『ラストパーティ』脚本㉖

夕方
暗視ゴーグルをつけて付近の空をパトロールするハル。
何かに気づく。

作戦会議室
部屋に入ってくるヨシヒコ「・・・スパルタン、仕事だ。」
草薙「いよいよか、待ちかねたぜ。」
ヨシヒコ「付近に偵察兵が3人来たらしい・・・ローランド」
壁に寄りかかっていたが、呼ばれて立ち上がるローランド
「生け捕りだな。敵の野営地を吐かせよう・・・」
帽子をかぶり部屋から出ていく2人。
ヨシヒコ「ヴィンツァー卿。念のため、城内の警備をお願いできますか。」
ヴィンツァー「もちろん・・・いこうシルビア。」
シルビア「ええ・・・」



茂みに隠れる草薙とローランド。
ローランド「お前・・・一撃で相手をのせるか?」
草薙「任せてください・・・」

ガリア軍の偵察兵「どうだ?」
双眼鏡を除く偵察兵「・・・おかしい・・・やけに静かだ・・・
王立騎士団が逃げ出したら今頃はパニックになっているはず・・・」
兵士「・・・空城の計か?」
兵士「馬に乗って突撃しかできないバカなベオウルフがそんな策略はできんだろう・・・」
兵士「しかし、先日の鉄のドラゴンのこともある・・・油断しないほうがいいだろう・・・」
その時、兵士たちに草薙が近づく。
剣に手をかける兵士「なんだ、あの男は?」
胸を叩く草薙「うっほうっほ・・・」
兵士「なんだ・・・ただの野生のゴリラか・・・」
その瞬間、兜ごと敵兵をぶん殴る草薙。
一瞬で二人をノックアウトさせてしまう。

しかし、一人が馬に乗って逃げてしまう。
草薙「すまねえ一人逃がした・・・!」
馬に向かって銃をかまえるローランド「静かにしろ!」
狙いを合わせて引き金を引く。
馬から落ちる兵士。
草薙「すげえ・・・」
ローランド「失敗した。全員生け捕りのはずが、一人殺しちまったぜ・・・
お前はゴリラの真似が下手だな。」
草薙「え・・・師匠に教えてもらったようにやったんですが・・・」
ローランド「ドラミングは手は開くんだ。」
草薙「押忍、勉強になります・・・」



エゼルバルド城
作戦会議室
ローランド「連中の野営地が分かったぞ・・・」
ヨシヒコ「さすがだ・・・」
ローランド「部隊を500人ずつに分けて6箇所の村で野営している・・・」
ルナ「すでに6つの村は虐殺されてしまったのね・・・ひどい・・・」
ローランド「最後のひとつは、これから皆殺しにされるところだった・・・」
ヨシヒコ「・・・・・・。」
草薙「なので、壊滅させてきた。カタパルトってやつも燃やしてきたぞ。」
ローランド「このバカの無謀な行動を許して欲しい。
だが天候が不安だったんでな・・・雨が降る前に火をつけさせてもらった・・・」
草薙「村民は全員救助して城に連れてきたぜ。今、シルビアが手当をしている。」
ローランド「この男・・・実力は本物だ。格闘戦になれば一騎当千・・・適う者はいまい・・・」
草薙「し・・・師匠・・・嬉しいっす!」
地図にバツを付けるヨシヒコ「これで残るは2500人・・・黒神警部補。」
黒神「ん~っふっふ・・・ずいぶん派手にやりましたね・・・
これでこちらの戦力が相手に伝わった・・・
相手は警戒し、戦力をひとつにまとめるはずだ・・・」
ヨシヒコ「どの村かわかりますか?」
黒神「地理的にハッピーハッピー村でしょう。
すべての村の中央にありハブになっている・・・
まあ、私ならば高台のヒナガタ村に集めますが・・・
崖の上にカタパルトは引き上げられないでしょう・・・」
ヨシヒコ「なぜヒナガタ村なんですか・・・?」
黒神「ん~っふっふっふ・・・」



雨雲が発達し、とうとうにわか雨が降ってくる。
強い雨が地面を叩きつける。

ハッピーハッピー村
雨を払ってテントにかけてくるジルドレイ
「くそが!もう少し早く雨が降れば、第6師団は焼き討ちされずにすんだのに!
ついてねえ・・・!」
軍曹「すべての部隊は、我が第1師団に合流させました・・・!!」
ジルドレイ「ごくろう・・・軍曹・・・おめえはどう思う?」
軍曹「500人の一個師団が何者かによって壊滅させられたのですから、ここは兵を集め大勢を立て直すのは正しい判断かと。さもなければ、ひとつずつ師団を失います。」
葉巻に火をつけるジルドレイ「・・・だが、嫌な予感がする・・・こういうのは結局は運なのだ。
わかるだろう、軍曹。昨日までは連戦連勝・・・しかしここに来て500の兵を失った。
今、俺たちはツキがない・・・」
空を見上げるジルドレイ。
軍曹「隊長は天空の神を信じておられるので。」
ジルドレイ「・・・まあな。」
そう言うと椅子に座り、机に肘をついて考え込むジルドレイ。
軍曹「・・・隊長・・・考えすぎでは・・・」
ジルドレイ「大切な兵の命を預かっているんだ・・・考えすぎることはなかろう。座りない。」
椅子に座る軍曹「はい・・・」
ジルドレイ「我々の弱点はなんだと思う?」
軍曹「・・・う~ん・・・」
ジルドレイ「考えるんだ・・・なぜ、第6師団は敗れた?」
軍曹「・・・王立騎士団はまだエゼルバルドに駐留している・・・?」
ジルドレイ「・・・かもしれん・・・」
軍曹(まだ納得してないな・・・どうしよう・・・隊長の慎重さにも困ったもんだ)
ジルドレイ「しかし、この雨では進軍は困難だ・・・
ブリジッドではこの時期にこんな大雨が降るのかい・・・」
軍曹「ガリア大陸と気候が違いますからね・・・」
ジルドレイ「それだ。」
軍曹「え?」



デスフラッド川
河川がせき止められている。
どんどん増水していく河川。
濡れながら叫ぶ魔物たち。

エゼルバルド城内の広場
黒神「ん~ふっふ・・・いい時間だ・・・」
黒神に頷くヨシヒコ。テスタメントの方を向いて叫ぶ。
「合図を!」
テスタメントが杖を振り上げる。

エゼルバルド上空に豪音が鳴り稲妻が光る。
ゼリーマン「今だ!決壊させろ!!」
ミノタウロスやサイクロプス、サイコゴーレムらが力づくで堰を切ってしまう。
鉄砲水が発生し、下流の村に襲いかかる。



ハッピーハッピー村
ジルドレイ「地図をよこせ。」
机に地図を広げるジルドレイ。
自分のいる村の近くに河川があることに気づく。
ジルドレイ「・・・やられた!!すぐに各師団引き返させろ!!」
軍曹「全軍撤退!!」



びしょびしょになって高台へ逃げていくガリア軍。
高台の上にはすでにモンスターが待ち構えている。
ゼリーマン「デスフラッド川が氾濫したらここに逃げるしかねえよな?」
ガリア軍兵士「ま・・・魔物だ!!」
ゼリーマン「降参するか?それとも痛い目にあいたいか?」
剣を抜く兵士「おのれ!成敗してくれる・・・!」
高台に向かって襲ってくるガリア軍の残党。
ゼリーマン「生粋のドMのようだ・・・やってくれ。」
すると、ミノタウロスたちが岩石を高台から落下させる。
岩石は斜面を転がり兵士たちを襲う。
兵士「うあわああ!!」
しかし、斜面を下りて逃げようにも、低地は濁流となっており行き場がない。
ある者は岩石にぶつかり、ある者は川に落ちていく。
兵士「ぎゃあああ!」

