『恐竜大陸サウラシア』脚本⑤

カーネギー財団の採掘基地。
環境破壊など構わず巨大なジャイアントを使って水圧で鉱山を削り取っていく。
立ち枯れしていく森。

ジョン・カーネギーのオフィス。
カーネギー「ブラウン夫人が凄腕のハンターを?」
マーシュ「ああ・・・不気味な野郎だ・・・」
カーネギー「ブラウン夫人もおとなしく金鉱を売り払えばいいものを・・・」
マーシュ「アニーのやろう労働者の給料をシャープトゥースの懸賞金で払うつもりだぜ。」
カーネギー「ティラノサウルス・・・」
マーシュ「おう」
カーネギー「それは困る。ティラノサウルスは我々のコレクションにどうしても欲しい。」
マーシュ「わかってるさ。だがなかなか巣が見つからなくてな」

隣の博物館のようなホールに行くカーネギー。
「ヘルクリークの恐竜は現在確認されているだけでも84種・・・うち67種は捕獲済み・・・」
透明の薬莢をつまむカーネギー。
マーシュ「ああ、あんたの新兵器のお陰だ」
カーネギー「懸賞金の二倍だそう。ティラノサウルスを捕まえてほしい。やつは我々のショーの目玉になる。」
地質図を見るカーネギー
マーシュ「新しい弾丸がいるな・・・」



夜。オーテリーブのフェンスに備え付けられた見張り台。
コープ「・・・・・・」
見張り台に登ってくるリズリー「いいですか?」
コープ「きみか。」毛布をかけてやる
リズリー「あの時アロサウルスを追い払ったのって・・・あなただったんですね」
コープ「なぜわかる?」
リズリー「フィリップのあんな構えじゃいくら撃っても急所は当たりませんよ」
コープ「そうかな・・・アロサウルスに急所という急所はない。」
リズリー「いままでどれだけの恐竜と戦ったんですか?」
コープ「さあな、数えきれないほど殺したな・・・失った仲間も多かったがな。」
リズリー「・・・・・・。」
リズリーの腕に乗るムスサウルスを見るコープ「君らは恐竜と仲がいいんだな。」
リズリー「小さいころから触れ合っていましたから・・・私たちサーカス団員なんです。」
コープ「アニーがあの男を連れてきたのがわかったよ・・・」
リズリー「でもあいつは・・・」
コープ「アニーは恐竜ハンターとして彼を連れてきたわけじゃないんじゃないのか」



オーテリーブの酒場
フィリップがアニーたち村民とドンチャン騒ぎしている。
フィリップ「ぎゃははは!俺は最強の恐竜ハンターだぜ~!」
労働者「そうだ!お前は最高だぜ!マーシュの野郎ざまあみろ!」
医者の老人「お前さんこそ街の救世主じゃ・・・!」
労働者「お前なら本当にシャープトゥースを倒してオレたちに給料をくれるのかもな」

酒場にやってきて注文するホーナー「バカバカしい。ティラノサウルスはそんな甘くねえ。」
労働者たち「そうだけどよ・・・」
フィリップ「そのチランノなんたら・・はそんなにすげえのか?」
労働者「マーシュもコープも恐竜ハンターが誰一人仕留めたことがねえ化け物さ。」
「神出鬼没で街を襲う。あいつを退治しに巣を探しに行ったハンターもみんな殺されたよ」
フィリップ「ふ~ん・・・で、俺がその最初のハンター・・・」

奥の席から振り返るホーナー「いいか調子に乗るなよ若いの。あいつを怒らせたら片腕ではすまねえぞ。」
フィリップ「おい、この絵見てみろよ。こいつの腕はこんなちっさい。これなら腕相撲で俺でも勝てるぜ!」
労働者「いうじゃねえかぎゃははは!」

ため息をついて向き直るホーナー「何を考えているブラウン夫人。本当にあいつをティラノと戦わせるつもりか?死ぬぞ。
ティラノサウルスなんざ危ない橋を渡らずに、オレなら第五鉱区を採掘させるがな。カーネギー財団もあそこに目をつけているんだろ?」
アニー「それは・・・」
労働者「なんだって?それは本当か!」
アニー「それはあくまでも噂です・・・」
労働者「でもよ、やっぱりなにかとんでもねえお宝が埋まっているんじゃねえのか!?」
労働者「ああ、ただの金塊じゃカーネギーも目をつけねえだろ!」
「必ずお給料はお支払いしますので…みなさんあそこには決して近づかないでください・・・!!」
労働者「いや今オレのトレジャーハンターの血が疼いた!みんな明日早速掘ってみようぜ!」
フィリップ「待て待て。オレがティラノを倒してやるから・・・!」
老人「そうじゃよ、ここはこちらさんに任せたほうが・・・」
労働者「旦那の凄さは知っているがな。悪いなこっちも養わなきゃいけない家族がいるんだ。」
フィリップ「でもよ、アニーさんが困ってるじゃねえか」
ホーナー「なぜ第五鉱区を隠す?あんたら夫婦は一体あそこで何を見た・・・?」
アニー「それは・・・」



見張り台
リズリー「アニーさんって一体どういう人なんですか・・・?」
コープ「アニーには醜聞があるんだ」
リズリー「?」
コープ「2年前、所有する最も西の鉱山に旦那と地質調査に行ったんだが、アニーは一人で帰ってきた。」
リズリー「聞きました。恐竜に殺されたって・・・」
コープ「どうも労働者たちはそうは思っていないらしい。第5鉱区でアニーはとんでもないお宝に目がくらんで旦那を銃殺した・・・彼らはそう思っている」
リズリー「・・・え?」
コープ「それだけアニーの旦那・・・バーナムは鉱山労働者たちにとって惜しい人だったのさ」
リズリー「あなたはどうなんですか?」」
コープ「え?」
リズリー「アニーさんを信じていますか?」
コープ「さあな・・・俺は誰も信じちゃいないからな・・・」

バリケードの外が騒がしい。茂みが揺れて鳥が空へ逃げていく。

村人「大変だ!西ゲートに肉食恐竜が!」
コープ「なんだと!?種類は!?」
村人「暗くてわからねえが、馬鹿でかい!」
コープ「わかった!あの男を呼んで来てくれ!!」
頷くリズリー。



見張り台を降りて、酒場にかけていくリズリー
フィリップ「アニーさんが人殺しだと!?もう一度言ってみろてめえこのやろ!」
労働者「てめえこそその女に騙されやがって!そいつはバーナムさんを殺したんだ!」
フィリップ「見たのかよこのやろう!」
酒場で喧嘩をはじめるフィリップ
リズリー「えええええ!?さっきまであんなに仲良かったのに!!」
アニー「みなさんやめてください・・・!」

銃声
一同が入口で銃を天井に向けて撃っているコープの方を向く「・・・コープ」
コープ「いい加減にしろ!恐竜の襲撃だ!!」



西の見張り台に立つコープ「明かりを消せ!」
バリケードの外を巨大な影が横切っていく。

村人「あんなでかい肉食竜見たことねえ・・・」
コープ「シャープトゥースだ・・・」
リズリー「そんな・・・」
リズリー「フィリップ助けて・・・!」
フィリップ「よしおまえが囮になれ!」
リズリー「ふ・・・ふざけんな!」
アニー「フィリップ助けて・・・!」
フィリップ「この命に代えてもあなたを救います。」
リズリー「このやろう・・・」
コープ「大丈夫獣道を走っていくだけだ、こっちにはこねえ・・・」
コープ「さて、やつを倒す絶好のチャンスだぜ。どうする?」
フィリップ「当たり前だろ。」



