『青春アタック』脚本⑩鶴鳴之士

海野「やっぱり大此木くんが下がったか・・・花原さん、ネット際で両手を上げててくれる?」
花原さん「・・・?こう?」
海野「もし男子チームがアタックをしてきたら、そのまま上へジャンプして欲しいの。」
花原「・・・え?怖い・・・」
海野「大丈夫、ブロックは相手のスパイクを直接止めるというよりは、コースを絞るためのもの・・・
ボールは当たらないわ・・・花原さんの身長はじゅうぶん相手には脅威よ・・・」
花原「ま・・・まあ・・・上に飛ぶくらいなら・・・」
海野「ちおりちゃん、私がレシーブした球を練習のように花原さんにトスできる?」
ちおり「いいよ~!」
海野「花原さん・・・いつも山村くんにぶつけているアレをお願い。」
ニヤリとする花原「・・・オーケイ・・・」
山村「その山村は何をすればいいかな。」
海野「花原さんのとなりでブロックしてくれる?」
山村「2枚か・・・鍛え抜かれた我が大腿四頭筋が日の目を見る時が来たれり・・・」
ホイッスルがなる。

ジャンプサーブをする海野
「大此木くんには本気でかからないと・・・」
先ほどよりも強いボールを放つ海野。
大此木「なめるなあ!!」
飛び込んで海野のサーブをレシーブする大此木。
観客「すげえ!レシーブしたぞ!!」
「プロの試合みたい!!」
大此木「野球部、センターライン方向へトスだ!!」
野球部「御意!」
大此木がバックアタックをしてくる。
前方に飛んでくる大此木にビビる花原「ひいい怖い!!」
一人でブロックする山村「ぬう!裏切るか花原さん・・・!!」
花原を超えてボールが飛んでくる。
海野「さすが、大此木くん!バックアタックで返してきた・・・!」
体重が乗ったバックアタックを後方に飛びながら力を逃がしてレシーブして上げる海野。
海野「男子のボールは重い・・・!」
観客「あの二人ヤバいな!」
直ぐに起き上がる海野「生原さん・・・!」
冷静にをトスを上げる生原「ほい!」
花原「くらいやがれ・・・!」
大此木「ブロックだ!!」
ネット際で走り高跳びの要領で陸上部がブロックをする。
ネット越しで陸上部と花原の顔が近づく。
ドキッとする花原「イ・・・イケメンが至近距離に・・・!」
スパイクを空振り、下に落ちたボールを踏んづけて転び、床にゴチンと頭を打つ花原
「きゃ~!!」
海野「花原さん、だいじょうぶ!?」
大此木「な・・・なんてチョろいんだ・・・」
陸上部「・・・・・・。」
大此木「なんでお前もちょっとドキドキしてるんだよ!!
て・・・てめえら合コンしに来たんじゃねえんだぞ!!
思い出せ・・・!女子どもが我々モテない男子にどんな仕打ちをしてきたか・・・!」
野球部「大此木部長、すまない。運動部の主将はそういう経験が実はそんなにないんだ・・・」
サッカー部「2月にはけっこうチョコレートもらえるしな・・・」
大此木「・・・え?俺様だけ??」
海パン一枚の水泳部「俺もいるぞ・・・!」
大此木「水泳部・・・!」
海パンの中からボールを取り出す水泳部「スイミングで鍛えたこの肩から繰り出されるクロールサーブ・・・味わうがいい・・・!」
大此木「て、お前、どこからボール出してんだよ!」
ニヒルに笑う水泳部「どこでもドアも出せるぜ・・・?」
耳打ちする大此木「(コイツはモテないわ・・・)・・・水泳部よ、耳をかせ。」

スコアボードは「女子4―男子0」
病田「サーブ権は男子チームに移ります・・・!」
ホイッスルがなる。
綺麗なフォームでフローターサーブを打つ水泳部「スイムスイム!!」
よける乙奈「きゃああ!」
海野「乙奈さん・・・!」
乙奈「あんな速いボール無理です・・・!」
山村「いい打球だ・・・そしてあの発達した僧帽筋・・・勉強になる・・・」
花原「あいつサーブうまいわね・・・」
水泳部「ふはは・・・怯えておるわ・・・!だが悪夢はまだ始まったばかりだ・・・!!」
再び乙奈を狙ってくる水泳部。
再び避ける乙奈「きゃああ!!」
海野「乙奈さんレシーブしよう・・・!」
乙奈「こ・・・怖いです~!」
海野「ボールをよく見て・・・!練習通りにやれば返せるから・・・」
水泳部「踊れ踊れ・・・!!」
大此木「ぎゃはは!まるでドッチボールだな・・・!悔しかったらレシーブしてみい!!」
花原「乙奈さんばっかり狙うのは卑怯よ・・・!」
ちおり「そ~だよ!
それに・・・ドッジボールだよ。」
大此木「・・・え?」
花原「ぷ~間違ってやんの、だっさ~」
ちおり「安室奈美恵のCAN YOU CELEBRATE?の出だしはカニサラダじゃないよ!」
大此木「う・・・うるさいわ・・・!!俺様は安室奈美恵なんか歌わん・・・!!
水泳部、容赦はするな・・・!あの運動音痴の乙奈をあと8回狙えば、我々男子の勝利だ・・・!」
海野「そうはいかないわ・・・!
向こうがサーブを打ったら、乙奈さんはすぐに前へ上がって。私が拾う・・・!」
乙奈「海野さん・・・本当にごめんなさい、私足手まといで・・・」
海野「アイドル時代に歌やダンスが苦手なメンバーになんて声をかけてた・・・?」
乙奈「・・・え?」
微笑む海野「・・・だいじょうぶ!」
メガネをなおす大此木「くだらねえ友達ごっこしてやがる・・・」

水泳部のサーブが飛んでくる。
すると標的が乙奈ではなく後衛レフトのブーちゃんになっている。
海野「しまった・・・!!」
大此木「足手まといは一人じゃねえだろ海野・・・!」
すると、ブーちゃんが水泳部のサーブを上手にレシーブしてセッターのちおりに運ぶ。
大此木「なんだと!!??」
海野「・・・!!!うまい・・・!!生原さんトス・・・!」
ちおり「やっ!」
ちおりは花原ではなく、今度は山村にトスを上げる。
山村「・・・え?俺・・・!?」
あわててアタックモーションに入る山村。
大此木「ブロックだ!!」
ネット際で走り高跳びの要領で陸上部がブロックをする。
ネット越しで陸上部と山村の顔が近づく。
ドキッとする山村「イ・・・イケメンが至近距離に・・・!」
スパイクを空振り、下に落ちたボールを踏んづけて転び、床にゴチンと頭を打つ山村
「きゃ~!!」
大此木「なんでお前までキュンキュンしてるんじゃ!!」

海野「ナイスレシーブ、ブーちゃん!」
乙奈「じょうずでしたわ・・・!」
コツをつかんだ様子のブーちゃん。
花原「それに引き換え、あんたは何してんのよ!」
山村「その言葉、そのままお返ししよう・・・恋する乙女よ・・・」
ちおり「・・・海野さん、前衛もわりと足手まといだよ!」
海野「え・・そんなことは・・・いや・・・そうかも・・・」
花原と山村「・・・え?(かばってくれない・・・!?)」

水泳部「おのれ、学食のおばちゃん・・・我がサーブを見切ったというのか・・・?」
大此木「気にするな、ただのまぐれだ。べつに無理にサービスエースを狙わなくてもいい。
前衛のバカ二人はイケメンを与えときゃ無効化できる・・・
テニスの王子様、お前もブロックに加われ!」
テニス部「ぼくは、マッスル山村はタイプじゃ・・・」
大此木「うるさい!」

