チェーンのファミリーレストラン
ウエイトレス「きゃあああ食い逃げよ・・・!!待ちなさい!」
サーロインステーキをかじりながら、店内を逃走する若かりし頃のブーちゃん。
出口に集まってくる店員たち。
伝票を突き出すウエイトレス「もう逃げられないわ・・・お会計をしなさい・・・!」
すると、顔を腕で守って、窓ガラスを突き破って店外に逃走を図るブーちゃん。
ウエイトレス「逃げたわ・・・!」
厨房の裏口からコックが現れ、食い逃げ犯につかみかかろうとする。
コック「このガキ・・・この店で最も高いメニューであるサーロインステーキ1kgスペシャルディナーセットを注文しておいて、食い逃げとはいい度胸だ・・・!」
飛び掛かる屈強な大人のコックを、素早い身のこなしで体をさばき、かわすブーちゃん。
ぼそぼそと何かをつぶやく。
コック「なんだと・・・!こんなひどい調理をされちゃ、死んでいった黒毛和牛が浮かばれないだと・・・!?もう容赦しねえ!」
フライパンで殴り掛かるコック。
そのフライパンを中国拳法の発勁で止めてしまうブーちゃん。
銅鑼のような「ぐわ~ん」という音が鳴る。
コック「なんだと・・・!」
フライパンをまともについたので、手を振って痛がるブーちゃん。
コック「なんだ、このガキは・・・!」
ファミレスのメニューを開いて、両手で持ち、扇のように振り回し、コックに打撃を与える。
コック「ぐああああああ!!」
ウエイトレス「あれは・・・春秋戦国時代の伝説の中国拳法・・・索子(ソーズ)孔雀拳・・・!」
・
小さな町中華「桃源楼」
厨房で中華鍋を振っている店主「馬鹿者!」
びくっとするブーちゃん。
店主「わしが頼んだのは出前だ・・・!
ファミリーレストランで食い逃げとは情けない・・・先祖代々の家名を汚すつもりか!
なに!?あんな不味い店に客を取られて、なにが家名だ、だと・・・!?
一人娘だから甘やかしたが・・・もう許さん!わしの四川パンダ拳でお仕置きをしてやる!
かかってこい智子!!」
女将さん「あんた、やめときなよ!お客のカニチャーハンがさめるよ!」
娘に締め上げられる店主「あたたたたた・・・ギブアップ・・・!」
女将さん「智子!放しておやり!
父ちゃんがあんたに拳法を伝承したのは、食い逃げするためじゃないよ!」
店主をはなすブーちゃん。
女将さんが常連客にカニチャーハンを運ぶ「お待たせしました老師・・・」
常連客の小柄な老人「本場中国でもこれほどの中華料理を味わえぬというのに・・・
ファミリーレストランのチェーンに人気を取られるとは・・・世知辛い世の中になったものですな・・・」
店主「長年通っていただいているのに、すいません・・・私の力不足で・・・
あちらさんは資本が巨額で、テレビCMもすごくて・・・
実は・・・この店も地上げの話がありまして・・・
いい機会なんで・・・店をたたんで中国に帰ろうと思ってるんです。」
老師「なんと・・・さみしいですな・・・」
ショックを受けるブーちゃん「!」
店主「・・・なに?親友の乙奈さんと別れるのは許さないだと?
あんな不味い店に負けて悔しくないのか、ばか、はげ、デブ、サモハン・・・
キサマ・・・!親に向かってなんという口のきき方だ・・・!
かかってこい・・・!」
やっぱり娘に締め上げられる店主「あたたたたた・・・ギブアップ・・・!」
老師「ほっほっほ・・・元気のいい娘さんじゃの・・・」
店主「へ・・・へえ・・・じゃじゃ馬娘で手に負えねえんでさあ・・・親として情けない限りで・・・」
老師「お主・・・その怒りを食い逃げではなく、料理にぶつけてみてはどうじゃ・・・?」
ブーちゃん「?」
老師「お主が言う通り、あのファミリーレストランのステーキに2500円の価値なぞない・・・
焼き加減は雑だし、ソースも工夫がない・・・
なぜ、スーパーで半額以下で買える牛肉のステーキを、客はわざわざ外食で食べたいのか・・・?
それは、プロの調理にそれだけの金を払う価値があると考えているからじゃ・・・
お前さんは中国一の料理人の娘じゃ・・・舌は確かであろう・・・
ひとの料理に文句をつけるのではなく・・・文句のない料理をおのれ自身が生み出すじゃ・・・!」
店主「老師・・・しかし、うちの娘は料理の修行などなにも・・・」
老師「店主よ。この娘さん、わしに預けてはくれぬか?」
店主「老師が・・・?」
ブーちゃんの方を向いて老師「わしが、お前さんを一流の料理人に育てて見せようぞ・・・
そして、フランチャイズからこの店を守るのじゃ・・・!」
強く頷くブーちゃん「・・・!」
店主「智子・・・お前本気なのか・・・?料理の修行は、中国武術の何倍も辛く厳しいんだぞ・・・!」
女将さん「あんた・・・止めても無駄だよ。
見てみなよ、智子の目を・・・父ちゃんの店を守りたいって、覚悟を決めた目さ・・・」
店主「智子・・・」
木の棒に風呂敷をひっかけて、老子と共に家を出ていくブーちゃん。
・
人里離れた竹林を歩く老子とブーちゃん。
おなかが鳴るブーちゃん。
老師「・・・腹が減ったか・・・そろそろ食事にするかの。」
よだれを垂らして頷くブーちゃん。
老師「ほっほっほ・・・わしは食えるものなど何も持っとらんぞい・・・
この竹林で現地調達し、調理するのじゃ。
今日のランチの満足度はお主にかかっておるぞ。」
ブーちゃん「・・・!!」
老師「ちなみにこの竹林は、日本なのになぜか人食い虎が生息しているので、山菜狩りの際には用心することじゃ・・・」
散策してキノコを見つけるが、毒を警戒して諦めるブーちゃん。
老師「ほう・・・なかなかやるのう・・・きのこは素人が手を出すと、命を失いかねんほど奥が深い食材・・・懸命な判断じゃ・・・」
しばらくして、筍を見つけて掘り返す。
川で筍を洗うと、生でかじるブーちゃん。
老師「ほっほっほ・・・自分が知っている野菜を食べるのはいいが・・・お前さんは、その野菜のことをどれだけ知っておるのかの・・・?」
ブーちゃん「・・・!」
しばらくすると、腹痛を訴えるブーちゃん。
苦しむブーちゃんを見つめる老師
(生の筍には、シアン系の毒素が含まれておるのじゃ・・・
そのため、筍は必ずゆでてアクを抜く・・・
文明のない大自然に出て初めてわかったであろう・・・
食のありがたみ・・・調理の英知を・・・
この竹林で生き延びよ・・・さすれば・・・お前さんは多くの知恵を学ぶじゃろう・・・)
不法投棄してあった粗大ゴミから鍋を見つけ、川の水をくむ。
水を沸かすため、火を起こそうとするが、なかなか火種ができない。
空腹に耐え兼ねたブーちゃんがとうとう錯乱状態になる。
老師「飢えても己を見失ってはならぬ・・・」
そう言うと、懐からカロリーメイトを出してかじる。
それに気づいたブーちゃんが、老師からカロリーメイトを奪おうと飛びかかってくる。
その攻撃をかわす老師。
空腹のいらいらで、次々に打撃を繰り出してくるブーちゃん。
しかし、カロリーメイトをかじりながらその技をすべてかわす老師。
老師「ほっほっほ・・・拳に力が入ってないのう・・・
悪いことは言わぬ。わしを打つ体力があるうちに、調理を続けたほうがよいぞ・・・」
怒髪天のブーちゃんが渾身の発勁を繰り出すが、老師にかわされ、後ろの巨石を殴ってしまう。
バラバラに砕ける巨石。
老師「・・・なんというパワーじゃ・・・!」
悶絶するブーちゃん。
老師「そりゃ痛いじゃろう・・・お主が砕いたのは太古のマリンスノーが堆積して出来たチャートじゃ・・・モース硬度は7はくだらぬ・・・つまり、鋼も砕くということじゃ・・・」
するとブーちゃんが粗大ゴミの中から金属片を探して、それをチャートの破片で叩きつける。
老師「ふむ・・・正解じゃ・・・」
無事、火打石で火をおこし、鍋で筍を煮るブーちゃん。
老師「お前さんの初めての調理・・・見届けさせてもらおう・・・」
無心で、鍋の中の筍を見つめるブーちゃん。ヨダレがとまらない。
すると、茂みが揺れて、人食い虎が飛び出してくる。
老師「なんと・・・冗談じゃったが、本当におったか・・・!」
虎は、ブーちゃんが楽しみにしていたたけのこの鍋をひっくり返してしまう。
お湯が焚き火に掛かり、消えてしまう火。
二人に牙をむくトラ。
ブーちゃん「・・・・・・!!」
老師「ここはわしが囮になる・・・!逃げるのじゃ・・・!」
虎への恐怖よりも、料理を台無しにされたことへの怒りが勝るブーちゃん。
猛獣のふるう爪をかわし、懐に入り、百烈拳をお見舞いするブーちゃん。
ボコボコにされ「にゃー」と情けない声を上げて逃げ出そうとするトラ。
しかし、ブーちゃんはトラのしっぽを掴んで離さない。
そのまま、ジャイアントスイングをしてトラをチャートの壁に叩きつける。
動かなくなるトラ。
老師「・・・なんじゃと?トラは食えるのかじゃと・・・!?」
トラを竹で串刺しにして、丸焼きにしてしまうブーちゃん。
老師「これがお前さんの最初の料理とは・・・
中国ではその昔、虎肉は不老長寿の薬として食されておったが・・・
現代ではおそらくワシントン条約的にアウトじゃ・・・」
トラの丸焼きを泣きながら食べるブーちゃん。
老師「そうか・・・うまいか・・・それなら、死んだトラも本望じゃろう・・・」
・
ファミリーレストラン「ロイヤルコスト」本社
脚を組んで、キセルを吸う女社長「食い逃げ犯に返り討ちにされたですって・・・?」
コックとウエイトレスたち「・・・・・・。」
社長「こういう時の為に、あんたたちにはユーキャンの通信講座で拳法を取得させたのよ?」
コック「あのデブのガキ・・・索子孔雀拳の使い手で・・・」
ウエイトレス「少林寺拳法3級では歯が立たないです・・・」
社長「言い訳はたくさん。わたしはたった一度の失敗も許さない・・・先生。」
手を叩く社長。
チャイナ服を着たオカマの殺し屋「およびかしら?」
社長「役立たずを始末なさい。」
身構えるコックとウエイトレス。
コックはフライパンを握り、ウエイトレス3人はそれぞれ鉈、鎖鎌、棒を構える。
殺し屋が、指をチョキにして鉈を振るうウエイトレスの目をつぶす。
「きゃああああ!」
殺し屋「上海拳・・・!」
ウエイトレスの鎖鎌をよけると、彼女のエプロンをめくりあげて、顔を覆って縛り上げて、窒息させてしまう。
殺し屋「広東拳・・・!」
棒を振り回す3人目のウエイトレス。
バックステップでかわし、口から火を噴いてウエイトレスを焼いてしまう。
殺し屋「四川拳!!」
コック「ちくしょう!死んでたまるか!!」
殺し屋「あら、いい男じゃな~い」
フライパンをよけて、懐に入りコックにディープキスをする殺し屋。
一気に息を吹き込むと、コックの体が丸く膨らんでしまう。
コック「ぐえええええ!」
破裂するコック。
殺し屋「北京拳!!!」
あっさり四人を倒してしまう殺し屋。
社長「さすがは満漢全席の韓信・・・見事ね・・・」
殺し屋「で?孔雀拳のお嬢ちゃんは何者なの?」
書類を投げる社長「地上げを拒んでいる小汚い町中華の娘よ・・・」
殺し屋「うふふ・・・中華はわたしの十八番よ・・・いいわ。更地にしてあげる。」
・
竹林を下山する2人。
老師「見事この竹林で3か月生き延びた・・・お主に教えることはもうない・・・
命を譲り受けるが、食の真髄・・・忘れるでないぞ・・・」
頷くブーちゃん。
老師「10年後・・・お主が自分の店を構えた時・・・再び会おうぞ。」
タクシーを止めて立ち去る老師。
老師「運転手さん、銀座まで。」
見送るブーちゃん。
その時、ブーちゃんのもとに中華料理屋のバイトの女の子が走ってくる。
バイト「お嬢様・・・!早く店にお戻りください・・・!旦那様と奥様が・・・!!」
40代突入
2024-03-05 22:08:31 (2 years ago)
-
カテゴリタグ:
- 雑記
10年もあった30代があっけなく終了してしまった・・・
もう学生気分を改めないといけないのか・・・ということで、私もいい年なので住宅ローンを考えてみたいと思います。私に金融機関の信用があるのかは、かなり怪しいが・・・
でも、まあ、40代はもう大人なんだから、自分を棚に上げたり、居直ることが許される年齢だと思うので、今後もふてぶてしく生きていきたいと思います。
最近、ユーチューブで個人塾を経営している「マスクド先生」のチャンネルが好きで(特に2号が好き)、よく見てるんですけど、今回店舗付きの住宅を購入する可能性があるので、とうとう自分の学習塾が立ち上げられるのかもしれないのだ・・・!家から小学校や中学校も近いしな。つーか、かつて働いていた中学校が近いしな。
ちなみに、最近カラコロッタが「まぼろしの桃源郷」に変わったが、はっきり言ってバージョンダウン。まごうことなきクソゲー。
10球続くのが稀になったし、ワンダーチャンス中に終了してもSPポケットで3球復活する仕様になった反面、特殊マスがかなり間引かれた。勝てん・・・!
