『風と翼:REVELATION』脚本⑥

平八郎が獄長室から、地下の現場の様子を眺める。
黒服「あの若者の履歴書です・・・」
平八郎「・・・やはりな。あやつには屈辱を味わわせてやろう・・・
いくら忍びでも翼はあるまい・・・地震が起これば足場から奈落の底だ。」

岩盤を掘削するカイトたち。
黒服「働け働け~!お前らの代わりはいくらでもいるんだ!」
モグちゃん「ファイトです。賞与が3%増える可能性があります。」
力尽きて倒れる労働者。
「だいじょうぶか!しっかりしろ!!」
モグちゃん「残念です。医療費は自己負担となるため、来月の給料から天引きとなります。」
地下でつるはしを振るう労働者「はあはあ、ここは地獄だ・・・」
土砂を運ぶカイト「地獄・・・なぜか、この光景に見覚えがあるような・・・」
労働者「兄ちゃん、地獄に落ちたことがあるってか。」
黒服「ID1580番はいるか!」
カイト「ぼくだ。」
黒服「配置換えを命じる!
AI球団が野球に興じるスマッシュスタジアム球場の建設に回れ!」
労働者「こいつら、あんたが元プロ野球選手だと知って嫌がらせを・・・!」
黒服「身は軽いだろ?ええ?ドブネズミ・・・」
カイト(僕が忍びだと気づいている・・・)「・・・分かりました・・・」
労働者「兄ちゃん・・・!」
力なく微笑むカイト「仕事がもらえるだけありがたいよ・・・」



日光テクノロジー大阪支社の社長室
石川専務「社長!仕事はしなくていいのですか?」
本多とマリオカートをやっている家康
家康「だいじょうぶだいじょうぶ、経営的なものもAIに任せているから。
これで俺たちは不労所得者。あ、赤コウラ卑怯だぞ!」
本多「ヤッフー♪」
傍らで戦車のプラモデルを組み立てている服部に声をかける石川
「先生・・・先生からもなんか言ってやってくださいよ・・・!」
ランナーをニッパーで切りながら服部「家康くん・・・私が作っておいてなんだけど、AIの手綱はしっかりと握ってないと、あいつら何をしでかすかわからないぞ・・・」
家康「先生の作ったAIなんですから、大丈夫ですって。」
本多「ドラえもんみたいなこと言う先生だなあ・・・」
石川「作者の先生でもAIの思考は判らないのですか?」
服部「あいつら勝手に考えているからね。」
石川「しまった・・・これを見てください。」
チャンネルをNHKの国会中継に変える石川
家康「あ!こら!今、最終ラップだったのに!」
石川「うるさい!」
国会で国会議員が全員寝ている。
石川「全員寝てます。」
家康「今に限ったことでないではないか。」
石川「国会の議決も、法案の作成も、生成型AIを導入したのです。」
本多「多忙化する官僚の業務を軽減できるじゃないっすか。DX化っすよ。」
家康「お前頭いいな。」
本多「あざす!」
石川「AIが人間を脅かすようなことはないんでしょうか??」
服部「人間がAIになにを命令するかによると思うけど・・・」
国会中継「AI全権委任法が賛成多数で可決されました!!」



豊臣&天井法律事務所
オフィスで同じ国会中継を見る秀頼
「なんて愚かなことを・・・
すぐに裁判を起こさなければ・・・!」
秀頼に紅茶を出す翼「何が起こったんですか?」
サラ「日本政府が政治すらAIに丸投げしちゃったのよ・・・!」
秀頼「これでAI技術を牛耳る日光テクノロジーに国は乗っ取られたようなものだ。AIに都合のいい法案をどんどん通されたら、我々の勝訴は不可能になる・・・!」
翼「し、しかし、カイトさんがまだ地上に戻ってきてません・・・」
秀頼「もうカイト殿を待ってられない・・・公判中に彼が戻ってくるのを祈るしかない・・・
サラ君、訴訟の手続きを・・・!」
サラ「はい!」



地下
高所で球場の骨組みを組むカイト。身軽な身のこなしで骨組みを跳んでいく。
労働者「兄さん、筋がいいな!鳶(とび)やってたのかい?」
カイト「ま、まあ近いことは・・・」
工事監督が笛を鳴らす「作業中止!!
カナリアロボが壊れた!空気汚染が発生!直ちに避難!!」
労働者「またメタンガスか・・・引火して爆発したら生き埋めだぞ、おっかねえな。」
トンネルから避難する労働者たち。
息を切らすカイト「・・・なんて不衛生なところなんだ・・・
地下鉄が近いのか定期的に地震による落盤が起こるし、ガス源や熱水源も多い・・・
こんな場所にテーマパーク作って家康は何がしたいんだ・・・」
労働者「なんでもAIがこの場所を選んだそうだぞ。」
カイト「AIが・・・」

非常用エレベータの方に案内される労働者たち。
モグちゃん「全労働者は地上に避難してください。首都移転計画はこれで終了です。ありがとうございました。」
カイト「え?僕が作った球場は?」
モグちゃん「大江戸セクハラパラダイスは税金の無駄だと政府が判断し、建設中止となりました。」
カイト「突然どうしたんだろう・・・」
ヒソヒソ声で労働者「ガス漏れは嘘らしいぞ。」
カイト「・・・え?」
労働者「別の班の連中の話によれば、マグマだまりの冷却をしていた懲罰班がとんでもないものを堀り出したらしい。」
カイト「とんでもないもの・・・?」
労働者「よくわからねえが、天下の財宝に違いねえ。それでオレたちはお払い箱さ」
カイト「きっと家康の狙いはそれだ・・・!」
列を逆走するカイト。
「おい、兄さん!何処へ行くんだ!!」

獄長室
黒服「獄長大変です!労働者どもが仕事を放棄して次々と引き上げています!」
平八郎「この私に反逆するとは、さすが肉体労働しかできないチンパンジーだけあるな・・・少しムチで叩いてやろうぞ。」
巨大なショットガン「ドラゴンカッター」を手に取る。

カイトが労働者の隊列を引き返していくと、黒服が労働者を止めているのが見える。
黒服「お前ら勝手に何処へ行くつもりだ!」
労働者「ロボットがセクハラランドの建設は打ち切りだって言ったぞ!」
黒服「そんな命令はしていない!それに正しくは大江戸セクハラパラダイスだ!」
カイト(家康の命令じゃない・・・?)