森を逃げ惑う兵士「助けてくれ・・・!」
その兵士の肩を弓矢で射るメド。
倒れる兵士「ひいい!石化はやめてくれ・・・!」
兵士にささやくメド「ボスに伝えなさい・・・
今度わたしたちの住処を戦場にしたら、全員セメントにしてやるって・・・」
兵士「わ・・・わかった・・・!」
恐怖の雄たけびをあげて一目散に逃げていくガリア軍。
サイクロプス「モンスターの勝利だ!」
歓声をあげる魔物たち。
遠くで見つめあうゼリーマンとメド。



作戦会議室
ヴィンツァー「ハッピーハッピー村の野営地は壊滅!作戦成功です!!」
ヨシヒコ「よし・・・」
シルビア「カタパルトのほとんどは土石流で破壊。兵の半分も流されたそうよ。」
ヨシヒコ「よし・・・」
草薙「この機を逃しちゃならねえ・・・!全員で打って出て、ガリア軍を全滅させようぜ!」
ルナ「危険ですよ・・・!クレイモア―も飛べないこの嵐じゃ、いっしょに流されちゃいますよ!!」
草薙「こんなもんただのシャワーだ。」
ローランド「自然を甘く見るな。」
草薙「はい。」
ヴィンツァー「ガリア軍も甘く見ない方がいい・・・」
草薙「・・・おう・・・」
ヨシヒコ「・・・ヴィンツァー卿、これで敵は引き上げると思いますか?」
ヴィンツァー「軍の指揮系統が崩れ空中分解してくれれば・・・
しかし・・・ガリア軍を指揮しているのは名将ジルドレイ将軍です・・・
もし、兵士の士気が維持されたなら・・・背水の陣で襲い掛かってくるでしょう・・・」
ローランド「なぜわかる?」
ヴィンツァー「ここエゼルバルド城で略奪できなければ、兵のほとんどが飢え死にするからです・・・指揮官としてそれだけは避けなければならない・・・」
シルビア「王立騎士団の誰かみたいに、みんなを見捨てて逃げてくれればいいのにね。」
ヴィンツァー「逃げて部下が助かるのなら・・・ジルドレイ将軍も兵を引くはず・・・
しかし、その退路はこの豪雨で絶たれた・・・」
ヨシヒコ「激突は避けられない・・・?」
ヴィンツァー「残念ながら。
・・・ヨシヒコさん・・・ご指示を。」
ヨシヒコ「・・・スパルタン・・・ゲリラ戦の極意はロビンフッド老に教わったな。」
草薙「ああ・・・」
ヨシヒコ「雨が上がったら、敵陣を偵察してこい。ただし深追いはするな。」
草薙「任せろ。」
ヨシヒコ「黒神警部補。トラップの方は?」
黒神「完了しております。しかし・・・この豪雨で落とし穴がいくつか心配です。」
ヨシヒコ「ではその補修を。ローランド、銃が使える人員は?」
ローランド「30人は戦力になりそうだ。」
ヨシヒコ「落とし穴が少ない西側を守ってくれませんか。」
ローランド「心得た。」
ヨシヒコ「マイヤース、避難の方は?」
ルナ「雨が降る前に終わらせました。」
ヨシヒコ「この世界の人間は飛行機を知らない。
もし、戦況が苦しくなったら低空飛行でガリア軍を脅かしてくれ。核爆弾は無しだ。」
ルナ「分かりました。」
シルビア「あたしたちは?」
ヨシヒコ「トラップを突破した兵士が城内に入らないように、テスタメントさんと一緒に攻撃魔法で防いでほしい。そして・・・考えたくはないが、城壁を突破されたら・・・」
剣をかざすヴィンツァー「市民はわたしが守ります。」



夜が明けて、雨が上がる。
満身創痍のガリア軍。
ジルドレイ「戦える者は?」
軍曹「は・・・800名とカタパルトが2基のみ・・・!」
ジルドレイ「・・・・・・。」

士気が低下する軍隊
兵士「この戦はもう終わりだ・・・!逃げようぜ・・・!」
兵士「ああ、ジルドレイの運も終わった・・・!落ち目の軍にいつまでもいることはねえ!」
兵士「村で奪ったお宝持って逃げるなら今のうちだぜ!」
兵士「そうだ、逃げよう!」

逃げようとした兵士の頭に弩を撃つジルドレイ。
弩を軍曹に返す。
ジルドレイ「たかが雨に濡れただけで家に帰りてえだと・・・!?
そんな腰抜けは、この俺が全員ぶち抜いてやる!
それと、軍の規律を乱すやつも許さん!
目標のエゼルバルド城はすぐそこだ!てめえら、死んだ仲間のカタキを取りたくねえのか!
オレは絶対に許さん・・・!全員皆殺しにする!
金玉のついている奴は全員俺についてこい!!!」
雄たけびを上げるガリア軍。

茂みの中で偵察する草薙。
草薙「・・・むしろ殺気が上がりやがった・・・どうすんだこれ・・・」

『ラストパーティ』脚本㉕

なおも書斎で歴史書を執筆している歴史学者ローワン・ウイリアム
「エゼルバルド城の戦いは1370年の8月18日に起こった。
この戦いは歴史上特筆すべき点がいくつかあった。
ひとつめに、一般的に長期化する篭城戦が短期間で終わったこと。
ふたつめに、戦争に徴兵された人員のほとんどに兵役経験がなかったこと。
みっつめ・・・そんな絶望的な状況で奇跡が起きたということ・・・」



エゼルバルド市民ホール
HEROCONの会場に集まっている元戦士たち。
ランスロット翁「ほう・・・たった7人で3000人の軍隊を倒す方法とな・・・」
シルビア「はい・・・」
ロビンフッド翁「それならひとつだ。ゲリラ戦じゃ。
このわしが最も得意とした戦術じゃ・・・」
ランスロット「騎士道精神がみじんもない卑怯な方法じゃが・・・確かにそれしかないじゃろう。
このロビンはシャーウッドの森で100倍以上の敵を撃破したからの。」
シルビア「お願いできますか?」
ロビン「ほっほっほ・・・血が騒ぐのう・・・」
ランスロット「やめておけ、おまえさんこの前心臓が止まって障害者手帳をもらったばかりじゃろう・・・」
ロビン「そうじゃったか?」
草薙「死ぬぞ、じいさん・・・」
シルビア「じゃ、じゃあ、このゴリラにゲリラ戦の秘訣を伝授してくれません??」
ロビン「ほう、人の言葉を操るゴリラにか・・・面白いのう。」
草薙「おい・・・」
シルビア「しっかりと教わるのよ。ゴリラ。」
草薙「ゴリラにゴリラと言うんじゃねえ・・・」
店からありったけの武器を運んでくるマスター
「これでうちの在庫は全てだ・・・」
シルビア「ありがとうございます・・・」
武器を手に取るランスロット「随分懐かしい武器もあるのお・・・」
マスター「じいさん・・・ポールアーム(薙刀)を扱えるのか?」
シルビア「町の男性に教えてくれませんか?」
ランスロット「いいの?」
シルビア「伝説の勇者に教われて嫌な人はいませんよ。」
薙刀を軽々と取り振り回すランスロット「・・・うむ、思ったよりも衰えてはおらんな・・・
握手会よりもこっちで金を稼げばよかったわい・・・」
両手剣を手に取るマスター「しばらく平和だったからな・・・」
ランスロット「なんじゃ、お前さん二刀流か。」
マスター「ずいぶん年は食ったが、これでも昔はツインソードのラムと呼ばれていた・・・」
ランスロット「知っとるぞ、シドニアとガリア帝国のモンスター狩りをしていた戦士じゃろ!」
シルビア「探せば結構すごい人がいるものね・・・」



