メジャーリーグ2

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆」

 花は桜木、男は石橋!!

 アメリカって流石映画を商売にしているだけあって、日本の漫画やテレビ番組くらい多様化してます。この映画も日本の感覚では「映画館で観に行く内容かよ?」って感じかもしれませんが、めちゃくちゃ面白いのは事実。
 そもそもアメリカのテレビって、最近は『宇宙空母ギャラクティカ』のような大作映画顔負けの素晴らしいテレビドラマを放送しているものの、日本に比べればかなりコンテンツ不足(=通販とプロレスしかない)なイメージがあって、それを補うのが「映画館で映画を見に行く」という風潮だったように思います(もしろん80年代あたりにテレビドラマのホームコメディ路線が成功してブームになったことは知っています)。

 とにかくCG技術による驚愕的映像美があるわけでも、崇高な文学性があるわけでもないけれど・・・でもこんな映画があっていい。
 俺たちの国はシネマを作ってるんじゃねえ、ムービーよ!っていうアメリカの叫びが聞こえてきそうです。嘘だけど・・・

 この映画は脚本はとても単純でありきたりなんだけど、それを補って余りあるのが、まるでギャグ漫画のような強烈なキャラクター達。
 メイン格のどれもが「キャラ立ち」しているので、話を追いやすく、あっという間に映画は終わってしまいます。「え?もう終わり!?」って感じでした。
 一応、一時的なスランプになった「ワイルドシング」の愛称を持つピッチャー「リックボーン」選手の復活劇なんですが、このラインを映画のメインとして個々のエピソードを収斂させているわけではなく、どちらかというと群像劇スタイル。
 悪く言えば『ナイトミュージアム2』のようにとっ散らかっちゃっているんですけど、よく言えばめちゃくちゃ楽しい!

 これは日本びいきじゃないですけど、本作で最も強い印象を残しているのはやはり石橋貴明さん演じる、東京ジャイアンツからの移籍選手「タナカ」でしょう。
 この映画にはびこる海千山千の強烈キャラどもに引けを取らない、あの日本人と言う設定「特攻、侍魂」を十二分に生かしたクセの強さ。このキャラに石橋さんを選んだスタッフ。相当のキレ者です。

 メジャーリーグ制作スタッフ「このキャラを演じられるのは、地球でたった一人・・・タカアキ・イシバシ!」(←勝手な妄想) 

 メジャーリーガーの中に入っても違和感のないほどの長身で、帝京高校野球部の秘密のままで終わった秘密兵器で、テレビのスタジオのカメラを暴れて破壊する破天荒な石橋さんは、まさにこの役をやるために生まれてきたような存在。
 なにより成績が不調になってガッツを失った「インディアンズ」の起爆剤になったのは間違いなく、ガッツ余りあるタナカですからね。こんな重要な役はないです。
 というか、フェンスによじ登ってホームランの打球をアウトにしちゃってルール的にいいの??(笑)
 
 このようにキャラクターたちの個性の強さに惹き付けられた・・・と言う点で似ているのが、2008年のナンバー1邦画だった『クライマーズ・ハイ』。キャラの個性は時に脚本をカバーしうるほどの映画の大きな魅力。

 またdescfは自身のサイトにおいて、この映画のインディアンズのカルトなファンを鋭く分析していて、それについて私が言う余地はないのですが、かつてスポーツ(ギャグ)漫画を描いたことのがある私が思ったのは、試合を実況するアナウンサーの存在の大きさ。
 この呑んだくれでおバカで熱い「実況、解説役」のおっさんが、この映画を盛り上げているんですよね。スポーツものにおいて実況、解説は重要な役どころだと思います。

 最後にこの映画・・・出演者も豪華だけど、日本語吹き替えもかなり豪華。
 それにタカさんが、『ラストサムライ』みたいに「逆吹き替え」にならなくてよかった~・・本国公開時でもタカさんのセリフはそのままなんでしょうね。下に英語の字幕でていたから。

