科学における因果関係

 今日はとりあえず「生物」関係の資料を、覚え書程度に。
『好きになる生物学』吉田邦久著 講談社
『国際動物命名規約提要』渡辺千尚著 文一総合出版
『増補 動物系統分類の基礎』内田亨 北隆館
『どこまで描ける生物進化』宇佐美正一郎 新日本出版社
『進化遺伝学』ジョン・メイナード=スミス著 巌佐庸 原田祐子訳 産業図書
『進化論の挑戦』佐倉統著 角川選書
『生命40億年全史』リチャード・フォーティ著 渡辺政隆訳 草思社
『Newton別冊 宇宙と生命』教育社
『Newton別冊 からだのサイエンス』教育社
『Newton別冊 動物の不思議』教育社

科学の研究って実験や観察から因果関係を導き出すことだと思っているのですが、そこが重要な分、参照するデータをいかに客観的に分析するか、もっと言えば有用なデータをどれだけ集められるかが、まずもって最も大切なことなのかな?と、気象学の先生との会話で感じました。

 この要素とこの要素は相関しているのか?それとも全く関係してないけれど、そう見えるだけなのか?

 科学を研究するならば、そこをかなり厳しく考えていかないと、一人前扱いされないって世界なんでしょうね。

 科学の歴史を振り返ってみれば、その歴史において大きな変革をもたらした理論が、いかに間違って解釈され、応用されたか分かります(自然選択、利己的遺伝子説など)。それもこれもデータから誤った因果関係や意味を抽出してしまったからなのでしょう。
 プロの学者でさえそんな事繰り返すのだから、恐ろしい。

 「オレはこう思うんだけど、そうなってほしいなあ」という期待や先入観は捨ててからデータを分析しないとエライことになりますよね。文学評論じゃないんだから。

集合的無意識について

 今日は美術教育の在り方について二時間半も教授と議論しました。私みたいな素人の質問に長時間丁寧に答えてくださって、美術教育における膨大な知識、幅広い教養を感じました。テープレコーダーで録音しておきたい有意義な議論でした。

 昨日の疑問点を今日先生にぶつけたことで「無意識」については何とかイメージがつかめたのですが、新たな厄介な敵が現れました。
 それがユングの「集合的無意識」なのですが、これも言葉が誤解されやすいと思います(日本語の訳のせいかもしれませんが)。
 そもそも「集合的無意識」という言葉が差す考え自体は、そこまでぶっとんではいません。それは、どんな細胞でも基本的な構造(核、細胞質)が同じだったり、「ヒト」という種類が大体同じような(核酸情報やタンパク質情報による)生物学的特徴をもっていたりするのと同じく、どの人においても大体共通する普遍的かつ基礎的な精神の構造や類型(=元型)のことです。
 
 リードの『芸術による教育』では、「どの国や、どの時代のマンダラも、四面分割などといった特徴が、文化が伝わったわけでもなく(←とりあえずそう仮定して)大体似たようなものとしてみられる」という事例の理由として「集合的無意識」を取り上げています。
 
 しかしその「集合的無意識」という言葉の感じから、ユングの考えは発表当初、学術的な意味をなさないオカルトだ、と受け入れられなかったそうです。トンデモ扱いされちゃった、と。
 その原因はおそらく、当時の学者さんが個人主義的であったのと、「集合的無意識」をSFなどで出てくる、個人と個人の意識の共有「集合精神」みたいなもの(『スターシップトゥルーパーズ』の宇宙昆虫「アラクニド」みたいな)だと捉えてしまったからかもしれません。

「無意識」という言葉

 リードの『芸術による教育』「第6章――無意識的な統合の過程」の論考は重要な分、慎重に考えていく必要があります。素人くさい話で恐縮ですが「無意識」って「意識がないこと」ではないですよね。いわゆる「意識不明」では。
 言葉通りに受け取れば「無意識」って「意識が無い」って取れてしまいますが、それは「意識」という言葉と、「意識的」が違うように、「無意識」とは「無意識的な意識」という意味で使われてますよね。本当にややこしい。

 「意識せずに瞬きをした」という時の「意識」と「重態で意識が無い」という時の「意識」って同じ言葉なのに、ニュアンスが少し異なります。それとも「意識の度合い」なのかな?そもそも「意識」って何?
 「意識不明の重態」も「死」ではないから意識は若干あるんですかね。外部には分からないだけで。こういうふうに、思考の坩堝に陥っちゃうからこの章は何とも納得しづらいです。