エゼルバルド城の入場門
荷造りをして城から出ようとするゼリーマン
ペガサスを引くヨシヒコ「彼ら魔物を説得できるのは君だけだ・・・頼んだ。」
ゼリーマン「任せてください。」
その時、2人にかけてくるテスタメント「ちょっと待って・・・!!」
ゼリーマン「なんだ、葬儀屋の魔女じゃねえか。」
テスタメント「この子を連れてってよ・・・!」
すると、空から怪鳥が羽ばたいて地面に降りてくる。
ヨシヒコ「おい、あれって・・・」
ゼリーマン「・・・ハル?」
ひょこひょこ歩いて、ゼリーマンを抱きしめるハル。
ゼリーマン「ぐわあああ!この悪臭、間違いねえ!生きてやがったのか!」
ヨシヒコ(ぼくはハーブみたいでいい匂いだと思うけど・・・)
テスタメント「埋葬しようと思ったら、まだ生きてたのよ!
魔法で仮死状態にされてたみたい。
意識が戻ったら、あんたに会いたがってね。一緒についていきたいんだってさ。」
ゼリーマン「お前の姉貴はどっかの女神だったよな?」
頷くハル。
ペガサスに乗るゼリーマン「結局、魔物の血統は神々につながる・・・人間に対して卑屈になることはねえんだって、連中に伝えてきますよ。」
ヨシヒコ「頼んだ。」
ゼリーマン「いくぞ、相棒。」
飛び立つ、ペガサスとハル。
そこを横切る戦闘宇宙船クレイモアー。
空を見上げるヨシヒコ「住民の輸送も順調のようだ・・・」



城外に堀を作る黒神たち。
図面を広げるイエヤス。
黒神「ん~っふっふ・・・これがカタパルトの設計図ですか?」
イエヤス「そうだ・・・わしの会社は風俗だけじゃなくゼネコンもやっているからな・・・
ガリア軍も我社の製品を発注しているはず・・・」
作業員に激を飛ばすマサノブ
「ホンダ組、気合入れろよ!朝までには堀を完成させるんだ!!」
黒神「ん~っふっふ・・・時間がかかる堀は中止しましょう。
そんなもの作らなくてもカタパルトは無効化できます。」
イエヤス「なんだって?」
黒神「この車輪を脱輪できるような深さの溝だけ掘りましょう。
この一帯にできるだけたくさん・・・
一度車輪がはまったら、このシャフトの強度的に持ち直すのは不可能だ・・・」
イエヤス「溝に鉄の板を敷かれてしまいますぞ。」
黒神「落とし穴にするんです。」
イエヤス「なるほど・・・マサノブ!計画変更だ!」



城の外の森で、ローランドに銃の撃ち方を教わる街の男たち。
ローランド「落ち着け・・・一度外すとチャンスは二度と来ない。
ライフルは台尻を必ず肩に当てろ。さもなければ腕がへしおれるからな。
狙いは、ここと、ここ(照準)がぴたりとあった場所だ。」
ライフルを撃つ、街の男。
的が破壊される。
ローランド「筋がいいぞ・・・」
ヴィンツァー「すごい破壊力だ。僕が着ている甲冑はいずれ不要になりますね・・・」
ライフルを渡すローランド「あなたもやってみるか勇者。」
ヴィンツァー「昔・・・ローランドさんのような銃の名手が仲間にいましてね・・・
彼にこう言われたんです。
お前は下手すぎる。もう銃は撃つな、こうやって掴んで、棍棒のように振り回せって・・・」
ローランド「ははは・・・」
微笑むヴィンツァー。
ローランド「で、御仁の仲間たちは今は?」
ヴィンツァー「みんな亡くなりました・・・生き延びたのはぼくだけ・・・」
ローランド「それが戦争だ。仕方がない。」
ヴィンツァー「今度は・・・誰も死なせたくないんです・・・」
ローランド「君は武人なのに甘いな。」
ヴィンツァー「わかってるんです・・・そんなことは不可能だって・・・でも・・・」
ローランド「名前は忘れたが、ある男が酸素なしでエベレストを登頂し瀕死の状態で戻ってきた。
そんな男に不可能だと思わなかったのかと尋ねたら・・・その時はそれでいいと思ったそうだ。」
ライフルを抱えて歩いていくローランド。
ヴィンツァー「・・・・・・。」



オブライエンモンスター強制収容所
魔物「いたぞ!ぶち殺せ!!」
魔物たちに追いかけられて必死で逃げ出すゼリーマン。
壁に追い詰められて両手を上げるゼリーマン
「こっちは丸腰だぜ、少しは話を聞いたっていいだろ。」
サイクロプス「人間に寝返り、うちのカジノを崩壊させといてよくそんなこと言えるな・・・」
ゼリーマン「そこが俺のすごいところだと思わないか?」
ミノタウロス「黙れゾウリムシ・・・姐さんには見つけ次第殺せと命令されてるんだ・・・」
ゼリーマン「で、俺を殺して、こんなところで全員終身刑か?」
ミノタウロス「なんだと?」
ゼリーマン「教えてくれ・・・てめえらの人生ってなんだったんだ?
人間に住処を奪われ、人間を憎み、でも敵わなくて、きたねえ地下に押し込まれ、ケチな賭博をやってただけだろ・・・お前らが社会を何か一つでも良くしようと努力したことってあんのか?
そりゃあ、疎まれ嫌われるわけだぜ。
見た目が恐ろしくとも、所詮は人間様のやられ役だもんな!」
サイクロプス「こいつ・・・!兄弟、塩漬けにしちまいましょう・・・!」
ミノタウロス「待て・・・きさま・・・何が言いたい?」
ゼリーマン「俺はお前らとは違うってことだ・・・必死に人間の言葉を覚えたし・・・人間の社会に溶け込もうとした・・・」
サイクロプス「モンスターを裏切っただけだろ・・・!」
ゼリーマン「人間と敵対して俺たちモンスターに未来はあったのかよ!!
地下でただ現実逃避して遊んでたてめえらにはわかるまい・・・
俺が人間社会でどれほどの差別を受けてきたか・・・
だがな・・・人間だろうが魔物だろうが・・・いいやつだっているんだ・・・」

ゼリーマンの脳裏にヨシヒコやウィンロード、サキュバスのセレスの姿がよぎる。

魔物たちのあいだを近づいてくる女性「人間たちと手を組め・・・と?」
ミノタウルス「あ・・・姐さん・・・」
ゼリーマン「チョーカー・・・可愛いじゃねえか、メド・・・」
メド「まだ完全に首がくっついてなくてね・・・
で、人間に手を貸してわたしたちに何のメリットがあるのかしら?」
ゼリーマン「ここから出してやる・・・それだけじゃねえ・・・俺たちの住処を取り戻す。」
サイクロプス「姐さん!絶対にコイツの罠です・・・!!」
メド「・・・あたしたちがカタギになれると?」
ゼリーマン「お前ら次第だ・・・今、ブリジッドの人間どもは恐怖に怯えている・・・
ここで俺たちが加勢して連中を救えば、忌み嫌われていたおれたち魔物は・・・
神として崇められるだろう・・・」
サイクロプス「は~はは!バカを言うな!人間が俺たちを拝むわけがない!!」
メド「私の親は海の神なんだけど・・・」
サイクロプス「・・・え?」
メド「あなたの両親だって、ウラヌスとガイアでしょう?
(ミノタウロスに)あなたの親はミノス王よ・・・普通に人間だからね・・・」
ミノタウロス「じ・・・自分でも忘れてました・・・」
メド「あたしもよ・・・神の子なのに・・・どうして、こうなっちゃったのかな・・・」
ゼリーマン「お前らはいいよ・・・オレは普通にスライムだからな・・・」
メド「ゼリー・・・あたしたち・・・まだ間に合うと思う?」
ゼリーマン「あんたはもとから女神だろ。」
微笑むメド。

