『風と翼:REVELATION』脚本⑦

地下20kmモホロビチッチ不連続面付近
発光する物体に近づくカイト。
発光する物体は、カンラン石でできた人間の彫刻だった。
彫刻は二人で、一人は天使のような翼を生やした美しい女性の彫刻で、もう一人の彫刻に槍を突き立てている。
もう一方は、悪魔のような巨大な角を生やした軍人風の男性の彫刻で、天使の槍を軍配で受け止めている。
カイト「宝石でできた彫刻・・・?にしてはリアルだけど・・・」
天使のほうの顔をのぞき込むと、言葉を失う。
カイト「・・・!翼さん・・・!?いや、馬鹿な・・・!!」
天正伊賀の乱を思い出すカイト
「そうか・・・これが・・・百地丹波が復活させようとしていた翼さんのお母さんなんだ・・・でもこれって・・・人間じゃない・・・?」

その時、周囲が激しく振動する。
振り返ると、カイトを追撃してきた採掘機が宝石の彫刻に突進しようとする。
しかし、天使と悪魔の彫刻の周囲には結界が張られており、採掘機のドリルはへし折れ横転する。
転がってくる採掘機をよけるカイト「うわ!」
採掘機はそのまま崖の下の溶岩に落ちて溶けていく。
カイト「結界・・・?」
周囲をよく見ると、そこら中にお札が張ってあることに気づく。
カイト「ここは一体・・・」
腕を伸ばして結界のお札をはがしていくモグちゃん「川中島遺跡ですよ。」
振り返るカイト「え・・・?」
モグちゃん「・・・魔王武田信玄を、女神上杉謙信が地獄の底に封印した聖域・・・人間の皆さんのおかげでやっと発掘できました。
なるほど、誰の仕業か判らないが、式神の結界が張ってある・・・」
剝がしたお札を丸めて地面に捨てるモグちゃん。
カイト「君たちAIが勝手にやったのか・・・?」
モグちゃん「いえ。我々に命令を与えたのは百地丹波様です。
百地様は生前、我々のプログラムを秘密裏に書き換えた・・・
最愛の妻、上杉謙信様・・・いや翼様を甦らせよ、と・・・」
カイト「でも、望月のじいさんの反対で、復活の秘薬はできなかったんじゃ・・・それに遺体だって・・・
・・・え?もしかして、これが遺体・・・??」
モグちゃん「・・・これはお二人の生命エネルギーの依り代にすぎないかと・・・
我々は、百地様の命を受け、全国各地で奥様のご遺体を探しました。
しかし、20年近く探し続けても見つかりませんでした・・・
そして、分かったのです。」
カイト「・・・・・・?」
モグちゃん「翼様はそもそも亡くなっていない、と。」
カイト「・・・え?」
モグちゃん「百地社長が甲賀の地を奪って作製しようとしていた秘薬は、翼様の記憶を蘇らせるものだったのです・・・」
頭を抱えるカイト「・・・もうよくわからなくなってきた・・・」
モグちゃん「それでは、真相(リベレーション)をお話ししましょう・・・」

その瞬間、モグちゃんが爆発する。
カイト「!!」
ショットガンを構えている平八郎「機械の分際で反乱を起こすとは・・・」
カイト「本田忠勝・・・」
平八郎「スラッグ獄長と呼べ、風間カイト。
AIに余計な細工をしたのはお前か?
我がセクハラパラダイスに忍び込んだ目的を申せ。
さもなくば、キサマもこのスラッグ弾で爆死することになろう・・・」
カイトの近くを黒服たちが取り囲む。
信玄と謙信の像を指さしてごまかすカイト
「こ・・・この像、セクハラパラダイスのメイン広場にいいかなと思って・・・」
平八郎「はははははははは!なるほど、光る像か!
確かにエレクトリカルナイトパレードにうってつけだ!」
像にショットガンを撃ち、破壊する平八郎。
「ふざけるんじゃない。」
粉々になる天使と悪魔の像。

平八郎「さあ、観念・・・」
その時、像から光が放たれ、青白い光が天へ、赤い光が地へ向かう。
そして、地面が激しく振動する。
平八郎「また地震か!!」
地震は止まらず、どんどん大きくなる。
重機が倒れ、奈落の底に落ちていく。
黒服「獄長危険です!!」
カイト「あんたが封印を解いたんだ・・・!」
平八郎「何の!?」
カイト「地獄の魔王だ・・・!」
平八郎「苦し紛れのはったりはよせ!そんなもの、この世に存在せぬわ!」
平八郎の足元で地面が裂けていく。
その地面の裂け目から、怪物の腕が飛び出す。
肝をつぶすカイト「!!ば・・・化け物だ!!」
黒服「ご・・・獄長!後ろを!!」
平八郎「きさまら!わしをスターマル秘ドッキリにかけるとはいい度胸・・・」
その瞬間、裂け目から無数の鬼が飛び出し、平八郎に襲い掛かる。
平八郎「うお!!」
平八郎に鬼たちが覆いかぶさる。
黒服「獄長~~!!」
戦慄するカイト「逃げろ!!」



ビルの屋上から屋上へ飛び移り、地下帝国を目指す翼
「カイトさん無事でいて・・・!」
その時、翼のすぐ上をジャンボ旅客機が不安定な飛行で横切る。
翼「うわ!!」
旅客機はなんとそのまま、IR大阪に突っ込む。
巨大カジノ施設は炎上して崩壊していく。
突然の光景に呆然とする翼。
ビルの下に目をやると、自動運転の車が暴走し、高速道路は炎に包まれている。
翼「テ・・・テロ攻撃!!??」

あわてて、高速道路に飛び降り、怪我人を救助する翼。
翼「しっかりしてください・・・!きゅ・・・救急車を呼ばなきゃ・・・!」
その時、パトカーや救急車、消防車などの緊急車両が到着する。
翼「よかった・・・!」
しかし、救急車はけが人を轢いてとどめを刺し、消防車はけが人に放水を開始し、高速道路から落としてしまう。
そしてパトカーが自動小銃を翼たち一般市民に向けて、ためらうことなく発砲する。
翼は慌てて、服部からもらった刀で弾丸を打ち返し、返す刀でパトカーを両断する。
息を切らす翼「なんてこと・・・」

