『ラストパーティ』脚本㉝

クレイモアー機内。
シートでは戦士がしばしの休息をとって眠っている。
ヴィンツァー「ヨシヒコさんの奥方様はどんな女性なんですか?」
ヨシヒコ「明るくて天真爛漫・・・ロマンチストでもあったな・・・僕にはないものを持っていた・・・」
ヴィンツァー卿は、結婚を考えたことは・・・?」
ヴィンツァー「・・・いえ・・・いろいろタイミングが合わなくて・・・
やっぱり、結婚っていいものですか?幸せで平穏な生活が待ってるんだろうなあ・・・」
ヨシヒコ「ははは・・・結婚してハッピーエンドだと?」
ヴィンツァー「そうじゃないんですか?」
ヨシヒコ「とんでもない。息つく間のない冒険の始まりですよ。
実は・・・僕ら夫婦は恋愛結婚でして・・・高校時代に妻の方から告白をされましてね・・・
僕みたいなつまらない人間のどこを気に入ったんだか・・・
なんにせよ、お付き合いを始めたら、実家に毎晩脅迫電話がかかってくるようになりました。
妻の父親がどこぞの魔王よりも恐ろしい独裁者でね・・・
お前がうちの桃乃と手を握ったら5指を切断するし、キスをしたら舌を抜く、一夜を共にしたとでも言ったら・・・この世の地獄を見せてやると脅されてね・・・」
ヴィンツァー「・・・で、その魔王は討伐したんですか?」
ヨシヒコ「僕の世界では、そんな簡単に人を殺しちゃダメなんですよ。」
ヴィンツァー「そんな恐ろしい魔王でも殺さないんですか?なんて平和な世界なんだ・・・」
ヨシヒコ「とんでもない。
魔王は、討伐するよりも和解するほうがずっと難しい・・・」
ヴィンツァー「確かに・・・で、魔王とは和解は出来たんですか?」
ヨシヒコ「いや・・・父親にうんざりした妻が駆け落ちしようと言い出しましてね・・・
勝手に籍を入れてしまったんです・・・
でもすぐに捕まり、大学卒業後は義理の父が経営する会社に強制的に就職させられました・・・
僕はもともと東大の大学院で理論物理をやりたかったんですけどね・・・」
ヴィンツァー「なんと・・・でも、愛する奥様といっしょなら乗り越えられるか・・・」
ヨシヒコ「愛する妻ともたくさん戦いましたよ・・・」
ヴィンツァー「・・・え?」
ヨシヒコ「僕らに子どもができると、妻は女から母になって・・・
育児方針の違いで何度もぶつかった・・・
ぼくは妻の自由奔放な子育ては無責任だと思ったし、妻はぼくの厳しいしつけは子どもを苦しめてしまうと考えた・・・」
ヴィンツァー「・・・どちらもお子さんを愛しているがゆえの、そんな悲しい戦いがあるなんて・・・」
ヨシヒコ「第3ラウンドは、子どもたちとの戦いです。長女のイチカはませていて・・・
父親である私を退屈な男だと度々なじってくるし・・・次女フタバは明るく優しいけれどトラブルメーカー・・・長男ミナギはまだハイハイもおぼつかない・・・」
ヴィンツァー「て・・・敵ばかりじゃないですか・・・」
ヨシヒコ「でもね・・・それが家族という名のパーティなんですよ・・・
あなたがたくさんの冒険で多くの経験値を積んだように・・・
ぼくも父や妻、子どもたちから多くのことを学んだ・・・きっとこれからも私はレベルアップする・・・
平穏な道ではなかったけど・・・僕は幸せなんです。」
ヴィンツァー「・・・家族か・・・」

分厚い雲の中を飛ぶクレイモアー。
ルナ「機内放送です。皆さん前方をご覧下さい。
地獄の裂け目にそびえ立つ・・・あの尖塔こそが・・・魔王の居城・・・ハデス城です・・・」
大地溝帯はマグマが吹き出しており、闇夜をほんのり赤く照らしている。
溶岩でできたハデス城は、そのマグマを突き破るようにそびえ立っている。
ヴィンツァー「昔のままだ・・・夏は暑いだろうに・・・」



ハデス城内
兵士「魔王様!領内上空に突如巨大な鉄のドラゴンが現れました!!」
ハデス「なんだと!?もう攻めてきたのか!
というか、空から来たのか・・・!
海岸線にズラリと並べたサイコゴーレムDXの意味よ・・・!」
イヤハート「鉄のドラゴンですって・・・!?」
そう言うと、窓を開けてバルコニーへ行くイヤハート。
兵士「レディ、危険です・・・!!」
望遠鏡を手に取り、上空の飛行物体を見つめるイヤハート。
「・・・!あれはメガサターンの宇宙船・・・!?」
大神官「ご安心ください魔王様。まずはお手並み拝見と行きましょう・・・」



ハデス領パーガトリーの領空
旋回するクレイモア―
ルナ「参ったな・・・溶岩だらけで着陸場所が見つからない・・・」
窓の外を指さすシルビア「なんか飛んでくるわ・・・!」
すると、ハデス城から数えきれない数の翼を生やしたガーゴイル兵が、こちらに向かってくる。



バルコニー
ヘルメットをかぶり、仲間から機関銃を受け取り、次々に飛びたっていくガーゴイルたち。
大神官「レッドアリ―マー空挺部隊出撃!!」



クレイモア―に機関銃を撃ってくるガーゴイル。
コックピットにアラート音が響く。
ルナ「いけない!ちょっと傾きますよ!!」
その銃弾を旋回してかわすルナ。
シルビア「なんでモンスターがあんな近代銃器を持ってんのよ・・・!」
ゼリーマン「・・・モンスターがコマキと戦った際に連中の武器をくすねて、自分たちでも作れるようにしたんだ。」
シルビア「なんでそんなこと知ってるのよ。」
ゼリーマン「オレが横流ししていたからだ。」
ゼリーマンの首をしめるシルビア。
ルナ「泉さん、どうしますか!?戦うか、撤退か、ご判断を!」
ゼリーマン「ガーゴイルのやつらは幼稚園が一緒だった・・・このオレが説き伏せてやろう・・・」

