政治学覚え書き①(政策争点)

 経済学は、ここで割とまとめていたけれど、政治学の方はさっぱりだったんで、ついに待望の覚え書き。ケインズVSハイエクに爆笑している場合じゃない!もはや戦後ではない!

政策対立軸
右とか左とか、保守とか革新とか言うけれど、その判断基準になるようなもの。日本では1950~80年代(戦後の自民党政権)までは、保守、革新(進歩)の基準となった争点は以下の4つ。

①憲法改正問題:もともと自民党はこれをするために結成されたらしい

②防衛問題:日本特有で、欧米では争点にすらなっていない。だって自分の国の防衛を自分たちでするのは当たり前でしょ?みたいな。

③天皇制:GHQが残してくれた。

④労働者のストライキ:とはいえ日本の労働組合は、欧米のような超企業的組織(ようは職種ごとに組合ができているってやつ)ではなく、同一企業の労働者だけで構成されている特徴がある(帰属意識が強い企業内組合)。

新しい争点
環境問題、既成政党批判(政治をプロからアマチュア=市民に!)、小さな政府か大きな政府か(93年の政界再編においてさらに取りざたされるように)、外国人労働者の排除、夫婦別姓問題、特定秘密保護法などの社会的規制に関わる問題。

ちなみに、リバタリアニズムの中核をなす考え方を自由放任主義(レッセフェール)という。

右か左か?
(左)共産党<民主党(中道?)>自民党(右)

冷戦時代は左が社会主義、右が資本主義だった。ただ冷戦終結後この分類はあまり意味をなさない。そもそもフランス革命の頃になると、また事情は違う。右:ジロンド党、左:ジャコバン派。
さらに、これは保守、革新と必ずしも一致しない。つーかややこしい。ねじれがひどい。

政治イデオロギーの現在
現在は政治的統制、経済的統制、文化・社会的統制といった複数の尺度で、政治イデオロギーを分類する。
x軸を経済的統制、y軸を政治的統制にして座標を書くと・・・
第一象限(政治的統制:強、経済的統制:弱)・・・伝統的保守、新保守、保守主義志向
第二象限(政治的統制:強、経済的統制:強)・・・社会主義
第三象限(政治的統制:弱、経済的統制:強)・・・社会民主主義、革新主義志向
第四象限(政治的統制:弱、経済的統制:弱)・・・リバタリアニズム、無政府主義

ダウンズの空間競争モデル
正規分布の中心の多数派である中位投票者を取り込むような政策を打ち出した政党(中道政党)が選挙に勝つという理論。

コンドルセの投票のパラドクス
空間競争モデルを踏まえて、政策対立軸が3つ以上ある場合、どの政党が最も望ましいかが判断できなくなってしまうこと(アローが一般可能性定理として証明)。
A党は環境政策、B党は安全保障、C党は政府規模と争点がバラけると多数決で判断できない。
そう言う意味で小泉さんは、郵政解散といい、原発都知事選といい、単一の争点(シングルイシュー)に絞り込ませることで選挙戦を単純化し、小泉劇場にしちゃう。つええ。

税制問題
①人頭税
中国史で出てくるやつ。金持ちも貧乏人も同額の税金を納める。納税額×人の頭の数ぶんだけ徴収できる。もちろん貧乏人の方が厳しい。これを逆進性という。

②フラット税制
比例税とも言う。ケインズVSハイエクのハイエク氏も支持。どんな人も決まった税率を納税する。例えばどんな人も年収の20%を納税みたいな。

③累進税制
日本でお馴染みの累進課税。金持ちなほど、税率が高くなる。富の再分配の機能、いわゆるビルトイン・スタビライザーの一種。
ケインズVSハイエクのケインズが支持・・・つーか考えた。あいつマジ天才。

レントシーキング
企業が自分の商売に都合がいいように、政府に働きかける活動のこと。ブッシュ政権ではゴールドマンサックス、レーガン政権ではメリルリンチみたいな。
レントとは、政府が規制をすることによって発生する利潤のことで、規制緩和が起きるとその利権が大きかったことがわかる。規制されていたことで、質の悪いお店や企業が守られていたということ。保護政策が必ずしも、ビジネスを発展させないという話。
シカゴ学派の重鎮、ノーベル経済学賞のスティグラーは、この状態を批判した。

社会契約説
取り沙汰されたのは18世紀。
個人の合意によって国家が形成されるべきだという、おなじみの説。
つまり国家や政府は、各個人の自由な判断によって人工的に作られたという暗黙の了解がある。
ロックは自然権の中でもとりわけ私有財産に対する不可侵の権利を主張。
命や肉体が自分のものならば、それを使って獲得した財産も自分のものでしょうという。共産主義なんて知らん!