すると、メドの髪の毛が伸びる。美しいロングヘアーになるメド。
メド「離れて・・・あんたの手引きがなくてもね・・・
・・・こんなところは脱獄できるの・・・いつだってね。」
すると、強力な石化光線を分厚い壁に発射し、もろい岩石に変えてしまう。
それを長大なしっぽで殴り、粉々に粉砕してしまう。
外の光が差し込む。
メド「場所を教えなさい。エゼルバルド城を守るわ。」

『ラストパーティ』脚本㉔

平原の真ん中で発炎筒を振るスパルタン草薙。
垂直着陸の態勢に入るクレイモアー。
草薙「オーライオーライ・・・!」
目を細めて着陸してくる宇宙船を眺めるローランド
「こいつは1890年にマダガスカルで狩った巨鳥ジャブジャブよりも少しだけでかいな・・・」
草薙「シンドバッドの冒険かよ・・・」

平原に着陸するクレイモアー。
ハッチが開いて、ヨシヒコとゼリーマンが降りてくる。
草薙「窓はおふきしましょうか?」
ヨシヒコ「レギュラー満タンで頼む。」
ゼリーマン「灰皿もよろしくな・・・」
最後に降りてくるルナ「これは核反応で動くから、トリチウムがあればいいのよ。」
ローランド「おや、これはずいぶん美しい婦人だ・・・」
ルナ「ありがとう・・・あなたも素敵な紳士ですよ。」
帽子をとって挨拶をするローランド「ビッグゲームハンターのペルトという。」
義手で握手をするルナ「ルナ・マイヤースです。泉さんにはお世話になってます・・・」
草薙「人類最強の格闘家、スパルタン草薙だ。
女、あんたも泉の知り合いか。話は聞いているか?」
ルナ「だ・・・だいたいは・・・」
草薙「そういうことだ。
敵兵は俺たちが全て倒すから、女、お前は黙って俺たちを魔王城へ運べばいい。」
ルナ「わ・・・わかったわ・・・」
草薙「頼むぞ、女。」
ローランド「女性を女と言うんじゃない。小学生かお前は。」
ローランドには頭が上がらない草薙「す・・・すいません・・・」
ヨシヒコ「ヴィンツァーさんは?」
ローランド「ヴィンツァー殿は城内がパニックにならないように誘導している。」
ゼリーマン「あれから何日たった?」
腕時計を見るヨシヒコ「5日だ・・・明日には到着しておかしくない・・・」
空に目をやると、ゴロゴロ・・・と灰色の雷雲が迫っている。



エゼルバルド城内
広場に領民を集めて拡声器で状況を説明しているヴィンツァー。
「え~・・ということで、みなさんは落ち着いて普段の生活を続けてください・・・
ただし、指示が出るまで絶対に城の外には出ないこと・・・
安全な篭城戦のご協力をお願いします。」
イエヤス「ガリア軍が攻めてくるだと?」
マサノブ「心配いらないっすよ、ここには王立騎士団が駐留しているらしいっすから。」
テスタメント「おとなりの公爵夫人が言ってたけど、王立騎士団は私たちを見捨てて逃げたそうよ・・・確かにここ数日衛兵の姿を見ないわ・・・」
イエヤス「なんだって!?じゃあ、この城は誰が守るのかね!!」
ヴィンツァー「王立騎士団はいませんが・・・みなさんは私たちが守ります・・・」
イエヤス「私たちって・・・3人しかいないじゃないか!」
シルビアと黒神を見てヴィンツァー「そ・・・そうですけど・・・」
イエヤス「相手は何人いるんだ!」
ヴィンツァー「(超小声で何かを囁く)」
イエヤス「聞こえない!!」
ヴィンツァー「・・・人。」
イエヤス「はっきり言え!」
マサノブ「自民党かお前は!!」
ヴィンツァー「・・・3000人です・・・」

悲鳴が上がる広場。パニックが起こる。
テスタメント「早く城から逃げないと!!」
ヴィンツァー「落ち着いてください・・・落ち着いて・・・!」
領民に突き飛ばされるヴィンツァー。
テスタメント「今なら間に合うわ!みんなで逃げましょう!!あたしはあと100年は生きるのよ!」
すると、シルビアが腕を上げて、空気の振動を起こし、広場中央の巨大な鐘を鳴らす。
ゴーンという爆音がなる。

静まる広場。
シルビア「ご注目ありがとう。
みなさんが互いに助け合う美しい姿が見られて嬉しいわ、このくそったれ。
こちとら5日かけて命懸けで町を守る作戦を考えたんだ。
それなのにあんたたちは鶏のように怯えて、どいつもこいつも自分のことばっか・・・!
ここはあんたたちの町でしょう、なんで自分たちでなんとかしようと思わないのよ!!」
マサノブ「お前バカかよ・・・!3000人にかなうわけ無いだろ!」
シルビア「このヴィンツァー卿がもしあんたらみたいな根性なしだったら、この世界はとっくに終わってたわ。いい?人生にはやらなきゃいけない正念場あるのよ。
人に頼って文句ばっかり言ってないで今こそ戦うのよ!」
イエヤス「シスターが暴力をけしかけるのか・・・!冗談じゃない!
俺は強い奴からはいつも逃げ続けてきたんだ!いこう、マサノブ。」
マサノブ「うす!」
黒神「ん~っふっふ・・・こういうシチュエーションで逃げた人物がだいたい最初の犠牲者になるのはミステリーホラーの定石です・・・」
マサノブ「確かに・・・イエヤスさん、オレ後で行きますから、一人で逃げていいっすよ。」
イエヤス「マサノブ・・・!」
テスタメント「わかった・・・で、あたしたちに何をしろって言うのシスターさん・・・
私たちはただの一般市民よ・・・」
シルビア「私だって一般市民よ・・・」
テスタメント「いいえ、私はあなたを知ってるわ。伝説の聖女リネット・アシュレイの娘よ・・・
私たちモブキャラとはちがうわ・・・」
マサノブ「なんだよ特権階級かよ!
それなら、おれたち市井の民の気持ちがわかるわけがねぇ!」
大ブーイング。

シルビア「・・・リネット・アシュレイの娘・・・本当にそうならよかった・・・」
テスタメント「・・・え?」
ヴィンツァー「シルビア・・・」
シルビア「私はただのケルト族の娘よ・・・アルバレイク戦乱で私の両親は殺され・・・それを不憫に思ったリネットが娘として拾ってくれた・・・」
ヴィンツァー「・・・・・・。」
シルビア「意地悪言ってごめんね、ヴィンツァー。ずっと前から知ってたんだ・・・
でも・・・あたしはあの人の本当の娘でいたかったし・・・
あなたをお父さんだと思いたかったんだ・・・」
目を潤ませるシルビア。
シルビアを優しく撫でて微笑むヴィンツァー「ぼくだって、ただの農民の息子だ。」
シルビア「この世界に生まれつきの勇者なんていない・・・
でも、勇気は誰にだってあるはずでしょう・・・?お願い、力を貸して・・・!」

