『超音速ソニックブレイド』脚本⑨

ブラックハウスの会見
笑顔の補佐官「大統領は命に別状はありません。
しかし怪我が治るまでは治療に専念し、職務を控えたいと言っております。」
記者「ホワイトハウスは跡形もなくなりましたが、本当に無事なのでしょうか?」
補佐官「地下核シェルターがないとでも?」
記者「なるほど。」
ほかの記者「新華社通信です。
ソニックブレイドを米軍が独占使用するのは国際秩序を著しく損なうとの批判もありますが、戦闘ロボットの人工知能データを共同利用するというお考えは・・・?」
補佐官「おほほ・・・ならば、なぜ地球上のすべての国が核を保有していないのかしら?」

国務大臣「ゴモラを一撃で倒したことであのロボットを見る目が変わったな。」
将軍「補佐官は焦っておられる。」
国務大臣「見ればわかる。大統領が存命なんて話いつまで持つか・・・」
将軍「それもありますが・・・核兵器は戦後すぐにソ連に追いつかれた。
軍事的にアドバンテージがあるうちに強国をねじ伏せるおつもりだ。」
国務大臣「だからロスアラモスを抑えた?」
将軍「科学者という人種は国境を嫌いますからね。
特にカレル博士を抑えたのは大きい。量子コンピュータを抑えたも同じだから。」
国務大臣「第三次世界大戦か。」
将軍「長生きしたいなら、今の補佐官には逆らわないほうがいい・・・」
黒服に連れて行かれる新華社通信の記者。

・

ロスアラモス
拷問を受けてボロボロになって帰ってくるフェイ
マルス「フェイ・・・!」
彼女に駆け寄り抱きしめる。
涙目のフェイ「私は台湾人で、中国人じゃないのに・・・」
カレル「そんなことはやっこさんも知っている。知ってて暴力を振るったんだ。
女に手を上げるなんて許せねえな。」
ロイド「見せしめってことか。」
フェイ「軍に逆らっちゃダメ・・・開発を続けましょう。」
カレル「アメリカはどうやら得体の知れない魑魅魍魎に乗っ取られたようざんす。」

フェイの医務室で二人きりになる。
フェイ「マルスくん・・・お願いがあるの。」
マルス「なんでもする。」
フェイ「わたしたち・・・別れましょう。」
マルス「え?」
フェイ「あなたに迷惑をかけたくない。」
マルス「さっきのは取り消し・・・絶対嫌だ。」
フェイ「次のターゲットはあなたなのよ!言うことを聞きなさい!」
マルス「君を愛しているんだ・・・!」
フェイ「嘘ばっかり!あなたが愛しているのは、あの子でしょう?」
マルス「・・・・・・。」

・

お姫様のようなロココ調のえるの部屋。
補佐官「おほほ・・・ドレス似合ってますわよ。
この色、ペールカラーって言いますの。上品なあなたにはピッタリ。」
える「・・・・・・。」
補佐官「必要なものがありましたら、なんでもおっしゃってくださいませ。」
える「・・・わたしは、あなたの着せ替え人形なのね。」
補佐官「面白いことをおっしゃるお嬢さんだわ。」
える「・・・戦争に行くくらいなら私は死にます。」
補佐官「パレスチナにお散歩に行くだけよ。」
える「あなたがそうやって独裁者でいられるのは私がいるから。」
補佐官「いかにも。
・・・でも、あなたが死ぬと悲しむ人がいるのではなくて?」
ハッとするえる「ライちゃんには手を出さないで・・・!」
補佐官「ならばならず者国家を倒してきなさい。」
える「あなたは卑怯よ・・・!」
補佐官「ええ、卑怯ですとも。でも覚えておきなさい。
卑怯者の機嫌を決して損ねてはなりません。」

・

日本
高校生になって受験勉強をしているろな
「第五次中東戦争はロボット兵器の投入によってイスラエルの完全勝利・・・
これ時事問題で絶対出題されるな。」

中東エリア
テロリスト「ミカエルだ!ミカエルが来たぞ!!」
火の手が上がる戦場の中、テロリストの方へ歩いてくるソニックブレイド。
える「おねがい・・・降参して。
あなたたちにも家族がいるんでしょう?」
テロリストが銃弾の雨を浴びせるがビクともしない。

軍の司令部
通信兵「ソニックブレイドの侵攻で敵の本隊は釘付けです!」
将軍「今だ、一斉空爆・・・!」
通信兵「砂漠のバラ作戦開始!!」

ソニックブレイドの背後から戦闘機が現れ、次々にミサイルを放っていく。
テロリストの基地はあっさり陥落する。

もはや涙を流していないえる「テロリストの基地・・・?ただの病院じゃない。」

・

このアメリカの暴挙に世界は黙っていなかった。
イギリスと日本はアメリカを支持したが、フランス、ドイツ、ロシア、中国が激しく非難。
ソニックブレイドによって一時的に地球は統一されたが、傲慢なアメリカに対する反逆の狼煙はすぐに上がった・・・

中露首脳会談
チンジャオ国家主席「なぜアメリカの移民の壁を我々中国が作らなきゃいけないアル!」
ロシアのゴーゴリ大統領「中東が倒れた今、アメリカの次のターゲットは我々だ。
チンジャオ同志、あのロボットが強大だとは言え、たった一機。
戦術核兵器ツァーリボンバーの敵ではないと思うが。」
チンジャオ「やられる前にやるアルか・・・」

これが、アメリカ単独主義に対する最初の反乱――チンジャオ・ゴーゴリの乱だった。

・

ロスアラモス
デスクにプリントを置くフェイ「今回の戦闘データです。」
マルス「どうも。」
マルス「・・・・・・ひどいな。」
ロイド「どうかしたか?機体が損傷したなら任せておけ。」
カレル「あたしのコンピュータは最高ざんしょ?」
マルス「ソニックブレイドによる敵の犠牲が2桁も増えた。」
ロイド「戦争だからな。」
マルス「もともとソニックブレイドは、人類を守るために怪獣と戦う兵器だったはずだ。
ソニックブレイドが殺傷した怪獣は何体か知ってますか?」
カレル「え~と、39体くらい?」
マルス「たった1体ですよ。
しかし・・・人間の犠牲者は10万人を超えた・・・
もはや、このパイロットは人を殺すのをためらわなくなった。
ぼくらはとんでもない怪獣を産んでしまったんじゃないか?」
ロイド「戦いの中で勇敢に成長したんだろ。」
マルス「成長って・・・何も感じなくなることなんですか?」
フェイ「ボス。その件でお話が。」