信仰・思想・表現の自由
16~17世紀にかけて繰り広げられた宗教戦争の泥沼から、いい加減、自分と異なる価値観を認めてやらないとオレ達全滅だって気づいて作られる。寛容の原則の確認がポイントだが、あんたら本当に聖書読んだんかっていう強い思いが私の中でこみ上げてきます。
スピノザ、ロック、ヴォルテールなどが啓蒙したことで有名。
それは国家の中立性にも影響を与えていく。

権力分立
18世紀のモンテスキューがパイオニア・・・と思ってたら、別の本ではロックがパイオニアって書いてある!!
人間っていうのはポストに味をしめると際限なく権力を求めてしまうというニヒルな人間観に基づき、単一の権力だと何をしでかすかわからないので、権力を分立させることを提案した。抑制と均衡のメカニズム。
立法、行政、司法だけでなく、上院と下院、中央と地方、派閥と政党と圧力団体といった具合に用いられる。
ロックの権力分立:君主に執行権と外交権を残し、立法権は議会にあるとした。

バーリンの消極&積極的自由
①消極的自由
誰からも干渉されていない状態を指す。
バーリンは福祉国家もこの消極的自由を侵害するとして否定(小さな政府論)。
②積極的自由
セルフエスティームのこと。カントの自由、自律(定言命法)はこっち。
バーリンはこちらの考え方が行き過ぎることを懸念。パターナリズムや全体主義が起きちゃうからだ。

自由主義の3類型
古典的自由主義
すべての個人に国家や宗教組織からの強制からの自由を与えるという考え方で、これは個人が自分の好き勝手に振舞うことを保障するのではなく、政治的な自由を問題にしている。
古典的自由主義における社会的共存に必要なルールは、生命と私的所有の保障、信仰、思想、表現の自由、権力多元性の確立(権力分立)である。
古典的自由主義の考え方は、20世紀に入ると消極的自由(他者からの干渉を受けない自由)の他に積極的自由(自律、自己支配としての自由。セルフエスティーム)という新たな問題が発生し議論は哲学的に複雑化することになる。

福祉国家型自由主義
福祉国家型自由主義とは、富の再分配、教育、社会保障といった政府の介入が、最終的に個々人の自由を保障するという考え方であり、福祉政策は経済にとって望ましい効果を持つと論じたケインズやアメリカのリベラル派がこれにあたる。

リバタリアニズム
リバタリアニズムは、福祉国家型自由主義を批判するかたちで現れたもので、政府の介入は最小限にするべきという夜警国家(安価な政府)的な考え方であり、古くはアダム・スミスなどの古典学派、またハイエクやノージックなどがあたる。つまりかつての社会主義のように不平等の是正が時に個人の自由に著しい侵害(モラルハザードなど)をもたらすと警告する。

キャピタリズム〜マネーは踊る〜

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆☆ おすすめ度☆☆☆☆☆」

 許せ。持病に保険は使えない。治療費は自己負担だ!
 
 『アホでマヌケなアメリカ白人』のマイケル・ムーア監督のアメリカの経済体制を批判したドキュメンタリー映画。一言でまとめれば、資本主義は非民主主義だ!キリスト教の精神でも極悪非道!という内容。
 これは、2013年最後にレンタル店で借りて見て、もっとも衝撃を受け、即DVDを購入した映画で、『ゼロ・グラビティ』は怖いといっても自分が宇宙飛行士になる確率はほぼ0だし、これまでのマイケル・ムーア作品も、どれも対岸の火事というか。
 だから「可愛そうだなあ、大変だなあ。でもわたしはげんきです。」で済んでいた。『ボーリング・フォー・コロンバイン』※銃が規制されてる『華氏911』※そんなイスラム圏の人たちの反感買ってない『シッコ』※一応国民保険制度大丈夫・・・でも今回は他人事じゃいられない。この記事を読んでくれている人(特に社会人になる前の若者)。この映画は絶対見てほしい。そして是非考えて欲しい。

 国家の90%以上の富を1%の富裕層が独占しちゃっている社会状況を、シティグループは富裕層向けの極秘文書で「プルトノミー」と名づけたらしいんだけど、日本もこのまま新自由主義的な改革が進めば、間違いなくこの構造になるし、実際半分くらいなりかかっている気もする。
 幸いなのは、まだ社会保障制度が生きていることと、投資銀行のようなハイリスクハイリターンの不健全な金融システムが日本には存在しないという点。ただ、今後若い層を中心に、自由主義のが好き勝手できていいじゃん!て感じになると、ネットで鬱憤を晴らす若者の味方の安倍さんは、きっと自由のために戦ってくれるので、今のうちにプルトノミー社会に備えていったほうがいいのかもしれない。

 この映画で取り上げられるプルトノミーという社会構造は、実際おととしに自分の作品(『CRIMSON WING』)にも取り上げ批判していたのだけど、今回経済学をちゃんと学んでから、もう一度考えると本当にシャレにならないように思えてくる。
 あの作品では、題材となった中国でも問題になっているシャドーバンキング、いわゆる投資銀行は描かなかったし、サブプライムローンの巧妙な仕掛けも今思えばカットしたのはもったいなかった。まあ、当初は漫画の脚本として書いていたから、そこまで突っ込んだ話はストーリーのテンポ上不要だったんだけど、今回は小説ということで、ここら辺が描けると思うので、そこらへんの問題は小説を読んで欲しい。

 じゃあ、この記事では何を書こうかっていうと、アメリカの経済がどのように変遷していったかをまとめて、ムーア監督が批判するネオリベ、新古典学派、マネタリズムは、実際どこにメリットがあってここまで支持されて、どこがいけないのか、また、ムーア監督はやっぱり民主党支持者っぽいのだけど、オバマさんがやろうとしているケインズ的な手法はなぜ第二次大戦後破棄されちゃったのか、どこに問題があったのだろうか、さらになぜムーア監督は、資本主義という経済的な議論に、かなりの尺をさいてキリスト教の教えを持ち込んだのか。そこらへんをちょっと。

