『友だち地獄―「空気を読む」世代のサバイバル』

 今日のいじめ問題は、教育基本法の改正論議で問題とされたような「規律の乱れ」から生じたものでもなければ、一部の政治家が指摘するような個人主義の行き過ぎから生まれたものでもない。
 むしろ社会学者のD・リースマンが『孤独な群衆』で他人志向型と呼んだような、個々の自律性を確保できずに互いに依存しあわなければ自らの存在確認さえ危うい人々の人間関係から、そしてその関係自体が圧倒的な力を持ってしまった病的な状態から生まれている。(51ページ)


 著者は社会学者の土井隆義さん。この前の研修で講師の先生にオススメされた新書。私もかつて、酒鬼薔薇事件の影響で、こいつらみんな猟奇殺人者だろみたいなレッテルをマスコミや文化人に貼られた世代で、だから、この本も、かなり特殊な事例を一般化してんじゃないか、とかは思うんだけど、若者のメンタリティについてなかなか考えさせられる。ノリとしては岡田斗司夫さんや東浩紀さんみたいなサブカル評論に近く、スラスラ読める。
 つーかこの人は単純に、ケータイ小説とかの若者文化が好きなんだと思う(^_^;)研究というだけでは、あんなもん読めないもんw
 実際土井さんは、あとがきで謙虚に今の若者のメンタリティは自分自身にも多少は当てはまるし、社会的規範やイデオロギー(対外的な要因)を重視するか、自己の感情や身体感覚(対内的な要因)を重視するかの違いに優劣関係はなく、その時代のその時代の状況に彼らなりに適応しただけ、とダーウィニズムを論じているが、私はこの本に出てくる友達地獄っていうやつ感じたことない。
 友達地獄っていうのは、学校やネットなどで繰り広げられる、ゆるふわで、ナイーブで、お互い偏執的にまで気を使い合う“優しい関係”の維持に疲労困憊、満身創痍になることを言うらしい。まあチャムグループのことだと思う。
 ちなみにこういう、誰も傷つけたくないし傷つきたくもない、という腫れ物に触るような、もっと言えば地雷原を恐る恐る歩いていくようなコミュニケーションは、そのコンテキストの外部にいる人に土足で踏み込まれると一転排他的で、いじめの温床となるとも。
 そう考えるとツイッターのクラスタとかは、これだよな。SNS疲れっていう言葉が一時期あったけど、友達地獄の同義語と言ってもいいだろうな。
 で、これはこれで高度なコミュニケーションをとっているとは思うんだ、だけど認知的な問題として、学校にしろネットにしろ、そういった人間関係が純度100%のピュアな関係だと思っているのはなかなかキツイよ。
 会社で上司や取引先に気を遣いまくっているサラリーマンが、その関係をピュアだって思い込んでいるようなもんだろ。つまり友達地獄って、実はワーカーホリックな問題なんだな。

 また、この本の76ページで、どちらも日記小説を書いて若くして自殺した少女の高野悦子と南条あやを比較してるんだけど、その三十年のタイムスパンの中で「変わりゆく私」から「変わらない私」に若者の意識の変容があるとか言ってて、結局のところ、やっこさんらは変わらない本当の自分を求めているらしんだけどさ、その割にはアイデンティティを貫く芯みたいなものがねえなっていうのは、結局他者だったり社会にコミットして自分を相対化しようとしたりする機会を拒否しているから、逆説的に変わらない本当の私を求めている割に、自傷行為くらいしか、つまり身体的なレベルでしか変わらない私を実感できないっていうことになっちゃってるんだっていうね。いや、これだって実感できてるか怪しいけどね。自己満足だろっていう。必死な思い込みだろうっていう。
 どんなにたくさんの絵を模倣してもどうしても自分の作風が出てしまうのと同じように、どんな経験をしてもどうしても変わらない部分っていうのがやっぱり人にはあって、で、それを認識するにはやっぱり自己の外部のモノと自己を相対化して、比較して、で、自分という存在は本当にウンコみたいな存在だってことを知って、それでも、ま、いっかってウンコとして生きるのが人の道なんだけどな。
 だから、こういう人らはすごい自己愛が強くてナルシストなんだけど、反面すげえ真面目なのかもわからないよね。まあ私は苦手なタイプだけどね。
 だって、『トイ・ストーリー』の1がそんな話であってさ、あの映画でもわかるように、こういう現実を受け入れるのってだいたい小学校くらいでもう来るじゃん。あ、自分って自分が思っている以上に大したことねえなっていう洗礼。
 それでも、いやいや自分は大した存在であるはずって、見て見ぬふりして、中二病みたいに騙し騙し行けちゃうのかね、今の子どもって。すげえな。
 自分が絶対的な尺度になっちゃっているっていのは『オレ様化する子どもたち』でも論じられていたんだけど、それをある種の悲劇として同情的に書いているのがこの本の特徴だろうか。『オレ様化~』だともう少し問題意識があったからね。
 実際、私もこれ何とかしたほうがいいと思うよ。マズローの欲求の段階で考えると、若者の目標が自己実現欲求の段階から承認欲求の段階に降格しているわけで、退行になっちゃってるからね。逆に、そこまで子どもを社会が追い詰めちゃっているということでもあるし。
 でも、こういう本に書いてあることって結局わかりやすい反面、極端な例(南条あやとか)を出していることが多くて、実感としてはここまでオレ様なやつっていうのはほとんどいないっていうことは、猟奇殺人者と一緒くたにされたかつての中学生の一人として、代弁しておきたい。

