ザ・タウン

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆」

 探さなかったのは探しだす意味がなかったからだ。

 世界一銀行強盗が起こる街らしいボストンのチャールズタウンを舞台にしたギャング映画。って言うと北野映画的バイオレンスものって感じがするけど、なんというんだろう、この映画って上手く言語化できない爽やかさがあって心になんか引っ掛かるんだ。
 でもそういうとまた誤解を生みそうなんだよな~別に青春映画とかなわけじゃないし、結構結末はそれなりに悲惨なんだけど・・・む~・・・創作ってやっぱ奥深いなw

 あらすじだけ読むと、けっこうベタなんだよね。ある若者ギャングが昔馴染みの友達と共にいつものように銀行強盗を実行するんだけど(!)そこで人質にした美人銀行員と恋に落ちてしまうって感じ。
 でもあらすじ斜め読みして「な~んだありきたりじゃん」って馬鹿にしちゃ勿体ないぜ。確かに前半の展開は結構ありがちな「なりすまし劇(の亜種?)」なんだけど(三谷幸喜ならここはこうやってコメディにするな~とか見てたw)中盤から後半の熱量がなんかすごい。脚本のここの技術がどうこうとかじゃなくて全体的なアベレージ、お話の持っていき方がただただ上手いんだ。

 まあ、とにかく重火器持って銀行や現金輸送車を襲うんだから、ちびっ子ギャングのいたずらのレベルを超えているんだけど、なんていうんだろ、当の本人たちは本当駄菓子屋で万引きする感覚でやっちゃうから、あんまり悪党に見えない。
 だって小学生が駄菓子屋で万引きした位で「こいつらは悪の権化だ!」ってあんまり憎まないでしょう?しょうがねえなあって感じじゃん。
 高校生くらいがやるとさすがにワルのレールを感じちゃうんだけど、やっぱこの映画のギャングたちって描き方が上手いのか『ルパン三世 カリオストロの城』みたいに清々しい。

 こういう勉強できない悪ガキって小中学校の頃は結構いたんだけど、やっぱり義務教育が終わっちゃうと途端に疎遠になっちゃうよね。別にケンカ別れしたわけじゃないのに。
 最近リアルが充実していないのか、子どもの頃の友だちと遊ぶ夢をよく見るんだけど、やっぱりあの頃は付き合っている友達の「振れ幅」が大きかったと思う。
 いい子、悪い子、賢い子、バカな子、金持ち、貧乏人、いろいろな子どもが強制的に一つの部屋に放り込まれていたから、本当社会に出てサラリーマンをやるよりも社会を学べたような気がする。
 大人になるとなんか似たような仲間とばかりつるんじゃうんだよね。ツイッタ―だって「クラスタ(特定の興味によってできるフォロワーのまとまり)」ってのができるくらいだから。
 で、他者の些細な違いを受け入れられなくなってしまう。まあさすがに「銀行襲撃なう」は受け入れられないけどさw

 でも仮にこいつらが『刑事ナッシュ』とか『24』とか『CSIマイアミ3』とかの刑事ドラマの世界で同じことをやったら、問答無用で撃ち殺されちゃう悪役Aになっちゃうんだろうな~って考えると、作劇の仕方で同じ事象もどうにでも描けるってことだよね。
 みのさんの「どうぶつ奇想天外!」とかで、ペンギンが主人公の回ではオタリアってすっごい凶悪で残虐非道な海の殺し屋なんだけど、オタリアが主人公の回ではシャチ母子の知育玩具にされちゃうかわいそうな奴になっちゃうんだよ、あれと似たようなもんだよね。

 とはいえ彼らの犯罪を決して軽く描いているわけではなくて、銀行強盗に巻き込まれた女性銀行員がトラウマになるシーンや、主人公たち実行犯を裏でピート・ポスルスウェイトさんが操っているシーンとかもあって加害者と被害者の関係を重層的に描いていたりする。
 主人公は加害者でもあり、チャールズタウンの被害者でもあるのだ。陳腐な表現だけど、やっぱり人間って親と生まれる街は選べないわけで、そのスタートラインで人生の半分以上はすでに決定されちゃうんじゃないか?ってこの映画を観ててすっごい感じた。

