中学校の歴史では「サラエボ事件で起こった」くらいしか書かれてないワールドウォー1ですが、改めて勃発してしまった事情を調べてみると、長編少女漫画レベルに外交関係がすんごい複雑!
もうヨーロッパ全土がアウトレイジビヨンドになってて、昨日の友は今日の敵当たり前。5~10年スパンで味方が敵になり、敵が味方になってて、すっごいややこしい。全員敵国――本当に悪い国はどこだ!?
そこで、当時の流動的かつ不安定な世界情勢をせっかく調べたので、ここに書き残しておこうと思います。
しかし思い返せばドイツって私、自分の創作物で取り上げたことないなあ。様々な国籍の人が出てくる『ソニックブレイド』にもドイツ人は出てこないし、世界各国を調べた・・・つもりの『80日間宇宙一周』でもドイツっぽい惑星は出なかった。
意外とこの時代のドイツってドイツ艦隊協会とか作っててミリタリーマニアにはたまらない状況だったので(その名もズバリ、ミリタリズム※マジです)、80日~の番外編として金星かなんかをドイツにして書いてみるってのもありだな。本当は内惑星は太陽との距離が近すぎて、国家がないって設定だったんだけど(^_^;)
なんでにわかにドイツのことを話しているかというと、もうWW1ってドイツを基準にしなきゃ外交関係とかが整理できなかったんですよ。ドイツというか、ビスマルク首相だよね。あの人のビスマルク体制を押さえることから、はじめよう、と。
でも、今みたいに社会の先行きが不安で、どう考えてもこれからこの国は成長なんてしないよなあって雰囲気で平和が続くのと、WW1開戦前夜みたいに、これから私たちの国はどんどん成長するぞ!って希望に満ち溢れて戦争に突入するのどっちがいいんだろうね・・・絶望の平和か、希望の騒乱か。
ビスマルクは、ドイツの工業化をどんどん推し進めていった人で(産業保護政策)、増大した労働者に対して、社会保障なんかもやっていた(労働者に対するアメとムチ)。社会権といえば、第一次大戦後のドイツのワイマール憲法が出てくるけど、実は19世紀からそれに近いことはやっていたという。
なにしろ社会主義が盛り上がってたし。とはいえビスマルク自身は社会主義者を取り締まっていた。皇帝が狙撃されたりしたから。あれ、日本でもこんな事件あったよね。
この頃のドイツ帝国のライバルといったら、もう、フランスって考えていいと思う。ドイツがまだプロイセンだった頃、フランスとは戦争をしており(普仏戦争)、そこで敗北を味わったフランスはドイツに対してリベンジに燃えていた・・・
その恨みは凄まじく、あまりにドイツにムカついてクーデター寸前までになったらしい(ブーランジェ事件)。なによりも、ドイツとフランスはアルザス・ロレーヌ地方という領土問題があって、フランスはとにかくここを奪い返したかった。
こういう状況で必ず起きるのが、いじめの王道仲間はずれ。ドイツはフランスを孤立させるために、アフリカの植民地問題でフランスとギクシャクしていたイギリスと友好を結ぶ。
イギリスはアフリカを縦断したかったけど、フランスは横断したかったからだ(^_^;)
んで、こっからややこしい。ドイツにとって最悪の状況は、西のフランスと東のロシアを同時に敵にすることだ。こうなっちゃうと、地理的に敵国にはさまれちゃうことになるので、フランスと絶交している以上、ロシアだけは敵に回したくなかった。
そこでビスマルクは1873年に、ロシアとオーストリアとで三帝同盟を結ぶ。この三国の共通点は共に皇帝がいて、社会主義の盛り上がりに強い警戒感を持っている点だ。
しかし、この三帝同盟が、めっちゃきな臭い。そもそもスラブ系のロシアと、ゲルマン系のオーストリアは民族主義的にすごい仲が悪くて、バルカン問題でもめていた。
ドイツはゲルマン民族の国なので、イデオロギー的にはオーストリアと親しいんだけれど、戦略上、オーストリアと敵対するロシアとも友好関係を結ばなければいけなくなった。
ちなみに、この全世界のゲルマン民族よ立ち上がれ!的な思想を、パン=ゲルマン主義といい、ドイツ帝国による世界征服という野望を叶えるために、すっごい軍備を増強させていった。これをミリタリズムという(艦コレやっている人覚えるように)。
ビスマルクは敵対する両国に板挟みになりながらも、誠実なる仲介人を買って出たが、こんな二枚舌がうまくいくはずもなく、お前オーストリア贔屓してるだろ、とロシアに不満を持たれて三帝同盟はわずか5年で崩壊した。
その翌年の1879年、ドイツはオーストリアとの二国で独墺同盟を結び、81年には維持と執念でバルカン問題を調整し、もう一度三帝同盟を復活させる。
1882年には、チュニジアを取られてフランスと仲が悪かったイタリアを仲間に入れて、ドイツ、イタリア、オーストリアの三国同盟を結ぶ。いや~やっと教科書レベルの奴が出てきた!
でも、やっぱりロシアとオーストリアはどうやっても仲良くなれず、二回目の三帝同盟も87年位は崩壊した(今度は6年続いた(^_^;)
もうこうなると、ロシアとオーストリアは絶対に手を組まねえやって思ったドイツは、ロシアとの二国間で87年に再保障条約を結び、なんとかロシアを敵にすることだけは回避しようとした。再保障条約とは、ロシアとオーストリアがバルカン問題で戦争を始めたら、ドイツはどっちの肩も持たないと約束した、すっごい怪しい中立条約だ。
以上のドイツの片岡刑事ばりの駆け引きをビスマルク体制と言う。
しかし事態は急変する。1888年にドイツ皇帝ヴィルヘルム1世が亡くなると、バルカン問題で綱渡りの現状維持をしてきたビスマルクは、ドイツ帝国ガンガンいこうぜ的な新皇帝ヴィルヘルム2世と対立し、失脚。
ロシアとの再保障条約は、どう考えても三国同盟と矛盾するだろという理由で、更新打ち切り。2世は義理堅かったらしい(うそ)。
これを受けて、91年ロシアはフランスと接近(露仏同盟)。ついにビスマルクが最も恐れていた事態、両隣を敵に囲まれることになった(ビスマルク体制崩壊!)。
国家増強を目論むドイツは、友好関係を結んでいたイギリスに対抗して3B政策を実施する。これは坂本先生のクラスのことではなく、ベルリン、ビザンチウム、バグダードの3つのBを鉄道で結ぶもので、イギリスの3C政策の・・・パク・・・パクリだった。
イギリスは、ドイツに危機を感じ、敵の敵は味方的な論理で、1904年アフリカ植民地でもめていたフランスと同盟を結んでしまう(英仏協商)。
さらにその三年後、イギリスはロシアとも接近、英露協商を結ぶ。これは日露戦争で負けちゃって弱体化したロシアがイギリスに交渉を持ちかけて成立したという。
これにより、イギリス、フランス、ロシアの三国のトライアングルが完成し、三国協商となった。
ここまできて、やっと教科書で習う、三国同盟VS三国協商の構図になるんだけど、実は同盟国側のイタリアは第一次世界大戦直前に「未回収のイタリア」問題でオーストリアと関係が悪化し(お前らええかげんにせえよ)、オーストリアと組むくらいならフランスのがマシだってなったので、三国同盟は事実上、ドイツとオーストリアの二国同盟だった。オーストリア人望なかったのかなあ(^_^;)
ドイツ。わたしのたった一人の友達。
キャプテン・フィリップス
2013-12-02 13:11:40 (10 years ago)
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「面白い度☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆ 疲労効果☆☆☆☆☆」
キミは漁師じゃない!キミは漁師じゃない!!