 そもそも経済学ってどういう学問なのかというと、どの本にも書いてあるのは「経済学は限られた資源や富をどうやって公平、適切に分配するか、それを研究する学問」だという。
 したがって経済学には明確な大義名分、目的があるということになる。エコノミストは金儲けの仕方を研究しているわけじゃないのだ!バーン!
 となれば、アメリカの経済体制は全然富が公平に分配されていないわけだから、そう言う意味でも大失敗、極悪非道と言われても仕方がないやってなる。

 慶応大学経済学部卒の池上さんいわく、もともと「経済」とは「エコノミー」を指し示す和訳語だけれど、なんでそんな字を明治時代にあてたのかというと、中国の「経世済民」・・・世を治めて民を救うという言葉がいいやってことになったらしい。つまり経済とは民を救うものなのだ。
 ただ、もうひとつ廃れちゃった方で「理財」って言葉があって、個人的にはこっちの方が経済学にはぴったりな言葉って気もする。材のことわり、だからね。
 ちなみに本家エコノミーの語源はギリシャ語の「家計」だ。よってこの、家計という意味の言葉に、経済を当てた人は相当意識が高かった気がする。

 給料は平等。経営方針は全員で決める。このやり方で、より利益を上げるなんて…やるじゃないか。

 さて、ムーア監督がなぜオバマ以前のアメリカの経済システムを徹底的に批判するのかは、明白だ。経済がもたらす結果が不平等じゃダメなのだ。経済学の本って面白くて、本によっては新古典学派を持ち上げ、本によってはケインズ経済学を持ち上げている。
 つまりプロのあいだでも議論が分かれている状態。でもじゃあなんで、ここまで社会を不平等にした新古典学派がアメリカや日本でも支持されるようになったのか、自ら進んでこんな世の中を望む人はそうそういない。小泉さんやレーガン、ブッシュ大統領を支持したオレ達国民は(私はしてないけどw)、どういう了見で新古典学派の小さな政府がいいと思ったのだろう。

 まず、新古典学派は、国民にとやかく干渉せずに自由にやらせたほうがいいという立場を取る。これは親や学校にいろいろうるさいこと言われた反抗期の若者及び大きな子どもにはウケがいい。しかし、自由にやってもいいっていうことは裏返すと、その尻拭いもほかの人のせいにしないで自己責任で自分でやってくれよ、ということになる。
 子どもが子どもたる所以は、権利だけを主張して、自分に都合の悪い義務や責任を人に擦り付ける点で、煎じ詰めれば、甘ったれってことなんだろうけれど、新古典学派は、そう言う意味で、人間は、もっと大人――つまり自立意識が高いものだ、という人間観の前提があるように思える。だからこそ徹底的に自由にしたほうが、自分の才能を活かしてみんなが活躍ができる、と。
 その上、フリーライダーを阻止するためには、政府のセーフティネットもとっぱらっちゃって、グダグダしてたら本当に死んじゃうようにすれば、ちゃんと働いてくれるだろうと言うわけだ。

 新古典学派、とりわけシカゴ学派という勢力を作った中心人物にフリードマンという人がいる。名前がいいよねww「フリー」ドマンだもんw
 この人は、とにかく独創的で面白いアイディアをバンバン考える人で、もうぶっちゃけお前はSF作家か、って言うくらい次々に革新的な提案をした。その魅力にアメリカ人は惚れちゃったんだろう。優れたSFはリアルと区別がつかない・・・はクラークじゃなくて、私が今思いついた言葉だけど、すなわち天才フリードマンはSF的なアイディアで現実を変えてしまったのだ。

 フリードマンは、国家が行う事業をガンガン民間に任せれば社会はうまくいくと考えた。もう利権の温床になっちゃっていて不平等だから、本当にそのビジネスの才能があるやつに開放したほうがいい、と。
 でもどいつがその才能に恵まれているかよくわからないから、とりあえず医師免許とか教員免許とかもなくしちゃって、やりたい人みんなにやらせて腕のいいやつを生き残らせればいい、そんなダーウィニズムを繰り出したわけ。公益のために下手な商売をする奴は潰れちゃったほうがいいんだ、ということ。

 もっと言えば国家が定める最低賃金もいらないし、社会保障制度も民間に任せちゃえ、公営の道路もニューディール政策で十分もう作っただろ、いらねえ。みたいな徹底的な夜警国家構想がある。国は国防と通貨供給量(マネーサプライ)の安定さえしてればいいよってw
 こうやって考えるとすごいラディカルな考えに思えるけれど、資本主義ってある意味公平な投票制度とも言える。政治家に投票するよりも、もっと直接的で効果的な選択方法が、購入というわけだ。

 そもそも資本主事とは社会がどんな商品を求めているか意思表示するしくみだ。

 だから、発展型の国家は政府主導で公共事業をやって、ガンガン経済成長させればいいけれど、ある程度国が発展し豊かになっちゃった場合は、政府は自分たちの仕事を民間企業に任せて見守っていればいい。これが国家の正しい発展の仕組みなんだという。
 子どもを独り立ちさせるためには親はいつまでも子どもの面倒を見ていちゃおせっかいっていう話に近い。
 もともとアメリカってボストン茶会事件を見ればわかるように、上からあれこれ言われて自由を規制されるのをスゴイ嫌う。セルフエスティームが強いんだ。

 この映画のラストで出てくるルーズベルト大統領はニューディール政策(大規模な公共事業で失業者を減らす)で、世界恐慌や第二次大戦を乗り切ったんだけど、この政策の中心概念が、国家主導で安定した社会を築いていこうというケインズの考え方なんだ。
 ルーズベルト大統領の死後、大統領の側近だったスタッフは、敗戦国の戦後処理を担当し、皮肉にもアメリカに作れなかった手厚い社会保障システムを日本やドイツに構築したという。