 私の感覚だと中二病って100人に一人くらいの割合。

研修メモ(QU編)

 先月、QUに関する研修を二度も受けたので、ちょっと覚え書き(しかも一回目は作者ご本人の講演だった)。そういや講演といえば今度うちの地元にノーベル物理学賞の梶田さんが来るんだよな、楽しみである。

QU(クエスチョナリー・ユーティリティー)
学級版顧客満足度調査のようなアンケートのこと。学校生活や友人関係について「ややあてはまる」「そうでもない」などの選択肢を選んでいく。早稲田大学の心理学者河村茂雄が作成。
当初は小学生のみで行われていたが、その後ハイパーQU(初代にソーシャルスキル項目が加わった)にパワーアップし、中学校や高校でも実施されている。
この調査結果で学級の現状や課題を教師が分析することができる。『なぜ日本の公教育費は少ないのか: 教育の公的役割を問いなおす』でも言及されていたが、日本の学校は生徒数ではなく学級数を基準に教員数を調整する特殊なシステムがあるため、学級を分析する意義は非常に大きい。
いじめアンケートと同様のものだと捉えられていることもあるが、確かにいじめの兆候はキャッチできる可能性はあるが、厳密には異なると思う。
また、生徒の不満やクレームを受けて、そのままクラスを改善するわけでもない。そのように答えた生徒の背景(自分やクラスに対する評価が甘かったり、逆に厳しすぎたり)を読み取ることが求められる。
つまりQUの結果は客観的な事実ではなく、生徒の主観的な思い込み(認知)であり、教師はQUの結果と日々の観察によるクラスの実態を比較検討し、その認知状況を改善するのである。
実施は年2回が望ましい。
実施期間は、年度始めはバタバタしている上に新クラスで互いに牽制し合っているので、GW開けが適切。二回目は二学期がいいが、行事が少なく生徒が落ち着いている月に行う。

QUの分析
QUはデカルト座標上に各生徒の解答(スコア換算される)が点として打たれる。
X軸が、クラスのルールがどれだけ徹底されているか(=治安)の尺度で、Y軸が生徒がどれだけ教師やクラスメイトに承認をされているかの尺度となっている(※ハイパーで追加されたソーシャルスキル尺度は別のひし形のグラフにポイントされる)。
そして、右上の第一象限から学級生活満足群、左上の侵害行為認知群(クラスの生活に満足はしているが、いじめや冷かしも認知している)、左下の学級生活不満足群(特にひどいものは最も左下の要支援群となり緊急対応が迫られる)、右下の非承認群(いじめやからかいは受けてはいないもののクラスで認められることが少ない)の4つのグループに分類される。
QUの結果で大切なのは、各点の凝集性であるという。クラス人数分ある各点がグラスの様々な場所にバラけていると、クラスというチームを生徒たちはほとんど意識していないことになる。

①まあまあOK
学級生活満足群が70%以上、またはその周辺に55%以上の生徒が集まっている場合。
この場合に、要支援群に20%ほど生徒がいても、たまたま特別な支援が必要な子がいすぎただけだと解釈される。
また、ADHDといった発達障害の子は担任の先生一人で対応しきれる仕事ではないので、必ずチームで対応する。
担任は発達障害の子だけを個別に対応していると学級経営がおざなりになりがちなので、基本的に全員指導をメインに行なう。