ついに2013年も、残りひと月ですよ・・・ひええ。まあいいや。あのオバマ大統領も絶賛した、ソマリアの海賊によるコンテナ船船長人質事件の映画。イエス・ウィー・パイレーツ。
しっかし、この監督さんの映画は面白いし、取り上げるテーマも好きなんだけど、とにかく観終わったらクタクタになる(^_^;)もう人質から解放されたることフィリップスのごとし。
イラク戦争の大量破壊兵器あんのか疑惑を取り上げた『グリーン・ゾーン』に似ているってのは、なるほど。物語の舞台は違うものの、ポール・グリーングラス監督は勧善懲悪みたいには絶対しない。
前回は、義足のイラク人タクシー運転手が、アメリカの向こう側の世界の代弁者だったが、今回は海賊のリーダー、骸骨男のムセくんがそのポジションで、名優トム・ハンクスと演技の面でもガチンコ勝負!
フィリップス船長とムセ船長、二人のリーダーのギリギリの駆け引きが、クタクタになるまで見られますw
私は10月まで海賊を題材にしていた小説を書いていたんだけど、あれは17世紀あたりのいわゆる海賊黄金時代の海賊の話で、現代の海賊はほとんどノーリサーチだった。
もう電子機器で船を動かす時代なわけで、かつての海賊のイメージとは全然違うだろうなって。
んで、この映画で、そのソマリアの海賊の実情が描かれていて心をグッサリ。ただカラシニコフを持っているってだけで、普通のヤンキーの子達と変わらない。普通のヤンキーの子っていう定義がわからないけど(^_^;)純粋で可愛い面もあるってことね。
ムセ船長もおそらく中学三年生くらいで、あれくらいの年齢の子は、中には、ちょっとヤンチャしたくて深夜にバイク股がったりするんだけど、ムセ船長はそんな軽いノリで、海賊行為をしているわけではない。
これはワンピースじゃねえんだ!
まるで暴走族の背後に暴力団員がいるように、少年海賊の背後にはソマリアの将軍がいる。『ロード・オブ・ウォー』もそうだけど、北アフリカのこういう軍人って、国民を命懸けで守るどころか、とんでもなく残忍なチンピラと一緒で、めちゃめちゃ怖い。
あの漁村?にまともな学校がある感じには思えないし、結局彼らは強欲な大人に酷使されているだけ・・・たいていの場合子供よりも大人の方が一枚も二枚も上手なのだ。
でも、そうなると、ムセ君たちは海賊ではなく、厳密には私掠船ということになる。て、ことは、これは単なる犯罪行為ではなく、もっと大きな国際問題だ。
3万ドルをもらって逃げていればよかったのに・・・
それじゃ足りない。ボスの締め付けが厳しい。
しかし、フィリップス船長はすごいよ。触れ込みでは、仕事に真面目なただの平凡な海運会社の船長って感じだったけど、あの人の機転がなければ、事態はもっとむごいことになっていたと思う。
もちろん事前に危機管理マニュアルとかがあって、いろいろ学んでいたんだろうけれど、それでもマジで海賊が乗り込んできたら、もうパニックで何していいんだかわからなくなっちゃうよな。
自分にはあんな機転は効かせられないからなあ・・・田代船長はあのちびっこギャングに5回は殺されてました・・・orz海運会社にだけは勤めるのやめよう。
最もドキドキしたのは、映画などではお馴染みの「○○のありかを言え。30秒以内に言わなければこいつを撃ち殺す」なんだけど、普通のアクション映画なら、もう全然リラックスで鼻ほじってると思うんだけど、この映画って全編ドキュメンタリータッチで、臨場感すごいから、あの状況がいかに恐ろしいものか一周回って痛感する。
んで、やっぱり船長はお馴染みの「やめろ!部下を撃つなら私を撃て!」というかっこいいことを言うんだけど、あれ、多分、ああいう立場になっちゃったら、あれを言うしか選択肢がないと思うんだよ。
もし、自分の家族や、生徒に銃を向けられたら、やっぱ言っちゃうんじゃないかって。もちろん自分が死んでいいわけないんだけど、つまり、銃を突きつけている少年をある種信頼して、食い止めるしかないよなって。
今の子供には「やるならやってみろ」は絶対言っちゃダメだという。それは今の子達は大人の想像以上にずっとピュアで、人は死んでもテレビゲームのようにリセットされて生き返ると、なんとなくの狭い経験で考えているからだ。
つまり、オレ様化時代の彼らには、世の中には自分の理解が及ばないことがあるという理解が理解できない(しようとしない)。
だから、死も自分の理解できる範囲で矮小化して解釈してしまう。これは怖い。その程度の死の理解では、人を殺すことをためらわないだろう。
戦って死んだらウハウハハーレムだ!って信じる人が、ジハードで無差別自爆テロをやってしまえるように。
しかし、それに疑問を呈した哲学者がいる。ユダヤ人のレヴィナスという人だ。タルムード研究にも熱心だったレヴィナスは、いわゆる自己責任論を「人間の責任というのはそのような対等な関係では推し量れない」と批判し、「人間の顔を見ればわかるように、人間は生まれもって他者を信頼して無防備な状態でいる」と考えた。
顔は傷つきやすく、か弱い、人間の心理を正直に暴露させ、他者にこのように命令している。「汝、殺すなかれ」と。
つまり、人間は相手の顔をずっと見つめながら、その人を殺すことはできない。絶対に目をそらすだろうし、犯罪者がショッカーみたいに自分の顔を隠したり、犠牲者の体をバラバラにしてしまうのもそのためなのかもしれない。
レヴィナスは、人間の顔が発する、この「汝、殺すなかれ」という一方的な命令に応える責任があるという。
その責任とは、非対称なものである。だって、自分は自分、人は人なら、そんな自分とは関わりのないことに対して責任を負う必要はないからだ。レヴィナスの責任とは、ギブアンドテイクではなく、無償の愛なのだ。
ユダヤ人の強制収容所に収容された人たちが、なぜあんな絶望的な状況で自分の人生を投げ出さなかったかというと、それは収容所の外で自分を待ってくれている愛する人への責任があるから。「他者をその死に際して置き去りにしてはならない」のだ。
きっとフィリップス船長は、ムセ君の、その“責任”に賭けたんじゃないだろうか。いくら現代っ子で、ひどい国に生きているからって、彼にも愛する家族や部下の子達がいる。
だから辛抱強く言葉を投げかければ、絶対に通じてくれる。そう信じて「部下を撃つなら私を撃て」と叫んだ。
ムセ君の刑期は33年だという。彼が釈放されたとき、ソマリアは平和な国になっているのだろうか。
最も危険なことは、生きる目的のない若者に銃を与えることだ。(ポール・グリーングラス監督)
キミは漁師じゃない!キミは漁師じゃない!!
ついに2013年も、残りひと月ですよ・・・ひええ。まあいいや。あのオバマ大統領も絶賛した、ソマリアの海賊によるコンテナ船船長人質事件の映画。イエス・ウィー・パイレーツ。
しっかし、この監督さんの映画は面白いし、取り上げるテーマも好きなんだけど、とにかく観終わったらクタクタになる(^_^;)もう人質から解放されたることフィリップスのごとし。
イラク戦争の大量破壊兵器あんのか疑惑を取り上げた『グリーン・ゾーン』に似ているってのは、なるほど。物語の舞台は違うものの、ポール・グリーングラス監督は勧善懲悪みたいには絶対しない。
前回は、義足のイラク人タクシー運転手が、アメリカの向こう側の世界の代弁者だったが、今回は海賊のリーダー、骸骨男のムセくんがそのポジションで、名優トム・ハンクスと演技の面でもガチンコ勝負!
フィリップス船長とムセ船長、二人のリーダーのギリギリの駆け引きが、クタクタになるまで見られますw
私は10月まで海賊を題材にしていた小説を書いていたんだけど、あれは17世紀あたりのいわゆる海賊黄金時代の海賊の話で、現代の海賊はほとんどノーリサーチだった。
もう電子機器で船を動かす時代なわけで、かつての海賊のイメージとは全然違うだろうなって。
んで、この映画で、そのソマリアの海賊の実情が描かれていて心をグッサリ。ただカラシニコフを持っているってだけで、普通のヤンキーの子達と変わらない。普通のヤンキーの子っていう定義がわからないけど(^_^;)純粋で可愛い面もあるってことね。
ムセ船長もおそらく中学三年生くらいで、あれくらいの年齢の子は、中には、ちょっとヤンチャしたくて深夜にバイク股がったりするんだけど、ムセ船長はそんな軽いノリで、海賊行為をしているわけではない。
これはワンピースじゃねえんだ!