コープと共に装備を整えるフィリップ

フィリップ「おい機嫌直せよ・・・あれは冗談じゃねえか・・・」
リズリ―「ねえ・・・ほんとにティラノサウルスと戦うつもりなの?」
フィリップ「おうよ。俺のムチさばきでティラノなんざイチコロよ。」
リズリ―「そうかな・・・」
フィリップ「な~んかお前さっきから感じ悪くないか?」
リズリ―「なんかわたし・・・世の中がよく分からなくなってきちゃった・・・」
フィリップ「お前サーカスの中しか知らなかったからな。」
リズリ―「7歳のころサーカスに売られてからずっと・・・自由の身になって広い世界を見るのが夢だったんだけどね…」
フィリップ「夢がかなってよかったな。」
リズリ―「でも・・・想像してた世界とは違うな。」
フィリップ「世の中っつーのはそういうもんだ。俺なんか喰われ役だぞ。
今はティラノザウルスハンターだがな。なはは。」
リズリ―「アニーさんの前でカッコつけるのはもういいけど・・・お願いだから死なないでよ。」
フィリップ「何だよ急に。さ~てそろそろ行ってくっか!」
リズリ―「・・・約束して。」
フィリップ「・・・分かったよ。俺は死なない。約束だ。」
リズリ―「ほんとだよ?」
フィリップ「しつこい!」
コープ「いくぞ」
フィリップ「おう!」
リズリ―「ちょ、ちょっと待って!」
フィリップにスカーフほどいて渡すリズリ―「あたしの宝物あげる。」
フィリップ「なにこれ?」
リズリ―「幸運のお守り。」
フィリップ「きたねえな、ご利益あるのかよ。」
リズリ―「大丈夫。このお守りのおかげで十年以上わたしは空中ブランコを失敗してないんだから。」
フィリップ「ふ~ん。まあ、もらっとくわ、じゃあな。」
手に乗ったムスサウルスを見つめるリズリ―「・・・・・・。」

『恐竜大陸サウラシア』脚本④

オーテリーブのメインゲート
アニー「ラム・・・」
ユタラプトルの手入れをするコープ「これはブラウン夫人。ということはそいつらがあなたの助っ人ってことか・・・」
フィリップ「ブラウン夫人!?夫人!???」
リズリ―「あ~らら・・・」
フィリップ「てめえ、しってたのか!?」
リズリ―「アニーさんに聞けばあ?」
肩を落とすフィリップ。

労働組合「きやがったな!アニー・ブラウン!今日こそ俺たちに賃金を払ってもらうぜ~!
それいけ~!!」
街に入った途端プラカードを掲げた鉱山労働者たちがアニーに駆け寄ってくる。
フィリップ「な、なんだ、あいつら!?」
アニー「うちの鉱山で働く労働組合です。先頭の男は組合長のホーナー。」
労働者たち「金払え~!!こちとら給料無しで命がけで金掘ってんだぞ!!」
アニー「その件は前にもお話ししたはずです。近いうちに必ず支払うと。」
労働者「か~ね!か~ね!払え!払え!」
ホーナー「まあ、みんな落ち着け。・・・ブラウン夫人、近いうちとは具体的にいつだ?」
労働者「そうだ説明しろ!」
アニー「それは・・・」
ホーナー「いいか。俺たち堀り屋の仕事は毎日危険と隣り合わせだ。高所からの落下、落石や落盤事故、塵肺・・・その上今や街から鉱山への道には腹ぺこの恐竜どもがうろついている。そんな中俺たちは必死に働き、ぎりぎりの生活を送っているんだ。」
アニー「それは分かっています。」
ホーナー「いいや、あんたはわかってない。あんたは旦那とは違う。」
フィリップ「旦那!?マジかよ!アニーさんマジで既婚者なのかよ~!」
ホーナー「旦那がここを取り仕切っていた頃はよかった・・・」
フィリップ「しかもいい人っぽいし~!!ちくショ~!!」
ホーナー「ブラウンの旦那が生きていたらきっと俺たちを救ってくれたはずだ。少なくとも俺たちに希望はくれた。」
フィリップ「え!?ブラウンの旦那は死んだの?死んだという解釈でいいのね!?」
ホーナー「さっきからうるせえな、てめえは!」
リズリ―「・・・馬鹿。」
ホーナー「あんたはあの大きなお屋敷で優雅に暮らせていいがな。俺たちをなめるんじゃねえ。これ以上金を払わねえって言うんなら、俺たちはこの仕事を辞めさせてもらう。」
アニー「それは困ります・・・!」
ホーナー「じゃあ答えろ!俺たちにいつ給料を支払う!?」
アニー「来月には必ず・・・」
ホーナー「遅い!はなしにならねえ、みんな出てくぞ!」
アニー「では三日後・・・!」
足を止める労働者たち。
ホーナー「ほう・・・」
アニー「三日後これまで未払い分のお給料をお支払いいたしますわ。」
ホーナー「相当の額だぞ・・・あてはあるのか?」
アニー「あります・・・」
ホーナー「・・・ブラウン夫人あんたの屋敷で話がある。」
引き上げていく労働者

フィリップ「しかしおかしいじゃねえか。金鉱があるのになんで給料が払えないんだよ」
リズリー「なんかすっごい面倒なことに引きずり込まれたんじゃないの?」

コープ「彼女に捕まるとはお前らも運がないな。」
リズリー「あなたはさっきの・・・」
フィリップ「どういうことだよ・・・」
コープ「ついてきな。」



ギルドホール
リズリー「ここは・・・」
フィリップ「なんかガラが悪いのがいっぱいいるぜ」
コープ「恐竜ハンターどものギルドホールだ」
リズリー「じゃあなたも・・・」
コープ「見ろ。これがワイオミングの街を次々に壊滅させている元凶だ。」
リズリー「これって・・・」
コープ「人食い暴君シャープトゥース。賞金額は過去最高の1000万ドル。」
リズリ―「ティラノサウルスがここにいるんですか!?」
フィリップ「ティラミ・・・ス・・・?なにそれ?」
リズリ―「牙だらけの化けものだよ!フレンチ・ダイナソー戦争では凶暴化したティラノサウルスにイギリス軍の一個大隊が全滅・・・最強の恐竜の王・・・もしかして・・・」
コープ「ああ、アニーはあんたらにこいつを倒させ、その懸賞金で労働者に給料を払おうとしているんだよ」
フィリップ「でもよ金鉱があるだろ」
コープ「お前は鈍いな。金は枯渇しているんだよ。」
リズリー「え」



アニーの屋敷
地図を広げるホーナー「なら線路を伸ばして第5鉱区を採掘させればいいだろ」
アニー「しかしあそこは・・・」
ホーナー「ああ、あんたの旦那がなくなった場所だ」
アニー「主人が・・・あそこは人間が決して立ち入ってはいけない場所だと・・・」
ホーナー「そんなこと言っている場合か?」



オーテリーブのギルドホール。
コープの周りにマーシュとその取り巻きが絡んでくる。
マーシュ「ようコープ・・・悪いがシャープトゥースは俺たちがいただくぜ」
コープ「マーシュ・・・お前の腕では無理だ」
マーシュ「ふんそれはどうかな。もうてめえの時代は終わった。」
コープ「そうだな。恐竜を殺し続けたって、恐竜に殺される人間がまた増えるだけだ。」
マーシュ「あいにくだがこっちには新兵器がある。もはやティラノだろうがアロだろうが恐竜なぞ俺たちの敵じゃねえ・・・」