クレイモア―のカーゴハッチが開く。
数千もの銃口がゼリーマンを向く。
ゼリーマン「この街も変わっちゃいねえな・・・オレだよ、オレ・・・ゼリーマンだよ!」
ガーゴイル「撃ち方やめ!あ、本当だ!ゼリーマンだ!
お前、伝説のドラゴンライダーになったのか?」
ゼリーマン「まあな。ちょっくらお前んとこのハデスに会いたくてよ・・・通してくれよ。」
ガーゴイル「いや、今はダメだ。城内が取り込んでてな。戦争が終わったらまた来てくれ。」
白旗を振るヴィンツァー
「その戦争を終わらせにスナイデル・ヴィンツァーが来たと伝えてくれ・・・!」
ガーゴイル「うわ、すげえ!お前、伝説の勇者と本当にマブダチだったのかよ!
てっきりいつもの大ぼら吹きかと・・・」
ヴィンツァーと肩を組むゼリーマン「これでどうだ?」
無理やり笑顔になるヴィンツァー。
ガーゴイル「・・・わかった!魔王様につないでみる・・・そこで待機していてくれ・・・!」
引き返す、知り合いのガーゴイル。
ヴィンツァー「・・・きみの度胸には参るよ・・・」



バルコニーに降りてくるガーゴイル。
ガーゴイル「大神官様、鉄のドラゴンは敵襲ではありませんでした・・・!
魔王様の旧友、勇者ヴィンツァー殿が謁見を所望しております・・・!」
大神官「用件は?」
ガーゴイル「この戦争を終わらせる策があるとのこと・・・!魔王様につなぎます・・・」
その瞬間、巨大な鳥の脚がガーゴイルを踏み潰す。
大神官「・・・終わらせてどうする・・・
伝説の勇者か・・・お前の最初のエサにはちょうどいいだろう?行け。皆殺しだ。」
バルコニーを飛び立つ究極キマイラ。



上空を待機するクレイモア―。
周囲はガーゴイルたちが機関銃を構えて羽ばたいている。

コックピット
草薙「・・・ずいぶん遅くないか?」
ローランド「もしかして、かつがれたか。」
シルビア「あのゼリー・・・」
ヨシヒコ「いや、ここにきて寝返らないだろ・・・」
ルナ「・・・・・・。」

その時、レーザー状の放射熱線がクレイモア―の方へ飛んでくる。
ルナ「しまった!!」
コックピットのアラートが鳴ると同時に操縦桿をつかみ回避行動をとるが、ギリギリかわし切れず、ジェットエンジンが一基破壊される。
警報が鳴り、真っ赤に染まるコックピット。
すかさず、巨大な飛行生物が戦闘機のような速度で接近してくる。
ルナ「敵機です!つかまって!!」

究極キマイラは翼を折りたたみ、一気に飛行速度を上げて音速の壁を突き破り、その衝撃波でガーゴイルたちを一瞬で殺してしまう。
そのままクレイモア―に襲い掛かる究極キマイラ。

ルナ「うそでしょ!ステルス戦闘機じゃない!!??動物だなんて・・・!!」
コックピットに駆けてくるゼリーマン「おい!いったい何が起きた!??」
シルビア「このバカ!まんまと一杯食わされているじゃない!」
ゼリーマン「こっちだって幼稚園のお友だち根こそぎ殺されてんだ!!」
ヴィンツァー「あんなモンスターは見たことがない!ヨシヒコさん・・・!」
ヨシヒコ「あいつとドッグファイトはできるか?」
ルナ「任せといて。
ただし、みなさんの体はGに耐えられない・・・ここで投下します。」
一同「・・・え?」

『ラストパーティ』脚本㉜

ハデス城
来賓用ペントハウス
テーブルには超豪華なケータリング料理が並べられている。
捕虜のブリジッド国王ライオンハーテドが神官の女性たちをはべらせている。
ライオンハーテド「がっはっは!ここはわしの城よりも楽しいぞ!
ずっとここにいたいくらいだぜ!!」
女神官のお尻を触るライオンハーテド「もみもみ」
女神官「おやめください・・・!」
ライオンハーテド「飯もうまいぞ。どうだい兄弟、お前も食え。」
ハデス「ちょっと食欲が・・・」
ライオンハーテド「なんだよ、相変わらず辛気臭いやつだ。」
ライオンハーテドに酒をそそぐ大神官「ささ・・・国王様ぐいっと・・・」
ライオンハーテド「おいおい、天下の大神官様にお酌されちゃったよ・・・!」
大神官「ブリジッド島ではまず飲めないブルゴーニュワインですよ。」
ライオンハーテド「じゃあ、わしも大神官につごう・・・」
大神官「いえいえ・・・わたしは職務中ですので。」
ライオンハーテド「国王の接待も仕事みたいなもんでしょう、どうぞ。」
大神官「ははは・・・」
ライオンハーテド「それとも、このワインをわしだけに飲ませたい事情があるのか?」
ハデス「大神官様、飲んだほうが・・・」
大神官「では、せっかくですので・・・」
ワインを口にする大神官を、じ~っと見るライオンハーテド。
ライオンハーテド「俺が好きで戦争を起こしていると思うなハデス。
俺もお前も、多くの軍隊を抱えている・・・暴力が好きなあいつらの鬱憤を解消するためには、適度に戦わせてやったほうがいいんだ・・・」
ハデス「そんな・・・夏祭りじゃないんだから・・・」
ライオンハーテド「ん?どこへ行くんだ大神官。」
大神官「ちょっと・・・トイレに・・・」
ライオンハーテド「修道院と言ったらワインセラーはつきものだろ。酒に弱い聖職者がいるかい?」
ハデス「珍しいよね・・・」
ライオンハーテド「兄弟、わしは確かに戦は下手だよ。
しかし戦を経験した回数は誰にも負けん。そしてその度に生き残ってきた・・・それが意味することがわかるか?」
すると、ダガーを取り出すライオンハーテド
「あまり俺を舐めるんじゃねえ・・・」
ぎょっとして自分の尻をさする女神官「!」
彼女から奪ったダガーで、はべらせていた女神官たちを一瞬のうちに刺し殺してしまう。
ダガーについた血を神官のローブで拭くライオンハーテド
「こんなエロい神官がいるか。」
大神官「ははは・・・」
ライオンハーテド「伊賀忍者みてえな真似しやがって・・・誰の考えだ。」
ハデス「いやそれは・・・」
大神官「魔王様です。」
ハデス「ちょっと~!!」
ライオンハーテド「俺を殺したいならそうしろ。だが、それで何が変わる?
戦は終わるどころか、ますます激しさを増すぞ。
わしの役目はこの戦争を始めることにあった・・・
一度始まってしまえば戦争はもう止められない・・・永久機関だ。」