・

電子頭脳実験室に呼ばれるマルス
マルス「きみが口をきいてくれるなんて珍しいね。」
フェイ「要点を手短に話します。」
診察モニターにパイロットの脳波を表示させるフェイ。
フェイ「これはソニックブレイドのコックピットにあるBMIが測定したパイロットの脳波です。このスペクトルで、パイロットの感情がわかります。
初期は、不安、恐怖、悲しみが多いわね。」
マルス「知ってる。」
フェイ「この脳波を電気信号にしてソニックブレイドに送っている。」
マルス「それも知ってる。」
フェイ「・・・そう思ってた。」
マルス「・・・え?」
フェイ「これが今の脳波。何も思考をしていない。
さっきの脳波が送信だとしたら、これは受信。」
青くなるマルス「何を受信しているんだ?」
フェイ「もはやソニックブレイドを動かしているのはパイロットじゃない。
パイロットをソニックブレイドが動かしているのよ。」

・

ハーグの国際刑事裁判所
裁判官「も・・・もう一度おっしゃっていただけますか。」
マルス「とどのつまり、この実験は失敗だったのさ。
ぼくらはあまりに多くのストレスをえるに与えすぎた。
えるはある時から考えることをやめてしまったんだろう。
臆病だけど、優しく・・・純粋だった彼女は・・・いつの間にか勇敢で残酷な戦士になってしまった。それを成長と呼びたいのなら呼べばいい。」

・

シベリア
戦術核兵器をソニックブレイドに向けて発射するロシア中国連合軍。

える「あちちちち・・・!」

怯える兵士「ターゲットはまだ動いています・・・!」
「神よ・・・」
「二発目・・・!」

える「核兵器なんか地球にいらないよ・・・!」
スペシウムレールガンによって次々に核ミサイル基地が破壊されていく。

・

米軍の捕虜収容所
ストローズ補佐官の前に引きずり出される、チンジャオとゴーゴリ。
補佐官「おほほ・・・おふたかた。処刑される気持ちはどう?」
チンジャオ「中国共産党は全面降伏するアル!命だけは!!」
ゴーゴリ「お前か黒幕は。大統領はとっくに死んでいるな。やるならやれ。」

廊下
補佐官「あいつらを焚きつけたのがいるわ。捜しなさい。」
頷くキエーザ。

チンジャオ・ゴーゴリの乱は、ソニックブレイドが核兵器をも跳ね返すということを世界に知らしめて鎮圧された。
しかし・・・この反乱の狼煙は、野火となって地球上に広がっていったのだ。

・

ロスアラモス
研究施設に極秘でやって来る国務大臣。
マルス「ソニックブレイドの電子頭脳はすでに完成していたようです。
ボクらを消しに来たんですか?」
国務大臣「アメリカは世界の警察どころか、世界の敵に成り下がった。
世界中で反乱が起きているし、国内でも反戦運動の嵐だ。」
マルス「ぼくらのせいだとは言わせませんよ。」
国務大臣「ソニックブレイドを止められるのは、君しかいない。」
マルス「核兵器でも止められない最終兵器をなんで僕が・・・」
国務大臣「悠長にしていられない。すぐにストローズに気づかれる。
彼女を救ってあげてほしい・・・」
マルス「彼女?」
国務大臣「君がよく知る人だ。」
マルス「そんなはずない・・・」
国務大臣「深未えるだ。」

・

えるの部屋
将軍「具合はどうだい?温かいスープを持ってきた。」
ボロボロのえる「今日はあなたひとり・・・?」
将軍「ああ。ソニックブレイドの人工知能は完成した。
軍として礼を言う。」
える「そう。」
将軍「・・・国連が我が国に対して集団的自衛権の行使を決めた」
える「・・・そう。」
将軍「補佐官は、アメリカに対する制裁解除と引き換えに、君一人に戦争犯罪を押し付けて軍法会議にかけて殺してしまう気だ。」
える「もう・・・人を殺さなくて済むんだ。」
将軍「死ぬのが怖くないのかね。」
える「早く死んでしまいたい。」
将軍「君が死んだところで、地獄は終わらないぞ。
アメリカは完成した人工知能を量産化したソニックブレイドに搭載し、最強の軍隊を作るだろう。世界は滅びてしまう。」
える「随分遅かったわね。」
将軍「ソニックブレイドから人工知能のデータを吸い出すのは翌朝だ。
君はあれに乗って逃げろ。そしてロスアラモスに助けを求めなさい。」
える「どうやって、この牢獄から逃げるのよ!」
銃を渡す将軍「恋人と幸せに生きるんだぞ。」

騒然とする軍事基地
キエーザ「なんの騒ぎだ。」
兵士「実験体が将軍を人質に取り、ソニックブレイドを奪って逃亡しました!」
キエーザ「誰がこのことを補佐官に伝えに行く?」

滑走路
ブースターで飛行するソニックブレイドを見送る将軍
兵士「将軍!お怪我は・・・!」
将軍「ない。きみはえるの世話係だったな。」
兵士「は。」
将軍「彼女は変わってしまったと思うか。
自由になった彼女は危険だと思うか。」
首を振る兵士。

ソニックブレイドのコックピットにはマルスの写真が貼ってある。
涙を流すえる「ありがとう・・・」

・

朝
ロスアラモスの農場を飛行するソニックブレイド。
着陸しやすいようにナイターが点灯する。
緊張の面持ちでひとり、ソニックブレイドが着陸する様子を見つめるマルス。

電子頭脳実験室
カレル「・・・ボスにはなんて?」
フェイ「早く迎えに行ってあげなさいって。」
カレル「いいのか?」
フェイ「私は年上が好きなの。」

ソニックブレイドのハッチが開く。
農場には一本の桜の木が植えてあり、マルスが側に立っている。
ソニックブレイドから降りて、桜の方へ歩いてくるえる。
マルス「・・・桜の木の下で・・・君は言ったよね。」
涙目になるえる「・・・私を忘れないで・・・。」
振り返るマルス「忘れたことなんて一度もない。」
える「わたし・・・こんな体になっちゃったよ・・・」
構わずえるを抱きしめるマルス。