海野「生原さん・・・クイック攻撃とかどこで習ったの・・・?」
ちおり「な~に、それ?」
海野(花原さんがときめいてスパイクが打てないことを見越して、とっさに山村くんにアタッカーを変えた・・・山村くんもときめいたけど・・・安定したトス、瞬時の判断力・・・
生原さんにはセッターの才能があるのかも・・・)
海野「生原さん・・・ちょっといいかな・・・?」
ニコニコするちおり「悪だくみ?」
海野「そう。」

水泳部がサーブを打つ。
レシーブする海野「モーションがきれいな分、弾道が読みやすいわ・・・!」
ボールは山なりにちおりのほうへ飛んでいく。
海野「生原さん・・・!」
ちおり「おっけー!」
大此木「ぐはは、誰にトスするっていうんだ!?」
すると、トスをすると見せかけて、ちおりがジャンプして相手コートにボールを入れる。
大此木「!!」
野球部「フェイントだ!!」
後衛から猛ダッシュするサッカー部「くそ、間に合わない・・・!こうなったら・・・!」
サッカー部がネット際の返球にスライディングをかます。
サッカー部「青き翼・・・シュート!!」
そのスライディングが、リカバーしようとした大此木の顔面に当たる。
大此木「ぎゃああああ!」

ホイッスルを鳴らす病田「女子チームにサーブ権がうつります・・・!」
海野「やったあ!作戦通り!!」
ちおり「わ~い」

サッカー部とケンカする血まみれの大此木
「だいたい、てめーはなんで体育館でスパイクなんか履いてやがるんだ!あぶねえだろ!」
サッカー部「バレーシューズなんてミッドフィルダーが持ってるわけないだろ・・・!」
野球部「あいつら、本当に素人か・・・?ずいぶん技巧的なプレーをするじゃないか・・・」
鼻血をふく大此木「海野だ・・・!あいつが悪知恵を与えやがったんだ・・・!!」
大此木の肩を叩くテニス部「大此木くん、お客さんが呼んでいるぞ・・・」
大此木「あ!?試合中に何考えて・・・」
見ると、コートのそばに華白崎が腕を組んで立っている。

スコアボード「女子4―男子3」
華白崎「あなた・・・素人の女子なんて10分もあればストレート勝ちできると言っていたわね・・・」
大此木「そ、それはだな・・・」
華白崎「ストレート勝ちどころか、接戦、しかも負けているじゃないの・・・」
大此木「うるせえな、このオレ様がバレーで負けるわけねえだろ・・・!」
華白崎「・・・ならいいけど。忘れてないわよね・・・?この試合の主旨を。」
そう言うとパイプ椅子を広げて、監督席に座る華白崎。

コートに戻る大此木「おい、スポンサーがもうお遊びはやめろとよ・・・」
野球部「・・・本当にこの試合に勝ったら部費を3倍にしてくれるんだろうな・・・?」
大此木「だが、負けたら全屋外運動部を廃部とか言い出しかねないぞ、あいつは。」
目の色が変わる男子チーム。

華白崎を見る花原「なんで生徒会がからんでいるのよ・・・」
海野「ただの観戦だと思うけど・・・」
乙奈「そうでしょうか・・・」
山村「気をつけた方がいいぞ・・・見ろ、委員長が来て、向こうの目の色が変わった・・・」

サーブエリアに立つ山村。
「筋肉なら水泳部に負けん・・・!」
海野「お願い、山村くん・・・!」
山村「ふん!!」
剛速球を打つ山村。
海野「うまい!」
気合でレシーブする大此木「おらああ!」
スパイクを打つテニス部「スマッシュ!!」
コートのスミを狙うテニス部。
レシーブが間に合わない海野「しまった・・・!」
黄色い歓声が上がる。
観客の女子「王子~~!!」
大此木「お友達をかばいすぎて隙だらけだぜ、海野・・・!」

海野「さすがテニス部・・・ラリーの読み合いがうまいな・・・」
乙奈「海野さん・・・」
海野「どんまい!」

大此木「オレのサーブで終わらせてやる・・・」
海野「くるよ・・・下がって・・・!」
腕を勢いよく振り上げ、風車のように振り回し、ボールに回転をかける大此木
「これがプロのサーブじゃあああ!!!」
ブーちゃんがレシーブしようとするが、ボールが突然落ちてレシーブができない。
海野「ドライブサーブだ・・・!」
ちおり「すげー!あんなのもあるんだ!海野さんできる?」
首を振る海野「私も初めて見た・・・」
大此木「もう一度くらえ!」
ブーちゃんが変化球に対応しようと前に出るが、今度は球が伸びてライン上に落下する。
観客「すげえ!!」
男子「あんなにスポーツができて、なんであいつはモテないんだ・・・!?」
女子「やっぱり顔がちょっと・・・オースチンパワーズDXに激似だし・・・」
大此木「うるせえぞ!!」

スコアボード「女子4―男子9」
大此木「どうだ海野!次でとどめだぞ!」
海野「私に打ってきてくれないかな・・・私なら・・・」
大此木「落ちぶれたもんだな海野・・・お前は大会でもそれを言うのか?」
海野「そ・・・それは・・・」
大此木「こっちは真剣にバレーをやってるんだ。
おめえらみたいな学生時代の思い出作りじゃねえ!」
乙奈「・・・・・・。」
大此木「ラストはお前じゃカナリア!
おめ~が挑発してこの戦争は始まったんだ、けつを持ちやがれ!」
海野「乙奈さん、大丈夫私がフォローする!」
乙奈「・・・海野さん・・・」
首を振る乙奈「わたくしにも意地というものがありますわ・・・」
大此木「そうか・・・それなら・・・」
全力でドライブサーブを打つ大此木
「死ぬがいい!!」
すると、ドライブサーブにぶつかっていく乙奈。
勢いで後ろに吹っ飛んで倒れる。
花原「乙奈さん・・・!?」
山村「交通事故か!」
うずくまる乙奈「ぐはっ・・・花原さん・・・決めてください・・・!」
猛ダッシュで上がったボールに追いつき、花原にトスをする海野「花原さん!!」
花原「乙奈さん・・・!あんたの死は無駄にはしない・・・!!」
ジャンプして、大此木のように腕を振るう花原。
花原を見上げる野球部「なんて高さだ・・・!」
花原「新必殺技・・・!名付けて・・・大此木のマネ!!!」
拳を握りしめて下に腕を振るう花原。
野球部「スパイクにドライブをかけただと!!??」
ボールに変化がかかり、慌てて野球部が腕を伸ばしボールを受けるが、球速を落とすことができずに、サッカー部の頭頂部にぶち当たる。
サッカー部「ぐえ!」
結果的にヘディングをしたようになり、ボールが野球のフライのように勢いよくコートの外へ飛んでいく。
大此木「負けるかああああ!!!」
ボールを追いかけ、体育館の壁にある肋木に素早くよじ登り、そこから三角跳びをしてボールに届く。
大此木「刮目せよ!!これが!天井アタックじゃあああ!!」
渾身のスパイクをする大此木。
そのまま地面に勢いよく落下する。
大此木「ぐえええええ!!!」
花原「なんつー執念よ、あいつは!」

