。
ライト「なかなかやるやんけ。ならこれならどうや」
ギヤを切り替える。
リンドバーグ号にターボがかかり、どんどんロケットを引き離す。
ミグ「おいおい、あまり飛ばしてビルにぶつかるなよ・・・」
操縦桿を倒すライト「任せとけ!」
急降下し高速道路のトンネルに入るリンドバーグ号。
トンネルを避け追跡を諦めるロケットの戦闘機。
トンネルを出て急上昇するリンドバーグ号。
後ろには戦闘機はもういない。
ライト「どうや!そんじょそこいらの暴走族なんかに負けへんで~」

ヴィン(無線)「いや~相変わらずの腕だなライト!」
ライト「お前・・・もしかして成金ヴィンセントか!?」
ミグ「友達?」
ライト「ぜんっぜん。あいつすげ~むかつくからほっといたほうがいいで。」

リンドバーグ号の頭上にロケットの戦闘機が再び現れる。
高度を落としリンドバーグ号に併走するヴィンの戦闘機「イエーガー」

ヴィン「6年ぶりに親友に会ったっていうのに冷たいなあ」
ライト「誰が親友やねん・・・どっかいけオレは・・・(ミグがライトの前にガイドブックを出す)プロメテ・・・タワーへいくんや。」
ヴィン「は~はっはそのビルはオレの会社だよ!歓迎するよライト」
ライト「・・・気が変わった。木星にでも行くわ・・・」
操縦桿を切ろうとするライトの腕を取って、首を振るミグ「・・・・・・。」(目が潤んでいる)
ライト「ミグちゃんそんな目で見るなや・・・」



プロメテウスタワーの滑走路にイエーガー号を止めるヴィン。
ライトのリンドバーグ号も続いて着陸する。
宇宙船を降りるヴィン「すぐにわかったよ。今時プロペラ機で空飛んでいるのなんてお前くらいだぞ」
リンドバーグ号から降りるライト「でもお前のトンガリよりも速いで・・・」
ヴィン「ははは・・・とにかく土星にようこそ。
この度は我が社の株を間接的に下げてくれて感謝するよ」
ライト「なんやねん・・・」
ヴィン「しかしなんでまた土星に?金に困ってうちで働きたくなったとか?」
ライト「お前とは二度とごめんやな・・・」
ミグに気づくヴィン「はっ!」
ライトの背後でリンドバーグ号を降りてくるミグ「こんばんは・・・」
ヴィン「なんだお前その美女は!!」
ミグ「え?私・・・?」
ヴィン「キミいつの間に結婚!?」
ライト「ちゃうわボケ」
ミグの前に歩きだしミグの手を取って挨拶するヴィン「ならオレが口説いてもいいよな、いいよね。
いや~お美しい・・・わたくしプロメテウスという会社をやっておりますヴィンセント・レイセオンというものです。ライトくんとは竹馬の友でして・・・ヴィンと呼んでください。」
照れるミグ「あ、はじめまして。ミ・・・ミグです・・・ミグ・チオルコフスキー・・・」
ヴィン「ライトとはどういうご関係ですか?」
ミグ「え?」
ヴィン「もしかして男女の関係・・・」
ミグ「い、いえいえ・・・彼はその・・・弟みたいなもんでして・・・」
「は~よかった・・・ミス・チオルコフスキーは男性を見る目は確かのようだ」
「うるさいわお前ら。いつからオレはお前の弟になったんや・・・」

プロメテウスタワー最上階の社長室。
私設のバーカウンターがあり、リビングは高級マンションのような高価な調度品で飾られている。
窓の外には首都カッシーニの美しい夜景が広がる。
グラスに高級ワインを注ぐヴィン
「ミス・チオルコフスキーはお酒は飲まれますか?」
ミグ「ええ・・・」
ヴィン「では、こいつの味がわかることでしょう。お前は自販機のコカコーラでいいんだよな?」
ライト「ありがとな。」
ミグにグラスを渡すヴィン「どうぞ。シャトー・リングレット千年ものです。」
ミグ「こんな高いお酒・・・」
ヴィン「いいんですよあなたに飲まれるために生まれた酒です。乾杯と行きましょう。」
「友の再開と新たな出会いに乾杯!」