②P(パフォーマンス)型
まさかこの研修で三隅二不二のPM理論が出てくると思わなかったけど、P型は担任がクラスの目標に向かって生徒を引っ張っていくタイプ。
各点はY軸に沿って集まってくる。つまり、クラスのルールは守られてはいるが、承認されていると感じている子と、そう感じていない子の意識に差があり、ヒエラルキーができている。

③M(メンテナンス)型
組織配慮型の担任のクラス。各点はX軸に沿って集まってくる。生徒の誰もが承認されているが、クラスのルールが徹底されておらず、子どもは楽しいけど見ようによっては荒れている。つまり、馴れ合いになっている。

④崩れてきたクラス
第一象限から第三象限にかけて斜めに点の集まりが下っているタイプ。
P型やM型で、学級生活不満足群が増えてくるとこうなる。

⑤介入不足のクラス
担任の先生がクラスを放置しているタイプ。自由にやらせているということだが、今の子達は自己判断能力に乏しいので、各々が好き勝手な行動をとる。各点は拡散し、傾向が見いだせない。
どうやって学級経営をしていいかわからない新任の先生に多いタイプ。
ちなみに④と⑤は、アクティブラーニングとかそういう理想は捨てて、教師がイニシアティブをとってクラスを立て直すしかない。まずもって生徒が安心してクラスにいられるフレーム作りをしなければならないのである。

⑥学級崩壊
第三象限の学級生活不満足群ばかりのクラス。リセットボタンを押すしかない。
小学校の段階ですでに手がつけられないほど荒れている場合は、中学校でもそのままこのタイプを示してしまうことがある。

リレーション
親和的な人間関係を築くこと。

コンピテンシー
協働性。他者と共に生きる力。技能(スキル)よりも総合的なものだとされる。
もともとはアメリカの企業の人事評価で使われだした言葉。

オーバーアチーバー
知能以上の学力を引き出している子どものこと。
彼らはクラスメイトが承認され満足な学級にいることが多い。
逆がアンダーアチーバー。

小学校:ギャンググループ
今までは家族単位で行動していた小学生が、高学年くらいになると結成する悪ガキグループ。親よりも友達が大切になる。男子が作りがちでくだらないいたずらをする。ミニオンズがこれだと思う。

中学校:チャムグループ
不安定な思春期を過ごす中学生がつくる、同じ興味や同じ部活などの似た者同士の3~4人の少人数グループ。
一人が怖いために結成しているため、いちいち「私たちは同じね」ということを確認し合う。同じ芸能人が好きなど。
逆に、自分と異なる個人やグループに対しては排他的で、いじめに発展することもある。
女子が作りがちだが男子も作る。オタクのクラスタもこれだと思う。

高校生:ピアグループ
共通点だけではなく互いの違いも受け入れることができるグループ。
自己が確立しつつあり、そのため男女が入り混じったり、年齢層にも幅があったりする。

どの世代にも言えるが、自分のことをなんでもさらけ出せる友人が6人以上いる人はコミュニケーション能力が高い傾向がある。部活を続けている子などに多く、彼らは社会的発達が進んでいる。
逆にそういった人が0~1人は不安感や攻撃性が高い傾向がある。

参考文献:土井隆義著 『友だち地獄―「空気を読む」世代のサバイバル』

very goodよりもgood enough(アドラー)
グーニーズではない。他者による評価よりも自分の満足感の方が人生は充実するといった意味。

人は誰かに気に入られるために生きているのではない(ゲシュタルト)
私は愛されるに足る人間であると自己愛が強い人は、反面、自分に対する人の評価を偏執的に気にする(失愛恐怖)。

行為分析
過去と他人は変えられないので、自分の関わり方(行為)を変える。

夏休み2017

 イエーイめっちゃホリデイが終わった・・・

 今年は例年になく短く感じたなあ。おそらく、研修や講習や試験やスクーリングなどでスケジュールがデッドロックだったからだと思われる。
 しかしノルマの国語のレポート×20や、英語の試験×4、あとちょっとだけお絵かきもできて、まあ最善は尽くした。
 夏休み中にはこしさんなどいつものメンバーにも会えたし、また高校の頃の同士Y氏にも久しぶりに再会できたしね。Y氏はついに、高校時代の交換イラストノートをウェブで公開する大プロジェクトをやるらしいんだけど、高校の頃から絵心があった漫画少年のY氏とは違って、私は漫画で人物キャラをちゃんと出したのは高校からで、けっこう修行時代って感じで恥ずかしい(超下手)。
 ただ、この前自宅でY氏と400冊近くあるノートを読み返してて思ったのは、高校の頃でも動物と中年のおじさんの絵は上手いね。やっぱり好きなものはうまいんだろうなw