とはいえ、フローズンアイランドよりも、ジャックポットが出やすくなった気もするので、いよいよ通常ゲームは空気となったらしい。こっちが心配するくらいの爆発力があったコロッタタワーも予想通り下方修正されたしな。



待望のアメジストジャックポットチャンス。マーブルフィーバーのジャックポットチャンスのように3ラウンド制になったが、最終的にサファイアジャックポットチャンスになるので、これってサファイアをダラダラ長くやってんじゃねーかって思ってはいけない。
ちなみに、初見時に深夜まで粘って、1万枚超の高額アメジストジャックポットチャンスまで行けたのだが、そこで店が閉店し抽選の様子が見れなかったのは内緒だ(ハズレメダルを後日アテンダントしてもらいました)。


バースデープレゼントということで1万枚の純増・・・!去年の今頃は35万枚の預けメダルがまだあったそうだが、これで去年の水準までに戻した。つーか、10ベットでよく戻せたな。戻せるんだな。

誕生日にメダルが増えたのは嬉しいが、こんな悲報も・・・全国的にレアなオンラインのフォーチュントリニティ3を5に魔改造するのは失策だと思うぞ、伊勢崎レジャーランドよ・・・
ユーチューブでちょこちょこFT5の動画を見たが、全く面白くなさそう。音楽も演出もクソ。マンネリ。FT4から、世界観が迷走し、ジャックポットの払い出しがチョロチョロになり、本当に私の中でこのシリーズは終焉した。むしろ、3から2に遡って欲しかったくらいよ。
もう学生気分を改めないといけないのか・・・ということで、私もいい年なので住宅ローンを考えてみたいと思います。私に金融機関の信用があるのかは、かなり怪しいが・・・
でも、まあ、40代はもう大人なんだから、自分を棚に上げたり、居直ることが許される年齢だと思うので、今後もふてぶてしく生きていきたいと思います。
最近、ユーチューブで個人塾を経営している「マスクド先生」のチャンネルが好きで(特に2号が好き)、よく見てるんですけど、今回店舗付きの住宅を購入する可能性があるので、とうとう自分の学習塾が立ち上げられるのかもしれないのだ・・・!家から小学校や中学校も近いしな。つーか、かつて働いていた中学校が近いしな。
ちなみに、最近カラコロッタが「まぼろしの桃源郷」に変わったが、はっきり言ってバージョンダウン。まごうことなきクソゲー。
10球続くのが稀になったし、ワンダーチャンス中に終了してもSPポケットで3球復活する仕様になった反面、特殊マスがかなり間引かれた。勝てん・・・!
とはいえ、フローズンアイランドよりも、ジャックポットが出やすくなった気もするので、いよいよ通常ゲームは空気となったらしい。こっちが心配するくらいの爆発力があったコロッタタワーも予想通り下方修正されたしな。



待望のアメジストジャックポットチャンス。マーブルフィーバーのジャックポットチャンスのように3ラウンド制になったが、最終的にサファイアジャックポットチャンスになるので、これってサファイアをダラダラ長くやってんじゃねーかって思ってはいけない。
ちなみに、初見時に深夜まで粘って、1万枚超の高額アメジストジャックポットチャンスまで行けたのだが、そこで店が閉店し抽選の様子が見れなかったのは内緒だ(ハズレメダルを後日アテンダントしてもらいました)。


バースデープレゼントということで1万枚の純増・・・!去年の今頃は35万枚の預けメダルがまだあったそうだが、これで去年の水準までに戻した。つーか、10ベットでよく戻せたな。戻せるんだな。

誕生日にメダルが増えたのは嬉しいが、こんな悲報も・・・全国的にレアなオンラインのフォーチュントリニティ3を5に魔改造するのは失策だと思うぞ、伊勢崎レジャーランドよ・・・
ユーチューブでちょこちょこFT5の動画を見たが、全く面白くなさそう。音楽も演出もクソ。マンネリ。FT4から、世界観が迷走し、ジャックポットの払い出しがチョロチョロになり、本当に私の中でこのシリーズは終焉した。むしろ、3から2に遡って欲しかったくらいよ。
『青春アタック』脚本㉞已己巳己
2024-03-01 21:56:45 (2 years ago)
白亜高校の体育館ではいつにもまして練習に熱が入る。
部員の先頭に立ってジョギングする花原「ここ~で勝ったら12億!はい!」
部員たち「12億!12億!!」
華白崎(・・・なんつー品のない掛け声なんだ・・・)
体育館に入ってくる病田「すごい気合・・・」
タバコを吸うさくら「・・・なんだかんだで、全国ベスト3だからね・・・
部員の士気は高いよ。
華白崎さんの徹底した基礎練習・・・
マッスルくんの筋力トレーニング・・・
小早川さんの走力トレーニングに・・・
ブーちゃんの食事管理・・・
部員の健康チェックは私がやってるし。
ここにきてインフルエンザで出場停止はしょっぱいからねえ・・・」
病田「・・・ありがとう。監督を引き受けてくれて。
部員の子達・・・あんなに嬉しそう・・・」
さくら「礼ならあの子達に言いなよ。私は勝てる可能性がなければ絶対引き受けない。」
病田「そうだね・・・次はどんな作戦?」
さくら「・・・作戦は・・・もうない。」
病田「・・・え?」
さくら「この作戦は、もともと3戦で優勝することを前提で立てていた。
3戦くらいなら、運動経験のないあの子たちも体力の限界が来る前に勝ち越せると思ったから。
しかし・・・今回の引き分け試合で、その目はなくなった。
裏工作の資金も枯渇。
やってくれたわ・・・クローン少女・・・」
病田「それなら、別の作戦を立てれば・・・」
さくら「ねえ先生・・・最高の教師ってどんな先生だか知ってる?」
病田「・・・え?」
さくら「教職の授業で習わなかった?」
病田「・・・なんだっけ・・・」
さくら「生徒の心に火を付ける教師らしいよ。」
部員たちのジョギングを眺める2人の教師。
さくら「あの子らには、もう私の小細工は必要ないのかもしれない・・・」
ジョギングする花原「借金帳消し12億!はい!!」
病田「あ、そうそう・・・健康チェックと言ったら・・・
高体連の方から部員に健康診断をさせてほしいという依頼が来ています・・・」
笑うさくら「さすがの破門戸も感染症が怖いか。」
病田「抗原検査と、血中の抗体検査をさせてほしいと・・・」
さくら「血液サンプルを送ればいいんでしょ?後でやっとくよ。
私、人に尖ったものを突き刺すの大好きだから・・・」
病田「お願いします。」
・
詩留々高専
保健室で寝ているバレー部員たち。
それを扉から見つめるりかぜ「・・・・・・。」
廊下のベンチに座っているスバル「・・・動けそうな部員は・・・?相馬原は?中之条は・・・?」
黙って首を振るりかぜ。
壁を殴るスバル「くそ・・・!みんな故障かよ・・・!」
りかぜ「あの鮎原姉妹との一戦で、我々は肉体の限界を超えてしまった・・・」
スバル「・・・ちくしょー!せっかく海野にリベンジができるチャンスが来たってのによ・・・!」
スバルの隣に来るりかぜ「・・・ボス・・・」
スバル「うちの心が読めるなら、そっとしておいてくれねえか・・・」
春高バレーバトルロイヤル大会のルールブックをめくるりかぜ「・・・策ならあります。」
スバル「今から部員を勧誘するのか?」
頷くりかぜ
スバル「無理だ・・・!試合は明日だぞ?」
りかぜ「約束したでしょう・・・あなたを一番高い表彰台に立たせると。」
スバル「・・・なんで、うちにそこまでしてくれるんだ・・・?」
りかぜ「・・・あなただけは・・・私を差別しなかった。」
立ち上がって歩いていくりかぜ。
・
高体連本部ビル
ビル内のセキュリティを管理するコントロールルーム。
防犯モニターを見つめる狩野「・・・・・・。」
りかぜがラップトップを操作して、高体連のセキュリティシステムをハッキングしている。
腕時計を見るりかぜ「5、4、3、2、1、・・・」
モニターが反応する。
狩野「・・・見て。」
黒服の警備員「なにか・・・?」
狩野「ドアのセキュリティシステムが停止してしまった。」
警備員「ああ・・・さっき業者が定期メンテナンスをすると言っていました。」
狩野「・・・そう・・・。」
ビル内に侵入して、ロックが外れたドアをこじ開け、冷蔵庫に入っていくりかぜ。
タンクの蓋を引き上げると、中には白亜高校の部員の血液サンプルが冷凍保存されて入っている。
シェービングクリームの容器の蓋を開けて、血液サンプルを一つずつ入れていくりかぜ。
りかぜ「・・・高木智子・・・乙奈姫櫨美・・・華白崎桐子・・・」
別のタンクに移る。
りかぜ「・・・生原血織・・・花原恵菜・・・そして・・・
海野美帆子・・・」
・
華蔵寺公園
野球場はナイターになっている。
実況「芝生の上を転がるボール
ただ目で追うよ Sunny Day Sunday!
全国1億5千万人のバレーボールファンの皆さん、こんばんは!
春の高校バレー、バトルロイヤル大会もいよいよ準決勝を迎えました!
あの絶対王者、聖ペンシルヴァニア大附属と五分の激戦を繰り広げた、群馬県の詩留々高専に挑むのは、千葉県の新星、初出場の白亜高校・・・!