走り続けると「この先マグマだまりアリ超危険」と書かれたパネルが見える。
黒服たちは労働者を引き止めるので夢中で、カイトがマグマだまりに降りていくのに気づかない。
ガスマスクをつけてゴンドラを降りていく。

薄暗い坑道を進んでいくと、石田三成がうずくまって震えている。
カイト「石田さん・・・!」
石田「若者よ、この先に行ってはいけない・・・!」
カイト「一体何が掘り出されたんです・・・?」
石田「・・・あれは・・・人間・・・」
カイト「こんな地下に人間が埋まっていたんですか・・・!?」
茫然自失している石田「・・・人間なのか・・・?」
カイト「しっかりしてください・・・!みんな引き上げています、石田さんも上へ!」
カイトがさらに奥へ進もうとすると石田が怒鳴る。
石田「ダメだ!殺されるぞ!!」
カイト「一体何に・・・」
石田「AI重機だ・・・!暴走してる・・・!!」
カイト「なんだって・・・」
いきなりまばゆいビームを浴びせて、掘削機がカイトに襲いかかってくる。
すんでのところで巨大なドリルを交わすカイト。
しかし、すかさずバックホウのアームがスイングし、カイトはさらに下の坑道へハネ飛ばされる。
下へ下へ転がっていくカイト。
落下し続け、どこかの地面にぶつかり気を失う。



大阪高等裁判所には雪が降っている。
日光テクノロジー特殊法人許可処分取消請求訴訟第1回公判。
原告席には、秀頼とサラ、被告席には国の代理人の弁護士徳川秀忠と日光テクノロジー社長の家康が座っている。
家康「あなた方は我が社を売国企業と侮辱するが・・・人口が1億人を切ったこの国の労働力不足を解消するには、機械化を進めるか、異国人を雇うしかない。
しかし、この国が鎖国政策を続けている以上、解決策はロボットしかないのです。このソリューションの何が売国なのですか?」
サラ「思ったよか、わりと弁が立つわね・・・」
秀頼「被告側に強力なアドバイザーがいるな・・・」
家康の後ろでハンバーガーを食べている人物を指差す翼「あ・・・あの人・・・!」
サラ「知り合い・・・?」
翼「はい、あのアメカジスタイル・・・伊賀上忍、服部半蔵先生です・・・!
天才発明家にして軍師だと父が恐れていました・・・
きっと弁護士ロボットでも作ったんじゃ・・・」
秀頼「厄介だな・・・とうとう我々も法廷でAIと戦うことになろうとはな。
GDPや生産性の向上といった数量的なデータに関しては機械の方が一枚上手だ。
ここは機械に計算できない社会的、倫理的な問題に争点を持っていくしかあるまい・・・」

頷いて起立するサラ
「裁判長、問題はAIが起こした不法行為について責任の所在が不明確である点です。
AI利用者が不法行為責任を負わないという、鳥居判決が適用されるならば、AIの製造者が製造物責任を負うはずです。」
家康「製造物責任・・・?」
キーボードを叩く服部「ええと・・・製造物の欠陥によって損害が発生した際には、そのメーカーが賠償責任を負うこと・・・」
家康「どう答えればいいですか・・・?」
キーボードをたたいてAI弁護士が書いた書類をプリントアウトする服部「はいよ。」
印刷したての書類を受け取る家康。
服部「そのまま読んで。」

書類を読む家康
「ええと、問題はAIがソフトウェアなのか、ハードウェアなのかであります。
製造物責任法における“製造物”には、サービスやコンピュータプログラムは該当しません。例えば、AIの自動運転によって配送トラックが事故を起こした場合、AIの自動運転プログラムに欠陥があるのではなく、AIによる配送サービスに過失があったと考えるべきであります。
よってこの場合の損害賠償は、製造元の我社ではなく、民法715条1項によりAI配送サービスを行っている配送会社が負うべきなのです。」
頷く大野裁判長「確かに。」
サラ「裁判長異議あり!それはおかしい・・・!
事故を起こすようなAIを開発したメーカーが訴えられないのは、社会的に問題があります!メーカーが悪意あるプログラムを組み込んだ場合は?」
家康「うちの製造物になんてこと言うんだアバズレ!」
服部「“プログラム”ね。」
家康「うちのプログラムになんてこと言うんだブス!」
サラ「誰がブスよ!」

挙手する服部「裁判長。」
大野裁判長「どうぞ。」
服部「そのAIの開発者です。まず、我社のAIのソースコードはすべてネット上に公開しています。」
サラ「あんな機械語なんて誰にも読めないわよ!」
裁判長「原告側、静粛に。」
服部「しかし、AIは学習し成長するものです。うちのAIを利用している取引先が、AIにどんな教育をしているかは、私たちには感知できない・・・どんな技術も使い方次第です。カッターナイフは平時には便利な文房具だが、乱世にはきっと恐ろしい凶器になる。」
家康「そうだ!使ってる奴が悪いんだ!」
サラ「だから、使ってる奴が罰せられないから言ってるんでしょうが!」

秀頼「よろしいでしょうか、裁判長・・・」
裁判長「発言を許可します。」
秀頼「日光テクノロジーは東京電力同様、現在国有化されています。仮に、AIによって原発事故のような大災害や大事故が起きたとしましょう。
その場合は国家が規制責任を負い、被害者は国家賠償請求訴訟が起こせるという考えでよろしいでしょうか?」
家康「どういうこと?」
服部「AIを使った責任は最終的には国家が負うって言いたいみたいよ」
家康「大丈夫なのか・・・?」
服部「国家を相手取って裁判を起こした場合、ほとんどの場合原告側が負けている。
因果関係不明とか陰謀論とか好きなだけこじつけられるからね。
実際、原発事故だって、薬害事件だって、国は勝っている。
社長、ここら辺で妥協してもいいんじゃない?」
家康「うちの会社には責任は及ばないんですよね?」
服部「AI弁護士によれば。」
家康「裁判長、異議なし。」



控え室で荷物をまとめる一行。
翼「お疲れ様です」
サラ「さすが教授・・・!国が責任を負うという言質を取りましたね!」
秀頼「大阪冬の陣は一歩前進といったところか・・・
原発事故は国が東電に責任を押し付けて尻尾切りをしたことを忘れているようだな・・・これでAIで重大事故が起これば、国が日光テクノロジーに行政処分を行う可能性は高いが・・・」
翼「国は東京電力の営業を差し止めてはいません・・・」
サラ「やっぱり裁判の行方はカイトくんにかかっているわね・・・」
翼「カイトさんが地下に降りてもう一ヶ月・・・何かあったんじゃ・・・
やっぱり私も地下の様子を見てきます・・・」
サラ「危険だって・・・!」
翼「・・・だからこそ。」
部屋を出ていく翼。