 人間の人生ってぶっちゃけなるようにしかならなくて、それを死ぬ前にどれだけ受け入れられるかどうかだけなんだろうなって思う。個人差はあるけど今まで全ての人が例外なく老いて死んでいったわけだからね。
 それに私って近代的な「自由意思」なるものもあまり信じてないから、自分の運命は自分で切り開く!って言う考え方もなんか違和感があるんだ。
 なんか典型的な「いまどきのバイタリティーのない若いもん」の思考って感じがして情けないけど、おれ達は世代的に高度経済成長もバブルも知らないんだから、いかにこの慢性的不況と、ぬるま湯的な豊かさに付き合っていくかだよね。どっちもいずれあっさりなくなる気もするけど。
 
 ただこの考え方も突き詰めて考えると、まあつまらないニヒリズムだ。私一人で日本の不況や栃木県足利市は変えることはできないけれど、そんなに嫌なら群馬や埼玉に逃げてもいいし、日本が嫌なら国外逃亡だってできる。別に銀行襲ったわけじゃないんだから選挙に出たっていいわけだしね。
 でもやらないし、できない。それで「ぶーぶー」街(=自分の置かれた境遇)の悪口を言ったり未来を悲観している人が最近すごい多い気がする。
 この映画の主人公ダグ・マクレイはそういった意味ではあがいた。これじゃダメなんだって。友達や家族や町や過去を捨てて、まっとうな人生をやりなおそうってあがき、その希望の象徴が女性銀行員だったんだけど、結局多くの犠牲を払って街は出れたものの彼女との堅気の生活は手に入れられなかった。

 この映画に「ひっかかり」を感じた大きな理由は、生きて街を出られた彼が最後のシーンで何を思い感じているのかがうまく想像できないところだ。
 私、絶対この主人公も「たけし映画」のように最後は死ぬと思っていて(犯罪者Aだしなw)それが予想を裏切って無事生きて警察から逃げられたんだから、普通の映画なら「よかった~!ハッピーエンドでスッキリ!ちゃんちゃん」ってなるんだけど、なんかすっごい複雑な気持ちになったwそれは決して「なんだよ結局助かっちゃうのかよ、甘っちょろい結末だな~」とかではなくて。

 それはやっぱり最後に見せる彼の何とも言えない表情のせいなのかもしれない。友人や家族を失った悲しみなのかな?それともアメリカにいる限りおっかけてくるであろうFBIへの恐怖なのかな?そのどちらでもない虚無感なのかな?
 『ジュラシックパーク』の原作小説の最後のセリフって知ってますか?「もともと人はどこかへいけるわけではないのですよ」なんだよ。
 
 最後にラストのテロップについて。

 チャールズタウンは強盗の温床として名高い。だが昔も今も市民の多くは善良は人々である。この作品を彼らに捧げる。

 捧げられても!

さや侍

 「面白い度☆☆ 好き度☆☆」

 父が明日どじょうすくいをすると言って聞かないんです。

 なんだかんだで今日初めて見たダウンタウン松本人志監督映画。松本人志さんが日本のお笑いに与えた影響なんかは私よりも詳しい人がいくらでもいるでしょうし、今なお「信者」といったレベルの熱心なファンの方もそれこそたくさんいるでしょうから、私がこの人について書くのは気が引けるのですが、実はこの人のスローペースかつシュールな笑いって漫画家だと「うすた京介」あたりに影響を与えていて、ダウンタウン以降のお笑い芸人がみんなダウンタウンの真似ばかりしたように、うすた先生以降のギャグ漫画家もうすた的ギャグ漫画を描くようになっちゃったという感覚が私にはあります。

 これはつまりテレビのお笑い番組の文法が漫画に持ち込まれるようになったってことなんだけど、以降その「邪道」がギャグ漫画の基本スタイルになっちゃった。
 そして今なおジャンプのギャグ漫画ってボケのキャラがシュールなことをやって、それを受けた突っ込みのキャラが「なんたらなんたら~~~~!!!(ガーン)」みたいなことばかりやっていたりするwやっていることがテレビの漫才なんだよw
 なんにせよ松本さんはギャグ漫画のスタイルすら変えてしまったのだ。そんな松本さんはもともと漫画家になりたかったらしい。なんか皮肉w

