アイアン・スカイ

 「面白い度☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆」

 アメリカがこれまでまともに倒したのはナチだけだものね。

 月からナチスが襲ってくるというワンアイディアだけで世界中のSFファンから一億ドルもお金が集まっちゃったという話題作。
 設定からしてどう考えても社会風刺ギャグって感じなんだけど、人種差別や歴史の断絶、第二次大戦時も現代も変わらない、きな臭い政治的な駆け引きなどをうまく人間ドラマに盛り込んで、意外と真面目で丁寧にお話を組み立てていた感じ。

 特に人種的にマイノリティなアメリカの黒人ワシントン(政治的な思想信条は特にないニュートラルな人)と、第二次大戦時から時間が止まっちゃったような純粋なナチ党員の女の子レナーテとの交流が、けっこう微笑ましいラブコメみたくなってて、面白い。
 F先生の異色短編に出てきそうな清楚で、かつ、ちょっと世間ずれした女の子のレナーテはなかなかチャーミングで(あとなぜかお色気w)、サラ・ペイリンのようなタカ派大統領や、なんかよく分からないけどとにかくおっかない女ってことはわかる広報部長など、どぎつい世界観に咲く一輪の花・・・なのかな?

 まあ、とにかくこの映画女が強い。というかそのインパクトははっきり言って月にいるナチス軍の印象が霞むほど(本当は霞んじゃダメなんだけどw)
 でも、どう考えても月のナチスってアイディアは出オチ的なものだから、一発の破壊力は強くても持続性がないんだよね。そう言う意味で、1時間半どうやってドラマを持たせて、落とすんだろう?ってのは見てて気になってた。
 で、結局ナチスは月で超兵器を作ろうが地球の大国の噛ませ犬に過ぎなくて、ナチス以上に恐ろしいのは地球のメスゴリラだったってことにしたんだよねw

 ここら辺は絶対異論があるとは思うんだけど、私の個人的な印象では、男性よりも女性の方が、感情に訴えかける影響力っていうのは大きいと思うんだよ。理屈じゃなくて。
 だからアイドルとか、政治的な象徴とかなら女性のリーダーはアリかもしれないけど、社会的なルール・・・それは合理的な思考がものを言うと思うんだけど、そういうものを組み立てていくのって女性の方は苦手な気がするんだ。
 いや、これは本当に個人的な経験だけで言っているだけなんだけど。つまり何が言いたいかっていうと、この映画って女性=感情(⇒ポピュリズムの恐怖)のメタファーで描いていると思うんだ。もちろん癇癪持ちの男性キャラでもいいんだけど、個人的な怨みや嫉妬で核ミサイルを落としちゃうのはやっぱり女性ならではって感じが・・・

 ダメだ!どう言っても女性の好感度下げてしまう・・・!!

 でも女性の敵は女性って言うし、分かってくれる人もいると思うんだけど・・・あの私的なドロドロって言うのは男性にはあまりない感情だから。
 もちろん大幅に戯画化しているんだろうけど。だから、まあ、女性のリーダーが悪いって言っているわけじゃないんだけどね。もういいや。何言っても誤解されるw

 あともう一つきわどいネタなのは共和党の描き方だよね。ここも何を言っても火に灯油注いじゃう感があるんだけど、例えば『キックアス』ってアメコミでは、熱心な共和党支持者が自分の娘を殺人マシンに育てて親子でスーパーヒーローの自警活動をするんだけど、あの漫画は意外とそういう共和党支持者をあからさまにカリカチュアライズするような描き方はしていないんだよね。
 多分読んだ人、作者の政治的スタンスとかは分からないと思う。私もわからなかったし。おそらく作者にとってはただ純粋にバイオレンスがやりたかっただけで、そのキャラが共和党支持者っていう設定に大した意味はなかったんだと思う。

 これが同じくバイオレンス描写が目を引く『スターシップ・トゥルーパーズ』になると、もう少し意識的に風刺を行なっている。
 あの映画に描かれる地球連邦軍が共和党のメタファーかどうかは分からないけど、少なからず超タカ派であることは間違いないし、「地球VSバグ」を「アメリカVSイスラム世界」に置き換えることは容易いと思う。
 で、あれはどう考えてもそういった軍事政権をコケにしているんだよね。所々にカットインされる地球連邦放送の番組は戦争を礼賛しながら、それと同時にその愚かさを演出している。

 なんでも『スターシップ・トゥルーパーズ』は最新作を日本のアニメーターが作ったらしいんだけど(『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』)、CMを見る限りシリーズのこういったメッセージ性をちゃんと読み取れているのか非常に心配だ。
 ただ映像的にカッコいいところだけしか認識せずに、見栄えだけはいいアクションアニメになってなきゃいいんだけど、これに関しては鑑賞してから判断してみる。

 で、なんでそういうことを危惧しているかっていうと、ユーストリームでも言ったけど、あの映画って倒錯が起きているんだよね。
 戦争を徹底的に馬鹿にしているんだけど、その戦闘シーンがやたらかっこよくて、物語と映像のそれぞれが受け手に与える印象にねじれがあるんだ。だからあの映画を見て何人かに一人は絶対「戦争ってかっこいいな」って思っちゃうと思うんだよ。
 その原因の一つが敵が虫だってことだってことに、この『アイアン・スカイ』を見て気づいたw『アイアン・スカイ』って公開当時、コメディ映画として見に行った人がラストシーンがなんだかなあって評価に困ったらしいんだけど、それは結局、この映画で描かれる下世話な戦いが「人VS人以外」じゃなくて人間同士だってことだよね。
 だから文字通りひとごとじゃないから笑えない。

