中学3年生理科覚え書き

 なんか期間が空いちゃったけど、中学校三年生の理科をおさらい・・・と思ったんだけどさ、中学校三年って化学では電池、物理では力学、生物では遺伝、地学では天体を習うんだけど、地学の天体以外はすでに、このブログの何かしらの記事でまとめちゃってるんだよな。
 というわけで、まったくノータッチだった地学分野をメインにまとめます。なら天体覚え書きだろ!って感じなんだけど、シラヌ・ド・ゾンゼーヌ。

参考文献:京極一樹『中学・高校数学のほんとうの使い道』、高橋正征編『中学理科2分野の発展的学習』

化学変化とエネルギー
脱ゆとりでイオンが復活した。化学分解や電池、水溶液の性質(酸・アルカリ)をイオンの観点で捉える。
詳しくはこちらの記事を参照。

運動とエネルギー
ニュートン力学をかなりあっさり学ぶ。
脱ゆとりで、力の分解と合成(ベクトル)、てこや滑車などの仕事の原理が増えた。
詳しくはこちらの記事を参照。

科学技術と人間
カーボンファイバー、ファインセラミクス、発光ダイオード、吸水性ポリマー、クリーン発電など昨今話題となっている最新テクノロジーを学習する。
ほぼ雑学なので、学校の授業では生態学以上にぞんざいに扱われる。つーか、そもそも教えているのだろうか。

生命の連続性
遺伝の法則や発生を学ぶ。
この二つは、高校の生物になるとセンター試験の常連となるので、重要な伏線になっている。
詳しくはこちらの記事を参照。

自然と人間
生態系や環境問題を学ぶ。
私立高校受験には確実に間に合わない学習単元。学校の授業でもかなりぞんざいにされる。とはいえ受験で出題される可能性があるので、自主的な学習が求められる。
詳しくはこちらの記事を参照。

地球を取り巻く宇宙
天文学の学習範囲。お星さまは基本的に慣性の法則で同じオービットをくるくる回っているので、計算問題で求める値が相対的となり、かなり難しい。
現行の教科書では、冥王星あたりの宇宙の様子がいろいろわかってきたので、そういった最新研究もちゃんと踏まえてエッジワースカイパーベルトとかオールトの雲とか出てくる。
なんか、そんなものが出てくる漫画も描いていた気がする。

南中高度と緯度
星を見上げる角度で、自分が地球のどの位置にいるかわかるというサバイバル技。
ついでにこれを応用すれば地球の大きさもだいたいわかる。
太陽の南中高度(北半球の場合)は以下のように、その地点の緯度から計算ができる。

①春分・秋分

太陽の南中高度=90度-その地点の緯度

最も簡単に出せる。
これは春分・秋分の時、太陽光線が真横から当たるため。
よって北極や南極では太陽の南中高度は0度になって、なんと♪空に太陽が~な~い~(C)トコジョー

②夏至

太陽の南中高度=(90度-その地点の緯度)+23.4度

地球が太陽の方へ地軸の分(23.4度)傾く。
そのぶん太陽の南中高度は23.4度高くなる(北にずれる)。

③冬至

太陽の南中高度=(90度-その地点の緯度)-23.4度

地球が太陽とは反対の方へ地軸の分(23.4度)傾く。
そのぶん太陽の南中高度は23.4度低くなる(南にずれる)。


月は地球の周りを27.3日かけて一周している(つまり、一日あたり13.2度のペースで公転する)。しかも公転周期と自転周期がぴったり同じなので、月は地球にほとんど同じ面しか向けない。すげえ不気味。
ケプラーの法則によると月の軌道も楕円形であり、月が地球に最も近い時(この時さらに満月だとスーパームーンともてはやされる)、公転の角速度は最速になる(ケプラーの第二法則)。

皆既日食
かっこよく言うとトータル・エクリプスという。
太陽と地球のあいだに月が入っちゃって、太陽が全部隠れてしまう天文イベント。
日食は、月が新月(逆光)の日に起きるが、太陽の通り道の黄道と、月の通り道の白道に約5度のずれがあるらしく、必ずしも新月の時に起こるわけではないらしい。
ちなみに皆既日食中にだけ、太陽を取り巻くガスのコロナが肉眼で観測できる。
似たようなのでプロミネンスっていうのがあるけど、これは皆既日食の際に、月に隠された太陽の縁から立ち上る赤い炎を言う。
さて、皆既日食が起こるのは、地球からの見かけの太陽の大きさと月の大きさが絶妙に一致しているからである。
そこで、月と太陽の大きさと月と地球の距離から、地球と太陽の距離を相似の式から求めることができる。

月の半径を1.7×103キロメートル、太陽の半径を7.2×105キロメートル、月と地球の距離を3.8×105キロメートルとすると、

太陽の半径:月の半径=地球と太陽の距離:地球と月の距離

という式が立つので

月の半径×地球と太陽の距離=太陽の半径×地球と月の距離

地球と太陽の距離=太陽の半径×地球と月の距離÷月の半径

と、変形ができ、この式に、先ほどの値を代入すると

(7.2×105)×(3.8×105)÷(1.7×103

=(27.36×1010)÷(1.7×103

=16×107

=1.6×108

よって地球と太陽の距離は160000000キロメートルくらいということが分かる。遠い!

等級
古代ギリシャの天文学者ヒッパルコスは、約1000個の星を観測し、その中で肉眼で最も明るく見える約10個の星を1等星、肉眼でかろうじて見える星を6等星としてランク分けした。
19世紀になるとハーシェルが、等級が1つ上がると明るさが2.5倍になることを発見し、その後ポグソン1等星は6等星の100倍明るく、さらに星の明るさは1等級あがるごとに100の5乗根倍だけ大きくなると定式化した。
ちなみに日本の夜空で最も明るい星は、おおいぬ座のシリウスで等級は-1.5等星。
マイナスってなんじゃら~~!!???ってかんじだけど、なにせ等級は古代に作っちゃったから、1等星よりも明るい星が続々見つかっちゃって豪快にバーストしちゃった。0等星も明るさゼロという意味ではなく、1等星よりも2.5倍明るい星ということ。

等級には実視等級と絶対等級の二種類がある。実視等級とはヒッパルコスの頃みたいに、地球から見た明るさで、見かけの等級とか眼視等級とも言う。
しかし地球から観測した場合の星の明るさは、その星と地球との距離によって左右されるので、本当はすごい明るい星でもめちゃくちゃ遠かったら暗く見える。
例えば、実視等級では同じ明るさの星でも、Aの星の方がBよりも100倍地球から遠かった場合、光の強さは距離の逆二乗で減衰するので、Aの星はBの星よりも10000倍強い光を放っていることになる。
そこで、すべての星を地球から同じ距離(32.6光年=10パーセク)に並べたと仮定した場合の明るさを絶対等級という。

実視等級と絶対等級は以下の式で変換することができる。
M:絶対等級
m:実視等級
d:星空のディスタンス(距離)のd。ただし単位はパーセク(pc)。

M=m+5-5logd(※ただし底が10の常用対数)

すると、実視等級では-27等星のわれらが太陽はどうなるかというと、太陽と地球の距離は、さっき求めたとおり、1億6000万キロメートルとすごい遠いのだが、これをパーセクという天文単位に換算すると、約0.000005pcとすごい小さくなってしまう。
ちょっと嫌な予感がするけど、これを先ほどの式に代入すると・・・

M=-27+5-5log0.000005

≒-22-5×(-5.3)

=-22+26.5

=4.5

となり4等星くらいに降格してしまう(厳密に計算すると4.8等星らしい)。

恒星のスペクトル
夜空の星には色々な色があるが、これはその星の温度を表している。温度が低いと赤い光、温度が高いと青白い光を出すようになる。
以下にスペクトル分類をまとめる。

M型(赤。表面温度3900℃以下):アンタレス、ベデルギウス
K型(オレンジ。3900~5300℃):アルバデラン、アークトゥルス
G型(黄色。5300~5700℃):太陽、カペラ
F型(レモン。5700~7300℃):北極星
A型(白。7300~9600℃):シリウス、ベガ
B型(水色。9600℃~):リゲル、スピカ
O型(青。30000~51000℃)太陽の光度の100万倍も輝く宇宙でもすごいレアな星(数千億個中たった2万個しかない)。