 そんなムーア監督が支持するルーズベルト大統領の経済政策を、なぜアメリカは自ら捨ててしまったのか?これもアメリカ人みんながアホでマヌケだからってわけじゃない。一応ちゃんとした事情がある。
 つまり、さっきも言ったようにある程度国家が発展し切っちゃうと、ケインズのやり方ではインフレが発生してしまうのだ。
 失業者を減らすために公共事業といっても、シムシティ系のゲームの末期のように、もうどこもかしこも開発され尽くされてしまえば、大規模な公共事業をやる意味も余地もなくなってしまう。
 こうなると、失業問題の処方箋としてはほとんど効果がないし、労働者の給料を維持するためには、商品の値上げをメーカーはするしかないから、物価はどんどん高くなっていってしまう。失業率とインフレ率はトレードオフ、シーソーの関係になっているのだ(フィリップス曲線)。

 また、ケインジアンは、景気が悪くなったらその場で政府が財政出動をかける「裁量主義」という戦略を取る。つまり、景気が悪くなるたびに政府は赤字国債(これ考えたのケインズ)を発行して、公共事業を増やしたり、ヤバそうな企業に財政投融資をするわけ。
 そうなると問題になってくるのが、赤字国債が増殖するアメーバのように増大していっちゃうということと、政治家の利権発生。
 つまりゼネコンに応援されている政治家は、有権者のためにも正直もう開発するところねえだろ…と思いながらも公共事業を打ち切ることができない。そういった国家規模の「付き合い」によって国の借金はえらいところまで行ってしまった。
 最近姿を見せなくなっちゃったけれど、小沢一郎さんはこの状況を「だめだこりゃ」と思って、94年に衆議院選挙の中選挙区を小選挙区制に変えて(政治改革四法)、族議員と圧力団体のしがらみを断ち切ったわけで、その恩恵によって小泉さんは「自民党をぶっ壊す」ことができ、郵政民営化が実現したわけだ。

 さて、フリードマンの新自由主義やマネタリズム、ケインズの裁量主義のいいところと問題点をそれぞれさらってみた。大学のマクロ経済学で、段々ついていけなくなった私の気持ちがちょっとわかるよね?どっちがいいかがさっぱりわからん。
 ただ昨夜、私、この相反する二つの経済政策における共通する問題点をひとつ見つけたんだ。それはモラルハザードなんだよ。つまりケインズは政治家、フリードマンは企業のCEOが公共の福祉を忘れて身勝手な戦略を取ると、社会はめちゃくちゃになってしまうという。
 これはマルクス経済学も一緒だろう。社会主義という素晴らしい理想がなぜリアルでは独裁国家を産んじゃったのか、これも大統領や書記長のモラルハザードにほかならない。
 それを踏まえれば、古き良きアメリカを愛するマイケル・ムーア監督が、なぜ経済問題を取り上げた映画の中核にキリスト教を置いたのかが分かるだろう。

 子どもの頃、僕は聖職者に憧れた。シャレた祭服が着られて、騎士会がお供につくからじゃない。尼僧が優しくしてくれたからでもない。憧れたのは公民権運動への関わりや反戦運動、貧しきものに身を捧げる姿だ。
 彼らはイエスの言葉を教えてくれた。“人は最も貧しき者への接し方で裁かれる”

まだあけてない

 あけましておめでとうございます・・・いや、私の中じゃ、まだ2013年だから。2013年13月がはじまっただけだから!
 しかし思い返せば、2013年ってあんまり印象に残ってないんだよな~・・・なにがあったっけ?なんか、なにもかもが不完全燃焼で終わってしまった感じ。
 去年の同じ時期の記事を見ると2012年はどうやら刺激的で楽しかったらしい。確かにあの頃は本当にいろいろ刺激的だったわ。だが、2013年、お前はダメだ。
 趣味も仕事ももっと上手にやれたんじゃないかって凹んでくる。そんな自分の力不足を痛感する年だったな。何度くじけそうになったことか。でも受験生のみなさんは、これからが勝負どころなので私もウジウジしてちゃダメだ。
 とにかく2013年13月に向けて、2013年1~12月に一体何があったか振り返ってみよう。反省会開始!

春部門
・新聞にハマっていたらしい。
・29歳になった。もうだめだ・・・私もついに再来月に30代。いい加減大人として、社会人としての自覚を持たないと、きっと死ぬまで持たないぞ。
・美術の教員をはじめる。理論(美術の教育学的意義)は大学時代研究したが、現場経験がないので、いい感じに自分の力不足を痛感。誰も美術になんか興味ねえよと、大学時代うそぶいていたが、その直感は正しかったと確信する。
・辛かったのが、子どもの興味うんぬん以上に、授業時数が少なすぎること。一年間の授業時数を合計しても二日もない。よく漫画を描いたことない人が「あんなもん落書きみたいなもんでちゃちゃっと数分で書いちゃうんでしょ?」って言うことがあるが、まさにそれ。絵を仕上げるのにどれだけのエネルギーと時間を消費するのか、その実態が共有されてないのだろう。
・とはいえ、学校は他のすべての教科と決まったパイ(時数)を分けあっているので、中教審などの政治的な駆け引きで各教科の時数配分が決まってしまう。美術科が消滅しなかっただけマシと考えるべきなのだろう。
・『80日間宇宙一周』の脚本が完結。これは割と頑張ったと思う。よくできた。007もよく見たし。
・パキPさんと葛生で遊んだ。これは楽しかったな。春部門のベスト1かもしれん。