・

ブラックハウス
新しくアメリカのリーダーになったルーデンス大統領は、ストローズの甥っ子だった。
記者「ブラックハウスの印象は?」
大統領「ん?くろいよ。」
記者「全米各地で暴動が起きていますが・・・」
大統領「ほんとに?ぼく、こわい。」
元国務大臣グリーンスパン「ストローズは賢い。ここまで頭の回る男だったとは・・・見くびっていたよ・・・
ソニックブレイドを失い、アメリカに対する批判が最大になったところで、傀儡を代わりにおいた。」
記者「国内は厭世ムードですが、対外的な戦争は今後も継続するのでしょうか?」
大統領「・・・?なんて言ったの?」

・

ブラックハウス執務室
新閣僚「現在のロスアラモスは治外法権です。
早急に手を打つべきかと。」
補佐官「わかっているわよ・・・
まず、今度の国連総会で、大統領に世界平和宣言を出させなさい。
ソニックブレイドのおかげで世界から戦争はなくなったと。」
閣僚「世界中に戦争を仕掛けておいてめちゃくちゃな。」
補佐官「それがなに?ソニックブレイドは今なおアメリカが持っているのよ?
世界のどこがアメリカを攻撃できるって言うのよ。
そのすきにソニックブレイドを平和の象徴にするのよ。
あの兵器が殲滅したのは、アメリカの脅威だけ。それは事実でしょう。」
閣僚「それで納得するだろうか。」
補佐官「だから、大統領を変えたのよ。頭を使いなさい。
血なまぐさい戦争は全て前大統領の計画にするのよ。」
閣僚「それでロスアラモスは・・・」
補佐官「あとはほうっておきなさい。
ソニックブレイドが平和の象徴になれば、科学者どもも満足でしょう。
だいたいあの臆病者に何ができるって言うの。
そうね、恩を売っておきましょう。
計画の成功を祝って、新しい大統領が近いうちに勲章を与えると。
この話はもうおしまい。」


退室していく閣僚たち。
秘書「補佐官、国連の深未局長がお見えです。」
補佐官「通しなさい。」

今日子「ごきげんよう。」
補佐官「やっと会えたわね。
中露の反乱については蒸し返さないわ。」
今日子「ふふ・・・何の話かしら。」
補佐官「しらじらしい。世界中のすべての情報は私に筒抜けなのよ。」
今日子「わたくしになにをしろと?」
補佐官「娘の武力解除よ。そしてロスアラモスの施設を閉鎖するの。」
今日子「条件がふたつあります。」
補佐官「聞きましょう。」
今日子「ひとつ。私たちの職員の身の安全を保証すること。
ふたつ。人工知能の実験データは世界に公表すること。あなたの私物じゃないの。」
補佐官「あなた・・・自分の立場がわかっているの?
テロリストとして、ただちに処刑することもできるのよ?」
今日子「ふふ・・・」
その途端、補佐官の首を絞め上げる今日子
補佐官「ぐえええ!」
すごむ今日子「ひとの娘を切り刻んでおいてよく言えるわね。
あの子に、この悪趣味な宮殿ごと吹き飛ばされたいの?」
補佐官「す・・・好きにしなさい・・・!」
首を離してやる今日子。
補佐官「なんて力なの・・・ぜえぜえ・・・」
微笑む今日子「お母さんは怒ると怖いんです。」
補佐官「あのデータを公開すれば、世界中で戦争が起こるわよ・・・」
今日子「あなたみたいな人ばかりじゃないわ。」

・

ロスアラモス
居住区の並木道で、えるのリハビリを手伝ってやるマルス
マルス「一緒に日本に帰ろう。」
える「はい。」
マルス「で、ガラクタ拾いをやろうよ。」
笑うえる「懐かしいですね。
私はツインテール屋さんがやりたいな。」
マルス「なにそれ?」
える「エビフライの上位互換です。」
マルス「よし、じゃあ、それもやろう。
それで二人で会社を経営して・・・お金を集めたら・・・きみのからだを元に戻す。」
える「元に戻るかなあ、これ・・・」
マルス「オレは天才だぞ。」
える「そうでした・・・ライちゃん・・・わたし・・・強くなれたかな。」
微笑むマルス「なりすぎだ。」

オフィス
カレル「お~い・・・ボス・・・ニューヨークの局長から電話ざんすよ。」
ロイド「あとでかけ直させるって言え。10年ごしのデートなんだ・・・
しばらく二人にさせてやれ。」
カレル「へ~い。」
窓からマルスとえるをみつめるフェイ「・・・・・・。」

並木道
える「高校生のころ・・・バレンタインデーチョコを食べてくれたじゃないですか。」
マルス「うん・・・」
える「あれ・・・一度トイレに落とされたんです。」
マルス「ええっ?」
える「でも、嬉しかった・・・本命チョコだったから。」
マルス「義理だと思ってた・・・」
える「ばか。
もう・・・どこにもいかないで・・・ずっとわたしのそばにいて・・・
おねがい。」
マルス「ああ・・・俺ももう二度と・・・離れたくない。」
微笑むえる「ずっといっしょだよ。」

•

国際刑事裁判所をあとにするマルス
弁護士「なぜ罪をかぶるような真似をしたんだ?」
マルス「約束したんだ。地球からいじめられても、俺が必ず守るって。」

ソニックブレイド 完

『超音速ソニックブレイド』脚本⑧

マジソンスクエアガーデン
首輪をつけられて、電気柵の中で丸まって寝ているゴモラ。
クラウス「こいつが最強の怪獣?見えねえな。冬眠してんのか。」
興奮して写真を撮るリサ「角がかっこいい・・・
ここでずっと飼育してくれないかしら。」
クラウス「おめえは能天気でいいな。
で、どっちが勝つと思うんだ?」
リサ「ゴモラ。」