しばらく動かなかったが、むくりと起き上がる大此木「ど・・・どうだあ・・・オレ様の勝ちだ・・・」
病田「あ・・・あの・・・4回ボールに触れているので、このラリーは女子チームの勝ちです・・・」
大此木「4回だと!!?」
病田「陸上部の子がブロックタッチを・・・し・・・してたような・・・」
大此木「おい、てめえ、審判・・・!女教師だからって女子に有利な判定をするのか!!
世紀の誤審だぞキサマ・・・!!」
病田「ひいい・・・ごめんなさい・・・殺さないで・・・!」
陸上部が腫れた指を見せる。
大此木「・・・・・・。」
パタリと気絶する大此木。

木の枝で大此木をつつくちおり「・・・動かなくなったよ?」
体育館に駆けてくるさくら先生「体育館の2階から飛び降りたバカはこいつ?」
海野「はい・・・」
大此木の瞳孔をライトで確認するさくら
「マッスルくん、海パンマン、あまり頭を揺さぶらないようにして保健室に運んでちょうだい。」
山村「了解した・・・」
水泳部「せ~ので上げるぞ・・・!」
二人で大此木を運んでいく。
さくら「乙奈ちゃんもボロボロじゃない・・・!手当てするからおいで・・・!」
乙奈「でも、試合が・・・」
さくら「両者痛み分けで中止よ!!病田先生ゴングを鳴らして!」
意識が戻る大此木「ま・・・待ってくれ・・・勝負はまだ終わってねえ・・・」
海野「男子チームの勝ちでいいよ・・・私のまけ。」
大此木「そうはいかねえ・・・
・・・男子バレー部は全国に部数が少ないから、地区大会で1回勝てば関東大会に出れるだろ、などと軽んじられていたんだ・・・オレはバレーボールという球技は決して女子だけのものじゃないことを・・・この試合を通じて・・・高らかに宣言し・・・この偏見に一石を・・・」
海野「・・・ん?ごめん、何を言っているのかよく聞き取れない・・・」
両腕を振って野次馬を追い返すさくら「解散よ!撤収!!」

残った女子と男子。
野球部「国体出場選手をあそこまで追い込んだんだ・・・誇りを持てよ。」
握手をする海野「ありがとう・・・こっちも久々に楽しい試合ができたわ。」
サッカー部「よかったら、また一緒に遊ぼうよ!」
ちおり「うん!」
キュンキュンする花原
「あ・・・あの、よかったら今度、国立科学博物館の大寄生虫展にでも行きませんか・・・?」
ドン引きする陸上部「・・・い、いや・・・けっこうです・・・」

椅子から立ちあがる華白崎「・・・くだらないわ・・・」
海野「華白崎さん・・・」
野球部「両者勝者なしだから、今回の話は無かったことにさせてもらうぜ。」
華白崎「・・・とんだ茶番だったわね・・・
まあ、海野部長がいなかったら試合にもならなかったと思うけど・・・」
花原「あんたでしょ、あいつをけしかけて体育館を私たちから取り上げようとしたのは・・・!」
華白崎「・・・あなたは、跳躍力とパワーはあるけど・・・ブロックもパスもできないのは話にならない。
バレーボールはチームでボールを繋いでいくスポーツなの・・・
アタッカーだって後衛に行く・・・レシーブは?サーブは打てるの・・・?」
花原「・・・それは・・・」
華白崎「海野部長。大会で優勝する気があるのなら、花原さんと乙奈さんは戦力外通告よ。
まあ、どのみち、メンバーが足りなくてエントリーできないでしょうけど・・・」
海野「それは・・・」
ちおり「・・・お姉さんもいっしょにやろうよ・・・!」
華白崎「・・・なんですって・・・?」
ちおり「いっしょにやりたいんでしょ!バレーボールも詳しそうだし。」
華白崎「あなたに私の何がわかるのよ・・・」
その時、華白崎のほうに剛速球のアタックが飛んでくる。
とっさにオーバーで剛速球の力を逃がし、トスを上げる華白崎「!」
剛速球が飛んできた方を振り向く華白崎。
バウンドするバレーボール。
大此木「・・・衰えてねえじゃねえか・・・」
立ち去る華白崎「・・・わたしはお遊びでスポーツはしない・・・」

大此木「海野・・・あいつをメンバーに入れろ。
本気で試合に勝ちたいなら・・・華白崎はきっと力になってくれる・・・」
海野「知らなかった・・・華白崎さんがバレーをしてたなんて・・・」

『青春アタック』脚本⑨男耕女織

体育館
海野「今日はサーブの練習をしましょう。
バレーのサーブは大きく2つのやり方があって、クロールのように上から腕を振るうフローター、ゴルフスイングのように下から腕を振るうアンダーがあります。
試合ではもっぱらフローターサーブを使いますが、トスを安定させるなどコツがいるので、初心者は相手コートに入れやすいアンダーがおすすめです。
ちょっとお手本を見せるね・・・」
ボールを上に投げて奇麗なスイングでサーブを打つ海野。
ちおり「かっけー!」
乙奈「テニスのサービスをラケットなしで行う感じなのですわね・・・」
海野「そうかもしれないね。」

花原「ジャンプしないスパイクみたいなもんでしょ・・・」
得意げにボールを投げて力任せにたたきつける花原。
ボールは真下に吹っ飛び、床にバウンドし、花原の顎にぶつかる。
もんどりうつ花原「ぎゃああああああ!」
目を輝かせるちおり「もう一回やって!超面白いから!」
腹を抱えて笑う山村。
花原「・・・おまえら・・・」

ちおり「今度はわたしがやってみる!」
海野「生原さんはトスがきれいだから上手かもね。」
ちおり「いっくよ~!てい!」
ちおりのサーブが花原の後頭部にきれいに当たる。
花原「ぎゃあああああああ!!」
腹を抱えて大爆笑する山村。
花原がボール籠に入ったバレーボールをちおりに投げつけまくる。
花原「てめえ、わざとだろ!!」
追いかける花原と逃げるちおり「にゃ~~」
乙奈「アメリカでこういうアニメありましたよね。」
海野「トムとジェリー・・・?」

花原がちおりに向けて剛速球を打つ。
ジャンプしてよけるちおり。
剛速球がそのまま、体育館に入ってくる男子生徒の方へ飛んでいく。
海野「あ、危ない・・!」
その剛速球をたやすくレシーブし、上に上がったボールを自分でバックアタックする男子生徒。
アタックを顔面にまともに食らう花原「ぎゃあああああああ!!!」
吹っ飛んで床に倒れる花原。
海野「!花原さん・・・!!」
救急箱を取り出す山村「一日三度はまずい・・・!」
男子生徒「馬鹿どもが・・・バレーボールはふざけてやるお遊戯じゃねえ・・・」
海野「あなたは・・・男子バレー部の・・・」
大此木「落ちぶれたもんだな海野部長・・・
お前さんにとってバレーボールはこの程度のものだったのか・・・?」
海野「大此木くん・・・」
鼻にティッシュを入れている花原「・・・ちょっと!顔の形が変わったらどうすんのよ!」
大此木「もっと美人になるんじゃないのか?
バレーボールを玩具にしていたのはお前だろ・・・
ふざけてスポーツをやると、こういうことになるんだ。覚えておけ・・・」

花原「あんたね~!男子が女子に暴力を・・・」
海野「花原さん、いけない・・・!」
すると、大此木は花原の背後に回り
大此木「こういうときだけ・・・」
花原に腕を回し抱え込み
大此木「ジェンダーを・・・」
長身の花原をもちあげてしまう。
大此木「持ち出すんじゃない!」
花原にアルゼンチンバックブリーカーを決める大此木。
マットに沈む花原「ぎゃああああああああ!!!」
ちおり「かっこい~!ルチャリブレだ!!」
山村「美しい・・・」
べそをかく花原「何すんのよ~痛いじゃない・・・」