フィリップ「なんだあいつら・・・」
コープ「お前のライバルってところじゃないのか」
リズリー「い、いやこいつはただの売れない俳優で恐竜ハンターなんかじゃ・・・」

フィリップ「し・か・しアロサウルスも大したことねえなあ!オレのムチで一発とは」
ハンター「はあ?声でけえな」
ハンター「アロサウルスって捕獲危険度Aの大型肉食竜だぞ?」
フィリップ「ははは!みなまで言うな三流ハンターの諸君!あんなのオレにしてみりゃ中型よ!ライフルすらいらんわ!」
リズリー「フィリップ!」
フィリップ「ハハフー!」
ムチでハンターたちのライフルを叩き落すフィリップ
ハンター「なにしやがるてめえ!」
フィリップ「お前らももっと頑張ればいつかは俺のようなハンターになれるさ。まあ頑張りたまえ」
「なんなんだこいつは・・・」

マーシュ「おうお前、ここらへんでは見ない顔だな。何者だ。」
フィリップ「よくぞ聞いてくれた!おれは・・・」
リズリー「ヒーローの妄想癖があるんです・・・」
フィリップ「ねえよバカ!」
リズリー「死にたくなきゃあんたは黙ってなさい!」
コープ「アニーが連れてきた凄腕の恐竜ハンターらしいぜ」
マーシュ「なに?」
リズリー「コープさん!」
マーシュ「いいか、てめえが何もんだか知らねえが、俺たちの邪魔をしてみろ。蜂の巣にしてやる」
フィリップ「それはこっちのセリフだぜ。ティラノザウルスはオレが倒す!」

ギルドホールに飛び込んでくる村人「大変だ!NG牧場でランベオサウルスが暴れている!」

マーシュ「よう恐竜ハンターお手並み拝見と行こうじゃねえか、ランベオサウルスくらいお前にかかれば大したことねえんだろ?」
フィリップ「任せろ・・・」



屋外
フィリップ「こいつかこのやろう!てや!」
オルニトレステス(ニワトリ大の恐竜)の上からカゴをのせる。
フィリップ「ヒーハー!任務完了!」
住民「こっちだよ!助けてくだされ~」

家をぶっ壊す巨大なランベオサウルス
フィリップ「ないいいいいいい!!!?でけえ!!!!ゴジラじゃねえか!」
マーシュ「どうした凄腕ハンター?」
リズリー「あんなの相手にするなんて無茶よ・・・コープさんなんとかしてください!」
フィリップ「いやこれはオレの相手だ!手出しは無用!」
コープ「・・・らしいぜ?」
マーシュ「ようコープ。賭けをしねえか?あいつが恐竜に殺されるかどうか!」
コープ「面白いな。」
マーシュ「で、あんたは?」
コープ「オレはあいつが勝つにかけるぜ」
「ぎゃははは!目が曇ったかコープ!あいつはどうみてもライフルすら握ったことがねえ素人だ!」
コープ「そうだな・・・だがムチはあるようだぜ・・・」

ムチを構えるフィリップ

リズリー「やめてフィリップ!やめさせてください、あいつは恐竜ハンターでもなんでもないんです!」
ガヤ「やっちまえ~!」
アニーと一緒に人ごみに近づくホーナー「なんの騒ぎだ!?」
やじうま「ああホーナーさん、あの若いのがランベオサウルスとやりあうようですよ」
ホーナー「なんだと!?アロサウルスすらぺちゃんこにする連中だぞ!」
アニー「フィリップ・・・」
やじうま「なんであいつライフルを使わないんだ!?」
「自殺行為だぞ!」

ムチを振るうフィリップ「ヒーハー!」
ムチの先に興味を示す恐竜。
ムチの先をキョロキョロ追う。

「なんか様子がおかしいぞ」
「ああ・・・」
ムチの先に手を出すランベオサウルス。

フィリップ「よし来いよし来い!」
後ずさるフィリップ。ゆっくりゲートの方に誘導する。
「あのランベオサウルスがまるで飼い猫だ・・・」

フィリップ「おいおいおいそっちじゃないよ・・・」
箱をつつくランベオサウルス
フィリップ「なんだ?マタタビでも入ってんのか?」

ハンター「ボスアレは・・・!」
マーシュ「・・・あのやろう勝手に・・・!」
マーシュを静止するコープ「おっと手出しは無用だぜ。」

箱の中に卵が入っている
フィリップ「へ~おめえ卵が好きなのか。」
頭で卵をわるランベオサウルス。
中から出た赤ん坊をくわえて立ち去る。
フィリップ「あいつ、腹減ってたんだな・・・」
リズリー「違うよ、あの恐竜、母親だったのよ・・・」
フィリップ「でも痩せてたよ?」
リズリー「餌も食べずに探し回ってたんじゃないかしら。よかった・・・」

大歓声「すげえええええ!!ムチだけでランベオサウルスを追っ払った!
「てことはライフルを使ったら本当にティラノも・・・!!」
ホーナー「・・・あんたどこで“あんな奴”見つけてきた?」
微笑むアニー

納得がいかないマーシュ
コープ「200ドル」
マーシュ「ふざけんな!あの野郎は恐竜を仕留めてねえ!とんだ茶番だぜ!」
マーシュの手下のハンター「そうだ!」
「それに勝手に俺たちの獲物を・・・!」

リズリー「俺たち?あんたたちが勝手に略奪したんでしょうが!」
観衆「そーだそーだ!」
マーシュ「くっ・・・いくぞ!」
マーシュの手下「へい!」

アニー「フィリップすごいわ!」
フィリップ「いや~あんな奴らたいしたことないですよ」
面白くないリズリー。

『恐竜大陸サウラシア』脚本③

大陸横断鉄道を降りるフィリップ一同。
セントラルサウラシア駅は高台に建てられており、その周囲をぐるりと高いフェンスが囲んでいる。
フェンスに書かれたパネルを読むリズリー。
リズリー「恐竜の檻・・・?」
アニー「ここからワイオミングへは乗り換えです。駅馬車を呼びましょう。」
フィリップ「呼んできます!おまかせあれ~!」



駅で二人になるリズリ―とアニー。
リズリ―「ミス・ブラウン…」
アニー「あの・・・さっきからずっと言おうと思ってたんだけど・・・ミスじゃないんです。ミセスよ。
それにアニーでいいわ。」
リズリ―「え?結婚なさってたんですか!?」
アニー「ええ・・・」
笑うリズリー。
アニー「?・・・リズリ―ちゃん?」
リズリ―「いや、あいつ馬鹿だな~って思って。・・・アニーさんの旦那さんってどんな人なんですか?」
アニー「名家の当主だったけど、わたしのような貧しい人にも優しい人だった・・・主人はワイオミングに金鉱を持っていたんです。」
リズリ―「へ~カリフォルニア以外にもあるんですね。」
アニー「私はそれを継いだの。羽振りがいいのはそのため…」
リズリ―「それって・・・」
アニー「主人は恐竜に殺されたの。」



駅前のバザーをうろつくフィリップ「ええと駅馬車乗り場は・・・」
「安いよ安いよ」
「檻の中は危険だよ!装備をそろえていかないかい?」
フィリップに声をかける武器屋「ミスター!」
フィリップ「なあ駅馬車乗り場はどこだい?」
武器屋「それなら反対側だぜミスター!それより檻の中は凶暴な恐竜でいっぱいだぜ?なにか買ってかないかい?」
フィリップ「いやいい、俺にはこれ(ムチ)があるんでな・・・」
武器屋「え・・・それだけ・・・あ、ああ・・・そう・・・な、なんかいろいろごめんな・・・」
ほかの通行人に話しかける武器屋「ようミスター!このスラッグ防竜ガン(でかくてごついショットガンを持ち上げる)はすごいぜ!」