夏部門
・教員採用試験の現実逃避で漫画がものすごい進んだ。で採用試験に落ちた。
・星のカービィを数年ぶりに買う。というかゲーム機を数年ぶりに買う。んで遊んだ。で採用試験に落ちた。
・『風立ちぬ』を見て、いろいろ世間の評価に違和感を感じる。表現ってなんなんだろう。送り手のメッセージが全然誤読されてもOKなのか?なら受け手のことなど何も考慮せずに作っていればいいのか?
・教員採用試験も課題が相変わらず抽象的で意味がわからない。で落ちた。

秋部門
・そんな感じで表現することに対してモチベーションが下がる。自分の美術の才能(んなもんは元々ないって分かっていたけど)に限界を感じ、理科と社会の教員免許を取ることを決意。で、最初は理科の勉強をしていたが、理科は実験などの関係で秋からは履修できないって言われたので、社会をとることに。
・また、『80日間宇宙一周』を小説化する。美術がダメなら、と活字に挑戦してみたくなったらしい。これがまた、漫画とは勝手が違って新鮮&誤字脱字チェックが地獄だった。
・そんな感じでウジウジしていたが、『ミニオン危機一発』に救われる。私が精神的に追い込まれている時に、いいタイミングで助けてくれるのがミニオンだよな~

冬部門
・『まどか☆マギカ』を見て凹む。というか寝てしまったという衝撃。心底、こういうサブカルが楽しめなくなっているという危機。ドキュメンタリーの方が面白く感じちゃうという。
・『地獄の黙示録』『アミスタッド』『華麗なるギャッツビー』など洋画の方は、いろいろ素晴らしい出会いがあった。
・11月、大学からや~っと社会のテキストが届く。入学手続きの時にいろいろとわちゃわちゃして、大学がなかなかテキストを送ってくれなかった。うちの自治体はこの単位分で免許が取れるって言っても、もう一度教育委員会へ行け、と信じてくれない。でも結局送ってくれた。
・そして映画が学割で見れるようになった。ちょと嬉しい。
佐倉統さん。

 そして今に至る。

 ・・・ん~やはり教員採用試験に落ちたってのが尾を引いているのだろうか。当時はそんなに凹まなかった気もするんだけど。実際に筆記試験も悪くなかったし。
 でも美術の採用試験って言ってみれば小選挙区制の選挙と同じで、いくら点数が良くても落選しちゃったらプータロだしね。そこでせめて中選挙区くらいの別の教科に乗り換えたわけだ。この判断は間違ってないと思う。
 しかし意外なのは、大学の通信教育で社会の勉強をし始めたのは11月だったって事だよね。私はもっと遠い昔のことだと思ってた。つまり私はたった2ヶ月で、ほとんどの科目のレポートを驚異的な速度であげていたことになる。
 大学から教材が送られてきたときは、辞書みたいに分厚い本がどっさり届いて、これは厳しいぞ!と思っていたのに、いざやってみると順調すぎるほどこなしていたんだね。そんなハイペースで消化した実感がないのだけど。
 というわけで2014年・・・じゃなかった13月は、残りの単位をとってしまおうと。それは法学と社会学、あとは人文地理と自然地理と地歴教育法なんだけど、高校の公民の免許を取るだけなら、法学と社会学で済んじゃうんだよね。
 極力取る単位は減らしたいので(一単位当たり8千円かかる)、正月休みが終わったら、一番お得な取得の仕方を教育委員会と大学に電話で尋ねることにする。
 創作よりも、大学の勉強を優先しちゃっているあたりがちょっと後ろめたいのだけど、今学んでいることはきっと創作にも役に立つと思っているので。しかし、この後に理科も履修しちゃうとなると、いよいよ漫画が進まない気がするからな~(^_^;)どうしよう、理科。

経済学覚え書き⑤

 すでに経済学はマクロ経済の方に突入しているのですが、ミクロ経済学の知識がだんだん炭酸のように抜けてきたので、ここで用語を確認&メモ。
 クリスマスであろうと勉強をしているオレ、えらいぞ。恋愛なんてゼロサムゲームさ!(やさぐれた)

マーシャルの外部性
産業が特定の地域に集中すると、分業や相乗効果によって各部門(組立部門とか部品製造とか)のコストが下がる。また、その産業全体の生産が大きくなるほど、ここの企業のコストも下がっていく。そういった現象を指す。
つまりネットワークができちゃうと強いということ。

共有地(コモンズ)の悲劇
ゲーム理論の考え方で、漁師やタクシー運転手など、営業エリアを複数のプレイヤーが共有している場合、あるプレイヤーが利己的に動いて、たくさん利益を得れば得る程、他のプレイヤーの利益がとられてしまうことを言う。生物学者ギャレット・ハーディンが提唱。

ピグー税
外部効果による市場の失敗を是正するために導入される税金のこと。市場の失敗の代表格である環境問題を経済学的に研究したアーサー・セシル・ピグーにちなむ。ガソリン税や炭素税などが有名。
こういった外部効果が存在する場合、政府の介入なしには最適な資源配分はできない。

公共財の性質
①非競合性
テレビ番組や公園など、複数の人が同時に消費できるということ。
通常の財には競合性がある。例えばAさんがラーメンを消費したら(食べちゃったら)、Bさんはそのラーメンを消費することができない。
②排除不可能性
サービスに対する対価を支払っていない人を、その消費から排除することができないということ。フリーライダーOK!