この試合の勝者が賞金総額12億円をかけた鮎原姉妹との挑戦権を得ます・・・!」
球場の真ん中にあるバレーボールコートに整列する白亜高校バレー部と、詩留々高専のスバルとりかぜ。
りかぜ「前回の反省を踏まえて、気温の下がる夜に試合を設定しました・・・
これなら空気の密度が高いので神風は吹きません・・・」
スバル「なるほど・・・しかし、大丈夫か?目の下のクマがすごいけど・・・」
りかぜ「だいじょうぶよ・・・」
スバル「この試合は7イニング制で行くぜ?今回は延長ありだ。
この試合に引き分けはねえ。」
海野「OKよ。楽しみましょう。」
花原「ちょっと、あんたたち2人だけ?ほかのメンバーは?」
ちおり「あと4人連れてこないと、不戦敗になるよ!」
乙奈「ありましたわね・・・そういうことも・・・」
りかぜ「・・・私は体が弱いので戦えませんが・・・あなたたちの相手は造ったわ。」
海野「・・・造った・・・?」
球場に大型トレーラーが入ってくる。
花原「・・・もしかして・・・あの体育館にあったバレーボールマシン?」
ちおり「でもレシーブはどうやんの?」
花原「・・・うん・・・」
りかぜ「いでよ・・・これが私の最高傑作・・・」
荷台の扉がゆっくりと開いていく。
すると、中には海野そっくりのアンドロイドが5人立っている。
りかぜ「バレーボーロイド、UMX12よ・・・!」
花原「なんだって~~!!」
ちおり「海野さんが5人に増えたよ!」
乙奈「違いますわ、ご本人を入れると6人ですわ・・・!」
海野「わ・・・私にそっくり・・・!こ・・・これ、本当にロボットなの?」
花原「・・・あんた・・・クローンがクローンを作ったんじゃないでしょうね・・・」
海野ロボットは水色のSFアニメのようなユニフォームを着ている。
海野ロボの一人に近づき、髪の毛を書き上げてこめかみを見せるりかぜ
「ここが主電源ボタン。」
華白崎「・・・信じられない・・・し、しかし、アンドロイドを出場させていいんですか?」
りかぜ「ルールブックには書いてない・・・」
花原「そりゃ書いてないでしょうよ・・・!」
海野ロボに近づいていくちおり「すご~い!こんにちは!!」
すると、海野ロボが返事をする「はじめまして。水野美帆子です。私はこの大会が終わったらピーナツ農園に売られるの、よろしくね!」
花原「・・・声もそっくり・・・なんか気持ち悪いわね・・・」
別の海野ロボ「なに?あんたロボットを差別すんの?」
花原「・・・え?」
海野ロボ「天才科学者の火野美帆子よ。水野さん、気にすることないわ。」
水野「う・・・うん・・・」
火野「夏休みの自由研究で水爆を作ってIAEAに厳重注意を受けた私のガチバレーにあなたたちはついていけるかしら?おほほほ!!」
ちおり「・・・なんか誰かに似てない?」
口が開けっ放しの花原「・・・・・・。」
月野「にゃー!月野美帆子だよ!好きな雑草はハルジオンです!希望を捨てなければ絶対勝てるわ!」
飛び上がって喜ぶちおり「うおー!私もいる~~!!」
月野「こんちゃー!」
メガネをなおす金野美帆子「はあ・・・くだらないわ・・・こんな試合はとっとと終わらせて、バレー部は廃部よ。」
木野美帆子「まあまあ・・・長い目で見たらどうですか?この試合で優勝すれば、わたくしたちアンドロイドへの偏見も変わっていくと思いますわよ・・・」
花原「ちょっと待てーい!!水野美帆子まではわかる!なんで、ほかの中身が私たちになってるのよ!」
りかぜ「・・・なにか問題でも?」
華白崎「これは・・・自分との戦いになりますね・・・」
乙奈「傍から見たら、ひょうきんな海野さんがわたくしたちのモノマネをしているように見えますわ・・・」
海野「・・・な、なんで私のロボットなんか・・・」
スバル「・・・わかんない?去年あんたに負けた復讐だよ。」
病田「・・・どうせなら鮎原姉妹のロボットを造ればいいのに・・・」
さくら「・・・いや・・・連中にとっては海野さんは鮎原以上に乗り越えるべき壁なのよ。」
病田「・・・もしバレーの技術もコピーしていたら・・・?互角・・・?」
さくら「・・・いや結構やばいね・・・ロボットに疲労はない・・・」
病田「そんな・・・」
さくら「なあに、必ず穴はあるさ・・・私はもう見つけたよん。」
スバル「さあ、プレイボールだ!」
・
実況「先攻は勝ち数が多いチームとなります!共に2勝ですが、詩留々高専の引き分け試合が加算されるため、詩留々高専の攻撃からスタートです!」
スバル「頼んだぞ、木野美帆子・・・!」
サービスエリアに入る木野「やるだけやってみますわ・・・え~い!」
めちゃくちゃな軌道を描くサーブ。
花原「・・・な、なによあれ・・・!!」
華白崎「・・・乙奈さんの無回転フローターサーブだ・・・!!」
ちおり「まかして!て~い!」
ちおりが飛び込みレシーブしょうとボールに突っ込むが、軌道が変わり花原にぶつかって二人共倒れる。
花原「ぎゃああ!!」
スバル「おっしゃー!まずは先制だ!」
海野「乙奈さんのサーブまでコピーしてる・・・!」
木野の変化球サーブに翻弄される白亜高校。
ちおり「・・・あれってどうレシーブするのが正解なの?」
乙奈「わたくしにもわかりませんわ・・・」
スバル「言い忘れたが、10点以上点差がつくとコールド負けになるぜ!」
火野「おっしゃー!木野さん、とっととサーブで勝負を決めなさい!」
金野「・・・それ以外はあなたはからっきしダメですからね・・・」
木野「ご・・・ごめんなさい・・・」
水野「やめなよ・・・そんな言い方・・・」
金野「私は事実を申し上げたまでです。我々が守備に回ったとき、いの一番に敵に狙われるのは、レシーブができない木野さんだ。」
火野「そのとおり!」
金野「それと、火野さんです。このふたりははっきり言って戦力外ですね。」
火野「・・・え?」
芝をむしって食べる月野「芝生うめ~・・・」
スバル「おいおい、お前ら試合に集中してくれよ。」
花原「・・・わたしたちあんなに仲が悪かったっけ・・・?」
華白崎「・・・ええ・・・」
海野「これ以上点差を広げると、きびしいわ・・・私が下がるね・・・」
木野がサーブを打つ。
風船のようにふわふわ向かってくるボール。
海野(ふわふわ漂って・・・どこかで突然勢いをなくして落ちるんだ・・・
そこを狙う・・・!)
すると、ネットを超えた時点でいきなりストンと落ちるボール。
海野(しまった・・!落下タイミングが早い・・・!)
飛び込みレシーブでぎりぎりボールを上げる海野。
海野「誰か!リカバーを!」
乙奈「は・・・はい・・・!」
なんとか、レシーブをして相手のコートに入れる。
スバル「チャンスボールだ!」
水野「おっけー!」
水野が綺麗にレシーブを上げる。
月野がトスをして、火野が強力なスパイクを打つ。
花原の顔面にめり込むスパイク。
花原「ぐげえええ!!」
海野「花原さん・・・!」
主審の笛。
火野「見たか~!」
火野に飛びつく月野「火野さん天才~!」
混ざっているちおり「かっけー!」
華白崎「だめだ・・・!海野部長でも乙奈さんのサーブは予測できない・・・!」
海野「みんなごめん・・・動きが完全にランダムだから反応しきれない・・・」
花原「・・・どうするのよ・・・海野さんが拾えないなら、誰も拾えないわよ・・・!」
乙奈「な・・・なんかすいません・・・あんなサーブを打って・・・」
スコアを付ける山村「あれを完璧にレシーブできたのは野生のイノシシだけだ・・・
どうするのだ監督。」
さくら「・・・そうだっけ?まあ、野生のイノシシができたことを人間様ができないわけはないでしょ」
山村「・・・。いや、普通にできないだろ・・・
それに、花原さんのスパイクも模倣されている・・・
うちのチームを完全コピーしてくるとは、悪趣味極まりないぞ・・・」
さくら「・・・ねえマッスルくん。向こうのチームは本当に完全コピーかな?」
山村「姿が海野部長でなかったら、見分けがつかないと思うが・・・」
さくら「一人足りないんじゃない?
乙奈さんのサーブを誰よりもとなりで見続けてきた天才リベロがいるでしょう・・・」
気づく山村「・・・!ブー料理長がいない・・・!」
さくら「きっと、あのロボットはこの前の試合で部員が負傷でもして、急ごしらえで揃えたものなのよ・・・だから、必要最低限の5台しか用意ができなかった・・・
見なさい。あの天才少女の顔を・・・どう見ても寝不足のそれよ。」
山村「・・・確かに・・・」
病田「でも・・・向こうはなぜブーちゃんだけを外したんですか・・・?」
タバコに火を付けるさくら
「・・・理由はわからないけど・・・それが詩留々高専の致命的なミスなのは確かよ。」
となりで聞いているりかぜ「・・・致命的なミス・・・?冗談じゃないわ・・・
あの高木智子という謎の人物の血液があの給食のおばさんのものだったのは気づかなかった・・・
しかし・・・ブーちゃんのテクニックはレシーブとパスが多少上手なだけ・・・
身長もないし、悪いけれど海野部長の下位互換に過ぎないわ・・・
この勝負、私達の勝ちよ・・・!」
木野がサーブを打つ「たあ~」
怯える花原「ひいい!来た・・・!」
海野「ボールをよく見て・・・!」
華白崎「集中です・・・!」
その時、一人だけブーちゃんは目を閉じる。
精神を研ぎ澄ませて集中すると、ボールが空気を切り裂く音だけが聞こえる。
老師(少女よ・・・目で見えるものに惑わされてはならぬ・・・
デカ盛り・・・激辛・・・インスタ映え・・・それらは命をいただく食材への冒涜じゃ。
まだわからんか?
料理の真髄・・・それは作り手の・・・)
カッと目を見開くブーちゃん。
老師(心じゃよ・・・!)
木野の変化球サーブをレシーブするブーちゃん。
スバル「何いいい!!?返した!!」
りかぜ「馬鹿な・・・!」
部員の先頭に立ってジョギングする花原「ここ~で勝ったら12億!はい!」
部員たち「12億!12億!!」
華白崎(・・・なんつー品のない掛け声なんだ・・・)
体育館に入ってくる病田「すごい気合・・・」
タバコを吸うさくら「・・・なんだかんだで、全国ベスト3だからね・・・
部員の士気は高いよ。
華白崎さんの徹底した基礎練習・・・
マッスルくんの筋力トレーニング・・・
小早川さんの走力トレーニングに・・・
ブーちゃんの食事管理・・・
部員の健康チェックは私がやってるし。
ここにきてインフルエンザで出場停止はしょっぱいからねえ・・・」
病田「・・・ありがとう。監督を引き受けてくれて。
部員の子達・・・あんなに嬉しそう・・・」
さくら「礼ならあの子達に言いなよ。私は勝てる可能性がなければ絶対引き受けない。」
病田「そうだね・・・次はどんな作戦?」
さくら「・・・作戦は・・・もうない。」
病田「・・・え?」
さくら「この作戦は、もともと3戦で優勝することを前提で立てていた。
3戦くらいなら、運動経験のないあの子たちも体力の限界が来る前に勝ち越せると思ったから。
しかし・・・今回の引き分け試合で、その目はなくなった。
裏工作の資金も枯渇。
やってくれたわ・・・クローン少女・・・」
病田「それなら、別の作戦を立てれば・・・」
さくら「ねえ先生・・・最高の教師ってどんな先生だか知ってる?」
病田「・・・え?」
さくら「教職の授業で習わなかった?」
病田「・・・なんだっけ・・・」
さくら「生徒の心に火を付ける教師らしいよ。」
部員たちのジョギングを眺める2人の教師。
さくら「あの子らには、もう私の小細工は必要ないのかもしれない・・・」
ジョギングする花原「借金帳消し12億!はい!!」
病田「あ、そうそう・・・健康チェックと言ったら・・・
高体連の方から部員に健康診断をさせてほしいという依頼が来ています・・・」
笑うさくら「さすがの破門戸も感染症が怖いか。」
病田「抗原検査と、血中の抗体検査をさせてほしいと・・・」
さくら「血液サンプルを送ればいいんでしょ?後でやっとくよ。
私、人に尖ったものを突き刺すの大好きだから・・・」
病田「お願いします。」
・
詩留々高専
保健室で寝ているバレー部員たち。
それを扉から見つめるりかぜ「・・・・・・。」
廊下のベンチに座っているスバル「・・・動けそうな部員は・・・?相馬原は?中之条は・・・?」
黙って首を振るりかぜ。
壁を殴るスバル「くそ・・・!みんな故障かよ・・・!」
りかぜ「あの鮎原姉妹との一戦で、我々は肉体の限界を超えてしまった・・・」
スバル「・・・ちくしょー!せっかく海野にリベンジができるチャンスが来たってのによ・・・!」
スバルの隣に来るりかぜ「・・・ボス・・・」
スバル「うちの心が読めるなら、そっとしておいてくれねえか・・・」
春高バレーバトルロイヤル大会のルールブックをめくるりかぜ「・・・策ならあります。」
スバル「今から部員を勧誘するのか?」
頷くりかぜ
スバル「無理だ・・・!試合は明日だぞ?」
りかぜ「約束したでしょう・・・あなたを一番高い表彰台に立たせると。」
スバル「・・・なんで、うちにそこまでしてくれるんだ・・・?」
りかぜ「・・・あなただけは・・・私を差別しなかった。」
立ち上がって歩いていくりかぜ。
・
高体連本部ビル
ビル内のセキュリティを管理するコントロールルーム。
防犯モニターを見つめる狩野「・・・・・・。」
りかぜがラップトップを操作して、高体連のセキュリティシステムをハッキングしている。
腕時計を見るりかぜ「5、4、3、2、1、・・・」
モニターが反応する。
狩野「・・・見て。」
黒服の警備員「なにか・・・?」
狩野「ドアのセキュリティシステムが停止してしまった。」
警備員「ああ・・・さっき業者が定期メンテナンスをすると言っていました。」
狩野「・・・そう・・・。」
ビル内に侵入して、ロックが外れたドアをこじ開け、冷蔵庫に入っていくりかぜ。
タンクの蓋を引き上げると、中には白亜高校の部員の血液サンプルが冷凍保存されて入っている。
シェービングクリームの容器の蓋を開けて、血液サンプルを一つずつ入れていくりかぜ。
りかぜ「・・・高木智子・・・乙奈姫櫨美・・・華白崎桐子・・・」
別のタンクに移る。
りかぜ「・・・生原血織・・・花原恵菜・・・そして・・・
海野美帆子・・・」
・
華蔵寺公園
野球場はナイターになっている。
実況「芝生の上を転がるボール
ただ目で追うよ Sunny Day Sunday!
全国1億5千万人のバレーボールファンの皆さん、こんばんは!
春の高校バレー、バトルロイヤル大会もいよいよ準決勝を迎えました!
あの絶対王者、聖ペンシルヴァニア大附属と五分の激戦を繰り広げた、群馬県の詩留々高専に挑むのは、千葉県の新星、初出場の白亜高校・・・!