城の通路を歩いていくハデス。
その後ろにつくイヤハート。
イヤハート「大神官様はライオンハーテド王を暗殺したのですか?」
首を振るハデス「しくじった・・・しくじったし、その罪をこの私に擦り付けやがった・・・」
イヤハート「なんてことを・・・」
ハデス「これでもう、両国との信頼関係はなくなった。和平交渉は不可能だ・・・
大神官が言うように徹底抗戦の準備だ・・・
ラボで開発した魔物の配置を急がせよ・・・」
イヤハート「しかし・・・!」
ハデス「私には自国の民を守る責務があるんだ・・・!」
イヤハートを置いて、自身の住む塔へ入ってしまうハデス。

イヤハート「・・・全部あなたの計画通りね・・・」
イヤハートの背後に現れる大神官
「私の計画通りにことが進まなかったことはないんですよ・・・」
イヤハート「あなたたちはいったい何がしたいの・・・?」
大神官「それはこちらのセリフですよ・・・
異世界を勝手に蹂躙してテーマパークを建設・・・?
コマキ王は宇宙の神にでもなったおつもりか。」
イヤハート「それは・・・」
大神官「今の我々はまだ非力だ・・・あなたの世界に勝てる力はまだないが・・・
ブリジッドとガリア・・・その両国が競うことで、新たな殺戮兵器開発の原動力となる・・・
今回の戦争は、最初のデモンストレーションだ・・・」
イヤハート「もしかしてあなたの目的は・・・」
大神官「あなたがたが異世界を覗いている時・・・我々もまた、あなたがたの世界を覗いているのですよ・・・」



ハデス城の地下ラボラトリー
高さ20mを超える巨大な鳥かごの中に「パンツァー・ワイバーン」という巨大な翼を持つドラゴンが入れられる。怒り狂い、飛び回るワイバーン。
そのワイバーンを強大な鉤爪で掴んで、引きちぎってしまう新種のキマイラ。
研究員「ワイバーンは6秒しかもちませんでした!
同じく、ファフニールも、イフリートも、ベヒーモスも相手になりません・・・!
これで、ジャバウォッキーも敗れたら・・・」
研究員「こんな化物を野にはなっていいのか・・・生態系が崩壊するぞ・・・」
鳥かごの下には多くのドラゴンの死体が転がっている。
鳥かごには「究極キマイラ」とプレートがついている。



ハデス城の連絡通路で一人立ち尽くすイヤハート
(なんでそんなことに気づかなかったの・・・!
ドリームワールドがオープンしたら、滅ぼされるのはマジックキングダムじゃない・・・!
私たちだ・・・!!)



ドリームワールド
コントロールルーム
湯浅を問い詰める結城
「他社の人間がずいぶん好き勝手やってくれたじゃない・・・」
湯浅「長門くん・・・!」
長門「俺は何も知らん。転送ゲートの接続先がバグっていたから、上司に相談しただけだ。」
湯浅「きみたちは姫川さんをなぜ本気で救おうとしないんだ・・・!
会長の愛娘じゃないのか・・・!」
結城「・・・桃ちゃんは、泉ちゃんが救出に失敗して現地で死んだのよ。そうよね?」
長門「・・・かもしれん。」
湯浅「泉さんにすべての責任を押し付けて殺してしまうのか・・・」
結城「泉ちゃんのことを会長はベリベリ、ディスガスト・・・嫌っていたからね。
これで会長の怒りの矛先はすべて泉ちゃんに向くわ。
いや~いいタイミングで泉ちゃんを呼んでくれたわ。礼を言うわねん。」

デスクの電話が鳴る。
長門「はい・・・
おい、結城、あんたにかわれと。」
結城「誰よ、この隠蔽工作でクソ忙しい時に・・・」
受話器を受け取る結城。
井伊「・・・貴様・・・どうしても東京湾に沈みたいらしいな・・・
もうすぐ、島につくから辞世の句でも考えておけ・・・」
結城「会長・・・!!!視察は来月じゃ・・・」
井伊「貴様はビリオンパラダイスエリアの金の動きに気づいとらんのか?
9000億だぞ・・・!わしの9000億が消えとるじゃないか!!」
結城「・・・え??」
井伊「わしの財団にここまでの損害を出したのは、結城・・・貴様が初めてじゃ。
人間がもっとも苦しむ死に方で殺してやる・・・
それと、うちの桃乃にかわれ。声が聞きたい・・・」
結城「そ・・・それは・・・
お嬢様は今、席を外してて・・・」
井伊「まさか、わしの可愛い桃乃がマジックキングダムエリアに閉じ込められているわけじゃあるまいな?」
結城「!!!」
井伊「安心しろ・・・このドリームワールドは閉鎖せんよ。お前の凌遅刑で許してやる。
GASEの湯浅専務にかわれ・・・」
結城から受話器を奪う湯浅「もしもし・・・」
井伊「専務よ・・・お主はよく頑張った・・・
我が社に巣食う害虫はだいたいわかった・・・礼を言う・・・」
手のひらを返す長門「結城!貴様の底意地悪い目論見もこれまでだ!は~はは!」
湯浅「会長・・・もうひとり東京湾に沈めたほうがいい社員がいますが・・・」
湯浅に全力土下座する長門「このとおりだ!!」



エゼルバルド城
屋上に戦闘宇宙船「クレイモアー」が着陸している。
コックピットでは、ハデス城の位置をルナがナビゲーションシステムに入力する。
ルナ「この距離なら、ハデス城までは1時間もかからないわ。」
シートベルトを閉めるヴィンツァー「なんと・・・勇者の冒険も変わったな・・・」
ヨシヒコ「事件の真相は妻に直接聞くとしよう・・・
ヴィンツァー卿、魔王ハデスとの交渉をお願いします・・・」
ヴィンツァー「ええ・・・私が知るハデス・モルドレッドなら、きっと分かってくれるはずです・・・」
ゼリーマン「あの残虐な将軍がメロメロなんだ。きっといいやつなんだろ。」
草薙「交渉が決裂しそうなら俺に行ってくれ。ノックアウトしてやる。」
シルビア「魔法を使ってきたら、私がなんとかしたげる。」
ライフルを肩に乗せるローランド「相手が武装していたら俺に任せろ。」
ルナ「みなさん暴力はやめましょう・・・」
黒神「ええ・・・紳士的に論破すべきです・・・」
ヴィンツァー(暴力よりも一番精神的に来るやつだ・・・)

ルナ「それでは、ガリア大陸に発進します・・・!短い空の旅をお楽しみください・・・!」
エゼルバルト城を離陸するクレイモアー
シルビア「すごい・・・!一体どういう原理なの!!」
ゼリーマン「お前みたいに風を起こしてるんじゃねえか?」
飛び立つクレイモアー。