ハンターの怒鳴り声「てめえ騙しやがったな!」
バッカー「騙すなんてそんな・・・このライフル弾はブラキオサウルスも一撃で殺せる代物で」
ハンター「嘘つけばかやろう!ヒプシロフォドンにも効かなかったぞ!」
バッカー「そりゃあ旦那の腕が・・・」
ハンター「なんだとてめえ!!」
ドン・マーシュ「なんの騒ぎだ?」
ハンター「はっボ、ボス。こいつがまがい物ばかり売りつけていて・・・」
バッカー「まがい物だなんてそんな・・・」
マーシュ「ほう・・・」
バッカー「あんた名うての恐竜ハンターと見たぜ!これ買ってかないかい?
(メガホンを取り出す)あの恐竜の王様ティラノサウルスの鳴き声が出る画期的道具だ。これさえあればどんな恐竜も逃げ出すぜ?」
マーシュ「面白いな、じゃあお前はレックスの鳴き声を聞いたってわけか」
バッカー「そりゃあもちろん・・・」
仲間を引き連れその場を後にするマーシュ「うそだな。」
バッカー「買ってくれよ旦那~」
マーシュ「やつに出会った人間は必ず殺される。てめえで試すんだな。」

バッカー「・・・・・・くそ。」
フィリップ「おい、それ本当にどんな恐竜も逃げ出すのか?」
バッカー「え・・・?」
フィリップ「いくら?」
バッカー「ミスターわかってるねえ!ほ、他にもいろいろあるんだ見てってよ!って・・・兄貴!」
フィリップ「お前バッカーか?!生きてたかバカ野郎何やってんだよここで!」
バッカー「そっちこそ!いやね、オレ舞台の小道具とか特効やってたじゃない、でも最近ショウビズの世界も先が見えなくてさ、ジョン・カーネギーっているじゃん?」
フィリップ「あああの実業家か。」
バッカー「なんだか知らないけどあいつがブロードウェイの劇場をバシバシ買収してさ、ボクらみんなクビにされちゃったんだよ。
だから今は恐竜ハンター相手に特殊効果で培った技術を使って商売しているってわけ。」
フィリップ「なんだよ舞台の小道具かよ・・・」
バッカー「いやいやいや!恐竜にだってハッタリは通用するよ」
透明な銃弾をつまむフィリップ「なんだこのひときわ胡散臭い弾丸は・・・?」
バッカー「いくらオレッチでもそんなちゃちなもんは売らないな。さっきのやつらが落として行ったんだな」
「ふ~ん・・・」
「で、兄貴の方は?」
「あ、そうだ駅馬車みつけねえと!」
「ああ、待った待った!」
「?」
「安くしとくよ」



リズリー「あいつなにやってるんだろう・・・」
アニー「駅馬車が全て出払っているのかもしれませんわ」
二人に駆け寄ってくるフィリップ「駅馬車来ました!」

馬車を引く巨大な角竜(傷だらけのトリケラトプス)がのろのろ歩いてくる。

リズリー「なんか・・・ずいぶんくたびれた馬車ね・・・」
バッカー「わかってないねえお嬢ちゃん!こいつは最強の角竜リッチフィールドだ!」
リズリー「リッチ・・・」
フィリップ「お乗りくださいアニーさん!」
アニー「・・・・・・。」
フィリップ「アニーさん?」
何事もなかったように微笑むアニー「ありがとう。さあいきましょう。」
バッカー「ね、ね、これ(恋人)?」
「ま、まあな・・・!」
「相変わらずモテモテだね~」
リズリー「フィリップ!」
バッカー「あの子は?ファン?」
フィリップ「ん知らない子」

トリケラトプスにムチを入れる御者。荒野を進む馬車。



馬車の車内。
フィリップ「・・・どうした?暗い顔して。」
リズリ―「・・・ねえ。用心棒やめたら・・・?」
フィリップ「ここまで来て何言ってるんだ。俺はやるよ?やっちゃうよ??」
リズリ―「いい?その小さな脳味噌でもう一度考えてみて。街を壊滅させるような恐竜と本当にあなたが戦えるの?」
フィリップ「任せろ。俺は愛の力で戦うから。アニーさん。」
アニー「まあ頼もしい。」
リズリ―「ほんとステゴサウルスよりバカだ、こいつ・・・」



夜。
ぼんやりと外の景色を眺めているリズリ―。暗闇の中で光る目に気付く。
フクロウのような目と鉤爪を持った夜行性の小型の恐竜(トロオドン)が叩き潰されたゴーストタウンをあさっている。
恐竜は餌を指で器用につかみ、何かを食べている。
違和感を感じ暗闇に目をこらすリズリ―。
恐竜が咥えていたのは人間の手だった。
身震いするリズリー。
男が木の枝に突き刺さっている。
「タスケテ・・・タスケテ・・・」
小声のアニー「助けようと思ってはいけません。彼はもう死んでいます。」
リズリー「でも声が・・・」
アニー「あれは声帯模写が得意なエラフロサウルスのはやにえです。ああやって助けようと近づいた人を襲うんです。」
茂みの中で恐竜が「タスケテ」と声を出している。
リズリ―「とんでもないところにきてしまった・・・」



夜明け
ステゴサウルスと戦うアロサウルスの群れ。
それを双眼鏡で眺めるコープ「アロサウルスが強敵のステゴサウルスを狙うとは・・・エサ不足は深刻か・・・」
馬の足音に気づき逃げ出すアロサウルス。
馬にまたがった男たちが銃を撃ちながら恐竜を追いかける。
「イーハー!あのステノプス、俺がいただく!」
「うるせえ!俺の獲物に手を出すんじゃねえ!」
「たわけが!早い者勝ちじゃ~!!」

コープ「あいつら、こんなとこまで・・・」

ハンター「しっぽに気をつけろ!」
しっぽで殴られるハンター達「ぎゃあああ!」
「くそ、生け捕りは諦めろ!撃ち殺せ!」
マーシュ「待て・・・」
「お頭・・・」
「新兵器を試してみようじゃないか・・・」
バレットに透明の弾丸を詰めるマーシュ。
不思議な弾丸を撃つマーシュ。消えるステゴサウルス。
コープ「あれは・・・」