まるで暴走族の背後に暴力団員がいるように、少年海賊の背後にはソマリアの将軍がいる。『ロード・オブ・ウォー』もそうだけど、北アフリカのこういう軍人って、国民を命懸けで守るどころか、とんでもなく残忍なチンピラと一緒で、めちゃめちゃ怖い。
あの漁村?にまともな学校がある感じには思えないし、結局彼らは強欲な大人に酷使されているだけ・・・たいていの場合子供よりも大人の方が一枚も二枚も上手なのだ。
でも、そうなると、ムセ君たちは海賊ではなく、厳密には私掠船ということになる。て、ことは、これは単なる犯罪行為ではなく、もっと大きな国際問題だ。
3万ドルをもらって逃げていればよかったのに・・・
それじゃ足りない。ボスの締め付けが厳しい。
しかし、フィリップス船長はすごいよ。触れ込みでは、仕事に真面目なただの平凡な海運会社の船長って感じだったけど、あの人の機転がなければ、事態はもっとむごいことになっていたと思う。
もちろん事前に危機管理マニュアルとかがあって、いろいろ学んでいたんだろうけれど、それでもマジで海賊が乗り込んできたら、もうパニックで何していいんだかわからなくなっちゃうよな。
自分にはあんな機転は効かせられないからなあ・・・田代船長はあのちびっこギャングに5回は殺されてました・・・orz海運会社にだけは勤めるのやめよう。
最もドキドキしたのは、映画などではお馴染みの「○○のありかを言え。30秒以内に言わなければこいつを撃ち殺す」なんだけど、普通のアクション映画なら、もう全然リラックスで鼻ほじってると思うんだけど、この映画って全編ドキュメンタリータッチで、臨場感すごいから、あの状況がいかに恐ろしいものか一周回って痛感する。
んで、やっぱり船長はお馴染みの「やめろ!部下を撃つなら私を撃て!」というかっこいいことを言うんだけど、あれ、多分、ああいう立場になっちゃったら、あれを言うしか選択肢がないと思うんだよ。
もし、自分の家族や、生徒に銃を向けられたら、やっぱ言っちゃうんじゃないかって。もちろん自分が死んでいいわけないんだけど、つまり、銃を突きつけている少年をある種信頼して、食い止めるしかないよなって。
今の子供には「やるならやってみろ」は絶対言っちゃダメだという。それは今の子達は大人の想像以上にずっとピュアで、人は死んでもテレビゲームのようにリセットされて生き返ると、なんとなくの狭い経験で考えているからだ。
つまり、オレ様化時代の彼らには、世の中には自分の理解が及ばないことがあるという理解が理解できない(しようとしない)。
だから、死も自分の理解できる範囲で矮小化して解釈してしまう。これは怖い。その程度の死の理解では、人を殺すことをためらわないだろう。
戦って死んだらウハウハハーレムだ!って信じる人が、ジハードで無差別自爆テロをやってしまえるように。
しかし、それに疑問を呈した哲学者がいる。ユダヤ人のレヴィナスという人だ。タルムード研究にも熱心だったレヴィナスは、いわゆる自己責任論を「人間の責任というのはそのような対等な関係では推し量れない」と批判し、「人間の顔を見ればわかるように、人間は生まれもって他者を信頼して無防備な状態でいる」と考えた。
顔は傷つきやすく、か弱い、人間の心理を正直に暴露させ、他者にこのように命令している。「汝、殺すなかれ」と。
つまり、人間は相手の顔をずっと見つめながら、その人を殺すことはできない。絶対に目をそらすだろうし、犯罪者がショッカーみたいに自分の顔を隠したり、犠牲者の体をバラバラにしてしまうのもそのためなのかもしれない。
レヴィナスは、人間の顔が発する、この「汝、殺すなかれ」という一方的な命令に応える責任があるという。
その責任とは、非対称なものである。だって、自分は自分、人は人なら、そんな自分とは関わりのないことに対して責任を負う必要はないからだ。レヴィナスの責任とは、ギブアンドテイクではなく、無償の愛なのだ。
ユダヤ人の強制収容所に収容された人たちが、なぜあんな絶望的な状況で自分の人生を投げ出さなかったかというと、それは収容所の外で自分を待ってくれている愛する人への責任があるから。「他者をその死に際して置き去りにしてはならない」のだ。
きっとフィリップス船長は、ムセ君の、その“責任”に賭けたんじゃないだろうか。いくら現代っ子で、ひどい国に生きているからって、彼にも愛する家族や部下の子達がいる。
だから辛抱強く言葉を投げかければ、絶対に通じてくれる。そう信じて「部下を撃つなら私を撃て」と叫んだ。
ムセ君の刑期は33年だという。彼が釈放されたとき、ソマリアは平和な国になっているのだろうか。
最も危険なことは、生きる目的のない若者に銃を与えることだ。(ポール・グリーングラス監督)
近況報告
2013-11-27 18:39:45 (10 years ago)
こんばんは。『かぐや姫の物語』の余韻に取り憑かれちゃている田代剛大です。今回は、漫画を連載させてもらっているYELLについて、いろいろ発表です。
まず、現在連載中のロボット漫画『ソニックブレイド』最新話更新です!※アカウントが不調で更新できなくなっていたそうです。たいへんお待たせしてしまってすいませんでした。もう連載打ち切り疑惑レベルの停滞・・・orz
いよいよ、物語は核心に入っていきます。というか、ついにロボット出てきます(どんなロボット漫画だ)。つーか開発します。ビルドファイトです(※よく知らない)。
しかし、話は変わりますが昨日、秘密保護法が衆議院で強行採決されちゃって、もう、あまりの早さで決まっちゃって、CIAから圧力あったとか言われてますが、とにかく早すぎて、一体どんな法律なのかさっぱりわかってません。国民は政府のチェック機能を、それが民主主義だ・・・みたいに政治学は言いますが、もう、僕らがあの法律を認識し始めた時には決まっていたという。
すごい。ねじれ解消されて、多数派でいくらでもゴリ押しできちゃうという。たとえが悪いですが、最初はちゃんと選挙で勝ったナチスが、だんだん調子乗って暴走しちゃったのを彷彿とさせます。
とにかく、この法律、文章が割とファジーで、表現の自由においても、いろいろ適用(規制)できそうで、となると私みたいに創作している人は、いろいろやばいということに・・・
さらに、定期的にネットで俎上に上がる、青少年健全育成問題もあるし、政治的、教育的にきわどいものを描いてなくても、『黒子のバスケ』みたいに、変な人に絡まれちゃうし・・・いよいよ日本は漫画業界殺しに来たぞって。
でも、『黒子のバスケ』といい『黒執事』といい、「黒」がつく漫画は受難の漫画なのだろうか。『新黒沢』いろいろ心配です。
5行で、『ソニックブレイド』から脱線しちゃいましたが、この漫画も、というか私の漫画って現実の社会問題を割りといろいろ取り入れるので(だからアメコミ作家的と言われた)、社会的に規制される可能性が高いんじゃないかなあってドキドキ。みんなが目を背けたいような社会問題をネタにしたりするし・・・
まだ、健全育成条例の時は対岸の火事みたいだったんですよ。自分はロリコン的エッチ漫画描いてなかったから。でも、社会的、政治的に有害(=テロ)認定されるなら、エッチ漫画よりも、自分の漫画の方がやばいんじゃないかなあって・・・
でも、この前スタジオジブリは、311が起きてもブレずに作品を作り続けた、という話を聞いて、私も、もう生きて創作できる限りは、『ソニックブレイド』も最後まで話できているし(伏線もはっちゃってるし)変に路線変更させずに、とことん突っ込んでやろうと思った所存です。
でも、ジブリって政治的なアニメ作ってないけれど・・・まあ、自分も政治を題材にすることがあるだけで、『ゴー宣』みたいに漫画を使ったアジテーションをやってるわけじゃないんだけど・・・
しかし、まだ『ソニックブレイド』はウランを食べる怪獣が原発襲うくらいなんで大ジョブそうなんですが、問題は今月連載する『80日間宇宙一周』です(併せてよろしくです)。
この漫画はタイトルはSFっぽいですが、SF(理科)というよりは、どっちかというと社会を題材にした作品で、テロリズムと戦う政府によるテロリズムみたいな、恐ろしいことが平気で書いてあるので、こんなのロシアで発表したら殺されてるよな~って生きる喜びを痛感しています。
とにかく、現在『80日間宇宙一周』は第2章まで入稿済み。2章合わせて15万字くらいあるので、早々には原稿は落ちないと思うんですが、ついに導火線に火をつけられた感じビンビンです。
小説は初めての試みで、すっごい不安ですが、読んでいただけると嬉しいです!