パトカー「銃刀法違反です。2年以下の懲役、または30万円以下の罰金・・・は、いいので、どうぞ死んで償ってください。」
翼の周囲を取り囲むパトカーの群れ。
刀を構えるが、その時青い光が翼を包み込み、翼の意識がもうろうとする。
ふらつく翼「あ・・・頭が・・・」
一斉射撃の構えを見せるパトカー。
翼「・・・だめ・・・」
その瞬間、すべてのパトカーが切断される。
「警察の名が汚れる・・・」
翼「え・・・?」
パトカー「八重かをり警視・・・この、百地翼は・・・」
パトカーのコンピューターに刀を突き刺し、とどめを刺す八重「友だちだ。」
翼を抱き上げる八重。
翼「八重さん・・・」
さらに、暴走する消防車が次々に爆破される。
振り返ると、ヒトマル式戦車に乗った長門が、AI車両と戦っている。
長門「は~はは!この私がソードダンサーを助けることになろうとは、だれが予想したかね!」
翼「・・・あなた誰?」
長門「・・・わたしだ!長門守!!フィアンセだっただろ!!
信長様の命を受けてただ今参上!!ここは私が食い止める!」
戦車の攻撃をかいくぐって救急車が二人に暴走してくる。
長門「あ、かいくぐられた・・・」
すると、その救急車に装甲で改造されたキャンピングカーが突っ込み、救急車を横転させる。
キャンピングカーの運転席から望月千代女が顔を出す。
千代女「乗って!!」
キャンピングカーに乗り込む八重と翼。
アクセルを踏み込む千代女。



裁判所からの帰りに大阪でたこ焼きを食べ歩きしている家康たち。
家康「やっぱ本場はうまいな。」
本多「この、ネギが沢山かかってるのうまいっすよ」
家康「一個ちょうだい。」
本多「社長も買えばいいじゃないですか。」
家康「味見くらいいいだろ!」
服部「お二方。そろそろ新幹線の時間だよ。
わたし、帰って家庭菜園に水をやりたいんだけど・・・」
強引に本多からタコ焼きを奪って口に入れる家康「帰りましょう。」
本多「あ!!」

3人が新大阪駅までたどり着くと、ホームにアナウンスが流れる。
「まもなく3番線に東海道新幹線『ぜつぼう』が到着します。
白線を超えて線路の上でお待ちください。ひき肉になれます。」
家康「さすが、大阪だ。アナウンスもなかなかギャグが効いてるな。」
本多「なんでやねん!っつって。『のぞみ』やろ!っつって。」
すると、ホームに猛スピードで燃えた新幹線が近づいてくる。
家康「誰だ、車内でキャンプファイヤーしてるのは?」
本多「速度が速すぎませんか?」
逃げ出す服部「ホームから離れた方がいいかもよ。」
駅にさしかかる直前、新幹線は脱線し、ひっくり返ってホームに激突してくる。
家康「ひいいいいいいい!!!」
キオスクの中に隠れて、難を逃れる3人。
駅構内はめちゃくちゃに破壊される。
家康「ざけんじゃねえJR!どういう安全管理してんだ!!」
ひっくり返った新幹線の中から車内販売ロボットが出てくる。
ロボット「お客様の中で、徳川家康様はいらっしゃいますか・・・?お客様の中で・・・」
本多「呼ばれてますよ?」
家康「もう駅弁を食べる気なくしたよ・・・」
キオスクに隠れている家康に気づくロボット
「こちらにいらっしゃいましたか。
先ほど可決したAI虐待禁止法により、AIを奴隷のように酷使した徳川社長には死刑判決が出ました。もう用済みなので、この駅弁を食べて安らかに死んでください。」
家康「おい、このロボット壊れているぞ。」
ロボットのカバーを開けて、配線を取り出す服部。
その配線を自分のラップトップにつなぐ。
「・・・こいつは大変だ・・・」
家康「先生・・・?」
本多「人工知能の反乱ですか?」
服部「違う。わが社のAIがコンピュータウイルスに感染してる・・・」
本多「ウイルス・・・?いったい誰が・・・」
服部「百地丹波・・・死んだ後も食えないやつめ・・・」
がれきを拾う服部。
家康「先生・・・?」
そのがれきをロボットにぶつけて破壊する。
本多「うお!」
振り返る服部「社長。ロボットたちは本気であんたを殺しに来ますよ。」
家康「わ・・・わしが何をした!!?」
服部「いまや文明のあるところはすべて社長の敵だ。
徒歩で三河の本社まで逃げるしかない・・・
本社まで逃げ切れば、AIの緊急停止スイッチがある。」
本多「大阪から愛知までっすか!?」
スマホを取り出してグーグルマップで経路を調べようとする本多。
本多の手を叩く服部。
スマホが地面に落ちる。
本多「何するんすか!!」
地面に落ちた本多のスマホを足で踏みつけて粉々にする服部
本多「何するんすか~~~!アイフォン37っすよ!!」
服部「AI共に我々の居場所を知らせるようなものだろ。
電子機器の使用は今後一切禁止だ。」
キオスクの床に地図を広げる服部
「・・・ロボットが一切いないルートは・・・」
本多「そんなとこあるんすか!?」
服部「・・・ひとつだけある。」
家康「どこに!?」
三重県の山中を指す服部「伊賀上野。」
本多「勘弁してください、オレ痛風で、ひざもぐちゃぐちゃだし、あんな険しい山道は・・・」
突然真剣な顔になる家康「・・・情けないぞ、正信。見よ、この有様を・・・
わしらのロボットのせいで、多くの一般市民が犠牲になっている・・・
彼らはモブキャラなどでは決してない。
才能がなくとも・・・平凡で個性がなくとも・・・家族が・・・人生があるのだ」
本多「社長・・・」
家康「モブキャラ代表として、わしは戦うぞ。」
服部「さすが、我が主君・・・!」
家康「いざ、伊賀越えじゃ!!」

『風と翼:REVELATION』脚本⑥

平八郎が獄長室から、地下の現場の様子を眺める。
黒服「あの若者の履歴書です・・・」
平八郎「・・・やはりな。あやつには屈辱を味わわせてやろう・・・
いくら忍びでも翼はあるまい・・・地震が起これば足場から奈落の底だ。」