ソファーでリラックスして昔話をするヴィン。
「なにしろ、こいつは機械いじりしか興味のない子供でしてね。
こいつにあなたのような美しい方はもったいない。よろしければ私が地球まで送っていきますよ」
ミグ「・・・そんな・・・」
コーラを飲むライト「おいミグ、そいつ稀代の女ったらしや。あまり間に受けんほうがいいぞ。
そいつ洋式便所にも美しいっていう美的感覚やからな・・・」
無視するミグ。
ヴィン「い~やライト。今回のオレは本気だ。
お前さえよければしばらく彼女をエスコートさせてくれない?」
ミグとライト「え?」
ミグ「わ、私は嬉しいですがライトが・・・」
ライト「俺はええけどミグがなんていうか・・・」
ヴィン「てことはいいってわけね。」
ガイドブックを取り出すライト「おいこのスタンプラリーはどうするんや。」
笑うヴィン「なに、お前こんなのやってんの!?」
ライト「これスタンプ全部貯めるとミグがアンチエイジング・・・」
ライトの足を思い切り踏みつけるミグ「ははは!」
ライト「なにするんや~!」
ヴィン「なるほどね・・・ではこの私が土星最高のエステをあなたにご案内しましょう。」
ミグ「・・・え?」
ヴィン「なにしろ美容医療も我が社の得意とする分野なんでね。」
ミグ「よ、よろしいんですか?」
ヴィン「あなたはきっと、もっともっと美しくなる。ぜひお手伝いさせてくださいミグ。」
赤くなるミグ「そんな・・・」
ライト「なんやねんお前ら・・・資生堂のCMか」



プロメテウスタワーにあるプロメテウスメディカルセンター
救命救急搬送口
救急車がサイレンを鳴らして病院に入ってくる。
けが人が緊急搬送される
救急車に駆け寄る看護婦。
患者を担架をストレッチャーに乗せる救急隊員「血圧50~80、心肺停止のショック状態だ!」
脈拍を見る看護婦「わかりました。では早くラ・メトリーに!」
ストレッチャーをエレベーターに乗せる看護婦
エレベーターが閉まる。

エレベーターの階を表示するランプが20から30へ移動していく。
看護婦「大丈夫!きっとラ・メトリーが助けてくれるわ・・・!」
患者に心肺蘇生装置で電気ショックを与えようとする看護婦。
パッドを持つ看護婦の手を患者がとっさにつかむ。
看護婦「え?」
AEDで看護婦に電気ショックを食らわす患者。
看護婦「きゃあああ」
倒れる看護婦
ストレッチャーから降りて立ち上がる患者の女「大丈夫、ラ・メトリーが助けてくれるわ」



プロメテウスメディカルセンター
エントランス
美人な看護婦がナースセンターに続く通路を歩いている。
ヴィン「どうする?お前もついでに人間ドッグでもしてく?お前がパンに挟まれるの。」
ライト「しょ~もな・・・誰がお前の病院で・・・」
ヴィン「そうかい。」
舞い上がっているミグ「じゃあなライト、綺麗になって帰ってくるから!」
待合室のソファに座るライト「あいよ~・・・」



MRIのような装置のある部屋に連れてかれるミグ。
大掛かりな医療装置にはLa Mettrieというロゴがうたれている。
技師「それではアンチエイジングを開始します。この細胞修復機の中に入ってください」
ミグ「あの・・・」
技師「なにか?」
「実は昔からずっと気にしている傷があって・・・胸の傷なんですけど・・・
これも治るんですか?」
「治りますよ。このマシンに治せない病気やケガはないんです」
「本当ですか・・・!?」
「ええ・・・」
「もう一生治らないと言われていた傷なんですが・・・」
微笑む技師「大丈夫。全て元通りにしますよ。」



病院の待合室。工学系の雑誌をめくるライト
「そんな若返りたいもんかね~自分だけ老けるわけやないんやからええやんけ」
ライトの隣に座るヴィン「あいかわらず女性がわかってないね君は」
ライト「おいミグは?」
ヴィン「細胞修復機でエステ中。」
ライト「それ安全なもんなんやろうな・・・」
ヴィン「それは設計したやつに聞いてくれ。
しかし彼女本当いい女だな。どこでみつけた?」
ライト「冥王星まで行った時に世話になったんや。自分の屋敷に親切に泊めてくれて・・・まあいろいろあって今はあいつを地球に連れてく途中。」
ヴィン「じゃ地球へ行くのか・・・」
ライト「あいつの夢やから・・・」
ヴィン「・・・・・・。」
ライト「なんやねん」
ヴィン「なあ、ライト・・・もう一度一緒にやらないか?」
ライト「・・・」
ヴィン「その才能を自分のためにしか使わないなんて勿体無いって。また世間をあっと言わせようぜ」
ライト「それはないなあ・・・」
ヴィン「ライト・・・」
ライト「オレはもうお前とは組まん。悪いな・・・」
ヴィン「新しい発明のアイディアが出てこないんだよ・・・頼むよ」
ライト「そういう時もあるって・・・あいつのエステそろそろ終わるんちゃうんか。迎えに行ったれよ。」
立ち上がるヴィン「・・・本当女心分かってないね・・・じゃあな」
ミグを迎えに行くヴィン。

待合室の大理石の柱の影で無線をする看護婦。
看護婦「目標が一人になりました」
(無線)「よし作戦実行だ」

ライトの方へ看護婦が近づいてくる。
「お客様こちらへお越し下さい」
ライト「人間ドッグはええって・・・」
ライトにだけわかるように改造銃を突きつける看護婦「おとなしくして」
ライト「どういう病院なんや・・・」
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