年周視差
遠い角度にある物体は二つの場所から眺めると、その物体のアングルは当然変わる。この違いによって物体までの距離を求めるとき、二つの場所同士をつなぐ線を基線、二つの場所と物体の場所をつないだ時にできる三角形の角度の大きさを視差という。
地動説の証拠が欲しかったコペルニクスは、これを応用して地球から遠い星の距離を求めることができると考えた。なぜなら、地球は公転をしているので、地球の近くにある恒星のアングルは、それよりも遠い恒星に対して、一年を一周期としてわずかに変化するはずだからである。
そこで、地球の公転半径(1AU)を基線にした時の視差を、その恒星の年周視差とし、地球と恒星の距離rを求めると、距離rは年周視差pが小さくなるほど大きくなり、だいたいpが1”(1角度秒。長さ1センチの物体を2キロ離れたところから見たときの角度=1/3600°)でrは3.26光年になる。
しかし最も太陽系から距離が近い恒星であるアルファケンタウルス座α星ですら、年周視差は1”を切り(0.755”)、距離は4.3光年となる。
ちなみに、1パーセクは年周視差1”に相当する距離3.26光年のことである。

距離d=3.26/年周視差(光年)=1/年周視差(パーセク)

年周光行差
雨の日に走っている車や電車の窓から外を見ると、垂直に降っている雨も斜めに降っているように見える。これは地球が公転しているため、恒星から放たれる光にも言え、この角度のズレを光行差という。
光行差は、同じ方向の恒星なら地球との距離によらず同じ角度になる。
ちなみに、光行差qは地球の公転速度vに比例して大きくなるため・・・

公転速度v=光速度c×光行差q

これを計算すると、光行差は20.5”になる。

ドップラー効果
音や光などの波の波長は、接近時は短く、遠ざかるときは長くなる。そのため恒星が放つ光の波長も、地球がその恒星に近づく際には本来の波長より短く、遠ざかる際には長くなる。
これは地球が公転をしている証拠となっている。

視太陽時
太陽が南中してから翌日に南中するまでの時間。
しかし、地球の公転速度は公転軌道が楕円であるため、一定ではない。さらに地球は23.4°傾いたまま公転しているので、赤道と黄道も一致していない。
よって天球上を太陽が動くスピードも一定ではなく、視太陽時も変動してしまう。

平均太陽時
そこで、赤道と黄道が一致し、等しいスピードで動く仮想の太陽(平均太陽)を考えて、この太陽が南中してから次に南中するまでの時間を1太陽日とし、その24分の1を1時間、その60分の1を1分・・・と時刻にしたものを平均太陽時という。

均時差
視太陽時と平均太陽時との差。

世界時
ロンドンのグリニッジ天文台の平均太陽時。
しかし経度によって太陽の南中時刻は異なるために、国や地域ごとにそれぞれ標準時が定められている。アメリカなど幅が広い広大な国家は、同じ国に4つの異なる標準時(タイムゾーン)があり、東海岸と西海岸の時差は3時間もある。

原子時
かつては地球の自転や公転に基づいた天文時が使用されていたが、現在では原子のスペクトル線を用いた原子時を使って正確な時間をはかっている。
しかし地球の自転の回転速度は、潮汐によって発生する海水と海底との摩擦力がブレーキになって、徐々に遅くなっているので(=一年の日数が減っている。4億年前は一年400日だった)、原子時との差が離れないように、地球の自転速度を正確に観測しながら、必要に応じて原子時を補正している(うるう秒)。

太陽暦
太陽を基準にした暦。具体的には、春分の日から、翌年の春分の日までの時間(一太陽年)を基準にしている。
一太陽年は、正確には365日よりもちょっとだけ多く、365.2422日なので、端数の0.2422は4年で約1日のズレを生んでしまう。
そこで、4年に一回、一年を366年にするうるう年を作って、誤差をリセットする。
それでもまだ割り切れない+0.0078日のズレは、400年で97回のうるう年を置くことで、400年間の一年の平均日数を365.2425日としている(でも割り切れず、結局400年で3時間のズレが残る)。
現在採用されているグレゴリオ暦では・・・

①4で割り切れる年をうるう年とする。
②ただし4でも100でも割り切れる年はうるう年にしない。
③しかし4でも100でも400でも割り切れる年はうるう年にする。


この3つのルールで400年で100回あるはずのうるう年の回数を3回減らしている。
最近では2000年が①でうるう年なんだけど、②でうるう年じゃなくて、でも③でやっぱりうるう年という、うるう年だった(ややこしすぎる)。

惑星の視運動
天球上の恒星は星座の中でお互いの位置関係を変えることはないが、金星や火星はこれらの恒星のあいだを行ったり来たりして、さ迷っているように“見える”ため、惑う星、惑星と名付けられた。
惑星が行ったり来たりしているように見える理由は、地球と惑星の公転の周期が違うからである。
惑星は、太陽の周りを地球と同じ向きに公転し、しかもその軌道の角度は地球の起動とほぼ一致しているため、惑星は常に黄道付近に見られる。

順行
惑星が天球上を太陽と同じ向き(西→東)に移動すること。

逆行
惑星が天球上を太陽と逆向き(東→西)に移動すること。


順行から逆行、逆行から順行に移行するとき、惑星の視運動がほぼ止まって見えること。

内惑星
地球よりも内側の軌道を持つ惑星。
内惑星が地球に最も接近することを内合(太陽の手前に来る)、地球から最も離れることを外合(太陽の後ろに来る)というが、どちらも太陽のせいで地球からは見えない。
内惑星が太陽から最も離れて見える時の角度を最大離角という。金星ではだいたい45°である。太陽光の影響が少ないため、この時最も金星は観測しやすい。

外惑星
地球よりも外側の軌道を持つ惑星。
地球から見て外惑星が太陽の方向にある時を、太陽と反対側に来ることをという。

会合周期
内惑星の内合から次の内合まで、外惑星の衝から次の衝までの時間のこと。
金星では584日、火星では780日である。
地球と惑星の公転周期が違うため、会合周期Sを求めるのはかなり難しそうだが、以下の考え方(旅人算に近い)で求めることができる。
惑星の軌道をサーキット場として、公転周期が短い惑星を速いカート(速度v1)、公転周期が長い惑星を遅いカート(速度v2)と考える。
レースがスタートし、この二つのカートが再び並ぶ時は、速いカートが遅いカートを一週抜かしにする時だけなので、その時の時刻をtとすると、速いカートの道のりはv1×t、遅いカートはv2×tになる。
この時、速いカートは遅いカートに比べてちょうど一周分だけ多く走っていることになるので、遅いカートの道のりに一周分の距離(サークルのCとする)を足さなければ、二つのカートの道のりは一致しない。つまり・・・

v1×t=v2×t+C

この式を変形して

(v1-v2)×t=C

よって、周期が速い惑星の速度から周期の遅い惑星の速度を引いた数に、一週抜かしされた時の時刻t(=会合周期)をかけると、ちょうどサーキット一周(=360°)になることがわかる。

①内惑星の場合
内惑星は地球よりも公転周期が短いため、内惑星が一日に公転する角度(=360°÷内惑星の公転周期P)から、地球が一日に公転する角度(=360°÷地球の公転周期E)を引いて、会合周期Sをかければ、ちょうど360°になるはずである。

(360°/P-360°/E)×S=360°

この方程式の両辺を360で割って等式変形すると・・・

1/S=1/P-1/E

この式に地球の公転周期1年、金星の公転周期0.62年を代入すると、S=1.6年になり、ちゃんと584日になる。

②外惑星の場合
外惑星は地球よりも公転周期が長いため、さっきの式のPとEの関係を逆にすればいいので・・・

(360°/E-360°/P)×S=360°

1/S=1/E-1/P

ケプラーの法則
ケプラーは16~17世紀のドイツの天文学者。師匠のティコ・ブラーエの膨大な観測データから惑星の軌道と運動に関する三つの法則を導き出した。

①第一法則(楕円軌道の法則)
惑星の軌道は、太陽をたった一つの焦点とする楕円である。

②第二法則(面積速度一定の法則)
一定時間公転した惑星の軌道と太陽とを結ぶ線分が囲む面積は等しい。

③第三法則(調和の法則)
公転周期Tの2乗と、楕円軌道の最も長い半径aの3乗は、どの惑星でも比例する。
したがって・・・

3=K・T2(※Kは比例定数)

この美しい調和の法則は、小惑星のケレスと準惑星の冥王星にも当てはまる。
ケプラーは観測のみから、この三つの法則を見つけたので、なんでそうなるかは説明できなかった。
そのため、楕円軌道の法則はなんか美しくないとギリシャ哲学の人たちの受けが悪かったが(ギリシャ哲学において最も完全な図形は円だった)、この約半世紀後、ニュートンが万有引力の法則によって数学的にケプラーの法則を証明し、決着は付いた。

生物学概論覚え書き⑥

主な参考文献:トレシー・グリーンウッド、ケント・プライヤー、リチャード・アラン共著、後藤太一郎監訳『ワークブックで学ぶ生物学の基礎』
参考サイト:東京医科歯科大学 http://www.tmd.ac.jp/index.html