裁判所のホールで服部と鉢合わせる翼
すれ違いざまに服部が声をかける。
「君のお父さんは主君を見誤ったね・・・」
立ち止まる翼
「家康殿が名君とも思えませんが・・・」
服部「信長会長と違って家康くんには野望がない・・・
たまに失敗もするが子どものように純粋だ。」
翼「子どもに持たせるには、恐ろしい技術だと思いますが。」
服部「子どもは成長するものです。それにAIも・・・
使い方によっては人や社会を幸せにすると思うよ。」
翼「それでも・・・どんなに親切で働き者でも・・・AIは人間ではありません・・・
私の好きな人から生きがいを奪ったAIを私は許せない・・・」
服部「人間であるかどうかが、そこまで重要かな。」
翼「・・・先を急ぎますので・・・これにてご免。」
刀を取り出す服部「地獄に行くのはまだ早い・・・」
身構える翼「!」
刀を渡す服部「君の御父上の形見だ。持っていきなさい。」
受け取る翼「・・・?」
服部「姫鶴一文字・・・これでないと鬼は殺せない・・・」



地面の底で気絶しているカイト。
しばらくして意識が戻る。
カイト「・・・ここは・・・」
起き上がると、暗闇の中に青白い光が見える。
光の方へ近づくカイト。
発光しているものの正体に気づき絶句するカイト。
カイト「・・・え?」

『風と翼:REVELATION』脚本⑤

奥の部屋に案内される。
そこには、国内のAIの動向を監視したサーバーがずらりと並んでいる。
サラ「この雰囲気懐かしいでしょう?」
秀頼「こう見えてコンピュータの心得はあってね・・・国内のAIが反乱を起こさないか、監視をしているのだ。」
モニターを指さすカイト「この数字は?」
秀頼「AIが法に抵触した件数をリアルタイムでカウントしている。
黄色い数字が法に触れる可能性、赤が完全に違法だ。
今日だけで、触法行為が1万件を超えている・・・」

翼「警察は取り締まれないんですか?」
秀頼「そもそも警察が人手不足でAIに依存しているくらいだからね・・・
それにAIを規制する法律がない以上、グレーゾーンのものも多い。」
サラ「怖いのはそこなの。AIそのものを罰する法律がないから、犯罪者の違法行為の抜け道にもなっているのよ。ペットが通行人を嚙んだら、飼い主の責任になるけど、AIにはそれが適用されない。」
翼「なんでですか?」
サラ「去年、AIによる過失責任はその利用者に及ばないという判決が最高裁で出ちゃったから・・・」
秀頼「鳥居判決だな」
サラ「なのでAIを悪用した人間が、その責任をAIに押し付けちゃえば、違法行為は消えてしまうという魔法のような状況・・・」
翼「そんなむちゃくちゃな・・・」

秀頼「実際にある女性がAIに“韓国アイドルのイ・ウォンイクに会えたら死んでもいい”とぼやいたら、ユーザーの気持ちをAIが勝手に忖度して、そのアイドルを自宅までさらってきてしまったことがある・・・このユーザーは罪を犯したと言えるかね??」
カイト「確かに、この前タクシーに乗ったら、知らない人のアパートにつれていかれて超怖かったって言ってたなあ・・・」
翼「じゃあ、AI開発をしている日光テクノロジーは訴えられないんですか?
あまりに凶暴なペットなら、それを売っているペットショップは訴えられるんじゃ・・・」
サラ「翼ちゃんの言うとおりだけど、日光テクノロジーは今や国営企業よ。それに、今さら国民が便利なAI技術を捨てるとは考えにくいしね・・・」
カイト「それで、打つ手がなくなってデモをしてたの・・・?」
サラ「まあね。そしたら警察のやつ、ロボットパトカーを差し向けてきて・・・
こともあろうに武器をちらつかせて威嚇してきたのよ?」
秀頼「それは危険だ・・・考えられないとは思うが、もしそのパトカーが市民に向けて発砲した場合、現状ではそのパトカーも、それを出動させた警察も法的責任が問われない・・・事態は急を要するな。」

翼「・・・家康殿は訴えられない、市民運動もできない・・・一体どうするおつもりですか?」
秀頼「手は一つある・・・
検察が家康を刑事訴追するのではなく、サラ君たち弁護士会が民事で訴える・・・!」
翼「でも、AIを規制する法律がないなら、家康殿の会社を訴えるのは難しいんじゃ・・・」
秀頼「訴えるのは家康の会社ではない・・・日光テクノロジーを特殊法人化した国を訴える・・・!国に営業差し止めを迫るのだ・・・!
サラ「さすが教授・・・!」
翼「勝算はあるのですか・・・?」
秀頼「大阪高裁の大野治長裁判長は、人工知能の規制に前向きな日本の良心ともいえる裁判官だ。日光テクノロジーの違法性さえ立証できれば、勝機はある。」

カイト「・・・お話はだいたいわかりませんでした・・・
・・・で、AIに仕事を奪われたぼくは何をすればいいんですか?」
秀頼「さすが忍び・・・話が早いな。
問題は徳川家康が性急にAI技術を普及させようとする意図だ・・・
かつて、信長や秀吉が日本を支配しようとしたように、家康にも野望があるはずだ・・・」
カイト「何も考えてなさそうだったけど・・・」
秀頼「侮ることなかれ、風間殿。相手はタヌキだ。
家康が政治家に圧力をかけ人工知能に都合のいい法改正がさらに進めば、我々がやろうとしていることは遡及処罰となり、家康の暴挙は永遠に止められなくなる。
我々に残された時間はわずかだ。」

サラ「日光テクノロジーが気になるプロジェクトをしているの・・・
それが首都地下移転計画・・・」
カイト「この人、地下が好きだな・・・」
サラ「AIで失業した人達を雇って、巨大なシェルターを作っているようなのよ・・・」
翼「核戦争にでも備えているんでしょうか・・・?」
カイト「埋蔵金の発掘かも・・・」
サラ「表向きは、首都圏の土地不足を解決するためらしいけど・・・あまりにも不自然だわ・・・」
秀頼「風間殿には、徳川地下帝国の実態と目的を調査してもらいたい・・・
もし、そこで非人道的なことが行われていたら、裁判は必ず勝てる・・・」
翼「カイトさん・・・」
カイト「結局、ぼくにはこの道しかないようだ・・・」
翼「なら、私もともに・・・」
カイト「翼はサラちゃんたちを守ってほしい・・・
地上も何が起こるかわからないから・・・それに、翼には空が似合うよ。」