慌てて割って入る海野
「バレーボールでふざけていたのは謝る・・・!謝るからプロレス技はもう許して・・・!」
大此木「わかったか、女子ども・・・!
お前ら女子どもにバレーをやる資格はない。とっととこの体育館からうせろ。解散だ・・・」
その時、楽しくなっちゃったちおりが大此木にドロップキックを決める。
ぶっ倒れる大此木「うお!!」
海野「生原さん、なにを・・・!」
山村「見事な空中殺法だ・・・」
アントニオ猪木の雑なものマネをするちおり「ありがとー!!」
起き上がってメガネを直す大此木「なんだ、このアラレちゃんみたいなやつは・・・」
花原「私のためによくやった、ちおり・・・」
花原にマスクをかぶせようとする生原「さあ、これをかぶって、私とタッグを組もう!」
もがく花原「嫌よ!なにすんのよ・・・!くさい・・・!」
ちおりを見つめる大此木「こいつか・・・」

ちおりを抱える海野「この子に悪気はないのよ・・・」
大此木「いいか、放課後に体育館を使いたいのはお前らだけじゃねえ。
真面目にやらねえなら、男子に使わせろ。」
海野「で・・・でも現在の男子の運動部に屋内競技はないはず・・・」
大此木「我々男子バレー部も活動を再開してね・・・今後は俺たちが使う・・・」
海野「いきなりそんなこと言われても・・・」
大此木「はっきり言う。お前らの実力では大会優勝は不可能だ。
過去の実績がある男子バレー部が使ってこそ、この体育館は光輝くというもの・・・」
花原「何言ってんのよマッシュルーム!やってみなきゃわからないじゃない!!」
大此木「ほう・・・国体に出場経験があるオレ様に、キサマら素人が勝てると・・・?」
トーンダウンする花原「え・・・?国体に出たのですか・・・?」
乙奈「あらあら・・・過去の栄光にすがりつくなんてみっともないですわよ・・・大此木さん・・・
肝心なのは今、どれだけ努力を重ねているかです・・・
そこまでおっしゃるなら体育館の使用権をかけて、白黒つけようじゃありませんか・・・」
慌てる海野「お・・・乙奈さん・・・?」
大此木「言うじゃねえかカナリア女。
(山村の方を向いて)おい、おかま野郎、お前はどういう見解だ?」
山村「オレのことか?このマッスルはいつでもか弱き者の味方だ・・・」
大此木「よう言った!男子VS女子、全面戦争の始まりだ!」



コートにスコアボードが運ばれる。
ホイッスルを首にかける病田。

体育館に観衆が集まってくる。
男子「一部のイケメン以外はゴミムシのように扱いやがって・・・!てめえらもう許さねえぞ!」
女子「黙れ!あんたらちょこちょこ私たちをエロい目で見てるの知ってるんだからね・・・!
マジでキモいんですけど~」
男子「誰がブスのパンツなんか見るかよ!」
女子「へんた~い!」
コートの左右で男女に分かれて罵り合っている。

乙奈「・・・わたくしたちの試合が男女の代理戦争になっておりません・・・?」
山村「・・・愚かな。」
花原「・・・オコの野郎、遅いわね・・・逃げたんじゃ・・・」
海野「病田先生は審判をお願いします。」
おろおろする病田「あ・・・あの・・・万が一ミスジャッジをしたら・・・」
ちおり「市中引き回しに遭うと思うよ!」
めまいで倒れかける病田
海野「・・・先生・・・!」

体育館に入場する大此木「待たせたな女子バレー部!」
女子バレー部が振り返ると、大此木は野球部とサッカー部とテニス部と陸上部と水泳部の主将を引き連れている。
花原「・・・!ちょっとバレー部じゃないじゃない!!」
大此木「わたしは運動部に顔がきいてね・・・!特別に集まっていただいたのだよ・・・!」
花原「こんなの卑怯よ!こっちは運動部は海野さんしかいないのよ!
山村は一体何の部活動か不明だし・・・!」
山村「筋肉トレーニング部だ。」
ちおり「それスポーツなの?」
山村「無論だ」
海野「ま・・・まあ、男子で運動ができる山村くんがこっちにいるのは心強いわ・・・!」

観客の男子たちからブーイングが飛ぶ
「てめ~山村~!男子のくせに女子の味方につくのか~!裏切り者~!死ね~!!」
ちょっと心配する花原「山村・・・あんた、今後の学校での立場的に大丈夫なの・・・?」
意に介さない山村「ふっ・・・言わせておけ・・・
言ったはずだ・・・俺は最後まで女子の味方だと・・・!
諸君に口だけではないことを見せてやろう!!」
そう言うとジャージを脱ぐ山村。なぜか女子の体育着とブルマーを履いている。
ドン引きする女子たち「ぎゃあああああ!変態!!!!」
中にはショックで泣いてしまう女の子もいる。
きらびやかにポージングをする山村「どうだ!なかなか似合うであろう・・・!」
花原「こいつ・・・メンタルの怪物か・・・」
ちおり「なんでマッチョってビキニパンツ履きたがるんだろうね。」
ビキニパンツの水泳部(・・・負けた・・・)



病田「そ・・・それでは、只今より男子対女子のバレーボール時間無制限1本勝負を行います・・・
ルールはサイドアウト制、10点先取したチームが勝利となる特別試合です。」

海野「いよいよ始まるわ・・・バレーボールはサーブ権があるチームがラリーを制した場合に得点となるの。サーブはコートの後衛、ライトの選手が打ちます。」

女子の方に目をやる大此木「今、ルールを説明してやがる・・・なめられたもんだ・・・」
運動部の主将たち(オレ達もルール知らないんだけどな・・・)
大此木「おい海野!最初のサーブ権はお前らにくれてやる!武士の情けだ。」
海野「本当に・・・?ありがとう大此木くん!」
大此木「その笑顔はやめろ!なれあいはせんぞ女子!」
サッカー部「海野さん本当にいい子だよな・・・」

サービスエリアに入る海野。
海野(力ではこっちには分がないわ・・・相手コートからボールが返ってきたら負ける・・・
私がやれることは・・・)
海野がボールを高く上げる。
ハッとする大此木「・・・いかん!」
ダッシュをして本気のジャンプサーブを打つ海野。
男子コートにプロ並みの剛速球が飛んでくる。
さすがの男子も球速が速すぎて見きれず、水泳部の顔面に当たる。
ゴーグルが木っ端微塵に割れる水泳部「ウルトラソウル!!」
大此木「水泳部~!!!」

ホイッスルを鳴らす病田「女子チーム先制です・・・!」
海野「だ・・・大丈夫!?怪我はない・・・!??」
恐怖で顔がひきつるサッカー部「・・・え?なにあれ・・・時速100kmは出てないか・・・?」
大此木「後衛!気をつけろ!!海野の野郎サービスエースで決着をつけるつもりだ!!」
ちおり「海野さんすげ~!!」
テニス部「大此木くん、聞いてないぞ!ラケットなしで我々にあれをレシーブしろというのか!!」
大此木「男子がひるむな!たかが女の打ったボールだろ!!
あんなもん男子バレー界ではしょっちゅう飛んでくるわ!」
今度はテニス部のみぞおちに海野の剛速球が当たる。
テニス部「ぐええええええええ!!!」
陸上部「優しい顔して、一切の手加減がない・・・」