シーンとする広場。

口を開くイエヤス「勇気を出せば誰でも勇者か・・・
ガラじゃないが・・・やってやるかマサノブ・・・」
マサノブ「うす、手を貸すぜシスター!」
テスタメント「あたし・・・昔は黒魔術師をやってたのよ・・・攻撃魔法なら今も使えるけど・・・?」
シルビア「みんな・・・(涙を拭う)みんなで勇者になろう!!」
歓声が上がる。
冷静に勘定をする黒神(ん~っふっふ・・・60人生き残ればいいほうですね・・・)
ヴィンツァー(大惨事だ・・・)



エゼルバルド城
ヨシヒコ「・・・え?領民を逃がさない?」
ゼリーマン「シルビアがみんなを焚きつけちまったそうです・・・」
ヨシヒコ「まあ、どのみち味方を探し出すのに時間がかかりすぎた・・・
いまさら逃がしてもハイランドまでは逃げきれないか・・・」

作戦会議室に入るヨシヒコとゼリーマン。
机に地図を広げるゼリーマン
「これが地形図だ・・・」
机に集まってくるほかの世界の英雄たち。
ゼリーマン「敵の兵は3000・・・カタパルトなどの攻城兵器を持っている。
兵士の士気は高く、百戦錬磨の将軍は油断しない。
そして、こいつらは負けた敵には容赦しねえ。
例外なく皆殺しにする。」
ヴィンツァー「一方、こちらの戦力は、ぼくとシルビア、格闘家のスパルタンさん、ハンターのローランド氏、パイロットのマイヤースさん、名探偵の黒神警部・・・」
黒神「正しくは元警部補です。」
ヴィンツァー「失礼・・・黒神元警部補の6人・・・」
ゼリーマン「おい小僧、俺は戦力じゃねえのか。」
シルビア「あんた戦えるの?」
ゼリーマン「そこの勇者を最初に倒した魔物はこの俺だ・・・」
ヴィンツァー「じゃあ、ゼリーマンを入れた7人・・・それと2000人の民間人・・・」
シルビア「人数的にはいけそうじゃない?」
ゼリーマン「いけねーよ。お前がこの短時間で2000人の勇者を育てるのか?」
ヨシヒコ「だが・・・民間人の中を探せば戦える者もいるんじゃないか?」
シルビア「じゃあ、あたし探してきます。」
草薙「必要ねえよ。この俺が全員ぶん殴ってやる。」
ルナ「敵兵士の装備は・・・?」
ヴィンツァー「剣兵と槍兵、弓兵がそれぞれ1000人・・・」
首を振るルナ「スパルタンさん、素手では絶対無理です・・・」
草薙「凶器とは卑怯だぜ・・・男は己の拳で殴り合っての・・・」
ライフルを向けるローランド「ブチ抜かれたくないなら、お前は少しは黙ってろ・・・」
黒神「ヴィンツァーくん、ぼくお腹すいたよ・・・なにか甘いものない?」
ヴィンツァー「え・・・」
まとまりのない戦士たち。

ゼリーマン「・・・旦那。提案があります。誰かがリーダーにならないと統制が取れん。」
ヨシヒコ「そうだな・・・」
ゼリーマン「旦那がまとめちゃくれませんかね?」
ヨシヒコ「ぼくが?」
ゼリーマン「この場のほとんどと知り合いなのは旦那だけだ・・・」
ヴィンツァー「それはいいアイディアだと思います。」
ヨシヒコ「ここは伝説の勇者であるアナタが・・・」
ヴィンツァー「ぼくは、ニャルラト・カーン戦でほとんどの仲間を死なせてしまった・・・
もともと人の上に立つのは向いてないんです・・・」
ヨシヒコ「そんなことないでしょう・・・」
ヴィンツァー「ここだけの話・・・ぼくは震えが止まらないんだ・・・」
ヨシヒコ「・・・え?」
ヴィンツァー「この人たちを見ていると・・・昔のパーティを思い出してしまって・・・
小さい頃からずっと僕を励ましてくれた幼馴染のリネット・・・
優しく気品があり、いつも献身的だったセレス・・・
短気だったけど、絶対に仲間を見捨てなかったヴォルスング・・・
寡黙だけど親切で、正確無比の狙撃手だったジークフリート卿・・・
誰よりも頭脳明晰で、邪神攻略の手がかりを見つけたヘルシング博士・・・
・・・もう誰も死なせたくない・・・
ヨシヒコさんなら、きっと冷静な判断ができる。」
ヨシヒコ「まいったな・・・」

すると、喧嘩をはじめる戦士たち。
シルビア「いいかげんに目を覚ましなさいよスパルタン!
戦国無双みたいなことは株式会社コーエイでしか起きないの!」
草薙「てめえ、誰がバンダースナッチから助けたと思ってやがる・・・!」
シルビア「ローランドさんよ!」
ローランド「そうだな・・・」
草薙「てめえ、シルビア・・・あのときションベン漏らしてたくせに・・・」
ルナ「もう、スパルタンさん!女性にそういうことを言うのはいけないですよ!」
シルビア「そーだそーだ!モラハラ!セクハラ!パワハラ!
あんた今すぐ、ハラスメント草薙に改名しなさい!」
草薙「てめえら・・・だから女どもと戦うのは嫌なんだ!もう俺は帰らせてもらうぜ!」
ルナ「ちょっと待ってください、力を合わせないと・・・!」
酒瓶を開けるローランド「あのバカはほうっておけ・・・」
黒神「ヴィンツァーくん、バームクーヘンとかない~?」
ヴィンツァー「そんなの中世の騎士は携帯してないですよ・・・!」

机をどんと叩くヨシヒコ
「いいかげんにしなさい!!
ぼくらの行動で2000人の民間人の生死がかかってるんだぞ!!」

静まる一同。

ヨシヒコ「・・・シスターシルビア、君は城下町に行って戦えそうな民間人を集めてくるんだ。
モンスターハンターのギルドには、まだ戦士がいるはずだろう。
HEROCON会場のお年寄りの元勇者だって、その経験は役に立つ。
なんでもいいからできるだけ集めてきなさい。」
シルビア「あ・・・はい!」

ヨシヒコ「ゼリーマン、君は城から出て、この付近の知り合いのモンスターを全て連れてくるんだ。ガリア軍の進撃は君たちモンスターにとっても脅威だろう?
もう、人間だ、モンスターだ言っている場合じゃない。力を合わせるんだ。」
ゼリーマン「任せてくれ旦那・・・」

ヨシヒコ「黒神警部補・・・あなたは知恵が回る・・・町の職人集団とともに城の周辺にブービートラップを仕掛けてください。特に、カタパルトの射程を計算してその射程範囲に敵が近づけないようにして欲しい・・・」
黒神「ん~っふっふ・・・いいでしょう・・・」

ヨシヒコ「マイヤース。」
ルナ「はい!」
ヨシヒコ「君は、領内のけが人や病人、妊婦、子どもをクレイモアーに乗せて、安全なハイランドの街に送ってくれ。ピストン輸送だ。できるか?」
ルナ「わかりました!」

ヨシヒコ「ローランド、あなたは街の屈強な男に銃の撃ち方を教えてあげてください。
もともとこの時代は戦争が起これば農民だって兵士になる・・・
血の気が多い男は多いはずだ。」
ローランド「心得た。」

スパルタン「泉よ、俺は何をすればいいんだ??」
ヨシヒコ「すぐにでも敵を殴りに行きたいんだろう?
偵察がてら、お前は敵の野営地を襲って来い。戦が始まる前に少しでも敵の戦力を削ぐんだ。
カタパルトを燃やしてきたらファインプレーだ、吉田沙保里さんに会わせてやる・・・」
スパルタン「おっしゃあ!!」