 で、本題。たけしさんが「笑いとは落差、ギャップである」と言ったように、松本人志さんは「笑いとは繰り返し、パターンである」と確信している気がしてならない。
 とにかく個々のネタが面白かろうとつまらなかろうと、それをひたすら繰り返していけば、なんだかよく分からないけど、見ている人は段々松本さんのペースにのせられてつい笑ってしまう。そんなような長期戦をこの人は得意とするんだろうなってつくづく思った。せっかちお断り!
 いや~だからこの映画もとにかく長い。くどい。時間の無駄。そしてそのナンセンスさがシュールな笑いを生んでいるのだから、なんかこれで笑っちゃうのはちょっと悔しい気がするwだって無価値無意味なのだから。
 
 ツービートの漫才が鋭い痛みを与える猛スピードの機関銃だとすれば、ダウンタウンの漫才はこんにゃくをぺたってず~っとくっつけられているような感じ。やめろよ、しつこいなあって最初は思うんだけど、とうとうあまりのくどさとくだらなさに降参して笑ってしまう。
 たけしさんが松本さんのことを「ちょっとオタクくさいんだよな」と評するのもよく分かる。良くも悪くも松本さんってお笑いオタクなんだ。
 だからオタクの王様岡田斗司夫さんが大好きなんだろうけどね。

 で、オタクの第一世代が貴族的なように、お笑いオタクの松本さんも素人(=お笑い平民w)がお笑いを評価することなんかできやしないぜ!って思っているフシがあるw
 そういえば最近のお笑い決定戦的な番組は、M1だろうがキングオブコントだろうがIPPONグランプリだろうがオモバカだろうが、全て芸人が芸人の芸を審査している。素人である視聴者の感覚なんか信じちゃいない、松本人志さんはたけしさんと同じように「迎合」をしないのだ。だからこそあのポジションにいるのだろうな・・・

 あれ?あんまり『さや侍』の話してないな…ごめんごめん。で、話を戻すけど、このおはなしって本当に松本人志が全て考えたの?って、観ながら私ず~っと思っていた。
 良くも悪くも脚本がしっかりしちゃっているんだ。特に冒頭~中盤の松本的グダグダがウソみたいな程、クライマックスにかけて展開が王道になっちゃってる。

 演出とかも一気にプロの仕事になっちゃってて、これ絶対松本さんの力じゃねえだろってw笑顔をなくした若君のように松本監督はただその場で座っているだけで、現場慣れした映画のてだれ達が「はいはい松本さんはそこにいてください。セットもこっちが組みます。このアングルはどうでしょうか?30日目の業では殿さまが金平糖のふたをしめるという演出はいかがでしょう?」とかいろいろやっちゃって、松本さんはシャイだから「うん、いいね…」くらいしかスタッフに口出ししていなかったらちょっと切ないよな。

 クレジットを見るにおそらく「脚本協力」の高須さんや板尾さんがかなりテコ入れをしたんだろうけれど、それが映画全体として見事にちぐはぐな印象を与えちゃって私はちょっと松本映画としての魅力をスポイルしちゃったと思う。
 こんなちゃんとした映画を果たして松本さんは撮りたかったのか。もっと松本さんの好き勝手にやらせて、映画としてははっきり言って破綻しているんだけど、こんなの松本さんしか撮れないよ!っていうものを作った方がいいと思うんだけど、まあ映画って一人じゃとれないから難しいんだろうな…あ、それが前二作で「今回はちゃんと作ろうよ」ってことになったとか??

 最後に一言。うどん鼻すすり指導:ほっしゃん、字幕監修:チャド・マレーンに一番受けたのは私だけではないはずだ!

漫画を作る手順

 いやー漫画が大変…全然進まない。全然終わらない。ツイッターでもつぶやいたけど、プロの漫画家ってそれこそ一日中描き通しなんだなってことを肌で実感しました。これ比喩じゃないぞ!