 あと、理科の授業の準備してたら、退職された高校の物理の先生の凄いサイト見つけちゃって、自分のサイトが3流、4流だっていうのをつくづく感じたね。攻殻機動隊フロッグ・イン・ザ・ウェルよ。
 この先生曰く、自分の数学力の無さを痛感して、研究者の道を断念したらしいのですが、このレベルで通用しないとは理学部っていうのはどんだけの数学バカの世界なんだっていうね。
 むしろ、この先生の性格上、十分研究者は実力的にやれたんだけど、自分に厳しくてあえて理科教育の道に行ったとかありそうだよな。
 で、専門書は難しいので、このサイトでは途中の式もわかりやすくちゃんと書いたとか言ってるんだけど、その途中の式からしてかなり数学に強くないと嫌になっちゃうっていうね。
 時間があったらじっくりゆっくり読んでいきたいんだけど、特にキャベンディッシュのねじり天秤で重力定数出した実験の詳しい内容とか、モルやアボガドロ数を出すための質量分析の仕方についていくつかのパターンを紹介してくれたり(アルファ崩壊利用するとか)、他のサイトや専門書籍にはまずない嬉しい項目盛りだくさんで、授業や教科書でスルーされがちな原理の説明に不満を感じている人はぜひ!っていうね。これでも自分にはかなり難しいけどね。
 ただ、どんなに昔の偉人の業績でも一次論文にあたってから説明してくれているのはかなりの偉業だと思う。私、自然科学系だと『種の起源』くらいしか読んだことないもん。

 さらに、今後授業では脊椎動物の分類をやるんだけど、そのためってわけじゃないんだけど爬虫類代表ってことでトカゲを捕獲してアボットと名づけて飼育することにしました。
 本当は、中学生にほとんど認知されていないニホンヤモリがこの前家の中に入ってきてさ、こいつを捕まえたくて水槽を買ったんだけど、まんまと取り逃がし(かなり素早い)、とりあえずアボットを入れとくか、みたいな。
 ニホンヤモリが無事捕まった際にはコステロって付けよう。独り身がペットを飼うともう破滅って言うけど、まあ仕事の一環としてってことでよろしく。

 とりあえず、この単元って進化とかもガッツリやるところなので、ポケモンカードバトル的な導入にすることにしました(去年の数学といいカードゲームをするが好きな私)。本当はチョコエッグの海洋堂のミニフィギュアを使う予定だったんだけど、分類的に広く持ってなくて断念、学研の生き物カードにした。
 まあ、一言で言えば、キャロル・キサク・ヨーンごっこです。

1 単元名 動物の生活と生物の変遷
  題材名 分類学者になろう!     

2 指導観(題材設定の理由)(主題設定の理由)
 本単元は、脊椎動物を中心に体の構造や機能を学習する単元であり、また単元後半では、生物がどのような歴史をたどって変化していったのか、その変遷やメカニズムを学習する。
 本時では、脊椎動物の分類の導入として、脊椎動物・無脊椎動物、さらに植物も含めた生物を、グループ活動を通して、生徒に実際に仲間分けさせ、さらに区別したポイントを班ごとに発表させる。
 生徒は一年次に植物の分類を学習しているが、一般的に、教科書や授業で取り上げていない植物種が出題されると、植物の分類群を見分けるポイントの確信が揺らぎ、正しい解答を導き出せないという点がある。これは、授業で習った知識を個別的な事例に当てはめて実際に活用する力が不十分であることを示している。
 このような実態を踏まえて、まずは個別的・具体的な複数の事項から、共通点を見いだしそれを一般的規則として抽象化する帰納法の思考方法に触れるきっかけを授業で提供したいと考え、本題材を設定した。
 また、この活動をしながら生命の多様性についても理解を深めたい。

3 本時の指導
(1)ねらい(目標)自分なりの基準を見つけて生物を分類してみよう

 (2)展開
1本時の「めあて」を確認する。(5分:一斉)

指導上の留意点
・一年次に植物の分類をしたことを振り返らせる。
・教科書125ページのイラストを見て地球上には様々な動物がいることを確認させる。

評価基準
・一年次に学んだ内容を振り返ることができている。[観察]