感動して拍手をするヴィンツァー
「・・・あなたがいたら・・・(涙をにじませる)ぼくの仲間はきっと死ななかった・・・」

『ラストパーティ』脚本㉓

「メガサターン」
ヨハン・シュトラウスの「美しき青きドナウ」がBGMで流れる。
恒星間戦争の前線基地、宇宙コロニー「ビブリボン」
宇宙コロニーのなかは、遠心力によって重力を作り出すため円運動をしている。

コロニー内の戦闘宇宙船格納倉庫を歩く女性軍人と、ヨシヒコ。
アルテミス軍所属エースパイロット「ルナ・マイヤース」
「え?クレイモアー(戦闘宇宙船の名前)をですか??」
ヨシヒコ「3日だけ借りられないかな。」
ルナ「泉さんの頼みなので力にはなりたいのですが・・・(背後の巨大な宇宙船を見て)
このクレイモアーは私の所有物ではないですからね・・・」
ヨシヒコ「船のオーナーには話をつけておく。君に頼みたいのは、あれの操縦だ。」
ルナ「・・・いつからですか?」
ヨシヒコ「今からだ。」
ルナ「まいったな・・・」
ヨシヒコ「この時期は、星間戦争はオフシーズンなんじゃないか?」
ルナ「来週から、太陽系で「コズミックグランプリ」というレースに出場するんですよ・・・」
ヨシヒコ「それまでには済むと思う。」
ルナ「一体なにをするんです?」
ヨシヒコ「魔王の討伐だ。」
ルナ「あたし・・・戦争に行ってたけれど、あれはスポーツみたいなもので・・・
本当の戦場はちょっと・・・」
ヨシヒコ「知ってる。ぼくらを魔王城まで送ってくれるだけでいい・・・」
ルナ「それなら、多分5分で済みますけど・・・」

格納倉庫に歩いてくるゼリーマン「話はつきました?」
ヨシヒコ「オーナーの方はどうだったんだ?」
ゼリーマン「ビリオンパラダイスからふんだくった金をすべて出すと言ったら、レンタルどころか普通に購入できました。」
驚愕するルナ「へ!?クレイモアーを買ったんですか!!??
わたしの年棒でも手も足も出ないのに・・・!」
ゼリーマン「美しいあんたにプレゼントだ。」
ルナ「魔王城ですね・・・かしこまりました。
整備員さんにメルシーキリング爆弾を装備させましょう。」
ゼリーマン「なんだそら。」
ルナ「戦略核兵器です。これを魔王城に発射すれば一瞬で魔王は蒸発します。」
ヨシヒコ「やめてくれ。ガリア大陸もなくなってしまうよ・・・」



更衣室で船外活動服を着るヨシヒコとゼリーマン。
ゼリーマン「なんでこんなもんを着るんだ?」
ヨシヒコ「宇宙船を転送するゲートはここから1億km先の宇宙空間に浮いているからだ・・・
そこまでクレイモアーで連れてってもらう。」
ゼリーマン「俺は宇宙空間も裸でいいすよ。」
ヨシヒコ「激しく爆発するからやめてくれ・・・」
ゼリーマン「あの美女と旦那はどういう関係で?」
ヨシヒコ「彼女が無名選手だった頃にコマキをスポンサーにさせたんだ・・・
彼女の出身地はこの広大な宇宙でもとりわけ辺境で・・・差別をされていたんだよ。
ただ・・・操縦スキルは本物だった。」
ゼリーマン「だから旦那に感謝してんだ。」

更衣室に入ってくるルナ「おじゃまします。」
そう言うと、女性なのにためらいなくヨシヒコの前で服を脱ぐルナ。
目をそらすヨシヒコ「おいおい・・・」
ルナ「なにか・・・?ああ・・・泉さんの世界では異性の前で裸にはならないんですよね・・・
でも安心してください・・・あたしの体はほとんどが機械・・・肌色なんてほとんどないから・・・」
ヨシヒコ「・・・君みたいなレーサーが大きな事故でもしたのか・・・?」
ルナ「私には生まれつき両腕がなかったんです・・・でも、泉さんのおかげで・・・
今はこんなにいい腕が二つも。」
そういうと、機械の腕を見せて微笑むルナ。
ゼリーマン「サイボーグ少女か。嫌いじゃないぜ。」
ルナ「ゼリーさん、本当にEVA服を着たほうがいいですよ・・・発進時に少なくとも10Gはかかるし、そのあとの0Gで球体になってしまいます・・・」
ゼリーマン「この俺の美しいプロポーションが星のカービィになるだと・・・!?それは捨て置けんな・・・」
いそいそと船外活動服を着るゼリーマン。
ヨシヒコ「・・・ありがとう。」
ルナ「可愛い宇宙人ですね。」



クレイモアーが滑走路に運ばれる。
クレイモアーのコックピットに乗っている3人。
計器をいじくるルナ。
ルナ「みなさん、宇宙経験は?」
ヨシヒコ「あるわけがない・・・」
ゼリーマン「そもそも宇宙ってなんだ?空の上なんだろ?なんで青くねえ。」
ルナ「それなら、感動すると思うわ・・・
(無線に向かって)デリバリー、こちらはクレイモアー07、ゲートF91より出航の承認をお願いします。レーダー識別記号は1984・・・」
管制官(クレイモアー07、ゲートF91より出航を許可します。
10番隔壁開放、減圧開始グリーン・・・9番隔壁開放・・・)
エンジンをイグニッションさせるルナ
船内が振動し、ブーンという起動音が響く。
管制官(最終隔壁開放・・・)
すると、クレイモアーの目の前の隔壁が開き、ゴオオオオという爆音で宇宙空間に空気が放出される。
管制官(グリーン。クレイモアー07、いい旅を。)
滑走路を疾走するクレイモアー。
一気に座席の背もたれに叩きつけられるヨシヒコとゼリーマン。
微笑むルナ
宇宙コロニーを飛び出し、漆黒の宇宙空間を飛行する。



宇宙を進むクレイモアー
遠くには美しい惑星が輝く。
ルナ「もうシートベルトを外していいですよ。」
するとコックピットのボールペンが浮き上がる。無重力になったのだ。
ゼリーマン「おい!とうとう俺は飛行系魔法を覚えたぞ!」
ヨシヒコ「重力から解放されただけだ・・・うぷ・・・(口を抑える)」
ルナ「宇宙酔いですか?」
ゼリーマン「旦那!ここでは勘弁してくださいよ・・・!俺にくっつく・・・」
ルナ「トイレはそこです。」
壁の手すりをつかみながらトイレに移動するヨシヒコ。
ゼリーマン「だから宇宙コロニーの食堂でチャーシューメンなんて食べなきゃよかったんだ・・・」
ルナ「無重力ではなかなか食事は楽しめませんからね・・・宇宙食はゼリー状のものばかりだし・・・」
ゼリーマン「ルナちゃん・・・あんた今なんて言った?」
ルナ「え・・・?ゼリー・・・」
壁を蹴って食料庫に突っ込んでいくぜリーマン「ヘアッ・・・!!」

その時、クレイモアーに接近してくる複葉機のような宇宙船。
相手の宇宙船からの無線をキャッチする。
?「おっ誰かとおもたらルナ・マイヤースやんけ・・・おでかけかいな・・・」
ルナ「あっ、その声は・・・地球の冒険家のライト・ケレリトゥスね・・・」
ライト「コズミックグランプリの秘密特訓かいな。」
ルナ「そんなんじゃないわよ・・・そっちは?」
ライト「暇なんで80日で太陽系でも一周しようかな、と・・・」
ルナ「あなたは自由でいいわね・・・」
ライト「にゃ~っはっは!あんたもぎょうさん年棒もらっとるんや!
とっととアルテミス軍なんてやめてFIREしたらどうや!」
ルナ「おあいにく様・・・わたしももう自由なの・・・」
ライト「ほえ?」
ルナ「じゃあ、ちょっと行ってくるね・・・」
ライト「どこに?」
クレイモアーを加速させ、ライトのライトフライヤー号を引き離すルナ「内緒。」

――「メガサターン」のエースパイロット、ルナ・マイヤースが仲間になった!