クレイモアーを手を振って見送る領民たち。
エゼルバルド城の広場には、この城を救ったモンスターの女王「メド」の石像が立っている。
その石像の肩にハルが止まって鳴き声を上げる。

『ラストパーティ』脚本㉛

牢獄で引き続き取り調べを続ける黒神。
黒神「では・・・神官たちがコマキ社の令嬢をさらう目的は・・・?」
ジルドレイ「知るか、んなこと・・・」
ニコリと笑う黒神「ん~ふっふ・・・
あなたは、とっさに別の容疑者をひねり出したのでは?」
ジルドレイ「なんだと・・・」
黒神「主人のハデスをかばうために・・・」
ジルドレイ「当たり前だろ、主君なんだから・・・」
黒神「いえ・・・愛してらっしゃる。」
ジルドレイ「・・・やめろ。」
黒神「私はね。魔王が今回の事件の首謀者だとは思っておりません・・・
なので、魔王を討伐するのは反対だ。
もし、あなたが協力をしてくれるなら・・・パーティを説得しますが?」
ジルドレイ「汚い男め・・・とっとと私の首を刎ねたらどうだ?
ハデス様はな・・・貴様らが束にかかっても敵わねえ・・・
まとめて殺されるがいいさ・・・」
黒神「我が主は寛大な方でね・・・
奥様さえ奪還できれば、無益な戦いは望んでいないのですよ・・・」
ジルドレイ「そうやって騙し討ちをするんだろう?」
黒神「・・・あなたは哀しい人だ。
殺し、奪うことしか知らない・・・
ジルドレイ「それがこの世の真実だろ・・・」
黒神「私はね、そういう輩(やから)を数え切れないほど逮捕してきたのです。
あなたみたいなタイプは、特に心が読みやすい・・・」
ジルドレイ「なら読んでみろ。」
黒神「あなたはヴィンツァー卿の実力を目の当たりにした・・・
あの恐るべき斬撃が主君に向かないことを祈っている・・・
そういえば・・・悪魔って誰に祈るんです?神??」
ジルドレイ「うるさい・・・」
黒神「しかし、残念だ。
魔王ハデスはあなたを愛し、多くを与えたというのに・・・」
ジルドレイ「・・・それ以上言うな。」
黒神「あなたのつまらぬ意地で、ガリア帝国は滅亡です。
まあ、私にとっては異世界のことなので、どうでもいいですが・・・」

牢に入ってくるヨシヒコ「黒神警部補・・・ちょっと。」
黒神「どうしました?」
ヒソヒソ話す二人。その様子を見つめるジルドレイ。
ジルドレイの方を向き直り黒神
「もう、あなたの協力は必要なくなりました。
ガリア軍の軍曹がすべてを自白したそうです。」
ジルドレイ「なんだと?」
黒神「事の次第はこうです。
強欲かつ卑劣な魔王ハデスは、王位継承権のライバルであるブリジッド国を滅ぼしたかった。
しかし、それには大義名分が必要だった。
ガリア帝国軍の名将「黒羽のレイ」は、大義なき戦争を嫌うからです。
そこで、ハデスは巨竜ジャバウォッキーを召喚して、キャッスルヴァニア地方を奇襲、多くの人々、魔物を殺戮・・・その罪をブリジッド国に擦り付けた。
あなた、魔王にまんまと騙されましたね。
そして先月には、ストレイシープ村で泉さんの奥様を誘拐・・・
泉さんの奥様・・・姫川桃乃嬢は・・・あなたよりもずっと可憐で美しかったそうですから。
色欲にまみれた魔王の心を捉えるには十分すぎるほどにね・・・」
ジルドレイ「うそだ!全部でっち上げだ!!軍曹のやろう、許さねえ!!
ぶっ殺してやる!!!!」
黒神「自分の妻を辱められて黙っている男はいません・・・」
ヨシヒコ「ああ・・・魔王ハデスは私が討伐する。」

ジルドレイ「待て!待ってくれ・・・!
あんたの妻って、レディ・ジャンヌ=イヤハートだろ・・・!?
私はその人を知ってるんだ!」
黒神「無視しましょう。どうせでっち上げですから・・・」
ジルドレイ「絶対そうだ!レディ・イヤハートは先月遠い国からやってきたと言っていた・・・!
信じてくれ、ハデス様は行くあてがない彼女を参謀として受け入れたんだ・・・!」
黒神「神官たちがさらったのでは?」
ジルドレイ「違う・・・レディは・・・自分からハデス城にやってきたんだ・・・!
レディは慈悲深く、俺みたいな悪魔にも優しく接してくれたが・・・神官たちを警戒していた・・・
確かに俺も同感だ、あいつら神の使いは不気味で・・・何かを企んでいるようだった・・・
特に、大神官は恐ろしい魔力を持っている・・・ジャバウォッキーを使役するなどたやすい・・・」
考え込む黒神「・・・泉さん。
確かにストレイシープ村で奥様はその竜に襲われていたんですよね??」
ヨシヒコ「・・・ああ・・・映像が残っていた・・・」
顎に手を当てる黒神「つじつまが合わない・・・」
ジルドレイ「信じてくれ・・・!神に誓うよ・・・!」
黒神「あなたの言葉など信じるわけがないじゃないですか・・・ん~っふっふ・・・」
涙を流すジルドレイ「お願いだ・・・ハデス様を殺さないでくれ・・・
私はどうなってもいい・・・愛してるんだ・・・」

ヨシヒコ「黒神警部補・・・もうそのへんにしてあげてください・・・
この女は確かに極悪人だが・・・それでも気の毒だ・・・」
ジルドレイ「・・・え??」
ニヤリと笑う黒神「引っかかりましたね。
あなたの部下の軍曹が、そんな簡単に主君や上官を裏切ると思っていたのですか?
あなたの最大のミスは他人の心がわからなかったことです・・・」
ジルドレイ「じゃあ・・・」
ヨシヒコ「きみの軍曹は決して口を割らなかったし・・・キャッスルヴァニアで虐殺をしたのはジャバウォッキーじゃない・・・コマキ社だ・・・」
黒神「言ったでしょう?
あなたが殺人のプロであるように・・・私は殺人犯を相手にするプロなんです。」