アニー「だいぶ来ましたね。」
リズリ―「あの~・・・ま、まだアニーさんの街にはつかないんですか?」
フィリップ「これはモービルじゃないんだ、無茶言うなよ。」
アニー「あと二、三時間だと思いますよ。もうしばらく辛抱してください。」
リズリ―「で、でもここって無法地帯ですよね。昨日のこともあるし、もう少し急いだ方がいいんじゃ・・・」
フィリップ「びびってんじゃねえよ、まったく・・・」
その直後地響きと轟音が轟く。馬(=角竜)が驚き馬車のスピードが上がる。
フィリップ「おいおい、はええよ、こいつのリクエストはいいから!」
窓の外を見つめ続けるアニー「いや・・・違うと思いますよ・・・周りを団体さんに囲まれてますから。」
暴走する馬車の周りには獰猛な大型肉食恐竜の群れが猛スピードで並走している。
フィリップ「なんじゃありゃああああ!!」
アニー「地獄谷一帯を支配する肉食竜アロサウルスです。」
リズリー「御者がいないよ・・・!」
アニー「フィリップ彼らを追い払いましょう!私は馬車を制御します!」
リズリ―「外に出るのは危険ですよ!」
アニー「しかしこのままここにいる方がもっと危険です!」
アロサウルスが馬車の側面に頭をぶつける。大きく揺れる車内。
アニー「時間がありません!フィリップは援護射撃をお願いします!!」
フィリップ「よっしゃあ!俺の出番だぜ~!」
ライフルを構えるが弾が出ない
「あれ?なんだこれ不良品じゃねえ?」
リズリ―「ええええ!この前ライフル撃ったんでしょフィリップ!あいつらの耳元でズドンとやれば逃げてくわよ!」
フィリップ「このRX3型はオレ使ったことがねえんだよ」
リズリー「なに言い訳してんだ!このバカ横のレバーを押すんだよ!」
その瞬間馬車の側面がぶち壊されアロサウルスの顔が突っ込んでくる。
びびるフィリップ「ぎょえええええ!」
リズリ―「ああ、もう!見てられない!!」
リズリ―はフィリップのライフルを奪おうとする。
フィリップ「やめろ危ないから!銃は危ないから!!」
ライフルをとり合う二人。ライフルは暴発しアロサウルスの肝をつぶす。銃声に驚いた一頭のアロサウルスは速度を落とし、後方へ消える。
リズリ―「ほら!撃てば逃げてくから!」
フィリップ「ようしここは俺に任せい!ヒ~ハ~!!」
ライフルを撃ちまくるフィリップ。
「ばきゅ~んばきゅ~ん!」
「ダメだ全然当たってないよ!」
「うるさいなお前は!当たってるよ!当たってるけど効かないんだよ!」
「じゃあ変わらないじゃない!」
「お前はいつも・・・・」

アニーは外に出て御者の乗るステップに向かう。暴走する馬車の先は崖だった。
アニー「崖・・・!」
手綱を握りなんとか暴走を止めようと試みる。
馬車から人間が出てきたのに気づいたアロサウルスがアニーに牙をむく。
リズリ―「アニーさん!後ろ!」
アニー「・・・・・・!」
パンという銃声。アニーに襲い掛かったアロサウルスの鼻づらから血が出てぶっ倒れる。後方のアロサウルスは急に倒れた仲間にけつまづいて転んでいく。
リズリ―「・・・?フィリップ!?」
ライフルを適当に撃つフィリップ「ヒ~ハ~!!」
リズリ―「すごい・・・めちゃくちゃビギナーズラックだけど!!」
アニー「それより馬を止めないと・・・!」
リズリ―「アニーさんもっと手綱を引いて!」
アニー「駄目です!ちっとも言う事を聞いてくれない・・・!」
フィリップ「恐竜ハンターフィリップに任せとけ~い!!」
アロサウルスを追い払ったことで調子に乗ったフィリップが馬車から軽やかに飛び出てトリケラトプスにまたがり脇腹を思い切り蹴りつけて手綱を引く。
フィリップ「ヒ~ハ~!!!」
馬車の方向が変わり崖っぷちに沿って疾走する。
勢いあまって崖から落ちるアロサウルス。
アニー「すごい・・・!」
リズリ―「さすがサーカス団!」

崖ギリギリを走るトリケラトプスの馬車と猛追するアロサウルスたち。
高台にユタラプトルに乗ったコープが援護射撃をしている。

リズリー「あ、味方ですよ!」
コープ「進路をまっすぐ取れ!連中とまともに戦っても勝ち目はないぞ!」
アニー「ラム!」
リズリー「知り合い?」
再接近するアロサウルス。
フィリップ「こいつらなんで馬車ばっか狙うんだよ!」
アニー「人間を襲う方が手っ取り早いからです。」
地面が振動する。
前方にアパトサウルスの群れが見える。アパトサウルスはムチのような長い尻尾をこちらに向けてくる。
「なんかデカイのがいる~~!!」

アパトサウルスの群れのなかに突っ込む馬車とアロサウルス。
足を持ち上げ踏みつぶそうとする。
ムチのようなしっぽが飛んでくる
アニー「ふせて!」
しっぽが馬車をかすめ後ろのアロサウルスに当たり吹っ飛ぶ。

馬車の前方にオーテリーブのゲートが見えてくる。
リズリー「あれは!?」
「街だ・・・!」

鐘が鳴るオーテリーブ
村人「ゲートを開けろ!」

アニー「もう少しです!」
リズリー「なんかばてて失速してない!?」
フィリップ「頑張れトリケラザウルス!」

ゲート内に滑り込む馬車。
「ゲート閉鎖!」
すぐに閉まるゲート。
ゲートにぶつかるアロサウルス。ゲートの向こうで唸り声を上げ引きかえしていく。

「はあはあ・・・」
「助かった・・・?」
アニー「さすがですわ・・・」
フィリップ「いやあ大したことはないっすよ」
アニー「ええ、あれはまだ中型の方です。もっと恐ろしいものがいる」
フィリップ「え・・・?マジかい」
ユタラプトルから降りるコープ「恐竜大陸サウラシアへようこそ」

『恐竜大陸サウラシア』脚本②

大陸横断鉄道ニューヨーク駅。
アナウンス「大陸横断超特急にご乗車のお客様は・・・」
アニー「もうじき発車みたいですわね。」
アニーの荷物を持つフィリップ「へい!」
リズリ―「かっこわるい。それじゃ、まるでミス・ブラウンの従者じゃない。」
フィリップ「リズリ―・・・!?なんでお前ここに?」
アニー「フィリップ?」
フィリップ「ちょっと時間良いですか。」

腕時計見ながらホームで待つアニー。
リズリ―「きちゃった。」
小声のフィリップ「なんだよ、お前サーカスに帰れよ。」
リズリ―「なによ、心配してついてきたって言うのに。だいたいあんたに美女を守る英雄なんて向いてないのよ。」
フィリップ「はいはい。ぴゃらぱ~」
リズリ―「むかつくわ、その態度。」
フィリップ「おい、とにかく勝手にサーカス抜けだしたらやばいだろうが。早く戻った方がいいぞ。」
リズリ―「ねえ。私も連れてって。」
フィリップ「連れてってって、お前金は・・・」
リズリ―「ないよ。」
フィリップ「汽車乗れねえじゃん。」
リズリ―「ミス・ブラウンに掛け合ってよ。あの人どうせ金持ちなんだから。」
フィリップ「馬鹿言うんじゃねえよ。」
アニー「そろそろいきますよ。」
フィリップ「あ、はい。」
リズリ―「・・・いいのかな~?」
フィリップ「なんだよ・・・」
リズリ―「ミス・ブラウンに猛獣ショーのネタばらしちゃおうかな~」
フィリップ「てってめえ・・・!」
リズリ―「そうなれば、この話はオジャン。あんたも私もサーカスに逆戻り。ふふふ・・・どうする?」
フィリップ「きたねえ・・・!なんてキタネエ野郎だ!」