 でも私、この映画に関してはこう落とすしかなかったんじゃないかって思うんだよ。あんなめちゃくちゃな大統領や広告屋出しちゃった以上、あいつらの愚かさを徹底的に描ききらないと、少なくとも私は納得しなかったと思うんだよね。
 最終的に月のナチスなんか置いといて、地球の国家間で全面核戦争が起こるんだけど、それこそバカは死ななきゃ治らないっていうかさ。
 あの大統領って結局のところ、当事者意識が欠如した私たちそのものであって、戦争すら広報活動に利用していたわけだけど、広大な宇宙の小さな星にみんなで生きている以上、その影響は自分たちにも跳ね返ってくるわけだ。
 ・・・いや実際は結構したたかに責任の所在をうやむやにして逃げちゃったりするんだけど、全面核戦争じゃそれこそ身の破滅だろう。そこまでいかなきゃ自分の想像力のなさを痛感できないってことなんだよね。

 んで、ああいうオチってやり方としてはイギリスのブラックコメディとかに近いよね(最後は何故かみんな死ぬw)。
 だからああいう『映像の世紀』的な終わり方でもいいけど、そうなると前半のコメディ調とのギャップで当惑しちゃう人がいるのも確かなので、地球の全面核戦争の映像にコミカルな曲を合わせちゃうのもアリだったかもね(8時だよ全員集合的な)。
 でもやっぱこれ笑い事じゃないんだよ。だから最後は意表をついてああいうシリアスな感じでOKだったんだろうな。
 別に国際問題とか戦争について考えろ!って言いたいわけじゃなくてさ・・・相手の立場を尊重して思いやるためのちょっとした想像力が、今の私たちには欠けてると思うんだよね。

 だからリアルと創作がことごとく断絶している状況が私はどうかと思うんだ。で、その割には勧善懲悪な文脈だけは現実に持ち込んじゃって短絡的な善悪二元論でファジーな問題を捉えてしまう。
 最近第二次世界大戦の本を読んだんだけど、ヒトラーの思想ってけっこうつかみどころがないんだよね。連合国とはもちろん敵対してたけど、ドイツ社会主義労働者党を母体としながらも共産主義勢力とも敵対していたわけじゃん。
 で、お前は結局どっちやねんwって思ってたんだけど、結局大衆にとって政治は右か左か、保守か革新かといったテーゼやスタンスなんてどうでもよくて、自分たちの日常生活(=景気)さえなんとかしてくれればいいんだよね。理想じゃなくて現実があるわけだから。そういえば自由民主党だって結局保守なんだかリベラルなんだかよくわからないもんね。

 つまり世の中なんて理屈で白黒つけられる方が希で、結局は曖昧なままグレーで動いていくんだよね。そう言う意味で、理屈じゃなくて大衆の感情(アーリア人のプライド)に訴えかけたヒトラーの戦略は本当にうまいし、恐ろしい。
 その現実について大衆がどれだけ意識的かどうかで、歴史の流れは変わっていくのかもしれない。悪や敵はどこにいる??

 人々が思考しないことは、政府にとっては幸いだ。――アドルフ・ヒトラー

『恐竜大陸サウラシア』制作裏話

 ・・・とか言うけど、これまだ「制作」はしてないよねw執筆裏話だよねwその上執筆期間も5年前だから、何考えて書いたか忘れちゃったよw

 ん~まいった・・・とにかく私って恐竜が好きだから一度恐竜の漫画を書こうとは思ってたんだけど、この前見た映画『ダイナソープロジェクト』もそうだったけど、恐竜を題材にした映画を作るのってかなり難しいんだよね。
 あの『ジュラシック・パーク』でさえ一作目が奇跡の出来って感じで、続編はすごい映画だったかって聞かれれば、そうでもないし・・・
 それくらい物語の作劇構造に「恐竜」というのは合わせにくい。アボカドと違ってかなり使い勝手の悪い食材だと思う。だから『ダイナソープロジェクト』の失敗はしょうがないと思うんだ(失敗でいいよね?あれw)。

 これが哺乳動物ならラスカルとかフリーウィリーとか人と動物の交流にまつわる感動ドラマが描けるんだけど(日本人ってこういうのやたら好き)、恐竜って絶滅しちゃってるし、どっちかというと一般的には「でかい怪獣」のイメージが強い動物だからね。その点F先生の『のび太の恐竜』はうまくやったよね。
 でもあれは結構例外で(『REX恐竜物語』とかもあったけどさ)、恐竜映画って基本的にはB級モンスターパニック映画のコンテキストで作られることが多い。
 『ジュラシック・パーク』の上手かったところって、この人と恐竜の交流(動物映画の文脈)と恐竜の恐怖(モンスター映画の文脈)を半々でバランスよく取り入れたってことだよね。

 続編の『ロストワールド』では、今度は『ハタリ!』の恐竜版をやりたかったのかな?って気がする。
 だから恐竜そのものよりも、恐竜を人間たちがどう捉えるか、そのドラマをメインに持ってきた感じだったのかもしれない。
  あれは構成が下手だっただけで、もうちょっと練りこめばメッセージ性の強いいい映画になった気はするよね。ちょっと悪乗りしてモンスター映画にしちゃった感じがするけどね。そこがスピルバーグ監督なんだろうけどw(※無意味にグロい)

 あともうひとつのやり方といえば、ディズニーの『ダイナソー』のように動物生態映画みたいに作っちゃうことだよね。私が恐竜映画で一番好きなのが、この『ダイナソー』なんだけど、さすがはディズニー。動物映画の老舗だけあって映像の美しさは凄かった。
 一応アニメ映画ってことで恐竜喋らせてドラマも入れてたんだけど、今度は『ディープブルー』や『ライフ』みたいなガチの動物ドキュメンタリー映画の恐竜版を作ってはくれないだろうかw