怯えるサッカー部「・・・次は俺だ・・・だが、俺もU18に選ばれた男・・・
球技で無様な姿は見せられない!!」
海野がサッカー部にボールを打ってくる。
海野のボールを見切って、オーバーヘッドシュートを決めるサッカー部。
サッカー部「見切った~~!!必殺・・・高橋陽一!!!」
そのボールが大此木の後頭部に当たる。
大此木「ぎゃああああ!!!」
海野「よしこれで3点!」
大此木「蹴るな~~~!!!」
サッカー部「ダメなのか?」
海野「ルール的にはだいじょうぶだよ!」
サッカー部「ようし、もう一回お願いします・・・!!」
大此木「やめろ!」
もう一度海野のサーブを蹴り返すサッカー部「必殺樋口大輔!!」
また大此木の後頭部に当たる「があああああああ!!!」
爆笑する花原「人がボール当たってるのみるの、めちゃめちゃ面白いわね」
ちおり「でしょ!」
大此木「審判!タ~イム!!!」

大此木「サッカー部てめえ!パスをつなぐ気あるのか!!」
サッカー部「すまない・・・今度はトラップするよ・・・」
野球部「やめておけ、あんなもんが胸に当たったら心停止になる可能性がある・・・」
サッカー部「じゃあ・・・スカイラブハリケーンで・・・」
大此木「海野・・・提案があるんだが・・・」
海野「なに?」
大此木「今更だが、フォーメーションを変えさせてくれ・・・!」
海野「え~」
大此木「サーブ権くれてやっただろ・・・!」
海野「どうするみんな・・・?」
乙奈「このままだと一方的に男子をいじめているようにも見えますからね・・・
わたくしはけっこうですわよ。」
花原「向こうも言うてそんなにバレーが得意じゃないってことがわかったから、いいんじゃない?」
海野「大此木くん、いいって!」
大此木「かたじけねえ・・・
審判!レセプションフォーメーションの変更だ!!」

潔癖社会の到来

 この前、すごい珍しくこのブログの記事にコメントがついて、それがさくらももこ先生の記事で、子ども社会の残酷で汚い一面って『ちびまる子ちゃん』だと最終的にスポイルされちゃったよねっていう内容だったんだけど、いよいよ清廉潔白で、見た目も中身も美しい人しか社会的に認められなくなったなっていうね。
 今まで強大な利権を持っていた特権階級の既得権益に、週刊誌が一石を投じて、それをネット世論が騒ぎ立て、そのまま崩壊させていく様はドーパミンが出てカタルシスになるんだろうけど、そういった強大な存在がこれまで引き受けていた、よろずダーティな問題への対処は今後は誰が引き受けるんだろうっていうのはあるよな。

 自民党を下野させて民主党政権を実現させた時だって、みんな脳汁ドバドバだったからな。で、結局、政治は混乱したわけじゃん。その上、我々国民は、長い目で民主党政権を育てようともせず、すぐに自民党に戻しちゃったじゃん。で、アベガ-とかやってんじゃん。
 もちろん、長年、ゴシップだ、陰謀論だと否定されていた特権階級の横暴が白日の下にさらされ、溜飲が下がる被害者の人もたくさんいたと思うし、人気や権力でやりたい放題できなくなったっていうのは、いい社会にはなっているとは思うんだけど。
 ただ、人間って、そこまで完全じゃないし、間違うし、どんな人にも欠点ってあるじゃん。このままいくと、自分たちだって告発される側になるんじゃないか、すっごい生きづらい世の中になるんじゃないかっていう覚悟はいるよね。

 あとさ、名誉棄損とかイメージが損なわれたとかいうけどさ、ダウンタウンの松本さんってそもそも女性関係でクリーンなイメージないじゃん。「そりゃそうだろ」ってみんなが思うと思ってたら、あのレベルの芸能人ですら活動休止にまで追い込まれちゃったわけだから、時代は変わったんだろうな。
 でも、多くの人を惹き付けるような魅力のある人って絶対に異性が寄ってきちゃう気もするしな。ムズイな。ちんこ切るしかないな。
 あれって、一般の女性じゃなくてプロだったら大丈夫だったのかも怪しいよな。ナイナイ岡村さんの失言もあったけど、女性を性的に消費する言動自体がもうアウトなんだろう。そうなると、吉本芸人的な「女遊びは芸の肥やし」っていうのが、もう通用しないという。
 これ、おっぱいとか過剰に強調している美少女漫画とかもそのうち絶対にコンプラでやられると思うよ。

 そういや、今回の件でついに松本人志さんの『大日本人』を見たんだけど、正直、天才だと思った。
 私はもともとそこまでダウンタウンのファンじゃなかったんだけど、「ごっつええ感じ」とか、ダウンタウンが大好きな友達が公開時に真っ先に見て、みんな「期待外れだった」とか「ラストが意味不明」とか言ったので、今日の今日まで見なかったんだけど、ラスト最高じゃん。
 なんだろう、絶対に品行方正な人からはあんな発想出てこないと思うよ。あの、ラストの冷たい暴力は、意識的かどうかはわからないけど(松本監督は感覚の人だと思うし)、ウルトラ兄弟大集合の風刺だよね。見方を変えれば、寄ってたかっていじめをしているようにも見えるぞっていう。

 松本さんの件で特に思ったのは、真相がうやむやでも週刊誌が勝てちゃうのがすごいよなってとこ。売れちゃうから。そして週刊誌を訴えて勝ったとしてもそんなにお金がもらえないっていう。もし事実無根だったら通り魔みたいだよな。
 そもそも基本的に性行為ってお互い空気を読んでなんとなくのムードでやっちゃうものだから(契約書とか書いてやるようなものではない)、そうなると気が変わって、実はあの場では同意しましたが、実は後悔していますってやられたら、全国の男性は死ぬよな。
 でもさ、理論的には、このロジック男性も使えるはずなんだけど、絶対に世間の共感は得られないよな。
 やっぱりちんこ切るしかないよな。

『青春アタック』脚本⑧流言蜚語

ざわめく3組
練習生「この学校にスーパースターの百地翼ちゃんがいるって本当なのかな?」
他の練習生「くだらないガセネタでしょう。この学校にそんなオーラのある美少女なんていないじゃん。」
「でも、ウソだったら、あんなにマスコミが押しかけなくない?」
「週刊誌の記事なんてウソばっかだって。」
音楽室に入ってくる乙奈「その通りです。事実無根だと思いますわ・・・」
練習生「先生・・・」
「やっぱりそうか~でも会いたかったなあ。わたし、翼ちゃんに憧れて芸能界を目指したの。
また、テレビに出てくれないかなあ・・・なんで突然芸能界からいなくなったんだろう?」
「不祥事で消されたんじゃない?
アイドルは恋愛禁止とか言いながら、イケメン俳優と片っ端からデートしてたらしいよ?」
「あ~そのスキャンダル私も知ってる!曜日ごとにローテーションしてたんだよね!」
「あと、後輩アイドルをいじめていたり、裏では相当性格悪いらしいよ」
「ちょっと!ファンの前でそんなこと言わないでよ~!」
「でも清く正しく美しい子だったら、芸能界から突然消えたりしないでしょう?」
乙奈「・・・・・・。」
ちおり「翼ちゃんはそんな子じゃないよ!」
練習生「ちおりちゃん・・・」
「・・・なんでわかるの?」
ちおり「性格が悪い子が歌う歌で感動するファンはいないよ。」
ちおりの頭をなでる乙奈「ちおりちゃん・・・ありがとう・・・
でも、学校にこれ以上迷惑をかけるわけにはいきませんわね・・・」
顔を上げる乙奈。