まず、現在連載中のロボット漫画『ソニックブレイド』最新話更新です!※アカウントが不調で更新できなくなっていたそうです。たいへんお待たせしてしまってすいませんでした。もう連載打ち切り疑惑レベルの停滞・・・orz
いよいよ、物語は核心に入っていきます。というか、ついにロボット出てきます(どんなロボット漫画だ)。つーか開発します。ビルドファイトです(※よく知らない)。
しかし、話は変わりますが昨日、秘密保護法が衆議院で強行採決されちゃって、もう、あまりの早さで決まっちゃって、CIAから圧力あったとか言われてますが、とにかく早すぎて、一体どんな法律なのかさっぱりわかってません。国民は政府のチェック機能を、それが民主主義だ・・・みたいに政治学は言いますが、もう、僕らがあの法律を認識し始めた時には決まっていたという。
すごい。ねじれ解消されて、多数派でいくらでもゴリ押しできちゃうという。たとえが悪いですが、最初はちゃんと選挙で勝ったナチスが、だんだん調子乗って暴走しちゃったのを彷彿とさせます。
とにかく、この法律、文章が割とファジーで、表現の自由においても、いろいろ適用(規制)できそうで、となると私みたいに創作している人は、いろいろやばいということに・・・
さらに、定期的にネットで俎上に上がる、青少年健全育成問題もあるし、政治的、教育的にきわどいものを描いてなくても、『黒子のバスケ』みたいに、変な人に絡まれちゃうし・・・いよいよ日本は漫画業界殺しに来たぞって。
でも、『黒子のバスケ』といい『黒執事』といい、「黒」がつく漫画は受難の漫画なのだろうか。『新黒沢』いろいろ心配です。
5行で、『ソニックブレイド』から脱線しちゃいましたが、この漫画も、というか私の漫画って現実の社会問題を割りといろいろ取り入れるので(だからアメコミ作家的と言われた)、社会的に規制される可能性が高いんじゃないかなあってドキドキ。みんなが目を背けたいような社会問題をネタにしたりするし・・・
まだ、健全育成条例の時は対岸の火事みたいだったんですよ。自分はロリコン的エッチ漫画描いてなかったから。でも、社会的、政治的に有害(=テロ)認定されるなら、エッチ漫画よりも、自分の漫画の方がやばいんじゃないかなあって・・・
でも、この前スタジオジブリは、311が起きてもブレずに作品を作り続けた、という話を聞いて、私も、もう生きて創作できる限りは、『ソニックブレイド』も最後まで話できているし(伏線もはっちゃってるし)変に路線変更させずに、とことん突っ込んでやろうと思った所存です。
でも、ジブリって政治的なアニメ作ってないけれど・・・まあ、自分も政治を題材にすることがあるだけで、『ゴー宣』みたいに漫画を使ったアジテーションをやってるわけじゃないんだけど・・・
しかし、まだ『ソニックブレイド』はウランを食べる怪獣が原発襲うくらいなんで大ジョブそうなんですが、問題は今月連載する『80日間宇宙一周』です(併せてよろしくです)。
この漫画はタイトルはSFっぽいですが、SF(理科)というよりは、どっちかというと社会を題材にした作品で、テロリズムと戦う政府によるテロリズムみたいな、恐ろしいことが平気で書いてあるので、こんなのロシアで発表したら殺されてるよな~って生きる喜びを痛感しています。
とにかく、現在『80日間宇宙一周』は第2章まで入稿済み。2章合わせて15万字くらいあるので、早々には原稿は落ちないと思うんですが、ついに導火線に火をつけられた感じビンビンです。
小説は初めての試みで、すっごい不安ですが、読んでいただけると嬉しいです!
かぐや姫の物語
2013-11-25 02:06:38 (10 years ago)
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- 映画
「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆ 地井武男さん☆☆☆☆☆」
汚れてなんかいないわ。喜びも悲しみも、この地に生きるものはみな彩に満ちてる。
・・・えらいものを見た。小細工など必要ない天才料理人の職人技を見た感じ。オリジナリティってなんだろうって改めて考えさせる。気をてらう必要はない。普通に『竹取物語』という高校生の頃授業で読まされる、超有名な古典文学を順序通り見せてるだけなのにこのパワー。
この前のまどマギは…あれだ、ケーキにイモムシ入れたようなドッキリ調理だったけど。料理はシンプルでいいっていう。
とにかく、美術的にも、キャラの内面的にも、とんでもなくディティールが細かい。物語や映像の微分というか、解像度が高いんだろうな。
翁が竹を切るシーンからもう引き込まれる。だって上の方の葉っぱが他の竹の葉っぱと引っかかってる感がすごいんだよw
ほかにも粗末な扉の狭い隙間や、お琴の糸の隙間からわずかに(数ミリ)覗くキャラの動画とか、いちいち芸が細かい(琴のお稽古で、調子に乗った姫がエレキギターのように琴を変調させて弾くシーンは爆笑)。
挙げ句の果てには人を殴る音のにぶさまで、やたらリアルだという。あんな音アニメで聞いたことないよw
私は、つねづね、自分には日本のサブカル文脈が合わないな~って思ってた。わかるっちゃわかるんだけど、なんかああいうのが心の底から好きな人の情熱はわからないなあって。
だから、巷で『エヴァQ』や『風立ちぬ』『まどマギ叛逆』がいくら盛り上がっていても、正直自分はそこまで心を揺さぶれず、歯がゆい思いをした。というか、どれも皆、ある種の拷問だった。
とにかく脚本がハイコンテキストで複雑だったり(情報が未整理)、半分作者の自己満足だろ的な観念的な傾向があって、もっと原点に帰ってシンプルに作ればいいのにっていつも思っていた。
そしたら、この有様ですよ。
泣いちった。なんだよこれ。ウルトラセブン最終回かよって。
シンプルな味付けなのに、なぜか味わい深い料理みたいな。たけしさん的に言うならば、超一流のタコの煮込みというか。タコに塩ふっただけなのになんでこんな美味いんだろうっていう。むしろタコという生き物そのものが美味いのか、そのタコ本来の素材の旨さを引き出せる料理人がやっぱりすごいのか・・・
とはいえ、同じジブリ映画なのに、劇場は『風立ちぬ』と違ってスカスカ。やはり宮崎駿だから見に行くという人が多数派なのだろう。でも、フランスじゃないけど、こういうアニメはちゃんと正当に評価して、残していったほうがいいと思う。王道あってのジャンルの豊かさだと思うから。ちなみに予告編のシーン、あれ作中ですごい重要な意味を持ってます。
さて、この映画は完成度が高すぎて、オイラみたいなもんが何を言っても野暮だし、もっと頭のいい人がいろいろ評論すると思うので、ここからは、もう余談ね(観に行きなさい)。
この映画のキャッチコピーって「姫が犯した罪と罰」じゃん。この映画見る前に、私哲学概論の勉強しててさ、そのせいかわからないけれど、ミシェル・フーコーのこと考えちゃってさ。あのハゲ様。
ミシェル・フーコーってポストモダンの思想家なんだけど、『監獄の誕生』って本で、19世紀あたりから残酷な身体刑は減ってきたけど、近代は罪人を一定期間監禁させるようになったよねって問題提起するんだ。
それは、罪を犯した人に対する罰であると同時に、犯罪者を堅気の世界から一時隔離して、まっとうな市民に再教育するという矯正(訓育)でもあるとフーコーは考えた。
それで、たけのこ姫なんだけど、姫が犯した罪と罰は一応作中で語られるんだ。姫が月に暮らしていた時、地球を見て泣いている人がいたんだって。
んで、姫は「あれ?こいつ何で泣いてるの?」って地球に興味が出ちゃったらしい。そしたら、どうやら月ではそういった好奇心みたいな心のブレは犯罪的らしく、姫は地球に追放されてしまった、と。これが罰。
でも、これってフーコー的に考えると、いろいろ不思議なところがある。まずなぜ、姫の記憶を消して、地球で人生を最初からやり直させたのか。
仮に、憎しみも悲しみもない楽園が月ならば、その月の記憶を持ち越して、そのまま人々が欲望に負けたり、醜く争う地球に追放したほうがこたえると思うんだよな。早く月に戻してくれ~アタイが悪かった~ってなるじゃん。
まあ、でもこれ地井武男の物語だから、そういう脚本にしちゃうとプリンセスメイカー地井さんが活躍できないからな!