ロイドと並んで歩いてくるジャック
ジャック「例の安楽死モジュールは?」
ロイド「・・・コヌス・プルプラケンス。南海のイモガイの神経毒にした。1000分の2秒で死に至る。
万が一脱走しても、このスイッチを押せば首輪から毒が注入され、一発ポカン。
おだぶつだ。」
スイッチを受け取るジャック「場所が場所です。市民に被害が出ないようにしましょう。」
リサ「隊長、ゴモラがロボットに勝って脱走もしなかったら・・・」
ジャック「それでも、私はこのスイッチを押します。」
クラウス「島に返してやればいいのにな。」
ジャック「私も今回の任務が一番胸糞が悪い。」

・

マジソンスクエアに併設された仮説格納庫。
強大な武器を取り付けられるソニックブレイドの機体。
将軍「自衛隊時代に銃の訓練は?」
える「89式をいちおう・・・」
将軍「なら安心だ。このスペシウム・レールガンは、超音速で36インチの砲弾を発射することができる。戦いが始まったら、すぐに怪獣に向けて撃つんだ。
それで相手も苦しまずに倒れるし、君も安全だ。」
える「人間に殺されるために、あの怪獣は故郷から連れ出されたの?」
将軍「きみの気持ちはわかるが、もうやるしかない。」

・

マジソンスクエアの観客席に人々が殺到する。
VIP席
国務長官「大統領は?」
補佐官「ホワイトハウスです。もう興味をなくしたそうですよ。」
国務大臣「やれやれ・・・」
補佐官「お互い、苦労しますね。」
国務大臣「きみは大統領が新人議員の頃から知っているんだろう?」
補佐官「はい、もっと言えばお父様の代から。」
国務大臣「大変だったな・・・」
補佐官「あの方は再選できますか?」
国務大臣「こんな茶番で国民の支持が回復するとは思えん・・・」
補佐官「ほほほ・・・同感ですわ。」
国務大臣「ほう。初めて君と意見が一致したな。」
補佐官「しかし、閣下は最も大切なことを理解しておられる。
統治に必要なものは恐怖の存在であるということを。」

・

WEMA本部
怪獣プロレスの中継をモニターに写す。
今日子「・・・・・・。」

・

闘技場の真ん中にはチェーンでつながれたゴモラがなおも眠っている。

関係者席
ドリンクを渡すフェイ「はい。あなたの機体が活躍するところを見ましょう。」
フェイと手を握るマルス「ぼくらの、だ。」

闘技場にソニックブレイドが入ってくる。
観客の歓声。

マルス「随分重装備に改造されてる。」
フェイ「軍のお偉い方へのアピールかしら。」
マルス「機動性が落ちていなきゃいいけど・・・」

コックピットのえる
ソニックブレイドがレールガンを構える。
将軍(何も考えず、引き金を一度引くだけだ。)

える「わたしは・・・今まで一度も暴力を振るったことがない・・・
いやだよ・・・」

マルス(負けちゃダメだ。戦わないと。)
さくら(強くなりなさい。誰よりも強く。)

目を瞑るえる「ごめんなさい・・・」

寺島(どんな理由があっても・・・暴力は絶対にダメ。)

引き金にかけた指が止まる。

ざわつく観客「・・・?」
何も起きないので、次第にブーイングが起きる。

背もたれに寄りかかるマルス「ダメだこりゃ・・・」
フェイ「いいじゃない。無抵抗な怪獣を殺すなんて悪趣味だもの。」

VIP席
補佐官「やはりこうなったわね。将軍。」
うなずく将軍。

すると、マジソンスクエアガーデンに10機のドローン兵器が飛んでくる。
フェイ「なにあれ。」
マルス「ドローンだ・・・」

補佐官「やってちょうだい。」

ゴモラに集中砲火を浴びせるドローン。
大爆発と衝撃波が起き、煙が立ち上る。
観客の大歓声。

える「や・・・やめてえ・・・」
その瞬間、煙から超振動波が放たれ空中のドローンを次々に破壊する。
える「・・・え?」
間髪いれずに、ソニックブレイドの方へ突進してくるゴモラ。
える「きゃああああ!」
あわててレールガンの引き金を引くえる。
しかし、間に合わず突進を受けて仰向けにひっくり返されるソニックブレイド。
発射されたレールガンはゴモラをかすめて、観客席を破壊してしまう。
木っ端微塵になる観客。
悲鳴が上がる。

興奮したゴモラはソニックブレイドを引きちぎろうとする。
泣き叫ぶえる「いたい、いたい!助けて・・・!」

蒸発した観客席を見て戦慄するマルス
冷静に立ち上がるフェイ「逃げましょう。」

残ったドローンがゴモラを強襲するが、長大なしっぽをひとふりすると簡単に叩き落とされてしまう。
ロイド「安楽死だ!スイッチは!」
ジャック「とっくに押しました!ドローンに破壊されたようです!」
リサ「観客を避難させましょう!」
クラウス「お前の予想通りだな。」
リサ「冗談言ってる場合じゃない!」

ソニックブレイドの片足を咥え上げ、振り回した挙句電気柵に放り投げるゴモラ。
バン!という閃光とともに、電気柵が破壊されてしまう。
ゴモラがマジソンスクエアガーデンから逃げていく。

国務大臣「これがきみのいう恐怖か。」
補佐官「あの女・・・殺してやるわ・・・」

・

ニューヨークの大通りを疾走するゴモラ。
今までの怪獣と異なり移動速度が速い。
車を踏みつぶし、尻尾を振ってビルを破壊していく。
軍隊が緊急出動するが、全くかなわない。
自由の女神に興味を示し、首に噛み付いて引きちぎってしまう。

・

ホワイトハウス
電話で怒声を浴びせる大統領「馬鹿者!あのロボットは何をやってるんだ!
お前ら、全員国家反逆罪で処刑だ!」
補佐官「早くお逃げください。あの化物はワシントンへ移動しています!」
大統領「なら、とっとと殺さんか!核を使え!!」
補佐官「それは無理です。ホワイトハウスに近すぎます。」
大統領「え?」
ゴモラの超振動波によって吹き飛ぶホワイトハウス。

(これが史上9人目の現職大統領の死となった。)

