因数分解マトリョーシカ現象

 今日の数学の授業は本当に困ってしまった。とある高校生の学校のテキストをやっていたんですが、そのテキストってけっこう基本的な問題集で、そこまで難しくないだろうから(美術科の)あいつにも教えられるだろうって感じで私に回ってきたと思うのですが、たった3問目でかなり複雑な因数分解の問題が出てきて面くらい、テンパリ、長考し結局数学の専門の先生に代わってもらいました。かっこわり~!

 で授業の後、紙に書いた私の計算式(←字が汚い)を見せたら「あ、できているじゃないですか。何が分からなかったんですか?」とか言われ「でもこれ20分も考えていたんですよ」って言ったら失笑。「まああのテキストでいきなりこのレベルを出るのは予測できないですよね」って慰められてしまった。
 つーかこの手の因数分解なんて絶対日常生活で使わないし、私も高校生以来久しくやってない(大学ですら)。それに高校の頃も数学ができたわけじゃないしな!

 最近、中学校の数学ばかり教えてていい気になっていたが反省。オレはバカだった・・・!
 
 現役の高校生や数学が得意な人にとっては「こんなん簡単じゃねえか。この程度の問題が分からずに塾で教えているってやばくね?」って思われそうですが、複雑なのは確か。方法自体は難しくないが、手数が多くてややこしいのだ。
 どんなに最初は簡単なルールでもどんどん複雑化していくのはスポーツのルールの歴史を見ていれば分かること。

 ここまで読んだ方、さぞどんな問題か気になっているでしょうから、とりあえず問題と解法を載せておきます。数学が苦手な高校生の方はぜひコメント下さい。友達になりましょう(うぜえ)。

因数分解.jpg

『ニュートン別冊 「次」にひかえる M9超巨大地震』

 塾の近くのコンビニって漫画と週刊誌、エロ本と本当にゲスな本しか売ってなくて、時間つぶしにもならなかったんですけど、なんと初めて科学雑誌のニュートンを置くようになった!不謹慎覚悟であえて言うよ。これ絶対地震のおかげだ。
 東日本大地震によって科学に興味もなかった大衆が科学雑誌を手に取るようになった。だからこんなゲスなコンビニにもニュートンが仕入れられるようになったのだ。
 これは一過性であることは確実だけどいい傾向だとは思う。ネットで適当に玉石混交な情報の上澄みをさらって「知った気」になるよりは、科学雑誌で調べた方がずっといいからね。
 
 しかしこのニュートン別冊水谷編集長のまえがきがとにかくアツい。このまえがきを読んで感動のあまり衝動買いしてしまったんですよね。
 ちょっと引用させてください(4ページ「別冊刊行によせて」より抜粋)。

 さる2011年3月11日、日本がこれまでこうむったことのないような大地震、大津波が発生した。この歴史的自然現象に襲われた国土と人々の姿を映しだすテレビ画面に、私は胸をしめつけられた。自然の力に圧倒された。いささかなりとも地球科学を学んだ私は、このような大きな災害をもたらした自然現象の発生をなぜ、あらかじめ人々に伝えられなかったのか、なぜ必要な防災組織をつくりあげられなかったのか、深い悔恨の思いにとらえられている。

(中略)

 この地震や津波は、「想定外だった」といわれる。しかし私は、この想定外という言葉が発せられるたびに、長い物理学の歴史の中から生まれた有名な格言を思いだす。それは「理論的にありえるものは、必ず自然界に存在する」というものであり、実験物理学では同様な意味で「理論的にありえる失敗は、必ず起こる」というものである。
 その昔、ブラックホールが理論的にありえるといわれたときに、当時の大多数の天文学者はそんな不可思議なものが実在するはずはないと考えたという。科学者でさえ、それまでの不十分な観測にとらえられて、新しい理論を取り入れることには困難があったのである。それでも今、ブラックホールの実在を疑う人はほとんどいない。


(中略)

 最後に一つ。テレビや新聞の報道で、いかに専門家という人たちがたよりにならないかということを感じられた方もあるだろう。また、これらのメディアで報道される内容についても、世界の報道とくらべると、むしろ外国の報道の方がくわしく正確な場合があることに気付かれた方も多いにちがいない。これはある意味で、科学する力が、まだ日本人ひとりひとりの血となり肉となっていないことを示しているように私には思われる。結局は、われわれ自身もわれわれの国土も、国民ひとりひとりの力で守るしかないということを、あらためて感じさせられている。ひとりひとりが正しい科学的能力を涵養することこそ、将来の日本にはとても大切なのだ。報道される内容を正しく判断できる力も、国民に求められている。
 
 あ・・・アツい・・・!