動き出す汽車。
リズリ―「わあ、動いた!わたし汽車乗るの初めてなんです!」
フィリップ「うっせえよ。すいませんね、こいつ分の汽車賃も出してもらって・・・」
アニー「ふふふ・・・いいんですよ。」
リズリ―「みて!景色があんなに早く動いて・・・」
はしゃぐリズリ―をひっぱたくフィリップ「おめえも礼を言わねえか!」
リズリ―「あ、ありがとうございます・・・」
アニー「お二人はどういう関係?恋人?」
二人「ただの幼馴染です!」
フィリップ「大体なんでこんな貧乏くさい小娘とつきあわなくちゃいけないんですか。御冗談が過ぎますよ。ははは。」
リズリ―「あんただって昨日まで借金まみれだったじゃない。」
フィリップ「うるせえ!」
リズリ―「聞いてくださいよ、ブラウンさん。私がサーカスに売られる時こいつ「将来立派な俳優になって必ずお前を救ってやる」とかくさいこと言って・・・結局こいつも俳優業が泣かず飛ばずで借金背負ってあたしのサーカスにぶちこまれたんですよ~」
フィリップ「て、てめえ俺の忘れたい過去を・・・!」
リズリ―「だからあまりこいつの言う事真に受けない方が・・・」
アニー「そうなんですか・・・」
フィリップ「こいつの話はフィクションであり実際の事件、団体名とは一切関係がありません。」
リズリ―「うそばっか。」
リズリ―と組み合うフィリップ「てめえ、汽車から放り出してやる~!」
リズリ―「のぞむところだ~!」
アニー「ちょっちょ・・・二人ともやめて・・・みてください。橋ですよ。いよいよここからサウラシアです。」

ミシシッピ内陸海橋を渡る汽車。橋の下にはパキケファロサウルスの群れが走っている。
ツアーガイドがツアー客に解説をする。「え~みなさんここからがララミディア大陸、通称サウラシア、野生の恐竜たちの住むエリアに入ります。
みなさんは恐竜たちが絶滅した原因は巨大隕石衝突であることはご存知ですね。これにより五大陸のうち四大陸の恐竜は絶滅。しかし大航海時代に発見されたこの新大陸だけは、恐竜たちが今なお生き残るまさに失われた世界だったのです。
ピューリタン革命によってこの地に移った英国移民一世はフランスや母国イギリスそして西部に多く生息する野生の恐竜たちと戦い、この大陸をフロンティアスピリッツで開拓していったんですね。」
平原にはオルニトミムスやハドロサウルス、アパトサウルスなどたくさんの種類の恐竜が闊歩している。
窓を覗きこむリズリ―「すごいすごい!見たことない恐竜ばっかりいる!」
フィリップ「どうでもいいよ、そんなん。ガキかお前は。」
アニー「フィリップは恐竜が嫌いですか?」
フィリップ「ええ。連中はただのばかでかいトカゲの化けものですよ。」
リズリ―「恐竜に喰われる役ばっかやらされたからね~」
フィリップ「いちいちうるせえな。」
アニー「わたくしも同感です。恐竜は嫌い・・・」
フィリップ「いやあ、気が合いますな。」
リズリ―「・・・・・・。」
ガイド「さあ、ここからは皆さんお待ちかねのトリケラトプス撃ち放題ゾーンです!」
フィリップ「向こうの客車でなんかはじまったぞ・・・」
リズリ―「ほんとだ。」
アニー「ああ、ファーストクラスの車両には鉄道の旅を楽しみながら恐竜狩りができるサービスがオプションで付いているんですわ。」
リズリ―「どういうこと?」
アニー「ライフルで窓から外にいる恐竜を狩るんです。定額料金を払えば、弾は撃ち放題。
まあ鉄道会社が貴族相手に考えたゲームですわね。鉄道会社にとってはお金も入るうえ、たびたび鉄道を止める恐竜の群れも駆除できて一石二鳥というわけですわ。」
フィリップ「ほ・・・ほほ~・・・」
銃声と恐竜の悲鳴が聞こえだす。
アニー「どうです?本番前に腕ならしでもしますか?」
フィリップ「いや・・・もう有名どころの恐竜は狩りつくしたんで・・・お前どこ行くの?」
リズリ―「・・・ちょっと風にあたってくる。」
アニー「あら、乗り物酔いかしら。」
フィリップ「あいつのことはほっといてください。」

バルコニーに出るリズリ―。ムスサウルスを手のひらに乗せる。
「・・・優しい恐竜だっているのに・・・貴族のたしなみは理解できないわ。」
ライフルを抱えるフィリップ「お前貧乏人だからな。」
リズリ―「フィリップ・・・あんたもしかして・・・」
フィリップ「ミス・ブラウン・・・アニーさんにやらせてもらった。これで俺も貴族だぜい!」
リズリ―「馬鹿じゃないの・・・」
フィリップ「心配するな。ちょっとトリケラザウルスを脅かしてやっただけ。」
リズリ―「どーせ弾が当たらなかったんでしょう・・・あんな事やって絶対後でしっぺ返しが来るわよ。」
フィリップ「ゴジラの逆襲か?なははは・・・なは・・・どうだ面白いか?」
呆れてため息をつくリズリ―。
列車からライフルを撃つ貴族たち。



荒野の真ん中にある寂れた街。
街の周りには恐竜が入らないように高いバリケードがそびえ立っている。
鎧竜が柵に突っ込んでくる
「ぎゃあああ」
「助けて~~!!」
見張り「第二バリケードが破壊!」
帽子をかぶりながら見張り台に指示を出すコープ「鐘を鳴らせ!!住民を避難させるんだ」
コープにライフルを放り投げる自警団「コープ!」
ライフルを取るコープ。素早く弾を装填する「敵は!?」
「アルマジロ野郎が二頭!家畜の資料を狙ってきやがった!」
コープ「またか・・・」
恐竜から逃げ出す住人たち
自警団「俺たちも加勢するぜ旦那!」
コープ「いやお前らは住民たちを頼む。やつは俺ひとりでやる。」
「しかし!」
ユタラプトルにまたがるコープ「死にたくなければオレに関わるな。」

ミモオラペルタに向かって発砲する牧場主「こいつらオレの牧場を!」
コープ「やめろむやみに撃つんじゃない!」
突進してくるミモオラペルタ
逃げ出す人々
「怒らせちまった」
発砲してミモオラペルタの気を惹き付けるコープ「こっちだ!」
コープを追いかけるミモオラペルタ
段差の直前で急に方向転換をし、一頭をひっくり返す

狭い路地に追い込みミモオラペルタの両肩の長い刺が塀や建物を切り裂いていく。
そのうち刺が引っかかり動けなくなる。

ミモオラペルタの死骸
「やった!」
コープ「ふー・・・でこっちの被害は?」
「踏み潰されて家畜が3頭死んだ。あと刺にやられて怪我人が数人・・・」
「早いところバリケードを直したほうがいいな」
ミモオラペルタに目をやる労働者のリーダー、ホーナー組合長「いつまでこんなことが続くんだ」
コープ「街を出て行かない限りずっと続くさ」
ホーナー「金鉱を捨てろってか。」
コープ「じゃあ恐竜を一頭残らず皆殺しにするか?」
ホーナー「あんたがやってくれるのか」
コープ「ごめんだね」
ホーナー「だがあんたハンターだろう?」
コープ「いいや・・・」
遠くで肉食竜の咆哮が聞こえる
コープ「あいつらだよ」

『恐竜大陸サウラシア』脚本①

1889年アメリカ合衆国。荒野。
東海岸の都市に向かう大陸横断鉄道が停車している。
ボール信号が下がっている。
停車中の汽車の乗客に美しい貴婦人が乗っている。
乗客1「おいおい冗談じゃねえよ!いつまでまたせんだよ!」
乗客2「まあまあハイボールでも呑んで一杯やろうや」
車掌が客車の通路を通る。
乗客1「おい、今度はなんだ?バイソンの群か?」
車掌「いえ・・・アパトサウルスです。」
蒸気機関車の前には巨大な恐竜の群れがゆっくりと歩きながら線路を横断している。



