2001年宇宙の旅

 「面白い度☆☆ 好き度☆☆」

 シュールすぎる。

 いわずと知れたSFの名作・・・といいながらも、小説版には「英語の教科書に教材として取り上げられていたな~」ってくらいしか思い入れがなく(本はそこそこ読むほうだけど小説とか文学ってあまり読まないから・・・)映画版に至ってはこの前はじめて見た。
 
 アーサー・C・クラークとスタンリー・キューブリックが手を組んで考えたらしいんだけど、今見てもとんでもない映像美。『ビルマの竪琴』もすごかったけど、この映画の映像もすごい。
 CGなんかに頼れなかった時代の特撮技術。宇宙ステーションやディスカバリー号の無重力的なシーン(正確には遠心力によって発生させている人工重力)は、もうセットを回転させて撮ったとしか思えないんだけど、真相はどうなんだろう?

 こんなのを当時見せられちゃったら、みんなびっくりしたに違いないだろうなって思うんだけど、意外や意外日本では公開時あまりヒットしなかったらしい。
 確かにこの映画って、内容が難解かつ説明不足でどうにも理解しにくい。そしてハードSFとして科学的にできるだけ正しく宇宙を描いているから、すっごい静か(宇宙では音を伝えるものがない)。静かな上に美しい映像とクラシック音楽・・・スターウォーズごときをSFだと思っているSFファンは寝ます。
 
 これ科学考証が合っているから科学が好きな人の評価は高いって言うのがいいよね。やはり理系は文系と見ているところが違うというか・・・「おおここの宇宙の描写は正しいぞ」って喜んでいるわけでしょ?wこれってすっごいマニアな観方で、文系には「なんてつまらないものの見方しているんだろう。あら捜ししてんの?」って思われそうだ。ほっとけw。

 でも宇宙や工学だけが科学やSFじゃない。なぜか一般にはそういうイメージがあるけど。例えばこの映画を観て生物関係の人はどう思うんだろう?モノリスに触ってサルが進化なんてまさにインテリジェントデザイン説だし、科学考証どころかこれはもうオカルトだよね。
 ドラえもんがこのモノリスとよく似た「進化退化放射線源」っていうひみつ道具持っているけど、この映画を観ると、あのロボットがいかに人智を超えた恐ろしい存在なのかがわかるよ。

 欧米人はとにかく人類の知性は知的な存在によって授けられたって話が大好きだけど、そんなこといったら、人類の知性だけではなく、地球に生物が存在するのも、雪やミョウバンが美しい結晶になるのも、みんなオカルトの力が働いているって考えないといけないと思う。なぜ人類だけ神の力が必要なんだ。そこが一番怪しいよ。
 つまり私が一番不思議だと思うのは自己組織化なんだ。なんでこの世は放っておいても宇宙から何から、ある法則に則ったり、秩序だった振る舞いをするんだろう?

 生物だと思っていたモノリスはクラークによれば宇宙人の作ったコンピュータらしいんだけど(がっかり)、生物とコンピュータの違いって何だろう?
 コンピューターって演算装置のほかに情報端末って側面もあるけれど、生物も情報を保存するし共有するし複製するよね。なんでそんなことしているんだろう?
 私たちは生命誕生から38億年分のデータベースを世代ごとに更新しながらも引き継いでいる。その先には何があるのだろうか。あれこれ自然淘汰で試行錯誤して、完全無欠な遺伝子の組み合わせでも目指しているのだろうか?