この試合の勝者が賞金総額12億円をかけた鮎原姉妹との挑戦権を得ます・・・!」
球場の真ん中にあるバレーボールコートに整列する白亜高校バレー部と、詩留々高専のスバルとりかぜ。
りかぜ「前回の反省を踏まえて、気温の下がる夜に試合を設定しました・・・
これなら空気の密度が高いので神風は吹きません・・・」
スバル「なるほど・・・しかし、大丈夫か?目の下のクマがすごいけど・・・」
りかぜ「だいじょうぶよ・・・」
スバル「この試合は7イニング制で行くぜ?今回は延長ありだ。
この試合に引き分けはねえ。」
海野「OKよ。楽しみましょう。」
花原「ちょっと、あんたたち2人だけ?ほかのメンバーは?」
ちおり「あと4人連れてこないと、不戦敗になるよ!」
乙奈「ありましたわね・・・そういうことも・・・」
りかぜ「・・・私は体が弱いので戦えませんが・・・あなたたちの相手は造ったわ。」
海野「・・・造った・・・?」
球場に大型トレーラーが入ってくる。
花原「・・・もしかして・・・あの体育館にあったバレーボールマシン?」
ちおり「でもレシーブはどうやんの?」
花原「・・・うん・・・」
りかぜ「いでよ・・・これが私の最高傑作・・・」
荷台の扉がゆっくりと開いていく。
すると、中には海野そっくりのアンドロイドが5人立っている。
りかぜ「バレーボーロイド、UMX12よ・・・!」
花原「なんだって~~!!」
ちおり「海野さんが5人に増えたよ!」
乙奈「違いますわ、ご本人を入れると6人ですわ・・・!」
海野「わ・・・私にそっくり・・・!こ・・・これ、本当にロボットなの?」
花原「・・・あんた・・・クローンがクローンを作ったんじゃないでしょうね・・・」
海野ロボットは水色のSFアニメのようなユニフォームを着ている。
海野ロボの一人に近づき、髪の毛を書き上げてこめかみを見せるりかぜ
「ここが主電源ボタン。」
華白崎「・・・信じられない・・・し、しかし、アンドロイドを出場させていいんですか?」
りかぜ「ルールブックには書いてない・・・」
花原「そりゃ書いてないでしょうよ・・・!」
海野ロボに近づいていくちおり「すご~い!こんにちは!!」
すると、海野ロボが返事をする「はじめまして。水野美帆子です。私はこの大会が終わったらピーナツ農園に売られるの、よろしくね!」
花原「・・・声もそっくり・・・なんか気持ち悪いわね・・・」
別の海野ロボ「なに?あんたロボットを差別すんの?」
花原「・・・え?」
海野ロボ「天才科学者の火野美帆子よ。水野さん、気にすることないわ。」
水野「う・・・うん・・・」
火野「夏休みの自由研究で水爆を作ってIAEAに厳重注意を受けた私のガチバレーにあなたたちはついていけるかしら?おほほほ!!」
ちおり「・・・なんか誰かに似てない?」
口が開けっ放しの花原「・・・・・・。」
月野「にゃー!月野美帆子だよ!好きな雑草はハルジオンです!希望を捨てなければ絶対勝てるわ!」
飛び上がって喜ぶちおり「うおー!私もいる~~!!」
月野「こんちゃー!」
メガネをなおす金野美帆子「はあ・・・くだらないわ・・・こんな試合はとっとと終わらせて、バレー部は廃部よ。」
木野美帆子「まあまあ・・・長い目で見たらどうですか?この試合で優勝すれば、わたくしたちアンドロイドへの偏見も変わっていくと思いますわよ・・・」
花原「ちょっと待てーい!!水野美帆子まではわかる!なんで、ほかの中身が私たちになってるのよ!」
りかぜ「・・・なにか問題でも?」
華白崎「これは・・・自分との戦いになりますね・・・」
乙奈「傍から見たら、ひょうきんな海野さんがわたくしたちのモノマネをしているように見えますわ・・・」
海野「・・・な、なんで私のロボットなんか・・・」
スバル「・・・わかんない?去年あんたに負けた復讐だよ。」
病田「・・・どうせなら鮎原姉妹のロボットを造ればいいのに・・・」
さくら「・・・いや・・・連中にとっては海野さんは鮎原以上に乗り越えるべき壁なのよ。」
病田「・・・もしバレーの技術もコピーしていたら・・・?互角・・・?」
さくら「・・・いや結構やばいね・・・ロボットに疲労はない・・・」
病田「そんな・・・」
さくら「なあに、必ず穴はあるさ・・・私はもう見つけたよん。」
スバル「さあ、プレイボールだ!」
・
実況「先攻は勝ち数が多いチームとなります!共に2勝ですが、詩留々高専の引き分け試合が加算されるため、詩留々高専の攻撃からスタートです!」
スバル「頼んだぞ、木野美帆子・・・!」
サービスエリアに入る木野「やるだけやってみますわ・・・え~い!」
めちゃくちゃな軌道を描くサーブ。
花原「・・・な、なによあれ・・・!!」
華白崎「・・・乙奈さんの無回転フローターサーブだ・・・!!」
ちおり「まかして!て~い!」
ちおりが飛び込みレシーブしょうとボールに突っ込むが、軌道が変わり花原にぶつかって二人共倒れる。
花原「ぎゃああ!!」
スバル「おっしゃー!まずは先制だ!」
海野「乙奈さんのサーブまでコピーしてる・・・!」
木野の変化球サーブに翻弄される白亜高校。
ちおり「・・・あれってどうレシーブするのが正解なの?」
乙奈「わたくしにもわかりませんわ・・・」
スバル「言い忘れたが、10点以上点差がつくとコールド負けになるぜ!」
火野「おっしゃー!木野さん、とっととサーブで勝負を決めなさい!」
金野「・・・それ以外はあなたはからっきしダメですからね・・・」
木野「ご・・・ごめんなさい・・・」
水野「やめなよ・・・そんな言い方・・・」
金野「私は事実を申し上げたまでです。我々が守備に回ったとき、いの一番に敵に狙われるのは、レシーブができない木野さんだ。」
火野「そのとおり!」
金野「それと、火野さんです。このふたりははっきり言って戦力外ですね。」
火野「・・・え?」
芝をむしって食べる月野「芝生うめ~・・・」
スバル「おいおい、お前ら試合に集中してくれよ。」
花原「・・・わたしたちあんなに仲が悪かったっけ・・・?」
華白崎「・・・ええ・・・」
海野「これ以上点差を広げると、きびしいわ・・・私が下がるね・・・」
木野がサーブを打つ。
風船のようにふわふわ向かってくるボール。
海野(ふわふわ漂って・・・どこかで突然勢いをなくして落ちるんだ・・・
そこを狙う・・・!)
すると、ネットを超えた時点でいきなりストンと落ちるボール。
海野(しまった・・!落下タイミングが早い・・・!)
飛び込みレシーブでぎりぎりボールを上げる海野。
海野「誰か!リカバーを!」
乙奈「は・・・はい・・・!」
なんとか、レシーブをして相手のコートに入れる。
スバル「チャンスボールだ!」
水野「おっけー!」
水野が綺麗にレシーブを上げる。
月野がトスをして、火野が強力なスパイクを打つ。
花原の顔面にめり込むスパイク。
花原「ぐげえええ!!」
海野「花原さん・・・!」
主審の笛。
火野「見たか~!」
火野に飛びつく月野「火野さん天才~!」
混ざっているちおり「かっけー!」
華白崎「だめだ・・・!海野部長でも乙奈さんのサーブは予測できない・・・!」
海野「みんなごめん・・・動きが完全にランダムだから反応しきれない・・・」
花原「・・・どうするのよ・・・海野さんが拾えないなら、誰も拾えないわよ・・・!」
乙奈「な・・・なんかすいません・・・あんなサーブを打って・・・」
スコアを付ける山村「あれを完璧にレシーブできたのは野生のイノシシだけだ・・・
どうするのだ監督。」
さくら「・・・そうだっけ?まあ、野生のイノシシができたことを人間様ができないわけはないでしょ」
山村「・・・。いや、普通にできないだろ・・・
それに、花原さんのスパイクも模倣されている・・・
うちのチームを完全コピーしてくるとは、悪趣味極まりないぞ・・・」
さくら「・・・ねえマッスルくん。向こうのチームは本当に完全コピーかな?」
山村「姿が海野部長でなかったら、見分けがつかないと思うが・・・」
さくら「一人足りないんじゃない?
乙奈さんのサーブを誰よりもとなりで見続けてきた天才リベロがいるでしょう・・・」
気づく山村「・・・!ブー料理長がいない・・・!」
さくら「きっと、あのロボットはこの前の試合で部員が負傷でもして、急ごしらえで揃えたものなのよ・・・だから、必要最低限の5台しか用意ができなかった・・・
見なさい。あの天才少女の顔を・・・どう見ても寝不足のそれよ。」
山村「・・・確かに・・・」
病田「でも・・・向こうはなぜブーちゃんだけを外したんですか・・・?」
タバコに火を付けるさくら
「・・・理由はわからないけど・・・それが詩留々高専の致命的なミスなのは確かよ。」
となりで聞いているりかぜ「・・・致命的なミス・・・?冗談じゃないわ・・・
あの高木智子という謎の人物の血液があの給食のおばさんのものだったのは気づかなかった・・・
しかし・・・ブーちゃんのテクニックはレシーブとパスが多少上手なだけ・・・
身長もないし、悪いけれど海野部長の下位互換に過ぎないわ・・・
この勝負、私達の勝ちよ・・・!」
木野がサーブを打つ「たあ~」
怯える花原「ひいい!来た・・・!」
海野「ボールをよく見て・・・!」
華白崎「集中です・・・!」
その時、一人だけブーちゃんは目を閉じる。
精神を研ぎ澄ませて集中すると、ボールが空気を切り裂く音だけが聞こえる。
老師(少女よ・・・目で見えるものに惑わされてはならぬ・・・
デカ盛り・・・激辛・・・インスタ映え・・・それらは命をいただく食材への冒涜じゃ。
まだわからんか?
料理の真髄・・・それは作り手の・・・)
カッと目を見開くブーちゃん。
老師(心じゃよ・・・!)
木野の変化球サーブをレシーブするブーちゃん。
スバル「何いいい!!?返した!!」
りかぜ「馬鹿な・・・!」
『青春アタック』脚本㉝天下三分
2024-02-29 19:58:19 (2 years ago)
回想
スバル「・・・・え?廃部・・・?」
顧問「せっかくソフトボールをやりに入学してくれたのにすまない。
実は本校では新たに女子野球部を立ち上げることが理事会で決まってね・・・
同じような部活動はいらないという判断で、ソフトボール部をたたむことにしたんだ・・・」
スバル「ちょっと待ってくださいよ!野球とソフトボールは全然違うよ・・・!」
顧問「理事会としては、ぜひ榛東さんに野球部の主将を・・・」
スバル「ほかの人をあたってください。」
部室を出て行くスバル。
河川敷で野球の試合を眺めているスバル。
日傘を指しているりかぜ「・・・野球部の主将を引き受ければよかったじゃない。
もともとプロ野球選手になりたかったんでしょう?」
スバル「おう、天才少女か。」
りかぜ「・・・となりいい?」
ベンチを開けてやるスバル「・・・いまさらソフトを裏切れねえよ・・・野球をやらせてもらえない女の子がやるスポーツとかさんざん馬鹿にされて・・・ここまで極めたってのに・・・」
りかぜ「・・・で、そこまで極めたあなたの実力は、もう日の目を見ることはないの・・・?」
スバル「そりゃ、あんたの方だろ。IQが200もあって、やってることは川原で三波石集めか。」
ビニール袋の石をかかげてりかぜ「・・・やることがないもの。
戦国時代や戦時中だったら、この頭脳も使いどころがあったのかもしれないけれど・・・」
スバル「なら、あんたもスポーツをやるといい。肉体と頭脳の戦いだよ。」
白い髪をかきあげ、赤い目をすがめるりかぜ「・・・この炎天下で大量の紫外線を浴びて?」
スバル「・・・死んじまうか。でも、戦略は考えられるだろ・・・?」
りかぜ「なら、あなたの下で働きたい。」
笑って、川に石を投げるスバル「うちはもう帰宅部だぜ?」
石は水を切ってバウンドする。
りかぜ「私はあなたとやりたいの。」
スバル「なんで?」
真剣な顔でりかぜ「・・・そういう運命だから。」
スバル「よせやい。いまさら野球部には入らねえぞ・・・啖呵切っちまった。」
りかぜ「イニング制の他の球技なら?」
スバル「・・・ソフトボールくらいしかねえだろ・・・」
りかぜ「・・・あったら?」
・
現在――伊勢崎華蔵寺公園球場
遠くには観覧車やジェットコースターが見える。
野球場のベンチに座っているスバル。
りかぜ「・・・お見えです。」
立ち上がるスバル。
球場に入ってくる鮎原姉妹
咲「ふえ~・・・本当にここで試合をやるの?」
スバル「たまには青空の下で体を動かすのも悪くないでしょ?」
ゲームボーイをしながら幹「・・・バレーボールをやるんだよね・・・?」
りかぜ「もちろん。」
・
白亜高校
生徒会室に駆けてくる小早川
「はあはあ・・・!」
ちおり「あ、チョロQが来たよ!」
小早川「ぜえぜえ・・・ついに詩留々高専が聖ペンシルヴァニアと戦います・・・!!」
今日の対戦カードを小早川から受け取る海野
海野「・・・約束守ってくれたんだ・・・」
さくら「義理堅いわね、あいつら。見直しちゃった・・・」
海野「・・・あれ?今日って、この試合だけなの?」
小早川「え?は、はい・・・」
海野「ほかの学校は・・・?」
生徒会室に入ってくる狩野「・・・もういないわ・・・」
海野「・・・レイちゃん!?」
ビビって通路を開ける花原。
狩野「ノックもせずに失礼いたします。」
さくら「ああ、いいよ。で、高体連のスタッフがわざわざうちみたいな貧乏高校に何のよう?」
狩野「祝福を言いに来ました。本日、白亜高校女子バレー部の準優勝が確定しました。
おめでとうございます・・・」
拍手をする狩野。
海野「ええっ・・・!!?」
華白崎「ほかの部は全て敗退したと言うんですか?」
狩野「・・・ええ・・・鮎原姉妹に・・・」
花原「本当に化物ね・・・」
さくら「・・・霧ヶ峰漸新と暁工業も?」
狩野「あの2校は季節性インフルエンザで出場停止です。」
さくら「寺島先輩のあほたれ・・・横浜でみんなと大皿をつついたから感染したんだ・・・!」
狩野「みなさんは、今日の試合の勝者と決勝戦で戦っていただきます。場所は東京体育館。
これは、バスチケットです。」
花原「うおおおおお!!!本当に、ここまで来た・・・!」
その時、黒服たちが生徒会室のテレビにチューナーを取り付ける。
華白崎「・・・なにを?」
狩野「・・・みなさんは今日の試合の結果がたいへん気になることでしょう・・・
そこで、試合の様子を衛星中継いたします・・・」
ちおり「見れんの?やったー!」
海野「レイちゃん・・・」
小声で狩野「海野さん・・・やったね・・・」
さくら「どうだ見たか!これぞ私の天下三分の計よ・・・!