作戦会議室
ヨシヒコ「いったいどういうことだ?あの竜で妻はさらわれたのではない・・・?」
黒神「少なくとも竜の使役者は、魔王ハデス以外にも大神官がいることがわかりました・・・
この事件・・・少なくとも宗教勢力も関わっていそうだ・・・」
部屋に入ってくるゼリーマン「竜使いならもうひとりいるぜ刑事さん・・・」
黒神「・・・ほう?」
ゼリーマン「あのJKシスターだ。」
ヨシヒコ「シスター・シルビアのことか?」
ゼリーマン「あいつに秘められた莫大な魔力で100万人分の命を救う医薬品が作れるらしい・・・
旦那・・・敵は味方の中にいたのさ・・・」
ヨシヒコ「・・・お前、そのセリフが言いたいだけだろ・・・」
黒神「面白い・・・ゼリーくん、犯行の動機は?」
ゼリーマン「あの女はヴィンツァーがもう一度勇者として活躍する場を望んでいた。
そこで、今回のジャバウォッキー誘拐事件を起こし、協力者のフリをしてその対策パーティに加わりやがったんだ・・・」
腕を組むヨシヒコ「・・・なんかやり口が回りくどくないか・・・?」
黒神「ええ・・・最低の推理です・・・そもそも彼女には犯行当時アリバイがある・・・」
ゼリーマン「・・・え?」
黒神「事件当日は、シスターはまだハルティロードで修行中で外に出れなかったのです・・・」
ゼリーマン「じゃあ、これはどうだ?ハルティロードの神官全員が犯人で・・・」
ヨシヒコ「だから、回りくどくないか?」
黒神「怪しいですね・・・」
ゼリーマン「そうだろ!ジルドレイの証言とも一致するし・・・」
黒神「きみがですよ・・・」
ゼリーマン「へ??」
黒神「きみは魔力は乏しいものの、モンスターの友人が多い・・・
ジャバウォッキーとも知り合いだったのでは?
確か、きみはハルピュイアと組んで戦場の火事場泥棒をしていましたよね?
その戦場をジャバウォッキーにお膳立てしてもらっていたのでは?」
ヨシヒコ「なるほど・・・」
ゼリーマン「か・・・勘弁してくださいよ旦那!!」
黒神「仲間を疑うとこうなるんですよ・・・」
ヨシヒコ「いいお灸を据えてもらったな・・・」
ゼリーマン「・・・さーせんでした・・・」



エゼルバルド城中央広場。
ベンチに隣り合って座るヴィンツァーとシルビア。
シルビア「あたしが風の精シルフのお姫様なんてね・・・」
ヴィンツァー「お姫様だったかは分からないけど・・・」
シルビア「この世に私しか生き残っていないなら、私がお姫様なの。」
ヴィンツァー「ごめん・・・」
シルビア「そのごめんは、どう言う意味?
20年以上もあなたと母さんで隠し事をしていた、ごめん?」
ヴィンツァー「・・・・・・。」
シルビア「あたし・・・ずっと戦争に行って世界を救いたいって言っていたよね・・・
それをいつもふたりは止めてくれて・・・危なっかしい私を守り続けてくれた・・・
シルフだった時の記憶は小さすぎて残ってないけど・・・わたし・・・母さんの娘で幸せだったよ。
だから、いいじゃない。こういうのは結果オーライなの。(微笑む)」
ヴィンツァー「きみは大人だな・・・」
シルビア「シルフ族には怒りや憎しみの感情がないらしいよ。
のんきでお人好しなのよ・・・だから、のこのこ魔力の提供を承諾しちゃったのよ。
絶滅するわけだわ・・・」
ヴィンツァー「まだしてないだろ・・・」
シルビア「あたしなんかをもらってくれる人がいればね。」
ヴィンツァー「・・・スパルタン草薙さんなんかいいんじゃないか・・・?」
ヴィンツァーの横腹を思い切り殴るシルビア。
ヴィンツァー「ぐえええ・・・!!(怒りの感情はないんじゃ・・・)」
建設中のメドの石像を見てシルビア。
「ラミア族の最後の生き残りだった、この人はどういう気持ちだったんだろう・・・」
少し寂しげな表情をするシルビア。

『ラストパーティ』脚本㉚

――半年後(現在)
ガリア大陸
魔王の居城ハデス城
玉座に座るハデス「なに・・・?ジルドレイ将軍が敗れただと・・・?」
兵士「は・・・我が軍は壊滅・・・!死者は多数・・・」
ハデス「あの不敗の猛将が・・・信じられぬ・・・
もうよい・・・下がれ・・・」
王の間から出ていく兵士「は!」

兵士がいなくなったのを確認して、脱力する魔王。
ハデス「・・・は~大惨事だ・・・どうしよう・・・」
女性の参謀「・・・お気を確かに、魔王様・・・」
頭を抱えるハデス「これで主力部隊を失った・・・ブリジッドに滅ぼされるのも時間の問題だ・・・」
参謀「和平交渉をするしかありませんわ・・・
ライオンハーテド王を国に返す代わりにブリジッドと講和条約を結ぶのです・・・」
ハデス「それで丸く収まるかな・・・
ライオンハーテドは、半年前のキャッスルヴァニア進攻をまだ僕らの奇襲攻撃だと思っているし・・・」
参謀「それは、この私がパワーポイントで説明したはず・・・」
ハデス「あいつも内心わかっているのさ・・・ただ、それだと開戦の大義名分が立たないだろ?
あいつは大陸領土をどうしても欲しいんだよ・・・」
マッドサイエンティスト風の老人が口を挟む。
大神官イノストランケヴィア3世その人である。
「ライオンハーテド王を魔王にしてはなりませぬ・・・
あの男が魔の力を手に入れたらそれこそ世界は滅亡です。」
ハデス「戦争が好きだからな~あいつは・・・」
参謀「慈悲深いあなた様が魔王のままでいるためにも、ブリジッド王国との和平の道を模索すべきです。」
大神官「レディ・イヤハート・・・あなたは甘すぎます。
好戦的なライオンハーテドがいる限り、この戦争は終わらない・・・
今はVIP待遇でこの城で接待を受けていますが・・・
晩餐の豚の丸焼きにキニーネ系の猛毒を仕込んで、毒殺してはいかがか・・・?」
ハデス「聖職者が考えることか・・・?」
参謀イヤハート「それはなりません・・・!魔王ハデスが無慈悲にも国王を暗殺したとなれば、ブリジッドの民はガリア帝国を絶対に許しません!
それこそ、どちらかが滅ぶまで戦争は続いてしまう・・・!」
大神官「だから不幸にも食あたりで死んだってことで・・・」
イヤハート「タイミング的に絶対に不自然でしょう・・・!」
頭を抱えるハデス「は~・・・どうすればいいんだ・・・!」
大神官「徹底抗戦です!」
イヤハート「平和的共存です!」
ハデス「ちょっと二人同時に喋らないでくれる・・・?」