 本当にこの映画っていったい何が言いたいんだ。冒頭400万年前の原始時代から始まって、木星探査機が飛ぶ2001年まで淡々と神の視点で描いているんだけど・・・メタ的な映画だから登場人物は印象希薄で感情移入は出来ないし、なんとも語りにくい映画。
 作り手側もわざと観客を切り捨てている感がある。2001年なんて9年前に過ぎたって言うのに全然今の生活とかけ離れている。異世界だあんなん(笑)。
 
 そしてあのラスト・・・卑怯!『告白』や『インセプション』といい、もうこういう解釈を俺ら任せにする映画勘弁してほしいよ。ただこのシーンって小説版ではどう記述されているのか気になる。
 ああいうオチをやるなら、せめて登場人物にささやかな性格付けくらいはしてほしかったな。私が一番好きなテレビゲーム「デザーテッドアイランド」のオチもこの映画と似ているんだけど(つーかパクッたと思うw)、キャラが良かったから楽しめたわけだし。
 愛すべき濃いキャラが出てきて普通にワイワイやった後、最後に一気にハシゴをはずして、あのラストをやったほうがずっと衝撃的だったと思うんだけど。
 サルトルの『嘔吐』やカフカの『変身』みたいなことをやるのがあのオチの意図だとしたら、一度キャラに感情移入させてからのほうが効果的なんだ。観客はブーブー言うだろうけど。

 でも登場人物やストーリーがないと、これ本当にただの環境ビデオだもん。これならハッブル宇宙望遠鏡のドキュメンタリーのほうが面白いよ。
 まあHAL9000だけは腹立たしいほどキャラが立っていたけど。あいつ本当機械の分際で生意気だよね。あのミスが天然なのかワザとなのかも不気味だし。
 でも私たち人類も知性が芽生えちゃったら一気に傲慢になったよね。人類を作ったやつが仮にいたとしたらため息ついているだろうね。オーマイガって。
 で私たち人類が「何でコンピュータを作ったの?」って賢いコンピュータに聞かれてもすぐに答えられないように、人類の神がいても我々が期待するような問いの答えは持っていないような気がする。

 というわけで全てが謎の映画。そもそもこの世は謎だらけなんだから、作り物の映画くらいは何らかの答えを出してほしい。
 これを観ると本当に宇宙なんて別に行きたくなくなるね。なにもねえし、静かだし、動きにくそうだし、退屈そうだし・・・いいことなんてなにもないよ。

 最後にキューブリック監督って情景を説明するシーンを止め絵で等間隔(約5秒ほど)でつないでいくよね。あれはけっこう特徴的だと思った。やっぱりこれも意図がわからないんだけど・・・なぞなぞ秘密・・・おしえな~い

タイタンの戦い

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆」

 ゼウス大好き。

 世間ではそこまで評価が高くなかったから「面白くないのかな」と思って映画館では観なかったんですけど、ぜんぜん面白い!観にいけばよかったなあ。
 『プリンス・オブ・ペルシャ』は、舞台が中東だっただけに、背景が砂漠ばかりでちょっとのどが渇いてきちゃったけど、この映画では冒険の舞台が海に、森林に、砂漠に、果ては地獄まで、フィールドに変化があって本当にRPGをプレイしているみたい。
 またギリシャ神話にあまり詳しくなかったのが良かったのか、神々のあまりに下種な振る舞いが突っ込みどころ満載ですっごい楽しかった。
 ゼウスがスケベ野郎っていうのは知っていたけど、あらためてこうやって見せ付けられるとなかなか面白い。いや~こんな親近感がわく神様はいないよ。

 神様って政治家や国王なんかがいなかった時代の憎まれ役だったのかなあ?人は狩りの成功や豊作を神様に祈って、ダメだったら神様のせいにしていたような気がする・・・今は神様の位置に菅直人さんがいるよね。
 昔は農作物の不作といったような誰のせいでもない偶然性の不幸を「神の怒りだ」とか「神は残酷だ」とか言って責任をなすりつけていたけど、今もサブプライムショックなんていう金融危機はシステム上不確定に起きるもので、それは麻生さんのせいじゃなかったもんね。それを政府の責任にするって言うのはちょっと可哀想だったよな。
 同じ責任をなすりつけられるなら、まだ神様のほうが崇められるだけましなのかな?一国の総理大臣よりも大ヒット漫画家のほうが崇められていそうな気がするのが情けないよね。民主主主義では、政治なんて国民の知能のレベルに比例するんだからしょうがないよ。
 漫画家で成功するのもすごいけど、総理大臣になるほうがはるかにすごいからね。一人しかなれないわけだし。すっごい実力と強運の持ち主だよ。