聖ペンシルヴァニアが勝とうが、詩留々が勝とうが、どちらにせよ、今日の戦いで憔悴している・・・
そいつらに最後の止めをさせば、私らは優勝!
まあ、ここまで来たら12億がもらえる聖ペンシルヴァニアとやりてえけどな!」
花原「先生・・・!孔明先生・・・!」
華白崎「・・・信じられない・・・」
さくら「言ったでしょう?優勝するなら、負けなきゃいいだけ。簡単な話よ。」
乙奈「・・・海野さん泣いてるんですか・・・?」
海野「・・・だ・・・だって・・・ほんの数ヶ月前までは、一人でバレーをしてたのに・・・
生原さんがこの学校に来て・・・すべてが変わった・・・
サイエンスクラスの授業が変わり・・・
芸能クラスからはプロのアイドルがデビュー・・・
女子バレー部は活動を再開し・・・
生徒会室はみんなの憩いの場に・・・
栃木県の自然は守られ・・・
埼玉県のいじめはなくなり・・・
群馬県とは同盟が結べた・・・
そして・・・全国制覇の夢まで後一歩のところまで来ている・・・
こんなの奇跡だよ・・・」
微笑む花原「そういうセリフは、優勝してからでしょ・・・」
海野「だけど・・・」
ちおり「にゃー、なんかバレーじゃなくて野球してるよ!」
テレビ画面を指差すちおり。
花原「何言ってるのよ・・・チャンネルが違うだけでしょ・・・」
狩野「いや・・・そんなはずは・・・」
テレビ画面には野球のようなスコアボードが表示されている。
実況「最終回7回裏、詩留々高校の攻撃です!聖ペンシルヴァニアは守りきれるか!」
詩留々部員「ナイスサー、スバル!!」
咲「ばっちこーい!」
幹「この3点を死守しよう!」
下手打ちで強力なサーブを打つスバル「ウインドミルサーブだオラー!!」
ポカンとする花原「こいつら何やってるの・・・?」
狩野「正真正銘のバレーボールです。」
花原「いやいや・・・私が今までやってきたバレーと違うんだけど・・・」
さくら「イニング制バレーボールだ・・・」
華白崎「イニング制?」
さくら「もともとバレーボールってイニング制だったのよ。各チーム交互に攻撃と守備に入れ替わって得点を取り合うスポーツだった・・・そう・・・野球のように。
攻撃側がラリーを制すれば1点、守備側が制すれば1アウト。3アウトでチェンジ。」
花原「うそでしょ?」
さくら「・・・榛東スバルはもともとソフトをやってたって言ってたっけ?」
海野「・・・はい・・・」
さくら「・・・この試合・・・わからないわよ・・・」
花原「・・・・・・。」
実況「スバルのバックアタックが決まった~!同点!同点です!!
これで詩留々高専が聖ペンシルヴァニアに追いついた・・・!!
カウントは2アウト!ここで、詩留々高専がラリーを制すれば、逆転サヨナラ勝ちです!!」
ブラウン管にかぶりつく花原「なんですって・・・・!!??」
華白崎「・・・あの鮎原姉妹が・・・負ける??」
・
華蔵寺公園球場
詩留々高専の応援団「あと一点!あと一点!!」
野球帽をかぶっているりかぜ(・・・やはり、聖ペンシルヴァニアは鮎原姉妹以外は脅威ではない・・・
確かにほかのメンバーも強いには強いが想定の範疇・・・
この勝負もらったわ・・・)
ネット越しに話しかけるスバル
「なあ鮎原さんよ、下のやつらに追いかけられるってのはどんな気分だい?」
咲「ん?楽しいよ。」
スバル「・・・あんた、この状況でどういうメンタルしてんだよ・・・
ルールに慣れてなかったから負けたっていう言い訳はよしてくれよ・・・」
咲「まさか・・・こんな楽しいルールを教えてくれて感謝したいくらいよ。
それに・・・私たちが負けたことがないとでも?
負けるのはいいことよ。勝ち方は負けなければ学べないからね。」
スバル「負けるのがいいこと・・・?」
昨年、海野に敗れた記憶が蘇る。
回想
笑顔の海野「はあはあ・・・ありがとう、いい試合だった・・・!」
スバル(3セットストレート敗けが・・・?)
スバル「負けるより勝つほうがずっといいだろうがあああ!!」
渾身のバックアタックを打つスバル。
それをひろう幹。
アタックを打つ咲。
咲の強烈なアタックを必死にブロックする詩留々高専の前衛。
球速が落ちたボールを立て直す。
もう一度バックアタックを決めるスバル。
エンドラインギリギリを狙うが、守備の天才の幹が超反応で飛び込みレシーブをする。
咲「ナイレシ幹姉!」
もう一度咲がアタックを決める。
そのアタックを根性で食らいついてひろうスバル「負けるかあ!!」
激しいラリーの応酬を見つめる白亜高校。
海野「すごい・・・あの鮎原姉妹と互角だなんて・・・!」
華白崎「それは違うわ・・・追い込まれてるのは明らかに鮎原姉妹です・・・」
なかなか終わらないラリー
咲「ずいぶんしぶといわね・・・!はあはあ・・・」
スバル「連戦の疲れが出てるんじゃないのか?ぜえぜえ・・・
こっちはな・・・仮想海野ロボを6台相手にして毎日特訓してんだ・・・
あんたたち2人なんて目じゃねえさ・・・」
幹「オール海野さんチームは確かにやばいね。うん。」
スバル「どうする?絶対王者・・・」
幹「このままラリーを続けていてもキリがない・・・終わりにしようか。」
そう言うと、幹がバックアタックをする。
スバル「勝負を焦ったな!アウトだ!!」
何かを察するりかぜ「・・・!!だめ・・・!!」
その時、強風が吹き、地面にボールが落ちる直前で風に煽られ向きが変わり、ぎりぎりコート上に落ちる。
ショックを受けるスバル「な・・・!なんだって・・・!!??」
幹「あ~よかった。午後になるまでラリーを粘ったかいがあったわ。」
スバル「あんた・・・風が出てくるのを、待ってたのか・・・?」
幹「群馬の名物は空っ風なんでしょ?まあ、これは春一番かな。」
咲「さすが幹姉・・・!」
膝をつくスバル「野外での試合という逆境を活かして・・・
な・・・なんてやつだ・・・」
りかぜ(・・・・・・あの姉妹は・・・バレーに愛されてる・・・)
実況「15分にも及ぶラリーは鮎原姉妹が制しました!これにより、この試合は引き分けです!!」
テレビにかぶりつく花原「ちょ・・・!ちょっと待ってよ!バレーボールで引き分け?」
さくら「イニング制でしか起こりえない結果ね。」
華白崎「・・・ということは・・・どうなるんです?」
気まずそうな狩野「・・・すいません・・・白亜高校の準優勝確定は撤回いたします・・・」
ちおり「バスチケット返すの?」
乙奈「みたいですわね・・・」
海野「スバルちゃんは同盟を結ぶ際に、条件をつけた・・・
聖ペンシルヴァニア大附属と戦う代わりに、次は私たちと戦いたいと・・・」
花原「ちょっと待った!じゃあ・・・」
華白崎「わたしたちの優勝は、詩留々高専と聖ペンシルヴァニア大附属の連勝しかなくなったってことです・・・」
ちおり「わーい!あと2回も戦える~!やったー!」
花原「うそでしょ・・・!これじゃあ立場が逆転よ・・・!」
ちおり「私たちも引き分ければ?」
花原「・・・いったい何がしたいのよ・・・」
海野「・・・監督・・・」
さくら「・・・うん。けっこうやばいね。」
花原「先生・・・策は・・・?」
さくら「・・・ない。つーか引き分けって・・・」
スバル「・・・・え?廃部・・・?」
顧問「せっかくソフトボールをやりに入学してくれたのにすまない。
実は本校では新たに女子野球部を立ち上げることが理事会で決まってね・・・
同じような部活動はいらないという判断で、ソフトボール部をたたむことにしたんだ・・・」
スバル「ちょっと待ってくださいよ!野球とソフトボールは全然違うよ・・・!」
顧問「理事会としては、ぜひ榛東さんに野球部の主将を・・・」
スバル「ほかの人をあたってください。」
部室を出て行くスバル。
河川敷で野球の試合を眺めているスバル。
日傘を指しているりかぜ「・・・野球部の主将を引き受ければよかったじゃない。
もともとプロ野球選手になりたかったんでしょう?」
スバル「おう、天才少女か。」
りかぜ「・・・となりいい?」
ベンチを開けてやるスバル「・・・いまさらソフトを裏切れねえよ・・・野球をやらせてもらえない女の子がやるスポーツとかさんざん馬鹿にされて・・・ここまで極めたってのに・・・」
りかぜ「・・・で、そこまで極めたあなたの実力は、もう日の目を見ることはないの・・・?」
スバル「そりゃ、あんたの方だろ。IQが200もあって、やってることは川原で三波石集めか。」
ビニール袋の石をかかげてりかぜ「・・・やることがないもの。
戦国時代や戦時中だったら、この頭脳も使いどころがあったのかもしれないけれど・・・」
スバル「なら、あんたもスポーツをやるといい。肉体と頭脳の戦いだよ。」
白い髪をかきあげ、赤い目をすがめるりかぜ「・・・この炎天下で大量の紫外線を浴びて?」
スバル「・・・死んじまうか。でも、戦略は考えられるだろ・・・?」
りかぜ「なら、あなたの下で働きたい。」
笑って、川に石を投げるスバル「うちはもう帰宅部だぜ?」
石は水を切ってバウンドする。
りかぜ「私はあなたとやりたいの。」
スバル「なんで?」
真剣な顔でりかぜ「・・・そういう運命だから。」
スバル「よせやい。いまさら野球部には入らねえぞ・・・啖呵切っちまった。」
りかぜ「イニング制の他の球技なら?」
スバル「・・・ソフトボールくらいしかねえだろ・・・」
りかぜ「・・・あったら?」
・
現在――伊勢崎華蔵寺公園球場
遠くには観覧車やジェットコースターが見える。
野球場のベンチに座っているスバル。
りかぜ「・・・お見えです。」
立ち上がるスバル。
球場に入ってくる鮎原姉妹
咲「ふえ~・・・本当にここで試合をやるの?」
スバル「たまには青空の下で体を動かすのも悪くないでしょ?」
ゲームボーイをしながら幹「・・・バレーボールをやるんだよね・・・?」
りかぜ「もちろん。」
・
白亜高校
生徒会室に駆けてくる小早川
「はあはあ・・・!」
ちおり「あ、チョロQが来たよ!」
小早川「ぜえぜえ・・・ついに詩留々高専が聖ペンシルヴァニアと戦います・・・!!」
今日の対戦カードを小早川から受け取る海野
海野「・・・約束守ってくれたんだ・・・」
さくら「義理堅いわね、あいつら。見直しちゃった・・・」
海野「・・・あれ?今日って、この試合だけなの?」
小早川「え?は、はい・・・」
海野「ほかの学校は・・・?」
生徒会室に入ってくる狩野「・・・もういないわ・・・」
海野「・・・レイちゃん!?」
ビビって通路を開ける花原。
狩野「ノックもせずに失礼いたします。」
さくら「ああ、いいよ。で、高体連のスタッフがわざわざうちみたいな貧乏高校に何のよう?」
狩野「祝福を言いに来ました。本日、白亜高校女子バレー部の準優勝が確定しました。
おめでとうございます・・・」
拍手をする狩野。
海野「ええっ・・・!!?」
華白崎「ほかの部は全て敗退したと言うんですか?」
狩野「・・・ええ・・・鮎原姉妹に・・・」
花原「本当に化物ね・・・」
さくら「・・・霧ヶ峰漸新と暁工業も?」
狩野「あの2校は季節性インフルエンザで出場停止です。」
さくら「寺島先輩のあほたれ・・・横浜でみんなと大皿をつついたから感染したんだ・・・!」
狩野「みなさんは、今日の試合の勝者と決勝戦で戦っていただきます。場所は東京体育館。
これは、バスチケットです。」
花原「うおおおおお!!!本当に、ここまで来た・・・!」
その時、黒服たちが生徒会室のテレビにチューナーを取り付ける。
華白崎「・・・なにを?」
狩野「・・・みなさんは今日の試合の結果がたいへん気になることでしょう・・・
そこで、試合の様子を衛星中継いたします・・・」
ちおり「見れんの?やったー!」
海野「レイちゃん・・・」
小声で狩野「海野さん・・・やったね・・・」
さくら「どうだ見たか!これぞ私の天下三分の計よ・・・!