 まあこんなもんかな。他にも恐竜の出し方としては、時代に取り残された場所があってそこに現代も恐竜が生き残っているという失われた世界タイプ(『ダイノトピア』なんかもこれ)や、ドラえもんみたいに現代人が恐竜の時代にタイムスリップしちゃうタイムマシンタイプ、そして本当クライトン先生はすごいなあって思ったんだけど、現代に恐竜を科学技術で再生させるクローニングタイプなどがある。
 もうどう考えても恐竜のクローン再生が恐竜と人間を出会わせる最後のアイディアなような気がして、私なんかはどうしよう・・・って悩んじゃったんですが、ある時「あ、これはもうファンタジーってことにして、最初から恐竜と人間が共存してればいいや」って発想を逆転させて、この漫画の設定を組んで行きました(やけになったとも言える)。

 だから、中途半端にSFな雰囲気を出しちゃって「なんで人間と恐竜がいるんだよ?」っていう読者の人のツッコミを極力喚起させないように、「ああこれはこういう世界観ってことなんだ」って、最初のシーンから恐竜がいることを前提として描きました。
 例えば『ハリーポッター』を見て「なんで魔法が使えるんだよ?」ってツッコミ入れる人はいないでしょ?それと一緒で、恐竜がもともといる世界なんだよって。

 まあ後半はけっこう世界観の謎が解けてきてSFっぽくもなっちゃうんだけど、それでも西部開拓時代にないものは極力出さないようにした。
 そもそも「恐竜」というとんでもないものを西部劇に出している以上、それ以外で変なことにはしたくなかった。これは戦国時代にマスコミとかを出しちゃった『風と翼』とは対照的なやり方をとったと言える。
 でも未知の島とかギアナ高地とか孤立した地域に恐竜が生き残っているってのは今までいろいろあったけど、大陸ひとつに恐竜が生き残っているという話は私が初めてだったと思う。自分でも思い切った設定にしたなあってけっこう満足してますw

 で、意外と「荒野」と「恐竜」っていうのが合うんだよね。『ダイナソー』でも荒野を恐竜の群れが歩いていくシーンがあるんだけど、そもそも恐竜の化石って「死の谷」とかそんな物々しい名前のついた荒地(バッドランド)から発掘されることが多いんだよw
 だから西部劇とは合わないこともないんだよね。エイリアンも出せるくらいなんだから。作劇万能ふりかけ、美少女の次は西部劇やで!

 ということで、いろんなことがもう開拓され尽くしている恐竜もので、なんとか知恵を絞ってオリジナリティを出したのが、『恐竜大陸サウラシア』なわけです。
 もうこれ以上のアイディアは私には出ないと思うから、恐竜漫画はこれで最初で最後になると思う。でも私よく頑張ったよ。ほかの人がどう思うかはわからないけど、私自身は結構面白い話だと思うし、生きているうちにこの漫画だけは仕上げたいからね。

 それにさ、けっこう動物ものとしてもいい感じにバランスとってると思うんだよ。日本の動物映画ってバクテリアの一つ覚えのように感動ものにしか仕上げないけどさ、それは一部の動物の一部の要素を拡大解釈しているだけであってさ、動物の中には不快なものもグロテスクなものもいるし、人間にとって迷惑なもの、人間にはとても制御できないものだっているわけだ。
 だから『ジュラシック・パーク』の原作で一番好きな一節なんだけど「恐竜にも人に懐いてかわいいやつもいれば、この手の動物園では飼育できないような凶暴なやつもいる」んだよ。
 最後の方ではあからさまにポケットモンスターのアンチテーゼをやっているけど、まあそういうことなんだ。自然界の全てを支配できるなんて思い上がりもいいところなんだよ。

 さらにそれを生態系にまで広げれば、人間VS自然もしくは人間♡自然といった単純な二元論には還元はできないことがわかる。
 人間だって自然の一部なんだから、ある程度は自分の都合のいいように改変はできるかもしれないけれど、その結果が副作用としてブーメランのように跳ね返ってくることだってある。
 現代で快適な生活をしている私たちにはなかなか実感はできないけど、感謝祭のピルグリムファザーズだってアメリカに移住したときは相当苦労して、移民のほとんどが死んじゃったらしい。
 歴史の本によれば、インディアンと対立したり戦争で死んじゃったらしいけれど、それ以上にアメリカの大自然の厳しさが立ちはだかったんじゃないかなって思う。

 だからこの脚本を普通に読めば、作中の恐竜はインディアンの置き換えだってわかるんだけど、それと同時に私は恐竜を強大な大自然のメタファーとしても描いてみたんだ。
 宇宙にすら進出しちゃった私たちにどれだけのフロンティアが残されているかはわからないけど、それでも地球上で私たちが安全に暮らせるエリアはすご限られている。
 そして今の快適な生活があるのは、先祖の人がこうやって頑張って開拓してくれたからなんだよね。

 え~っと・・・なんかあまり裏話的な話をしてないぞwまあいいや。
 作中に登場する人物は、ほとんどが実在する古生物学者がそのまんま元ネタになっているので、詳しい人はすぐにわかると思う(『80日間宇宙一周』と名前のつけ方が一緒)。でもフィリップとリズリーとアニーだけは古生物学者が元ネタではないので、ここで説明。

 フィリップは昔フジテレビでやってた『世界超密着TV!ワレワレハ地球人ダ!!』って番組で「スネークハンター」ってコーナーがあったんだけど、そこで出てくるアナコンダ捕獲に異常な執念を燃やすスネークハンターの「わがままフィリップ」ってやつが元ネタ。あとはフィリップ・アストリーっていう近代サーカスの創始者からも取っている(もちろん古生物学者フィリップ・カリー博士からも!)