 私が思うに昔から人が「神」と呼んでいたものは、物理法則や社会ステムだったと思う。しかしそれはとても複雑、かつ非人格的で(ここが重要)人間が感情移入できるものではなかった。だからそれらのメタファーとして人間にキャラクタライズされたものが神様なんだと思う。
 現実の神様は、あの映画のゼウスやハデスのように、いちいち人間の行為にむきになって相手をしてくれない。一番残酷なのは無関心って言うけど、現実の神って本当にな~んもしてくれない。神を崇めても、神を憎んでも・・・だってただの法則なんだもん。
 だからギリシャ神話の神様は一見残酷に見えるけど、神様の癖に人間の目線に立って相手をしてくれるから偉いよ。「神がいちいち人間ごときにかまってられるか!」って言うのが普通だもん。
 それをちょっと神の石造が倒されたくらいで津波起こされたら皆大喜びだよ。「イエ~イ!神のやつキレてるキレてるw」って。相手にしないほうがこういう輩は調子に乗らないのになあ・・・w
 そこでとばっちりを受けて主人公ペルセウスの育ての親は死んじゃうんだけど、その親を演じるのがピート・ポスルスウェイトさんだったのが嬉しかった。この人『ドラゴン・ハート』でも吟遊詩人の役で出てたし、ファンタジーが似合う俳優さんかも。もともとシェイクスピアとかの舞台俳優なんだっけ。

 とにかくゼウスは馬鹿でいいよ。「神への信仰が弱まった」とか適当な言いがかりつけて国王の奥さん寝取ってペルセウス作っちゃうし。ハデスにいいように操られて怪物に人間を襲わせるし。すっごい親バカで、神を憎むペルセウスの神経逆なでするように戦いに手を貸しちゃうし・・・こいつ今の民主党政権並みに何がしたいのかぶれているよね。w
 秩序や平和をもたらすのが神様って言うイメージがあったけどギリシャの神は違うね。兄貴のハデス含めて混沌をもたらすよね、この兄弟は。
 それに神様なのに髭とかがボサボサで貧乏くさいんだよね。なんか顔に威厳がないんだ。あんなキラキラしたごっつい鎧着てるって言うのに・・・(もうぼろくそ言ってます)

 最後に映画に登場するモンスターについてなんだけど、デザインがどれも結構かっこよかった。六本足の動物ばかり出てきた『アバター』よりもこっちのほうがずっと好きかも。
 ブロントスコルピオばりの巨大なサソリとか、目がない婆ちゃんトリオ(台詞が面白いw)とか、ペガサスとか・・・このスタッフには他のギリシャ神話のモンスターを作ってほしいな。ケルベロスとか、キマイラとか。
 しかしクラーケンはなんか弱かったなあw。一応神でさえ制御不可能な凶暴なリーサルウェポンって設定だったんだけど、あっさりメデューサの首でやられちゃった。
 つまりメデューサが一番強かったって事だね。彼女は美しすぎたあまりに神の怒りを買ってしまい、モンスターにされた上地獄に追放され、挙句の果てに住処に勝手にのりこんできたペルセウスたちに殺されちゃう可哀想な人だったけど、何気にパーティをペルセウス以外全滅させたからね。あれは衝撃的だった。ドラコ以下みんなやられちゃうとは・・・

プリンセスと魔法のキス

 「面白い度☆☆ 好き度☆☆☆☆」

 ディズニーにしちゃかなりの異色。

 Yukiko T.さんにこの前教えてもらったディズニーの劇場版アニメ。ディズニーって一時期、手描きアニメ部門を閉鎖しちゃったらしいんだけど、この映画は久々の全編手描き。