校門
マスコミの群衆の前に乙奈が現れる。
記者「おおっ出てきたぞ!」
「そこのモブ女子のきみ!百地翼ちゃんって君の学校にいるよね?」
乙奈「ええ・・・」
記者「やっぱりだ!ちょっと呼んできてよ!」
乙奈「あなたの目の前にいますわ・・・わたくしが百地翼です。」
記者「いやいや、そんな冗談はいいから・・・」
乙奈「そう・・・わたくしなど、どこにでもいる平凡な高校生にすぎない・・・
アイドルのオーラなんてたくさんの大人が作り上げた虚構ですわ・・・」
乙奈にカメラを向けるカメラマン「おい、確かに、この子かも・・・」
涙を流す乙奈「こうなってしまった以上、わたくしはどうなってもいい・・・
でも・・・この学校・・・白亜高校だけは・・・見逃してほしい・・・
わたくしの・・・大切な場所なの・・・」



音楽室のテレビ中継を見て言葉を失う練習生たち
「うそ・・・」
「ねえ、あんたさっきの発言謝りなさいよ・・・
あの人がイケメンをローテーションするわけないわ。」
「強く当たられたこともない・・・いつも褒めてくれた・・・」
「乙奈先生どうなるんだろう・・・」
「芸能界につれてかれちゃうのかな・・・」
「でも、いったい誰がマスコミに垂れ込んだの?」
「きっと生徒会よ!そもそも100万円の話だって生徒会が押し付けてきたんだもん!」
「みんなで文句言いに行こう!パンチラーズ、アッセンブル!」



生徒会に押し掛ける3組
「華白崎副会長、出てきなさい!よくも乙奈先生をマスコミの餌食にしたわね!!」
扉があく。
華白崎「・・・私が垂れ込んだと?」
練習生「100万円は払ったのに・・・!こんな仕打ちひどいわ!!」
華白崎「証拠は・・・?」
練習生「じょ・・・状況証拠がある・・・!
あなたは乙奈先生の自由放任なやり方を嫌っていた・・・!」
一笑する華白崎「根拠もない憶測で、他者を非難するなんて、外のマスコミ連中と変わらないわね・・・」
練習生「・・・う・・・」
華白崎「反面教師になさい。アイドルになったあなたたちに襲い掛かるのは、ああいった輩よ・・・」
練習生「謝ってよ・・・!」
扉を閉める華白崎「謝る道理がない・・・」



音楽室
号外「百地翼ついに発見!芸能界復帰はあるか!?」の見出し。
号外をたたむ練習生「先生もいなくなって・・・これから3組はどうなるんだろう・・・」
ちおり「乙奈さんってもともと教室には来なかったんでしょう?別に今までと変わらないよ!」
「そ・・・そうですけど・・・」
「アイドル百地翼だって知ってたら、もっといろいろ教えてもらえばよかった・・・」
「というかサインもらえばよかった~!」
「なんで隠してたんだろう・・・水臭いなあ・・・」
ちおり「きっと、みんなと対等に付き合いたかったんだと思うよ。
ふつうに学校に通って・・・ふつうのおともだちが欲しかったんだよ。」
立ちあがる練習生「・・・練習しよう。
年明けには芸能事務所のオーディションがあるんだよ。
先生がせっかく用意してくれた夢を叶える舞台・・・
わたし・・・無駄にしたくない・・・!」
「うん・・・やろう!カラオケボックスのバイトもあるし!」
「・・・ちおりちゃんはこれからどうする?」
ちおり「わたしは、至近距離で乙奈さんの全力ライブを見ちゃったから、別の方法でしろったま子さんに会うよ!」
練習生「いいな~」
「超うらやましいです・・・」
ちおり「いや、見ない方がいいよ!圧倒的実力差でアイドルなる気なくすから!」



体育館
2組の学生たちがストレッチをしている。
笛を吹くジャージ姿の海野「はい、ゆっくり伸ばそう、ゆっくり・・・
ストレッチパワーを感じているかな?」
体育館に入ってくるちおり
気まずそうに笑うちおり「へへ・・・」
微笑む海野「あ、ちおりちゃん・・・話は聞いてる、ようこそ2組、フィジカルクラスへ!」



その後の百地翼に対する世間の誹謗中傷はむごいものだった。
「自分勝手な失踪でファンの期待を裏切った」
「みんな忘れかけていたところで今更芸能界に復帰してもオワコン」
「黒いうわさがありすぎて、もうスポンサーがつかない」
「この末路は自業自得」
など・・・
これに激怒したファンがアンチと関ケ原で激突・・・多くの兵が打ち首となる大惨事となった・・・

とどのつまり、みなが言いたいことを言って、言いっぱなしで嵐は過ぎ去った・・・

スーパーアイドル百地翼のその後は誰も知らない・・・



教会
器をもって炊き出しの列に並ぶちおり。
乙奈「あら・・・ちおりちゃん・・・」
ちおり「乙奈さんだ!」
そばに刻みネギを入れる乙奈「ここ、私の実家。」
乙奈はブーちゃんと年越しそばをよそっている。
ちおり「わ~おいしそ~!十割そばだ!」
乙奈「あの子たちはうまくやれてる・・・?」
ちおり「ちょこちょこ小さい仕事取ってるみたいよ。」
乙奈「それはよかった・・・きっと私を超えるスターになりますわ・・・」
蕎麦をすするちおり「乙奈さんは今年の紅白歌合戦出ないの?」
乙奈「芸能界に混沌を生んだブラックアイドルですから・・・」
ちおり「じゃあさ、バレーをやろうよ!」



体育館
始業式の全校集会
京冨野「校長の話だ。気をつけ。礼。」
羽毛田校長「みなさんあけましておめでとうございます。みなさんのおかげで白亜高校は年を越すことができました。ありがとうございます。
本校は有志の寄付で運営されています。なので、もしみなさんの周りにチャリティーに関心がある富豪がいましたら、ぜひ連絡をしてください。あまっているお年玉を職員室によこしてくださっても大歓迎です。」

舞台袖の教員たち
花原「生徒になんつーこと言ってんだ・・・」
隣の華白崎に小声で話しかける海野「ありがとう」
華白崎「・・・なにが?」
海野「・・・生原さん、2組でバレーボールができて喜んでる。」
華白崎「海野部長もお人よしですね・・・去年を思い返してみなさい。
4組の花原さんは大やけど、3組の乙奈さんは誹謗中傷・・・
あの生原ちおりが入ったクラスの担任は必ずひどい目に遭っている・・・」
海野「・・・疫病神みたいな言い方。」
華白崎「あなたもせいぜい気をつけることね・・・」
横から話に割って入るマッスル山村(5組英語担当)「・・・疫病神はあんたじゃないのか・・・?」
華白崎「なんですって?」
山村「生原さんの家を燃やしたのも、乙奈さんをマスコミに売ったのも、あんただっていう噂で持ち切りだぜ。当然俺はそんなこと信じてないがな・・・
だが、あんた、ちょっと嫌われすぎだぜ・・・」
海野「・・・ちょっと山村くん・・・!」
華白崎「・・・・・・ばっかじゃない・・・」
病田「・・・あの・・・華白崎さんはそんな人じゃな・・・」
華白崎「かばわないでください。みじめになるから。」
速攻で謝る病田「ごめんなさい。」