「マジックキングダム」
キャッスルヴァニア地方。
エゼルバルド城へ向けて進軍をしている、ジルドレイ将軍率いるガリア帝国軍。
伝令「報告!ベオウルフら王立騎士団は、エゼルバルド城を捨てて王都へ逃げたとのこと!」
葉巻をふかすジルドレイ「なんだと?あのかっこつけがか。領民は?」
伝令「2000人が城内に取り残されたままだと・・・」
ジルドレイ「領主が領民を見捨てたのか・・・ベオウルフめ・・・もう少し骨のあるやつかと思っていたが・・・これでブリジッド王国は終わりだな。兵たちに伝えろ。エゼルバルドについたらうまいもんが食えるぞ、と!」
伝令「は・・・!」
その時、ガリア軍の頭上を巨大な飛行物体が横切る。
驚く兵たち。
「何だあれは・・・!!」
「じゃ・・・ジャバウォッキーだ・・・!!」
ジルドレイ「騒ぐな・・・!お前らはドラゴンなんて一度も見たことがないだろう!!」
双眼鏡を眺める軍曹「・・・あれは・・・生き物ではないようです・・・乗り物??」
双眼鏡を奪うジルドレイ「見せてみろ・・・なるほど・・・あれは飛行機という機械だ・・・」
軍曹「飛行機?」
ジルドレイ「ストレイシープ村にあったパンフレットをよこせ・・・」
軍曹「はい・・・」
「ドリームワールド」のパンフレットを取り出す軍曹。
宇宙船のイラストを指差すジルドレイ「ほら・・・同じだ・・・安心しろ、火など吐かねえ・・・」
軍曹「危険はないのでしょうか・・・」
ジルドレイ「ストレイシープ村にあった、あの異文明の装置・・・そしてあの飛行機・・・
ブリジッド王国は神の使いでも味方につけたか・・・それとも・・・神の怒りに触れたか・・・」

『ラストパーティ』脚本㉒

闇の中で、名探偵黒神志郎がこちらを向く。

黒神
「え~みなさんはじめまして・・・ホーンテッドレジデンスへようこそ・・・
この常夜の世界には999の亡霊が存在し、あなたを1000人目の仲間にしようと狙っているのです・・・え?そんな怪談はありきたりで怖くない・・・?
ああ・・・失礼しました・・・あなたはすでに亡霊でしたね・・・」



大雨の夜。
不気味な針葉樹の森の車道で一台の車が立ち往生している。
助手席のヴィンツァー「あれ?動かなくなったよ?」
ハザードランプを付けるゼリーマン「くそ・・・こんなところでエンジントラブルとはな・・・」
ヴィンツァー「こんなところに本当に黒神さんは住んでいるの?」
ゼリーマン「警視庁の警部補を定年退職してからは・・・このあたりの洋館に隠居しているって聞いたが・・・」
ヴィンツァー「直せそう?」
車外に出てボンネットを開けるゼリーマン「なるほど・・・3番バーニアがディストリビュータしてATフィールドがファルシでコクーンしてるぜ・・・」
ヴィンツァー「つまり?」
ゼリーマン「ホワイトからもらったこのリムジンは廃車だ・・・残念だがな・・・
傘があったな。車から出ろ。ここからは歩きでいく・・・」
ヴィンツァー「風邪ひかないかなあ・・・」
リムジンを乗り捨てる2人。
運転席のメーターパネルには、ただ「ガス欠」と表示されている。



不気味な屋敷にたどり着くゼリーマンとヴィンツァー。
ゼリーマン「化物がいそうな薄気味悪い洋館だぜ・・・」
ヴィンツァー「化物の君が言うんならそうなんだろうな・・・」
チャイムを鳴らして、扉をどんどん叩くゼリーマン
「お~い!出てこい名探偵!チンケな殺人事件よりも戦場で大量虐殺を解決しないか!!」
ヴィンツァー「チンケって・・・」
その時、屋敷の中で悲鳴が上がる。
2人「!!」
ゼリーマン「惨劇の舞台の幕が上がったようだぜ・・・めんどくせえから帰るか。」
扉を蹴破るヴィンツァー「女性の声だ!!今助けに行きます!!」
ゼリーマン「おい、馬鹿!!」
メインエントランスに飛び出すと、傍らに地下室への小さな扉が空いているのに気づく。
ヴィンツァー「きっとあそこだ・・・!女性を守らなくては・・・!」
そう言うと剣を抜き地下室に降りていく。

地下室には、不気味な拷問器具が並んでいる。
その内の一つ、アイアンメイデンの扉がしまっており、隙間から血液が流れ出している。
ヴィンツァー「!!」
アイアンメイデンを開けるヴィンツァー。
すると、串刺しになった少女が現れる。
少女(小石川ちおり:元少女漫画家)「超いて~」
ヴィンツァー「け・・・怪我の手当を・・・!」
地下室を眺めるゼリーマン「なんつー悪趣味な部屋だ・・・」
その時、ぞろぞろと屋敷にいた他の人間も地下室に入ってくる。
屋敷の人間は7人で全員が若い女性である。
女2(井口ひろみ:元ピアニスト)「きゃああああ!!
悲鳴を聞いて駆けつけたら小石川ちおりちゃんが串刺しに・・・!!」
ヴィンツァーを指差す双子の女性3・4(鏡さき・鏡みき:元脚本家)「あなたがやったの・・・?!!」
ヴィンツァー「え・・・ちが・・・」
ちおりの脈を見る白衣の女性5(小田嶋さくら:元医師)「ご臨終です・・・」
ちおり「え~生きてるよ!」
ちおりの首に手刀を入れて気絶させるさくら「ふん!・・・ご臨終です・・・」
ひろみ「きゃあああ殺人事件ですわ・・・!!」
双子「あの騎士が殺したのよ・・・!凶器はあの剣よ・・・!」
ゼリーマン「鉄の処女じゃないんかよ・・・」
女6(宇佐美よわか:元高校教師)「ひいいい!!こっちには硫酸で溶けた死体が・・・!」
ゼリーマン「俺のこと言ってんのか?」
宇佐美「死体が・・・しゃべって・・・はわわ・・・」
心臓麻痺を起こして倒れてしまう宇佐美。
脈をとるさくら「こいつもご臨終です・・・」
女7(鳳桐子:元華道家)「・・・この屋敷でみんな死ぬのよ・・・
そして、私の灰色の脳細胞がこう言っている・・・犯人はあなたたちだってね!」
桐子に指をさされるヴィンツァーとゼリーマン。
さくら「うん。ほぼほぼ現行犯だしね。」
ヴィンツァー「ちょっと待ってください・・・!ぼくは屋敷の中から悲鳴が聞こえたので助けに駆けつけてただけで・・・!」
桐子「初めて屋敷に入った割には、随分スムーズにこの隠し部屋に来たわね・・・」
ヴィンツァー「そ・・・それは・・・昔こんなようなお屋敷に住んでいて、そこにも隠し部屋が・・・」
桐子「苦しいわね・・・」
剣を見せるヴィンツァー「それに見てくださいよ!この剣には血痕はついていない・・・!」
さくら「こんなところで剣を抜くんじゃない!!」
ひろみ「暴力反対ですわ・・・!」
慌てて剣をしまうヴィンツァー「あ、ああ・・・ごめんなさい!!」
桐子「簡単よ・・・あなたはその剣で小石川先生を脅して、アイアンメイデンに押し込んだのよ・・・封印された地下室の鍵は、そこの珍生物が体を変形させて、ドアの隙間から侵入し、内側から開錠・・・訳はないわ・・・」
ゼリーマン「密室トリックやりたい放題ってか・・・では聞こう。俺たちの犯行動機はなんだ?」
桐子「小石川ちおり先生の漫画は連載休止が多かった・・・
しかも直近の休載理由は、取材という名目のハワイ旅行・・・
作品への愛が憎悪に変わるのに時間はかからなかった・・・
それじゃ不十分かしら?」
ゼリーマン「不十分だよ!!バカバカしい、いこうぜヴィンツァー。黒神を連れて帰っちまおう。」
無言で出口に手をやる桐子「・・・・・・。」
ゼリーマン「いや・・・そこでスタッフロール出しても警察には行かねえぞ!!」