 ちなみに内容は地震のメカニズムや放射線の基礎知識、再びM9クラスの巨大地震(東海、東南海、南海、首都直下型地震)がやってきたら日本はどうなるかというシミューレーションなど。

 ただ地震のメカニズムや放射線の話はこれまでもニュートンはずっと取り上げてきたわけだし、震災以降ニュートンの内容が急によくなったわけでは決してない。
 震災前もニュートンは科学雑誌として究極的に解りやすく面白かったのだから、ニュートン現編集長の水谷さんを責める人はいないだろう。

 そういえば明日7月から東京電力は電力制限をするらしいけど、なんかここ数日の猛暑ものりきれたし55000kwとも言われる電力供給量も実はもっとあるらしい。
 なんか腹立ってくるよね。東京電力って性懲りもなくまだいろんな情報を隠していて企業として何とかこの窮地を乗り切ろうとしているんだよ。
 そりゃあっさりつぶれちゃ困るけど、このエスタブリッシュメントの論理(≒保身)を未だにやっているって言うのがたくましいというか・・・他に優先することはないのかというか・・・
 現在放射能で死んだ人はいないけど熱中症で死んだ人は4人もいるんだからね。その人の遺族の悲しみはどうなるんだ。人数か?死んだ人数だけが問題なのか?

劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル

 「面白い度☆☆☆☆ 好き度☆」

 ネタとトリックのピタゴラスイッチ。

 昨夜テレビ朝日で放送されていたミステリードラマの劇場版。ついこないだ劇場公開されていた新作映画だし、6月になってからまったくブログを更新していないので、ぶっちゃけ記事にするために観てみました。

 私は推理物と言ったら、小学生の頃に読んだシャーローク・ホームズか古畑任三郎くらいしか知らなくて、そこまで詳しくもなければ興味のあるジャンルでもないんですが、あえて言うならば、作劇ジャンルの中で最もロジカルであり、プロットを組み立てるのが最も困難なのはミステリーだと思う。だからこういう話を作れる人はマジですごい。フェアなミステリーって要は伏線がしっかりしているってことだから。

 ミステリーって難しいのは、犯罪のトリックありきで物語を組み立てていくようなところがあるから、なんというか機械的な構造になりがちなこと。
 読者(もしくは視聴者)に提示する推理ゲームをちゃんと成立させるために、文学的な側面が犠牲になるし、あえてそれ(文学性)をやってもわざとらしくなっちゃうんだよね。とってつけた犯罪の動機(≒犯人の半生が語られる感動?シーン)とかw

 だから下手な脚本家が作ると、トリックに引っ張られたキャラクターが不自然極まりない言動をするようになってしまうんだけど、あえてそれを逆手にとって不自然な言動で笑かしにかかったのがこのトリックシリーズなんだと思う。
 この方法はかなりハイコンテキストで上手いなあって思った。もうファンは皆こういったミステリーお馴染みの展開に飽き飽きしていて、その文脈を共有している。
 だからどっかでみたことのありそうな山村の「マンネリ村」が物語の舞台になっただけでニヤリとするんだろうな。金田一シリーズだよねあれ。
 
 ハイコンテキストと言えば、仲間由紀恵さん演じる盛りの過ぎた女性マジシャン山田さんのアパートに膨大なチキンラーメンがあるところなんか、もうハイコンテキストここに極まれりって感じでゲラゲラ笑っちゃったけどw
 あと物理学者の上田先生の胡散臭い著作!あれ、本の装丁がしっかりデザインされているのとかやたら面白くなかったですか?
 タイトルとか本当に馬鹿馬鹿しいのに帯までちゃんと作っているんだww一生懸命『どんと来い超常現象1~5』を作っている小道具さんを想像してもう笑った笑った・・・って思ってたらあの本実際に売っているんですね。悪乗りもいいところだ!