フィラデルフィア。
「ワイルドウエストサーカス」と書かれた巨大なテント。
団員「よってらっしゃい!みてらっしゃい!マジックにジャグリング、空中ブランコ、猛獣使い・・・!ここでしかみられない曲芸ばかりだよ!」
テントに客が集まっている。
サーカスの看板にはたくさんの恐竜と大きく猛獣使いフィリップの絵が描かれている。
恐竜好きな子ども「ママ!ここに描いてある恐竜の名前全部言えるよ!ええとこれ、パラサウロロフスでしょ、これはステゴサウルス・・・」

テント内では小柄な美少女が空中ブランコの芸をはじめるところだ。
団長「さあ、彼女がむかうは地上15メートル!」
ブラキオサウルスに咥えられて、高所のステップに持ち上げられる女の子。
団長「しかも下にあるのは安全ネットじゃなく剣山だ~!」
ブランコの下にスパイクのついた剣竜が移動してくる。
声を漏らす観客。
団長「落ちたら死あるのみ!彼女の運命やいかに!鳥になれ!リズリ―・ダグラ~ス!」
リズリ―「鳥になれ…か。」
幸運のお守りのスカーフを握る「守ってよね・・・さあ、いこう。」
ブランコを掴み勢いよくスイングさせるリズリ―。
照明機材を持って飛行するプテラノドンがリズリーにスポットライトを向ける。
パラサウロロフスが合図のトランペットのような鳴き声を出す。
リズリ―はスイングする空中ブランコから手を放し、空中で回転しながら、曲竜(アンキロサウルス)のピラミッドに着地する。
観客の大歓声。リズリ―は微笑んでお辞儀する。
団長「さあここからはたいへん危険です!みなさん我がサーカス会場に凶暴な肉食恐竜が襲来しました!みんな逃げるんだ~!!」
照明が消え、再び照明がつくと鎖につながれたワニのような顔つきの巨大な肉食恐竜アンガトラマがステージの上で暴れている。
ステージの裏では鞭を持った男が出番を待っている。
「さてと、いよいよ主役の出番だぜ。」
アンガトラマの鎖が切れて恐竜はステージを歩きまわる。
会場に悲鳴が上がる。
「こいつはやばいぞ!こうなったらあの男を呼ぶしかない!いよいよ我がサーカスの目玉!彼の前ではどんな怪物もひれ伏すでしょう!ミスターフィリップ・バックランド!拍手でお迎えください!」
パキリノサウルスにまたがって登場するフィリップ「イッツァショータイムだ!ヒ~ハ~!!」
角竜から飛び降りるとフィリップは一切恐れることなく鞭で恐竜と戦う。
アンガトラマは腕の鉤爪をふるって攻撃するがフィリップは鞭で相手の腕を叩き、ひるませる。
歓声が上がる。
アンガトラマは長い顎を大きく開き怒号をあげる。
フィリップ「は~はっは図体がでかいだけの雑魚が~!
そんな脅しこのフィリップ様には通じんわ~!ヒ~ハ~!!」
その瞬間、フィリップはパクリとアンガトラマに食べられてしまう。観客の悲鳴。
団長「なななななんてことだ~!まったくの予期せぬ事故!我らの英雄フィリップがやられた~!!」
雄たけびをあげるアンガトラマ。
団長「もはやこの人食い恐竜から我々を救う救世主は現れないというのか~!!」
フィリップ「は~はっはっは~!俺はまだまだ死なんぞ!」
団長「フィリップどこだ!?」
アンガトラマが苦しみだす。
団長「み、見ろ!怪物が苦しんでいる!フィリップがお腹の中で戦ってくれているんだ!」
照明がアンガトラマのケツに向けられる。
恐竜のケツからひょこっと顔を出すフィリップ「ヒ~ハ~!」
団長「あ、あそこだ~!」
ケツから飛び出すフィリップ「フィリップ様ただいま復活!」
会場はヒートアップ。
フィリップ「さあ第二ラウンドだぜ!!」
会場の恐竜好きな生意気なガキ「ママ。さっきからアイツやたらはりきってるけど・・・あの恐竜って魚しか食べないんだよ。」
その一言で会場が凍りつく。「え・・・・・・。」
無言でぞろぞろと会場から出ていく観客。
フィリップ「あ、あのクソガキ、何言って・・・!」
観客「ブーブー!てめ~嘘だったのか~!ひっこめ~!金返せ~!」
フィリップ「う・・・嘘じゃねえ!現に俺こいつに一回食われてケツから出てきたじゃねえか!」
観客「それこそ嘘じゃねえか!死ね~!」客に物を投げつけられるフィリップ。
フィリップ「い、いてえなこの野郎!」
投げつけられた物が当り「キャイ~ン」と情けない声をあげて舞台そでに逃げていくアンガトラマ。
フィリップ「あ、コラ!にげるな!」
大ブーイング。しかし観客の一人だけは感動しフィリップに拍手を送っていた。
アニー「街を救えるのはあの人しかいない・・・」
最悪の形で興行を終えたサーカス。看板に描かれたフィリップの顔には落書きがされている。



団員の楽屋。
椅子にふんぞり返り机にドンと足を投げ出す。
フィリップ「なんだ、あのクソガキ。」
メイクを落とすリズリ―「気にしない方がいいってフィリップ。」
職人「そうそう。幕張の恐竜博とか行ったらああいう生意気なガキ必ずいるんだ。」
フィリップ「魚しか食べねえってんなら、てめえがやってみろってんだ・・・」
アンガトラマにばんそうこうをはるフィリップ「ほい、いっちょあがり」
フィリップをなめるアンガトラマ
「や・・・やめろ!やめろバカ野郎!大量のよだれが!」
リズリー「あいかわらず恐竜と仲がいいこと」
フィリップ「どこがだ!これだから恐竜は嫌いなんだよ」
ムスサウルスがフィリップのフルーツを盗む
「あ!てめえオレの果物返せ!」
リズリー「恐竜と同レベルだから好かれるのね・・・」
フィリップ「いちいちうるせえな・・・おいおいとっつあん、なにやってんだよ。」
サーカスの看板のイラストをペンキで描き変える職人「いや・・・」
フィリップ「ちょちょちょちょっと待てよ。俺の絵消されてるじゃねえか。」
職人「団長の意向でな。」
フィリップ「グレゴリーが?」
楽屋に入ってくる団長「その通り。フィリップ、もうあの猛獣ショーをうちの目玉にするのは限界だよ。みんなあの恐竜が“大きな子犬”だってことを知ってる。」
フィリップ「冗談じゃねえよ。じゃあこのサーカスは何を目玉にすればいいんだよ・・・」
フィリップの代わりにリズリ―の絵が描かれている。
団長「これからはリズリ―の空中アクロバットショーを目玉にする。彼女には今の三倍飛んでもらえばいいだろ。実際今日もお前さんよりも受けてたわけで…」
団長の胸倉をつかむフィリップ「俺にこいつの前座をやれって言うのか!」
リズリ―「そ、そうですよ、私だって今の三倍もあれをやるなんて無茶です・・・勘弁してくださいよ・・・!」
団長「きみらはどうもわかってないようだな。雇い主は私だ。決定には従ってもらう。」
リズリ―「そんな・・・」
フィリップ「俺を誰だと思っていやがる!」
団長「失業中の俳優だろ。しかも恐竜の喰われ役。」
フィリップ「うるせー!」
団長を突き飛ばすフィリップ
咳き込む団長「現実を見てくれよフィル。もうあんたが拍手喝采を浴びることはないんだ」