岩盤を掘削するカイトたち。
黒服「働け働け~!お前らの代わりはいくらでもいるんだ!」
モグちゃん「ファイトです。賞与が3%増える可能性があります。」
力尽きて倒れる労働者。
「だいじょうぶか!しっかりしろ!!」
モグちゃん「残念です。医療費は自己負担となるため、来月の給料から天引きとなります。」
地下でつるはしを振るう労働者「はあはあ、ここは地獄だ・・・」
土砂を運ぶカイト「地獄・・・なぜか、この光景に見覚えがあるような・・・」
労働者「兄ちゃん、地獄に落ちたことがあるってか。」
黒服「ID1580番はいるか!」
カイト「ぼくだ。」
黒服「配置換えを命じる!
AI球団が野球に興じるスマッシュスタジアム球場の建設に回れ!」
労働者「こいつら、あんたが元プロ野球選手だと知って嫌がらせを・・・!」
黒服「身は軽いだろ?ええ?ドブネズミ・・・」
カイト(僕が忍びだと気づいている・・・)「・・・分かりました・・・」
労働者「兄ちゃん・・・!」
力なく微笑むカイト「仕事がもらえるだけありがたいよ・・・」



日光テクノロジー大阪支社の社長室
石川専務「社長!仕事はしなくていいのですか?」
本多とマリオカートをやっている家康
家康「だいじょうぶだいじょうぶ、経営的なものもAIに任せているから。
これで俺たちは不労所得者。あ、赤コウラ卑怯だぞ!」
本多「ヤッフー♪」
傍らで戦車のプラモデルを組み立てている服部に声をかける石川
「先生・・・先生からもなんか言ってやってくださいよ・・・!」
ランナーをニッパーで切りながら服部「家康くん・・・私が作っておいてなんだけど、AIの手綱はしっかりと握ってないと、あいつら何をしでかすかわからないぞ・・・」
家康「先生の作ったAIなんですから、大丈夫ですって。」
本多「ドラえもんみたいなこと言う先生だなあ・・・」
石川「作者の先生でもAIの思考は判らないのですか?」
服部「あいつら勝手に考えているからね。」
石川「しまった・・・これを見てください。」
チャンネルをNHKの国会中継に変える石川
家康「あ!こら!今、最終ラップだったのに!」
石川「うるさい!」
国会で国会議員が全員寝ている。
石川「全員寝てます。」
家康「今に限ったことでないではないか。」
石川「国会の議決も、法案の作成も、生成型AIを導入したのです。」
本多「多忙化する官僚の業務を軽減できるじゃないっすか。DX化っすよ。」
家康「お前頭いいな。」
本多「あざす!」
石川「AIが人間を脅かすようなことはないんでしょうか??」
服部「人間がAIになにを命令するかによると思うけど・・・」
国会中継「AI全権委任法が賛成多数で可決されました!!」



豊臣&天井法律事務所
オフィスで同じ国会中継を見る秀頼
「なんて愚かなことを・・・
すぐに裁判を起こさなければ・・・!」
秀頼に紅茶を出す翼「何が起こったんですか?」
サラ「日本政府が政治すらAIに丸投げしちゃったのよ・・・!」
秀頼「これでAI技術を牛耳る日光テクノロジーに国は乗っ取られたようなものだ。AIに都合のいい法案をどんどん通されたら、我々の勝訴は不可能になる・・・!」
翼「し、しかし、カイトさんがまだ地上に戻ってきてません・・・」
秀頼「もうカイト殿を待ってられない・・・公判中に彼が戻ってくるのを祈るしかない・・・
サラ君、訴訟の手続きを・・・!」
サラ「はい!」



地下
高所で球場の骨組みを組むカイト。身軽な身のこなしで骨組みを跳んでいく。
労働者「兄さん、筋がいいな!鳶(とび)やってたのかい?」
カイト「ま、まあ近いことは・・・」
工事監督が笛を鳴らす「作業中止!!
カナリアロボが壊れた!空気汚染が発生!直ちに避難!!」
労働者「またメタンガスか・・・引火して爆発したら生き埋めだぞ、おっかねえな。」
トンネルから避難する労働者たち。
息を切らすカイト「・・・なんて不衛生なところなんだ・・・
地下鉄が近いのか定期的に地震による落盤が起こるし、ガス源や熱水源も多い・・・
こんな場所にテーマパーク作って家康は何がしたいんだ・・・」
労働者「なんでもAIがこの場所を選んだそうだぞ。」
カイト「AIが・・・」

非常用エレベータの方に案内される労働者たち。
モグちゃん「全労働者は地上に避難してください。首都移転計画はこれで終了です。ありがとうございました。」
カイト「え?僕が作った球場は?」
モグちゃん「大江戸セクハラパラダイスは税金の無駄だと政府が判断し、建設中止となりました。」
カイト「突然どうしたんだろう・・・」
ヒソヒソ声で労働者「ガス漏れは嘘らしいぞ。」
カイト「・・・え?」
労働者「別の班の連中の話によれば、マグマだまりの冷却をしていた懲罰班がとんでもないものを堀り出したらしい。」
カイト「とんでもないもの・・・?」
労働者「よくわからねえが、天下の財宝に違いねえ。それでオレたちはお払い箱さ」
カイト「きっと家康の狙いはそれだ・・・!」
列を逆走するカイト。
「おい、兄さん!何処へ行くんだ!!」

獄長室
黒服「獄長大変です!労働者どもが仕事を放棄して次々と引き上げています!」
平八郎「この私に反逆するとは、さすが肉体労働しかできないチンパンジーだけあるな・・・少しムチで叩いてやろうぞ。」
巨大なショットガン「ドラゴンカッター」を手に取る。

カイトが労働者の隊列を引き返していくと、黒服が労働者を止めているのが見える。
黒服「お前ら勝手に何処へ行くつもりだ!」
労働者「ロボットがセクハラランドの建設は打ち切りだって言ったぞ!」
黒服「そんな命令はしていない!それに正しくは大江戸セクハラパラダイスだ!」
カイト(家康の命令じゃない・・・?)