燃えるホワイトハウスで雄叫びを上げるゴモラ。
そこにレールガンが直撃する。
どうと倒れるゴモラ。
レールガンを構えるソニックブレイド。
える「ごめんね・・・」

・

ペンタゴン
国務大臣「副大統領も死んだ。早急に次の大統領を決めないと・・・
中ロへの牽制どころじゃないぞ。」
補佐官「大統領は死んだと誰が言ったのですか?遺体は?」
国務大臣「ホワイトハウスが木っ端みじんに吹き飛んだんだぞ?あるわけない。」
補佐官「ならば、まだ生きておられるかもわからない。」
国務大臣「いかれたのか?」
補佐官「あのゴモラを一撃で仕留めたソニックブレイドは、我々が所有している。
世界最強の軍が歯が立たなかったゴモラをたやすく葬ったのですよ?」
国務大臣「何が言いたい。」
補佐官「ソニックブレイドは世界を救った英雄?
おほほ・・・大間違い。
マジソンスクエアガーデンで多くの観客の命を奪ったのはあのロボットよ。
これこそ、大統領がおっしゃっていた恐怖の存在ですわ。
あのロボットさえあれば、世界はわたくしの思いのまま。」
国務大臣「何を言っているのかわかってるのか?」
補佐官「ゴモラは議事堂は破壊しなかったのね。うるさい議員どもを皆殺しにして欲しかったのに。よし、ソニックブレイドにやらせましょう。」
国務大臣「わたしは、この事実を世界に告発する・・・」
すると、黒服たちに拘束される国務大臣。
国務大臣「やめろはなせ!これはクーデターだ・・・!」
補佐官「あなたは有能だ。どうです?わたくしとやりませんか?
世界征服。」

・

壊滅したニューヨーク。
消防隊と一緒にがれきを撤去するソニックブレイド。
える「要救助者発見・・・!」
消防隊長「まるでスーパーマンだ。」
ソニックブレイドにトマトを投げつける市民「この人殺し!ニューヨークから出て行け!」
ソニックブレイドが市民の方を向く。
怯えて逃げ出す市民「ひいいい!」
涙を流すえる「だからこうやって罪滅ぼしをしているの。」

・

ロスアラモス
マルスのデスクにはコーヒーがない。
マルス「戦闘データは?」
カレル「ゴモラの一件で人工知能は飛躍的に進歩したざんす。」
ロイド「さらに、現在の災害救助活動のデータもあるから、レスキューロボとしての実用化も期待できる。」
マルス「・・・・・・。」
ロイド「上の空だな。」
カレル「デート中おしっこもらすなんてよくあることざんす。」
マルス「ねえよ。」

すると、オフィスに黒服が現れる。
黒服「ここの責任者は?」
手を上げるマルス
手帳を見せる黒服「陸軍防諜部のアルフレード・キエーザという。
ここの職員にスパイ容疑がかかっている。」
マルス「・・・は?」
キエーザ「仮想敵国中国にソニックブレイドの情報を流しているとね。
しかも彼女は君の恋人だ。つまり、君も怪しくなる。」
カレル「見事なこじつけざんす。」
ロイド「俺たちはもう用済みってことか?」
キエーザ「それは先の話だ。」

・

WEMA本部
ジャック「ロスアラモスの話は聞きましたか?」
今日子「とられちゃったわね。ソニックブレイド。」
ジャック「アメリカ中に戒厳令が敷かれています。
軍は怪獣退治だけにソニックブレイドを使うと思いますか?」
今日子「あなたと同じ意見ですわ。」

・

フィラデルフィア
ブラックハウスの執務室で贅沢な食事会をするストローズ。
補佐官「感謝しますわよ大統領閣下。
私に最強の武器を与えて死んでくださった。
これで世界に戦争を仕掛けて大儲けができるわ。
ささ、閣僚のみなさまも遠慮なく。」
閣僚「ご馳走になります・・・!」
将軍「ロスアラモスは軍の支配下におきました。」
補佐官「仕事が早いわね。
人工知能が完成するまでは丁重に扱いなさい。」
国務大臣「完成したら?」
補佐官「放り出すのよ。」
将軍「パイロットは。」
補佐官「あの泣き虫は口封じに殺しなさい。
そうね、面倒を見たあなたにやらせてあげる。おほほ!」
将軍「・・・かしこまりました。」
国務大臣「人工知能が完成するまでは油断できません。」
補佐官「そんなことは分かっているわ!
それまではあの女の顔を立ててあげましょう。」

・

豪華な個室に軟禁されているえる。
膝を抱えて泣いている。
える「私のせいで・・・多くの人を殺してしまった・・・」

・

補佐官「あの子は故意だろうが過失だろうが人を殺した。そこが大事なところよ。」
国務大臣「ほう。」
補佐官「最初は良心の呵責に耐え切れないでしょう。
しかし・・・それは最初だけ。そのうち何も感じなくなるわ。
深未えるは・・・殺戮マシーンに脚を踏み入れたのよ。」

『超音速ソニックブレイド』脚本⑦

日本。
お台場の海岸に打ち上げられている鯨のような怪獣のグビラ。
地元の警察がやじうまを規制する。
「危ないですから・・・!」
ジープで浜辺にやって来るMRFの隊員たち。
リサ「あら、珍しい。深海怪獣グビラよ。本物を見れるなんて。」
クラウス「危険なのか?」
リサ「深海2000mでダイオウイカを食べていることしか知られていなくて・・・」
グビラの巨体を見つめるジャック「随分苦しそうだ。」
リサ「海洋生物ですからね。」
ジャック「あの巨体じゃブルドーザーでも海には返せない。
死骸の解体方法を今のうちに協議しましょう。」
クラウス「おい・・・なんだあれは。」
クラウスが指さす方向に、巨大なロボットが立っている。
リサ「ああ・・・あれは日本のアニメの・・・」
クラウス「違う・・・」
すると、お台場の実寸代ガンダムオブジェの後ろからソニックブレイドが歩いてくる。
ジャック「ソニックブレイド・・・」
クラウス「マルスのやつ、本当に作ったのか?」
リサ「ねえ・・・あれならグビラを海に返せないかしら?」

WEMA本部でお台場の様子を見る今日子と将軍
傍らではマルスが呼ばれてキーボードを打っている。
今日子「動かない怪獣なら、訓練にうってつけね。」
指示を出す将軍「ソニックブレイド。練習通りに落ち着いてやれば大丈夫。
あの気の毒なクジラを海へ返すんだ。」