でも姫の本当の罰は、地球の嫌なところも素晴らしいところも踏まえたうえで、それでも大切に思う愛する人たちとの別れを経験させることだったんじゃないの?とも考えられるんだけど、これもやっぱり変で、地球での記憶は天の羽衣着ちゃうとなくなっちゃうらしいんだよ。
これだと、せっかく地球で懲らしめたのに、それもリセットされちゃうことになる。なら初めから、地球に興味持った時点で姫の「地球に行ってみたいな」っていう記憶を、あの羽衣で消しちゃったほうが手っ取り早いだろって。
ここら辺は、物語を盛り上げる要素だからって話なんだけど・・・でも高畑監督のことだから、もしかしたら合理的なつじつまが合うようになってるかもしれないじゃん(^_^;)
地球の連中を汚らわしいという月の人も、感情のゆらぎがない割には、汚らわしい、汚らわしくないの判断は付くようだし、姫に対する親バカ丸出しの仕送りは、なかなか人間的だ。
もしかしたら、みんな地球にすごい羨望の気持ちがあって、それをスポックのように合理で押し殺しているのだろうか。あそこはすっごい魅力的だけど、行ったら行ったで絶対辛いんだからって。だいたい、弓矢すらお花に変わっちゃう世界だからね。戦争肯定派なはずないよね。
とはいえ、もともと地球人的な民族だったんだけど、なんとか高度に社会を発達させて、神の合理性を手に入れた、みたいな人たちとも考えられる。
で、ときどき先祖返りじゃないけど、戦争はいけないよって言ってる某監督が、兵器見てチンがタオするように、昔の動物的な本能に、惹かれてしまうのかもしれない。
私は生きるために生まれてきたのに。鳥やけもののように。
だいたい、あんま月の人たち楽しそうじゃないからね。そもそも感情がないから仕方がないんだろうけど、苦しみや悲しみ、怒り、憎悪といったネガティブな感情は、喜びや楽しさ、愛みたいなポジティブな感情と表裏一体だからね。
しかし、こういうSFって結局人間賛美になっちゃうのが、ちょっとお決まりの流れというか人間本位的だよね。もちろん私も人間だから、人間に生まれてきてよかった~って感動はするけど、やっぱミミズやオケラは感動しないよなあって。
宇宙を支配するすっごい超越者が出てきても、結局「人間っていいな」みたいな流れになるじゃん。Qべえですら、この前「人間の感情は制御しきれないよ~」とか言ってたし。そこは、やっぱり超越者の、世界外存在の矜持みたいなもの見せて欲しいよね。
まあ、そうなると月の人たちは、姫を地球に追放して、本当は「地球ってサイテー。二度と行きたくない。月の皆さんごめんなさい」って展開を予想していたとも考えられる。
それが、思いのほか、おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。的な流れになっちゃって、だから焦って記憶抹消装置を満月の夜に持ってきたのかもなあ。
そういえば、私たちも、ふと理由もなく涙を流すことがある。特に歳がいくと多いけれど(^_^;)あれってなんなんだろう。人生の切なさに涙しているのだろうか。
この映画には「戻ってくる」を感じさせるシーンがわりとある。もちろん姫は月に戻るし、里山のお兄ちゃんも再び山に戻ってくる。しかしそれは、閉じた円環構造ではない。
同じような毎日が繰り返されるようでいて、少しずつ変わっていってしまう不可逆性。それこそが人生の切なさであり素晴らしさなのかもしれない。
死んだんじゃない。見てごらん。木はもう春の支度をしているんだ。
汚れてなんかいないわ。喜びも悲しみも、この地に生きるものはみな彩に満ちてる。
・・・えらいものを見た。小細工など必要ない天才料理人の職人技を見た感じ。オリジナリティってなんだろうって改めて考えさせる。気をてらう必要はない。普通に『竹取物語』という高校生の頃授業で読まされる、超有名な古典文学を順序通り見せてるだけなのにこのパワー。
この前のまどマギは…あれだ、ケーキにイモムシ入れたようなドッキリ調理だったけど。料理はシンプルでいいっていう。
とにかく、美術的にも、キャラの内面的にも、とんでもなくディティールが細かい。物語や映像の微分というか、解像度が高いんだろうな。
翁が竹を切るシーンからもう引き込まれる。だって上の方の葉っぱが他の竹の葉っぱと引っかかってる感がすごいんだよw
ほかにも粗末な扉の狭い隙間や、お琴の糸の隙間からわずかに(数ミリ)覗くキャラの動画とか、いちいち芸が細かい(琴のお稽古で、調子に乗った姫がエレキギターのように琴を変調させて弾くシーンは爆笑)。
挙げ句の果てには人を殴る音のにぶさまで、やたらリアルだという。あんな音アニメで聞いたことないよw
私は、つねづね、自分には日本のサブカル文脈が合わないな~って思ってた。わかるっちゃわかるんだけど、なんかああいうのが心の底から好きな人の情熱はわからないなあって。
だから、巷で『エヴァQ』や『風立ちぬ』『まどマギ叛逆』がいくら盛り上がっていても、正直自分はそこまで心を揺さぶれず、歯がゆい思いをした。というか、どれも皆、ある種の拷問だった。
とにかく脚本がハイコンテキストで複雑だったり(情報が未整理)、半分作者の自己満足だろ的な観念的な傾向があって、もっと原点に帰ってシンプルに作ればいいのにっていつも思っていた。
そしたら、この有様ですよ。
泣いちった。なんだよこれ。ウルトラセブン最終回かよって。
シンプルな味付けなのに、なぜか味わい深い料理みたいな。たけしさん的に言うならば、超一流のタコの煮込みというか。タコに塩ふっただけなのになんでこんな美味いんだろうっていう。むしろタコという生き物そのものが美味いのか、そのタコ本来の素材の旨さを引き出せる料理人がやっぱりすごいのか・・・
とはいえ、同じジブリ映画なのに、劇場は『風立ちぬ』と違ってスカスカ。やはり宮崎駿だから見に行くという人が多数派なのだろう。でも、フランスじゃないけど、こういうアニメはちゃんと正当に評価して、残していったほうがいいと思う。王道あってのジャンルの豊かさだと思うから。ちなみに予告編のシーン、あれ作中ですごい重要な意味を持ってます。
さて、この映画は完成度が高すぎて、オイラみたいなもんが何を言っても野暮だし、もっと頭のいい人がいろいろ評論すると思うので、ここからは、もう余談ね(観に行きなさい)。
この映画のキャッチコピーって「姫が犯した罪と罰」じゃん。この映画見る前に、私哲学概論の勉強しててさ、そのせいかわからないけれど、ミシェル・フーコーのこと考えちゃってさ。あのハゲ様。
ミシェル・フーコーってポストモダンの思想家なんだけど、『監獄の誕生』って本で、19世紀あたりから残酷な身体刑は減ってきたけど、近代は罪人を一定期間監禁させるようになったよねって問題提起するんだ。
それは、罪を犯した人に対する罰であると同時に、犯罪者を堅気の世界から一時隔離して、まっとうな市民に再教育するという矯正(訓育)でもあるとフーコーは考えた。
それで、たけのこ姫なんだけど、姫が犯した罪と罰は一応作中で語られるんだ。姫が月に暮らしていた時、地球を見て泣いている人がいたんだって。
んで、姫は「あれ?こいつ何で泣いてるの?」って地球に興味が出ちゃったらしい。そしたら、どうやら月ではそういった好奇心みたいな心のブレは犯罪的らしく、姫は地球に追放されてしまった、と。これが罰。
でも、これってフーコー的に考えると、いろいろ不思議なところがある。まずなぜ、姫の記憶を消して、地球で人生を最初からやり直させたのか。
仮に、憎しみも悲しみもない楽園が月ならば、その月の記憶を持ち越して、そのまま人々が欲望に負けたり、醜く争う地球に追放したほうがこたえると思うんだよな。早く月に戻してくれ~アタイが悪かった~ってなるじゃん。
まあ、でもこれ地井武男の物語だから、そういう脚本にしちゃうとプリンセスメイカー地井さんが活躍できないからな!