 リズリーは確か江戸時代に日本にやってきた最初のサーカスで「リズリーサーカス」ってのがあったんだって。リズリーって語感がかわいいし、小柄な女の子にぴったりだったから決めちゃったw

 アニーは西部劇ってことで「アニーよ銃をとれ!」からつけました。最初の設定ではコープのキャラも兼ねていて、銃を持つと性格が豹変する凄腕女性ガンマンだったんだ。でも書いてみてあまりに漫画っぽいキャラになっちゃったから、コープと役割を分担させることになった。
 だから、あのまま書いていたらコープはいなかったんだね。私コープのキャラが結構好きだから、やっぱ分離させてよかったなあって思うよ。キャラの数も減らしゃいいってもんじゃないよねw無意味にたくさんいるのは困りものだけど・・・

『恐竜大陸サウラシア』脚本⑨

ジュラシックピット。
「第1試合!ステゴサウルス18500ポンド!対するはモノクロニウス!16000ポンド!」
「さあ500ドルからかけてくれ!」
「もうすぐ賭けは閉め切りだ!」
恐竜トレーナーがホルスターから薬莢をピットに投げつける。
割れた薬莢から恐竜が現れる。
「おおっとモノクロニウスかなり入れ込んでます!」
「どちらも気合十分・・・!それでは試合開始!」
ステゴサウルスが突進するモノクロニウスにむけて尻尾をふる。
尻尾の攻撃をまともに食らいモノクロニウスのフリルの一部が吹き飛ぶ。歓声。
怒り狂ったモノクロニウスは大きなくちばしでステゴサウルスの首にかみつく。
観客「やれ~ぶっころせ~!」

ジュラシックピットVIP席
カーネギー「どうです?ミセスブラウン。あなたには最高の席でショーを楽しんでいただきたいと思いましてね
この商売は間違いなく当たりますよ。ここ以外に闘竜場ジュラシックピットはニューヨーク、サンディエゴ、ロンドンにも建設を予定してましてね・・・」
アニー「おとなしい恐竜を錯乱状態にして殺し合いをさせるなんて・・・これは神に対する冒涜です」
カーネギー「いいや違う。連中はもともと私たちの時間軸には存在しない動物だ。存在しないものはどう使おうが知ったこっちゃない。トラやサイを戦わせるよりもずっと健全ですよ。」




フィリップ「!こ・・・こいつって・・・」
サーカスのアンガトラマ
フィリップ「おめえじゃねえか~!」
リズリー「あ、サーカスの!売られてこんなとこに来たのね・・・」
団長「いや~なんだかしらんが出れるようじゃな!」
リズリー「あ・・・グレゴリー団長!!」
団長「お・・・お前たち~!!」
コープ「誰?」
フィリップ「なに団長まで身売りしてんだよ!」
グレゴリー「だってお前がいないとショーにならないんだもん」
フィリップ「やっとわかったかこのオレのスター性・・・」
グレゴリー.「また空中ブランコをやっておくれリズリー」
フィリップ「おいハゲ」
リズリー「ほかの恐竜は?」
団長「2フロア下にいる。こいつらいかれてやがるぞ、ショーとはいえあんな過激なことを動物にやらせるとは、命を愛するわしとしては許せん・・・」
リズリー「ええと・・・いこうフィリップ」
フィリップ「おうよ」



VIP席に慌てて飛び込んでくるスタッフ。
スタッフ「会長大変です!Bエリアで恐竜が檻から逃げてます!」
カーネギー「ばかもの!さっさと戻さんか!?種類はなんだ?」
スタッフ「サーカスで使われていた恐竜共でして・・・」
カーネギー「あああのろくな戦力にもなりそうにないバカ恐竜か。なら殺しても構わん。
今は大事なときなんだ。絶対客の安全は守れ!」
スタッフ「は!」
アニー「フィリップ・・・」



サーカスの恐竜を逃すフィリップ
バッカーのスピーカーのハンドルを回すフィリップ
草食竜が誘導される。フィリップ「よーし逃げろ逃げろ~!」
銃撃するハンター「待てー!」
「げっ撃ってきた!」
リズリー「恐竜に当たっちゃう!」
銃で応戦するコープ
コープ「早く恐竜を逃がせ!!」

フィリップ「あ、あれ??」
リズリー「どうしたの?」
フィリップ「なんか胸がもぞもぞ・・・なんだ?」
胸のポケットから薬莢を取り出す
フィリップ「あ、これって・・・ティラノサウルスを撃った時の空薬莢だ」
コープ「!お、お前薬莢にヒビが入っているじゃねえか!」
フィリップ「おかしいな。俺別に何にもしてねえけど」
コープ「早くそいつを捨てろ!!」
「なんで!?」
「貸せ!!」

フィリップから奪った薬莢をハンター達の方へ投げるコープ
薬莢が割れて中からティラノサウルスのオスが現れる

「!!」
サーカスの恐竜が猛スピードで逃げていく
ハンター「ティ・・・ティラノサウルスだああああ!!」
銃撃するハンター達に襲い掛かるティラノサウルス

フィリップ「どうなってんだこれ!?」
リズリー「逃げないと・・・!」
コープ「そうか・・・薬莢の中にずっと閉じ込めておくことは出来ないんだ!」
コープ「そうなると・・・早く知らせないと大変なことになる!フィリップ!オレは会場の客を避難させる!!お前はアニーを救え!!」



VIP席
「会長!恐竜搬入通路にティラノサウルスがあらわれました!!早くショーを中止して観客を避難させてください!!」
カーネギー「なんだと!?どういうことだあああ!!!」
ライフルを掴むカーネギー「ええいディノトランス弾でもう一度捕まえればいいだろうが!もういいわしがやる!!お前も来い!」
アニーを強引に引っ張るカーネギー
アニー「きゃあああ」



ジュラシックピット
「さあそれでは第二試合です。今度は血湧き肉踊る肉食竜対決!」
ゴガア(ティラノサウルスの咆哮)
大歓声
ピットにティラノサウルスが入ってくる
観客「ティラノサウルスだあああ!」
Tレックスコール
係員が逃げ出す
ざわつく観客「?なんか様子がおかしいぞ・・・」
トレーナーにかぶりつくティラノサウルス
会場内が悲鳴に包まれる
トレーナーを荒々しく振り回しトレーナーが持っていた薬莢を散乱させるティラノサウルス。
会場内に散った薬莢が次々に割れていき恐竜たちが放たれる。