両腕でグビラを押すソニックブレイド。
しかしびくともしない。
コックピットのえる「めちゃくちゃおもいです・・・!無理です・・・!」

必死に励ます将軍「大丈夫!いける、いけるよ!あきらめないよ!」
今日子「スペック的には可能なのよね?プロジェクトリーダー」
マルス「ええ。ベンチプレスで10万トンは持ち上げれる。
あのパイロットはとんだ根性なしだ。」

える「腕が痛いよ・・・もうダメ・・・」

WEMA本部
将軍「逃げちゃダメだ!もう少し追い込むよ!筋肉は裏切らないよ!」
ため息をつく今日子
怪獣図鑑を広げるマルス「グビラの体重は3万5000トン・・・」
今日子「時間切れだわ。」

ソニックブレイドの胸のランプが青から赤に変わる。

リサ「あれ?」
グビラを押すのを諦めて、トボトボと帰っていくソニックブレイド。
クラウス「・・・何しに来たんだ、あいつは・・・」
すると目を覚ましたグビラが潮を吹いて、その圧力に押されて吹き飛ぶソニックブレイド。
そのまま、お台場の実寸大ガンダム像にぶつかり、粉々にしてしまう。
意識を取り戻したグビラはヒレを使って体を起こし、自分から海へ帰っていく。
ジャック「あ・・・あのロボットが押したから、怪獣も起きてくれたんですよ!
ありがとう!ソニックブレイド!」

WEMA本部
言い合いを始める開発部と軍。
将軍「君はもうすこしパイロットのことを考えるべきだ!」
マルス「あなたたちは一体どんな役たたずをパイロットに選んだんです!」
今日子「大統領の視察は・・・?」
将軍「ごほん。二ヶ月後です。そこで対怪獣の主力兵器にするかが判断される。」
マルス「不採用なら?」
将軍「きみらは国庫から1000億ドルをドブに捨てたということで国家反逆罪だ。」
マルス「ならもっとマシなパイロットにしてくれよ!」
将軍「なら、もっとマシなロボットを作れ!」
今日子「はいはい・・・将軍、まずはパイロットを労ってあげてください。
乗ってくれて感謝していると。
マルスくん。動作データをロスアラモスに持ち帰って改善を。
スペック値が出ないというのは何か理由があるはずだわ。」
マルス「局長はパイロットの肩を持つんですか?」
微笑む今日子「ショベルカーの性能に乗り手の筋肉は関係ないもの。」

・

エリア51
ソニックブレイドから降りるえる。
将軍「おつかれさま。」
える「ライちゃん・・・何か言ってましたか?」
将軍「あ、ああ・・・自分のロボットに乗ってくれることをとても感謝していたよ。」
える「そっか・・・」
コックピットにいつも付けているマルスの写真を見つめる。
える「会いたいな。」
将軍「この実験が終わるまでは我慢してくれ。」
える「わかってます。
はやくうまく動かせるようにならないと・・・」
将軍「ゆっくりでいいさ。」
える「ありがとうございます。」
将軍「アイスでも食べに行こう。」
笑顔になるえる。

その様子をガラス越しに見る補佐官。
補佐官「将軍は、あの子にいささか甘くはないかしら。
実験動物に情がうつるのはいけないわ。」
兵士「将軍の失くなった娘さんが、あれくらいの年齢だったそうです。」
補佐官「じゃあめっちゃ情がうつってるじゃない。
サイボーグじゃなかったら、わたくしがひっぱたいてでも戦わせるのに。」
兵士「将軍も軍人です。わかっておられるかと。」

格納庫で並んでアイスを食べる
える「怪獣ってかわいそう。」
将軍「だが・・・場所によっては放置しておくわけには行かない。」
える「・・・できれば戦いたくないな・・・
どの子も苦しんでいる。なんで、ただ、そこにいるだけで暴力を受けるんだろうって。」
将軍「この地球は彼らには住みにくいのかもな。」
える「あたしといっしょだ。」

・

ロスアラモス
イライラしているマルス「なんだ、あのパイロットは、うちのロボットが何もできないと思われるじゃねえか。」
コーヒーを出すフェイ「珍しく機嫌が悪いわね。ボス。」
マルス「あれじゃあソニックブレイドの人工知能を教育するどころか、反面教師だ。
ぼくらがほしいのは戦闘データですよ?」
ロイド「パイロットが一人見つかっただけでも僥倖だって言ってたじゃねえか。」
マルス「あれなら僕が乗ったほうがはるかにマシだ。」
フェイ「では、コックピットの衝撃に耐えるために、体を機械にされてもいいんですね。」
マルス「・・・え?」
フェイ「生身であんなロボットに乗れるわけ無いでしょ。
体がうまく動かないのは改造手術の後遺症なのかも。」
カレル「パイロットの彼女には、俺たちは頭が上がらないはずざんす。
長い目で見るざんすよ。それが教育でございましょう?」
マルス「・・・?パイロットって女なんですか?」
カレル「そんな気がするだけ。」
フェイ「パイロットが操縦しやすいように、こちらもバックアップしてあげないと。
これが今回のデータです。目を通してください。」
マルスのデスクに書類を渡す。