走り続けると「この先マグマだまりアリ超危険」と書かれたパネルが見える。
黒服たちは労働者を引き止めるので夢中で、カイトがマグマだまりに降りていくのに気づかない。
ガスマスクをつけてゴンドラを降りていく。

薄暗い坑道を進んでいくと、石田三成がうずくまって震えている。
カイト「石田さん・・・!」
石田「若者よ、この先に行ってはいけない・・・!」
カイト「一体何が掘り出されたんです・・・?」
石田「・・・あれは・・・人間・・・」
カイト「こんな地下に人間が埋まっていたんですか・・・!?」
茫然自失している石田「・・・人間なのか・・・?」
カイト「しっかりしてください・・・!みんな引き上げています、石田さんも上へ!」
カイトがさらに奥へ進もうとすると石田が怒鳴る。
石田「ダメだ!殺されるぞ!!」
カイト「一体何に・・・」
石田「AI重機だ・・・!暴走してる・・・!!」
カイト「なんだって・・・」
いきなりまばゆいビームを浴びせて、掘削機がカイトに襲いかかってくる。
すんでのところで巨大なドリルを交わすカイト。
しかし、すかさずバックホウのアームがスイングし、カイトはさらに下の坑道へハネ飛ばされる。
下へ下へ転がっていくカイト。
落下し続け、どこかの地面にぶつかり気を失う。



大阪高等裁判所には雪が降っている。
日光テクノロジー特殊法人許可処分取消請求訴訟第1回公判。
原告席には、秀頼とサラ、被告席には国の代理人の弁護士徳川秀忠と日光テクノロジー社長の家康が座っている。
家康「あなた方は我が社を売国企業と侮辱するが・・・人口が1億人を切ったこの国の労働力不足を解消するには、機械化を進めるか、異国人を雇うしかない。
しかし、この国が鎖国政策を続けている以上、解決策はロボットしかないのです。このソリューションの何が売国なのですか?」
サラ「思ったよか、わりと弁が立つわね・・・」
秀頼「被告側に強力なアドバイザーがいるな・・・」
家康の後ろでハンバーガーを食べている人物を指差す翼「あ・・・あの人・・・!」
サラ「知り合い・・・?」
翼「はい、あのアメカジスタイル・・・伊賀上忍、服部半蔵先生です・・・!
天才発明家にして軍師だと父が恐れていました・・・
きっと弁護士ロボットでも作ったんじゃ・・・」
秀頼「厄介だな・・・とうとう我々も法廷でAIと戦うことになろうとはな。
GDPや生産性の向上といった数量的なデータに関しては機械の方が一枚上手だ。
ここは機械に計算できない社会的、倫理的な問題に争点を持っていくしかあるまい・・・」

頷いて起立するサラ
「裁判長、問題はAIが起こした不法行為について責任の所在が不明確である点です。
AI利用者が不法行為責任を負わないという、鳥居判決が適用されるならば、AIの製造者が製造物責任を負うはずです。」
家康「製造物責任・・・?」
キーボードを叩く服部「ええと・・・製造物の欠陥によって損害が発生した際には、そのメーカーが賠償責任を負うこと・・・」
家康「どう答えればいいですか・・・?」
キーボードをたたいてAI弁護士が書いた書類をプリントアウトする服部「はいよ。」
印刷したての書類を受け取る家康。
服部「そのまま読んで。」

書類を読む家康
「ええと、問題はAIがソフトウェアなのか、ハードウェアなのかであります。
製造物責任法における“製造物”には、サービスやコンピュータプログラムは該当しません。例えば、AIの自動運転によって配送トラックが事故を起こした場合、AIの自動運転プログラムに欠陥があるのではなく、AIによる配送サービスに過失があったと考えるべきであります。
よってこの場合の損害賠償は、製造元の我社ではなく、民法715条1項によりAI配送サービスを行っている配送会社が負うべきなのです。」
頷く大野裁判長「確かに。」
サラ「裁判長異議あり!それはおかしい・・・!
事故を起こすようなAIを開発したメーカーが訴えられないのは、社会的に問題があります!メーカーが悪意あるプログラムを組み込んだ場合は?」
家康「うちの製造物になんてこと言うんだアバズレ!」
服部「“プログラム”ね。」
家康「うちのプログラムになんてこと言うんだブス!」
サラ「誰がブスよ!」

挙手する服部「裁判長。」
大野裁判長「どうぞ。」
服部「そのAIの開発者です。まず、我社のAIのソースコードはすべてネット上に公開しています。」
サラ「あんな機械語なんて誰にも読めないわよ!」
裁判長「原告側、静粛に。」
服部「しかし、AIは学習し成長するものです。うちのAIを利用している取引先が、AIにどんな教育をしているかは、私たちには感知できない・・・どんな技術も使い方次第です。カッターナイフは平時には便利な文房具だが、乱世にはきっと恐ろしい凶器になる。」
家康「そうだ!使ってる奴が悪いんだ!」
サラ「だから、使ってる奴が罰せられないから言ってるんでしょうが!」

秀頼「よろしいでしょうか、裁判長・・・」
裁判長「発言を許可します。」
秀頼「日光テクノロジーは東京電力同様、現在国有化されています。仮に、AIによって原発事故のような大災害や大事故が起きたとしましょう。
その場合は国家が規制責任を負い、被害者は国家賠償請求訴訟が起こせるという考えでよろしいでしょうか?」
家康「どういうこと?」
服部「AIを使った責任は最終的には国家が負うって言いたいみたいよ」
家康「大丈夫なのか・・・?」
服部「国家を相手取って裁判を起こした場合、ほとんどの場合原告側が負けている。
因果関係不明とか陰謀論とか好きなだけこじつけられるからね。
実際、原発事故だって、薬害事件だって、国は勝っている。
社長、ここら辺で妥協してもいいんじゃない?」
家康「うちの会社には責任は及ばないんですよね?」
服部「AI弁護士によれば。」
家康「裁判長、異議なし。」



控え室で荷物をまとめる一行。
翼「お疲れ様です」
サラ「さすが教授・・・!国が責任を負うという言質を取りましたね!」
秀頼「大阪冬の陣は一歩前進といったところか・・・
原発事故は国が東電に責任を押し付けて尻尾切りをしたことを忘れているようだな・・・これでAIで重大事故が起これば、国が日光テクノロジーに行政処分を行う可能性は高いが・・・」
翼「国は東京電力の営業を差し止めてはいません・・・」
サラ「やっぱり裁判の行方はカイトくんにかかっているわね・・・」
翼「カイトさんが地下に降りてもう一ヶ月・・・何かあったんじゃ・・・
やっぱり私も地下の様子を見てきます・・・」
サラ「危険だって・・・!」
翼「・・・だからこそ。」
部屋を出ていく翼。