 と、こんな感じで全編にわたってひたすらくだらないんだけど「コメディものだからメインプロットも取ってつけたような適当なもんでいいや」って感じでもなくて、なかなかしっかりしているのがステキ。ギャグを全部取っ払ったら一昔前のミステリーとしてはなかなかの出来の話だった気がする。
 ・・・いや、正直すごいよ。最初にも言ったけど、こういうロジカルな脚本は私には絶対書けないよ。数学が苦手だったしな。
 まあ私は推理小説ろくに読まないから、もしかしたらメインプロットやトリックも丸ごと何かを拝借しているのかもしれないけど・・・とりあえず「双子」って言うのはミステリーでは使い勝手がいい設定だよね。

 最後に一言。この手の映画ってピタゴラスイッチみたいなもんで、最後にスルスル伏線が繋がっていくのが分かっていくのは「すげ~」って思うし面白いんだけど、それだけなんだよね。
 それは私がミステリーの緻密なプロットにそこまで興味がないからかもしれないけど、いまいち心に残らない。感情を揺さぶられない。考えさせられない。
 へらへら笑って後には何も残らない。でもそれでいいじゃんプップクプ~って居直っているのがトリックなんだろうな・・・

 ヅラの刑事が電気でビリビリするだけで条件反射的に笑ってしまうから悔しい・・・!

芸術家はシュウゾウに気をつけろ!

 こんばんは。今日はついに契約書を書きました。これで私もとうとう魔法少女・・・じゃない、漫画を連載することに!権利関係の契約は注意しないといろいろ面倒だからちゃんと読んだけど、この前の打ち合わせで言った通りのことしか書いてなかった。

 しかしもう締め切りまであと一カ月と言うのに、ここ2,3日昔アップした恐竜のイラストをイジイジいじっている始末・・・!
 その上私の中の小さなシュウゾウがうるさい。「お前ならもっと描けるはずだ!見せてみろお前の100%!」とかほんとうぜえ・・・!
 そんな感じで細かいところ延々と直し続けちゃうんだよな。なんであの時ここに意識がいかなかったんだ~!みたいな。でもこんなこと続けてたってキリがないんだよね。これは漫画もだけど。
 
 描き手が気になるところって、おそらく見る側にとっては誰も違いに気付かないほどの些細な箇所なんだから、それは自己満足もいいところなんだよ。
 一体この絵を誰のために描いているのか?・・・いや漫画はともかく、恐竜は自分の為なんだけどw、自分の為ならもっと手を抜いてもいいのに気になっちゃうんだよな。
 なんかもう私の自由意思なんかじゃなくて悪い霊(=シュウゾウ)に取りつかれている感じだよ。
 
 でも前にも言ったけど絵って描き込めばいいって言うもんじゃないから難しい。雑が丁寧に勝つ場合もある。勢いとかで。奥が深い。
 それに鉛筆で描き込むとやっぱりボソボソになっちゃうのが嫌い。恐竜の皮膚ってボソボソはしていないからね。ヌメヌメもしてないけど。

 それにしても完成って何なんだろうね・・・「もうこれでいいや!」って終わらせちゃう人を美術系の人は根性無しって批判するが、私は本気で羨ましい。締め切りって言うのもあるしな。
 
 そういや昨日の深夜テレビで、外国の教会かなんかで孤独に壁画描いている高橋さんっていう芸術家が出ていたんだけど、この人も有名な(らしい)ベテラン芸術家なのにやっぱり描いては消しを繰り返している・・・芸術家にとっての締め切りは「死」なのかもな・・・あ~あ・・・

 ・・・ん?オレの描いているものって芸術だっけ?んな馬鹿な!ゴミだよ(C)トイ・ストーリー3
 というわけで気楽にやれたらいいんだけどね!

パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち

 「面白い度☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆」

 宝物は金や銀ばかりじゃないだろ。

 今2003年に描いた昔のSF漫画を連載用に仕上げているけど、この映画の公開年も同じく8年前らしい。なんと!そんなに前の映画だったのか・・・昨日初めて観たよ。

 こういった「海賊冒険もの」って言うのは男の子心を理屈抜きでくすぐるよね。とはいえ私はそれほどこのジャンルに思い入れがなくグーニーズくらいしか連想できないけど。そのグーニーズですらもはや記憶があいまいだけど。
 でもとにかく純粋なワクワクをくれる映画。深い話じゃないのでゴロリと寝ころんでテレビで観る分には最高のエンターテイメント。ええ面白かったですとも!
 あまりに面白くて私は久々にスタン状態になったよwこれは『オーケストラ!』以来かな。だって子どもが喜びそうなこととりあえずぶちこんでいるんだもん!物語の展開も早いし。いいな~こういう潔い作り方・・・ただチャンバラのシーン長ぇよ!(笑)

 しかしスパロウ船長は腐女子に人気があるだけある。船長は作劇上の立ち位置が絶妙。主人公なのにどこか第三者(サブキャラ)的な位置にいる。なかなか王道ハリウッド映画でこんな風には作れないよ。
 主人公の立ち位置としては「周りの人たちの影響で成長していく主人公」と「周囲の人を変えていく触媒的主人公」っていう二つのやり方があると思うんだ。で、スパロウ船長は明らかに後者のタイプでなかなか面白かった。
 これが少年ジャンプとかだと前者になっちゃうんだけど、あのどこか他人事のように「我関せず~」って傍観しているところがスマートでかっこいいんだろうね。なかなかにルパン三世的だ。

 それにスパロウ船長ってけっこう平和主義者(?)で、海賊の割に荒事が嫌いな自由人なんだよね。「暴力はんた~い」みたいな。本当ネコみたいだなコイツw
 スパロウ船長が直接手を下したのは、結局本編では宿敵バルボッサ一人だけだったし、そのバルボッサを長年とっておいた一発の銃弾で倒す演出とか「絶対そうなるだろうな~」って予想していたけど最高!ベタこそベター。
 …と、このようにたまに仲間の為に真剣に戦っちゃうところとか…こいつに惚れない女はいないよ。欠点と言えばちょっと不潔なところくらいかwまあ17世紀のお話だから・・・

 上手いのは、主人公的なラブロマンスは他のキャラクターにやらせ、スパロウ船長は仲人的な位置にいながらも、船長以外のキャラクター造形は全て「テンプレ」にして、船長の魅力を引き出すためだけの存在にしてしまっているということ(とはいえヅラを離さないお父さんとかよかったけどねw)。
 ここら辺もなかなかさりげなくて匠だ。ちゃんとジャック・スパロウの映画になっているんだから。

 セリフもかっこいいよね。スパロウ船長名言集とかできそうなくらい面白くて、このキャラクターに深みを持たせている。「面白い少年漫画には必ず名言がある」というけど同感だ。いくつか挙げると・・・
 
 (「これって間抜けなんだか利口なんだか」と言う鍛冶職人に対して)不思議なことにその二つは矛盾しない。

 男にとって大切なのは何ができて何ができないかを知ることだ。


 なかなか知性的だw頭柔らかいんだろうね。だからあっと驚くことができるのだろう。海軍の船あっさり盗んじゃったりw
 そうそう私あのインターセプター号を強奪する砂浜のシーンで、船長とウィルの二人がボートの下にもぐってトコトコ船に接近するじゃないですか。あの時一瞬砂浜の向こうに小さく写る17世紀的な遠景が好きで、こういう細かなところもちゃんと描き込んでいるからこそ、カリブの海賊の世界を受け手は感じられるんだろうなあって胸をうたれてしまった。エクセレント。

 ただここまで言ってあれだけど・・・伝説の目的地とか言われる「死の島」にあっさり着くのはやっぱり突っ込みたくもなるよねwしかも作中二度行ったり来たりするから気軽に行ける感がすごかったw
 本当は海って広大でああいう伝説の場所に行くには数々の苦難を乗り越えるロードムービーになりがちなんだけど、まあ展開を早くしないとちびっ子が寝ちゃうからああいう決着にしたのだろうな。

 そういえば、バルボッサ一行にふりかかった死の島のメダルの呪いはかなり辛いものがあるよね。永遠に欲望が満たされず何も感じない呪い。でもあいつらけっこう愉快に笑っていたり、とても快楽が奪われたようには見えないんだけどw鬱とは無縁そうな人たちだ。
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