 タイトルからして、王子様との出会いを夢見るロマンチックな少女向けの作品で、私のようなおっさんが見るような内容の話じゃないとは思ったんだけど、あの動物のディフォルメに関しては定評のあるディズニーが調子に乗ってカエルを主役にしましたよ!って言われちゃ動物好きは見ないわけにはいかない。

 確かに良く考えてみれば、ディズニーアニメってプリンセスモノ(対象が女の子)ばっかだよね。私すっかり忘れてたよ。ディズニーランドに男同士で入場するのは一人で焼肉屋に入るのよりも難易度が高いのはそのためだったのか。
 私のディズニーとの出会いは幼稚園の頃に見た『ダンボ』からで、「ディズニー=ダンボ=動物映画制作会社」っていうイメージがずっとあった(これはこれで間違っていないと思う)。私は男だし、別に恋愛モノはあまり興味がないんだけど、動物が好きだからディズニーが好きだったようなもの。
 というかディズニーアニメって『ダンボ』『ライオンキング』『美女と野獣』『不思議の国のアリス』くらいしか見ていないような気がする。
 で、その中でもダンボはビデオテープが擦り切れるほど見て大好きだった。特にサーカス列車が。あのテーマ曲、結構東京ディズニーランドの入場ゲートでかかっているよね。

 話がそれたけど、ディズニーアニメのメインテーマは基本的に「ラヴ&ピース」だから、少女マンガみたいな恋愛ものが多いのは当たり前かもしれない。
 逆に暴力シーンとかはあまり描けないから、その代わりにアクション性の高いミュージカルシーンを入れて尺を稼いでいるんだと思う。
 で、この映画も基本的には、これまでディズニーがたくさんやってきたシンデレラストーリーの王道(つまりは愛と勇気のハッピーエンド)をやっているんだけど、さすがにいまさらマンネリ気味だと思ったのか、表面的な部分はかなり変化をつけてきた。
 その「変化」が私にはかなり面白かったんだけど、プリンセスに憧れる、幼稚で自己中心的な妄想をする女の子(ひどい)には、生理的に拒絶されそうなものばかり・・・!
 ディズニーはいったい何がやりたいのか?女の子に夢やロマンをみせたいのか、ゲテモノを見せて悲鳴を上げさせたいのか・・・その迷走具合が面白い。

 この映画の異色な点

①時代設定が近現代
 プリンセスストーリーの舞台といったら今までは中世ヨーロッパの独壇場だったけど、ディズニーはもうそこらへんはやりつくしちゃったらしく、ムーランでは確かアジア、この映画ではアメリカの南部、しかも時代がおそらく第一次世界大戦と第二次世界大戦の間あたりで、今までのプリンセスよりもかなり時代が現代より。さすがに21世紀の映画で中世のお姫様はもう古いのか。
 でもあまりに現代にしすぎると、魔法や王子様なんかのガジェットに違和感が出て使えなくなっちゃうから、1920~40年代はギリギリの時代設定だと思う。なにしろブードゥーの魔術なんてのが出てくる。

②ヒロインが黒人
 これって初の試みだと思う。確かにシンデレラも、貧しい女の子のいわばサクセスストーリー(?)だったから、歴史的に虐げられたマイノリティをヒロインにするのは間違ってはいないと思う。
 そしてディズニーは黒人も描くのがうまいんだ・・・と感心(ヒロインがかなり可愛い)。冒頭で「ニューオーリンズは愉快な町~♪」(歌詞適当です)とかジャズ調のミュージカルシーンがあるんだけど、プランテーション農業が盛んだった南部の奴隷制や差別をあまり感じさせずに、白人と有色人種の格差を“匂わせる”のは見事。曲が陽気な分ちょっと泣けてきちゃった。
 あとこのヒロインの「ティアナ」ちゃん、今までのブルジョワお姫様(『魔法にかけられて』の世間ずれしたジゼル姫のような)と違ってかなり逞しい。
 王子様にいつかは救ってもらえるわ・・・なんて他力本願なシンデレラ・コンプレクスなんて一切なし。きわめて現代的な自立した女性像だと思う。
 こういう「貧しくても正直で働き者」というキャラ設定は、勤労を美徳とする日本の昔話の主人公のようで好感を持つ人もいるかもしれない。ただプリンセスに憧れる幼い女の子に見せるおとぎ話としては異例のリアリズムだとは思うけど・・・