でも姫の本当の罰は、地球の嫌なところも素晴らしいところも踏まえたうえで、それでも大切に思う愛する人たちとの別れを経験させることだったんじゃないの?とも考えられるんだけど、これもやっぱり変で、地球での記憶は天の羽衣着ちゃうとなくなっちゃうらしいんだよ。
これだと、せっかく地球で懲らしめたのに、それもリセットされちゃうことになる。なら初めから、地球に興味持った時点で姫の「地球に行ってみたいな」っていう記憶を、あの羽衣で消しちゃったほうが手っ取り早いだろって。
ここら辺は、物語を盛り上げる要素だからって話なんだけど・・・でも高畑監督のことだから、もしかしたら合理的なつじつまが合うようになってるかもしれないじゃん(^_^;)
地球の連中を汚らわしいという月の人も、感情のゆらぎがない割には、汚らわしい、汚らわしくないの判断は付くようだし、姫に対する親バカ丸出しの仕送りは、なかなか人間的だ。
もしかしたら、みんな地球にすごい羨望の気持ちがあって、それをスポックのように合理で押し殺しているのだろうか。あそこはすっごい魅力的だけど、行ったら行ったで絶対辛いんだからって。だいたい、弓矢すらお花に変わっちゃう世界だからね。戦争肯定派なはずないよね。
とはいえ、もともと地球人的な民族だったんだけど、なんとか高度に社会を発達させて、神の合理性を手に入れた、みたいな人たちとも考えられる。
で、ときどき先祖返りじゃないけど、戦争はいけないよって言ってる某監督が、兵器見てチンがタオするように、昔の動物的な本能に、惹かれてしまうのかもしれない。
私は生きるために生まれてきたのに。鳥やけもののように。
だいたい、あんま月の人たち楽しそうじゃないからね。そもそも感情がないから仕方がないんだろうけど、苦しみや悲しみ、怒り、憎悪といったネガティブな感情は、喜びや楽しさ、愛みたいなポジティブな感情と表裏一体だからね。
しかし、こういうSFって結局人間賛美になっちゃうのが、ちょっとお決まりの流れというか人間本位的だよね。もちろん私も人間だから、人間に生まれてきてよかった~って感動はするけど、やっぱミミズやオケラは感動しないよなあって。
宇宙を支配するすっごい超越者が出てきても、結局「人間っていいな」みたいな流れになるじゃん。Qべえですら、この前「人間の感情は制御しきれないよ~」とか言ってたし。そこは、やっぱり超越者の、世界外存在の矜持みたいなもの見せて欲しいよね。
まあ、そうなると月の人たちは、姫を地球に追放して、本当は「地球ってサイテー。二度と行きたくない。月の皆さんごめんなさい」って展開を予想していたとも考えられる。
それが、思いのほか、おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。的な流れになっちゃって、だから焦って記憶抹消装置を満月の夜に持ってきたのかもなあ。
そういえば、私たちも、ふと理由もなく涙を流すことがある。特に歳がいくと多いけれど(^_^;)あれってなんなんだろう。人生の切なさに涙しているのだろうか。
この映画には「戻ってくる」を感じさせるシーンがわりとある。もちろん姫は月に戻るし、里山のお兄ちゃんも再び山に戻ってくる。しかしそれは、閉じた円環構造ではない。
同じような毎日が繰り返されるようでいて、少しずつ変わっていってしまう不可逆性。それこそが人生の切なさであり素晴らしさなのかもしれない。
死んだんじゃない。見てごらん。木はもう春の支度をしているんだ。
経済学覚え書き④
2013-11-21 13:35:55 (10 years ago)
-
カテゴリタグ:
- 経済学
ご機嫌いかがですか。ミクロ経済学もなんか、まとめに入りました。
価格調整メカニズム
需要>供給→価格↑(超過需要)
需要<供給→価格↓(超過供給)
いちいちせりをしているわけじゃないのに、市場全体で見れば価格が調整され均衡状態に落ち着くことを価格メカニズムと言う。
つまり、価格によってその資源の最適配分が可能になるということ。こんな高いんじゃいらないよって人もいれば、多少高くても絶対欲しい!って人もいるので、その場合いらないよって人の分の商品が、絶対欲しい人にうまく回されることになる。
一物一価の法則
同じ商品なら、どこの店でもだいたい同じ価格がついていることを言う。もし全く同じ商品なのに、店によって大きく価格が違ったら、みんな安い店で買うから、高い値段で売っていた店は価格を下げざるを得ない。もしくは店による価格の違いを利用して、転売が出てくると思う。
例えば、バブルの時は物の価格の短期的な変動が激しかったので、安い画廊で絵を買って、別の画廊に同じ絵を高い値段で売ることもできたらしい。
ちょっと話がそれたけど、市場が流動的でグローバルだと、この法則に落ち着く場合が多い。
でも、絶海の孤島とかだと、地域独占的な価格差別が発生しそう(そこで買うしかないから)。富士山のカレーとかがやたら高いのも、まあ富士山の上に物資運ぶコストとかもあるんだろうけど、消費者に選択の余地がない(需要曲線の価格弾力性が低い)からっていうのもあるんだろうなあ。ご飯食べにいちいち下山できないし。
最適税
税を課すことによる影響で、資源配分に歪みが発生するのだが(①の消費税参照)、その度合いは需要や供給の価格弾力性によって異なる。
実は、需要や供給が非弾力的なほうが、税収に比べて社会的なコスト(余剰損失)は少ない。つまり、高くても購入せざるを得ない商品やサービスに増税するのが、資源配分的にはもっとも好ましいらしいのだが、たいてい庶民を地獄に落とす悪税みたいに報道されたりする。
X非効率
池上さんがTPP問題について著書で解説していた時に、持ち出された考え方。つまり、政府が国内のとある産業を保護して、国際競争にさらされないようにすると、結果的にその産業の競争力が落ちて、アメリカのゼネラルモータースのように潰れてしまう。
このように、企業間競争をしていない独占的立場にいる企業は、結果的に組織の中に無駄ができて、効率性が落ちてしまう。
生物学だと「赤の女王仮説」と呼ばれるもの(生物は競争し続けないと淘汰されてしまう)だと思う。小泉さんの道路公団や郵政の民営化は、この視点に立って行われた。
ハイエクの貨幣民営化論
貨幣の発行権を国家が独占しているのはおかしい!民間でそれぞれ通貨を作ってもいいじゃないか!というまるでSF作家のような面白い理論。
国家が財政政策をしくじると深刻なインフレが起きるが、それがなぜ地獄かというと、国民は海外移住でもしない限り、別の通貨に乗り換えられないからであって(日本にいるなら基本的に円しか選択肢がない)、もし仮にひとつの国家に複数の通貨があったら、貨幣間の競争が起きて、貨幣の質は高くなるはず・・・というわけ。
最近出てきた「Suicaでスイスイお買い物」みたいな電子マネーは、貨幣発行の民営化に近いかもしれないが、オタキングさんはもっと前にSF大会で独自通貨を発行していた。あんたはカリオストロ伯爵かw
ナッシュ均衡
ゲーム理論の重要な考え方で、これを考えたジョン・ナッシュはノーベル経済学賞を取っている。でもゲーム理論を考えたフォン・ノイマンには酷評されたらしい。
ナッシュ均衡とは、ゲームのプレイヤーが自分の利益と損失を計算した時に導き出されたもっとも最善な戦略のことを言う。
例えばカイジのジャンケンゲームで言うと、グーチョキパーをそれぞれ三分の一の確率でランダムで出していくのが最善の戦略となる。利根川先生はそれを知ってたのか、目隠しで適当に出すのは禁止していた。作者の福本さんはさすが経済学に強い。