 じゃあおそらく「くたばりやがれ、このクソババア」も・・・

自己組織化について

 「自己組織化」とは、そもそも生物が自発的に秩序を形成するという考え方で、そこには神の意思も、生物の意思も、遺伝子の意思もありません。
 ただ生物には己を秩序化する傾向があるのです。ちょうどただの物質にすぎない「雪」が美しい結晶を作るように・・・

 福岡伸一さんが『生物と無生物のあいだ』で取り上げた細胞膜の振る舞いもこれに当たるし、アミノ酸が繋がって一気にタンパク質の立体的な形を決めてしまうのも、この自己組織化による振る舞いの好例です。
 なにしろタンパク質の折りたたみ方をコンピュータに計算させたら1の後ろに0が27個付くほどの膨大な年を必要としてしまいます。宇宙の歴史の何倍の時間なんだ~・・・!

 このような自己組織化の概念の延長、もしくは複雑系数学からの合流によって、考えられているのが「創発」というこれまた興味深い現象です。
 これはイワシの大群がまるで一つの生命のように泳ぐこと(映画の『ディープブルー』でありましたよね)や、渡り鳥のV字飛行などがそうなのですが、彼らはあのような美しい隊形を、いちいち考えて作ってはいません!誰一人意図せずにあの形になったのです。

 渡り鳥には大変失礼ですが、「こうやって飛ぶとエネルギーの無駄がなくて合理的だよな」と考える知能は、彼らには(おそらく)ないのです。
 イワシの例で言うならば、彼らは「群の仲間の近くにいた方が安全だよな。あいつの後ろにぶつからないように泳いでこう」という(本当はこうも思ってませんよ!!)ごくごく単純な“プログラム”に従って動いているだけです。
 決して戦闘機ブルーインパルスの曲芸飛行のように「このフォーメーションでいっちょ行くか!」という打ち合わせなどしていません!!

 個体の単純なプログラムが、「意図せぬ結果」として集団の振る舞いを複雑化し、まるでそこに一つの知性があるように秩序化させてしまう。そんな不思議な現象が創発なのです。

 「んな馬鹿な」と思うかもしれませんが、実は我々もその現象に当てはまります。駅の自動改札ゲートなどがそれです。
 自動改札口がガラガラで空いている状態では、どの改札も出ようが入ろうが自由で秩序は見られません。
 しかし改札口が混雑してくると、「ホームに入る改札」と「ホームから出る改札」がなんとなく自然に決定され、その流れは固定化されます。
 一度出口に“なんとなくなった”改札は、ホームから出ようとする人が次々に並んでいくので、この出口となった改札から入ろうとする人は、よほどのことがない限り逆流して割りこむことはできません。
 仮にそんなKYな人がいても「あっちの改札からみんな入ってるんだからあっちに並んでよ!」と怒られるでしょう。
 このように個別単位のランダムかつ単純な振る舞いが、改札を割り振り「スムーズな通行」と言う全体における安定した秩序を生む。これが創発現象です。

 創発で重要な点は、集団を支配するリーダーが存在しないこと。結果的に出口になった自動改札から最初に出た人は、「この改札口をみんなの出口にしよう」などとは考えていません。
 
 私はこの概念は確かに「私の自由意思って一体・・・」と落ち込む概念だとは思いますが、それ以上に不思議で面白くワクワクする概念だと思っています。

 意思があるものも無いものも、命あるものもないものも・・・小さなカオスが大きなコスモスを形成する。ロマンチックな話だと私は思います。

『どこまで描ける生物進化』

 現在(初版発行95年当時)の進化論の可能性と限界について解りやすく、かつ正確にまとめられているまさに名著。
 194ページ「今後の課題」と197ページからの「進化思想」は必見!