コースの定理
環境破壊や騒音は市場取引なしで、周りに影響を与える外部効果で、それが市場の失敗をもたらす。市場の失敗が発生している場合、その当事者(権利関係)が明確で、メリットデメリットの情報が対立勢力に対称的に伝わっている場合、どちらに有利な展開になっても結果が同じになることを言う。
例えば、工場の騒音問題の場合、裁判所が騒音に悩む近隣住民の訴えを認めた場合(環境権裁判)、企業側は工場を操業を完全にやめるよりは、防音設備を整えたほうが安いので、防音対策が取られる。
逆に裁判所が近隣住民の訴えを退けた場合も、住民はみんなで別の場所へ引っ越すよりは、お金を出し合って防音設備を整えたほうが安いので、やっぱり防音対策が取られる。
ちなみにコースというのは提唱した学者の名前。

費用逓減産業
逓減(ていげん)とは、どんどん減っていく、という意味。
平均費用(AC)が右下がりのグラフでは、限界費用よりも平均費用の方が高くなっている。よってその商品やサービスの値段を限界費用と同じ金額に設定すると、資源配分上は最も望ましいのだが(限界費用価格形成原理)、企業側からしてみれば(平均費用-価格)分が損失となって発生してしまう。
これは初期の設備投資がものすごく高くつく(=固定費用が高額な)産業で発生する。
こういう産業や研究の場合、政府がある程度補助金を出してやらないと、誰も手をつけなくなる可能性がある。2位じゃダメなんですか!?
どんな需要の度合いの消費者にも、単一の価格で売らなければならない企業の辛いところ(その人の欲しい度合いに応じて、値段を高く売ることができない)。

金融工学
不確実性のある経済の動きを、確率理論とコンピューターシミュレーションで予測し、金融市場を分析、より望ましい資産運用の方法を導き出す学問。
ファイナンス理論っていうやつで、たしかハーバード大学の理系学生が小遣い稼ぎでやりだしたんだっけか。でも私が思うに、マクロ経済の流れなんてカオス系だと思うから、やっぱり予測不可能性が起きて、サブプライムショックで大損失を出した。ギャンブラーの破滅!

危険分散
どんな種類の不幸が起きても、全財産を失うことがないように、いろんなところに財産を分散させること。保険や複数の資産購入など(資産の分割投資)。一度にすべてのタイプの危険がやってくるということは、あまりないので・・・あ、でも地震保険は地震による火災には対応するのかとかいろいろありそう(^_^;)なんにせよ、リスクヘッジ(危険回避)の知恵。
ひとつの道に全財産をかけるのは、自殺行為なのだ。ギャンブラーの破滅!(2回目)

モラルハザード
困った人の公共の利益を害する自分勝手な行動のこと。救急車をタクシーがわりに使っちゃう人が増えると、本当に大怪我している人が乗る救急車が出払っちゃう場合がある。
こういう人たちを対処するために、例えば救急車を有料にしたりするというアイディアもある。踏んだり蹴ったりだけど、病気や怪我をしている人は有料でも乗りたいだろうし(死んじゃうから)、あとで病院側がチェックして本当に必要な人が使った場合は、料金を払い戻したりすればいい・・・ってテキストに書いてあった(^_^;)

コンビニエンスストアの経営
①賃金契約
従業員を本社が雇用し、一定の賃金を支払う方法。直営店。

②利益分割方式
店舗の利益の一定“割合”をフランチャイズ料として本社に支払う方法。
どんなに大儲けしても、その利益の割合で取られるので、経営者のモチベーションは低いが、収益が出なかった場合のリスクも低い。
地主と小作人の契約もこの場合が多い(刈分け小作)。

③定額フランチャイズ方式
店舗の利益とは関係なく、毎月一定のフランチャイズ料を本社に支払う方法。
徳川吉宗みたいに、定額を毎月取られるので、収益が出なかった場合のリスクは高いが、大儲けした時の利益もでかいので、経営者のモチベーションも高い。

グレシャムの法則
質の悪い商品が市場に紛れ込むことで(レモン市場)、質の良い商品の取引が阻害されること。悪貨は良貨を駆逐する。この疑心暗鬼な現象を逆選択という。
レモン市場は、買い手がどの商品がポンコツなのかなかなか分からないが、売り手の方がどれレモンか把握している場合が多いので、情報が非対称的である。アンフェア!
これを解消するために、第三者のディーラーが商品の品質を保証したりする、中古車市場とか。
ムーディーズやスタンダード&プアーズといった格付け機関もそうだけど、意外と役に立たなかったりする。正確に格付けを行うのが難しい。
ちなみにグレシャムとはエリザベス女王時代のイギリス王室金融代理人。

スペンスのシグナル理論
売り手が、買い手にその商品の品質が高いことを伝えるためにシグナルを出すという考え方。
例えば巨額な宣伝費を払ってPRをしている場合、売り手はその商品の品質に絶対の自信を持っていることが多い。ダメな商品を詐欺的に売るために、莫大な予算をキャンペーンには使わないだろうから、このシグナルは買い手にとっては割と信頼性が高くなる。
他にも立派な店構えの店舗は、詐欺的な商売をしている可能性は低い。なぜなら、詐欺で得られる一時的な利益よりも、店をたたむ損失の方が高くつくから。
新入社員を人事部が採用する際に、その人の学歴のデータを用いるのも、経済学的なシグナルと言える。能力が高い人は、少ないリスクで学歴の高い大学を卒業するだろうから、わりと選別の目安にはなる。