地下を潜る巨大エレベーター。
職を失って地下落ちした労働者に混ざって風間カイトもいる。
「おいおい、あれプロ野球選手の風間カイトじゃねえか・・・?」
「あんな有名人も地下落ちするのか・・・」
「でもまあ、1年頑張れば、ひと財産築けるしな・・・」
「オホーツクのカニ漁業船団よりはこっちだよな・・・」

黒服「それでは、新入りの労働者諸君はメインエントランスまで行進!
地下首都移転計画のプロジェクトリーダーからご挨拶がある。ありがたく聞くように!」
行進する労働者たち「1,2,1,2,・・・」

テーマパークのようなエントランスに集められる労働者たち。
プロジェクトマネージャー「歓迎するぞ、名もなき肉体労働者たちよ・・・
我が主君徳川家康公の私設テーマパーク“大江戸セクハラパラダイス”の完成は諸君たちにかかっている・・・せいぜい励むように・・・」
労働者「え?首都移転計画じゃなかったのか!?」
PM「首都も移転する・・・ついでに。
だが、まずはこの地下に殿の殿による殿のための楽園を作るのだ・・・!」
パーク案内図を配る黒服。
黒服「A班はシンデレラ江戸城、B班はビッグ鷹狩りマウンテン、C班はハイパーピンサロ大奥、D班はスマッシュスタジアム球場の建設だ!各々自分の担当を確認せよ!」
カイト「野望が本当にしょうもない・・・」
労働者「ま、まあ金がもらえるなら何でもいいか・・・」
元国会議員の労働者「いや、この工事の発注元の日光テクノロジーは国営企業だ!つまり建設費用は国の税金だ!国の税金を使って、個人的な娯楽施設を作るとは何事か!」
労働者「そうだ、そうだ!それに、ここで稼いでも結局税で持ってかれるなら、楽しいのはお前らだけじゃねーか!」
ブーイングが起こる。
PM「・・・なら帰るがいい。この仕事がやりたい人間は他にもたくさんいるんだ。
この国のどこに、ただの人間が1年で1000万円を稼げる職場がある・・・?」
労働者「くっ・・・」
PM「そして、そこのお前。
総理大臣時代にさんざん殿の店で遊んでおきながら、殿を批判するとはよい度胸だ。石田治部、お前には見せしめとしてマグマだまり冷却工事を命じる。」
タヌキのマスコットキャラが2匹現れ石田の身柄を取り押さえる。
石田三成「し・・・死んじゃうだろ!」
PM「安全第一で行うことだ。」
逃げ出す石田「おのれ・・・!この実態を国会に報告してやる・・・!」
PM「連れていけ・・・!」
ざわつく労働者たち。
PM「わかったか?この地下で反逆は許されない。提示した年俸や福利厚生は約束するが、日本は地震大国が故、労働災害も多い。せいぜい気をつけることだ・・・」
カイト「大将・・・あんたの名前は?」
黒服「無礼であるぞ!」
PM「よいよい・・・挨拶が遅れたな・・・私は本多平八郎忠勝・・・
ここでは“スラッグ獄長”と呼ばれている・・・」

『風と翼:REVELATION』脚本④

ニュース映像
キャスター「子どものなりたい職業第3位は公務員、第2位はサラリーマン、そして栄えある1位は・・・ロボット開発者です!」
街のこどもにマイクを向けるリポーター「去年まではプロ野球選手になりたい子が多かったんだけど・・・」
ちびっこ「野球選手?別になりたくないよ。ロボット同士の試合見ているだけで楽しいもん。」
リポーター「ユーチューバーは?」
ちびっこ「あれもAIが作った動画で十分面白いし」
リポーター「漫画家は?」
ちびっこ「AI絵師でいいじゃん」



リモコンでテレビのニュースを消す病室のカイト。
「時代は変わったな・・・」
花束を置く翼「怪我の具合はどうですか・・・?」
カイト「レッズのチャップマンの真似なんかするんじゃなかった・・・」
翼「カイトさん・・・」
カイト「人間の野球選手が稼げるうちにメジャーに行っておけば、翼にこんな苦労をかけることは・・・」
翼「カイトさんはかっこよかったですよ。
私、幸せです。野球選手のカイトさんが見れて。」
カイト「翼は天使のように優しいなあ・・・」
病室に白い小型冷蔵庫のようなロボットが入ってくる。
看護ロボット「検診で~す。」
体を起こそうとするカイト「あ、すいません・・・」
ロボット「あ、そのままで結構です。」
赤外線を飛ばす。
ロボット「体温、血圧、心拍数正常・・・これでもう退院できますね。」
カイト「ありがとうございます・・・」
病室から出ていこうとするロボット。
しかしぴたりと動きを止める。
ロボット「もしかして・・・プロ野球選手の風間カイトさんですよね?
あんなロボットに一度負けたからって落ち込まないでください。
きっとまた活躍できますよ!また逢いましょう、いや、また逢っちゃダメか、あはは」
病室から立ち去るロボット。
力なく笑うカイト「ロボットに励まされちゃったよ・・・」
翼「どんどん巷のロボットが気を使えるようになってきて不気味です・・・」
カイト「でもあのロボットには本当に入院中は世話になった・・・ありがたいよ・・・」

病院の外から声が聞こえる。
デモ隊「病院のロボット導入反対~!!人間の生死を機械に託すのか~~!」
カイト「なんだろう・・・??」
翼「デモみたいですね・・・」
デモ隊「日本の医師は診察も治療も手術もせずに患者から報酬を得るのか~!!
これは政府と医師会が結託した陰謀だ~!」
カイト「なんか聞き覚えのあるような声・・・」
窓の外を覗く翼「あれ・・・天井さんですよ・・・!!」
カイト「え??人権派弁護士になったんじゃ・・・」
天井サラはスーツをまとい、髪はロングになっている。
「日光テクノロジーの横暴を許すな~!ロボット技術を法的に規制しなければ人間はすべての仕事を奪われるぞ~!」
カイト「相変わらず、反政府的な運動が好きだなあ・・・荷物とってくれる?」
翼「どうぞ」
上着を着るカイト「警察が来ちゃう前に解散させよう・・・」
サイレンが鳴る。
カイト「遅かったか・・・」