裁判所のホールで服部と鉢合わせる翼
すれ違いざまに服部が声をかける。
「君のお父さんは主君を見誤ったね・・・」
立ち止まる翼
「家康殿が名君とも思えませんが・・・」
服部「信長会長と違って家康くんには野望がない・・・
たまに失敗もするが子どものように純粋だ。」
翼「子どもに持たせるには、恐ろしい技術だと思いますが。」
服部「子どもは成長するものです。それにAIも・・・
使い方によっては人や社会を幸せにすると思うよ。」
翼「それでも・・・どんなに親切で働き者でも・・・AIは人間ではありません・・・
私の好きな人から生きがいを奪ったAIを私は許せない・・・」
服部「人間であるかどうかが、そこまで重要かな。」
翼「・・・先を急ぎますので・・・これにてご免。」
刀を取り出す服部「地獄に行くのはまだ早い・・・」
身構える翼「!」
刀を渡す服部「君の御父上の形見だ。持っていきなさい。」
受け取る翼「・・・?」
服部「姫鶴一文字・・・これでないと鬼は殺せない・・・」



地面の底で気絶しているカイト。
しばらくして意識が戻る。
カイト「・・・ここは・・・」
起き上がると、暗闇の中に青白い光が見える。
光の方へ近づくカイト。
発光しているものの正体に気づき絶句するカイト。
カイト「・・・え?」

『風と翼:REVELATION』脚本⑤

奥の部屋に案内される。
そこには、国内のAIの動向を監視したサーバーがずらりと並んでいる。
サラ「この雰囲気懐かしいでしょう?」
秀頼「こう見えてコンピュータの心得はあってね・・・国内のAIが反乱を起こさないか、監視をしているのだ。」
モニターを指さすカイト「この数字は?」
秀頼「AIが法に抵触した件数をリアルタイムでカウントしている。
黄色い数字が法に触れる可能性、赤が完全に違法だ。
今日だけで、触法行為が1万件を超えている・・・」

翼「警察は取り締まれないんですか?」
秀頼「そもそも警察が人手不足でAIに依存しているくらいだからね・・・
それにAIを規制する法律がない以上、グレーゾーンのものも多い。」
サラ「怖いのはそこなの。AIそのものを罰する法律がないから、犯罪者の違法行為の抜け道にもなっているのよ。ペットが通行人を嚙んだら、飼い主の責任になるけど、AIにはそれが適用されない。」
翼「なんでですか?」
サラ「去年、AIによる過失責任はその利用者に及ばないという判決が最高裁で出ちゃったから・・・」
秀頼「鳥居判決だな」
サラ「なのでAIを悪用した人間が、その責任をAIに押し付けちゃえば、違法行為は消えてしまうという魔法のような状況・・・」
翼「そんなむちゃくちゃな・・・」

秀頼「実際にある女性がAIに“韓国アイドルのイ・ウォンイクに会えたら死んでもいい”とぼやいたら、ユーザーの気持ちをAIが勝手に忖度して、そのアイドルを自宅までさらってきてしまったことがある・・・このユーザーは罪を犯したと言えるかね??」
カイト「確かに、この前タクシーに乗ったら、知らない人のアパートにつれていかれて超怖かったって言ってたなあ・・・」
翼「じゃあ、AI開発をしている日光テクノロジーは訴えられないんですか?
あまりに凶暴なペットなら、それを売っているペットショップは訴えられるんじゃ・・・」
サラ「翼ちゃんの言うとおりだけど、日光テクノロジーは今や国営企業よ。それに、今さら国民が便利なAI技術を捨てるとは考えにくいしね・・・」
カイト「それで、打つ手がなくなってデモをしてたの・・・?」
サラ「まあね。そしたら警察のやつ、ロボットパトカーを差し向けてきて・・・
こともあろうに武器をちらつかせて威嚇してきたのよ?」
秀頼「それは危険だ・・・考えられないとは思うが、もしそのパトカーが市民に向けて発砲した場合、現状ではそのパトカーも、それを出動させた警察も法的責任が問われない・・・事態は急を要するな。」

翼「・・・家康殿は訴えられない、市民運動もできない・・・一体どうするおつもりですか?」
秀頼「手は一つある・・・
検察が家康を刑事訴追するのではなく、サラ君たち弁護士会が民事で訴える・・・!」
翼「でも、AIを規制する法律がないなら、家康殿の会社を訴えるのは難しいんじゃ・・・」
秀頼「訴えるのは家康の会社ではない・・・日光テクノロジーを特殊法人化した国を訴える・・・!国に営業差し止めを迫るのだ・・・!
サラ「さすが教授・・・!」
翼「勝算はあるのですか・・・?」
秀頼「大阪高裁の大野治長裁判長は、人工知能の規制に前向きな日本の良心ともいえる裁判官だ。日光テクノロジーの違法性さえ立証できれば、勝機はある。」

カイト「・・・お話はだいたいわかりませんでした・・・
・・・で、AIに仕事を奪われたぼくは何をすればいいんですか?」
秀頼「さすが忍び・・・話が早いな。
問題は徳川家康が性急にAI技術を普及させようとする意図だ・・・
かつて、信長や秀吉が日本を支配しようとしたように、家康にも野望があるはずだ・・・」
カイト「何も考えてなさそうだったけど・・・」
秀頼「侮ることなかれ、風間殿。相手はタヌキだ。
家康が政治家に圧力をかけ人工知能に都合のいい法改正がさらに進めば、我々がやろうとしていることは遡及処罰となり、家康の暴挙は永遠に止められなくなる。
我々に残された時間はわずかだ。」

サラ「日光テクノロジーが気になるプロジェクトをしているの・・・
それが首都地下移転計画・・・」
カイト「この人、地下が好きだな・・・」
サラ「AIで失業した人達を雇って、巨大なシェルターを作っているようなのよ・・・」
翼「核戦争にでも備えているんでしょうか・・・?」
カイト「埋蔵金の発掘かも・・・」
サラ「表向きは、首都圏の土地不足を解決するためらしいけど・・・あまりにも不自然だわ・・・」
秀頼「風間殿には、徳川地下帝国の実態と目的を調査してもらいたい・・・
もし、そこで非人道的なことが行われていたら、裁判は必ず勝てる・・・」
翼「カイトさん・・・」
カイト「結局、ぼくにはこの道しかないようだ・・・」
翼「なら、私もともに・・・」
カイト「翼はサラちゃんたちを守ってほしい・・・
地上も何が起こるかわからないから・・・それに、翼には空が似合うよ。」



地下を潜る巨大エレベーター。
職を失って地下落ちした労働者に混ざって風間カイトもいる。
「おいおい、あれプロ野球選手の風間カイトじゃねえか・・・?」
「あんな有名人も地下落ちするのか・・・」
「でもまあ、1年頑張れば、ひと財産築けるしな・・・」
「オホーツクのカニ漁業船団よりはこっちだよな・・・」