生態系
生物群集やそれを取り巻く環境を一つの系と考えた概念である、生態系は、生物的要因と非生物的要因で構成される。
地球上のすべての生き物が存在する生物圏は、海底から大気圏上端までであり、それは地球を取り巻く薄い膜のような空間になる。
生物圏には、バイオーム(生態群系)という広域な生物の分布帯が認められ、これは優占する植生によって特徴付けられている。つまり、バイオームとは、それぞれの環境条件下でクライマックスの状態になっている、動物、植物、土壌生物などの生物群集の集まりである。

生物的要因は以下のものある。
生産者、消費者、デトリタス(分解途上の有機物)食者および分解者は競争者、寄生者、病原体、共生者、捕食者として群集の中で相互作用する。
ちなみに「ある地域に存在するモリアオガエル全体」という場合は、個体群といい、個体群の生きる環境はハビタット(生息場所)という。
つまり、カマスは岩礁域や沿岸域、非移動性の菌類は朽ちた木、ウシの消化管内にいる細菌や原生動物は、ウシのルーメン(第一胃)がハビタットである。

非生物的要因は主に以下の三つがある。
①大気
風速と風向、湿度、光の強度と質、降水量、気温
②水
溶存養分、pHと塩分濃度、溶存酸素、温度
③土壌
利用可能な栄養分、土壌水分とpH、土壌組成、温度
これらの非生物的要因の勾配は、ほぼ全ての環境で確認でき、生物の生息場所や微気候に影響を及ぼしている。

生態遷移
遷移とは、ある場所の群集が、生物的要因と非生物的要因の複雑な相互作用の結果、時間とともに変化するプロセスのこと。
遷移初期の生物の群集は、照度、光の質、風速、風向、気温、土壌、湿度の変化といった物理的な環境の変化を起こし、その環境の変化が群集の変化を促し、さらにそれがまた環境の変化を・・・といった具合に続く。
この遷移は、攪乱が起こらない限り、安定したクライマックス(極相)群集の形成に至るまで進行し続ける。
遷移初期の群集は種の多様性も低く、群集構造も単純で、広いニッチ幅を持つが、これがクライマックスになると高い種の多様性と、それらが相互作用する複雑な構造、狭いニッチ幅を持つ。
生態遷移には以下の三つのパターンがある。

一次遷移
形成されたばかりの火山島など、それまで群集の存在しなかった場所にコロニーができること。例えばむき出しの岩の上には、まず地衣類、コケ類、一年生草本が生え、その後、草本や低木(潅木かんぼく)が、次にナナカマドのような成長の早い樹木、最後の成長の遅い広葉樹ができる。ここまでで100~200年の年月がかかる。

二次遷移
火事や地すべりなどで植生が一掃されたあとに起きる遷移のこと。植生が一掃されたとは言え土壌の消失を伴わないため、一次遷移に比べると早く進行する。
しかしそのペースは、関わる生物種、気候、土壌などの要因に依存している。
また、草刈りなどで人間が遷移の道筋をそらせてしまうと、クライマックスは自然の群集と変わってしまうことがある。このときの群集は、偏向的極相と呼ばれる。

雨林におけるギャップ更新サイクル
大型の林冠木は、高い位置で太陽光を遮り、低い幼樹の成長は阻害するなど、雨林群集の形成に重大な影響を持っているのだが、このようなでかい木が倒れると、林冠に穴が開き、林床に光が入る。これにより成長した幼樹が、林冠にできた穴を再び埋めてクライマックスになる。

ニッチ(生態的地位)
ニッチとは生物の生息環境における機能的なポジションで、その生物が資源の分布状態にどう反応するのかを示し、多種の資源をどう変化させるかに関係する。
ニッチは、物理的な環境条件、ハビタットから提供される資源、他の生物、そしてその生物の適応によって決定される。
その生物が生存できる生物的・物理的環境条件の範囲全体を、その生物の基本ニッチというが、たいていの場合、その生物が実際に占めるニッチは基本ニッチよりも狭い範囲に限られる(多種と競合するため)。このようなニッチを実現ニッチという。
したがって、ニッチがかぶってしまう二種類の生物は、同じ資源を求めて競合し、一方の種が多種を排除してしまうため共存はできないという仮説が生まれた。これはガウゼの競争排除則と言われる(イギリスに移入されたハイイロリスが、もともとイギリスに生息していたヨーロッパアカリスの分布を脅かすなど)。
ニッチは動的なもので、資源が豊富、もしくはその生物が競争に強い場合はニッチ幅は広く、資源が限られている、もしくはその生物が競争に弱い場合はニッチ幅は狭くなる。

種間競争と種内競争
別の種類どうしの競争を種間競争、同じ種類の生物どうしの競争を種内競争という。
一般的には種間競争よりも、種内競争の方が激しい。
その理由は通常、同種の個体が要求する資源は全く同じだからである。
このように競争が激しい場合、個体は基本ニッチの耐性範囲の両端の好適ではない資源も利用せざるを得なくなる。こうして実現ニッチの範囲は広がることになる。
種間競争において、異なる二種が同じ資源をめぐって競争する場合は、それぞれの基本ニッチを決める資源利用曲線は重複することになる。
重複部分では資源をめぐる競争が強く、ニッチ文化への特殊化が生じて、片方、もしくは両種の専有ニッチ幅は狭くなる(住み分けや食い分けなど)。
この時の競争の程度を低下させるための特化した生息場所のことをマイクロハビタット(微生息場所)という。

個体群成長曲線
新しい場所に初めて定着する個体群を新規個体群というが、この時新規個体群が進出する環境が低い死亡率と高い出生率を可能にする、資源が豊かな環境だった場合、個体群の個体数(N)は指数関数的に増加する。
この時の曲線を指数関数的成長曲線(J型曲線)という。もし資源に限りがなければ、このまま曲線は突き進んでいくが、もしそうなら20分で一回分裂する細菌は、二日かからず地球と同じ質量までに増殖しちゃうらしいので(ドラえもんでそんなのあったな)、絶対そうはいかない。
初期の成長(個体数増加)は指数関数的に急速でも、個体群が成長するにつれて増加は穏やかになり、その環境が維持出来る水準で頭打ちになる(環境抵抗)。このようなタイプの成長曲線はS型になりロジスティック曲線と呼ばれる(ここでのロジスティックとは物流じゃなくて成長という意味)。
定着した個体群は、ある決まった範囲で環境収容力(K)の近くを変動することが多い。

個体群の成長は以下の式で計算ができる。
N:もともとの個体数
r:その生物の増加率(20分で2倍に増殖など。これは増加数-死亡数で計算ができる)
t:時間
Δ:増加量

ΔN/Δt=r×N

この式を微分すると、Δが微分(ディファレンチエーション)のdに変わって

dN/dt=rN

この時、増加率に限界がない(マックスな)場合は

dN/dt=rmax N

となって、指数関数的成長曲線を表す式ができる。
しかし、どんな生物も無限には増えていかず、環境収容力(K)による制限がかかるので、

dN/dt=rmax N(1-N/K)

となる。例えばKの値を100にし、増加率rを1.0にすると、式の形は以下のようになる。

dN/dt=1.0×N(1-N/100)

こうして、個体数が100まで増えると増殖が頭打ちになる、ロジスティック曲線の式ができる。

センサス(標識再捕法)
個体群を測定することをセンサスという(社会学では国政調査とかだったよね)。
このとき、ヌーやシマウマみたいなでかい動物の群れなら、その個体数をすべてしらみつぶしに数えるのも、根性さえあれば行けなくもないが、個体数がすごい多かったり、その生物の大きさがすごい小さかったりと、直接すべて数えることが難しそうな場合には、推定値を出すことになる。
そういった場合には、群れの一部をランダムに捕獲し、捕獲した個体にマークをつけて、もとの群れに返す。その後、もう一度同じ群れをやっぱりランダムに捕獲し、その時捕獲した個体の何割にマークがあるかを確認する。
一回目の捕獲と二回目の捕獲が同一条件であると仮定するならば、以下の数式で群れ全体の個体数が推定できる。