会場は大パニック。警報
ハンター「なんだこりゃああああ!!」
「皆殺しにしろ!!!」
ライフルを撃ちまくるハンター。
鞭のような尻尾を振り回して会場の柱をへし折るアパトサウルス。
巨大な足でハンターを踏みつぶす。
ハンターたちを追いまわすパキケファロサウルス。パキケファロサウルスの頭が銃弾をはじく。
「弾が効かねえ!」頭突きでつぶれるハンター。
オルニトミムスが素早い身のこなしで次々に人間たちを追い抜いていく。
基地をあきらめ逃げ出すハンター「駄目だああ!数が多過ぎる!ここは壊滅だ~!!」

避難通路に太っちょの鳥のヒナのような珍妙な恐竜がつったっている。
銃を向けるハンター「どけ!ペンギン野郎!殺すぞ!」
キリンのような首をかしげるノスロニクス「くけ?」
腕を広げると巨大なかぎづめが現れる。ハンターをひと薙ぎにするノスロニクス。
「ぎゃあああああ!」

観客に突進してくるパキケファロサウルスの群れ
リズリーが乗ったブラキオサウルスが体を盾にして食い止める
「頑張って!」

「早く逃げろ!」
観客を出口に誘導するコープ。

逃げる観客と逆走するフィリップ「アニー!どこだ!」
フィリップを見つけ叫ぶアニー「フィリップ!」



カーネギーの博物館
カーネギーに捕まっているアニー
博物館に入ってくるフィリップ「アニー!」
カーネギー「お前のせいだ!お前のせいでわしのビジネスはめちゃくちゃだ!」
フィリップ「俺が知るかよ恐竜のことなんて!俺だけじゃねえあいつらは誰の思い通りにもならないんだ!」
カーネギー「だがまだ終わったわけじゃないぞ・・・まだワシのコレクションは残っている」
フィリップ「そんな危ないもんとっとと捨てたほうがいいぞ!」
カーネギー「黙れ!これは誰にも渡さん!」

ムスサウルスが隙をついてカーネギーの薬莢のボックスをくすねる
カーネギー「貴様!返さんか!!」
ボックスを抱えるフィリップ「お前初めて役に立ったぞ!」
「アニーさんを離せ!さもなきゃこいつは下に捨てる!」割れたガラス窓から薬莢の箱を吊るすフィリップ
博物館の下のピットではティラノサウルスが暴れている
アニー「フィリップ・・・!」
カーネギー「そうか・・・ならお前も取りにいけ!」
ピットにアニーを放り投げるカーネギー
フィリップ「!」
アニー「きゃああああ」
フィリップ「アニー!」
箱を放り投げピットへ飛び降りるフィリップ

ピット
下でブラキオサウルスが二人をキャッチする
リズリー「落としたわよ」
フィリップ「リズリー・・・」
ピットの奥からティラノサウルスが接近してくる
リズリー「前より怒ってる・・・!」



博物館
カーネギー「わしのコレクション・・・!」
フィリップが投げた薬莢のケースは壁に当たり中身がばらける
「はああ!スーパーサウルス、エパンテリアス・・・!」
椅子の下に転がっていくティラノサウルスの薬莢
「ティラノサウルス・・・!捕まえた!」
薬莢にヒビが入る
「な・・・?」
薬莢を捨てるカーネギー
薬莢から出てきたのはティラノサウルスの子供だった
カーネギー「は~・・・お前か・・・」
窓の外から叫ぶフィリップ「おい早く逃げたほうがいいぜ!」
カーネギー「うるさい!こんなやつ敵ではないわ!」
フィリップ「後ろ後ろ!!」
子供を蹴飛ばす「くピピー!」
カーネギー「いいか!お前のハッタリに乗るほどわしは」
背後から母親のティラノサウルスにかぶりつかれるカーネギー「ぎゃああああ」
カーネギーを咥えながらピットの方へ歩き出す母親。
ピットの方から父親が突進してくる。
カーネギー「やめろおおおお!!!」



第五鉱区にサイレンが鳴り響く
バッカー「アニキ!保安官を呼んできた!あとは公務員に任せましょう!」
シェリフ「まだ恐竜に食われてない悪党は全員逮捕だ~!」



壊滅する第五鉱区
コープ「結局またティラノサウルスの巣に戻ったってことか・・・」
アニー「私・・・残りの資産をすべて売却して鉱山労働者の給料にします。きっと・・・あの人が生きていたら、きっと同じことをしたと今は思えるから。」
フィリップ「そうか・・・」
アニー「そしてラムとここで恐竜を保護する活動をするつもりですわ」
コープ「柄じゃないがな」
フィリップ「いや案外似合ってるぜ」
アニー「フィリップ・・・ありがとう。」

リズリ―「フィリップ・・・」
フィリップ「ん?」
リズリ―「よかったらサーカスに戻らない・・・?
それとも・・・そんな小汚い所似合わないか・・・」
フィリップ「・・・契約しだいだな。」
リズリ―「え?」
フィリップ「お前と一緒にやりたい。」
手を握る



数年後
「ヘルクリークサーカス」のテント。
団員「よってらっしゃい!みてらっしゃい!空中ブランコに曲撃ちショー、猛獣使い・・・!ここでしかみられない曲芸ばかりだよ!」
テントに客が集まっている。立ち見もいる大盛況ぶり。
アクロバットショーのリズリ―。
銃を早撃ちするコープ「オラオラオラオラオラオラオラ!!」
大歓声が上がる会場。
団長「・・・どこでスカウトしてきたんだあの曲撃ち師・・・テクが半端ねえ・・・」
「さあそれでは空中ブランコ、曲撃ち芸とお楽しみ頂いた次はいよいよ我がサーカスの目玉・・・!恐竜使いミスター・フィリップ・バックランドの猛獣ショーです!」
生意気なガキ「ママ、あいつまた懲りずに魚しか食べない恐竜で猛獣ショーやるみたいだよ。」
観客「もうネタばれてんぞーフィリップ!」
観客「なんでそいつが目玉なんだー!いい加減そいつをひっこめろ団長!」
地面が大きく振動する。ステージにティラノサウルス・レックスの巨体が現れる。
失禁する生意気なガキ。
微笑むリズリ―とアニー。
フィリップ「イッツァショータイムだ・・・!ヒ~ハ~!!
おわり