イヤハート「徹底抗戦と言いますけれど、我が軍の主力部隊はエゼルバルド城の戦いで壊滅したのですよ?今こそ和平交渉の絶好の機会・・・」
大神官「御心配なく。我がラボラトリーで強大な新種の魔物を開発中です。
もはや戦争で人間を戦わせる必要はないのですよ。」
イヤハート「アルバレイク国は同じように巨大な軍馬を品種改良して、制御できず皆殺しにされましたわ。」
大神官「ブリューナク計画が失敗したのは知能が低い馬を用いたこと・・・
私が開発している魔物の学力は早慶上智レベル・・・なにも問題ありません。」
ハデス「まじか・・・偏差値高いな・・・」
大神官「私はあなたをこの戦争に勝たせるために神都すら移転させてきた・・・お忘れなく。」
王の間から出ていく大神官。

ハデスとイヤハートだけになる。
ハデス「あの人も戦争が好きだよな・・・ライオンハーテドと変わらないよ・・・」
イヤハート「多くの人が傷つけば、民は神に救済を求めるからです。」
ハデス「マッチポンプじゃないか・・・」
イヤハート「そのマッチポンプで多くのものが血を流しています・・・」
ハデス「あなたは逆に平和主義者だな。
この戦争を引き起こした責任を感じているのか?
気にするな。どのみち、この戦争は避けられなかった・・・
キャッスルヴァニアの侵攻がなくとも・・・ライオンハーテドは別の口実を探していたさ・・・
そうだろう?コマキ国のプリンセスよ・・・」
イヤハート「・・・・・・。」



エゼルバルド城の中央広場。
戦死した仲間の墓が立っている。
花を手向けて祈るシルビア。
「テスのバカ・・・葬儀屋が先に死んじゃってどうするのよ・・・」
イエヤスの方を向いてゼリーマン
「この広場にメドの石像でも立ててやってくれねえか・・・
この城を守った女神として讃えてやってほしいんだ・・・」
イエヤス「もちろん。」
ヴィンツァー「ヨシヒコさん。この戦争を終わらせに行きましょう・・・
もう、こんなのごめんだ・・・」
ヨシヒコ「同感です。」
ルナ「クレイモア―の発進準備はできています。いつでもご指示を。」
草薙「泉よ、魔王を倒そうぜ。」
ローランド「そして囚われの奥方を救うのだ。」

黒神「ん~っふっふ・・・しかしこの誘拐事件には不可解な点があります・・・」
シルビア「どういうこと?」
黒神「普通、誘拐事件では犯人側から要求がされるもの・・・
しかし1か月以上たっても、魔王側からコマキ側への要求がない・・・」
ヨシヒコ「確かに・・・結城も湯浅さんも何も知らない様子だったな・・・」
黒神「そもそも、泉さんの奥さんは本当に誘拐されたのでしょうか。」
シルビア「・・・え?」
黒神「その竜によってすでに殺されているのでは?」
ルナ「縁起でもない・・・」
黒神「失礼。推理に夢中になってしまう私の悪い癖です。お気を悪くされました?」
ヨシヒコ「いえ・・・妻が死んでいることはありえません。
リングからの発信電波でバイタルサインがまだ届いています・・・」
黒神「そのリングをつけているのが別の人物だとしたら・・・?」
草薙「この警部補はどうしても殺人事件にしたいらしいな・・・」
シルビア「ね・・・」
黒神「では質問を変えましょう。
その竜を召喚することができるのは、本当に魔王ハデスだけなのですか?」
ヨシヒコ「そこはモンスターに詳しい君が・・・」
ゼリーマン「ああ。ジャバウォッキ―はこの世界で最強の召喚獣だ。
あれを使役できる魔力を持つのは歴代の魔王だけ・・・だからライオンハーテドはその資格が欲しいがために、魔王の王位継承を狙っている。」
ヨシヒコ「アメリカ大統領の核のスイッチみたいなんだな・・・」
黒神「そうですか・・・
しかし、ハデスは強引に女性を誘拐するような魔王ではないと、ご友人のヴィンツァー卿はおっしゃっている・・・これは矛盾ですね・・・」
ヴィンツァー「黒神さんはどう見ているんですか?」
黒神「人間の性格というものは・・・何年経とうが変わらないものなんです。
私はヴィンツァー卿、あなたの証言を信じます。あなたは愚かしいまでに誠実だ。
確かに魔王ハデスは明らかに怪しい。・・・が、明らかに怪しいものがミステリーで犯人であったためしはないんです・・・ん~っふっふ・・・」
ゼリーマン「じゃあ誰が旦那の奥さんをさらった?」
黒神「取り調べをしましょう・・・」



エゼルバルド城牢獄
ジルドレイを取り調べる黒神とシルビア。
縛られているジルドレイ「ハデス様は無実だ。」
黒神「では・・・竜を使ってストレイシープ村を襲撃したのは、あなた方ではないと?」
ジルドレイ「あの村か・・・ああ。俺達じゃない・・・
ハデス様は奇襲など、そんな卑怯なことをするお方じゃないんだ・・・」
黒神「しかし、あの竜はおたくの魔王しか使えませんよね?」
ジルドレイ「・・・誰が言ったんだ、そんなこと。」
黒神「他にも容疑者がいると?」
ジルドレイ「この世界でもっとも魔力が高い人間を忘れちゃいないか・・・?」
シルビア「・・・なんであたしを見るのよ。」
ジルドレイ「・・・莫大な魔力を消費するのは、相手を破壊する黒魔法じゃねえ。
相手を再生する白魔法だ・・・そうだろ、シスター・・・」
シルビア「まさか・・・」
シルビアの方を向く黒神。
黒神「何か思い当たることが・・・?」
シルビア「・・・ありえないわ・・・」



ハデス城の地下研究室。
高圧電流が流れるフェンスの中にヘルゴートが飼育されている。
不安そうに「メエエエ」と鳴くヘルゴート。
すると、地響きを鳴らして巨大な動物がヘルゴートの背後に現れる。
強力な顎でヘルゴートを咥えて持ち上げる怪物。
ボトリとヘルゴートの脚が落っこちてくる。
ヘルゴートを丸のみにすると、怒号をあげてフェンスに突撃する怪物。
しかし、フェンスの電流によって阻まれる。
その様子を見上げる大神官イノストランケヴィア「お行儀の悪い子だ・・・
こんな下品な動物が最大最強の魔物とは・・・
強き存在は・・・もっと上品で、もっと気品がないといけません・・・」
フェンスの看板には「ジャバウォッキ―」と書かれている。