 私もちょっと偉そうに、漫画業界を知った気になっていましたが、想像するのと実行するのは大違いだ。よく漫画家で「締め切り前は修羅場ですよ」とか言う人がいて、漫画家を目指してる人はそう言うセリフに憧れたりするんだけど、やめといたほうがいいよ。あれ冗談じゃなく、本当だから。

 余計なお世話かもしれないけど、漫画家志望の人は俺は“実際に”24時間以上漫画を描き続けられるのだろうか?って考えた方がいいと思う。そこまで漫画を描くの好きじゃねえなって思ったら、少なくとも商業誌で週刊連載をする漫画家は諦めよう。悪いことは言わないw
 あの世界は一冊の雑誌を作るのに、とんでもなくたくさんの人がそれこそ不眠不休働いているから、新人ごときが締め切りを破ったら、大勢の人に迷惑がかかってみんなになぶり殺しにされると思う…

 私は週刊連載なんてやんなくて本当良かったと思っている。これは連載会議で落ちた負け惜しみじゃなくて本当に。
 10代の頃って馬鹿だからそういう仕事の大変さを分かっていなかったんだよね。編集者が「アシスタントは少なくとも3人はつけます」って言った時も「別に一人で描けるよ」とか思ってたもの。

 で、その後、作画クオリティが半端無いプロの漫画家さんの仕事に対して「確かにすごいけど、これたくさんのアシスタントを雇って描いているんだよ」とか言ってたけど、やっぱりアシスタントを7人雇っていようが毎週19枚の原稿をあげるのは超人的。
 仮に私にアシスタントが7人いたとしてもやっぱり7日で19枚は終わらせられないと思う。アシスタントに指示を与えたり、その仕事をチェックしたり、場合によっては修正したりと、気を使う作業はむしろ増える気もするし。

 今回の件を思い返せば、ちょっと作業の見通しが甘かったのかもしれない。私の脳内スケジュールではトーン貼りなんて二日もあれば終わるだろとなめていたのですが、まあ結局終わったんだけど、おかげでまったく寝れなかった。
 こんなに無理したのは教育実習以来だろってほどきつかった。こんなの繰り返してたら本当体壊すよ。
 今後こういう事態に陥らないためにも、この作業は大体これくらいの大変さでこれくらいの時間がかかるから、この日数を割り当てようというように、漫画製作の各作業を見なおしてみようと思う。

 私が漫画を作る時の手順は大体いつもこんな感じ。

①イメージを膨らませる(所要時間:?)
 「考えるな感じろ」が嫌いとか言いながら、一番最初は抽象的な視覚イメージから入ることがほとんど。このシーンかっこいいな、とかビジュアルを大まかに空想していく。
 あとけっこう自分の実体験がものを言ったりする。こんなことあってこういうこと考えたんだよな、それをみんなに伝えたいなあとか。

②シノプシス(所要時間:2時間ほど)
 大体の話の流れを決めて、それに肉付けをしていく。世界観や設定、登場人物の適当なリストを文字に起こす。画は描かない。絵嫌いだから。だから登場人物の顔はまだ決まってない。
 この段階はサラリーマンとかで言うと企画書づくりって感じ。先生だとレジュメって感じ。

③プロット(所要時間:数時間)
 シノプシスのあらすじをもう少し発展させていく。なにせ登場人物がいるわけだから、物語の流れに沿って思考実験ができる。この段階で登場人物に“キャラ”ができてくる。口調やリアクションとか。『80日間宇宙一周』の時はこの段階でミグのキャラクターや立ち位置が若干変わった。
 物語の展開はこの段階でほとんど決定する。細かい伏線もここで決める。伏線がちゃんと回収できるように、伏線シーンのとなりに「このシーンの伏線」って身も蓋もなくメモってあるから、本当ネタばれ文書(笑)。

④取材(所要時間:一か月~長い場合半年)
 取材って言うと大げさだけど、SFや歴史物の場合この段階でたくさんの本を読んだりする。その半分くらいは本編に反映されなかったりするんだけどねw
 大学に通ってた時は大学教授に漫画ということは隠して専門的な質問をしたりした。向こうは「いやー熱心な学生もいるもんだなー」と勘違いし、私は漫画が面白くなってどっちもハッピー。最近はもっぱらツイッターでイラク戦争で使った戦車の種類を聞いたりしています。
 この取材で得た知識が物語に大きく影響を与えることもあるので、その場合はプロットを若干修正する。前のを没にして丸々描き直すこともあります。