自動運転の無人パトカーが来る。
パトカー「病院側から通報がありました。ここでの集会は直ちに解散してください。
威力業務妨害にあたります。」
サラ「来たわよ!みんな顔を隠して・・・!勝手に録画されるから!
そうなったらマイナンバーの照会で一発懲役よ!」
ラジエータの真ん中についている旭日章のカメラのレンズの上に盗撮禁止のシールを貼ってしまうサラ。
パトカー「公務執行妨害です!はずしなさい!」
サラ「だいたいあんたこそ機械のくせに何の権限があってパトロールしてんのよ」
デモ隊「そーだそーだ!!」
サラ「みんな、コイツのすべてのタイヤをパンクさせちゃいましょう!」
デモ隊「イエス、ビッグモーター!」
後部ドアが開いて自動小銃が出てくる。
パトカー「それ以上近づくと発砲します!」
サラ「ロボットの管理社会もここまで来たわね・・・!みんな、こんなのは脅しよ!」
デモ隊「しかしリーダー・・・!」
サラ「警察法第67条の警官の小型武器の所持にロボットは適用されないわ!」
デモ隊「パンクさせろ!」
パトカー「やめなさい~!器物損壊で3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料・・・」
パトカーのフロントガラスにスプレーで「市民は公僕に屈しない」と落書きをするサラ
「黙れナイトライダー!!無法には無法よ!!だいたい何がAIよ!あんたの恋愛予測アプリのせいで私はカイト君への告白を諦め・・・」
パトカーを破壊する幼馴染にドン引きのカイト「サラちゃん・・・」
サラ「きゃああああああああ!!」



新宿のロフトプラスワン
AIに反対する市民団体や弁護士などが当局の目を恐れて学習会を開いている。
全身黒づくめの細身のイケメン検察官がプレゼンテーションをしている。
豊臣秀頼「人類はもう引き返せないところまで来ている・・・
売国企業の日光テクノロジーが産業界に進出してから早2年・・・この短い間にも数えきれない職業が機械に取って代わられた・・・」

サラにつれられて会場の後ろの席に座るカイトと翼。

秀頼「役所や銀行など窓口業務を皮切りに、大企業の事務職は軒並みリストラ、小売店のレジやレストランの調理師、芸能界にクリエイター、挙句の果てには医師や学者などの専門職まで・・・そして今月そこにプロスポーツ選手が加わった・・・」

会場をゆっくりと歩き一息ついてから演説を続ける秀頼。

「今、我々人間に残っている仕事は何だ?
土木・建設作業員、工場労働者、ごみ収集、介護士、軍隊、荒れた学校の教員・・・どれもAIがやりたがらない肉体労働だけではないか。」
カイト「・・・。」
秀頼「私は労働のAI化は、独占禁止法に違反すると、何度も徳川家康を起訴しようとしたが、愚かな国家はあのタヌキを不起訴処分とし、やつは無責任にもAIロボットの投げ売りを続けた・・・
家康はこう言う。“買った方が悪い”と。
しかし、その言い分はドラッグのバイヤーにも通るだろうか?
人工知能はある種、アヘンよりも恐ろしい依存性を持つ。
そして、人類を人類たらしめる思考と想像力を人類から奪っていく・・・」
うんうんと頷く来場者たち。
「家康は、AIが人類の代わりに思考をすれば問題ないとうそぶくが、大間違いだ・・・
AIにそんな力はない・・・
また、批判を覚悟した上であえて言おう。
そもそも大多数の人間にそこまで大層な思考力などないのだ・・・
AIは、そんな無知蒙昧な大衆を御し易くする・・・
家康のような狡猾な統治者のメリットは、まさにそこなのだ。
思考力がある人間は得てして数が少ない。
民主主義では多数派が正義。必ず大衆を味方につけたものが勝つ。
たった数万円の便利さと引き換えに、日本国民は多くのものを失うだろう・・・
引き返すなら今だ。」
まばらな拍手が起きる。
司会「元東京地検特捜部の豊臣秀頼さんでした。」

ニコニコしながらカイトと翼を見るサラ「どうだった?すばらしいでしょう?」
カイト「う・・・うん・・・」
翼「陰鬱な気持ちになりました・・・」
サラ「司法修習時代の私の指導教官なんだ。二人にも紹介してあげるね!」
秀頼に元気よく手を振るサラ「教授~!」
微笑む秀頼「サラくんか・・・私はもう君のプロフェッサーではないぞ。
おや、お友達かな?」
サラ「高校時代の悪友です。」
秀頼「ということは・・・君こそが我が宿敵家康の風俗店を焼き討ちした勇者、風間カイト殿か・・・!」
カイト「えっ、ちが・・・はい・・・」
秀頼「貴殿の武功はかねがね・・・奥で話そう。」

『風と翼:REVELATION』脚本③

数ヵ月後・・・
浜松スタジアム
大道寺「あのオヤジ、性懲りもなくまた挑戦してきやがって・・・」
カイト「まあ、シーズンオフだし付き合ってやろうよ・・・」
球場に入ると、駿府レプリカンツのロボット選手はすべてスーパーロボットアニメのようなスタイリッシュなデザインに一新されていた。
立ち並ぶロボット選手を見てざわめく観客
「なんだあれ!?ちょっとかっこいいぞ!!」
「ママ!あのロボット欲しい!」

不安な顔になるカイト「おかしい・・・あんなかっこよさ重視のデザインじゃ無駄が多いし、前の合理的なデザインの方が絶対に野球はうまいはずだ・・・それとも、なにか罠があるのかな・・・」
キーボードを叩く安藤「確かに先輩の言うとおりです。走力、肩力、守備力、捕球・・・すべてのステータスが下がっている・・・」
バットを握る大道寺「なあに、ビビることはねえ。見てろ、カイト。
このオレの一振で、またぶっ壊してやる。
今度は床に落ちたガンプラのごとく木っ端微塵だ。」

マウンドに出て、監督の家康を指差す大道寺「オイ鉄くず屋!見た目を変えようが結果は変わらねえ!どんな剛速球も、このホームランランチャーの大道寺ヨシヲ様が打ち返してやる!」
ピッチャーロボ「ようしかかって来い・・・!」
大道寺「お・・・お前しゃべれるようになったんだな・・・余計な機能だがな。」
ストレートを投げるピッチャーロボ。
球速は150km
大道寺「甘い!!」
難なく打ち返す大道寺。打球は再びピッチャーライナー。