『恐竜大陸サウラシア』脚本⑧

オーテリーブに行商がやって来る

リズリー「フィリップ、あれはなに??」
フィリップ「お~ごくろー」
バッカー「言われた通りありったけ持ってきたよ」
リズリー「・・・この人はなんなの・・・?」
フィリップ「古い友人でな。舞台の小道具とか特殊効果をやってたんだよ」
バッカー「今は恐竜用の便利な道具を売ってます」
ガラクタのような商品を手にしてかぶりを振るリズリー「どれもとても役に立ちそうには・・・」
バッカー「ダメダメ、あなた全然客の心わかってない。これなんていいよ」
フィリップ「それよりもやっぱこれだろ。気に入った。」
「さすが兄貴!これはあの恐竜の王Tレックスの鳴き声が出るスピーカーだ!これ
さえあればたいていの恐竜は逃げてくぜ!」
スピーカーのハンドルを回るフィリップ。鳴き声がなる。
リズリー「・・・こんな鳴き声だった??」
フィリップ「うんこしてるみたいだな」
それに呼応して周りで恐竜が鳴く。
馬車の周りに草食竜が集まってくる。
フィリップ「おい全然逃げないぞ。」
バッカー「求愛コールだったかな」

リズリー「で、なにするつもり?」
フィリップ「カーネギーからアニーさんの財産を取り戻す」
リズリー「了解。」



第五鉱区。
カーネギー財団が大規模に採掘を開始している。
ダイナマイトで荒々しく岩盤を爆破する。

岩陰に隠れてその様子を見るフィリップ、リズリー
フィリップ「あいつら実力行使か。勝手に採掘しやがって・・・」
リズリー「ティラノサウルスがいなくなったからね・・・」

第五鉱区を回り込んで獣道の方へ向かう
フィリップ「いいか向こうに秘密の抜け穴があるんだ」
リズリー「なんで知ってるの?」
フィリップ「ティラ坊に教えてもらったんだ。いくぞ」



カーネギーのオフィス
カーネギーとともに椅子に座るアニーのそばに護衛のコープが立っている。
カーネギー「これはこれはブラウン夫人。ご機嫌いかがですか?オーテリーブの労働者はよく働いてくれて素晴らしい。彼らには給料を払わなきゃ・・・」
アニー「すぐに採掘をやめてください・・・!あそこは恐竜たちにとって神聖な場所です・・・あなたは知りませんがあそこには金塊どころか・・・」
カーネギー「ミリアタイト。」
アニー「え?」
ミリアタイトのかけらを取り出す
カーネギー「ウランの三倍もの比重を持つ新種の鉱物。」
アニー「はなからその鉱物が目的だったんですね・・・」
カーネギー「あなたはこの鉱物の本当の価値を知らない。」

カーネギー「なぜこの大陸に本来は化石で見つかる太古の生き物が生息しているか、その理由を教えてしんぜよう。
この鉱物はもともと地球上に存在しないものです。おそらく世界中に恐竜が存在していた遙か昔、この大陸に衝突した巨大隕石が運んできたのでしょう。
この鉱物には時間と空間を歪ませる性質があってね、つまりあのミリアタイト鉱床は現代と太古の世界をつなぐ門のような役割をしていると考えられる。」
アニー「ミリアタイトを採掘して何を企んでいるんです!?」
カーネギー「ドン見せてやりなさい。」
透明の弾丸を銃に装填するマーシュ。壁が動きアロサウルスの入った頑丈な檻が出てくる。
アニー「この弾丸は・・・」
檻の中のアロサウルスに向けて銃を撃つ。
光を放って消えるアロサウルス

カーネギー「ミリアタイトの結晶で作ったこの銃弾は、異なる時間軸からやってきた恐竜どもをもとの時代に強制的に送り返す性質があるのです。」
アニー「そんな・・・」
カーネギー「これで誰でも安全に恐竜狩りが楽しめるってわけです。子供だってティラノサウルスが狩れる・・・!」
コープ「・・・・・・。」
カーネギー「恐竜大陸サウラシアは危険な無法地帯ではなくなった・・・!世界中の誰もがビッグゲームハンティングを楽しめるテーマパークになったのです!」
アニー「恐竜はあなた型のおもちゃじゃない・・・!この大陸を太古から支配していた野生動物ですよ・・・!」
マーシュ「あんただんだん旦那に似てきたな・・・」
カーネギー「面白いのはこれからです。ドン・マーシュ、アロサウルスの薬莢を」
「おう」
檻の中に入って薬莢を拾いに行くマーシュ
薬莢の入ったケースを取り出す「ディノトランス弾の薬莢は特殊でしてね。送り返した恐竜の種類を記憶しているんです。
これはステゴサウルス、これはディプロドクス、そして・・・ティラノサウルス。ドンマーシュの協力で地獄谷に生息するほとんどの恐竜が捕獲できました」
銃を握るカーネギー
「ではその薬莢を割るとどうなるか・・・」
檻が締まり、檻の中の薬莢を銃で撃つカーネギー
マーシュ「!どういうつもりだ!!」
薬莢が割れてアロサウルスが戻ってくる
「!!」
カーネギー「恐竜を再び呼び出すことができる・・・」
マーシュ「出してくれ!」
アニー「なんてことを!」
カーネギー「もはやプロのハンター等必要ないのですよ。ごくろうさまでした。」
コープ「檻を開けろ!」
マーシュ「裏切ったなジジイ~~~!!!」
アロサウルスに食べられるマーシュ「ぎゃああああ」
カーネギー「さんざん恐竜を殺してきたんです。当然の報いですよ・・・なんならあなたも餌になりますか?
西部一の恐竜ハンター・・・ラム・コープ」



