『どこまで描ける生物進化』

 現在(初版発行95年当時)の進化論の可能性と限界について解りやすく、かつ正確にまとめられているまさに名著。
 194ページ「今後の課題」と197ページからの「進化思想」は必見!

 こんな本が絶版なんて信じられない。私は初版本を大学で借りて読んだのですが、その情報の質の高さに永久保存決定。しかし絶版の為本屋で注文が出来ず、結局はネットで取り寄せて購入しました。

 こういう本を中学校や高校の図書室に置いてほしいな。・・・というか理科や生物の教科書にしてほしいな(でも宇佐美氏によれば日本の進化論教育は大学でもお座なりで未成熟らしい。あれから15年・・・状況は改善されたのだろうか?)。

 著者の宇佐美正一郎氏は初版発行の段階では存命だったのですが、購入した第四版の奥付をみると、この本を執筆したその年に82歳で亡くなっています。しかし82歳でこんなすさまじい内容の本が書けるという、宇佐美さんの脳の若さは驚くべきものです。脳は使い続ければ全然老けないんですね。
 そう考えると私はまだ60年近く生きられるし、物を書くこともできる。

 宇佐美さんのおそらく最後の作品を参考に私が書いたバイオロジーは、この本に比べればウンコみたいなものですが、それでも希望が湧いてきます。
 「生物学者でもない田代の書いたものなんてうさんくせえ!読めるか!」と言う方はぜひ、この本を読んでみてください。
 200ページで2300円と、700円で売っている新書と比べればやや高いですが、これ一冊で進化についてほとんどのことが解る(まじです。たった一冊で網羅ですよ!)と言うなら全然安いというもの。

 繰り返しになりますが、82歳でこの内容・・・おそるべし・・・

「進化 仮説か真実か」 完成!

 福岡伸一批判で中学時代のサイエンスライター魂が呼び覚まされ、描きかけの『80日間宇宙一周』をほっぽり投げて(K氏すまん!)進化論のページを先に作ってしまったのですが、いや~想像以上に大変な作業でした・・・
 とにかく進化については、かつてdario氏が誤解したことがあったので、丁寧かつ慎重に執筆しました。
 ・・・しかしこんな文章量になるとは思ってもなかった。一冊の本になるぞコリャ。

 とにかくこのサイトの「バイオロジー」はお得ですよ。進化論に関する関連書籍を買わずに、進化のメカニズムがタダで解りますから!大体だけど・・・
 数学がダメなので「ハーディ・ワインベルグの法則」は華麗にスル―・・・でもあれ数式難しいわりに、大したことは言ってないと思う(暴言)。
 
 そういえば、ハクスリーは「ダーウィンのブルドッグ」、ドーキンスは「ダーウィンのドーベルマン」としてダーウィニズムを擁護したけど、私はどうだろう・・・?「ダーウィンのチワワ」くらいにはなれただろうか・・・?

 最後のページは半分私の持論なんで、かなり怪しいんですが(読みとばしちゃっていいです)、その他はたくさんの本を同時読みして、どの本にも書いてある内容だけを厳選しましたから間違ってはないと思いますよ(中学時代にノートに書いた私の本もかなり参考になった!)。

 あと本当は「ミーム=文化の遺伝」とかも取り上げたかったんですけど、ちょっとミームは私も正確に理解してないところがあるので、そういう面白くも危ない橋は渡りませんでした。

 さ~て漫画だ、漫画描かないと・・・

 追記:そういやサイト開設一周年だ。アクセス数4500って多いのだろうか・・・カウンターつけたのは秋だったけど・・・

『ウィアード』

 ――発達した科学は魔法と見分けがつかない。 アーサー・C・クラーク

 Tさんとの合作漫画『ウィアード』が完成しました!

 タイトルの「ウィアード」とは怪奇小説の「怪奇」と言う意味の英語。フランケンシュタインの怪物やドラキュラ、ウィッチなどが出てくるのでそんな題名に決めました。

 いや~Tさん・・・スクリーントーンの技術が半端ねえ・・・!「へ~少年漫画ってそうやって貼るんだ・・・ふむふむ」と勉強させていただきました!トーンを効果的に貼ることで絵ってここまで印象を変えるんですね!すげえ!

 最終チェックについてはもうほとんど文句なし。私の想像をはるかに凌駕する完成度でした。忙しい中こんなにトーンを貼るのはかなり大変だったでしょう。本当にご苦労様でした。

 私が最後に行なったのは、いくつかのセリフを加筆訂正、集中効果線を一コマだけ追加、絵については本当は他人が手を入れちゃダメだとは思うけど、一コマだけ。生徒に責められて魔女ファオナ先生が焦っている様子を出すために、先生の頬に平仮名の「し」のような汗をひとつ描き加えたくらいです。
 つまり大したことはやってないってこと。

 とにかくこれでいきましょう!俺たちやるべきことはやったよ!ダメでも悔いはない!・・・よね??