このように各プレイヤーが己の利益を最大化、己の損失を最小化させる最善の戦略をとっていくとゲームは均衡状態になるのだが、面白いことにゲームによっては、このナッシュ均衡が全てのプレイヤーの利益を最大化させるようなパレート最適になるとは限らないということ。
もっとも有名な囚人のジレンマがそれで、全てのプレイヤーが最適戦略を取ると結局みんなが損をしてしまう(みんな裏切る泥沼になるから)。
談合
囚人のジレンマのゲームのよくできたところは、プレイヤー同士の意思の疎通が禁じられているということ。つまり、相手が自分のために泥をかぶってくれるなんて絶対考えられないから、みんながみんな裏切り行為をしてしまう。
こういうゲームを非協調ゲームという。もちろん国際問題でこんなゲームやられるとたまったもんじゃないので、冷戦時代にはアメリカとソ連にはホットラインがつながっていた。
とはいえ、協調すれば必ずしもハッピーというわけではなくて、例えば建設会社(ゼネコン)同士が談合をすると、入札が八百長になり、工事費用が釣り上げられ、その負担が納税者に行ってしまってアンハッピー。
半沢直樹問題
やられたらやり返す、それが倍返しだ!みたいなドラマが流行ったが、実はこれすっごい短期的にはスカっとするけれど、人生はそこそこ長いので長期的に見れば、この戦略はリスクが大きい。
企業間競争で考えると、実は会社経営は長期的スパンの継続試行ゲームなので、将来的な協調の可能性を潰してまで、たった一回の裏切りによる利益を得るのは、あまり理にかなっていない。
その利益を社長が持ち逃げして、会社を潰しちゃえば別だけど・・・
今までもブログで、「ネットの意見ってあまりに短絡的」って言ってたけれど、日本全体がそういったその場しのぎの戦略にしか目がいってないっていうのは、いろいろ危なっかしいと思う。
アベノミクス
安倍さんはイギリスみたいにインフレターゲットをやったけど(あの人サッチャーが好きで、サッチャーはハイエクが好きw)、もともと日本は中央銀行が経済の状況に応じて金融政策を調整する裁量主義だった。インフレターゲットは、最初にインフレ目標を決めて、それを達成できるようにルールを決めてしまうやり方で、その過程でいくらか銀行や企業が淘汰されとうが、ルールを曲げずに目標に向かっていく(ぶれない)。
スター・トレックで言うならば(なぜだ)、ルール主義のマネタリストがスポックで、時と場合によってルールを曲げてしまう裁量主義がカークって感じがする。だから、日本のマネーサプライがブレブレだったのはよくわかるw規則を絶対視するような人は、日本だと得てして冷酷!とか人間味がない!とか色々言われるし、そういうキャラを作ってもな~んか人気が出ない(^_^;)
でも、お金を借りる側からしてみれば、もちろん裁量主義の方がいいのだろうけれど、この場合市中銀行は過剰融資をし、企業はリスクを無視した無謀な経営をする可能性がある。
景気や金融の安定化を重視するのが裁量主義で、マネーサプライの安定化を重視するのがマネタリストと考えるとわかりやすい。
コミットメント
ライバル企業の参入をあらかじめ阻止するために、先手を打って相手の戦略を潰すこと。イオンが参入する前にヨーカ堂は店舗の数を増やしてしまえば、イオンが参入するメリットやインセンティブは少なくなる。
独占的競争
ジョーン・ロビンソンとエドワード・チェンバリンが独自に考案した、独占と完全競争の中間的なケース。実際、独占や、完全競争状態というのは現実ではあまり考えられないので(企業の数は複数あるし、それぞれの企業はある程度価格支配力を持つ)、いくらかの企業が商品の差別化を図ることで競争をしている状態を仮定したほうが、現実的なんじゃないかってことになった。
ポイントは、それぞれの供給者(企業)の供給曲線は右下がり(=価格支配力があるということ)で、限界費用よりも価格の方が高いのは独占状態に近いが、全ての企業の利潤がゼロ(価格=平均費用)になるまで他社の参入が続く点では、完全競争状態に近い。
独占的供給者の価格設定
独占企業の商品の需要
D=100-p
需要=100-価格
この商品を供給するためのコスト
C=2X+10
コスト=2×供給量+10
供給(生産)した分を全て売り切るには、需要の量と供給の量が同じになるわけなので
D(需要)にX(供給)を代入し・・・
D=100-p
X=100-p
等式変形して
p=100-X
つまり価格は100-X円になる。
独占企業の総収入=価格×供給量なので
R(リソース)=p×X=(100-X)×X
利潤は総収入から生産コストを差し引いた額なので
利潤=R(収入)-C(コスト)=(100-X)×X-(2X+10)=-X2+98X-10
この時の利潤を最大化するためには、限界収入と限界費用が一致するまで(すなわちR=CでありR-C=0!)生産をすればいいので、利潤の式を微分して、右辺を0にする。
-X2+98X-10→(微分)→-2X+98
-2X+98=0
X=49
これで供給量は49個ということがわかった。
あとは価格をいくらで売ればいいかなので、供給量49を X=100-p の式に代入して・・・
49=100-P
P=51
一個辺り51円になる。
また限界収入は、総収入を供給量Xで微分したものなので
R=(100-X)×X=-X2+100X→(微分)→-2X+100
限界収入MR=-2X+100
一方限界費用は、総費用をやっぱり供給量Xで微分したものなので
C=2X+10→(微分)→2
限界費用MC=2
よって限界収入=限界費用の式に代入すると
-2X+100=2になって
-2X=-98
X=49
と同様に供給量を求められる。
価格調整メカニズム
需要>供給→価格↑(超過需要)
需要<供給→価格↓(超過供給)
いちいちせりをしているわけじゃないのに、市場全体で見れば価格が調整され均衡状態に落ち着くことを価格メカニズムと言う。
つまり、価格によってその資源の最適配分が可能になるということ。こんな高いんじゃいらないよって人もいれば、多少高くても絶対欲しい!って人もいるので、その場合いらないよって人の分の商品が、絶対欲しい人にうまく回されることになる。
一物一価の法則
同じ商品なら、どこの店でもだいたい同じ価格がついていることを言う。もし全く同じ商品なのに、店によって大きく価格が違ったら、みんな安い店で買うから、高い値段で売っていた店は価格を下げざるを得ない。もしくは店による価格の違いを利用して、転売が出てくると思う。
例えば、バブルの時は物の価格の短期的な変動が激しかったので、安い画廊で絵を買って、別の画廊に同じ絵を高い値段で売ることもできたらしい。
ちょっと話がそれたけど、市場が流動的でグローバルだと、この法則に落ち着く場合が多い。
でも、絶海の孤島とかだと、地域独占的な価格差別が発生しそう(そこで買うしかないから)。富士山のカレーとかがやたら高いのも、まあ富士山の上に物資運ぶコストとかもあるんだろうけど、消費者に選択の余地がない(需要曲線の価格弾力性が低い)からっていうのもあるんだろうなあ。ご飯食べにいちいち下山できないし。
最適税
税を課すことによる影響で、資源配分に歪みが発生するのだが(①の消費税参照)、その度合いは需要や供給の価格弾力性によって異なる。
実は、需要や供給が非弾力的なほうが、税収に比べて社会的なコスト(余剰損失)は少ない。つまり、高くても購入せざるを得ない商品やサービスに増税するのが、資源配分的にはもっとも好ましいらしいのだが、たいてい庶民を地獄に落とす悪税みたいに報道されたりする。
X非効率