大神官が巨竜のフェンスを離れる。
カメラが引いていく。
すると地下の研究室には、まるで動物園のように野生のモンスターの檻が並んでいることが分かる。檻には「コボルト」「ヒドラ」「ケルベロス」など、ガリア大陸でかつて絶滅したはずのモンスターが飼育されている。
研究員がプールの中のセイレーン(人魚のような魔物)に注射器を突き立てる。
悲鳴を上げるモンスター。
研究員「魔力の抽出完了しました!」
大神官「よろしい・・・
我々聖職者が自身の寿命を縮めてまで弱きものを救う時代は終わった・・・
世界の医療と軍事を支配するのは我々、神の使いです・・・
魔王様にはまだ働いてもらわなければなりません・・・」



エゼルバルド城
シルビア「うそよ・・・!神都ハルティロードが裏でそんなことをしていたなんて・・・!」
ジルドレイ「信じたくなければそれでいい・・・
だが・・・抽出した魔物の魔力を黒死病の治療薬にしたことで、多くの民が救われたのは事実だ・・・そして・・・その研究をしていたのが、大神官と・・・リネット・アシュレイさ・・・」



城の通路
ヴィンツァーとすれ違うシルビア
「・・・あなたは知っていたの?」
ヴィンツァー「ぼくとハデスでリネットの医療基金を立ち上げたことは事実だ・・・
でも・・・魔力の研究をしていることは知らなかった・・・本当だよ・・・」
ゼリーマン「ほんで、俺たちモンスターをすり潰してクスリにしてたってわけか・・・」
ヴィンツァー「リネットだって死にたくなかったんだ・・・」
ゼリーマン「なあ・・・オレたちは仲間だろう?隠し事は無しにしようじゃないか。」
シルビア「ヴィンツァー・・・お願い・・・母さんのことを教えて・・・」
ゼリーマン「お前は隠し事が下手なんだ。諦めろ。」
ヴィンツァー「・・・ことの発端は、ヘルシング博士の論文だ・・・
黒死病の治療にモンスターの体液が有効だという研究結果が出たんだ・・・」
ゼリーマン「それは知っている。セレスと一緒にシドニアあての手紙を勝手に読んだからな。」
ヴィンツァー「しかし、ニャルラト・カーンとの戦いでヘルシング博士は亡くなり・・・研究は頓挫してしまった。それを生き残ったリネットが引き継いだんだ・・・
リネットは、モンスターから魔力を直接抽出する方法を見つけたんだと思う・・・」
ゼリーマン「それで・・・?」
ヴィンツァー「・・・・・・。」
ゼリーマン「怒らないから言ってみろ。」
ヴィンツァー「・・・ガリア大陸の魔物はすでにウィンロードさんたちが滅ぼしてしまったから・・・
リネットたちはブリジッド島の魔物を捕獲し、大規模な研究施設(プラント)で大量に繁殖させようとした。特に魔力が大きかったのが・・・」
ゼリーマン「オディオサウルスか・・・」
ヴィンツァー「違う・・・“シルフ”だ。」
ゼリーマン「シルフ?」
ヴィンツァー「アルバレイクの湖畔地方に住む風の妖精だよ・・・
純粋無垢で・・・美しい妖精だ・・・も・・・もういいだろ・・・」
ゼリーマン「ここまで来たら全部言え。」
涙で目を潤ませるヴィンツァー「ハルティロードの神官たちは、シルフ狩りをした・・・
シルフは強大な魔力を持っていたが・・・その力で人を傷つけるという発想がなかった。
彼らにとって・・・魔法とは、お互いを癒したり、楽しませるものだったから。」
震えるシルビア「なんで泣くの・・・?ヴィンツァー・・・」
ヴィンツァー「・・・ごめん・・・」
シルビア「私は覚悟はできてるの。」
ヴィンツァー「シルフはアルバレイク国では神としてあがめられていたので、ハルティロードの行為はアルバレイクの怒りを買った。
リネットは魔力だけを抽出するのであって、シルフに危害は加えないと、アルバレイク王に約束したが・・・シルフの体のほとんどは魔力でできていて・・・
神官たちはほとんどのシルフを死なせてしまった・・・
こうして再び大きな戦争が始まって・・・きみの母さんリネットは死んだんだ・・・
きみの本当の名は、シルフィア・テンペストという・・・
シルフ族最後の末裔だ。」
首を振るシルビア「そんな名前いらない。
私は聖女リネット・アシュレイの娘、シルビア・アシュレイよ。」

『ラストパーティ』脚本㉙

ヨシヒコの自宅
イチカの寝室で娘に絵本を読み聞かせてやるヨシヒコ。
「こうして、お城の竜を退治した勇者はお姫様と結ばれ幸せになりましたとさ・・・
めでたしめでたし・・・」
長女のイチカ「・・・で?」
ヨシヒコ「・・・で??
・・・で?とは・・・??」
イチカ「結婚後の生活はどうなったの?」
ヨシヒコ「こ・・・子どもでも作ったんじゃないかな・・・」
イチカ「それで、この勇者はその後、どんな仕事に就いてお姫様と子どもを食わせるの?」
ヨシヒコ「奥さんの実家が王族だから・・・不労所得が多いんじゃないか・・・?」
イチカ「じゃあ、仕事も家事も子育てもやらなくていいの?」
ヨシヒコ「おそらく・・・召使いがたくさんいるだろうしね・・・」
イチカ「・・・そんな人生つまらない・・・こんなおはなし何もめでたくないわ・・・」
ヨシヒコ「最近の小学生はすごいな・・・そういう批評は国語の授業で教わるのか?」
仕事から帰ってくる桃乃「ただいま~・・・
(寝室に入ってくる)なに?イチカはまだ起きてるの?」
イチカ「おかえりなさい。ママはパパと結婚して人生どうなの?」
桃乃「・・・は?」
絵本を見せるヨシヒコ「ハッピーエンドのその後が気になるんだって・・・」
桃乃「・・・子どもを3人くらい作って、お城で何不自由なく暮らすんじゃないの?」
ヨシヒコ「同じこと言ってる・・・」
イチカ「それって幸せなの?」
イチカをなでる桃乃「幸せだよ。あんたたちがいると退屈しないもの・・・」
イチカ「本当?あたしが生まれてよかった?」
桃乃「もちろん・・・
それに・・・あんたのパパは誰よりもかっこいいのよ・・・」
イチカ「生真面目でつまらないのに?」
桃乃「不真面目で面白いパパが良かった?」
イチカ「そうだけど・・・」
桃乃「パパはね。イチカたちが知らないところでいつも戦っているの。」
イチカ「本当?」
桃乃「本当よ・・・」
イチカ「パパに聞いてるの。」
桃乃&ヨシヒコ「・・・え・・・」