黒服「それでは、新入りの労働者諸君はメインエントランスまで行進!
地下首都移転計画のプロジェクトリーダーからご挨拶がある。ありがたく聞くように!」
行進する労働者たち「1,2,1,2,・・・」

テーマパークのようなエントランスに集められる労働者たち。
プロジェクトマネージャー「歓迎するぞ、名もなき肉体労働者たちよ・・・
我が主君徳川家康公の私設テーマパーク“大江戸セクハラパラダイス”の完成は諸君たちにかかっている・・・せいぜい励むように・・・」
労働者「え?首都移転計画じゃなかったのか!?」
PM「首都も移転する・・・ついでに。
だが、まずはこの地下に殿の殿による殿のための楽園を作るのだ・・・!」
パーク案内図を配る黒服。
黒服「A班はシンデレラ江戸城、B班はビッグ鷹狩りマウンテン、C班はハイパーピンサロ大奥、D班はスマッシュスタジアム球場の建設だ!各々自分の担当を確認せよ!」
カイト「野望が本当にしょうもない・・・」
労働者「ま、まあ金がもらえるなら何でもいいか・・・」
元国会議員の労働者「いや、この工事の発注元の日光テクノロジーは国営企業だ!つまり建設費用は国の税金だ!国の税金を使って、個人的な娯楽施設を作るとは何事か!」
労働者「そうだ、そうだ!それに、ここで稼いでも結局税で持ってかれるなら、楽しいのはお前らだけじゃねーか!」
ブーイングが起こる。
PM「・・・なら帰るがいい。この仕事がやりたい人間は他にもたくさんいるんだ。
この国のどこに、ただの人間が1年で1000万円を稼げる職場がある・・・?」
労働者「くっ・・・」
PM「そして、そこのお前。
総理大臣時代にさんざん殿の店で遊んでおきながら、殿を批判するとはよい度胸だ。石田治部、お前には見せしめとしてマグマだまり冷却工事を命じる。」
タヌキのマスコットキャラが2匹現れ石田の身柄を取り押さえる。
石田三成「し・・・死んじゃうだろ!」
PM「安全第一で行うことだ。」
逃げ出す石田「おのれ・・・!この実態を国会に報告してやる・・・!」
PM「連れていけ・・・!」
ざわつく労働者たち。
PM「わかったか?この地下で反逆は許されない。提示した年俸や福利厚生は約束するが、日本は地震大国が故、労働災害も多い。せいぜい気をつけることだ・・・」
カイト「大将・・・あんたの名前は?」
黒服「無礼であるぞ!」
PM「よいよい・・・挨拶が遅れたな・・・私は本多平八郎忠勝・・・
ここでは“スラッグ獄長”と呼ばれている・・・」

『風と翼:REVELATION』脚本④

ニュース映像
キャスター「子どものなりたい職業第3位は公務員、第2位はサラリーマン、そして栄えある1位は・・・ロボット開発者です!」
街のこどもにマイクを向けるリポーター「去年まではプロ野球選手になりたい子が多かったんだけど・・・」
ちびっこ「野球選手?別になりたくないよ。ロボット同士の試合見ているだけで楽しいもん。」
リポーター「ユーチューバーは?」
ちびっこ「あれもAIが作った動画で十分面白いし」
リポーター「漫画家は?」
ちびっこ「AI絵師でいいじゃん」



リモコンでテレビのニュースを消す病室のカイト。
「時代は変わったな・・・」
花束を置く翼「怪我の具合はどうですか・・・?」
カイト「レッズのチャップマンの真似なんかするんじゃなかった・・・」
翼「カイトさん・・・」
カイト「人間の野球選手が稼げるうちにメジャーに行っておけば、翼にこんな苦労をかけることは・・・」
翼「カイトさんはかっこよかったですよ。
私、幸せです。野球選手のカイトさんが見れて。」
カイト「翼は天使のように優しいなあ・・・」
病室に白い小型冷蔵庫のようなロボットが入ってくる。
看護ロボット「検診で~す。」
体を起こそうとするカイト「あ、すいません・・・」
ロボット「あ、そのままで結構です。」
赤外線を飛ばす。
ロボット「体温、血圧、心拍数正常・・・これでもう退院できますね。」
カイト「ありがとうございます・・・」
病室から出ていこうとするロボット。
しかしぴたりと動きを止める。
ロボット「もしかして・・・プロ野球選手の風間カイトさんですよね?
あんなロボットに一度負けたからって落ち込まないでください。
きっとまた活躍できますよ!また逢いましょう、いや、また逢っちゃダメか、あはは」
病室から立ち去るロボット。
力なく笑うカイト「ロボットに励まされちゃったよ・・・」
翼「どんどん巷のロボットが気を使えるようになってきて不気味です・・・」
カイト「でもあのロボットには本当に入院中は世話になった・・・ありがたいよ・・・」

病院の外から声が聞こえる。
デモ隊「病院のロボット導入反対~!!人間の生死を機械に託すのか~~!」
カイト「なんだろう・・・??」
翼「デモみたいですね・・・」
デモ隊「日本の医師は診察も治療も手術もせずに患者から報酬を得るのか~!!
これは政府と医師会が結託した陰謀だ~!」
カイト「なんか聞き覚えのあるような声・・・」
窓の外を覗く翼「あれ・・・天井さんですよ・・・!!」
カイト「え??人権派弁護士になったんじゃ・・・」
天井サラはスーツをまとい、髪はロングになっている。
「日光テクノロジーの横暴を許すな~!ロボット技術を法的に規制しなければ人間はすべての仕事を奪われるぞ~!」
カイト「相変わらず、反政府的な運動が好きだなあ・・・荷物とってくれる?」
翼「どうぞ」
上着を着るカイト「警察が来ちゃう前に解散させよう・・・」
サイレンが鳴る。
カイト「遅かったか・・・」