⑤脚本(所要時間:早い時は一日、かかると数週間)
 高校生の頃ページ数の決まった短編(『抽選内閣』)を描くようになってからやり出した作業。
 物語に沿って全てのセリフを決定する。ト書き形式。脚本はパッとできる時もあればかなり難産な場合もある。その差が分からないけど…例えば『イッツアドリームワールド』や『ダブルスピーク』は数時間で完成しちゃったけど、『ラストパーティ』とかなんかは結構かかった。
 脚本はオフィスのワードで作っているんだけど、シーンをカットしたり追加したり、シーンの順番とか変えたい場合、ワードはすごい便利。高校の頃はノートに書いてたけど、その時は鉛筆で書いた文章を消したり描き足したり大変だった。
 また私が普通の漫画家のようにネームの段階で話を決めないのは、シーンの変更がネームでは面倒くさいからだ。つーか無理。

脚本.jpg

⑥ネーム(所要時間:一日に10枚前後。場合によっては一日で一話分26枚描けることも)
 漫画の8割はネームで決まるといわれるけど、確かにネームでカメラアングルやコマ割り、漫画の具体的ビジュアルがほとんど決定される。
 漫画家さんによってはネームでプロットや脚本に当たる作業をまとめてやる人もいるから、そうなるとネームの重要度は半端無い。
 別にネームはキャラの絵とか最低「へのへのもへじ」でもいいんだけど、浦沢直樹先生みたいに下書きと言っていいほどかなり絵としてちゃんとしたモノを描く人もいる。
 紙にはルーズリーフを使う人もいるけど、私はこのネームの絵を“下書きの下書き”として使うので大学時代までは原稿用紙大のB4のコピー用紙で描いていた。今はA4サイズのノートに描いている。画が一回り小さくなるけど、こっちの方が友達に読ませる時、本みたくなるので便利。保管もしやすいし。

える下書き.jpg

⑦作画(所要時間:一日3~5枚。)
 ネームの下書きの下書きをトレースする。そこでトレースした絵をさらにトレースして線画を完成させる。ずっとトレース台の光を見ているので目は疲れるし、けっこうめんどうくさい。
 昔はインクでなぞってたんだけど『超音速ソニックブレイド』からはデジタルコミックってことで丁寧に鉛筆でなぞった絵をスキャナーで取り込んで、それを二階調化している。いまいましいペン入れがなくなって本当せいせいしてますw
 ちなみに私は絵を描くよりも話を考える方が好きなタイプなので、作業としては⑤か⑥を終えた時点で飽きていることが多い。

える線画.jpg

⑧エフェクト(所要時間:そんなかからない)
 コマによっては集中線やオノマトペを付け足すことがあるんだけど、いまはデジタル的に合成している。インクの時代は一回描いちゃったら最後変更はきかなかったけど、位置や大きさも変えられて便利なんだ。
 場合によっちゃ別の紙に描いた背景や小物(湯のみとか)もペーストして加えたりする。

⑨スクリーントーン(所要時間:一日4枚)
 デジタル作業になったから、手で貼り付けたころよりもずっと楽になったかと言われれば実はそうでもないかもしれない。気軽に貼れて修正も効く分、際限がなくなって貼る量がずっと増えた気がする。
 なにしろデジタルでは、髪の毛にだって貼れるからね。アナログじゃ普通髪の毛なんかに貼らないよ。前髪のギザギザ部分なんかはカッターさばきが面倒くさいし、はがれるし、欠けちゃうから、ベタで処理していたんだ。
 この作業を先月なめていて偉い目にあったというわけ。寝ずにやったら一日10枚近く貼れるけどお勧めしない!