N:調べたい群れの数
M:一回目の捕獲でマークをつけた個体数
n:二回目の捕獲で捕まえた個体数
R:二回目の捕獲でマークがあった個体数

M/N=R/n

よってこの式を変形すると

N=Mn/R

となり、全個体を数えなくても標本調査で、群れの個体数がわかる。
しかし一回目の捕獲と2回目の捕獲のあいだで、群れの構成が大きく変化してしまうと、この計算はあまり成り立たないので、調査の際には、捕獲方法、マークのつけ方、1回目と2回目の捕獲の間隔などを慎重に考えなければいけない。

r選択とK選択
ロジスティック曲線の成長パターンは2つの係数で決まる。
1つは、その生物の潜在的な最大繁殖力である内的自然増加率(r)で、もう1つは環境収容力(K)である、
高い内的自然増加率を持つ(めちゃくちゃ子どもを産む)生物種は、r選択種と呼ばれ、藻類、げっ歯類、多くの昆虫、ほとんどの一年生草本が含まれる。
r選択種のニッチはジェネラリスト的(広域な環境に適応できる汎用性がある)で常に新しい場所に侵入し続ける。
彼らは繁殖力や成長スピードが速い分、一個体の寿命は短く、通常は一年未満。個体群の大きさは著しく変動し安定しない。
これに対して、多くの大型哺乳類や、肉食性鳥類、大型で寿命の長い植物は、K選択種と呼ばれ、環境包容力に合わせた個体数を持ち、効率的に環境資源を利用するための競争にさらされている。
そのためK選択種のニッチはスペシャリスト的(特定の環境に特化)で、僅かな子を生み、長い寿命を持つ。また子が繁殖年齢になるまでの子育てにかなりのエネルギーを投資する。
個体群の大きさは、ほぼ一定で、環境に関してほぼ均衡状態。
この理論は、エドワード・ウィルソンが、島嶼部の生物がわりとコンスタントに絶滅(&ニッチの取り合いを)していることに着目して、1967年に提唱した。
当たり前だが、個体数が少ないほうが絶滅しやすいため、絶滅を免れるためには、速やかな個体数の増加(繁殖力)が重要だというわけである。また、いくら増えてもすぐ減っちゃったらダメなので、個体数を維持し続けるような選択も重要ということになる。

生物学概論覚え書き⑤

主な参考文献:トレシー・グリーンウッド、ケント・プライヤー、リチャード・アラン共著、後藤太一郎監訳『ワークブックで学ぶ生物学の基礎』、高橋正征編『中学理科2分野の発展的学習』、吉田邦久著『好きになる生物学』、あと高校時代の私のノート。

光合成の生化学反応
光合成は、無限に供給され続ける太陽光のエネルギーを、化学結合エネルギーとして蓄積する、生命や生態系の根源に関わる極めて重要な反応である。光合成の反応物は食物連鎖で利用され、高等動物の生存に必要不可欠な酸素も発生する。
そしてあまりに壮大なサーガすぎて現役時代の私も詳しいメカニズムは投げちゃった思い出がある。

カルビンこのやろう!!

・・・さて、ブラックマンによれば、光合成の時に葉緑体で起きる生化学反応には、光が直接関係していて温度の影響を受けない反応である明反応と、光が直接関係しないで温度の影響を強く受ける暗反応の2種類がある。

明反応は葉緑体内にあるグラナ(チラコイドという膜が積み重なったもの)で起きる。

明反応では、太陽光と細胞液内の水を材料に、酸素と水素とATPが作られる。

暗反応は葉緑体内部の液状部分ストロマで起きる。

暗反応では、二酸化炭素と、明反応で作られた水素とATPを材料に、水と三炭糖リン酸が作らる。

三炭糖リン酸は、多くの経路を経てグルコース(呼吸の燃料)、セルロース(細胞壁の材料)、デンプン(貯蔵エネルギー)、二糖類(果実のフルクトースや、サトウキビのスクロースなど)、脂肪とアミノ酸などに変換される。

明反応(エネルギー捕獲)
明反応は、光のエネルギーを使って電子を中間的なエネルギーにまで持ち上げる光化学系Ⅱと、光化学系Ⅱが持ち上げた電子のエネルギーを光のエネルギーを使ってさらに高いエネルギーレベルに持ち上げる光化学系Ⅰの二階建ての仕組みになっている。
ちなみに、外部からのエネルギーによって、粒子のエネルギーレベルが上がっている状態のことを励起状態という。

化学反応式は以下のとおり。

水×12+NADPイオン×12→NADP×12+水素イオン×12+酸素×6

光化学系Ⅱ
①水の光分解
光で水を分解し、電子伝達系で減った電子を補充する。
水は電子を失い、酸素分子と水素イオンになる。

②クロロフィル
チラコイドにあるクロロフィル分子が光を吸収すると、電子が高いレベルに励起される。

③電子伝達系
クロロフィルによって励起した電子は、チラコイド膜の電子伝達体から電子伝達体へリレーされる。この時、電子のエネルギーは、チラコイド膜の内側に水素イオンを汲み入れるために使われるので、電子のエネルギーは減少していく。

④ATP合成酵素
水の光分解や電子伝達系で出た水素イオンがチラコイド膜を通って外へ戻されるのと同時に、ATP合成酵素はADPと無機リン酸をATPに変換する。

光化学系Ⅰ
①クロロフィル
電子伝達系から受け取った電子を光エネルギーで再び励起状態にする。

②NADPイオン還元酵素
NADPとは電子を伝達してくれる化合物。正式名称はニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸といい、絶対覚えられないので略号にされている。
チラコイドのNADPイオン還元酵素は、チラコイドの外にあるNADPイオンと水素イオンを、NADPHと半量の水素イオンに還元し、この時できた水素イオンはNADPHによって暗反応のカルビン・ベンソン回路に運ばれる。

暗反応(カルビン・ベンソン回路)
ニュージーランドの教科書では、暗反応といっても別にこの反応は暗いところでしか起こらないわけではないので(反応に光がいらないだけ)、この名前は適切ではないと炭素固定って呼んでいる。
ちなみに暗反応は、発見者にちなんでカルビン・ベンソン回路とも言うのだが、“回路”というくらいなので、反応が山手線みたいに一周している。
よって、どこを始点にして説明していいかわからないけど、とりあえず光化学系Ⅰの水素イオンがストロマまで運ばれてきたところからプレイバックする。

①3‐ホスホグリセリン酸がNADPHと水素イオン、ATPによって三炭糖リン酸に変わる。
この時、NADPHはNADPイオンに戻り、ATPはADPと無機リン酸に戻る。

②三炭糖(グリセルアルデヒド)リン酸はグルコースやセルロースなどの六炭類に変換されるが、その一部はリブロースリン酸になり回路の中にとどまる。

③リブロースリン酸はATPによってリンを一つもらい、リブロース二リン酸に変わる。
ATPはADPと無機リン酸に戻る。

④リブロース二リン酸は、二酸化炭素とリブロース二リン酸カルボキシラーゼという酵素によって3‐ホスホグリセリン酸になり、①に戻ってくる。

化学反応式は以下のとおり。

二酸化炭素×6+NADPH×12+水素イオン×12→グルコース(C6H12O6)+水×6+NADPイオン×6

食物の消化
胃では、食物が酸性環境で混合されるため、微生物はみな死滅し、タンパク質は変性、ペプシンの前駆体であるペプシノーゲンが活性化する。
具体的に説明すると、ペプシノーゲンの分子は酸性度が高いと、その一部分が加水分解され、ペプシンに変わる。したがって、胃酸(成分的には塩酸でpH1~2)が分泌されると、ペプシノーゲンはペプシンになり、タンパク質をペプトンに分解していくというわけである。
しかし胃による栄養分の吸収そのものは僅かで、グルコース、アスピリン、アルコールなどの低分子が胃壁を経て吸収されるほどである。
胃と十二指腸をつなぐ幽門括約筋は、小腸に送るキームス(スープ状になった混合物)の量を調節する。

十二指腸では、胃から酸性のキームスが送られるとそれが刺激になって、パンクレオザイミンというホルモンが分泌され、これがすい臓に作用することで、十二指腸の乳頭からすい液が分泌される。
すい液にはアミラーゼ、リパーゼ、トリプシンなどの消化酵素が含まれ、アミラーゼはデンプンをマルトースに、リパーゼは乳化された脂肪分を脂肪酸とモノグリセリドに、トリプシンはペプトンをポリペプチドや少数のアミノ酸に分解する。
ちなみに、パンクレオザイミンとは「胆のうを収縮させる」という意味なので、胆のうからの胆汁排出も促す、これにより食物の脂肪分が乳化される。

その後、小腸ではエレプシン、マルターゼ、サッカラーゼ、ペプチターゼなどの消化酵素が含まれる腸液が分泌される。
エレプシンはポリペプチドをアミノ酸に、マルターゼはマルトース(麦芽糖)をブドウ糖に、サッカラーゼはショ糖をブドウ糖と果糖に、ペプチターゼはペプチドをアミノ酸に分解する。

ホメオスタシス
体内環境の調節をホメオスタシスという。
ホメオスタシスは神経系と内分泌系の二種類の調節系によって保たれている。
この二つは構造的には全く異なるが、前者は行動、後者は生理を調整するため、相互作用することが多い。

神経系は、刺激に関する情報を、ニューロンという神経細胞を使って、電気化学的な活動電位の形(細胞膜の内と外の電位が瞬間的に逆転している状態のこと。インパルス)によって伝達し、電気信号を正確、かつ非常に速いスピード(数ミリ秒以内)で、長い距離にわたって伝えることができる。
その持続時間は短く、標的への経路は神経を介するため特定の細胞に特異的である。
また、刺激に対する応答が再び刺激になって伝わるため(フィードバック)、再調節が可能である。神経系は腺からの分泌や筋肉の収縮を起こす。