廊下を一人で歩いていく華白崎
「男子バレー部」と書かれた部屋の前で立ち止まる。
扉が開く。
部屋の中から声がする。
「早く入ってくれ。お前と接触しているところを見られたら、俺様まで嫌われる。」
華白崎「・・・どうも。」
部屋の中に入ると、男子バレーのトロフィーがそこらじゅうに飾られている。
白亜高校男子バレー部部長、大此木勝行(おおこのぎかつゆき)
「いいか、幼馴染のよしみで話を聞いてやるだけだ。
引き受けるかどうかの決定権は俺様にある。それを忘れるな。」
華白崎「女子バレー部が年末から活動しているのはご存知かしら?」
大此木「海野が活動を再開したって?バカを言うな。女子バレー部の部員はあいつだけだ。
いくらやっこさんでも1人でバレーボールはできねえよ。」
華白崎「生原ちおりっていう子を入学させてね・・・そのホームレスの他にもバレーボールの未経験者を集めて、例の大会に優勝しようとしているの。これが、そのリスト」
リストをめくる大此木「4組の花原に3組の乙奈・・・運動神経の乏しい根暗女子ばっかりじゃねえか。海野は血迷ったのか?」
華白崎「・・・この子たちにスポーツの厳しさを教えて欲しいのよ。」
大此木「華白崎・・・貴様、この俺様に女子と試合をしろっていうのか?
だいたいネットの高さはどうするんだ?」
華白崎「・・・報酬は弾むわ・・・これは前金・・・」
蒲焼さん太郎をばら撒く華白崎
大此木「・・・!」
華白崎「あんた、昔からこの駄菓子に目がないでしょう?」
大此木「スーパービッグカツだ。それで考えてやる・・・
だがな・・・男子バレー部はもう廃部してんだ。お前の緊縮財政でな。」
華白崎「手段は問わないわ。」
蒲焼さん太郎をかじる大此木「・・・女子をいじめるのは小1のスカートめくり以来だぜ・・・
腕がなる・・・」

『青春アタック』脚本⑦秘中之秘

体育館
花原「ちおり何やってんのよ・・・あいつがいないとトスが上がらないじゃない・・・」
海野「生原さんと乙奈さんはクラスの方が忙しいんだって」
山村「これではスパイクは打てないな・・・またの機会としよう・・・」
海野「いいよ、トスなら私があげるから。」
花原「山村くん、レシーブ。」
肩をすくめる山村「・・・いやはや、そうきたか。」



ライブハウス
練習生「・・・え?年内はすべて埋まっている・・・??」
ライブハウスから出てくる練習生
「こっちもダメ。何か月も前から予約するみたいよ・・・」
「どうしよう、先生に啖呵切ったのに、会場すら借りれないなんて私たちっていったい・・・」
練習生たちに駆けてくるちおり「幕張メッセ取れたよ!」
「ほんとう!?」
「ちおりちゃん、すごい!」
ちおり「同人誌と恐竜とスポーツカーすべてどかしたよ。」
「なんで、この子にそんな力が・・・」
ちおり「というわけで270万円払っといて!」
「・・・270円じゃなくて・・・?」
ちおり「270円でメッセが借りられるわけないじゃん、カラオケボックスじゃねえんだし」
練習生「ムリだって!そもそも100万円かき集めるためにライブやろうとしてるんだよ・・・」
ちおり「メッセはダメか~じゃあ日本武道館に電話してみよう!」
「もっと高いって!!」
ちおり「パンチラーズは予算はいくらあるの・・・?」
「4300円・・・」
ちおり「・・・草むらで踊ってれば・・・?」
「一度、駅前でやったことがあるんですけど、警察官の人に補導されちゃったんですよ・・・」
「スカート丈が卑猥だってね・・・」
ちおり「長ズボンはけば?」
「それは、ちょっと勘弁してください・・・」
ちおり「会場の他にも、機材とスタッフはどうするの?スポンサーは?」
「・・・・・・。」
ちおり「チケットノルマはあるの?」
「・・・・・・。」
ちおり「アイドルは歌って踊ってるだけだと思ってたの?
そういうのは習わなかったの・・・?」
心が折れる練習生「先生に頭下げて蕎麦を打つ・・・?」
「うん・・・」
ちおり「わたしは諦めないよ。しろったま子さんに会いたいし!」
「でも、まったく無名でお金もない私たちに一体なにが・・・」
ちおり「歌とダンスはうまいんだよね?」
「はい・・・!それだけは自信があります・・・!先生にもお墨付きをもらえたし・・・!」
ちおり「じゃあやっぱり攻めの姿勢でメッセに・・・」
「カラオケボックスでいいです・・・」
そこで何かをひらめくちおり「・・・あ、そうか。」
練習生「あの・・・なにかいいアイディアが・・・?」
ちおり「カラオケボックスに行こう。」

カラオケボックス
練習生「なんで私たちバイトの履歴書を書いているんだろう・・・」
ちおり「お金を払って会場を借りるんじゃなくて、お金をもらって会場を借りればいいんだよ!」
練習生「どういうこと・・・?」

カラオケボックスの部屋にコスチュームを着たパンチラーズがお客を接客する。
「生ビールピッチャーで~す」
客「うお、アイドルみたいな店員が来た!!」
練習生「実は、私たちアイドルなんです・・・!」
客「本当に!?テレビで見たことないけど・・・」
ちおり「彼女たちはローカルアイドルでして。」
酒が回っていて騙される客「確かにチバテレビで見たかもしれない・・・」
客「うん、確かに見たことある!じゃあ一曲歌ってくれる!?」
練習生「よろこんで!」
盛り上がる会場

部屋から出てくるパンチラーズ
ちおり「好評だったね!」
練習生「おひねりもらっちゃいました!」
ちおり「この調子で、すべての部屋を回ろう!」
「おー!」

部屋を荒らしていくパンチラーズとちおり
客「演歌行ける?」
「よろこんで!」
客「軍歌は?」
「一回音程を聞かせていただければ・・・!」



カラオケボックスに足を踏み入れる芸能関係者
部屋に案内する乙奈「さあ、こちらです・・・」
ムジカ・ムンダーナ(作曲家)「翼チャン、カラオケボックスで接待なんて面白いじゃないか」
スパル・タックス社長(芸能プロダクション社長)「まさか、こんな田舎のカラオケボックスで平成の歌姫の歌声が聞けるとは・・・」
イ・スンシン会長(キャスティング業界のフィクサー)「韓国来ねえか?向こうの芸能界はブルーオーシャンだぞ・・・日本の人気アイドルは韓国ではレジェンドだ」
受話器を持つ乙奈「ここの料理が結構美味しいんですよ・・・注文しますね・・・」

部屋に入ってくるパンチラーズ「烏龍茶、メキシカンコークとバドワイザー、軟骨揚げといちご豆腐お待たせしました~!」
乙奈「お待ちしておりましたわ、みなさん。」
パンチラーズ「・・・!先生!?」
メガネをなおすタックス「変わったコスチュームの店ですね・・・」
乙奈「ここの店員はお客のリクエストの曲を歌ってくれるんですよ。そうよね?」
パンチラーズ「は・・・はい!」
ちおり「このおっさんたちは?」
乙奈「私の親戚です。」
ムジカ「ははは!まあ、付き合いは長いな!!
この翼チャンの歌でも歌ってくれや!あれ、俺が作曲したんだ!」
パンチラーズ「・・・え?翼・・・??」
テーブルの下でムジカを蹴る乙奈「あらやだ、おじさん、酔っ払って・・・
このアフロは、ただの無職のサーファーですわ」
ムジカ「NOO!!!」
乙奈「でも、百地翼の“エアリエル”はあなたたちの十八番じゃない?」
パンチラーズ「はい!歌わさせていただきま~す!」