自己選択メカニズム
プリンターの本体は安いのに、なんでインクはあんな高いんだ!って思っている人は多いと思うけど(私だ。特にブラックのとばっちりでイエローが犠牲になるのやめて)、あの価格設定はすごい意図的で、ああすることでヘビーユーザーとライトユーザーを選別しているという(=たくさん利用する人からたくさんお金をいただく)。
このように巧妙に料金体系を設定することで、見えなかった消費者集団の実態を掴むメカニズムを自己選択メカニズムという。

プリンシパル・エージェント問題(エージェンシー・スラック)
『海賊の経済学』で出てきた、アレ。プリンシパル(依頼人)とエージェント(代理人)がいた時に、どうやってエージェントが金だけふんだくってサボらないかドキドキする問題。
モラルハザードをどのように防止するか、という問題とも言える。

限界代替率逓減の法則
本当はうどんが食べたかったんだけど、うどんがないなら蕎麦でいいやって時、蕎麦はうどんの代替可能物である。こんなもんその日の気分によるんだけれど、もしこの時、うどんの評価が蕎麦より高かった時、うどんが食えないせつなさを蕎麦何倍分で補えるかというモデルを立てる。
この割合が限界代替率。この大きさは財1と財2の綱引きになっている無差別曲線の傾きによって表される。
例えば、うどんをたくさん食べると、いくらうどん好きでも徐々に「うどんもういいや」ってなっていくので、蕎麦で換算したうどんの評価は下がっていく。これを限界代替率逓減の法則と言う。

下級財
収入がアップすると買わなくなるようなものやサービス。
良心的な低価格の学生食堂とかに、港区のセレブはなかなか入らないと思う。

奢侈品
これ絶対読めないよね!「しゃしひん」って読むらしい。このテキストルビ振らない主義なんだよなあ・・・(^_^;)趣味や娯楽に関係するものやサービス。いわゆる贅沢品。
一般的に収入が増えると、それに応じて注がれる金額が増えていく。年収の高い人って高い腕時計とか高級車とか買うけれど、あれってみんながみんな別に成金とかじゃなくて、経理士さんとかに税金対策で買いなさいって言われたりしてるんだよね。

必需品
生きていくためにある程度は絶対に必要なもの。例えば食費はいくら金持ちになっても、そこまで増額はしないので(収入が高いほど大食いにはならない)、家計に占める食費の割合で、その人の豊かさを調べることができる。これがかの有名なエンゲル係数。

代替効果
価格変化から、消費者の所得の変化を除外した相対価格のみの影響のこと。財1が値上がりしたことを受けて、代わりに財2(財1の代替財)が消費されるようになった場合を考える。

所得効果
価格の変化によって相対的に所得も変化し(値上がり=所得ダウン、値下がり=所得アップ)、それが消費行動に影響を与えること。

スルツキー分解
消費現象を所得効果と代替効果に分けて分析すること。

ゼロ・グラビティ

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆ 3D酔い注意☆☆☆☆☆」

 結果はどうあれ、これは最高の旅よ。

 見た人こぞって大絶賛&「映画館で見ろ」の『ゼログラビティ』をやっと鑑賞。
 せっかくJAXAや若田さんたちが安心!安全!の楽しい宇宙旅行を啓蒙しているっていうのに、ワーナーブロスはなんて映画を撮ってしまったのでしょうか。個人的には『ジュラシック・パーク』以来の純度100%のサスペンス映画!こういう映画久々に見たなあ。スピ監督最近こういう怖い映画撮らないから。
 そんなわけで、まあ~恐ろしい映画です。宇宙に漂流って言ったって、地球の軌道上をちょろっと船外活動しただけなんだけど、宇宙のどこであれ人間は裸一貫じゃ生きられないわけで、結局果てしない宇宙が舞台でありながら、すっごい息苦しい閉鎖的な感覚を味わえます。
 『ショーシャンクの空に』で囚人が「太平洋?おっかねえよ、そんなでっかいもんは」っていうセリフがあったけど、「周回軌道?おっかねえよ、そんなでっかいもんは」って感じです。

 まあ、もともと私は飛行機にすら乗れない臆病者・・・というかテクノロジーに意外と不信を持っているので、こんな映画見なくても、宇宙がいかに怖いのかを『アルフ』で学んだし(「宇宙?何もなくて・・・寒いのよ。」のセリフ)、なによりいま執筆している作品が宇宙を題材にしているから、取材しながら「こんなとこ行きたくないよな~」って思ってました。
 宇宙って美しいんだけど、圧倒的な虚無なんだよね。人間以上の神の領域というか。あ、ちょっと生命の皆さんは立ち入り禁止なんで・・・感がw
 とはいえ、この映画の大惨事の原因は宇宙そのものにあるんじゃなくて、『ジュラシック・パーク』同様、典型的な人災で(ロシアは反省するように)、超高速で飛んでくる宇宙ゴミがとにかく怖い。もう宇宙の暴走族ですよ。奴らの登場シーンはパラリヤパラリヤ~が脳内で再生されてしまった。すっごい元気よく飛んでくるんだ、またwで、スペースシャトルも国際宇宙ステーションもまるで紙袋のようにグシャグシャに叩き潰しちゃうからね。