福岡伸一さんの生物学⑤

 まとめます。

 動物などの進化は、私たちが想像できないほどの時間スケールで起きているため、なかなかそれが実際に起きていることを実感できません。
 私たちが見ることができるのは進化の「結果」だけ(本当はウィルスやバクテリアや昆虫の進化は見れるんだけど)。
 そして進化の歴史を見ずに、結果しか見ないから「なんでこんな複雑な動物が偶然できたのだろう?」と感じてしまうのです。

 しかし現在存在する全ての生物は38億年と言う途方もない時間をかけて進化してきました。7,80年ほどしか生きれない私たちにとって38億年はまさに永遠に等しい時間。
 逆に漸進的かつランダムな変化の蓄積で進化したからこそ、38億年もの莫大な時間を進化に費やすこととなり、私たちが奇跡の産物と勘違いしてしまうほどの「結果」を残せたのです。
 なにしろ生物の「基礎固め」にはなんと30億年かけているのですから。

 福岡先生がダーウィンの対抗馬にあげたラマルク。彼が進化論のパイオニアであることは事実です。ラマルクについてはかつて記事で取り上げたので、ここで深くは述べませんが、進化のメカニズムの説明・・・「用不用説」に関しては明らかに大雑把なものでした。
 それでも、あの時代に「生物の形が変わるんだ」と言ってくれたラマルクの功績は計り知れないでしょう。

 また福岡先生が憧れたという、今西錦司さんのダーウィニズムに対する問題定義も見事だったと思います。本当に適者生存はあるのか?いくら足が速いインパラでも運が悪ければこけて食われるのではないか?そして氏が提唱した「棲み分け」と「食い分け」は私が大好きな理論です。
 しかし今西さんも進化のメカニズムの説明「進化は起こるべき時にいちどきに種の個体全てに対して起きるんや!」はかなり強引で科学的ではなかったことも事実です。
 
 私が最も言いたいことは、福岡先生が「論理的に欠陥がある」とする、ダーウィニズムもドーキンスの利己的遺伝子説も、先生が『生物と無生物のあいだ』で提唱した「生物の美しさ」や「動的平衡(代謝)」をなんら否定してはいないということです。
 そして眼も樹木も貝殻も細胞膜もタンパク質も雪の結晶も、そこに第3者(神、妖精、遺伝子)の意志などありません。それらは単純な物理法則によって自己組織化しているだけです。

 さらに福岡先生の動的平衡は、生物集団(=進化)にも言えます。カオスとコスモスのちょうど境界「カオスの縁」で適応度を最もあげる生物集団「種」は、個体の生と死を繰り返して、更新率を上げ、事前にエラーを回避しています。
 そして進化論においても常に進化し続けなければ淘汰されるという「(ヘレナ・ボナム・カーターのw)赤の女王仮説」というものがちゃんとあります。
 そしてラマルクの獲得形質の遺伝は、この動的平衡の考え方に必要ありません。むしろ害悪です。
 親の獲得形質が子にも遺伝してしまうことこそ、柔軟性を損ない、遺伝子プール内のエラーを増大させ、エントロピーに追いつかれる(絶滅)要因になってしまうじゃないですか。
 世代交代で常に獲得形質はリセットされる。これは体内のタンパク質を自ら壊し、リセットする福岡先生の考えと何が違うのか。

 だから福岡さんのダーウィニズム批判の根拠はいまいち納得が出来ないのです。
 繰り返しになりますが、福岡さんは影響力のある学者なのだから、定説を覆すような事を言って、世間の生物学に関する認識をひっ掻きまわさないでほしいのです・・・
 そして進化を真面目に研究されている専門家の方、「よくいるテレビ御用達学者か・・・」と思わずに、誰でもいいですからコメントをしてほしいものです。
 いち動物オタクの私にはこれが限界なのですから。

福岡伸一さんの生物学④

 福岡先生最大の問題がダーウィニズムを批判し、創造説っぽいことを一般の人にほのめかしている点です。

 誤解して欲しくないのは私は福岡さんの人格を攻撃しているわけではないし、文章も上手い立派な学者さんだとは思います。会ったことはありませんが、おそらくいい人でしょう。
 ただ今やメディアの寵児である福岡先生が、生物学に疎い人に誤った知識を授けてしまうのは見過ごせません。
 例えいくら先生が「これは私の個人的な意見ですが・・・」と前置きしてダーウィンを批判しても、やっぱり福岡さんの生物学しか知らない人は、それを正しいと信じてしまうのです。
 「あの福岡先生が言うのならそうかもしれない!」

 こんな事は言いたくありませんが、もしかしたら福岡伸一先生は専門外の進化論を大雑把にしか理解していないのかもしれません。
 もしくはあえて講演のお客さんの知識に合わせて、進化には遺伝子の意思が働いていると説明しているのか・・・でも嘘言っちゃまずいですよ。ダーウィンのロットワイラ―、ドーキンスが絶対ぶちギレます。