・

夜。
ロスアラモスの居住区にある酒場
カレル「さあさあ、イライラは酒で忘れるざんす」
マルスに酒を注ぐロイド「せっかく飲める年になったんだ。のめのめ。」
マルス「・・・大統領の視察どうしよう・・・」
スタッフの女の子達「カレルちゃ~ん!」
カレル「わ~お、リンダ、スージー♡」
女の子を両脇にはべらせるカレル
ロイド「お前は真面目すぎる。あいつを見てみろ。なんも考えてねえぞ。
あれでフィールズ賞とってんだ。」
マルス「あの人は天才だから・・・ぼくは血反吐を吐いて東大に合格したんだ。
高校生までは・・・自分が世界で一番賢いと思っていたけど・・・
ここは天才ばかり。自分の不甲斐なさに嫌になる。」
肩をすくめるロイド。
女の子達「そんなことないわよ、ライちゃん、わたしたちと遊びましょうよ!」
「日本の彼女とは別れたんでしょう?」
マルス「振られたんです。せっかく忘れようとしてたのに・・・」
カレル「二人とも野暮なこと言うんじゃないざんす。
マルちゃんが好きなのはフェイ・ヤーメイ先生なんザンスから。」
マルス「ちょ・・・」
ロイド「坊やはわかりやすいな。」
カレル「いつもクールな彼女の目が、マルちゃんを見るときだけ慈愛に満ちてるざんす。」
マルス「一度だけ買い物に付き合ってもらっただけですよ。」
ロイド「そういや、お前だけコーヒー入れてもらってたよな。」
カレル「モテモテざんすな~」
女の子達「うぶでかわい~」
マルス「か・・・顔が赤いのは、ロイドさんの酒が強いからで・・・僕の意思では・・・」
その時、ふと冷静になって立ち上がるマルス。
ロイド「?どうしたい。」
酒場から出ていくマルス。
ロイド「怒らせちまったかな。」
カレル「あの顔は違うかな。」

・

薄暗いオフィスでソニックブレイドの動作データを漁るマルス。
フェイ「残業ですか。」
マルス「フェイ・・・
BMI開発者として・・・また医師としての意見を聞きたい。」
フェイ「なんでも。」
マルス「BMIとはパイロットの思考を電気信号に変えてロボットを動かす技術だよな。」
頷くフェイ
マルス「だから、ロボットを動かす際は足を交互に前に出すように思考しなければならない。」
フェイ「ええ。」
マルス「でも・・・ぼくらってすべての動作をそこまで意識的におこなっているのか?
自分の意思とは関係のない反応だってあるだろ・・・
その・・・好きな人と話す際には心拍数が上がるし・・・」
フェイ「今のあなたのように?」
マルス「あの日の買い物のあとのこと・・・みんな知ってるっぽい。」
フェイ「ソニックブレイドに自律神経のような仕組みを実装すると?」
マルス「例えば、重心が移動した際にバランスをとるとか、激しい動作の場合はリアクターの出力量を上げるとか・・・
そうすれば、この前のグビラは持ち上がったんじゃ・・・」
フェイ「あなたは賢いわ。だから好き。」
マルス「17で医学部を卒業した君には負ける。」
抱きしめあう二人。

・

二ヶ月後
パリのコンコルド広場のど真ん中でぐっすり寝ているガヴァドンB。
彼が起きないように優しく体を持ち上げ、安全な人気のない場所へ運んでいくソニックブレイド。

える「いい子ね・・・安全な場所に返してあげるから・・・」

WEMA本部
モニターでパリのようすを眺める上層部。
今日子「ご満足かしら?」
補佐官「ほほほ・・・ど・・・どうでしょう、大統領・・・」
国務長官「これなら、人的被害をほとんど出さずに怪獣の対応ができるかと。」
大統領「・・・俺は一体何を見せられてるんだ?」
補佐官「・・・へ?」
大統領「局長。あなたは対怪獣用の戦闘ロボットの開発をすると言ってなかったか。
それがこれなのか?
申し訳ないが、俺には酔っぱらいを介抱するおまわりさんにしか見えん。
俺が・・・いやアメリカ合衆国が欲しいのは凶暴な怪獣を一撃で粉砕する戦士だ。
おい、ストローズ。こんなものに俺は金を出したのか。」
補佐官「ひっ・・・深未局長・・・」
冷静な今日子「怪獣のほとんどは実は性質がおとなしいんです。
人間が下手に攻撃して興奮させない限り、日本のような悲劇は起きない。」
大統領「こんなもので中ロが牽制できるとは思えん。
EUの連中が黙ってないぞ。」
国務大臣「しかし、凶暴な怪獣がいない以上・・・」
大統領「どこかから見つけて用意しろ。巨大で獰猛な奴がいい。
そいつとあのロボットを戦わせるんだ。そしてその様子をNATO軍、いや世界に中継しろ。」
今日子「国連としては承諾できませんわ。」
大統領「あのロボットは完成した。もうこちらで好きに使わせてもらおう。
ブラッドリー将軍。」
将軍「は・・・」
大統領「お前はこの計画から外す。いの一番に嫌な顔をしやがった。」
将軍「いえ、私にやらせてください。
コスタリカ沖のジョンスン島にジュラ紀で最大最強だった古代の恐竜が生き残っているという極秘情報があります。」
大統領「なんてやつだ。」
将軍「ゴモラザウルス・メガロカウダリス。」
大統領「名前が強そうだ。よしお前に任せる。そいつを連れて来い。」
将軍「は。」
退室する大統領。
補佐官「失敗は許されないわよ・・・」
将軍「わかってます。」
国務大臣「いやはや、動物虐待だ・・・いい気分がしない。」
今日子「だいじょうぶ。動物虐待にはならないわ・・・
あの恐竜をアメリカ本土に持ち込んだら・・・虐待されるのは人類よ。」

・

ニューヨーク
マジソンスクエアガーデンに大規模な工事が入っている。
巨大な電気柵を設置している作業員。
ヘルメットをかぶるロイド「怪獣プロレス、電流デスマッチてところか。
脱走したら、あんたらの出番だ。頼むぜ。」
ジャック「狂ってる・・・」

・

ジョンスン島
熱帯のジャングルで覆われた火山島。
伝説のハンター、ローランドがUNG麻酔銃でゴモラザウルスを仕留める。
ローランド「あとは知らん。勝手にやってくれ。」
空輸されるゴモラザウルス。

・

クリスマス
ロックフェラーセンタービルのスケート場でフェイとデートをするマルス。
スケート初体験のマルス「ちょっと絶対手を離さないでよ!」
意地悪そうに笑うフェイ「さ~て・・・どうしようかしら・・・」
マジソンスクエアガーデンの方へ飛んでいく巨大ヘリ。
マルス「あれか・・・」
フェイ「気の毒な怪獣。」

マルス(この気の毒な怪獣こそがアメリカ合衆国を崩壊させるのだった。)