桐子「では、心臓麻痺に見せかけた第二の殺人はどう言い訳するのかしら・・・」
ゼリーマン「コイツが勝手にオレに驚いてくたばったんだろ、これはこれでひどい差別だかんな・・・?
それよりも、あんたらはなんで女ばかりでこの屋敷に集まってるんだよ・・・」
桐子「・・・ちょっとした同窓会よ・・・」
ゼリーマン「そうかな・・・?見たところ、年齢も職業もバラバラだ・・・全員大学のクラスメイトってわけじゃねえだろ・・・?」
ひろみ「謎の人物から招待状が届いたんです・・・」
ゼリーマン「招待状?そんなもん届いて、のこのこ本当に足を運ぶバカがいりゃあ詐欺師は苦労しねえんだ・・・その招待状を見せてみろ・・・」
ひろみ「それは・・・家に置いてきましたわ・・・」
ゼリーマン「くくく・・・読めたぜ・・・てめえら、この俺をはめようとしやがったな・・・
俺たちが来る前に、ちおりは・・・ちゃんと死んでなかったけど・・・アイアンメイデンの中でとっくに死んでたんだ・・・
そして俺がチャイムを鳴らしたタイミングで、てめえらは自身の犯行を俺たちに擦り付けることを思いついたんだ。てめえらこそ、ちおりの漫画のファンクラブなんだろ?
見てみろ、どいつもこいつも辛気くせえ根暗な女どもじゃねえか・・・」
鏡姉妹「ひどいわね・・・うんひどいわ・・・」
桐子「私たちが小石川先生のファンだという証拠はないわ・・・」
ゼリーマン「そりゃお互い様だろ。だが、これはオリエント急行殺人事件だ。てめえらがいくらでも口裏を合わせられるんだ・・・」
桐子「そのとおりよ・・・
そしてか弱い乙女たちと、醜い魔物のどちらの証言を裁判所は聞くかしら?
少なくとも、あなたは一人は確実に殺している・・・」
ゼリーマン「痛いところつくな、こいつ・・・」
ヴィンツァー「ゼリーマン頑張れ・・・!」
ヴィンツァーに囁くゼリーマン「俺たちが勝てる手がひとつだけある・・・」
ヴィンツァー「ほんとう?」
ゼリーマン「ここでお前がメイルシュトロームを打って、このバカ女どもを皆殺しにしちまえ。
作戦名は『そして誰もいなくなった』だ。」
ヴィンツァー「勘弁してよ・・・!!」
ゼリーマン「考えろ・・・俺たちがちおりを殺していない以上、犯人はあいつらなのは確定だ・・・
となると、連中は人を殺めるのに躊躇がない手練ということ・・・
人は見た目じゃねえ・・・甘い考えをしていると本当に消されかねないぞ・・・」
ヴィンツァー「でも・・・もし他に犯人がいたら・・・?
それにちおりちゃんがふざけて自分で鉄の処女に入ったってことはないの?」
ゼリーマン「それで痛くて叫んでたってか・・・糞馬鹿だな・・・
(何かに気づく)叫んだ・・・?」

ヴィンツァー「ゼリーマン・・・?」
ゼリーマン「おい、女ども・・・お前ら何が聞こえて地下室に駆けつけたって言った?」
鏡姉妹「え?え?」
唇を噛み締める桐子。
ゼリーマン「おい、ピアニスト・・・お前最初にこう言ってなかったか?
悲鳴を聞いて駆けつけたと・・・」
ひろみ「ええ・・・それが何か・・・?」
ゼリーマン「アイアンメイデンはエレガントな拷問器具だ。犠牲者の悲鳴は決して外には漏れない・・・」
ひろみ「・・・え?」
ゼリーマン「お前らは一体なんの悲鳴を聞いたんだ??」
桐子「・・・バレてしまったら仕方がないわね・・・」
2人に近づいてくる女たち。
ヴィンツァー「ゼリーマン、まさか本当に彼女たちは・・・」
ゼリーマン「ああ・・・プロのアサシンどもだ・・・
なあ・・・殺される前に、あんたらがこの屋敷に集まった理由を教えちゃくれないかね・・・」
桐子「・・・復讐よ。」
ゼリーマン「復讐?」
桐子「私たちは全員、この屋敷の主、黒神警部補に完全犯罪を崩されて逮捕されたのよ・・・」
ひろみ「ええ・・・毎週たった40分で・・・」
さくら「わたしたちが殺人事件起こすと必ずあの刑事いるからな。」
鏡姉妹「私たちなんてわざわざオーストラリアで手の込んだ双子トリックをやったのに・・・!!」
ゼリーマン「なるほど、読めたぜ・・・」
ヴィンツァー「どういうこと?」
ゼリーマン「こいつらの目的も黒神志郎なんだ・・・
殺人犯どもが事件を起こす前に、名探偵の自宅に殴り込んできやがったのさ・・・」
膝を打つヴィンツァー「それ、なんで今まで誰もやらなかったんだろう・・・!」
ゼリーマン「・・・で、ターゲットは殺せたのかい?」
桐子「襲撃を事前に察知したのか、屋敷内のどこにもいなかったわ・・・」
ひろみ「そして、最後にみなさんでこの隠し部屋を捜索していたら・・・
ちおりちゃんがまちがってアイアンメイデンに挟まっちゃったんですわ・・・」
ゼリーマン「ふつうに馬鹿だろ・・・」
ヴィンツァー「でも、犯行前に間に合ってよかったね・・・
黒神さんはまだ生きているってことだもん・・・」
ゼリーマン「だが、この屋敷にいないとなると・・・一体どこだ?」

その時、拷問室の隅にあった柩が開く。
一同「!!!」
柩から起き上がる紳士「さっきからうるさいな~君たちは・・・」
桐子「いたわ!!黒神警部補よ!!」
黒神「・・・?おや、ご無沙汰しております。お元気でしたか?」
ゼリーマン「おい・・・あんた、今、名探偵人生で一番危険な状況にあるぞ・・・」
ヴィンツァー「逃げてください!この人たちみんな殺人犯です・・・!!」
黒神「心配はいりません・・・
これまで私が関わってきた多くの犯罪者たち。彼らに共通しているのは、誰一人逮捕の瞬間、悪あがきをしなかったと言うこと。誇り高き殺人者。そして、それが私の自慢でもあるのです。」
なぜかじ~んとしてしまう犯人たち「・・・・・・。」
微笑む黒神「・・・さあ、同窓会を開きましょう。」
歴代犯人たち「は・・・はい・・・!」
ヴィンツァー&ゼリーマン「・・・なんだこれ・・・」

――「ホーンテッドレジデンス」の名探偵黒神志郎が仲間になった!
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