聖ペンシルヴァニアが勝とうが、詩留々が勝とうが、どちらにせよ、今日の戦いで憔悴している・・・
そいつらに最後の止めをさせば、私らは優勝!
まあ、ここまで来たら12億がもらえる聖ペンシルヴァニアとやりてえけどな!」
花原「先生・・・!孔明先生・・・!」
華白崎「・・・信じられない・・・」
さくら「言ったでしょう?優勝するなら、負けなきゃいいだけ。簡単な話よ。」
乙奈「・・・海野さん泣いてるんですか・・・?」
海野「・・・だ・・・だって・・・ほんの数ヶ月前までは、一人でバレーをしてたのに・・・
生原さんがこの学校に来て・・・すべてが変わった・・・
サイエンスクラスの授業が変わり・・・
芸能クラスからはプロのアイドルがデビュー・・・
女子バレー部は活動を再開し・・・
生徒会室はみんなの憩いの場に・・・
栃木県の自然は守られ・・・
埼玉県のいじめはなくなり・・・
群馬県とは同盟が結べた・・・
そして・・・全国制覇の夢まで後一歩のところまで来ている・・・
こんなの奇跡だよ・・・」
微笑む花原「そういうセリフは、優勝してからでしょ・・・」
海野「だけど・・・」
ちおり「にゃー、なんかバレーじゃなくて野球してるよ!」
テレビ画面を指差すちおり。
花原「何言ってるのよ・・・チャンネルが違うだけでしょ・・・」
狩野「いや・・・そんなはずは・・・」
テレビ画面には野球のようなスコアボードが表示されている。
実況「最終回7回裏、詩留々高校の攻撃です!聖ペンシルヴァニアは守りきれるか!」
詩留々部員「ナイスサー、スバル!!」
咲「ばっちこーい!」
幹「この3点を死守しよう!」
下手打ちで強力なサーブを打つスバル「ウインドミルサーブだオラー!!」
ポカンとする花原「こいつら何やってるの・・・?」
狩野「正真正銘のバレーボールです。」
花原「いやいや・・・私が今までやってきたバレーと違うんだけど・・・」
さくら「イニング制バレーボールだ・・・」
華白崎「イニング制?」
さくら「もともとバレーボールってイニング制だったのよ。各チーム交互に攻撃と守備に入れ替わって得点を取り合うスポーツだった・・・そう・・・野球のように。
攻撃側がラリーを制すれば1点、守備側が制すれば1アウト。3アウトでチェンジ。」
花原「うそでしょ?」
さくら「・・・榛東スバルはもともとソフトをやってたって言ってたっけ?」
海野「・・・はい・・・」
さくら「・・・この試合・・・わからないわよ・・・」
花原「・・・・・・。」
実況「スバルのバックアタックが決まった~!同点!同点です!!
これで詩留々高専が聖ペンシルヴァニアに追いついた・・・!!
カウントは2アウト!ここで、詩留々高専がラリーを制すれば、逆転サヨナラ勝ちです!!」
ブラウン管にかぶりつく花原「なんですって・・・・!!??」
華白崎「・・・あの鮎原姉妹が・・・負ける??」
・
華蔵寺公園球場
詩留々高専の応援団「あと一点!あと一点!!」
野球帽をかぶっているりかぜ(・・・やはり、聖ペンシルヴァニアは鮎原姉妹以外は脅威ではない・・・
確かにほかのメンバーも強いには強いが想定の範疇・・・
この勝負もらったわ・・・)
ネット越しに話しかけるスバル
「なあ鮎原さんよ、下のやつらに追いかけられるってのはどんな気分だい?」
咲「ん?楽しいよ。」
スバル「・・・あんた、この状況でどういうメンタルしてんだよ・・・
ルールに慣れてなかったから負けたっていう言い訳はよしてくれよ・・・」
咲「まさか・・・こんな楽しいルールを教えてくれて感謝したいくらいよ。
それに・・・私たちが負けたことがないとでも?
負けるのはいいことよ。勝ち方は負けなければ学べないからね。」
スバル「負けるのがいいこと・・・?」
昨年、海野に敗れた記憶が蘇る。
回想
笑顔の海野「はあはあ・・・ありがとう、いい試合だった・・・!」
スバル(3セットストレート敗けが・・・?)
スバル「負けるより勝つほうがずっといいだろうがあああ!!」
渾身のバックアタックを打つスバル。
それをひろう幹。
アタックを打つ咲。
咲の強烈なアタックを必死にブロックする詩留々高専の前衛。
球速が落ちたボールを立て直す。
もう一度バックアタックを決めるスバル。
エンドラインギリギリを狙うが、守備の天才の幹が超反応で飛び込みレシーブをする。
咲「ナイレシ幹姉!」
もう一度咲がアタックを決める。
そのアタックを根性で食らいついてひろうスバル「負けるかあ!!」
激しいラリーの応酬を見つめる白亜高校。
海野「すごい・・・あの鮎原姉妹と互角だなんて・・・!」
華白崎「それは違うわ・・・追い込まれてるのは明らかに鮎原姉妹です・・・」
なかなか終わらないラリー
咲「ずいぶんしぶといわね・・・!はあはあ・・・」
スバル「連戦の疲れが出てるんじゃないのか?ぜえぜえ・・・
こっちはな・・・仮想海野ロボを6台相手にして毎日特訓してんだ・・・
あんたたち2人なんて目じゃねえさ・・・」
幹「オール海野さんチームは確かにやばいね。うん。」
スバル「どうする?絶対王者・・・」
幹「このままラリーを続けていてもキリがない・・・終わりにしようか。」
そう言うと、幹がバックアタックをする。
スバル「勝負を焦ったな!アウトだ!!」
何かを察するりかぜ「・・・!!だめ・・・!!」
その時、強風が吹き、地面にボールが落ちる直前で風に煽られ向きが変わり、ぎりぎりコート上に落ちる。
ショックを受けるスバル「な・・・!なんだって・・・!!??」
幹「あ~よかった。午後になるまでラリーを粘ったかいがあったわ。」
スバル「あんた・・・風が出てくるのを、待ってたのか・・・?」
幹「群馬の名物は空っ風なんでしょ?まあ、これは春一番かな。」
咲「さすが幹姉・・・!」
膝をつくスバル「野外での試合という逆境を活かして・・・
な・・・なんてやつだ・・・」
りかぜ(・・・・・・あの姉妹は・・・バレーに愛されてる・・・)
実況「15分にも及ぶラリーは鮎原姉妹が制しました!これにより、この試合は引き分けです!!」
テレビにかぶりつく花原「ちょ・・・!ちょっと待ってよ!バレーボールで引き分け?」
さくら「イニング制でしか起こりえない結果ね。」
華白崎「・・・ということは・・・どうなるんです?」
気まずそうな狩野「・・・すいません・・・白亜高校の準優勝確定は撤回いたします・・・」
ちおり「バスチケット返すの?」
乙奈「みたいですわね・・・」
海野「スバルちゃんは同盟を結ぶ際に、条件をつけた・・・
聖ペンシルヴァニア大附属と戦う代わりに、次は私たちと戦いたいと・・・」
花原「ちょっと待った!じゃあ・・・」
華白崎「わたしたちの優勝は、詩留々高専と聖ペンシルヴァニア大附属の連勝しかなくなったってことです・・・」
ちおり「わーい!あと2回も戦える~!やったー!」
花原「うそでしょ・・・!これじゃあ立場が逆転よ・・・!」
ちおり「私たちも引き分ければ?」
花原「・・・いったい何がしたいのよ・・・」
海野「・・・監督・・・」
さくら「・・・うん。けっこうやばいね。」
花原「先生・・・策は・・・?」
さくら「・・・ない。つーか引き分けって・・・」
『青春アタック』脚本㉜我田引水
2024-02-28 19:29:19 (2 years ago)
詩留々高専の体育館
りかぜ「こちらが我がチームの練習場です。」
ちおり「ひれー!!」
体育館には様々なバレーボールのトレーニングマシーンが並んでいる。
花原「これ、全部作ったの・・・?」
りかぜ「うちは工科系なのでわけはないわ・・・
実は、本日最新作が完成したの。
どうです?少し遊んでいきませんか・・・?」
ちおり「いいの?わーい!!」
りかぜ「花原先生もどうぞコートへ・・・」
花原「え・・・?いやちょっとなんか嫌な予感が・・・」
りかぜがリモコンのボタンを押すと、ひときわ巨大なバレーボールマシンがこちらに動いてくる。
花原「あれは・・・」
りかぜ「仮想海野美帆子バレーボールロボよ。」
・
応接室
海野「あ・・・あたし、そろそろ帰るね・・・!」
スバル「あんたがこんな卑怯な手を打たないことは私はよく知っている・・・
海野さんはバレーボールバカだからね。
あんたを裏で操っている黒幕がいるはずだ。誰?」
海野「いないよ、いないって・・・!」
スバル「こっちだってせっかく作ったバレー部を廃部させたくねえんだ・・・
可愛い後輩たちに残していきたいんだよ。
廃部なんて・・・もうゴメンなんだ。」
胸が痛む海野「・・・スバルちゃん・・・うん・・・わかった・・・」
その時、応接室の扉が開く。
りかぜ「・・・白亜高校監督・・・吹雪さくら・・・元日本代表」
そう言うと、ボロボロになったちおりと花原を放り投げる。
海野「・・・・!生原さん、花原さん・・・!」
ちおり「にゃ~・・・」
花原「海野ロボに殺されかけた・・・本気の海野さんがあんなに強いなんて・・・」
二人に駆け寄る海野「一体二人に何を・・・!?」
りかぜ「ただのバレーボールの練習よ。」
スバル「おいおい・・・元全日本が監督にいるのか!」
りかぜ「素行不良ですぐに球界を追い出されたみたいだけどね・・・
勝利のためには手段を選ばない恐るべき参謀よ。」
スバル「お前より恐ろしい参謀はいないだろ。」
りかぜ「・・・まあね。」
スバル「・・・で?こいつらの目的は?心を読んだんだろ?」
りかぜ「海野は、予想通り私たちと鮎原を戦わせたかったみたい。
花原は、うちの学校を受験したかったらしいんだけど、逮捕歴があって受験資格なし。
未練があったみたい。
生原は、なんかよくわからないけど、ただ付いてきた・・・」
花原「なんで、そんなこと分かるの・・・!?」
りかぜ「・・・遺伝子操作の影響かわからないけど・・・私は人の10倍“勘がいい”の。」
震える花原「か・・・怪物だ・・・」
りかぜ「中学生で原子炉作ったあなたに言われたくないわ・・・
で、ボス・・・どうしますか?」
床に膝をつく海野「スバルちゃん、陥れるような真似をして本当にごめん・・・!
謝るから、許してください・・・!」
スバル「・・・顔を上げなよ海野さん・・・それに・・・白亜高校の提案も結構悪くない・・・」
海野「え?」
りかぜ「さすがボス。聡明ですわ。
聖ペンシルヴァニアには現在の我々がフルパワーでかかっても勝利は難しい・・・
そして、それは白亜高校も同じ・・・
しかし、我々と白亜高が協力して、鮎原姉妹を迎え撃てば・・・」
海野「それって・・・」
スバル「いいぜ、海野部長・・・鮎原姉妹と戦ってやる。ただし、ひとつ条件がある。」
海野「え・・・?」
スバル「鮎原と対戦する代わりに、その次は白亜高校と戦わせてほしい。
・・・どうだ?」
海野「でも・・・私の一存では決められない・・・みんなと相談して・・・」
りかぜ「白亜高校の部長は吹雪さくらではなく、海野さん・・・あなたでしょ?