③出てくる動物が爬虫類、両生類、節足動物
 ここが一番ひどいw。女の子向けといいながら、教室に持ち込んだら女の子がパニックになる動物ばかり。
 私が中学生の頃、友達と田んぼでたくさんトカゲを捕まえて、それを学校で飼育しようと持ち込んだことがある。そのトカゲをエキセントリックな社会の先生が教室に放しちゃったときの女子の悲鳴は忘れられない。
 確かに物語の舞台のルイジアナ州ってミシシッピ川が流れていて、その湿地帯にはミシシッピワニとかいるんだけど、メインの動物キャラに高感度の高い哺乳類をほとんど使わずに、どっちかというと不当に嫌われているヘビ、カエル、ワニを持ってくるとは恐れ入った。
 男ですら苦手な人は女の子のような悲鳴をあげて逃げていくのに(私もワニは触ったことないよ)これはいったいなんなんだ?いやがらせか?

 しかも、私まさかヒロインもカエルになるとは思っていなかったから、この展開は衝撃的だった。ディズニー史上最も地獄を見たヒロインだよね。
 しかしさすがは動物のディズニー。王子様カエルはとにかく、ヒロインのカエルはなかなかいける。可愛い。
 カエルって何が気持ち悪いかって、頭は魚みたいに間抜けな面構えなのに、脚だけやたら美脚なんだよね。顔と脚が合っていないんだよ。なんだよあの脚線美は。太ももの筋肉とかすっごい美しいからね。
 だから意外とカエルのヒロインってありなのかもしれない。ディズニーもカエルの脚の美しさに気づいたのか、立ち方を人間みたくして(後ろ足だけで直立させた)美脚を強調していたよね。ああいう発想がうまいと思った。

 最後に、詳しいことは野暮になるから言えないけど、この映画はゴミみたいな虫に一番泣かされるので注意だ・・・!レイとエヴァンジェリーンの愛は、『北斗の拳』のレイとマミヤの愛に匹敵すると思うw。偶然名前も一緒だし。 

またまた100ページ超え?

 KO氏と半年ぶりくらいに連絡がつく。やっと電話でてくれたよ。来年はじめに会えるらしい。KO氏には今まで描いた漫画を読ませたいね。もうずいぶんと会っていないから。

 あとオタク話したいね。KO氏はアニメに詳しかったけど、今は仕事と子育てに忙しいから、私の方がオタクになっちゃったね。・・・っていうか昔から私はもともとオタクだったね。
 ウチの中学って、なぜかアニメに詳しい人とかがオタクって言われていじめられていたけど、恐竜なんてマニアックなものが好きな私を見逃すとは、奴らもバカだぜ(誰に言っているんだ)。
 オタクって言われてなかったから気付いていなかったけど、実は私はけっこうオタク気質なんじゃないかって、最近思っているんだけどどうだろう。そうでもないのかな?