カラオケボックスを去る重鎮たち
ムジカ「翼チャン、とんだ食わせもんだぜ・・・オレたちにオーディションをさせやがった・・・」
タックス「どうですイ会長?私は悪くはないと思いましたが・・・お金がないなりに、ああいう企画をひねり出す発想力、実行力は、売り出す際のストーリーとしては面白いかと。」
リムジンに乗り込むイ会長「俺はどんな田舎娘でもスターにする・・・お前さんが売り出したいっていうなら、広告業界とは話を付けるさ・・・」



深夜
乙奈「みなさん、閉店までお疲れ様・・・!よくがんばりましたわ・・・」
パンチラーズ「はあはあ・・・クラスみんなで120曲くらいは歌ったかな・・・?」
おひねりを数えるちおり「しめて82万円になります。」
練習生「そんなに稼げたの!?」
ちおり「金回りの良さそうなお客さんの伝票に、冷静に考えると意味不明なサービス料とかチャージ料とか勝手に書き込んだら、払ってくれた。」
練習生「ぼったくりバーの手口では・・・」
「酔っ払っているから、払っちゃったのね・・・」
茶封筒を差し出す乙奈「これは、わたくしの親戚からのちょっと早いお年玉だそうですわ・・・」
ちおり「・・・すげ~!30万円入ってる!」
飛び上がって喜ぶ練習生たち「ノルマクリアだ~~!!」
飛び込んでくる店長「君たち!バイトの分際で随分勝手なことしてくれるじゃないか!
アイドルに会えるカラオケボックスとして大盛況だ!
・・・サイン書いてくれ!!」



生徒会室
華白崎の机の上に100万円の封筒を置く乙奈
「・・・これで年は越せそうかしら?」
華白崎「・・・けっこう・・・」



誰もいない音楽室
音楽室に入ってくる乙奈
一人だけ残っているちおり「学校は来年も通えそう?」
乙奈「ええ・・・すべてちおりちゃんのおかげですわ・・・ありがとう・・・
あの子達もプロのアイドルになることができそうです・・・」
ちおり「先生の教え方がうまかったんだよ!」
乙奈「・・・あの子達を見ていたら・・・小さい頃・・・
歌が上手だねって褒められた時のことを思い出しちゃいました・・・
あの頃が一番幸せだったかも・・・」
ちおり「へ~」
乙奈「いや・・・今かもしれませんわ・・・
先生なんてやりたくなかったけれど・・・
若い子が夢を叶える瞬間に立ち会えるのは、こんなに嬉しいことなのね。」
ちおり「・・・芸能界って本当にドロドロしてるの?」
幸せそうに微笑む乙奈「・・・うふふ・・・ないしょです。」
ちおり「・・・じゃあ、乙奈さんの歌を聞かせて!」
乙奈「そうですね・・・ささやかなお礼として・・・」
ちおり「わ~い!せっかくだからアイドル時代の格好して歌ってよ!」
音楽準備室に引っ込む乙奈「あらあら・・・参りましたわ・・・ちょっと待っててくださいね・・・」

現役時代のコスチュームとメイクで現れる乙奈
普段の清楚な格好と打って変わって、ツインテールで、萌え萌えのフリフリの格好。
乙奈「お待たせ!今日はそこの小さなお友達のために私の天使の歌声をプレゼントするね!」
乙奈だと気づかないちおり「・・・誰?」
乙奈「お、乙奈さんの大親友のスーパーアイドル、百地翼だよっ!」
ちおり「思い出した!タモリさんの横にいた人だ!!すげ~!!」
乙奈「それでは、一曲目は恋する乙女の切ないバラードロック、意地悪なアナタです、カウントダウン!」
ちおり「・・・・・・。」
乙奈「・・・・・・。」
ちおり「・・・?」
乙奈(小声で)「ラジカセの再生ボタンをお願いします・・・」
ちおり「おっけい!」
爆音でイントロが流れる。
乙奈「いっくよ~~!!」
全力で踊りながら歌唱する乙奈。普段の緩慢な動きとのギャップがすごい。
ちおり「かっこい~!!」

生徒会室
音楽室のほうから音が漏れている
残務作業をしている華白崎「・・・誰だ、こんな夜中に・・・」

学食の調理室
大量の年越しそばを打っているブーちゃんも音楽に気づく「・・・・・・。」

科学研究室
試験官だらけの机で寝ている花原「むにゃむにゃ・・・」



音楽室
乙奈「百地翼スペシャルライブ楽しんでくれたかな!」
サイン色紙を抱えて感涙しているちおり
「・・・か・・・感動しました・・・!乙奈さんによろしく伝えてください・・・!」
屈んでちおりに顔を近づける乙奈「・・・ちおりちゃん、お願いがあるの。
今夜私に会ったことはわたしたち3人だけの秘密にしてくれるかな?お姉さんと約束できる?」
ちおり「いいよ!」
乙奈「じゃあファンのみんな!まったね~!
引き続きザ・ベストテンをお楽しみください!
黒柳さん、久米さん、スタジオにお返ししま~す!」
伝説のアイドルを拍手で送りだすちおり「センキュー!」

ちおり「・・・そういや、乙奈さんどこ行ったんだろう・・・?」
制服の姿で戻ってくる乙奈「スペシャルライブはどうでしたか?ちおりちゃん。」
興奮するちおり「ねえねえ!なぜかさっきスーパーアイドルの百地翼ちゃんが来たんだよ!
乙奈さん、あんなバケモンの後に歌うのはなかなか切ないと思うよ!」
乙奈「あらまあそんなすごい方が・・・じゃあ私は勘弁してもらえるかしら・・・?」
ちおり「え~!」
息を切らしている乙奈「ちょ・・・ちょっと、もう声帯と筋肉痛が・・・」
ちおり「乙奈さんもいたらよかったのに!
プロのアイドルってすっごいキラキラしているんだよ!
こればっかりは実際に直接対峙したファンじゃないと判らないだろうな~」
腕を組んで得意げなちおりを見て、微笑む乙奈。
乙奈「そう言ってくださるなら・・・
あの子も最後のライブでちおりちゃんのために歌えてよかったと思います・・・」
ちおり「きっとまた帰ってくるよ!」
乙奈「そうですね・・・」



翌朝
白亜高校の校門が芸能記者でごった返す。
校門でおしくらまんじゅう状態の羽毛田校長。
校長「すいません・・・!学生の登校の妨げになるので控えてください・・・」
記者「伝説のアイドル百地翼ちゃんが登校しているっていう事実は本当ですか!?」
病田「そ・・・そんな名前の学生は名簿にはいません・・・あうう」
記者に突き飛ばされる病田。
京冨野「だいじょうぶか病田!!」
さくら「やめて!彼女の傷病休暇はもう0よ!」
追い返そうとする京冨野「てめえらの事務所覚えたぞ・・・!」
記者「ヤクザがカタギを恫喝していいんですか?学生にもやってるんじゃないんですか??」
そう言いながらマイクやカメラで教師を殴りつける記者たち。
京冨野「こいつら・・・半端な極道よりもたちが悪いぞ!
先生方!校門を閉鎖して籠城しましょう!」
校門にはさまれる羽毛田「あたたた!」
さくら「校長が犠牲に・・・!」



音楽準備室の窓から校門の様子を見下ろす乙奈
「いったい誰が・・・」
乙奈が手にしている週刊誌の原稿には、音楽室でちおりと翼が指切りをしている写真が載っている。
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