2生物のカードを一枚ずつ提示し、その生物の特徴について考える(15分:一斉&個人)

・ワークシートを配布し、各カードの生き物の体の特徴や生息している環境について書き留められるようにする。
・ワークシートの例「なまえ」「すみか」「からだのとくちょう」「のうりょく」「くらし」

・生き物の外形的特徴から、身体構造や生息場所について自分なりに推測している。
[作業用紙]

3生物のイラストだけが描かれたカードのセットを班ごとに配布しグループ分けする。
(15分:班)

・どういう基準で分類したのかが明確に説明できるようにすることを伝え、班員同士の議論が活発になるように促す。
・また、生物の分け方は基本的に学者でも恣意的に行っていることを説明し、気軽に行えるようにさせる。

・班員と協力して積極的に活動に参加している。[観察]

4どういう風にグループ分けをしたか、またその分類基準について班ごとに発表する。
(15分:班)

・上手く説明できない班、また生徒同士の議論の活性化のための適切な言葉掛けをする。

・分類の基準を明確に定めている。また適切に説明できている。 [用紙][観察] 

(3)評価 自分なりの基準を見つけて生物を分類することができる。

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アボット。

ワンダーウーマン

 「面白い度☆☆☆ 好き度☆☆☆」

 『肉体的快楽論』全12巻で読んだわ。

 うお~これが映画の記事の200本目になったか~
 というか、簡単な感想はほかの記事と一緒にあげちゃったりしてるから、実際は200本以上記事はあるんだけどね。
 ジェンダーとかセックスとかそういったバルカン半島的な一触即発イデオロギーを取り扱っているこの作品を、メンズデーの割引料金で見たオレはなかなか業が深いぜっていう。

 アメコミ詳しい人には、まさにガウタマ・シッダルタに説法なんだけど、アメコミにはDCとマーベルっていうツインタワーがありましての、DCがスーパーマンとかバットマン、マーベルがスパイダーマンとかキャプテンアメリカがキラーコンテンツで、さらに二社とも同じような超人チームがあるんだよ。
 マーベルはおなじみアベンジャーズで、DCはジャスティスリーグオブなんちゃら。で、構成メンバーのキャラもかぶってて、金持ち担当とか、フィジカル担当とか、宇宙担当とか、いるわけよ。
 で、どうやら神話担当っていうのもあるっぽくてさ。マーベルが北欧神話なら、こっちはギリシャ神話で行くぜ!みたいな感じなのが、このワンダーウーマン。
 だから神話の世界の神様がちょっと人間界に観光みたいなあらすじは『マイティ・ソー』と丸かぶりなんだけど、特筆すべきは、主人公がさ、女性なんだよ。アマゾネスなんだよ。お母さんがヒッポリト星人なんだよ。うそだけど。
 だから、ソーのテイストがちょっとシェイクスピア的というかオペラなら、こっちは『ローマの休日』だぜっていう。
 でも、そんな古い映画に遡らなくても、これってすごい『モアナと伝説の海』に似てるよなって。モアナと『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』の20世紀の戦争映画テイストを組み合わせれば、この映画になるよなっていう。

 さて、戦う女性が主人公っていうのをアメリカがやるとさ、やっぱりジェンダーフリーとかのテーマは絶対あるわけでさ。
 今読んでて面白い本に『なぜ日本の公教育費は少ないのか: 教育の公的役割を問いなおす』ってのがあってさ。ちょっと高いんだけど、関心のあるテーマだから教員免許更新講習のときに大学で買ってきちゃったんだけどさ。
 この本、教育に世界の国々がどれだけ税金を投入しているかを、統計学を使って、財政面やら意識面やらで国際比較してるんだけどさ、この中で面白かったのが、アメリカって市場原理主義で政府の国民生活への干渉の範囲がすごい限定されていて、自由だ競争だ格差だ自己責任だっていう世知辛い社会構造にはなっているんだけど、じゃあ本当に何でもありなのかっていうと、ほかのどんな国(あの北欧よりも)よりも最も締め付けの厳しいところがあって、それが差別問題なんだよ。
 女性や人種、性的マイノリティなどへの差別是正に関する国民の関心・意欲・態度が、日本とは比較にならないほど高くてさ、だから今トランプさん大変なことになっちゃってるんだけどさ。
 つまり、そういう国で戦闘美少女なんかやるのは、サブカルだろうと、やっぱり何らかの社会的なステートメントとして受け取られてしまうリスクがあるわけで、これは、確かパキPさんに貸してもらった『スーパーゴッズ』で読んだと思うんだけど、この『ワンダーウーマン』ってさ、作品そのものよりも、これを書いた原作者の経歴が面白くて、確か社会学だか心理学の学者さんなんだよね。
 で社会的、心理的に、奴隷のように扱われていた女性の解放を学術的観点からやってるから、一般的なアメコミヒーローがメキシコのレスラーみたいに副面かぶっているのとは対極的に、彼女は露出するんだよ。この、人工知能だ、ディープラーニングだ、の2017年であえてのビキニ鎧なんだよ。
 原始女性は太陽だった、なんだよ。人は女に生まれるのではない女になるのだ、なんだよ。ありの~ままの~私見せるのよ~、なんだよ。