 そしていい加減いつまで描いているんだって言う『イッツアドリームワールド』だけど、恐ろしいことに100ページ超えそうな勢い・・・んなバカな・・・こんなくだらない漫画がこんなに長いとは・・・
 ドリームワールドでこれならば脚本がこれの二倍以上ある『風と翼』と『恐竜大陸サウラシア』は何ページになっちゃうんだろう??甘かった。
 そもそもドリームワールドの前作『走れシンデレラ』は43ページ書くのに一年かかったほど制作に手間取った作品。あの頃はまだ原稿に漫画を描くコツが試行錯誤状態だったから、本当に大変だった。
 あれから絵はうまくなったけれど、上手く書くのにこんなに何時間がかかるって思ってなかった。カメラアングルとかこだわるときりがないし・・・

 でもドリームワールドはKO氏に会うまでに下書きだけでも完成させたいから、年内完成を目指して頑張ろう。最近はハナからペン入れする気ないんだよね。長い漫画は。

KO氏に会ったら喋りたい話題
①リクエストのプラテオサウルス描いたよ
②80日間宇宙一周
③イッツアドリームワールド
④カウボーイビバップは金子隆一監修だった
⑤オーケストラ!かなりお勧め
⑥名古屋章さん死去
⑦最近の出版業界における萌え抱き合わせ商法について
⑧ティラノサウルスVSアロサウルス、ティラノサウルスVSトリケラトプスどっちが燃える?

魔法にかけられて

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆☆」

 いつまでも幸せに…なんてものがどこにもない世界に行ったのよ。

 やっぱり私の好みの映画だった。なんだかんだ言って私の評価基準って単純で笑えるかどうかだったりする。よって基本的にベタなコメディが大好き。

 姫を助けにニューヨークにやってきた王子がディズニーお馴染みのミュージカルシーンの最中サイクリスト集団に轢かれるのとか、もう最高。このシーンをCMで見て心をわしづかみにされました。
 そもそも私はディズニーアニメって嫌いじゃないんだけど、昔から唯一苦手なのがこのミュージカルシーンだったりする。脈絡なくこいつら歌い出すじゃんw。
 昔の映画って今よりも「総合娯楽」って色彩が強いのか、映画中ずっとクラシック音楽がかかっているのが多いと言う。
 当時は「映像と音楽を同時に楽しめるなんて何て贅沢な!」とか思っていたんだろうけど、今は物語の演出や展開重視で、シーンによっては音楽を全く挿入しないから、映画のミュージカルシーンってもう時代遅れなのかもしれない。

 でもそんなミュージカルシーンを(あえて)相変わらずやるのがディズニー。なにしろあの『ダイナソー』ですら最初はミュージカルシーンを決行しようとしたほどだから。無茶な!wイグアノドンやストルティオミムスが歌って踊ってもなあ・・・それはそれでちょっと見てみたかったけど・・・w
 だからまあ、この映画もミュージカルシーンがちょっと長すぎるかな?って気もするけど、ディズニーのお家芸がこれなんだから仕方がない。これを抜いたらディズニーじゃないだろ、みたいな。
 物語上でもこのセントラルパークでのミュージカルシーンが、恋人役の弁護士の心境の変化において重要なポイントになっているわけだし。長めにやってそれを印象づけているんだろうな。

 ミュージカルはとにかく「やっぱりディズニーってすごいな」って思うのは、なんだかんだ言っても画力だよね。
 最近ディズニーは、実写になっちゃった『パイレーツ・オブ・カリビアン』とか手描きアニメの映画をあまりやらなくて、ディズニーを手描きからCGに移行させた原因であろうピクサーが皮肉なことに「ディズニーよ手描きアニメに戻れ!」とか言ってるんだけど、やっぱりディズニーは絵が巧い。
 この映画でも冒頭けっこう長めに・・・大体10分ほどアニメのシーンがあるんだけど、本当に人間の表情とか動物などのディフォルメが巧い。これに比べると日本アニメのディフォルメは本当に稚拙だなって今なお思う。動物のキャラクターとかろくなのがいない。
 よく日本の魔法少女もののアニメで、女の子はすっごい丁寧に描くくせに、その傍らにいる小動物の相棒とかのデザインが本当に適当でいつもがっかりする。あ~こいつら美少女とメカしか描くの興味ないんだって。
 ただハウス食品の世界名作劇場は動物うまかったけどね。オコジョとかサルとか・・・しまいにゃシャチ描いていたしねw。