第五鉱区の坑道。
ミリアタイトがトロッコに乗って運ばれていく
フィリップ「よしこれに乗っていこう。この石が奴らの目的ならボスのところに運ばれるはずだ」
「そうね」

ホーナー「それはいらねえ土砂だぜ。カーネギーのところに行きたかったらそっちのトロッコに乗りな」
フィリップ「あんたは・・・」
ホーナー「今度は何をするつもりだ・・・?」
フィリップ「アニーさんを助けに行く」
ホーナー「あの女はもう破産したんだぞ。助けて何の意味がある?」
フィリップ「約束したのさ・・・命にかけても守るってな!はあっ!」
さっそうとトロッコに乗り込むフィリップ
ホーナー「だからそのトロッコじゃないって!!!」



マーシュの手下「てめえはそこに入ってろ!」
恐竜の檻に入れられるコープ
つかまっている牢屋の外にも洞窟を利用した檻が並び、まるで恐竜の刑務所のようになっている。
コープ「ここは・・・」
檻の奥で不気味に光る肉食竜の目
「俺も餌か・・・!」



トロッコに乗ってミリアタイトと共に運ばれていく一行。
線路が複雑に絡み合い、ミリアタイトをふるい分けている
フィリップ「すげえな。ビッグサンダーマウンテン作ってら」
線路の下を指差すリズリー「フィリップあれ・・・!」
闘技場が建造されている。
フィリップ「アメリカンフットボールもあんのか」
リズリー「もしかして恐竜同士を戦わせるんじゃない?」

リズリー「みて!あそこの檻にコープさんが!」
フィリップ「本当だ。あいつなにやってんだろ」
リズリー「捕まっちゃったのよ!助けないと!!」

ポイントを切り替え恐竜の檻の前に止まるトロッコ。
リズリー「コープさん・・・!」
フィリップ「鍵はどこだ!?」
コープ「来るな!檻の中に肉食竜がいる!」
リズリー「なら早く開けないと!」
コープ「私はいい!開けたらみんなやられるぞ!!」
フィリップ「いいから黙って待ってな!ヒーハー!」
ムチで扉を叩くフィリップ
フィリップ「・・・鍵を探さなきゃ・・」
リズリー「どいて」
ごつい銃で檻の蝶番を吹き飛ばす
フィリップ「やるな」
リズリー「だからこっちにすればよかったのに。」

檻の奥から肉食竜が出てくる
コープ「みんな下がるんだ・・・!」
リズリー「逃げて!」
ムチを構えるフィリップ「俺に任せろ!」

『恐竜大陸サウラシア』脚本⑦

アニーの屋敷。
寝室のベッドで横になるリズリ―。
フィリップが心配でなかなか寝付けない。
リズリ―「あいつ・・・どうしたんだろう・・・」
屋敷が揺れる。
リズリ―「地震…?」
アニー「静かに・・・」
リズリ―「アニーさん・・・?いつの間にここに・・・」
リズリ―のベッドのわきで屈むアニーは黙って窓を指さす。
窓のカーテンにはティラノサウルスの巨大な頭部のシルエットが映っている。
リズリー「・・・ティラノサウルス・・・なんでここに・・・」
アニー「わかりません・・・しかし確かなのは・・・あなたを探してる・・・」
リズリ―「な、なんで私を狙って・・・!」
アニー「音を立てずにそうっと屈んでついてきて・・・一階にライフルがある。」
窓の外で頭を振るティラノサウルス。しかし意を決したように窓を突き破って室内に頭を突っ込んでくる。悲鳴をあげるリズリ―。
リズリ―を見つけるティラノサウルス。唸り声をあげて短剣のような牙をつきだしてくる。
リズリ―にかみつく刹那アニーがベッドを持ち上げティラノサウルスの攻撃を防ぐ盾にする。
しかしティラノサウルスはベッドごとアニーを壁に叩きつける。
リズリ―「アニーさん!」
アニー「私に構わず逃げなさい!」
部屋から廊下に出るリズリ―。
ティラノサウルスは部屋から頭を引っ込め、廊下の窓を突き破り廊下を走るリズリ―に追いすがってくる。
恐竜の攻撃を何とか身のこなしの良さでかわしながら逃げるリズリ―。
彼女の背後で次々に窓ごと吹っ飛ぶ壁。
リズリ―「なんでわたしが・・・!」
一階のエントランスにつながる螺旋階段を降りようとした時、ティラノサウルスが背後のステンドグラスをぶち割り、その衝撃で一階のエントランスに吹っ飛ぶリズリ―。
割れたステンドグラスから怒り狂ったティラノサウルスが屋敷の中に入ってくる。
床に勢いよく叩きつけられなかなか立ち上がれないリズリ―。エントランスで向かい合うリズリ―とティラノ。
リズリ―「もうだめだ・・・」
フィリップ「リズリ―!」

その瞬間反対側のステンドガラスが割れてトリケラトプスがエントランスに突っ込んでくる。
トリケラトプスにまたがるフィリップ「正義の猛獣使いフィリップ・バックランド只今参上!」
リズリ―「ふぃ、フィリップ・・・!?」
フィリップ「やいティラノザウルス!お前の相手はこっちだ!」
怒りが全く収まらないティラノサウルス。リズリ―を噛み殺そうと突っ込んでくる。
リズリ―「きゃああああ!」
フィリップ「やむおえねえ突撃!」
果敢に吠えながらティラノサウルスに体当たりし攻撃を食い止めるトリケラトプス。
しばらくティラノサウルスと互角の攻防を繰り広げるが、ティラノサウルスが頭突きでトリケラトプスをふっとばし、フィリップは床に落ちる。逃げていくトリケラトプス。
リズリ―「フィリップ!」
トリケラトプスを蹴散らしたティラノサウルスがなおもリズリ―に襲い掛かる。
しかしフィリップが飛び出してリズリ―をティラノサウルスの牙から救う。
リズリ―「フィリップ!し、しっかり!」
フィリップ「や、やっぱ、俺に美女を守る英雄は似合わないか。」
リズリ―「・・・・・・!」
傷を負ったフィリップの下にティラノサウルスの子供が駆け寄ってくる。
フィリップ「よお、チビすけ・・・」
子どもの姿を見たとたんティラノサウルスの動きが止まる。