「危ない!」
ファーストロボが飛び出し、ピッチャーロボをかばってボールを受ける。
ボールが直撃し首が吹っ飛ぶファーストロボット。
ピッチャーロボ「ファーストロボ!なぜこんな馬鹿なことを・・・!」
ファーストロボ「ピッチャーロボ・・・オレはもうだめだ・・・しかし、必ず相模ブリーズに勝ってくれ・・・」
ピッチャーロボ「ファースト・・・!!オレのために・・・!」
観客「ひ・・・ひどい・・・」
子どもの泣き声が上がる。
大道寺「おい、この前と同じことをやったのに随分リアクションが違うぞ・・・」
安藤「さすがにひどいですよ大道寺さん・・・」
大道寺「お前まで・・・!」
ピッチャーロボ「機械には血も涙もないというが・・・本当に血も涙もないのは・・・どっちかな!!」
観客から歓声が上がる「いいぞレプリカンツ~!!」
「人間に勝って新しい時代を作ってくれ~!」
カイト「見た目が変わるだけでこんなに・・・これじゃあ今度はこっちが悪役だ。」
家康「観客の心がこっちに向いたのはいいが・・・ロボットのやり取りが妙に芝居ががってねえか・・・?」
本多「ガンダゲリギアス第35話『デトロイトは燃えているか』の名シーンを丸パクリしました・・・いや~いつ見ても泣けるわ」
徳川「まあいい・・・攻撃の要の大道寺はこれで封じた・・・!あとは敵ではないわ」
審判「ストライクバッターアウト!チェンジ!!」

マウンドに上がるカイト
翼「がんばってカイトさ~ん!」
大道寺「すまねえカイト!敵の攻撃を抑えてくれ・・・!」
カイト「この前はほとんどバットを振ってこなかったけど・・・」
打席に入るバッターロボット「世界最高の投手の方に投げていただいて光栄です。」
カイト「ど、どうも・・・」
バッターロボット「人間とロボットの違いはあれど、フェアプレーでいきましょう。」
カイト「では、お互い全力で。」
渾身の変化球を投げる。
ロボットはバットを降るが空振る。
審判「ストライク!」
バッターロボット「ふむふむ・・・さすがだ・・・」

2球目。
バッターロボットがタイミングを取り、カイトの変化球にバットを当てる。
審判「ファール!」

3球目。
強力な変化を付けるカイト。
ロボットは冷静に見極めバットを振らない。
審判「ボール!」

大道寺「なんか前と違うな。」
安藤「学習してるんです・・・」

4球目
バッターロボット「さすが、球種大図鑑と言われたことだけあります・・・しかし、次はヒットを打ちます」
カイト「言ってくれるな・・・!」
最も得意なナックルを投げるカイト。
バッターロボがジャストタイミングで打ち返す。
カイト「打たれた!!」
大道寺「早く返球しろ!」
守備が慌てて大道寺に返球するが、ランナーがやすやす追いついてしまう。
ついに一塁に走者を出すロボットチーム。
審判「セーフ!」
観客「すごい!風間の球を打ち返したぞ!!」

カイト「すまない。」
大道寺「お前は今まで打ち返されたことがなかったのか?気にすんな」

次の打者も1球め、2球めは見送るが、3球めで綺麗に打ち返す。
ロボットは走力が人間離れしており、必ず出塁してしまう。
気づくと、満塁になっている。
安藤(まずいな・・・先輩のピッチングフォームが読まれている・・・)
サインを送る安藤。
首を振るカイト。
あえてフォームを変えて縦スライダーを投げるカイト。
バッターロボを三振に打ち取る。
徳川「何だ!?ボールが消えたぞ!」
感動する本多「消える魔球だ!あんなのも投げられるんすね!!すげーな!」
服部「でも、これであの魔球も覚えた。」
本多「え?」
服部「打者たちは無線でデータを共有している。次の打者はきっと打ち返す。
社長。」
徳川「・・・」
服部「これで人間が野球をする時代は終わった。」

カキーンという大きな打撃音が聞こえる。
実況「なんと消える魔球をロボットが打ち返しました!これは大きいぞ!満塁ホームラン!!」
ショックでボンボンを落とす翼。
自分に言い聞かせるようにカイト「ま・・・まだ勝負は終わっていない・・・」

しかし、何度投げても3球目には必ず打ち返されて出塁されてしまう。
フォーク、シンカー、シュート、チェンジアップ・・・球種大図鑑の全てを繰り出しても・・・
球数が90を超え、疲れが見え始めるカイト。
点数は0点対32点
コールド負けになってしまう、えげつない点差がつく。
観客もカイトたちに憐れみの目を向け出す。
カイト「自分の野球人生でここまでの惨敗は初めてだ・・・」
安藤「先輩!もう降参しましょう・・・!」
大道寺「なんだと、てめえ、あんな機械に負けを認めろっていうのか!?」
安藤「もうぼくらの野球は完全に学習されました!絶対勝てない!」
大道寺「諦めたらそこで試合終了だってカーネルサンダースも言ってただろ!」
安藤「そんな根性論でどうにかなる話じゃないんだ・・・!
そもそもぼくはプロ野球の道にはいきたくなかったんだ・・・京都大学の理学部が受かっていたのに・・・!」
大道寺「なんだとお?」
安藤「僕にはわかっていた・・・遅かれ早かれ、プロスポーツは機械に取って代わられると・・・先輩は人間代表として頑張りました!もう諦めましょう・・・」
カイト「いや・・・ファンの声援がある限りぼくは投げ続ける・・・!」
大道寺「よく言ったカイト!心の友よ!」
安藤「ファンってどこに・・・」
翼の方に目をやり微笑むカイト。
カイト「もう変化球を捨てる・・・!渾身のストレートをお見舞いしてやる・・・!」
安藤「ストレートなんて久しく投げてないじゃないですか!」
カイト「腕に負担がかかるから封印してたんだけど・・・実は170kmは出せるんだ・・・」
大道寺「ザ・ミサイルのチャップマンを超えるじゃねえか!」
安藤「やめてください・・・先輩は大阪城の攻略で右肘を怪我してます・・・故障でもしたら選手生命が・・・!」
カイト「そんなわかりやすいフラグはこの漫画にはない・・・!機械に人間の意地を見せるんだ!!」
超速ストレートを投げるカイト「これでもくらええええええええ!!!!!!」



翌日のスポーツ新聞
「風間カイト右腕粉砕骨折。選手生命絶望、今季引退か?」
日光テクノロジーの社長室。
新聞を折りたたむ徳川「ついにプロスポーツもAIロボットに陥落か・・・」
服部「おめでとうございます社長。」
本多「プロスポーツが全部ロボコンみたくなっちゃうのも、な~んかつまんね~な」
テレビをつける服部「それはそれで面白いみたいよ。」
ロボット選手「出たなブラックアンドロイズ!今日こそお前を超える・・・!」
ロボット選手「ふははは、レッドレンジャーズ!相手に不足はないわ!かかってこい!」
すぐに順応する本多「確かに、日曜日の朝っぽくて面白いっすね」