寝ているイチカに毛布をかけるヨシヒコ。
寝室のドアを閉める。

リビング
冷蔵庫から缶ビールを取る桃乃「・・・次の仕事は見つかった?」
食器を洗うヨシヒコ「宮本に頼んでいる・・・」
桃乃「・・・ごめんなさい・・・全部あたしのせいだわ・・・」
ヨシヒコ「あの会長はどうにもならんよ・・・
いいのか?別れた旦那のところに毎晩通っていて・・・」
桃乃「あんなやつ父親だと思ったことなど一度もないわ。
ヨシヒコさんと会った高校時代からね・・・」
流しからコップを持って来てソファに座るヨシヒコ「そんなこと言うなよ・・・
仕事の方は順調か?」
桃乃「え?・・・ええ・・・まあ・・・
でも・・・あなたがいないと淋しいな・・・職場が静かでね・・・」
桃乃にビールをついでもらうヨシヒコ
「ただの生真面目でつまらない男さ・・・」
桃乃「だから退屈しないのよ・・・あなたは会社の不正義を絶対に許さなかった・・・
もうあの暴君を止める者はいない・・・」
ヨシヒコ「島に行くんだな・・・」
桃乃「あなたの代わりはレゲエ・ユーキには無理だから・・・」

深夜
ヨシヒコの家のガレージ
スポーツカーに乗る桃乃「子どもたちにはしばらく出張に行くって言っておいて・・・」
ヨシヒコ「イチカはもう小学3年生だ・・・もう気づいていると思う・・・」
桃乃「でも・・・私はまだ、あの子たちのママでいたいのよ・・・」
ヨシヒコ「困ったことがあったらなんでも言ってくれ・・・いつでも・・・どこでもだ・・・」
桃乃「ありがとう・・・ヨシヒコさんが一番・・・今もね。」
スポーツカーを発進させる桃乃。
車を見送るヨシヒコ。



デスクの電話が鳴る。
受話器を取る結城「は~い・・・ドリームワールド運営本部・・・」
?「くっくっく・・・わしじゃよ・・・」
結城「!会長・・・!!??」
コマキ社総帥:井伊景雅「桃乃がそっちに行くそうじゃの・・・」
白髪の老人が金色のバスタブで酒を飲み、ビキニ美女にお世話をされている。
結城「ええ、現地確認に・・・」
井伊「ドリームワールドはどうなっておる?」
結城「土地収用の交渉を進めているところだけど・・・」
井伊「あんな蛮族に金を払う必要はない。焼き払え。
わしの可愛い娘が到着する前に一切の危険は排除せよ。」
結城「連中を怒らせると面倒くさいわよ。
魔法を使う奴や、火を吐くやつ、石にするやつ、色々いるし…」
井伊「心配するな。貨物船でナパーム弾と毒ガスを10トン送った。
保安部に命じて総攻撃をかけるのじゃ。
交渉に応じた連中はすっかり油断しておる。みな殺しにせい。
失敗は許さんぞ。現地民にうちの桃乃が危害を加えられてみろ。
お前らは全員東京湾の藻屑だ。」
結城「お嬢様のセーフティは保障するわ・・・」
井伊「期待しておるぞ・・・くくく・・・」
電話が切れる。



マジックキングダム
ホーン平原
地面に「井伊会長私設ゴルフ場建設予定地」という立札が突き刺さっている。
そのそばを戦車が通過していく。
戦車を呆然と眺めるオークたち。
オーク「なんだあのカメはブー・・・」

森の中で狩りをするメド。
矢がシカに当たる。
ヘビ女(ラミア)の従者「おみごと・・・!」
従者に弓を渡すメド。
若いヘビ女がメドに近づいてくる「メド様・・・!
大変です!我が領地をコマキ国が攻撃しております・・・!!」
メド「それはあり得ないわ・・・土地収用の交渉は順調だもの。」
ヘビ女「すでに鉄のドラゴンが北の森を焼き払っております・・・!
お逃げ下さい・・・!!」

燃やされているヴァイスシュバルツの森
逃げ惑うモンスター
ミノタウロス「男どもは戦え!子どもは早く防空壕へ逃がすんだ!!」
ハルピュイアたちが羽ばたいて逃げるが、翼に火がつきボトボトと火の中に落下していく。



ウンディーネ地下水路
避難したモンスターたちがゼリーマンを取り囲んで非難している。
メド「コマキ国との交渉役はあんただったわね!どう申し開きするのよ!!」
ゼリーマン「泉の旦那が会社から去ったことで経営方針が変わったらしい・・・
民間企業あるあるだ・・・」
メド「あらそう。・・・殺すわよ・・・」
ゼリーマン「下水道で暮らすのも悪くないぜ?」
メド「冗談じゃない!私は貴族なのよ!!」
オークのガーニー「そうだそうだブー!」
ガーニーを蹴るゼリーマン「おめーはただのブタだろ!」
ガーニー「ぶきょ~!」
メド「いいこと?あの残虐非道な軍隊を止めてくるのよ。さもなきゃ石にして・・・」
ゼリーマン「幸福な王子ってか。」
しっぽのガトリング銃を向けるメド「粉々にしてやる。」
ガーニー「粉々にするブー。」
ガーニーを蹴るゼリーマン。
ガーニー「ぶきょ~!!」



エゼルバルド城
窓から魔物の住処であるヴァイスシュバルツの森を眺めるベオウルフ。
「なんというすさまじき力だ・・・」
戦闘機のナパーム弾頭下で、魔物たちが支配していた深い森が地獄のように燃えている。

会議室のテーブルについている結城
「これでいつでもお外を安全に歩けるわね。」
ベオウルフ「この力があれば、魔王ハデスなど恐れるに足らず・・・」
結城「いつ、あたしたちがブリジットの味方をすると言ったのかしら?」
ベオウルフ「・・・え?」
結城「あんたたちもゲットアウト、マイウェイよ。
この城をあけ渡しなさい。」
テーブルの隅に座っている長門「地域住民はお前らが嫌いだってよ・・・」
ベオウルフ「さんざん村の地上げに協力したのに裏切るのというか・・・!」
長門「もう用済みだということだ・・・」
剣を抜こうとするベオウルフ「おのれ・・・!」
ベオウルフの方に札束を放り投げる結城。
それをすかさず拾うベオウルフ「撤収!!」
引き上げていく甲冑騎士たち。

結城「腐った統治者は話が早いわね。」
長門「まったくだ。」
結城「脅威はまだあるかしら?」
長門「新宿よりも安全さ・・・」
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