えるトーン.jpg

⑩写植(所要時間:トーンと合わせて一日4枚ほど)
 吹き出しの中のセリフを手書きの汚い文字からフォントにする。普通漫画家はこの作業はせず、編集者がどの文字をどれほどの大きさで使うか指定し、それをもとに印刷会社の人がフォントにして原版を作ってくれるんだけど、うちのサイトはこの作業も作家持ち。面倒だけど、キャラの台詞にこだわる人はいいんじゃないだろうか。勝手にセリフ変えられる心配もないぜ。

える完成.jpg

 完成。…とこんな感じで作っています。けっこう面倒くさいでしょう??

さらば親知らず

 私のブログにしてはなかなかの日記的記事であるw。とにかく歯磨きがメチャクチャしにくくて虫歯になりもろくなり半分がポロってとれちゃった、はた迷惑な親知らずをついに抜いた。

 私の顎には計四本の親知らずがあって、そのどれもが総合病院の先生曰く「墓場まで持っていけない」ものらしいのだけど、一年ほど前に右の上下の歯は総合病院の口腔外科の大手術で抜いてもらって、左の上の歯を今回抜いてもらったから、残すは左の下だけ。
 私の下の親知らずって顎の中に横倒しに埋まっていて、こいつは本当普通の歯医者じゃ抜けないものだし、こいつを手術で抜くとすごい腫れて顎が開かなくなるんだ。
 確か1,2週間は顎を動かすたびに電撃的痛みが走って何を食べてもおいしくなかった気がする・・・あれは辛かった。食事位しか生甲斐がないのに。

 今回抜いてくれた先生は右の上下の歯を抜く際に総合病院に紹介状を書いてくれた人なんだけど、すっごい丁寧な先生で「今日決心がつくのでしたら抜きますけど・・・」「ぬいて」と即答しちゃった。一カ月以上待たされているからね。これがインフォームドコンセントか!
 しかし虫歯によって欠けに欠けた歯だったから、つまむのに大変そうだった。ネジネジやられてグリグリやられてゴリゴリやられて「この道具じゃダメだわ~あれかして下さい」とかあって三度目のトライで抜けた。神経的には麻酔で何ともないけど、やっぱけっこう物理的に痛いw

 総合病院で上の歯を抜いてもらった時は、まだ原形をとどめていたからか、0.8秒ほどの一瞬でポンと抜けた(下の歯は20分以上かかったのにえらい落差だった)んだけど、あの一瞬の痛みは今のところ人生で味わった痛みの中でもベスト3くらいに痛かったので(ちなみに一位は大腸の内視鏡検査)、それよりも痛くはなくて良かった。あ、でもすごい痛かったけど・・・0.8秒の時と比べれば相対的に痛くないってことね。

 実は二週間ほど前親知らずの虫歯が本当煩わしくなって、たまらず塾が休みの日に自転車で別の歯医者行っちゃったんだけど(一カ月も待ってられなかったw)、その時虫歯にかぶせられた応急処置の薬をその先生が見て「なんかかぶせられているんですけど何かありました?」って聞いてきて、ちょっとあわあわ。
 浮気が発覚したような亭主の心境を味わったけど、ここでウソついてもしょうがないので「すいません浮気しました」って白状した。
 で「これかぶせた人誰だろう?うまいなあ」ってwどっちの歯医者も近所では腕のいい歯医者だったので(だから待たされる)治療の後を見ると相手の実力が分かるもんなんだろうねwそこがちょっと面白かったです。

 まあこれで恐る恐るの歯磨きの日々も終わったってことだ。今日は歯磨きしちゃダメって言われたけどね。「抜いた後の穴にゴミが入ってもそのまま歯茎に埋まったりしません」ってw

『働かないアリに意義がある』

 創刊一周年(歴史がねえw)というメディアファクトリー新書。著者は長谷川英祐さん。日本のエドワード・ウィルソンの如くアリやハチといった真社会性昆虫を、とんでもない忍耐力で観察・研究する社会生物学者だ。
 どんな集団でもその内の2割は怠けてしまうという「パレートの法則」をアリのコロニーで実際に確認した際、どっかの新聞の読者投稿欄に「暇なんですね~」と茶化されたらしいが、冗談じゃない。
 あんなちっこいアリを毎日カウントし行動を常に記録するわけだから、スタッフの一人が赤いおしっこを出したのも頷ける。趣味的かつ地味だがとっても過酷な仕事なのだ。