楽屋に残ったフィリップとリズリ―。
フィリップ「グレゴリーのくそったれ。」
リズリ―「私なんてあんなこと続けてたら遅かれ早かれ死んじゃうよ。実際どんどんショーの内容が過激になってるし・・・」
フィリップ「グレゴリーのくそったれ。」
リズリ―「そのうち火の輪くぐりもコラボされる。きっと。」
フィリップ「グレゴリーのくそったれ。」
リズリ―「ダイハツコルテオじゃないんだこっちは。」
フィリップ「グレゴリーのくそったれ。」
楽屋のドアがノックされる。フィリップ「お前でろ。」
リズリ―「はいはい。」
煙草に火をつけるフィリップ「グレゴリーのうんこ。」
来客とドア越しに会話するリズリー「・・・あの、失礼ですが人違いでは・・・それにそういう話は保安官か猟友会にするべきでは・・・」
背を向けて声をかけるフィリップ「なに!?」
リズリ―「どう考えても怪しい依頼なんだけど・・・」
フィリップ「とっとと追い返せ・・・こっちはこれからの人生考えるので手一杯なんだよ」
リズリー「バックランド本人もそう申しておりますので、大変失礼ですがお引き取りを・・・」
フィリップ「・・・ったく馬鹿共が・・・」
リズリ―「ミス・ブラウン・・・」
フィリップ(女!?)振り向くとドアのそばに身なりのいい美しい女性が立っている。
アニー「そうですか・・・無理を言ってすいませんでした・・・」
リズリ―「ええ、確かにサーカス団員に街の用心棒を頼むのはばっかじゃねえのっていうか・・・」
リズリ―を突きとばすフィリップ「どけい!」
リズリ―「ぐわっ!」
フィリップ「先ほどはこのこ汚い小娘が失礼を。どうぞお座りください。詳しいお話を聞きましょう。」
リズリ―「こ、こいつは・・・」

貴婦人にお茶を出すリズリ―「安物ですがどうぞ。」
アニー「ありがとう。」
フィリップ「いやあ、掃き溜めに鶴とはこのことですな。」
リズリ―「わたしゃ掃き溜めかい・・・」
アニー「わたくし西部ワイオミングからやってきましたアニー・ブラウンと申します。さきほどのバックランド様のショー・・・大変感動いたしました。」
フィリップ「いやあ、あれしき大した事ありませんよ。」
リズリ―「相手は巨大な子犬だしね。」
アニー「子犬?」
フィリップ「あいつの言う事は聞き流してください。たびたび辻褄の合わないことを言うので。」
リズリ―「ひでえ。」
アニー「バックランドさんは一体どうやってあの凶暴な恐竜たちを手懐けているんですか?」
フィリップ「ああ、あれ?大したことはないですよ。連中も所詮は動物ですからね、私がムチでピシリとやれば逆らっちゃきません」
アニー「どんな恐竜もですか?」
フィリップ「うん、まあね。だいたいいけるね」
アニー「すごい!あなたに会えて本当によかった・・・!」
フィリップ「ひ~は~!」
ため息をつくリズリー「は~」

アニー「ワイオミングの集落は今凶暴化した恐竜によって深刻な危機にあります。」
フィリップ「穏やかじゃないな。」
アニー「ご存知の通り恐竜には一頭でアフリカゾウの群れに匹敵する体重のものもいます。
彼らが一度街で暴れたら取り返しがつきません。」
フィリップ「恐竜どもは昔から西部の街を襲ってたんですか?」
アニー「いえ、数年前までは人間の住む集落には近づきもしませんでした。でも、今は・・・私達の街の近くの集落が次々に壊滅していくのに保安官や軍隊は凶暴化した恐竜に恐れをなして動いてくれません。
今こそあなたのような勇気のある人の力が必要なんです・・・!」
腕を組むフィリップ「ふむ・・・」
リズリ―「思慮深い振りして何も考えてませんよ、この人。」
フィリップ「出てけ、この野郎!・・・わかりました。恐竜討伐お引き受けしましょう。」
リズリ―「ちょっと、なにいってんの!あんた団長に借金してこのサーカスに雇われてるんだよ・・・!ショーはどうなるのよ!?」
フィリップ「どうせサーカスのスターはお前になるんだ。ここに・・・俺の居場所はねえ。」
リズリ―「なにかっこつけてんだ、こいつは!」
団長「話は聞いたぞ!」
リズリ―「グレゴリー団長!・・・聞いてくださいよ、この男サーカスやめて恐竜ハンターになるとか言ってますよ!」
懐に札束を隠している団長「いかせてやりなさいリズリ―。私にはお前がいればいい。私は話の分かる興行主だ。」
リズリ―「はあ!?・・・ってなんですかその懐にごっそりある札束は!」
団長「彼も進化の時なのかもしれんな・・・」
リズリ―「なんかこのオッサンもくさいセリフ言ってるんですけど!」
アニー「もちろん借金の肩代わりだけでなく、あなたには多額のギャラをお支払いしますわ。
さあ、この小切手に好きな数字をどうぞ…」
フィリップ「まじで!?」
団長「その貴婦人を救ってやれ!」
リズリ―「本当にサーカスをやめちゃうの!?もう一度考え直そうよフィリップ・・・!」
フィリップ「・・・・・・。」
リズリ―「フィリップ・・・!」
フィリップ「悪いがギャラは受け取れないな。」
安心して微笑むリズリ―「フィリップ!そうよ、恐竜ハンターなんて絶対危ないもん!」
フィリップ「私のギャラは貴方の笑顔で結構。」
リズリ―「はあああああ!?」
フィリップ「さあ、参りましょう。」
アニーと共に楽屋を出ていこうとするフィリップ。
アニー「なんて素敵な方・・・ありがとう。では明日の朝さっそく現地へ。汽車の手配は済んでおりますわ。」
フィリップ「じゃ、グレゴリ―世話になったな!」
団長「御達者で。」
フィリップの脚をつかむリズリ―「ちょっと本当に行っちゃうの!?」
フィリップ「はなせい!煩わしいな、スターの俺にこんな小汚い所似合わねえんだよ!」
リズリ―「こんなうまい話絶対裏があるって・・・!」
フィリップ「てめえこの人が俺を騙してるって言うのか!蹴とばすぞ!」
団長「ほら、はなすんだリズ!」
フィリップ「サーカスのことはお前に任せた!じゃあな!」
リズリ―「この馬鹿野郎!恐竜に喰われろ!」



満月の夜。
恐竜の厩舎で体育座りして物思いにふけるリズリ―。
リズリー「なんか・・・ひどいこと言って別れちゃったな・・・あいつ・・・馬鹿だったけど・・・
もう二度と会えないんだよな・・・・・・もう・・・謝れないんだな・・・」
厩舎でさみしそうにうずくまっているリズリ―に恐竜たちが近づいてくる。
リズリ―「・・・ん?なぐさめてくれるの?」
アンガトラマが鼻づらを優しく近づける。
パキリノサウルスが団長の小屋の窓の近くに立ち、それに乗ったムスサウルスが窓をのぞく。
小屋の中では団長が酔っ払って寝ている。ムスサウルスが合図を送る。
ブラキオサウルスがリズリ―を咥えてフェンスの外に持ち上げる。
リズリ―「ちょちょちょ・・・なにを・・・!」
翼竜がリズリ―の荷物の入ったリュックを持ち上げフェンスの外に運ぶ。
サーカスの外に下ろされるリズリ―「みんな・・・」
リズリ―を見送るサーカスの恐竜たち。
リズリー「ありがとう。」
リズリ―の肩にムスサウルスが乗っているのに気付く。
リズリ―「よし。いこうかチビすけ。」
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