一方、内分泌系は、情報の伝達を血液中のホルモンを使って行なう。そのため、どの部位の標的細胞にも広く作用する。
スピードは神経系に比べると比較的遅く(数分、数時間、もしくはそれ以上)、その分、持続時間は長時間である。ホルモンは代謝活性の変化を起こす。

ホルモン量の調節
体内のバランスは、ホルモンという化学伝達物質を血中に放出することで保たれている。
ホルモンはごく微量で大きな影響を及ぼす。

内分泌腺は、ホルモンを輸送するための管を持たないため、血流中に直接ホルモンを分泌する。
こうして、ホルモンは血流にのって体中に行き渡るが、それぞれのホルモンは特定の標的細胞にのみ作用する。
例えば、十二指腸の内分泌腺から出るセクレチンというホルモンは、すい臓をターゲットにして、すい液を分泌させる。
このような標的細胞の膜の上には、ホルモンを認識する受容体があり、ホルモンの分子はそこに結合し働く。

また、あるホルモンの効果は、それとは反対の作用を持つホルモンによって打ち消されることがある。
例えばインスリンは血糖値を下げるが、血糖値が下がり続けると、今度はグルカゴンが分泌され、血糖値を上げ始める。このように最終的な結果が、はじめの段階に戻って作用を及ぼすことをフィードバックという。

ヒトの出産
ヒトは妊娠しても無事に出産できない確率が非常に高い。
自然流産(15%の確率で発生)の原因の50%は、三染色体性や倍数性といった染色体異常である。
このような染色体の異常は、母親の年齢と高い相関が確認されている。よって、35歳以上の妊婦には、胎児の核型を調べる出生前検査が奨励されている。

染色体異常とは、生殖細胞を作る際の減数分裂の失敗である。
三染色体性は、不完全な卵形成(卵の遺伝子が半減せずそのまま)もしくは、不完全な精子形成(こちらはまれ)が原因で、ダウン症やクラインフェルター症候群の赤ちゃんが生まれる。
一染色体性は、不完全な精子形成(遺伝子が全くない精子ができる)が原因で、ターナー症候群の赤ちゃんが生まれる。

ダウン症
発生率は30~31歳の出産で900回に1回。
女性の卵細胞を作る際の減数分裂時に、21番染色体がうまく分離しないことが原因で生まれる。発達障害や精神遅延などの特徴がある。

クラインフェルター症候群
男子のみ(XXYもしくはXXXYの染色体)。
精神遅延、希薄な体毛、テストステロンの低下で乳房が発達する場合がある。
十分に発達しないペニス、大きく長い手足が特徴。

ターナー症候群
女子のみ(XO)。
知能は正常だが、空間の記憶が困難。短い首、低い身長、二次性徴がない幼児体型が特徴。
卵巣が縮小し、通常は生殖能力がない。

抗生物質耐性
抗生物質とは細菌の成長を阻害する薬剤で、細菌による感染症の治療に使われる。
通常なら効く抗生物質の影響を、細菌が受けなくなることを薬剤耐性というが、これは抗生物質の長年の使用によって、細菌が抗生物質に適応したからで、今やこのいたちごっこはエスカレート、細菌集団に短期間で耐性菌が現れるようになってしまっている。
これに感染すると治療が困難で、致死率も高いので、様々な薬剤に耐性を持つ多剤耐性菌の増加はかなり恐ろしい。

細菌が耐性を獲得する方法は以下の4つがある。

①自然発生的獲得
放射線や化学物質、転写のエラーによって、遺伝子が突然変異し抗生物質耐性を獲得するパターン。

②接合
二つの細菌のあいだで、性線毛を介したプラスミド(細菌が持つ、細胞質にはあるんだけど核以外のDNA。輪っか状の場合が多い)の移動が起こり、抗生物質耐性を別の細菌からもらっちゃうパターン。

③形質導入
ウィルスが細菌に、別の細菌のDNAを持ち込んで、抗生物質耐性をウィルスからもらっちゃうパターン。

④形質転換
抗生物質耐性の情報がある裸のDNAを細菌が飲み込むパターン。

耐性のメカニズムには以下のようなものがある。

①不活性化
細菌内の酵素が、抗生物質を壊すタイプ。

②抗生物質の標的の変化
抗生物質にはそれぞれ専門にする標的が決まっていて、例えばストレプトマイシンはタンパク質の合成、ペニシリンは細胞壁の合成を阻害するが、逆を言えばこのようなターゲットに関する遺伝情報が突然変異で変わってしまえば、その抗生物質に対する耐性がついてしまうことになる。

③浸透性の変化
抗生物質の侵入を締め出したり、低下させるパターン。
もしくは、抗生物質にタンパク質の生産を阻害されるよりも早く、細胞の外へ排出するタンパク質を生産するなど。

生物学概論覚え書き④

主な参考文献:トレシー・グリーンウッド、ケント・プライヤー、リチャード・アラン共著、後藤太一郎監訳『ワークブックで学ぶ生物学の基礎』、あと高校時代の私のノート。

メンデルの遺伝の法則
言わずもがな。センター試験では遺伝は確か毎年出題されている。
最近の高校の教科書では、なんか優性の法則も教えていないらしい。いろいろ誤解を含む表現だからだそうな。その代わりにバイオテクノロジーのページがかなり増えた。

分離の法則
配偶子を形成する際、一対の遺伝子はそれぞれ分かれて別々の配偶子に入ること。
したがってRrの遺伝子を持つ親はRの配偶子とrの配偶子の2種類が作れる。
しかしRRの親はRだけを、rrの親はrだけをもつ配偶子しか作れない。そのため、この二つを交雑すると第二世代の遺伝子型はすべてRrになる。

優性の法則
対立遺伝子の働きには優劣関係があること。これは発現における優劣であって、形質における優劣ではないことに注意。
例えば、エンドウ豆の種子の形を丸にする遺伝子は、シワにする遺伝子に対して優先的に働く。
また完全に優性が発現せず中間雑種を作る場合がある(ピンク色のマルバアサガオなど)。これを不完全優性という。

独立の法則
独立の法則とは、それぞれの形質を決めている遺伝子どうしは、互いに干渉せず、それぞれ独立して配偶子に入るという法則。
例えばエンドウ豆で、種子の形を丸かシワにする遺伝子Aa、種子の色を黄色か緑にする遺伝子Bbは、別々に配偶子に入るため、AaBbという遺伝子を持つ親が作る配偶子は、AB、Ab、aB、abの4種類が等しくできることになる。
よって、種子がシワな場合は必ず種子の色は緑に決まっている・・・みたいなことがない。
しかし、染色体が連鎖をしている場合は、この法則は成り立たない。
連鎖とは遺伝子が同一の染色体上にある状態をいい、そのため連鎖している遺伝子は染色体が切れない限り行動を共にするため、独立の法則が成り立たないというわけだ。
例えば、エンドウPにおける1対の相同染色体の片方にAとB、もう片方にaとbが連鎖している場合、Pが作る配偶子はABとabの2種類(AB:ab=1:1)だけなので、エンドウP同士を交雑してできる第二世代のエンドウF1の表現型はAB:ab=3:1となる(大文字を優性だと仮定した場合)。

複対立遺伝子
ヒトのABO式血液型は、9番染色体に座位する3つ以上の対立遺伝子によって調節されている。
夫婦の血液型がそれぞれA型とB型で、その遺伝子型が判明していない場合は、夫婦の遺伝子型のパターンはAA×BB、AO×BB、AA×BO、AO×BOの4通りの可能性があり(A型はAA、AO、B型はBB、BOのそれぞれ二通り考えられるため)、生まれる子どもの血液型の確率はそれぞれ以下の通りである。