 で、何が言いたいかというと、『ズートピア』みたいにイデオロギーが満載だと思ってちょっと構えて観に行ったんだよ。私も一応、男の子だからね。そしたら『ローマの休日』だったっていうね。うお、サラエボ事件起きなかった!みたいな。
 だから、この企画を女性の監督に回したのは英断だと思うよ。こういう社会的な問題って、もう当事者だったり被差別の立場の人が絶対強いし、さらにそういう人たちの中でも問題に対する見解が違ったり、程度がグラデーションになってたりするじゃん。
 こういう問題の厄介なところは、そういう人たちを、ひとくくりにしてしまうところであって、これは差別してる側もされる側も、ぼく達○○芸人です!みたいにひとくくりにしてるのは一緒で、まあくくらないと政治的な効果がないっていう現実問題もあるんだろうけど、難しい。
 北野武さんが「おいら韓国人の友達たくさんいるけどよ、韓国って構えないで、その人その人で付き合えばすごいいいやつだぜ」とか言ってて、そうだよな、女性って言ったって人類の半分含まれるわけで、いい奴もやな奴もいるじゃんっていうね。外国人も障害者もみんなそうだろ。人によるっていう当たり前のところに着地するしかないんだよな。
 うまくコミュニケーションするには“くくらない”って大事なんだよ。難しんだけどさ。
 ほら、女性と付き合う時だって、「オレは女性を愛してるぜ」って口説かないじゃん。絶対ダメじゃん。水樹奈々じゃないけど、そこは「名前を呼んで」だろっていう。

 戦争は一人の悪者に責任を押し付けて終わるものじゃない。みんなに責任があるんだ。

 そういうことを、あの男代表のカーク船長は言いたかったんだろうけど、で、ちょっといい展開になるぞって思ったら、まさかのそのセリフを直後に覆す、戦争の責任を一人に押し付けられそうなイーブル登場でドラゴンボールドッカンバトル始まったからね。
 『マン・オブ・スティール』の時も思ったんだけど、DCって結局最後はこうなっちゃうから、興ざめなんだよな。人類の二軍感というか。やっぱり神様には感情移入できないじゃん。オレたちは神様じゃねえんだから。
 まあ、ギリシャ神話ってルネサンス的な解釈ではヒューマニズムで、神様は人間臭いところがあるから、感情移入できなくもないんだけど、そうなるとムカついてこない?
 軍神アレスとかの言い分って結局、親に「お前はなんでそんなバカなんだ」って言われてる感じでさ、それはてめーの子どもだからだろっていう。
 愛の戦士ワンダーウーマンも、アレスとたいがいなところがあってよ、あれじゃ愛のムチだとか言って生徒ぶん殴る体罰教師と一緒だよな。
 なんでみんな殺し合うの?ってお前が一番殺してるじゃんっていう。この前見た『スパイダーマン:ホームカミング』が不殺がモットーなヒーローだったから、余計でさ。神話のやつらはみんななにがしかのブーメラン持ってるよね。

 あと、最後に一言だけ言わせてくれ。この映画と全く同じ筋書きの回が水戸黄門にあります。水戸黄門は神話だったのである。神君家康公とか言うしな(^_^;)

 みんなは救えない。

講習メモ(素朴概念編)

 教育再生会議が贈る伝説の企画…それが教員免許更新講習!!ということでまた行ってきました。これって5コマ30時間も取らないと修了にならないんだけど、スケジュールがバッティングして1コマ取り逃したという・・・返せ、俺の6000円・・・!w