 こんな本が絶版なんて信じられない。私は初版本を大学で借りて読んだのですが、その情報の質の高さに永久保存決定。しかし絶版の為本屋で注文が出来ず、結局はネットで取り寄せて購入しました。

 こういう本を中学校や高校の図書室に置いてほしいな。・・・というか理科や生物の教科書にしてほしいな(でも宇佐美氏によれば日本の進化論教育は大学でもお座なりで未成熟らしい。あれから15年・・・状況は改善されたのだろうか?)。

 著者の宇佐美正一郎氏は初版発行の段階では存命だったのですが、購入した第四版の奥付をみると、この本を執筆したその年に82歳で亡くなっています。しかし82歳でこんなすさまじい内容の本が書けるという、宇佐美さんの脳の若さは驚くべきものです。脳は使い続ければ全然老けないんですね。
 そう考えると私はまだ60年近く生きられるし、物を書くこともできる。

 宇佐美さんのおそらく最後の作品を参考に私が書いたバイオロジーは、この本に比べればウンコみたいなものですが、それでも希望が湧いてきます。
 「生物学者でもない田代の書いたものなんてうさんくせえ!読めるか!」と言う方はぜひ、この本を読んでみてください。
 200ページで2300円と、700円で売っている新書と比べればやや高いですが、これ一冊で進化についてほとんどのことが解る(まじです。たった一冊で網羅ですよ!)と言うなら全然安いというもの。

 繰り返しになりますが、82歳でこの内容・・・おそるべし・・・

「進化 仮説か真実か」 完成!

 福岡伸一批判で中学時代のサイエンスライター魂が呼び覚まされ、描きかけの『80日間宇宙一周』をほっぽり投げて(K氏すまん!)進化論のページを先に作ってしまったのですが、いや~想像以上に大変な作業でした・・・
 とにかく進化については、かつてdario氏が誤解したことがあったので、丁寧かつ慎重に執筆しました。
 ・・・しかしこんな文章量になるとは思ってもなかった。一冊の本になるぞコリャ。

 とにかくこのサイトの「バイオロジー」はお得ですよ。進化論に関する関連書籍を買わずに、進化のメカニズムがタダで解りますから!大体だけど・・・
 数学がダメなので「ハーディ・ワインベルグの法則」は華麗にスル―・・・でもあれ数式難しいわりに、大したことは言ってないと思う(暴言)。
 
 そういえば、ハクスリーは「ダーウィンのブルドッグ」、ドーキンスは「ダーウィンのドーベルマン」としてダーウィニズムを擁護したけど、私はどうだろう・・・?「ダーウィンのチワワ」くらいにはなれただろうか・・・?

 最後のページは半分私の持論なんで、かなり怪しいんですが(読みとばしちゃっていいです)、その他はたくさんの本を同時読みして、どの本にも書いてある内容だけを厳選しましたから間違ってはないと思いますよ(中学時代にノートに書いた私の本もかなり参考になった!)。

 あと本当は「ミーム=文化の遺伝」とかも取り上げたかったんですけど、ちょっとミームは私も正確に理解してないところがあるので、そういう面白くも危ない橋は渡りませんでした。

 さ~て漫画だ、漫画描かないと・・・

 追記:そういやサイト開設一周年だ。アクセス数4500って多いのだろうか・・・カウンターつけたのは秋だったけど・・・

『ウィアード』

 ――発達した科学は魔法と見分けがつかない。 アーサー・C・クラーク

 Tさんとの合作漫画『ウィアード』が完成しました!

 タイトルの「ウィアード」とは怪奇小説の「怪奇」と言う意味の英語。フランケンシュタインの怪物やドラキュラ、ウィッチなどが出てくるのでそんな題名に決めました。

 いや~Tさん・・・スクリーントーンの技術が半端ねえ・・・!「へ~少年漫画ってそうやって貼るんだ・・・ふむふむ」と勉強させていただきました!トーンを効果的に貼ることで絵ってここまで印象を変えるんですね!すげえ!

 最終チェックについてはもうほとんど文句なし。私の想像をはるかに凌駕する完成度でした。忙しい中こんなにトーンを貼るのはかなり大変だったでしょう。本当にご苦労様でした。

 私が最後に行なったのは、いくつかのセリフを加筆訂正、集中効果線を一コマだけ追加、絵については本当は他人が手を入れちゃダメだとは思うけど、一コマだけ。生徒に責められて魔女ファオナ先生が焦っている様子を出すために、先生の頬に平仮名の「し」のような汗をひとつ描き加えたくらいです。
 つまり大したことはやってないってこと。

 とにかくこれでいきましょう!俺たちやるべきことはやったよ!ダメでも悔いはない!・・・よね??
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