AA×BB
AB型の子ども:100%

AO×BB
AB型の子ども:50%
B(BO)型の子ども:50%

AA×BO
AB型の子ども:50%
A(AO)型の子ども:50%

AO×BO
AB型の子ども
A(AO)型の子ども:25%
B(BO)型の子ども:25%
O(OO)型の子ども:25%

この4つのパターンの子どもが生まれる割合を全て足すと、AB型56%、A型18.7%、B型18.7%、O型6.2%となる。

DNAの構造
DNAは正式名称をデオキシリボ核酸(デオキシリボヌクレイックアシッド)という。
その特徴は以下の3つである。

①DNAのほとんどは核の中に含まれる(例外:ミトコンドリアのDNA)。

②ひとつの体細胞の核に含まれるDNA量は生物種によって一定であり、体細胞の種類によって異なることはない。

③減数分裂によってできる生殖細胞ではDNAの量は体細胞の半量になるが、受精によってもとの量に戻る。


DNA分子は、ヌクレオチドという単純な単位の反復である。
このヌクレオチドの並びを塩基配列といい、この順番によって遺伝情報がコードされている。つまりDNA分子は遺伝子の正体であり、これは1952年のハーシーとチェイスのバクテリオファージの実験によって立証された。
しかしDNA分子すべてが遺伝子であるわけではなく、RNAという分子に転写される部分(全体の5%ほど)が遺伝子であるとされている。
DNAの構造は、リン酸を介してヌクレオチドが複数つながった1組のポリヌクレオチド鎖が反平行に対合し、らせん階段のようにねじれている(二重らせん構造)。
この構造は1953年にワトソンとクリックが明らかにした。
らせん階段のステップは、1ひねり分のらせん(1ピッチ)で10段あり、そのステップを形成する塩基には、アデニン、チミン、グアニン、シトシンの4種類がある。
この4種類の塩基は、それぞれ結合する相手が決まっており、Aは必ずTに、Gは必ずCに結合する。こうして、階段の1つのステップは、2つの塩基が水素結合を起こして作られる。
この塩基対ルール(シャルガフの規則)によって、DNAは一本のポリヌクレオチド鎖さえあれば、相補的なもう一本のポリヌクレオチド鎖の配列を割り出すことができる。
つまり、二重らせんをほどけば、片方の鎖を鋳型として新しい鎖を作ることができるというわけである。
DNAがコードしている遺伝情報はRNAという分子にコピーされ(転写)、このコピーを元に情報が読み取られ、タンパク質が合成されていく(翻訳)。
このDNA→RNA→タンパク質という一方的な流れをセントラルドグマというが、現在ではRNAからDNAが作られたり(逆転写)、わりとインタラクティブ性があったのでこの中央教義は崩壊の憂き目に遭っている。

突然変異の影響
一つの塩基が置き換わるタイプの突然変異を点突然変異といい、以下の3種類がある。

ミスセンス突然変異は、1つの塩基が変わったことで、異なるアミノ酸が運ばれてしまい、それゆえにタンパク質の構造が変わってしまうような点突然変異である。鎌形赤血球貧血症の原因がこのミスセンス変異である。

ナンセンス突然変異は、終止突然変異ともいい、アミノ酸をつないでタンパク質を作るのをやめてしまうような、点突然変異である。したがって非常に影響が大きい。

サイレント突然変異は、非表現突然変異ともいい、タンパク質におけるアミノ酸の配列に影響を及ぼさない点突然変異である。なぜこのようなことが起こるのかというと、1種類のアミノ酸をコードするコドン(ひとつのアミノ酸をコードする3つ続いた塩基配列のこと)が複数あるからである。例えば、UUUでもUUCでもフェニルアラニンというアミノ酸をコードするので3番目のUがCに変異しても作られるアミノ酸は変わらない。

一つの塩基が失われたり、挿入されると、変異箇所以降の塩基配列が全てずれ、大規模な読み込み枠の移動であるフレームシフト突然変異が起こる。
この影響は点突然変異よりも大きく、終わるべきところでアミノ酸の読み取りが終わらなくなったり(ポリAテールというmRNAの末端まで読み取ってしまう)、本来よりも早い場所でアミノ酸の読み取りが終わってしまい、タンパク質の長さが短くなってしまったりする。
しかしこれが3つの塩基が失われたり、挿入されると、その影響は比較的小さくなる(塩基3つでひとつのアミノ酸をコードするため)。

またサプレッサー突然変異は一回目の突然変異の効果が二回目の突然変異によって打ち消されてしまうような突然変異を言う。

タンパク質の構造
タンパク質はアミノ酸の列が複雑に折りたたまれてできている。
アミノ酸は全20種類で種類はそこまで多くはないものの、つながる順序や個数は決まっていないため、タンパク質の種類は100億種類以上ある。
以下の図はタンパク質を構成するアミノ酸の構造である。

アミノ酸.jpg

タンパク質の構造は以下の4つのレベルが存在する。

一次構造
何百個ものアミノ酸がペプチド結合でつながり、ポリペプチド鎖を作る。
ポリペプチド鎖の中には、お互いを引っ張ったり(引力)、反発したり(斥力)するアミノ酸が含まれているため、この配列がタンパク質のより高次の構造や、機能を決定する。

二次構造
ポリペプチド鎖が折り畳まれたもの。
代表的な折り畳み方には、らせん状のαヘリックスと、2本のポリペプチド鎖が平行で結合しジグザグ状に折れているβシートの二種類がある。
二次構造はCO基とNH基の水素結合で維持される。水素結合は単独では弱いが、スイミーのようにたくさん集まると非常に強い力になる。
αヘリックスもβシートもR基が外に突き出ており、この部分がタンパク質の科学的な性質を決めている。
ちなみに毛や爪などのケラチンは全てαヘリックス、絹の繊維を作るフィブロインは全てβシートで出来ている。

三次構造
すべてのタンパク質は、二次構造がさらに複雑な形に折り畳まれて出来ている。これを三次構造といい、二次構造の様々な場所が互いに引きつけ合うことで折り畳まれる。
最も強い結合は、隣接するシステインがジスルフィド結合でつながったもので、他にも、疎水性の相互作用、弱いイオン結合、水素結合などがある。
ちなみにパーマは髪の毛(ケラチン)のジスルフィド結合の位置を変えてかけるので、一度かけるとなかなかなおらない。

四次構造
酵素のようなタンパク質は三次構造で完成するが、多くのタンパク質はポリペプチド鎖がさらに集まって出来ている。
例えばヘモグロビン分子(C303248168727808Fe4は、4つのポリペプチド鎖がサブユニットとしてくっついてできた球状のタンパク質である。
各サブユニットの中心にはヘム鉄があり、これが酸素とくっつくことで、赤血球は酸素を運搬している。
このような非タンパク質性の部分を補欠分子族といい、これを持つタンパク質を複合タンパク質という。

タンパク質の変性
タンパク質は複雑に折り畳まれることによって活性のあるR基の配置が決まり、それに伴って、そのタンパク質特有の化学的性質が決まる。
タンパク質の変性とは、この構造が消失してしまうことを指す。これによりタンパク質の機能も消滅し(失活)、一度変性したタンパク質はほとんどの場合、元には戻らない。その理由は、たとえアミノ酸配列はそのまま残っていたとしても、二次構造、三次構造を作る結合が変化してしまうからである。
タンパク質の変性を起こす原因は以下のものがある。

①強酸・強アルカリ
イオン結合を切断して、タンパク質を凝固させてしまう。
さらに強酸・強アルカリに長くさらすと、一次構造(アミノ酸のペプチド結合)も崩壊する。

②重金属
R基のカルボキシ基と強く結合することでイオン結合を切断、タンパク質の電荷を減らす。

③熱および放射線
原子に加わるエネルギーを単純に増やし、タンパク質の様々な結合を切断する。

④界面活性剤および溶剤
非電極基(電荷を持たない官能基)と結合し、水素結合を切断する。
ちなみに官能基とは有機化合物の性質を決める部分のことで、別にエロス的なものじゃない。

生物学概説覚え書き③

 何年も前にまとめたんだけど、なんとなく発表する機会がなかった生命の起源についての話が、なんとこのたび生物学概論の試験範囲なので、満をじして公開!
 こんな感じのネタが実はいくつかある。ポスターと印刷の歴史とか。

参考文献:宇佐美正一郎著『どこまで描ける生物進化』

生命の起源
原始地球(冥王代)では、毎日メテオの魔法が発動しているようなもんであり、ブルース・ウィリスが何人いたって対処のしようがなかったことは言うまでもない。
では、生命が存在しなかった原始地球にいつ、どのように生命が住みつき始め、「オレたちの宇宙船地球号」とうそぶくようになったのだろうか?