 さらには、宇宙じゃないと絶対お目にかかれない死体とか出てくるし(アンドロメダ病原体以来の衝撃映像)、理科の授業で見せたら、作用反作用の法則と慣性の法則は、いろんなトラウマと共にばっちり植え付けることができると思う(^_^;)教材用として買っちゃおうかしら。つーか無重力だと火ってああやって燃えるんだね。
 そんな感じで、宇宙の描写が、実際どこまで正しいかは若田さんや毛利さんに聞くとして、とにかくリアルなんだけれど、この映画で興味深いのは、恐怖を与える効果を最も担っていたのが、宇宙では聞こえないはずの「音」であったということ。
 ホラーって結局、音響がものを言うところあるじゃないですか。実際スピ監督の『宇宙戦争』もテレビ放送よりも映画館で見たほうが音がすごいから、3倍増しで怖かったし(初見ってのもあったけれど)。だから、この映画は無重力映像体験が取り沙汰されているけれど、音の使い方がとにかくうまいなあって思いました。

 晴れときどき、衛星の破片ね。

 宇宙ゴミで思い出すのが、ピクサーアニメの『WALL・E』だけれど、『WALL・E』と『ゼログラビティ』の共通点って、消火器で宇宙遊泳可能ってところだよね。ジョージ・クルーニーも船外活動の時、無駄に宇宙遊泳で遊んでないで、消火器の一つや二つ確保してれば、エネルギー切れにならなかったのになw
 んで、違うところ。宇宙船で宇宙ゴミを吹っ飛ばせない。この宇宙ゴミの問題は、70年代くらいから言われていて、宇宙から帰ってきた宇宙船の船体にボコボコの傷がついていたことから問題視され始めた。今回の映画は、爆発した衛星の破片なわけだから、相対的な速度が半端なく、しかもサイズもでかいので、あんなのが実際に増えちゃったら、もはや人類は地球から宇宙へ出れなくなるんじゃないか?って気もするんだけど・・・まあ、別にほとんどの人は出たくないと思うけど(この映画でそんな人は確実に増えた)。
 ただピンボールのように連鎖反応をした宇宙ゴミが他の衛星やステーションを破壊しちゃうのははた迷惑な話だ。ロシアは猛省しなさい!
 でさ、宇宙ゴミにも何かいいところはないものかなあって帰りに考えてみたんだ。そして思いついた。未来、宇宙から異星人が侵略してきて、いざ宇宙船を地球へ着陸させようとしたとき、高速移動する宇宙ゴミが船にぶつかって「げっなんだこれ!?バリヤーか!?フフフやるな地球人」って撃退して…くれないね。

 しかし、この映画って大作映画には珍しく、登場人物もほとんど二人しかいないんだけど、サンドラ・ブロック演じる医学博士の心理描写が、まるで『2001年宇宙の旅』のデビット・ボーマン船長のごとく、丁寧かつ哲学的に描かれているということ。インナースペースとはよく言ったもんだ。
 サンドラ・ブロックが地球でどういう生活を送っていたのか、そういうシーンは直接的には描かれず、宇宙でのジョージ・クルーニーとの会話で触れられるだけなんだけど(彼女の技術のくだりも完全なマクガフィン)、その断片的な情報の散りばめ方が上手で、彼女が自分の人生を虚無的に送っていたことがわかる。彼女を愛してくれる人は、もう地球にはいないのだ。

 誰か空を見上げて、君を想っている人はいるのかい。

 でも、生還が絶望的な宇宙で、何度も死ぬ思いをしながら驚異的な悪運で(本当どんくさいんだ、この人w普通なら5回死んでます)命をつなげた彼女は、徐々に自分の生き方を悔い改め、過去を受け入れ、神に祈り、時には犬のモノマネをし、自分の人生を肯定できるようになる。そう言う意味で、本当哲学的な寓話になってるんだよね。
 自分の人生、とりわけ死というのは、いくら人のせいが得意な人でも、他の人に押し付けることはできない。彼女を最後まで支えてくれたジョージ・クルーニーが、またかっこいいんだけど、クヨクヨして自分をいくら哀れんでいても、悲しい経験や過去はどうにもならないんだ。どこかで、そんな自分を受け入れるしかない。
 『あなたが死んだら私は悲しい』という、去年のクリスマスに届いた自殺の本では、突然末期的な病気を宣告され、余命もない人がどうやって死と向き合うか、受け入れるかについて、このように書いてある。それを引用して、今回は筆を置いてみたい。

 私の友人の女性が重い病気にかかりました。子育ても一段落し、仕事に復帰した日に、自分がいのちに関わる病気にかかっていることを知ります。彼女はもがき苦しみます。体の痛み、治療の困難さと、そして自分がなぜこんな病気になったのかという思いに苦しみました。妻として母として職業人として、さあこれからというときにになぜこんなことになったのかと。
 しかし、クリスチャンであるこの女性は、なぜ病気になったのかという疑問から抜け出し、何のために病気になったのかと考え始めます。そして、闘病生活の中での思いを、当時ようやく普及し始めた電子メールをとおして人々に伝えました。彼女は最期まで愛と感謝を人々に伝え続けたのです。私自身を含めて、どれほど多くの人が彼女から励まされたことでしょうか。
 「なぜ」という疑問から、「何のために」という積極的思考へと発想を変えることで、彼女は自分の人生に意味を見出したのです。
                    ――『あなたが死んだら私は悲しい』101ページ
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