 今回は物理学の講習を選んだんだけど、物理の授業っていうのは力とか現象など目に見えないものを教えるので、学生は自分の主観や個人的経験、テレビCM、漫画などに基づく、誤った認識やストーリー(これを素朴概念という)を構築しがちで、しかもそれに固執する。
 にわかには信じられないが、大学の物理の先生、つまりその道のプロフェッショナルに対して、先生間違ってますよと平気でうそぶく大学生も少なくないという。
 権威を鵜呑みにしないといえば、かっこいいのだが、じゃあ白黒ハッキリつけようと物理を突き詰めて勉強することは当然しないので、結局放置、生半可な知識をツイッターなどに垂れ流すことになり、素人にとっては有害以外の何物でもない。
 本当、やめてくれって感じで、ほいで、自分くらいのレベルが見てもやっぱり間違っているところもあるんだけど、それを指摘しても彼らの自尊心に関わっているから、素直に受け入れないんだよな。で、なんかしばらくしたら時間が解決したのか、平気で意見すり替えてたりするからね。
 そういうのにうんざりしちゃったっていうのはあるよな。文責がないんだよ。でもSNSって発言の履歴が残るから、本当は最もそういうやりとりに注意しなきゃいけない場ではある。
 これは当然自分自身にも言えるから、一時期はSNSで学者さんとかと繋がれて楽しかったんだけど、専門的な話題はもっぱらブログに戻ったな。で、こういう場所のまとまった文章なんて、よほどのもの好きしか読まないから、やっぱり気が楽だっていうのはある。昔はテレビのディレクターさんとか読んでくれたことあったけどね。
 
 さて、以下の、平成教育委員会みたいな問題は、どれも非科学的な思い込みの素朴概念がしゃしゃりでがちな問題なんだけど、注目すべきは正解率で、この正解率は小学生でも、文系大学生でもなく、なんと理工学部の学生の正解率である。
 さらに、あの、日本の理系の最高学府と知られる京都大学においてもパーセンテージはほとんど変わらないという。いやいや、彼らはセンター試験や二次試験で物理をチョイスし、高得点をたたき出しているはずで、嘘だろってにわかに信じられないのだが、もう本当に受験の問題で点数を取るのだけに特化して、根本というか本質は深く考えていないってことなのだろうか。
 でも、これはちょっと安心したよ。高学歴大学生がちょっと身近になったというか。バカはオレだけじゃねえんだ、みたいな。
 これは結局、ヒトという種族に生まれた以上は陥りがちな現象なわけで、勉強ができようができなかろうがみんな同じ人間なんだねっていう。みんなみんな生きているんだ、友だちなんだっていう。

 ということで、現役理系大学生にレッツチャレンジ!※問題は群馬大学理工学部高橋学教授のレジュメによるものです。

参考文献:エドワード・F・レディッシュ著『科学をどう教えるか』、R.D.ナイト著『物理を教える』

Q1:国際宇宙ステーションの中の人や荷物が浮遊している様子はテレビ中継でお馴染みですが、その飛行高度は海面から数100km程度であり(実は大気圏内)、地球の半径6370kmと比べると、地球のすぐ近くを飛んでいることになります。つまり、国際宇宙ステーションの重力と大きさは、地上のそれと大差がないはずです。それなのに、ステーション内の物体が浮遊している理由はなぜでしょう?

 理系大学生の正解率:5%

Q2:二人の力持ちが両側から引っ張ってやっと切れるロープがあります。そのロープの一端を大木にくくりつけ、もう一端を力持ちが引っ張るとすると、ロープを切るのに何人の力持ちが必要でしょうか?

 理系大学生の正解率:60%

Q3:空気を抜いて真空にした室内で、1kgの鉄球、1kgのプラスチック球、1kgの羽毛布団、1gのガラス玉、1gの羽毛を床から1メートルの高さから回転運動しないように注意して同時に落下させます。どの順番で床に到着するでしょうか?そう判断した理由も簡潔に記述してください。

 理系大学生の正解率:60%

Q4:ガラス玉とコルク玉を入れた上で、水を満たし栓をしたペットボトルがあります。このペットボトルを横に倒し、地面と水平方向(※左から右に)にどんどん加速させます。加速している間、コルク玉とガラス玉はペットボトルの中のどの位置に移動するでしょうか?