 さてあとは例によってツイッターのペースト。最近本当に締め切りがやばくて、毎日夜を徹して描いているんだけど、それでもギリギリになりそうなんだ。定期的にブログを見に来てくれる人には本当悪いけど、勘弁な~(c)金八

 『働かないアリに意義がある』読了。ハミルトン則の第3章は分かりやすくて良かったけど、綾波レイが出てきた第4章が急に難しくて謎。引用の仕方も分からないし。説明が難しいからってアニメキャラだしてごまかすなよw

 あと第5章の最後で急に経済のグローバル化の話をしだしてそこがそこらの経済学者よりも話がずっと面白く示唆にあふれていた。この本の白眉だ。
 そーいや東京ドッグさんが教えてくれた「チート」って言葉がこの本でも出てきたwフリーライダー(タダ乗り野郎)のことらしい。

 ひとくちにアリやハチ(真社会性昆虫)といっても、その社会の実態は種によってかなり違う。面白いのはオスと交尾しながらも女王の遺伝子系が結局変わらない奴とか、王も女王も遺伝子系が結局変わらない奴とか(ワーカーの遺伝子系はちゃんと半々で交わる)w
 要はクローン帝国が一番血縁選択的にはいいんだろうけど、そうするとひとつの要因で共倒れの危機が。あと分業が上手くいかない。反応閾値の多様性がなくなるから(小難しい専門用語である「反応閾値」を「仕事をやる際のそいつの腰の重さ」と要約したのはうまい)。
 私が一番気になったのは、どういう了見で単数倍数性(受精卵からメス「2n」が、未受精卵からオス「n」ができる生殖の仕方)が進化で出てきたのかが謎。真社会性昆虫の社会の多様化や葛藤はこの生殖方法がそもそもの原因になっているんだけど。
 
 そうだ、本書のハミルトン則への鋭い指摘もまとめておこう。

 ハミルトン則は「br-c>0」って書くんだけど、つまり自分と血縁度の高い別の個体を助けることで発生する利益(b×r)が自分が利己的に生きた場合のメリット(c)よりも大きいってことなんだけど(これを包括適応度という)、実はこれ実験で確認するのは相当難しいらしい。
 なんでかって言うと、真社会性昆虫において自分の子さえ助かればいいというような利己的シングルマザーがいないからなんだってさ。だから利己的に生きることと利他的に生きることのメリットデメリットの比較ができない。式の不等号の部分が確認できないわけだ。
 
 ひとはつい美しい理論に飛びついて満足しがちなんだけど、その理論が現実の振る舞いと異なるのなら意味がないとも言っている。だからなんとか利己的なコロニーを人工的に作ったりして対照実験をしようとしているんだけど、やっぱハイゼンベルグの不確定性原理に抵触しちゃうんだろうな。

 余談はともあれできないことはできないのでした。人間できないことがわかっていることはやりたくないものです。最初はワーカーの包括適応度を測ることに熱中していた研究者たちの情熱も、ハミルトン則を検証できないことがわかってくると、次第に冷めていきました(95ページ)

 なにしろ相手は生き物だ。授業参観で親がくるとクラスの雰囲気がいつもと変わるのと同じである。まあアリはバカだからちゃんとしたデータを出してくれるかもしれないけど。

 あと血縁選択説派と群選択説派の抗争なんてもんがあるのも初めて知ったwとりあえず筆者は「単数倍数性の真社会性昆虫には群の効果がなくても利他的行動が進化しうる土壌があった」としている。その上で群選択も働いているわけで“どっちが”じゃなくて“どっちも”らしい。なぜ人間はいがみ合うの?

 最後に爆笑したのが、大学で学生に「先生の言ったことは教科書に載っていませんでした」と言われた長谷川さんが「科学者は自分が正しいと思ったことは世界がみんな違うと言っても、こういう理由であなた方は間違っていると言わなければならない存在なんだ」と怒ったって話w
 う~ん、論理をすり替えている気もww純粋にカチンと来たんだろうなwまあある程度定説として確定した、言うならば「旬をすぎた研究」が教科書には載っているわけで、それを覚えるのも大事だけど、科学研究の最先端ではないよね。
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