『風と翼:REVELATION』脚本②

回想
東京ドーム
リポーター「ヒーローインタビューです!
風間選手、ワールドベースボールクラシック優勝おめでとうございます!」
風間カイト「ごっちゃんです。ぼくが得意なナックルが決まり手になったので、イメージ通りの野球がとれたと思います。」
リポーター「これで世界一の投手となったわけですが、メジャーリーグに移籍などはお考えでしょうか?」
カイト「いえ、地元の相模ブリーズで古い仲間たちと一緒に野球を楽しんでいきたいと思います。」

ユニフォームを着替えて球場内の連絡通路を歩くカイト。
花束を持って駆け寄ってくるチアガール姿の翼
「カイトさん!おめでとうございます!」
カイト「翼さん・・・」
翼「もう付き合って半年なんですから、翼って呼んでくださいよ~」
花束を受け取るカイト「う~ん・・・翼、ありがとう。」
いい感じになる二人。

アロハシャツを着た二人組が現れる。
徳川家康&本多正信「キ~ス!キ~ス!!」
二人に気づくカイト「なんなんですか!あなたたちは!」
徳川「これはしたり、風間カイト選手ですね?」
カイト「サインなら・・・」
徳川「いえいえ、わたくし・・・ええと名刺どこだったっけ・・・」
徳川に名刺を渡す本多
「こういうものです。」
名刺を読むカイト「AIで暮らしを便利にする会社、日光テクノロジー代表取締役、徳川家康・・・」
「我社は生成型AIを組み込んだロボット開発をしておりましてね」
「なんかの営業ですか?」
「挑戦状だよ」
「え・・・?」



横浜スタジアム
スコアボードには「人間代表相模ブリーズ VS AI代表駿河レプリカンツ」と書かれている。
実況「全世界1億人のプロ野球ファンの皆様こんばんは!今夜世紀の一戦が繰り広げられます!なんと今をときめく人工知能のパイオニア、日光テクノロジーがロボット球団“駿府レプリカンツ”を結成、今シーズン日本シリーズを制した相模ブリーズに挑戦状を叩きつけたのです!
ついに、プロスポーツの世界で人間VS機械の雌雄を決する戦いの火蓋が切って落とされます・・・!!」

駿府レプリカンツ陣営
本多「観客席は満員ですよ。本当に勝てるんですか??」
徳川「知らん。だが、かつてわしのノーパン風俗の野望を打ち砕いたアイツには、一矢報いたい。」
本多「だっせえ野望だなあ・・・」
徳川「お前野球部だったよな?」
本多「う、うす。つーか、社長もやってなかったっけ?」
徳川「3年間ず~っと補欠だったよ。」
本多「俺はレギュラーでしたよ。まあ地区予選敗退レベルだけど。」
メガネを指で抑える徳川「世間にチヤホヤされて、いい気になっている陽キャどもを、このテクノロジーで全て引きずり下ろしてやる。才能の共産化だ・・・!」

相模ブリーズ陣営
グローブの状態を見ながらカイト「相手は金属製のロボットだから、接触する際は指とか挟まれないように気をつけてね。」
指を鳴らす大道寺「最近勝ち続けて退屈してたところだ。機械が人間にかなわねえことを見せつけてやるよ」
カイト「安藤くんはどう思う?」
ラップトップを開く安藤「チェスや将棋はともかく・・・ロボットに野球をやらせるのは現在の技術力では時期尚早だと思います。咄嗟に複雑な判断を行うのは、コンピュータは苦手なので・・・ただ・・・」
話を遮る大道寺「じゃあ、敵じゃねえな」
チアガールの翼「あの人たちどっかで見たことがあるんだよなあ・・・」
カイト「応援しててくれ翼。」
翼「ご武運を。」

駿府レプリカンツ陣営
スクーターに乗って現れる服部半蔵「へ~い!」
スクーターをよける本多「あぶねえ!!」
服部「す・ご・い・で・す・ね~!」
徳川「おおっ先生・・・!」
スクーターを降りる服部「冗談じゃないよ、家でアメ車改造してたら、いきなり野球ロボットを11台作れとか言うんだもん。」
徳川「完成しましたか・・・!」
球場の搬出口に手を振る服部「続いては、こちら!」
大型トレーラーが入ってくる。
荷台から、ピッチングマシーンのようなロボットが降ろされる。
服部「あれこそ、このわたしがガレージの余りもので3時間でこしらえた大リーグボールくん!」
本多「すごいやっつけ仕事じゃないっすか!」
服部「だってお前、フェラーリのスカリエッティをオート三輪に改造するほうが楽しいだろ!」
本多「なんか勿体ねえな!」
パッと見ガラクタのAIイレブンを眺める家康。
徳川「見た目はアレですが・・・プロ野球選手には勝てそうですか?」
服部「一応、ストレートで時速320kmは投げられるようにしたよ。まず見切れないでしょ」
本多「佐々木朗希の二倍じゃねえか!」
服部「メインフレーム以外のパーツは全て外して軽量化したから、ランナーロボも時速51kmで疾走が可能・・・」
本多「盗塁し放題じゃねえか!社長、これ絶対勝てますよ!」
徳川「見てろ、風間カイト・・・ここがお前の墓場となろうぞ・・・!」

審判「プレイボール!!」
ロボットのバッターを見ながらピッチャーズマウンドに入るカイト
「・・・どういうバッティングをするか予想がつかないな・・・」
とりあえず変化球を投げる。
ロボットはバットをふらない。
安藤のキャッチャーミットにボールがバシンと収まる。
「ストライク!」
もう一度変化球を投げる。
ロボットは微動だにしない。
「ストライク・ツー!」
カイト「ちょっと誘ってみるか。」
今度は甘めのカーブを投げる。
やはりバットを振らない。
「ストライク・スリー!!」
バッターが交代になる。
ナンバーだけが違うだけで全く同じバッターロボットがバッターボックスに入ってくる。
大道寺「おいおい、動かねえぞ!壊れてるんじゃねえのか!!」

駿府レプリカンツ陣営
徳川「先生・・・」
服部「油さしたんだけどなあ」

次のバッターも見逃し三振。
その次もツーストライクまで追い込まれる。

ざわつく観客席。
不安そうにチアガールの翼が観客席を振り向く。

大道寺「おいカイト・・・もはやこれじゃ野球になってねえぞ。こっちも金をとってるんだ、ロボットに花を持たせてやれ。」
カイト「打たせてやれってこと?」
大道寺「チェンジアップを投げろ」
カイト「う~ん・・・わかった」
球速の遅いチェンジアップを投げるカイト。
ロボットバッターはついにバットを振る。
カイト「動いた・・・!」
審判「ストライク!バッターアウト!!」