 理系大学生の正解率:20%

Q5:一つの質量が47gの同一規格のドーナツ型の磁石を2個用意し、N極どうしが向かい合うようになめらかな支柱がついた秤(支柱をつけた状態で0gになるようにセットされてます)に載せたところ、上の磁石が宙に浮いた状態で静止した。この時、秤は何gをさしますか。そう判断した理由も簡潔に記述してください。なお、秤は磁力の影響で狂うことはないとします。

 理系大学生の正解率:60%

Q6:カーリングのストーンにロープをつけて、スケートリンクの氷上の杭につなげて回転運動をさせた。ストーンはしばらく等速円運動をしていたが、途中で突然ロープが切れてしまった。ロープが切れたあとのストーンの運動はどのようになるでしょうか?ストーンの軌跡を書いてください。また、そう判断した理由も簡潔に記述してください。

 理系大学生の正解率:40%

Q7:水平方向に時速10kmの等速度で動いている動く歩道に、Aくんが砲丸を持って乗っている。Aくんは直立不動で手を伸ばし、そっと砲丸を落とした。砲丸はどのように落下しますか。そう判断した理由も簡潔に記述してください。空気抵抗の影響は極めて小さいとします。

 理系大学生の正解率:60%

Q8:同一規格のガスボンベABを用意し、Aにはヘリウムをいれ、Bの中は真空にしました。ふたつのガスボンベをプールに入れるとどちらも水中に沈みました。このガスボンベを水中でも正常に作動する秤(プールのそこに固定されている)の上に載せると、AとBのどちらのガスボンベが重く表示されるでしょうか?そう判断した理由も簡潔に記述してください。

 理系大学生の正解率:35%

Q9:真空に保たれている室内で砲丸を斜め上方向に発射しました。発射装置から放たれ右上向きに上昇中の砲丸と、その後右下向きに下降中の砲丸にはそれぞれどのような力が働きますか?

 理系大学生の正解率:50%

Q10:半径と質量とが等しい、ふたつの金属球があります。二つの金属球はどちらも重心は球の中心ですが、一方は中空(空洞内は真空とする)、もう一方は中心まで均一に金属が詰まっています。この二つの金属球を特別な道具を使わずに正確に区別するにはどうすればいいでしょうか?

 理系大学生の正解率:10%

 慣性モーメントとか知らないとちょっと思いつかないQ10はともかくとして、Q1の正解率が一番低いのがすごい意外。
 自分は6番が理屈では知ってるんだけど、なんとなく素朴概念的に引っかかってしまう。コリオリとかも苦手。
 例えば、ハンマー投げは前にハンマーを飛ばすには室伏は真横で手を離さないとダメじゃんっていうのはわかるんだけど、講習で高橋教授が言ってたように、食べかけのピザのような4分の1が欠けた円を描くと、どうしてもそのまま円周をなぞって物体は回転運動を続けるって考えちゃうんだよね。
 これがピザのひと切れのように、もしくはショートケーキ一個のように、中心角が小さい扇形になると、そうでもなくなるんだよな。つまり、あとちょっとだと書き足したくなるというw
 この心理現象をうまく利用するのが美術とかアートでさ、例えば石膏デッサンとかも迫力出すために、ちょっとだけ支持体(紙面)から石膏像の頭頂部とかをはみ出させるんだよね。
 でも、その欠けた、本来、物理的にはどうやっても見えない部分を、人間ってなんとなしに続きがあるものだと思い込んで、イメージで補完しちゃうんだよね。
 漫画の人物の顔の寄りのコマでも、ぎゃああコイツ首が切断されてる!って読者は思わないもんね。そういう認識の部分と、自然科学の理論が真っ向からぶつかるっていうのが興味深いし、おっかないところでもある。
 自分は何年か前に、実験で実際に見せれば人は納得するとかここで書いた記憶があるんだけど、自体はそう単純なものではなかったのである。そこまでやっても(実際にその目で見せても)、人間というのは自分が見たいものしか見ていない可能性があるから、気をつけろよって叱咤激励されました(^_^;)

※簡単な答え
Q1:実はスカイダイビングと一緒でISSは自由落下しているから。
Q2:1人で切れる。
Q3:質量に差があっても同時に落としているのですべて同時に着地する。
Q4:密度の関係で、ガラス玉が左に、コルク玉が右に動く。
Q5:磁石二つ分の重さの94g。作用反作用の法則。
Q6:ロープが切れた点から円の接線方向に等速直線運動をする。
Q7:慣性が働くのでAくんが放した真下に落下する。
Q8:ヘリウムが入っている方のガスボンベA。
Q9:砲丸自体に推進装置はないので重力のみ。
Q10:二つの金属球を坂で転がす。よく回る方が金属が詰まっている方。
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