ちなみに生物の定義は①独立性(自分と外界を隔てる)、②代謝(自分でエネルギーを作る)、③自己複製(自分の情報を残す)なので、これに対応する細胞膜、タンパク質(その材料のアミノ酸)、核酸が作られなければならない。
これポイントね。

自然発生説
生命の誕生の仕組みについては、古代から様々な議論、研究がなされてきた。そして古代ギリシャの解答は、なんともメルヘンチックなものであった。
古代ギリシャでは人間はともかく、人間より劣っている畜生どもは、無生物から生まれると考えていた。これを自然発生説という。
例えば、朝露からホタルが、木から鳥が、川の泥からネズミが、水たまりからカやハエが、木材からイモ虫が、沼の泥からウナギが、ウンコから甲虫が生まれると考えていた。
んな馬鹿なと思うかもしれないが、この考えは17世紀まで続いていて、ベルギーのヘルモントという学者は、洋服のシャツと小麦からネズミを作り出す実験を行い、成功したと報告している。
しかし17世紀イタリアの学者レーディが「ハエって本当に自然発生するのかよ」と実験をしっかりやってみると、そんなことは全て誤りであることがバッサリ判明し、メルヘンチックな自然発生説は終息した。一時的にだが。

帰ってきた自然発生説
17世紀に入って「ハエはハエの親から、鳥は鳥の親から生まれる」と、自然発生説は嘘っぱちな説ということが分かった。
「鳥がなる木」についても、鳥が木にとまっているところをなんか勘違いしちゃったんだろうということになった。
ヘルモントの実験も・・・まあ、この人の部屋がネズミが出るほど汚かったんだろう。
ただこの自然発生説は思わぬ復活を遂げる。
17世紀に発明された顕微鏡によって、オランダのレーウェンフックが肉眼では見えないほどちっちゃい生物、微生物を発見したのである。
これまで知られていなかった微生物の世界は、自然発生説が適用できる新たな世界だと、自然発生論支持者は考え「目に見える鳥やネズミは親から生まれるが、目に見えない微生物は自然発生する」と、自然発生説がヴァージョンアップして帰ってきたのだ。
あのモナド論で有名なライプニッツも、微生物は無生物から生まれると、この説を支持していたという。

ニーダムVSスパランツァーニ
生物の教科書にも載っている有名な実験にニーダム(18世紀のイギリスの学者)の実験というものがある。
微生物を一度殺すために加熱処理した肉汁を、密閉した容器に入れて何日間か放置しておくと、微生物が湧いていた、という内容のものだ。
この実験は微生物版自然発生説の有力な証拠としてもてはやされたが、イタリアの生理学者スパランツァーニによって「肉汁の加熱が不十分で微生物が生き残ってたんじゃねえ?」と反論された。
スパランツァーニの反論に、ニーダムは「お前がやった追試は、物質の生命力が破壊されちゃったから微生物が生まれてきてくれなかったんだ」と「物質の生命力?」という、よく分からない謎の新設定を登場させて応戦した。
この論争の決着はフランスのプーシェによって、なんと自然発生説の勝利という形でついてしまう。
プーシェは沸騰した水の入ったフラスコに、100度に加熱した枯草と、酸素を入れて、微生物(菌)を発生させてしまった。
この実験により、「生き物の自然発生は、有機物が酸素と交わることで行われる」という結論をプーシェは導き出した。
プーシェの実験は、強熱処理した無生物から生物が生まれたので、生物が場合によっては無生物から発生しることもあり得る、ということが一応実験で証明されたのだ。
しかし彼らはまだ知らなかった。100℃の熱でも平気な生物がいることを…

パスツール
生物学に疎い人でもルイ・パスツール(1822~1895)の名前だけは知っていると思う。
パスツールは、母国フランスでは国葬が執り行われたほどの天才的化学者で、微生物版自然発生説をオリジナリティあふれる実験で、ばっさり切り捨てた功績を持つ。
彼は「それが微生物であっても、無生物から自然発生する事はない」と考えた。
パスツールは、アルコール発酵が酵母菌(微生物)の呼吸によって起きていることを突き止め、フランスの葡萄酒産業に大きく貢献もしているのだが、その研究において「このような微生物はどっからやってきているんだろう?」と、自然発生説の研究を始める。
パスツールは、プーシェの「生物は有機物と酸素が接触した時発生する」という説を実験によって反証してみせた。
まず砂糖水と酵母のしぼり汁(アンモニウム塩、リン酸塩炭酸カルシウムなど)でできた「培地」を作って一日置くと、その液が濁って微生物が現れたことから、このような有機物が含まれない培地でも生物は発生することを証明し、「有機物+酸素=生物」のプーシェの説を覆した。
またこの培地を空気に接触させなかったり、熱処理を施した空気に接触させた場合には生物は発生しないことから、パスツールは「これは培地がどうこうじゃなくて、空気に何か生物が発生する原因があるな」と考えて、生物発生の原因が空気中をふわふわ漂っている微生物によるものであると、有名な変な形のフラスコの実験で証明したのだ。

パスツール.jpg

でもやっぱり自然発生説
天才パスツールの会心の一撃によって、微生物版自然発生説は見事に退治された。
パスツールは「微生物であっても生物は無生物から自然発生しない」ことを証明した。どんなちっぽけな生物にでも親がいて、子をうむ。そんな命のリレーがある。
しかし、これが地球上に出現した最初の生命は何から生まれた?という話になると、パスツールはその問題を棚上げしてしまった。「そんな哲学的な話、科学が相手にするべきことじゃないっす」と。
パスツールが行なった自然発生説の否定は、じゃあ、生物はどんなに過去の世代にさかのぼっても永遠に親が存在し続けるのか??という新たな問題を生んでしまった。
繰り返すが、原始地球は生物が住めるような状態ではなかった。「なら地球の生命は宇宙からやってきたんじゃない?」という「地球生命移民説」を唱える人もいるが、これはこの哲学的な問いに対する答えの先延ばし戦略でしかない。
「その宇宙からやってきた生命は、何から生まれた?」という同じ問いが発生してしまうからだ。
宇宙の歴史にしろ、実は最初の最初は一回だけ奇跡があったとするのが現在の科学の考え方だ。宇宙は約150億年前、無の世界から誕生した。そして地球の生命も最初の最初は無生物から生まれたと考えられている。
そう、自然発生説は現在の生物学においても完全否定されておらず、最初の生命誕生の際には特例として使用が認められているのである。

化学進化説
生命が住めたもんじゃない、できたての地球にいきなり生命が「やあ!」って現れたのではなく、まずは無機物から生命の材料(有機物)が作られて、それから生命が出来たんじゃないか?という説を「化学進化説」という。
ちなみに有機物の化学反応は、水(溶媒)がとても重要なので、最初の生命の誕生は水のあるところ、すなわち海で誕生したというのが定説だ。
しかも海は、ちょうど生化学者が実験でフラスコを振るように、月の引力でゆられている(遠くにいる太陽もちょっと海を振ってくれている)。これを潮汐(ちょうせき)と言う。
生命が誕生する前に地球上には有機物が存在していた、という最初の生命誕生の過程を段階的に考えたのがロシアのアレキサンダー・オパーリンである。
オパーリンはとりあえず生物は、その定義①の「独立性」をクリアして誕生したと考えた。
つまり、白い紙に鉛筆で輪郭線をひいて初めて絵が出来るように、まずは生命と外界を隔てる「細胞膜」を作ることを最優先事項と考えた。
オパーリンは水に、細胞膜の材料(リン脂質とタンパク質)を混ぜ合わせて、コアセルベートという小さな球体を作り、最初の生命は大体こんな感じだったんじゃない?とした。
当然この状態では、生物とは言えないが(ただの分子だよね)、まずは「内と外」が膜によって生まれれば、その膜の内部に化合物が閉じ込められて、さまざまな化学反応を引き起こしやすくなるだろう、そう主張したのである。
ただし、現在の細胞膜を構成するリン脂質は、触媒無しで自然に作られるとは考え難く、「もうちょっと簡単なタンパク質だけの膜が最初に作られたんじゃないか」という説(タンパク質の膜でも、親水基と疎水基はできる)や、「細胞膜で内と外をくくらなくても黄鉄鉱(パイライト)という鉱物が、分子を引き寄せ、濃縮させて、有機物を作った可能性もある」という、細胞膜じゃなく、鉱物によって化学反応が活性化するというルート(ヴェヒタースホイザーの説)も考えられている。

拡散.jpg

生命が誕生した国
有機物は燃やす(酸素がくっつく)と、水(酸素+水素の化合物)と二酸化炭素(酸素+炭素の化合物)が出来るから、主に酸素と水素と炭素でできているということが分かる。
生物の体を作る細胞も然りで、その材料を元素ごとに調べると、第一位酸素、第二位炭素、そして第三位に水素と窒素が続く。次点で硫黄やリンもいる。
今回は第二位の「炭素」に注目して、最初の生命第一号を考えてみる。
グリーンランドにある今から38億年前の地層から、溶岩が冷えて固まってできた岩石が見つかっている。
より古い岩石が見つからないという事は、地球がまだまだ毎日アルマゲドンで、岩石が固まるほど冷めてはなかったという事である。
この38億年前の地層に、炭素が濃縮されたと思われる、黒い部分が残されている。炭素と一口に言うが実は小泉総理が「人生いろいろ、会社もいろいろ、炭素もいろいろなんです!」と国会で弁明したように(嘘ばっか言ってます)、炭素にも何種類かあって、この炭素の兄弟たちを同位体と呼ぶ。
炭素12(数字は重さだと思ってね)は炭素の基本形で、炭素全体の99%を占める多数派だ。
炭素13は、炭素全体の1%しかないレアな種類で、磁性を持つことからMRIのような磁石を利用した医療器具で活躍している。
さらに、炭素全体の1兆分の1しかない超レアな炭素が炭素14で、こいつは放射能を撒き散らしながら5730年に一回その半分が窒素に変化するという「おいおい!中学校で習ったこと(原子は絶対に他の種類の原子に変化しない)と違うよ!」という性質があり、この性質を利用(岩石や化石に含まれる炭素14と窒素の割合を測定)して地層の古さを計っている。
さて、ここで取り上げるのはオーソドックスな炭素12です。
生物が生命活動をはじめると、炭素13よりも、炭素12の方がより早く取り込まれるという。
グリーンランドの岩石の黒い部分は、この炭素12が濃縮されており「その犯人は生物に違いない。よって、この時代には生命が存在し、せっせと炭素を取り込んでいたのではないか?」という説が1999年にミニック・ロージングによって報告されている(参考文献:『Newton別冊「生命」とは何か いかに進化してきたのか』)。
この説が正しいならば、生命第一号はグリーンランド産と言う事になる。おめでとう!