飽きている観客「何だ、この試合・・・つまんね~ぞ!チケット代返せ~!」
大道寺が徳川にクレームを言う。
「おいコラ!てめえは高い金払って、球場にガラクタを並べたのか!!
いい加減にしやがれ!」
徳川「なんだこの野郎、チンピラ!!まだ試合は始まったばかりじゃねえか!!」
アナウンス「1回裏。相模ブリーズの攻撃です!」
カイト「守備はすごいかもしれない・・・油断しないように」
大道寺「2本の脚で立ってるだけでフラフラしてるがな」
ピッチングマシーンのような「大リーグボールくん」がマウンドに上がる。
バットを持つカイトに囁く大道寺「いいか、バッティングセンターと変わらねえ。いつもどおりやれ」
カイト「わかった」

キリキリと音を立ててボールを乗せた腕が回りだす。
ビュンと音がなった瞬間、ボールは消えキャッチャーミットに収まる。
カイト「うわ、怖!」
時速320kmの表示。
審判「ストライク!」
カイト「ボールが見えない・・・!」
安藤「あの球速は危険ですよ!!」
徳川「ぐわっはっは!どうだ!」
安藤「先輩!見送ってください!ピッチャーが故障したら大変だ」
カイト「いや、面白い・・・!」
大道寺「打つつもりだぜ?」
翼「ファイト~!」
観客「面白くなってきたぞ!」

2球目。
バットがボールをかすめるが振り遅れる。
審判「ストライク・ツー!」
カイト「とんでもない速さだ・・・ようし・・・」
徳川「なんだ??」
バントの構えをするカイト
徳川「先頭打者がバントだと?」
服部「なるほど、かしこい。この球速ならバットに当たっただけで、ボールは外野行きだ」
本多「当てられるんすかね?」

3球目。
時速320kmの打球がバットに当たり、空高く上がっていく。
カイト「いってえ!!」
慌ててボールを追いかける守備ロボット。
ホームランコースだが、ぎりぎりファールになってしまう。
カイト「あ~惜しかった」
カイトに肩を置く大道寺「なあに、オレたちに任せろ。」
徳川「恐ろしいやつだ・・・」

2番キャッチャー安藤が打席に立つ。
カイト「とりあえずバットに当てれば飛んでくよ!」
安藤「怖いなあ・・・」
球速が速すぎて大きく振り遅れる安藤「無理です!」
大道寺「きさまそれでもプロか!」
安藤「ええい・・・こうなったらタイミングゲーだ!」
適当にバットを振り回す安藤。
ボールがヒットし、ファーストの方へ勢いよく飛んでいく。
カイト「フェア!」
大道寺「でかした!走れ!」
慌てて走る安藤「あたた・・・バットがへし折れた・・・!」
捕球にもたつく守備ロボット。
ボンボンを降る翼「安藤さんかっこいい!」
徳川「あのブタ野郎!」
ボールをなんとか取ると、ものすごい速さでファーストベースに疾走する守備ロボット。あっという間に安藤を追い抜いてしまう。
審判「アウト!」
カイト「速すぎる!!」
大道寺「ファミスタのピノじゃねーか!!卑怯だぞ、メガネたぬき!!」
センスを広げてパタパタする徳川
「どうだ!ドーピングしたベンジョンソンでも追いつけまい!」
カイト「走力が異常すぎる・・・出塁するには外野ヒットかホームランしかない・・・」
バットを持つ大道寺「オレがなんて呼ばれているか知ってるか?」
カイト「・・・頼んだ」

3番ファースト大道寺ヨシヲ。
バットを大リーグボールくんに向ける。
「花は桜木、男は石橋!お前の速いだけのストレートはもう見切った!場外までかっ飛ばす!」
敬遠してくる大リーグボールくん。
審判「ボールスリー!」
大道寺「ぬあああああああ!卑怯だぞ!!!」
徳川「勝てばいいんじゃ!」
安藤「大道寺先輩我慢して!」
カイト「とにかく出塁しよう!」
4球目もストライクゾーンを外してくるAIピッチャー。
体勢を反らせてムキになってボールを打ち返す大道寺。
「くらいやがれええええええええ!!!!!!」
大道寺が力任せに打ち返したボールは大リーグボールくんにブチあたり、AIピッチャーは爆発してマウンドに倒れる。

ベンチから立ち上がる家康「おい!あれは危険球だろ!!」
慌てて煙が上がるピッチャーロボットに方にかけていく服部。
大道寺「俺の打ち返したボールが取れない、そのポンコツが悪い!」
徳川「てめえ、このヤンキー!このロボットに何億円かけたと・・・審判~~!」
審判「ぎりぎりバッターボックスから出ていないので、ルール上は問題ありません」
徳川「でも、あいつ、絶対にわざとうちのロボットを破壊しにきたぞ!」
本多「社長、ルール上は問題ないっす」
徳川「お前まで・・・!」
ピッチャーロボを調べる服部
徳川「どうですか?」
服部「金属フレームが完全に曲がっちゃったわ。すげえパワープレーヤーだなあ」
審判「試合を続行しますか?」
服部「もう大リーグボールくんは投げられない。人間軍の勝利だ」
徳川「覚えていやがれ!」

実況「人間軍の勝利です!」
解説「いや~当然でしょう。機械ができるほど野球はそんなに甘くありません。
せいぜいチャットで気の利いた返事を返すくらいです。」

トボトボ球場をあとにする駿府レプリカンツ
徳川「AIの技術は人間の才能を凌ぐんじゃないのか?なぜ勝てない!!?」
服部「大丈夫、データが集まれば、じきに必ず勝てる。
なにしろ、機械は疲れないし、病気やケガもないから。
壊れたら同じものを取り替えるだけ。」
徳川「そもそも、我が駿府レプリカンツは観客に人気がない!観客席を見ていたか、誰も応援してなかったではないか。まるで我々は悪役だ。
これでは仮に勝ったとしてもブーイングですぞ」
腕を組む服部「う~ん・・・」
本多「見た目なんじゃないですか?」
徳川「見た目?」
本多「だって、これ、すっげえダセエもん。ピッチングマシーンが人間に勝ったって別に感動しねえし・・・バッターロボだって、脚と腕しかないじゃん。不気味でこええし」
徳川「おま・・・服部先生がいる前でよく言えるね・・・」
服部「まあ、うちにあったガラクタだからね。」
徳川「先生それをいっちゃあ・・・!」
服部「なるほど、見た目か・・・」
本多「先生、オレ、息子いるんすけど、その息子が超鉄腕ガンダゲリギアスってアニメにはまってて、そのオモチャがすっげえかっこいいんすよ。それっぽくデザインを変更できないですかね?」
服部「考えてみよう。そのアニメのオモチャを今度送ってくれない?」
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