 まずは福岡さんのダーウィン批判から。

しかし、ダーウィニズムには欠陥があります。例えば、眼のような非常に複合的な仕組みの進化は十分説明できないのです。眼の機能は、レンズや網膜、神経回路、脳の中に画像を処理する仕組みなど、多くのサブシステムが連携して成り立っています。ダーウィンやドーキンスは、それぞれのサブシステムは、何億年もの時間があればちょっとずつ変化を繰り返しながら改良され、複雑な仕組みを完成し得ると言いました。

ちょうど盲目の時計職人でも非常に長い時間があれば、ランダムに部品をいじっているうちに時計を完成させるチャンスがあるという意味で、「ブラインド・ウオッチメーカーのモデル」と言われています。「ああ、なるほど」と思うかもしれませんが、決してそうはならないのです。

サブシステムがちょっとずつ変化し、改良されて眼がつくられたといいますが、すべてのサブシステムが全部完成しないと、眼は“見る”ことはできません。眼が見えるまでの、その途中段階にあるサブシステムというのは機能を持たないわけです。

機能を持たない仕組みは自然淘汰の対象にはなり得ません。しかし、非常に複雑な仕組みが、サブシステムそれぞれの改良によって統合されていく。あたかも進化にある種の方向性があるように見える。これは一体何かということは、今のところダーウィニズムでは説明できていないのです。


 これは所謂、現在の生物があまりに高度で複雑な形態を持つことから、それが漸進的な変化では決してできないと断定する「竜巻に巻き上げられた資材が空中にで合体し、完成したボーイングのジェット機が地面にドスンと落ちてきた位不可能だよ」という話なのですが、プロの生物学者が言うようなことではないです。

 ちなみにここでいう「ブラインド・ウォッチメイカー(目が見えない時計職人)」はリチャード・ドーキンスの有名な著作です。福岡さんはリチャード・ドーキンスが性に合わないなのでしょう。何かドーキンスに意地悪でもされたのか、と邪推してしまいます・・・
 
 ここで福岡さんの言っている事は間違いだらけで指摘が大変。ちょっと辛抱してください。

>サブシステムがちょっとずつ変化し、改良されて眼がつくられたといいますが、すべてのサブシステムが全部完成しないと、眼は“見る”ことはできません。眼が見えるまでの、その途中段階にあるサブシステムというのは機能を持たないわけです。

 まずここです。福岡先生は生物の進化の歴史を知っててこう言っているのでしょうか?生物の歴史は38億年。その長い歴史の中では様々な目が作られました。
 福岡先生が取り上げているのは、おそらく現在の人間などが持つ高度な目でしょう。しかし生物の目とはそれだけではありません。
 もっとも原始的な目は「ただの穴」。そうピンホールカメラです。目にあたる場所に穴を開けるくらいなら何とかなりそうだと思いませんか?目の進化はそこから始まりました。

>非常に複雑な仕組みが、サブシステムそれぞれの改良によって統合されていく。あたかも進化にある種の方向性があるように見える。これは一体何かということは、今のところダーウィニズムでは説明できていないのです。

 目は確かに非常に複雑な仕組みです。しかし傍から見れば無駄のない高性能な器官に見えますが、高校の生物の教科書で目の断面図の絵があると思います。高校の頃この複雑な目の作りを暗記するのに辟易としませんでした?私はしました。
 なんでこんなめちゃくちゃになってるんだ・・・?と。実は高性能だとされるヒトの目の設計は無駄だらけで、脳が視覚像を頑張って処理しているのです。

 ドーキンスが『進化の存在証明』において指摘しているようにヒトの眼最大の失敗が、光を受容する色素細胞、視細胞、錐体細胞、かん体細胞などが「なぜか外向き」についているということ(教科書で確認してみてください。たまげます)。
 それはなぜか・・・最初の目はただの穴でそこから地道にランダムな改良を重ねたからです。進化の痕跡は発生で解ります。興味をもたれた方は、ぜひ目の発生を調べてみてください。眼は外胚葉由来・・・眼胞という部分がくぼんでできているのです。
 もし高度な目が一時に設計、完成されたなら、光受容体はちゃんと内向きになるはず。なんでこんなめちゃくちゃな設計になるのか?そしてなぜ高校生は苦しまなければならないのか??

 生物は無駄だらけ・・・それは分子生物学者の福岡先生が一番よく分かっているはず。なにしろDNAのほとんど大部分は無駄なコードなのですから。
 当時の分子生物学者が一番驚いたのがそこです。意外と遺伝子として働いているコードが少なかったのです。
 そしてその遺伝子にも「イントロン」と言うアミノ酸をコードしてない部分がありディレクターズカット(RNAスプライシング)されちゃいます。

 まとめ:ダーウィニズムに福岡先生が指摘するような欠陥はない。ダーウィニズムに基づいて作られた目に欠陥がある。
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