 そもそもこういった「意識」の議論は少々頭でっかちというか、注意深く集中したものが「意識的な意識」であり、普通は「無意識」という考え方って、なかなか自然に入ってきません。それは「意識があるけど気がついてない」って言えばいいのでは。
 
 絵を描くことと、運動をすることって、似てないようで、意外と肉体的というか近い気がするんですけど、とっさにボールを奪ったり、滑らかな線を引いたりしている時って、すごいそれだけに集中していて、頭の中は「ああだこうだ」と理屈こねくり回してはいなくて、いわば無の境地みたくなっていますが、あれも意識の集中であって「無意識」ではないですよね。

 じゃあ「無意識」ってなんだ?それをあらかじめ用意された、どの人も大体平等に持っている先天的な心理の構造とするならば、「無意識」なんて言わずに「先天的心理構造」って言えばいいわけだし・・・

 よくアニメとかで、記憶をなくした主人公が、忘れた記憶を思い出す旅に出るとかいう内容のやつがありますけど(今や結構ベタ)ああいった本人の記憶なのに、意識に表出しない要素が無意識なんですかね。フロイト氏。

『マンガ学への挑戦』

 昨日買った『マンガ学への挑戦』、前半は「BSマンガ夜話」のようなとっつきやすい話から入り、後半はある種の哲学的論考に入っていって、なかなか面白い本でした。
 特に172ページからの「連続と非連続」、207ページの「文化とは何か」は神がかってます。ここで論じられた「非連続性」とは自然科学ならば、クーンの「パラダイム・シフト」であり、進化論ならば、グールドの「断続平衡説」にあたる気がします。

 しかし、この本とても読みやすかった。文章が丁寧で言葉も分かり易く、理屈もしっかりしています。この前読んだ浅田彰さんの『構造と力』が、難しい記号論的専門用語をバシバシ振りかざしていたのとは、全く対照的でした。

 今日は珍しく大学で昼を食べたんですけど、ハヤシライスの上にスクランブルエッグをかけたものを「オムライス」といっていいんでしょうか?それはオムライスではなく、「ハヤシライス卵がけ」なのでは…
 オムライスって自分の中ではチキンライスを卵でくるんだ食べ物だと思っていたんですが…チキンライスの定義が瓦解した瞬間でしたね。

まったくそのとおりで

 論文22節にも及ぶ第5章が何とか終わりました。私は「ハーバート・リード」というロマン主義の詩人を研究しているんですが、この人の美術教育における論考は、とても慎重でぬかりがありません。もっと過激で偏ったこと言ってくれれば、批判のひとつも出来るんですけど。
 
 大体私みたいなもんが、こんな崇高な論文を偉そうにああだこうだ言っていいんですかね。リードと同じく、しっかりとした論考の古典的名作と言えば、高校の頃に読んだ『種の起源』が挙げられます。あの本古いですけど、木村資生の「中立進化説」っぽいこともすでに書いてあったりして、ちゃんと読めば決して「古い」進化論ではないと思います。もう読んだのが昔なんで細かなところ忘れちゃいましたが。
 
 話は変わりますが、今日は本を衝動買いしてしまって、夏目房之介さんの『マンガ学への挑戦』という本なんですけど、こんなコアな本を置くとは、大学生協恐るべしです。
 本の序盤はこの前私がコラムで書いたような内容と近くて、ちょっと親近感を覚えました。私も「BSマンガ夜話」は取り上げる漫画見てないで、番組の議論をただ楽しんでいるタイプです。
 しかしあまりに熱心でナイーブなファンがいるせいか、最近のマンガ夜話の議論は少し大人し目ですね。個人的には「いしかわじゅん」さんにもっと「よつばと!」とか「最終兵器彼女」とか、ばしばし斬ってほしかったんですけど、ファンが多い作品じゃ難しいんですかね(岡田さんも「最終兵器彼女の回は、皆この漫画が好きだったのか、なんか盛り上がりに欠けた」とかそんなようなこと言ってたし)。いしかわさん、ただ悪口言ってるわけじゃないんですけどね。
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