ミラー
「無機物→単純な有機物(アミノ酸など)→複雑な有機物(タンパク質など)→最初の生命」というように段階的に最初の生物が地球に誕生したという、オパーリンの「化学進化説」は1924年の発表当初あまり受けが良くなかった。
それは「アミノ酸は生物のみが作れるものであり、無生物から自然にはできない」という考えが主流だったからだ。 しかしオパーリンにとって強力な味方が現れる。その人こそかの有名なスタンレー・ミラー(1930~2007)だ。
ミラーは、40億年前の原始地球の大気をメタンやアンモニア、水蒸気の混合ガスと想像し、その大気に放電を繰り返す装置を作った。
つまり生命誕生時の地球をシミュレーションしたのだ。
すると放電を繰り返すうちに、なんとアミノ酸や、核酸の材料の「塩基」が生成されたのだ。  現在では、原始の大気の主成分は、ミラーが仮定したメタンやアンモニアではなく、化学反応しづらい二酸化炭素や窒素であると考えられてはいるが、単純な化合物が、複雑な化合物へと進化することが実験で実証された功績は大きい。
また反応しづらい二酸化炭素や窒素も、宇宙からの放射線「宇宙線」を当てればアミノ酸が誕生することが確認されている。
かつての大気は紫外線(赤外線に比べて化学反応を促進する影響が強い)を遮断するオゾン層なんてハイカラなものはなかったから(あれは生物が作った)、化学進化の原因を放電から宇宙線にすればいいわけで、化学進化が現在反証されたというわけではありません。

有機物宇宙起源説
アミノ酸や核酸の材料(塩基)は、原始地球の大気と宇宙線で生み出すことができることを見たが、なんとそのような生物の材料は宇宙線どころか、宇宙から地球に飛んできたという供給ラインも考えられている。
どういうことかというと、NASAなどの研究報告によると、隕石や彗星に結構複雑な有機物が含まれていて、それが地球に生命の材料を提供したというのだ。
良く考えれば、宇宙線によって化学反応が促進されるならば、宇宙に有機物が存在しても何ら問題ではないのかもしれない。
特に宇宙での有機物のメッカは、恒星(太陽や星座のように自分で燃えてる星)が生まれるゆりかご暗黒星雲だという。
宇宙生まれのアミノ酸や塩基が、隕石や彗星によって運ばれて地球と言うフラスコに入ったのかもしれない。

宇宙.jpg

熱水噴出孔
そのほとんどが水でできている生命は、「海」と言う水の入ったフラスコの中で生まれた。
物質の運搬、タンパク質をいい感じに溶かして化学反応の円滑化、比熱が大きい(温まりにくく、冷めにくい)ことによる急激な温度変化の防止と、使い勝手のいい媒体である水がなければ、生命は当然生きていけない。
だから、有機物は宇宙からも来てても、生命のふるさとは水のある海であることは疑いようもない。
しかし海は広いな大きいな。
海のどこで生物が誕生したかと言えば、これまた「母なる海」と言う一般的なイメージとは程遠い熱水噴出孔(ブラックスモーカー)と言う究極的に過酷な場所である。
熱水噴出孔とは、地球の熱(地熱)によって超高温に温められた熱水が海底から噴出している煙突である。
この海底の煙突はチムニーと呼ばれ、高さ数10メートルに及ぶものもある。
ぱっとみ地獄絵図のような熱水噴出孔だが、こんな高熱の場所でも、けっこう平気で生きているモノ好きな生物(ジャイアントチューブワーム、コシオリエビ)もいる。
それもそのはず、考えようによってはここは生物のオアシスなのだ。
まずと言うエネルギー源があるし、熱水にはアミノ酸などの有機物の材料(メタンやアンモニア)が含まれている。
さらにここには鉄やマンガンと言った金属鉱床があり、ハイテク機器には欠かせない高価なレアメタルだってある。深すぎて(水深2500メートル)持ってこれないけど。
これらの金属イオンは、化学反応を促進する触媒として働いてくれる。
さらに水深3000メートル以上深い所の熱水噴出孔では、熱水の温度は400度になり超臨界状態になる。
小学校などで「水は100度で、気体の水蒸気になります」と教わったが、実はそれは1気圧の場合の話で、圧力が低いと水は100度以下で沸騰し(だから富士山で米を炊くと失敗しちゃう)、逆に圧力が高いと100度以上でも沸騰しない。
超臨界状態の熱水を噴射する熱水噴出孔は、ななななんと気圧換算で218気圧、熱水の温度は374度以上である。
超臨界状態の水は、もはや普通の水とは一味違った性質(液体でも気体でもない)をもち、イオン化傾向の最後尾にいる腐食に強い銀、白金、金をも酸化させてしまったり、水の分際で油と混じったりする恐るべきリーサルウェポンだ。
超臨界状態の水は、水を加えて化合物を分解する加水分解もするが、逆に、水を奪ってくっつける脱水縮合もやっちゃうらしいことが、近年の研究でわかりつつあるらしい(「海洋研究開発機構 横浜研究所 (2006年)」)。
「それがなんだ」と思うかもしれないが、実はアミノ酸同士がつながるペプチド結合は、この脱水縮合という結合パターンで、ぶっちゃけこれは水の中では非常に難しい。というか無理。
でも超臨界状態の水では、アミノ酸がくっつくことが実験で報告されている。その点においても熱水噴出孔が、生命のおふくろである可能性は高いのだ。

RNAワールド
ここまでの話をまとめると、最初はアミノ酸や塩基などの低分子有機物だけがあったんだけど、熱などのエネルギーにより、そっから、RNA、DNA、タンパク質などの高分子有機物が作られたという流れになるが、じゃあRNA、DNA、タンパク質のうち一体どれが一番最初にできたんだっていう話にもなる。
RNAは所詮コピーで、原版のDNAあってのものだし、DNAもなんだかんだでタンパク質を組み立てる設計図にすぎないから、肝心のタンパク質がないとどうにもならない(そもそもRNAもDNAも酵素がないと作れない)、タンパク質も触媒作用とか色々すごいけど、その設計図であるDNAがなければ合成できない。
こうなると、どれかがひとつあってもどうにもならない感がすごいが、最近ではRNAが一番最初に出現したんじゃないかというRNAワールド説がもてはやされている。
その理由は、リボザイムというタンパク質的な触媒作用があるRNAが発見されたからである。
つまり最初はこのリボザイムが遺伝情報と酵素作用の両方をやっていたんだけど、その後、遺伝情報の記録の方はDNAに、酵素作用の方はタンパク質に譲っちゃって、自分はただのコピーでいいっすと、一線から身を引いちゃったのだと考えられている。

連続共生説
真核細胞とは、核と細胞質が明確に分かれていて、動物や植物、菌類、原生生物など、原核生物を除くほとんどの生物が持つ細胞で、最も古い真核細胞の化石は、21億年前の地層から発掘された。
真核細胞っていうのは、細胞質にミトコンドリアとか葉緑体とか様々な細胞小器官を持っているため、原核細胞に比べてずっと構造が複雑で、これが一度に出来上がったと考えるのは難しい。
そこでマーギュリスは、真核細胞はもともとは原核細胞で、彼が海を遊泳する別の原核細胞を飲み込んじゃって、合体したんじゃないのかしら?(この人女の人)と考えた。
つまり今では細胞小器官に成り下がっているミトコンドリアも葉緑体も、もともとはそれぞれ別の独立した生物で、そのためこいつらは体細胞とは異なる独自の遺伝情報を持っているというわけ。
この説の根拠はもう一つあって、ミトコンドリアや葉緑体には二重の膜がある。なんで膜が二つもあるんだ、いらねえだろって言うと、ひとつはミトコンドリアたちの膜で、もうひとつは彼らを取り込んだ細胞の膜って考えれば腑に落ちる。
おそらく、ミトコンドリアは原始的な好気性細菌、葉緑体は原始的なシアノバクテリアで、自分の遺伝情報を中央(現在の核につながる部分)に集めた細胞に、サラリーマン金太郎的に吸収合併され、現在の形の真核細胞になったと思われる(読んだことないけど)。
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