街の住人が武器を持って集まってくる「殺せ~!!」
ティラノサウルスの前で腕を広げるフィリップ「待て!待ってくれ!こいつは子供想いな良いやつだ。ただちょっとでかくて家を壊しちゃっただけなんだよ。」
フィリップの背後のティラノサウルスの口から人間の足が落ちてくる。
フィリップ「い、いや二、三人食べちゃったかもしれないけど・・・でもそれはお前らが襲い掛かったからだろ!」
村人「何言ってるんだ!あんた恐竜ハンターじゃないのか!」
村人「こいつを倒せば金が手に入るんだぞ!!」
村人「あんたどっちの味方だ!?」
フィリップ「こ・・・こいつを殺してなんになるんだよ!」

労働者に責められるフィリップを見て夫の姿とかぶるアニー。
ホーナー「あんたはどうなんだ?ブラウン夫人。旦那の敵を取りたくはないのか」
アニー「わ・・・わたくしは・・・」
リズリー「アニーさん・・・」
しばらく考えながらフィリップの方につくアニー。

労働者「恐竜の味方をしたいなら勝手にしろ!お前から殺してやる!」
銃を向けられるアニー
フィリップ「や・・・やめろ!!」
住人のライフルが銃に撃たれて吹き飛ぶ「!」

煙を上げるコープのピストル「やめろ・・・」
労働者「あんたまで・・・」
ティラノサウルスに顎をやるコープ「これ以上アイツを怒らせるな、返り討ちじゃすまないぞ。」
屋敷から出て引き返していくティラノサウルス。
労働者「本当に帰っていった・・・」



野外。街を歩き帰っていくティラノサウルス。
突如街がまばゆいライトで照らされる。
警戒するティラノサウルス
ティラノサウルスの前にマーシュの一味が立ちふさがっている。
引き返すティラノサウルスにディノトランス弾を撃ち込む
マーシュ「いただきだ」
コープ「マーシュ!!」
薬莢の中に消えていく親ティラノサウルス。
薬莢をひろうマーシュ「あのティラノサウルスもあっけないもんだぜ」
親が消えて泣き喚く子供
ハンター「ボスこいつはどうします?」
マーシュ「貴重なトランス弾を使うまでもねえ。ネットで捕獲しろ。」
マーシュ「カーネギーに連絡しとけ。これでティラノサウルスのメスと子供が手に入った。あとは父親だ。」
コープ「なるほど、その銃弾にはそんな効果があるんだな・・・」
マーシュ「いっただろ?この新兵器さえあればどんな恐竜も敵じゃねえ・・・
てめえらがティラノサウルスを誘導してくれたおかげで仕事が楽になったぜ。残念だったな恐竜ハンター・・・」
あかんぼティラノを荒々しく捕獲するマーシュの手下たち。足から取れるスカーフ。
フィリップ「なにしやがる!あいつは怪我してんだ!」
フィリップを殴るマーシュ「うるせえ!」
リズリー「フィリップ!」
マーシュ「いいかヒーロー気取りも大概にしろ小僧。てめえはオンボロサーカスでムチでも振ってりゃいいんだ」
住民「え・・・?サーカス・・・?こいつハンターじゃないのか・・・?」
ざわざわ
マーシュ「カーネギーはショウビズ界に革命を起こそうとしている。この前格安で買収した貧乏サーカスに俳優崩れの猛獣使いがいたんだとさ、名前はフィリップ・バックランド!
それも猛獣ショーとは名ばかりのヤラセだってよ!」
村人「ほ、本当かよ・・・俺たちを騙してたのかよ・・・」
アニー「ち、違うんです彼は私が・・・」
フィリップ「アニーさん・・・
そうだ。お前らを騙してたんだ。悪かったよ・・・」
村人「この詐欺師!お前のせいで街は・・・!」
ホーナー「もうやめろ!」
村人「ホーナーさん・・・」
ホーナー「終わったんだ・・・すべて・・・・」
アニーの方を向くホーナー「・・・ブラウン夫人・・・残念だ」
街から出て行く労働者。
アニー「・・・・・・。」



夜明け
墓地で夫の墓に花を手向けるアニー
コープ「街の労働者たちのほとんどはカーネギーに引き抜かれた。」
アニー「ごめんなさいあなた・・・屋敷も街も全て失ってしまった・・・」
コープ「いやひとつだけ残っている。第五鉱区だ・・・あそこだけは守らなきゃいけない、だろう?」
アニー「・・・・・・。」
コープ「つきあうぜ」



昨晩騒ぎがあった街の中心部
ティラノサウルスの子供が付けていた破れたスカーフをひろうフィリップ「・・・・・・・。」
隣に座るリズリー
「助けてくれてありがとう。」
フィリップ「ごめんな、お前のお守りあいつのケガを治すのに使っちまった・・・」
首を振る。
リズリー「ううん。で、どうするの?」
フィリップ「どうにもならねえよ・・・俺は恐竜ハンターなんかじゃない。」
リズリー「それでいいじゃない。」
フィリップ「え?」
リズリー「恐竜ハンターじゃなくてもあなたは十分私のスターだよ。
ファン第一号が言うんだ、信じてよ、ね?」
テンガロンハットをかぶせる。
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