あなたが今、決めなさい。」
誓約書を机に置くりかぜ。
スバル「でなければ、この話は無しだ。」
海野「・・・・・・。」
花原「ダメよ海野さん・・・!こういうシチュエーションでサインをしてよかった試しがなかったってうちの母さんが言ってたわ・・・」
りかぜ「・・・あなたのお母さんのように借金をするわけではないわ。」
花原「この子怖い・・・!全部心を読んでくる・・・!」
海野「・・・・・・。」
スバル「別に下心なんかないよ。あんたらの策略に乗っかってやったほうが、こっちも得だって思ったんだよ。どうすんだい?」
ちおり「海野さんはどうしたいの?」
海野「・・・わたしは・・・人を騙すようなことはしたくない・・・」
ちおり「なら、相手を信じてあげたら?」
海野「生原さん・・・
うん・・・そうだよね・・・」
サインをする海野。
りかぜ「では、こちらに主将のサインも。」
スバル「おうよ。」
サインをするスバル。
りかぜ「これで、詩留々高専と白亜高校の同盟が結ばれました。」
握手を求めるスバル「よろしくな、海野さん!」
海野「・・・うん・・・!」
・
白亜高校
生徒会室
華白崎「詩留々高専と同盟を結んだんですか?」
さくら「・・・うん。これが誓約書。」
華白崎「・・・白亜高校は、詩留々高専が聖ペンシルヴァニア大附属を倒せるように最大限援助する義務を負う・・・具体的には、聖ペンシルヴァニア大附属に、霧ヶ峰漸新と暁工業をぶつけるよう裏工作をすること。それが成功の後、詩留々高専は約束を果たし、鮎原姉妹と戦う。」
さくら「・・・ちょっと様子を見てこさせるはずが、相手にしてやられたわ。」
華白崎「これじゃあ、同盟どころか、詩留々が聖ペンシルヴァニアに勝利するお膳立てをうちがやるだけではないですか・・・」
さくら「ほんで、もし詩留々が勝っちゃったら6億円も取られちゃうしな。」
海野「・・・みんな・・・本当にごめん・・・」
華白崎「花原さん・・・あなたが部長についていながら、なぜ同盟を止めなかったんですか・・・?」
花原「・・・いや、止めようとはしたんだけど・・・向こうにとんでもないやばい奴がいて・・・」
華白崎「暴力で脅されたんですか?それなら、こんな契約は無効だ・・・」
花原「そういうのじゃない・・・なんというか・・・桁違いの天才の参謀がいるのよ・・・」
さくら「天才少女はめぐなちゃんでしょうに。」
花原「・・・いや・・・あのりかぜちゃんこそ本当の天才・・・」
ショックを受ける華白崎「・・・あの花原さんがそんなことを言うなんて・・・!」
さくら「マッスルくん。」
山村が出場選手の名鑑をめくる。
山村「むう、詩留々高専に網野りかぜなんていう選手はないないぞ・・・」
花原「マネージャーらしいわ・・・それに、あの子のことなら、16年前のニュートンや日経サイエンスを読んだほうが早い・・・」
科学雑誌を渡す花原。
華白崎「ウーマン・ジェネティック社が代理出産マシンで遺伝子操作された天才児を開発・・・」
花原「その研究で生まれた子が彼女よ。」
さくら「クローン人間かよ・・・すげえ時代だなあ・・・ちょっと前に羊が成功したばかりだろうに。」
花原「お母さんの子宮で生まれてきた私たちとは頭脳のスペックが違うのよ・・・」
さくら「花原さん。
私、この分野詳しくないんだけど、クローン羊のドリーちゃんがほかの羊と比べて優っていたところってあんの?」
花原「・・・・・・ない。」
さくら「そんなもんよ。その天才少女・・・この私がギャフンと言わせてやるわ。」
・
横浜の中華街
各地での激戦を制した全国の強豪校18校の監督が会食をしている。
会場に入ってくるさくら「・・・鮎原姉妹が関東エリアを蹂躙しているっていうのに、地方の連中はのんきに食事会?」
奥の席で飲茶を食べている霧ヶ峰漸新高校バレー部監督寺島明日香は、おっとりした美人監督。
「いや、なかなか東京に来ることないから・・・
久しぶりだね、さくらちゃん。まさか、監督をやるとは思ってもなかったよ・・・」
メニューを持った店員がさくらに近づく。
さくら「紹興酒。」
店員「かしこまりました。」
椅子を勝手に持ってきて、席に着くさくら。
北京ダックを食べる暁工業バレー部雷都光「おいおい、あんたを招待した覚えはないで・・・」
さくら「悪巧みに私も混ぜてよ。」
寺島「いや、本当にただの親睦会だよ。もう地方のチームは私たちしか残っていないから、じゃあみんなで上京しようかって呼びかけたんだ。」
さくら「・・・まあ、お人好しな先輩はそうだろうけど。ほかの監督方は、どう相手を出し抜いてやろうかって目をギラギラさせてるんじゃないかしら?」
呆れるライト「それはあんたやろ・・・」
寺島「こっちは仲良くバレーを楽しんでいるからさ・・・誰が勝っても恨みっこなし。」
さくら「負けたら廃部になるのに?
大人が楽しむのは結構だけど、それじゃあ部員に申し訳が立たないでしょうよ。」
突然笑い出すライト「にゃ~はっはっは!廃部がなんじゃい!
まだ2勝しかしとらん、あんたと違って、こちとら強豪校なんじゃ。
うちらは少なくとも10勝以上はしとる・・・!廃部期間はいくらやと思う?」
さくら「・・・3光年?」
ライト「姉ちゃん、それは距離の単位や。80日間や。そんなん部員の喫煙発覚より可愛いもんやで!」
寺島「うん・・・だから、ここまで来たら私たちにとっては普通のバレーの大会なの。」
さくら「なるほど・・・普通のバレーの大会か・・・」
ライト「あんたの得意な悪知恵なんか必要あらへんってこっちゃ!紹興酒代は払って帰りや・・・」
さくら「普通の大会だというのに、そろいもそろって鮎原に恐れをなす腰抜けってわけね・・・」
ライト「なんやと~!!」
さくら「そうでしょうよ。相手が6億だなんてとんでもない人参をぶら下げて挑発しているのに、あんたたちは誰も率先して、東京を撃破しようともしない。いい?地方のあんたたちは首都東京になめられてんのよ。」
ライト「大阪が地方なわけあるかい!地方ってのは、長野みたいなスキー場しか切り札がないところを言うんや!」
傷つく長野県の寺島「・・・ライトくん・・・」
ライト「すまん・・・言いすぎたわ・・・軽井沢も善光寺もいいところや・・・」
お冷を飲んでから寺島「昔から変わってないね、さくらちゃん・・・そうやって私たちをけしかけて、聖ペンシルヴァニアと戦わせたいんだろうけど・・・私もそこまでお人好しじゃないよ。誰と戦うかは好きにさせて欲しい。」
椅子を動かし寺島の隣に座るさくら「先輩とも、もうずいぶん長い付き合いになりますよね・・・
変わらずお綺麗で・・・私が全日本でぺーぺーだった頃は、先輩がプロの世界を教えてくれた。
よく、食事にも連れてってくれたし・・・あの頃は楽しかったなあ。
先輩はあの時、こう言った。このまま若ければいいのに。引退なんてゴメンだ、と。」
寺島「この状況で、よくそんな話ができるね・・・」
黒烏龍茶をついでやるさくら「それが、今や二人共高校バレーの監督だ。」
寺島「旧交を温めに来たわけじゃないんでしょう?」
さくらが「パンパン」と手を叩く。
山村が、台車に積まれた2億円をひいて入ってくる。
ライト「なんじゃあ・・・!?」
ざわつく監督たち。
さくら「ここにいるのは18人だったっけ?・・・じゃあ一人あたり1000万やるわ。」
ライト「買収すんのか!」
さくら「勝てとは言わない。鮎原姉妹と戦ってくれるだけでいい。どう?悪くはない話でしょう?」
寺島「・・・この部屋に、あなたの口車に乗るような監督はいないわ・・・みんなお金じゃ変えられないもののためにバレーを・・・」
監督A「乗った・・・!」
ライト「おい、福岡県・・・!」
監督B「私もやります!」
ライト「愛知県、お前も裏切るのか・・・!」
監督B「そもそも、私たちの上京の理由は鮎原姉妹と戦いたかったからだし・・・その上お金ももらえるなら、ラッキーかなって・・・」
監督A「それに、裏切るもなにも、この席はただの親睦会でしょう?寺島監督の意向に従わなければいけないわけじゃないし・・・大阪府はどうするの?」
気まずそうに寺島の方を見ながらライト「・・・しかたね~な・・・」
さくら「おっライトくんいいね~!お姉さんおまけしちゃう!2束もってけドロボー!」
ライト「にゃ~はっは~オレに~!任せとけ~!!」
札束に群がっている監督たちを見つめる寺島「・・・地方18鎮諸校はこれで崩壊ね・・・」
・
詩留々高専
りかぜが今日の対戦カードの一覧表をスバルに持ってくる。
スバル「りかぜちゃん、どうしたい。」
りかぜ「・・・異常事態よ・・・」
一覧表を受け取るスバル。
りかぜ「・・・地方の強豪校が一斉に聖ペンシルヴァニア大附属に試合を申請してるわ・・・」
スバル「これじゃあボスラッシュじゃねえか・・・でも、まあいいんじゃねえの?
これで、さすがの鮎原もかなり消耗するから、うちらにも勝ち筋ができるだろ。
りかぜちゃんの思惑通りだよ・・・」
りかぜ「それならいいのだけど・・・問題は万が一、聖ペンシルヴァニアが負けた時よ。」
スバル「それはそれで、強敵がいなくなってラッキーじゃん。」
りかぜ「・・・いや・・・白亜高校が、霧ヶ峰漸新と暁工業を動かしたのに、我々が聖ペンシルヴァニアと戦わなかった場合・・・契約違反として罰則金を請求してくる可能性がある・・・いや、可能性じゃない・・・狡猾な吹雪さくらは必ずそう出てくる・・・」
部員「主将、白亜高校からお電話です・・・」
りかぜ「ほら・・・」
電話に出るスバル「もしもし・・・」
さくら「あ~こんちは。白亜高校監督の吹雪なんですが・・・おたく・・・早く鮎原姉妹と戦ったほうがいいんじゃない?こっちは金払って、大阪と長野を突っついたんだからさ・・・これで、よくわからない学校に鮎原姉妹が負けちゃった日にゃあ、困るわけよ。」
スバル「そ・・・そんなん仕方がないでしょ!」
さくら「うん・・・確かに仕方がない。だから、罰則金なんてケチくさいことは言わないわ。うちの学校が買収に使ったお金だけ保証してくれればいいから。」
スバル「はあ・・・?一体いくらよ・・・」
さくら「2億円。」
がなり立てるスバル「そんな金、高校生が払えるわけ無いでしょう・・・!」
受話器をスバルから奪うりかぜ。
りかぜ「はい・・・分かりました・・・」
電話を切ってしまう。
スバル「ちょっとりかぜちゃん・・・!」
りかぜ「・・・主将。こういう時こそ冷静に。私たちはもう相手の毒をくらってしまった。
こうなれば相手のゲームに乗っかるしかない・・・2億失うか・・・6億を得るかのゲームに。」
スバル「・・・策はあるの?」
りかぜ「鮎原姉妹が今日の激戦を持ちこたえてさえくれれば・・・」
りかぜ「こちらが我がチームの練習場です。」
ちおり「ひれー!!」
体育館には様々なバレーボールのトレーニングマシーンが並んでいる。
花原「これ、全部作ったの・・・?」
りかぜ「うちは工科系なのでわけはないわ・・・
実は、本日最新作が完成したの。
どうです?少し遊んでいきませんか・・・?」
ちおり「いいの?わーい!!」
りかぜ「花原先生もどうぞコートへ・・・」
花原「え・・・?いやちょっとなんか嫌な予感が・・・」
りかぜがリモコンのボタンを押すと、ひときわ巨大なバレーボールマシンがこちらに動いてくる。
花原「あれは・・・」
りかぜ「仮想海野美帆子バレーボールロボよ。」
・
応接室
海野「あ・・・あたし、そろそろ帰るね・・・!」
スバル「あんたがこんな卑怯な手を打たないことは私はよく知っている・・・
海野さんはバレーボールバカだからね。
あんたを裏で操っている黒幕がいるはずだ。誰?」
海野「いないよ、いないって・・・!」
スバル「こっちだってせっかく作ったバレー部を廃部させたくねえんだ・・・
可愛い後輩たちに残していきたいんだよ。
廃部なんて・・・もうゴメンなんだ。」
胸が痛む海野「・・・スバルちゃん・・・うん・・・わかった・・・」
その時、応接室の扉が開く。
りかぜ「・・・白亜高校監督・・・吹雪さくら・・・元日本代表」
そう言うと、ボロボロになったちおりと花原を放り投げる。
海野「・・・・!生原さん、花原さん・・・!」
ちおり「にゃ~・・・」
花原「海野ロボに殺されかけた・・・本気の海野さんがあんなに強いなんて・・・」
二人に駆け寄る海野「一体二人に何を・・・!?」
りかぜ「ただのバレーボールの練習よ。」
スバル「おいおい・・・元全日本が監督にいるのか!」
りかぜ「素行不良ですぐに球界を追い出されたみたいだけどね・・・
勝利のためには手段を選ばない恐るべき参謀よ。」
スバル「お前より恐ろしい参謀はいないだろ。」
りかぜ「・・・まあね。」
スバル「・・・で?こいつらの目的は?心を読んだんだろ?」
りかぜ「海野は、予想通り私たちと鮎原を戦わせたかったみたい。
花原は、うちの学校を受験したかったらしいんだけど、逮捕歴があって受験資格なし。
未練があったみたい。
生原は、なんかよくわからないけど、ただ付いてきた・・・」
花原「なんで、そんなこと分かるの・・・!?」
りかぜ「・・・遺伝子操作の影響かわからないけど・・・私は人の10倍“勘がいい”の。」
震える花原「か・・・怪物だ・・・」
りかぜ「中学生で原子炉作ったあなたに言われたくないわ・・・
で、ボス・・・どうしますか?」
床に膝をつく海野「スバルちゃん、陥れるような真似をして本当にごめん・・・!