池上さんがTPP問題について著書で解説していた時に、持ち出された考え方。つまり、政府が国内のとある産業を保護して、国際競争にさらされないようにすると、結果的にその産業の競争力が落ちて、アメリカのゼネラルモータースのように潰れてしまう。
このように、企業間競争をしていない独占的立場にいる企業は、結果的に組織の中に無駄ができて、効率性が落ちてしまう。
生物学だと「赤の女王仮説」と呼ばれるもの(生物は競争し続けないと淘汰されてしまう)だと思う。小泉さんの道路公団や郵政の民営化は、この視点に立って行われた。
ハイエクの貨幣民営化論
貨幣の発行権を国家が独占しているのはおかしい!民間でそれぞれ通貨を作ってもいいじゃないか!というまるでSF作家のような面白い理論。
国家が財政政策をしくじると深刻なインフレが起きるが、それがなぜ地獄かというと、国民は海外移住でもしない限り、別の通貨に乗り換えられないからであって(日本にいるなら基本的に円しか選択肢がない)、もし仮にひとつの国家に複数の通貨があったら、貨幣間の競争が起きて、貨幣の質は高くなるはず・・・というわけ。
最近出てきた「Suicaでスイスイお買い物」みたいな電子マネーは、貨幣発行の民営化に近いかもしれないが、オタキングさんはもっと前にSF大会で独自通貨を発行していた。あんたはカリオストロ伯爵かw
ナッシュ均衡
ゲーム理論の重要な考え方で、これを考えたジョン・ナッシュはノーベル経済学賞を取っている。でもゲーム理論を考えたフォン・ノイマンには酷評されたらしい。
ナッシュ均衡とは、ゲームのプレイヤーが自分の利益と損失を計算した時に導き出されたもっとも最善な戦略のことを言う。
例えばカイジのジャンケンゲームで言うと、グーチョキパーをそれぞれ三分の一の確率でランダムで出していくのが最善の戦略となる。利根川先生はそれを知ってたのか、目隠しで適当に出すのは禁止していた。作者の福本さんはさすが経済学に強い。
このように各プレイヤーが己の利益を最大化、己の損失を最小化させる最善の戦略をとっていくとゲームは均衡状態になるのだが、面白いことにゲームによっては、このナッシュ均衡が全てのプレイヤーの利益を最大化させるようなパレート最適になるとは限らないということ。
もっとも有名な囚人のジレンマがそれで、全てのプレイヤーが最適戦略を取ると結局みんなが損をしてしまう(みんな裏切る泥沼になるから)。
談合
囚人のジレンマのゲームのよくできたところは、プレイヤー同士の意思の疎通が禁じられているということ。つまり、相手が自分のために泥をかぶってくれるなんて絶対考えられないから、みんながみんな裏切り行為をしてしまう。
こういうゲームを非協調ゲームという。もちろん国際問題でこんなゲームやられるとたまったもんじゃないので、冷戦時代にはアメリカとソ連にはホットラインがつながっていた。
とはいえ、協調すれば必ずしもハッピーというわけではなくて、例えば建設会社(ゼネコン)同士が談合をすると、入札が八百長になり、工事費用が釣り上げられ、その負担が納税者に行ってしまってアンハッピー。
半沢直樹問題
やられたらやり返す、それが倍返しだ!みたいなドラマが流行ったが、実はこれすっごい短期的にはスカっとするけれど、人生はそこそこ長いので長期的に見れば、この戦略はリスクが大きい。
企業間競争で考えると、実は会社経営は長期的スパンの継続試行ゲームなので、将来的な協調の可能性を潰してまで、たった一回の裏切りによる利益を得るのは、あまり理にかなっていない。
その利益を社長が持ち逃げして、会社を潰しちゃえば別だけど・・・
今までもブログで、「ネットの意見ってあまりに短絡的」って言ってたけれど、日本全体がそういったその場しのぎの戦略にしか目がいってないっていうのは、いろいろ危なっかしいと思う。
アベノミクス
安倍さんはイギリスみたいにインフレターゲットをやったけど(あの人サッチャーが好きで、サッチャーはハイエクが好きw)、もともと日本は中央銀行が経済の状況に応じて金融政策を調整する裁量主義だった。インフレターゲットは、最初にインフレ目標を決めて、それを達成できるようにルールを決めてしまうやり方で、その過程でいくらか銀行や企業が淘汰されとうが、ルールを曲げずに目標に向かっていく(ぶれない)。
スター・トレックで言うならば(なぜだ)、ルール主義のマネタリストがスポックで、時と場合によってルールを曲げてしまう裁量主義がカークって感じがする。だから、日本のマネーサプライがブレブレだったのはよくわかるw規則を絶対視するような人は、日本だと得てして冷酷!とか人間味がない!とか色々言われるし、そういうキャラを作ってもな~んか人気が出ない(^_^;)
でも、お金を借りる側からしてみれば、もちろん裁量主義の方がいいのだろうけれど、この場合市中銀行は過剰融資をし、企業はリスクを無視した無謀な経営をする可能性がある。
景気や金融の安定化を重視するのが裁量主義で、マネーサプライの安定化を重視するのがマネタリストと考えるとわかりやすい。
コミットメント
ライバル企業の参入をあらかじめ阻止するために、先手を打って相手の戦略を潰すこと。イオンが参入する前にヨーカ堂は店舗の数を増やしてしまえば、イオンが参入するメリットやインセンティブは少なくなる。
独占的競争
ジョーン・ロビンソンとエドワード・チェンバリンが独自に考案した、独占と完全競争の中間的なケース。実際、独占や、完全競争状態というのは現実ではあまり考えられないので(企業の数は複数あるし、それぞれの企業はある程度価格支配力を持つ)、いくらかの企業が商品の差別化を図ることで競争をしている状態を仮定したほうが、現実的なんじゃないかってことになった。
ポイントは、それぞれの供給者(企業)の供給曲線は右下がり(=価格支配力があるということ)で、限界費用よりも価格の方が高いのは独占状態に近いが、全ての企業の利潤がゼロ(価格=平均費用)になるまで他社の参入が続く点では、完全競争状態に近い。
独占的供給者の価格設定
独占企業の商品の需要
D=100-p
需要=100-価格
この商品を供給するためのコスト
C=2X+10
コスト=2×供給量+10
供給(生産)した分を全て売り切るには、需要の量と供給の量が同じになるわけなので
D(需要)にX(供給)を代入し・・・
D=100-p
X=100-p
等式変形して
p=100-X
つまり価格は100-X円になる。
独占企業の総収入=価格×供給量なので
R(リソース)=p×X=(100-X)×X
利潤は総収入から生産コストを差し引いた額なので
利潤=R(収入)-C(コスト)=(100-X)×X-(2X+10)=-X2+98X-10
この時の利潤を最大化するためには、限界収入と限界費用が一致するまで(すなわちR=CでありR-C=0!)生産をすればいいので、利潤の式を微分して、右辺を0にする。
-X2+98X-10→(微分)→-2X+98
-2X+98=0
X=49
これで供給量は49個ということがわかった。
あとは価格をいくらで売ればいいかなので、供給量49を X=100-p の式に代入して・・・
49=100-P
P=51
一個辺り51円になる。
また限界収入は、総収入を供給量Xで微分したものなので
R=(100-X)×X=-X2+100X→(微分)→-2X+100
限界収入MR=-2X+100
一方限界費用は、総費用をやっぱり供給量Xで微分したものなので
C=2X+10→(微分)→2
限界費用MC=2
よって限界収入=限界費用の式に代入すると
-2X+100=2になって
-2X=-98
X=49
と同様に供給量を求められる。
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