 さて、この映画、お話の作りを考える上では実は想像以上に深い話だった。アニメの世界に生きていた「ジゼル姫」が、悪い魔女「ナリッサ」によって現実のNYに追放されて、そこで離婚調停を主に扱う弁護士「ロバート」と恋に落ちるって言う・・・まあ単純っちゃ単純な話なんだけれど、意外と登場人物の心理描写が凝ったものになっている。
 私はラブコメとかは基本的に全く見ないんだけど、たまに『プリティウーマン』とか『Sex and the City』とかを見ちゃうことがあって、けっこう楽しんでいたりする。あと昔の貴族が現代にタイムスリップして現代人の女性と恋に落ちるって映画ありませんでした?あれ面白かった。
 タイトルすら忘れちゃったけど・・・まあいいや、それでいつも思うのはラブコメって、登場人物の内面を描くのが本当に上手いなあってこと。
 そりゃ恋愛を描く作品なんだから当たり前だろって話かもしれないけど、意外と恋に落ちている時って人は無自覚(盲目)だったりするから、それを改めて物語として描くのって言うのはなかなか難しいんだと思う。どこかで冷めていないと書けないから。

 この映画で上手いなあって思ったのは、今までアニメ作品でお決まりのヒロイン役だったジゼルが、現実の世界の男性を知って(別にエッチなことをするってわけではないです)今までにない別の感情が生まれている事を自覚するって言うところ。
 まあジゼルの言うことに対してなんでも「無理だ」とか「違う」とかニヒルな反論をする弁護士に彼女が苛立ったってシーンなんだけど、そこで彼女は自分に芽生えた新しく――そしてずっと複雑な感情を知って喜ぶんだよね。
 アニメキャラで善人として描かれた以上、彼女はいつも笑顔で歌を歌って森の仲間と戯れ、悪い魔法使いにさらわれてお城で王子様の助けを待つくらいしか本当はできなかったんだけど、現実の世界にきて彼女は初めてネガティブな感情を表に出す。それは怒りとか哀しみとか嫉妬とか・・・
 逆に、現実の世界で大人として生き続けたことで、なんでも現実的にしか物事を考えられなくなっちゃったロバートも、天真爛漫で子どものようにピュアなジゼルと出会うことで、いつのまにか「フッ」って鼻で笑うようになっていた「永遠の愛」とか「思いやり」とかを思いだしていく。そもそも現実世界のロバートだって「大人」と言う役を演じていただけだったんだ。

 人は世界に存在する以上意識的にしろ無意識的にしろ何かを演じている。それは広い社会の中で自分のアイデンティティやポジションを確立し維持する上ではとても重要なことなんだけど、時に融通が利かず重荷になってしまうことがある。
 ロバートはそれから自由になったし、ジゼルは『ソフィーの世界』で自分の存在が物語の登場人物だと知ったソフィーように、自分の世界を広げていった。

 私は今の物語は複雑化しすぎているのかもしれないと、あえてディズニーの王道をメタ的に皮肉るこの映画を見て思った。
 なかには「水戸黄門」のような勧善懲悪なんて古臭いし単純すぎるって言う人もいるけど、これはやはり物語の基本なんだ。実際あんなにヒットした『アバター』だってそうじゃないか。
 正義役はあくまでも正義。悪役はあくまでも悪。それは確かに単純なんだけど、ただのメタファーにすぎない。正義100%の人間もいなければ、悪100%の人間だっていない。そんなのは作り手だって分かっている。そうじゃない。そうじゃなくて作品の中で正義役と悪役が葛藤する世界そのものが一つの人格のメタファーなんだ。誰の人格?それは作り手の・・・もしくは映画を見ている私たちの。
 私たちの意識の中では常にポジティブな面とネガティブな面が共存している。だから私たちは映画の世界に自己の内面を投影し、感動するのではないだろうか。

 違いますか、そうですか・・・
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