謝るから、許してください・・・!」
スバル「・・・顔を上げなよ海野さん・・・それに・・・白亜高校の提案も結構悪くない・・・」
海野「え?」
りかぜ「さすがボス。聡明ですわ。
聖ペンシルヴァニアには現在の我々がフルパワーでかかっても勝利は難しい・・・
そして、それは白亜高校も同じ・・・
しかし、我々と白亜高が協力して、鮎原姉妹を迎え撃てば・・・」
海野「それって・・・」
スバル「いいぜ、海野部長・・・鮎原姉妹と戦ってやる。ただし、ひとつ条件がある。」
海野「え・・・?」
スバル「鮎原と対戦する代わりに、その次は白亜高校と戦わせてほしい。
・・・どうだ?」
海野「でも・・・私の一存では決められない・・・みんなと相談して・・・」
りかぜ「白亜高校の部長は吹雪さくらではなく、海野さん・・・あなたでしょ?
あなたが今、決めなさい。」
誓約書を机に置くりかぜ。
スバル「でなければ、この話は無しだ。」
海野「・・・・・・。」
花原「ダメよ海野さん・・・!こういうシチュエーションでサインをしてよかった試しがなかったってうちの母さんが言ってたわ・・・」
りかぜ「・・・あなたのお母さんのように借金をするわけではないわ。」
花原「この子怖い・・・!全部心を読んでくる・・・!」
海野「・・・・・・。」
スバル「別に下心なんかないよ。あんたらの策略に乗っかってやったほうが、こっちも得だって思ったんだよ。どうすんだい?」
ちおり「海野さんはどうしたいの?」
海野「・・・わたしは・・・人を騙すようなことはしたくない・・・」
ちおり「なら、相手を信じてあげたら?」
海野「生原さん・・・
うん・・・そうだよね・・・」
サインをする海野。
りかぜ「では、こちらに主将のサインも。」
スバル「おうよ。」
サインをするスバル。
りかぜ「これで、詩留々高専と白亜高校の同盟が結ばれました。」
握手を求めるスバル「よろしくな、海野さん!」
海野「・・・うん・・・!」
・
白亜高校
生徒会室
華白崎「詩留々高専と同盟を結んだんですか?」
さくら「・・・うん。これが誓約書。」
華白崎「・・・白亜高校は、詩留々高専が聖ペンシルヴァニア大附属を倒せるように最大限援助する義務を負う・・・具体的には、聖ペンシルヴァニア大附属に、霧ヶ峰漸新と暁工業をぶつけるよう裏工作をすること。それが成功の後、詩留々高専は約束を果たし、鮎原姉妹と戦う。」
さくら「・・・ちょっと様子を見てこさせるはずが、相手にしてやられたわ。」
華白崎「これじゃあ、同盟どころか、詩留々が聖ペンシルヴァニアに勝利するお膳立てをうちがやるだけではないですか・・・」
さくら「ほんで、もし詩留々が勝っちゃったら6億円も取られちゃうしな。」
海野「・・・みんな・・・本当にごめん・・・」
華白崎「花原さん・・・あなたが部長についていながら、なぜ同盟を止めなかったんですか・・・?」
花原「・・・いや、止めようとはしたんだけど・・・向こうにとんでもないやばい奴がいて・・・」
華白崎「暴力で脅されたんですか?それなら、こんな契約は無効だ・・・」
花原「そういうのじゃない・・・なんというか・・・桁違いの天才の参謀がいるのよ・・・」
さくら「天才少女はめぐなちゃんでしょうに。」
花原「・・・いや・・・あのりかぜちゃんこそ本当の天才・・・」
ショックを受ける華白崎「・・・あの花原さんがそんなことを言うなんて・・・!」
さくら「マッスルくん。」
山村が出場選手の名鑑をめくる。
山村「むう、詩留々高専に網野りかぜなんていう選手はないないぞ・・・」
花原「マネージャーらしいわ・・・それに、あの子のことなら、16年前のニュートンや日経サイエンスを読んだほうが早い・・・」
科学雑誌を渡す花原。
華白崎「ウーマン・ジェネティック社が代理出産マシンで遺伝子操作された天才児を開発・・・」
花原「その研究で生まれた子が彼女よ。」
さくら「クローン人間かよ・・・すげえ時代だなあ・・・ちょっと前に羊が成功したばかりだろうに。」
花原「お母さんの子宮で生まれてきた私たちとは頭脳のスペックが違うのよ・・・」
さくら「花原さん。
私、この分野詳しくないんだけど、クローン羊のドリーちゃんがほかの羊と比べて優っていたところってあんの?」
花原「・・・・・・ない。」
さくら「そんなもんよ。その天才少女・・・この私がギャフンと言わせてやるわ。」
・
横浜の中華街
各地での激戦を制した全国の強豪校18校の監督が会食をしている。
会場に入ってくるさくら「・・・鮎原姉妹が関東エリアを蹂躙しているっていうのに、地方の連中はのんきに食事会?」
奥の席で飲茶を食べている霧ヶ峰漸新高校バレー部監督寺島明日香は、おっとりした美人監督。
「いや、なかなか東京に来ることないから・・・
久しぶりだね、さくらちゃん。まさか、監督をやるとは思ってもなかったよ・・・」
メニューを持った店員がさくらに近づく。
さくら「紹興酒。」
店員「かしこまりました。」
椅子を勝手に持ってきて、席に着くさくら。
北京ダックを食べる暁工業バレー部雷都光「おいおい、あんたを招待した覚えはないで・・・」
さくら「悪巧みに私も混ぜてよ。」
寺島「いや、本当にただの親睦会だよ。もう地方のチームは私たちしか残っていないから、じゃあみんなで上京しようかって呼びかけたんだ。」
さくら「・・・まあ、お人好しな先輩はそうだろうけど。ほかの監督方は、どう相手を出し抜いてやろうかって目をギラギラさせてるんじゃないかしら?」
呆れるライト「それはあんたやろ・・・」
寺島「こっちは仲良くバレーを楽しんでいるからさ・・・誰が勝っても恨みっこなし。」
さくら「負けたら廃部になるのに?
大人が楽しむのは結構だけど、それじゃあ部員に申し訳が立たないでしょうよ。」
突然笑い出すライト「にゃ~はっはっは!廃部がなんじゃい!
まだ2勝しかしとらん、あんたと違って、こちとら強豪校なんじゃ。
うちらは少なくとも10勝以上はしとる・・・!廃部期間はいくらやと思う?」
さくら「・・・3光年?」
ライト「姉ちゃん、それは距離の単位や。80日間や。そんなん部員の喫煙発覚より可愛いもんやで!」
寺島「うん・・・だから、ここまで来たら私たちにとっては普通のバレーの大会なの。」
さくら「なるほど・・・普通のバレーの大会か・・・」
ライト「あんたの得意な悪知恵なんか必要あらへんってこっちゃ!紹興酒代は払って帰りや・・・」
さくら「普通の大会だというのに、そろいもそろって鮎原に恐れをなす腰抜けってわけね・・・」
ライト「なんやと~!!」
さくら「そうでしょうよ。相手が6億だなんてとんでもない人参をぶら下げて挑発しているのに、あんたたちは誰も率先して、東京を撃破しようともしない。いい?地方のあんたたちは首都東京になめられてんのよ。」
ライト「大阪が地方なわけあるかい!地方ってのは、長野みたいなスキー場しか切り札がないところを言うんや!」
傷つく長野県の寺島「・・・ライトくん・・・」
ライト「すまん・・・言いすぎたわ・・・軽井沢も善光寺もいいところや・・・」
お冷を飲んでから寺島「昔から変わってないね、さくらちゃん・・・そうやって私たちをけしかけて、聖ペンシルヴァニアと戦わせたいんだろうけど・・・私もそこまでお人好しじゃないよ。誰と戦うかは好きにさせて欲しい。」
椅子を動かし寺島の隣に座るさくら「先輩とも、もうずいぶん長い付き合いになりますよね・・・
変わらずお綺麗で・・・私が全日本でぺーぺーだった頃は、先輩がプロの世界を教えてくれた。
よく、食事にも連れてってくれたし・・・あの頃は楽しかったなあ。
先輩はあの時、こう言った。このまま若ければいいのに。引退なんてゴメンだ、と。」
寺島「この状況で、よくそんな話ができるね・・・」
黒烏龍茶をついでやるさくら「それが、今や二人共高校バレーの監督だ。」
寺島「旧交を温めに来たわけじゃないんでしょう?」
さくらが「パンパン」と手を叩く。
山村が、台車に積まれた2億円をひいて入ってくる。
ライト「なんじゃあ・・・!?」
ざわつく監督たち。
さくら「ここにいるのは18人だったっけ?・・・じゃあ一人あたり1000万やるわ。」
ライト「買収すんのか!」
さくら「勝てとは言わない。鮎原姉妹と戦ってくれるだけでいい。どう?悪くはない話でしょう?」
寺島「・・・この部屋に、あなたの口車に乗るような監督はいないわ・・・みんなお金じゃ変えられないもののためにバレーを・・・」
監督A「乗った・・・!」
ライト「おい、福岡県・・・!」
監督B「私もやります!」
ライト「愛知県、お前も裏切るのか・・・!」
監督B「そもそも、私たちの上京の理由は鮎原姉妹と戦いたかったからだし・・・その上お金ももらえるなら、ラッキーかなって・・・」
監督A「それに、裏切るもなにも、この席はただの親睦会でしょう?寺島監督の意向に従わなければいけないわけじゃないし・・・大阪府はどうするの?」
気まずそうに寺島の方を見ながらライト「・・・しかたね~な・・・」
さくら「おっライトくんいいね~!お姉さんおまけしちゃう!2束もってけドロボー!」
ライト「にゃ~はっは~オレに~!任せとけ~!!」
札束に群がっている監督たちを見つめる寺島「・・・地方18鎮諸校はこれで崩壊ね・・・」
・
詩留々高専
りかぜが今日の対戦カードの一覧表をスバルに持ってくる。
スバル「りかぜちゃん、どうしたい。」
りかぜ「・・・異常事態よ・・・」
一覧表を受け取るスバル。
りかぜ「・・・地方の強豪校が一斉に聖ペンシルヴァニア大附属に試合を申請してるわ・・・」
スバル「これじゃあボスラッシュじゃねえか・・・でも、まあいいんじゃねえの?
これで、さすがの鮎原もかなり消耗するから、うちらにも勝ち筋ができるだろ。
りかぜちゃんの思惑通りだよ・・・」
りかぜ「それならいいのだけど・・・問題は万が一、聖ペンシルヴァニアが負けた時よ。」
スバル「それはそれで、強敵がいなくなってラッキーじゃん。」
りかぜ「・・・いや・・・白亜高校が、霧ヶ峰漸新と暁工業を動かしたのに、我々が聖ペンシルヴァニアと戦わなかった場合・・・契約違反として罰則金を請求してくる可能性がある・・・いや、可能性じゃない・・・狡猾な吹雪さくらは必ずそう出てくる・・・」
部員「主将、白亜高校からお電話です・・・」
りかぜ「ほら・・・」
電話に出るスバル「もしもし・・・」
さくら「あ~こんちは。白亜高校監督の吹雪なんですが・・・おたく・・・早く鮎原姉妹と戦ったほうがいいんじゃない?こっちは金払って、大阪と長野を突っついたんだからさ・・・これで、よくわからない学校に鮎原姉妹が負けちゃった日にゃあ、困るわけよ。」
スバル「そ・・・そんなん仕方がないでしょ!」
さくら「うん・・・確かに仕方がない。だから、罰則金なんてケチくさいことは言わないわ。うちの学校が買収に使ったお金だけ保証してくれればいいから。」
スバル「はあ・・・?一体いくらよ・・・」
さくら「2億円。」
がなり立てるスバル「そんな金、高校生が払えるわけ無いでしょう・・・!」
受話器をスバルから奪うりかぜ。
りかぜ「はい・・・分かりました・・・」
電話を切ってしまう。
スバル「ちょっとりかぜちゃん・・・!」
りかぜ「・・・主将。こういう時こそ冷静に。私たちはもう相手の毒をくらってしまった。
こうなれば相手のゲームに乗っかるしかない・・・2億失うか・・・6億を得るかのゲームに。」
スバル「・・・策はあるの?」
りかぜ「鮎原姉妹が今日の激戦を持ちこたえてさえくれれば・・・」
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