自動運転の無人パトカーが来る。
パトカー「病院側から通報がありました。ここでの集会は直ちに解散してください。
威力業務妨害にあたります。」
サラ「来たわよ!みんな顔を隠して・・・!勝手に録画されるから!
そうなったらマイナンバーの照会で一発懲役よ!」
ラジエータの真ん中についている旭日章のカメラのレンズの上に盗撮禁止のシールを貼ってしまうサラ。
パトカー「公務執行妨害です!はずしなさい!」
サラ「だいたいあんたこそ機械のくせに何の権限があってパトロールしてんのよ」
デモ隊「そーだそーだ!!」
サラ「みんな、コイツのすべてのタイヤをパンクさせちゃいましょう!」
デモ隊「イエス、ビッグモーター!」
後部ドアが開いて自動小銃が出てくる。
パトカー「それ以上近づくと発砲します!」
サラ「ロボットの管理社会もここまで来たわね・・・!みんな、こんなのは脅しよ!」
デモ隊「しかしリーダー・・・!」
サラ「警察法第67条の警官の小型武器の所持にロボットは適用されないわ!」
デモ隊「パンクさせろ!」
パトカー「やめなさい~!器物損壊で3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料・・・」
パトカーのフロントガラスにスプレーで「市民は公僕に屈しない」と落書きをするサラ
「黙れナイトライダー!!無法には無法よ!!だいたい何がAIよ!あんたの恋愛予測アプリのせいで私はカイト君への告白を諦め・・・」
パトカーを破壊する幼馴染にドン引きのカイト「サラちゃん・・・」
サラ「きゃああああああああ!!」



新宿のロフトプラスワン
AIに反対する市民団体や弁護士などが当局の目を恐れて学習会を開いている。
全身黒づくめの細身のイケメン検察官がプレゼンテーションをしている。
豊臣秀頼「人類はもう引き返せないところまで来ている・・・
売国企業の日光テクノロジーが産業界に進出してから早2年・・・この短い間にも数えきれない職業が機械に取って代わられた・・・」

サラにつれられて会場の後ろの席に座るカイトと翼。

秀頼「役所や銀行など窓口業務を皮切りに、大企業の事務職は軒並みリストラ、小売店のレジやレストランの調理師、芸能界にクリエイター、挙句の果てには医師や学者などの専門職まで・・・そして今月そこにプロスポーツ選手が加わった・・・」

会場をゆっくりと歩き一息ついてから演説を続ける秀頼。

「今、我々人間に残っている仕事は何だ?
土木・建設作業員、工場労働者、ごみ収集、介護士、軍隊、荒れた学校の教員・・・どれもAIがやりたがらない肉体労働だけではないか。」
カイト「・・・。」
秀頼「私は労働のAI化は、独占禁止法に違反すると、何度も徳川家康を起訴しようとしたが、愚かな国家はあのタヌキを不起訴処分とし、やつは無責任にもAIロボットの投げ売りを続けた・・・
家康はこう言う。“買った方が悪い”と。
しかし、その言い分はドラッグのバイヤーにも通るだろうか?
人工知能はある種、アヘンよりも恐ろしい依存性を持つ。
そして、人類を人類たらしめる思考と想像力を人類から奪っていく・・・」
うんうんと頷く来場者たち。
「家康は、AIが人類の代わりに思考をすれば問題ないとうそぶくが、大間違いだ・・・
AIにそんな力はない・・・
また、批判を覚悟した上であえて言おう。
そもそも大多数の人間にそこまで大層な思考力などないのだ・・・
AIは、そんな無知蒙昧な大衆を御し易くする・・・
家康のような狡猾な統治者のメリットは、まさにそこなのだ。
思考力がある人間は得てして数が少ない。
民主主義では多数派が正義。必ず大衆を味方につけたものが勝つ。
たった数万円の便利さと引き換えに、日本国民は多くのものを失うだろう・・・
引き返すなら今だ。」
まばらな拍手が起きる。
司会「元東京地検特捜部の豊臣秀頼さんでした。」

ニコニコしながらカイトと翼を見るサラ「どうだった?すばらしいでしょう?」
カイト「う・・・うん・・・」
翼「陰鬱な気持ちになりました・・・」
サラ「司法修習時代の私の指導教官なんだ。二人にも紹介してあげるね!」
秀頼に元気よく手を振るサラ「教授~!」
微笑む秀頼「サラくんか・・・私はもう君のプロフェッサーではないぞ。
おや、お友達かな?」
サラ「高校時代の悪友です。」
秀頼「ということは・・・君こそが我が宿敵家康の風俗店を焼き討ちした勇者、風間カイト殿か・・・!」
カイト「えっ、ちが・・・はい・・・」
秀頼「貴殿の武功はかねがね・・・奥で話そう。」

『風と翼:REVELATION』脚本③

数ヵ月後・・・
浜松スタジアム
大道寺「あのオヤジ、性懲りもなくまた挑戦してきやがって・・・」
カイト「まあ、シーズンオフだし付き合ってやろうよ・・・」
球場に入ると、駿府レプリカンツのロボット選手はすべてスーパーロボットアニメのようなスタイリッシュなデザインに一新されていた。
立ち並ぶロボット選手を見てざわめく観客
「なんだあれ!?ちょっとかっこいいぞ!!」
「ママ!あのロボット欲しい!」

不安な顔になるカイト「おかしい・・・あんなかっこよさ重視のデザインじゃ無駄が多いし、前の合理的なデザインの方が絶対に野球はうまいはずだ・・・それとも、なにか罠があるのかな・・・」
キーボードを叩く安藤「確かに先輩の言うとおりです。走力、肩力、守備力、捕球・・・すべてのステータスが下がっている・・・」
バットを握る大道寺「なあに、ビビることはねえ。見てろ、カイト。
このオレの一振で、またぶっ壊してやる。
今度は床に落ちたガンプラのごとく木っ端微塵だ。」

マウンドに出て、監督の家康を指差す大道寺「オイ鉄くず屋!見た目を変えようが結果は変わらねえ!どんな剛速球も、このホームランランチャーの大道寺ヨシヲ様が打ち返してやる!」
ピッチャーロボ「ようしかかって来い・・・!」
大道寺「お・・・お前しゃべれるようになったんだな・・・余計な機能だがな。」
ストレートを投げるピッチャーロボ。
球速は150km
大道寺「甘い!!」
難なく打ち返す大道寺。打球は再びピッチャーライナー。

「危ない!」
ファーストロボが飛び出し、ピッチャーロボをかばってボールを受ける。
ボールが直撃し首が吹っ飛ぶファーストロボット。
ピッチャーロボ「ファーストロボ!なぜこんな馬鹿なことを・・・!」
ファーストロボ「ピッチャーロボ・・・オレはもうだめだ・・・しかし、必ず相模ブリーズに勝ってくれ・・・」
ピッチャーロボ「ファースト・・・!!オレのために・・・!」
観客「ひ・・・ひどい・・・」
子どもの泣き声が上がる。
大道寺「おい、この前と同じことをやったのに随分リアクションが違うぞ・・・」
安藤「さすがにひどいですよ大道寺さん・・・」
大道寺「お前まで・・・!」
ピッチャーロボ「機械には血も涙もないというが・・・本当に血も涙もないのは・・・どっちかな!!」
観客から歓声が上がる「いいぞレプリカンツ~!!」
「人間に勝って新しい時代を作ってくれ~!」
カイト「見た目が変わるだけでこんなに・・・これじゃあ今度はこっちが悪役だ。」
家康「観客の心がこっちに向いたのはいいが・・・ロボットのやり取りが妙に芝居ががってねえか・・・?」
本多「ガンダゲリギアス第35話『デトロイトは燃えているか』の名シーンを丸パクリしました・・・いや~いつ見ても泣けるわ」
徳川「まあいい・・・攻撃の要の大道寺はこれで封じた・・・!あとは敵ではないわ」
審判「ストライクバッターアウト!チェンジ!!」

マウンドに上がるカイト
翼「がんばってカイトさ~ん!」
大道寺「すまねえカイト!敵の攻撃を抑えてくれ・・・!」
カイト「この前はほとんどバットを振ってこなかったけど・・・」
打席に入るバッターロボット「世界最高の投手の方に投げていただいて光栄です。」
カイト「ど、どうも・・・」
バッターロボット「人間とロボットの違いはあれど、フェアプレーでいきましょう。」
カイト「では、お互い全力で。」
渾身の変化球を投げる。
ロボットはバットを降るが空振る。
審判「ストライク!」
バッターロボット「ふむふむ・・・さすがだ・・・」

2球目。
バッターロボットがタイミングを取り、カイトの変化球にバットを当てる。
審判「ファール!」

3球目。
強力な変化を付けるカイト。
ロボットは冷静に見極めバットを振らない。
審判「ボール!」

大道寺「なんか前と違うな。」
安藤「学習してるんです・・・」

4球目
バッターロボット「さすが、球種大図鑑と言われたことだけあります・・・しかし、次はヒットを打ちます」
カイト「言ってくれるな・・・!」
最も得意なナックルを投げるカイト。
バッターロボがジャストタイミングで打ち返す。
カイト「打たれた!!」
大道寺「早く返球しろ!」
守備が慌てて大道寺に返球するが、ランナーがやすやす追いついてしまう。
ついに一塁に走者を出すロボットチーム。
審判「セーフ!」
観客「すごい!風間の球を打ち返したぞ!!」

カイト「すまない。」
大道寺「お前は今まで打ち返されたことがなかったのか?気にすんな」

次の打者も1球め、2球めは見送るが、3球めで綺麗に打ち返す。
ロボットは走力が人間離れしており、必ず出塁してしまう。
気づくと、満塁になっている。
安藤(まずいな・・・先輩のピッチングフォームが読まれている・・・)
サインを送る安藤。
首を振るカイト。
あえてフォームを変えて縦スライダーを投げるカイト。
バッターロボを三振に打ち取る。
徳川「何だ!?ボールが消えたぞ!」
感動する本多「消える魔球だ!あんなのも投げられるんすね!!すげーな!」
服部「でも、これであの魔球も覚えた。」
本多「え?」
服部「打者たちは無線でデータを共有している。次の打者はきっと打ち返す。
社長。」
徳川「・・・」
服部「これで人間が野球をする時代は終わった。」

カキーンという大きな打撃音が聞こえる。
実況「なんと消える魔球をロボットが打ち返しました!これは大きいぞ!満塁ホームラン!!」
ショックでボンボンを落とす翼。
自分に言い聞かせるようにカイト「ま・・・まだ勝負は終わっていない・・・」

しかし、何度投げても3球目には必ず打ち返されて出塁されてしまう。
フォーク、シンカー、シュート、チェンジアップ・・・球種大図鑑の全てを繰り出しても・・・
球数が90を超え、疲れが見え始めるカイト。
点数は0点対32点
コールド負けになってしまう、えげつない点差がつく。
観客もカイトたちに憐れみの目を向け出す。
カイト「自分の野球人生でここまでの惨敗は初めてだ・・・」
安藤「先輩!もう降参しましょう・・・!」
大道寺「なんだと、てめえ、あんな機械に負けを認めろっていうのか!?」
安藤「もうぼくらの野球は完全に学習されました!絶対勝てない!」
大道寺「諦めたらそこで試合終了だってカーネルサンダースも言ってただろ!」
安藤「そんな根性論でどうにかなる話じゃないんだ・・・!
そもそもぼくはプロ野球の道にはいきたくなかったんだ・・・京都大学の理学部が受かっていたのに・・・!」
大道寺「なんだとお?」
安藤「僕にはわかっていた・・・遅かれ早かれ、プロスポーツは機械に取って代わられると・・・先輩は人間代表として頑張りました!もう諦めましょう・・・」
カイト「いや・・・ファンの声援がある限りぼくは投げ続ける・・・!」
大道寺「よく言ったカイト!心の友よ!」
安藤「ファンってどこに・・・」
翼の方に目をやり微笑むカイト。
カイト「もう変化球を捨てる・・・!渾身のストレートをお見舞いしてやる・・・!」
安藤「ストレートなんて久しく投げてないじゃないですか!」
カイト「腕に負担がかかるから封印してたんだけど・・・実は170kmは出せるんだ・・・」
大道寺「ザ・ミサイルのチャップマンを超えるじゃねえか!」
安藤「やめてください・・・先輩は大阪城の攻略で右肘を怪我してます・・・故障でもしたら選手生命が・・・!」
カイト「そんなわかりやすいフラグはこの漫画にはない・・・!機械に人間の意地を見せるんだ!!」
超速ストレートを投げるカイト「これでもくらええええええええ!!!!!!」



翌日のスポーツ新聞
「風間カイト右腕粉砕骨折。選手生命絶望、今季引退か?」
日光テクノロジーの社長室。
新聞を折りたたむ徳川「ついにプロスポーツもAIロボットに陥落か・・・」
服部「おめでとうございます社長。」
本多「プロスポーツが全部ロボコンみたくなっちゃうのも、な~んかつまんね~な」
テレビをつける服部「それはそれで面白いみたいよ。」
ロボット選手「出たなブラックアンドロイズ!今日こそお前を超える・・・!」
ロボット選手「ふははは、レッドレンジャーズ!相手に不足はないわ!かかってこい!」
すぐに順応する本多「確かに、日曜日の朝っぽくて面白いっすね」
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