『超音速ソニックブレイド』脚本⑥

アメリカ。ホワイトハウス
大統領「元気を出せよジュンちゃん。今度ゴルフにでも行こう。では。」
日本とのホットラインを切る大統領。
大統領「相当派手にやられたらしい。在日米軍に支援物資を送らせろ。トモダチ作戦だ。」
補佐官「かしこまりました。」
大統領「世界中どこもかしこも怪獣だらけだ。
誰だ、あれはフセインが作った生物兵器だと言ったやつは。お前だったか?」
補佐官「おほほ・・・」
大統領「お前のせいで、イラクでは無駄な戦争をしたもんだ。
世界の警察の名を汚すな。」
補佐官「お父様の代からの悲願だったではないですか。」
大統領「もはや、あんな国アメリカの脅威ではない。こいつらだ、こいつらをどうする?」
怪獣の写真をデスクにばらまく。
補佐官「そういえば・・・ソニックブレイドの試作機ができたとか。」
大統領「なんだそれは。」
補佐官「国連のアイディアで・・・人型ロボットを作って怪獣を無力化するという話があったじゃないですか。」
大統領「忘れた。」
補佐官「いやですわ・・・」
大統領「忌々しい怪獣どもを戦術核以外で倒せるというのなら好きにやれ。
イラク戦争ではしこたま稼いだんだろう?金は惜しむな。
愚鈍な恐竜どもをもう一度絶滅させろ。」

大統領執務室を後にする補佐官。
廊下では、ジム・グリーンスパン国務長官と、マイク・ブラッドリー将軍が立っている。
国務長官「ストローズ補佐官。大統領閣下はなんと?」
補佐官「ブラッドリー将軍。」
黒人の将軍「は。」
補佐官「ソニックブレイド計画の進展は?」
将軍「パイロットが見つかりません。
あんな得体のしれないロボットと自分の脳を接続したくないと・・・」
補佐官「なんとかしなさい。」
国務長官「自国の兵士を実験動物のように扱っていることが明るみになるのはまずいぞ。
ただでさえイラク戦争で政権に対する非難は高まっているのに。」
補佐官「あらそう。自国じゃなきゃいいのね。」
国務長官「私はここ数年で次々と怪獣が地底から目覚めている、その原因に対処すべきだと思うが。」
補佐官「地球温暖化に?中東の石油の利権を奪ったところよ、冗談じゃないわ。
あなたは大統領のやり方に文句があるわけ?」
国務長官「しかし・・・」
補佐官「断言するわ。二酸化炭素の排出は、怪獣の増加に一切関係がないわ。
将軍、パイロットを必ず見つけるのよ。」
廊下を歩いて行く補佐官を見送る、国務長官と将軍。
国務長官「君はどう思う?」
将軍「ロスアラモスで実物をご覧になったことは?」
国務長官「ない。」
将軍「あれに乗るもの好きは地球上にはいませんよ・・・」

・

ロスアラモス
輸送コンテナに格納されるソニックブレイドの機体。
それを見上げる開発メンバー。
ロイド「あれに乗るもの好きがいたとはなあ・・・」
カレル「どんなやつざんしょ。」
フェイ「頭おかしいんじゃないの?」
マルス「コックピットの衝撃吸収は問題ないんですよね?」
ロイド「できるかぎりのことはした。」
フェイ「しかし、戦闘時間は長くて3分よ。それ以上は脳に後遺症が残る。」
カレル「戦闘データはうちのサーバーに逐次送られてくるザンス。」
フェイ「とりあえず、マルスくん。お疲れ様。あとは軍に任せましょう。」
カレル「今夜はみんなで飲み明かすザンスよ!」
ロイド「おう、いこうぜ。」
マルス「つ・・・疲れた・・・でも・・・これでやっとえるに会える・・・
今年こそ日本に帰ろう。」

・

アメリカ
政府の公用車でネバダの軍事基地「エリア51」につれてかれるえる。
える「あれ?国連本部にはいかないんですか?」
黒服「・・・?(日本語がわからない)」

軍事基地には、ストローズ補佐官が笑顔で待っている。
車を降りるえる。
補佐官「いや~こんなかわいいお嬢さんが・・・!ほほほ!
あなたの勇気には心から賞賛しますわ。
わたくし、大統領補佐官のレヴィ・ストローズと申します。
日米関係はあなたの自己犠牲で一層強くなると、大統領も申しておりましたわ。」
英語がわからないえる「?・・・マイネームイズペン。」
補佐官「ペンと言ったわ!とっとと書類を出しなさい!」
慌てる部下「は・・・」
補佐官「では、書類のここにサインを・・・」
える「・・・?名前書けばいいの?」
書類をしまう補佐官「よし、これでOK。将軍、あとは任せたわよ。」
将軍「彼女は任務の内容を本当に理解しているのですか?」
補佐官「理解しないでいい。このバカを絶対に逃がしちゃダメ。」
車に乗り込み帰ってしまう補佐官。
将軍「私の娘くらいか・・・戦いには犠牲がつきものだが・・・胸が痛いな。」

・

マルス(こうしてソニックブレイドの実地試験が始まった。
データ分析に主観が入らないように、テストパイロットの素性はWEMAには一切知らされなかった。)

・

東京のアパート
マルス「ただいま~・・・」
笑顔で出迎える中学生になったろな「おかえりなさいお兄ちゃん!」
マルス「パパとママは?」
ろな「御馳走を買いにヨーカドーに行ったよ。」
マルス「はいこれ、アメリカのおみやげ。」
野菜を置く。
がっかりするろな「・・・ジャガイモじゃない。」
マルス「うちの農場で作ったんだ。」
ろな「あ・・・ありがとう・・・(寺島先生からこの前大量にもらったんだよな・・・)」
マルス「北陸の方、大変だったんだろう?」
ろな「らしいよね。えるちゃんも被災地支援やってるんじゃない?連絡はつかないの?」
マルス「うん・・・ずっと着信拒否。」
ろな「あまりにお兄ちゃんが会ってくれないから、愛想つかしたんじゃない?」
マルス「オレは振られてしまったというのか・・・!」
ろな「だって卒業式以来一度も会ってないんでしょう?」
マルス「ここ数年はあまりに激動で、日本に帰るタイミングがなかった・・・」
慰めるろな「まあ、元気出しなよ。女の子は他にもいるさ。」
マルス「そんな・・・」
ろな「次はもっと彼女を大事にすることね。」
マルス「はい・・・」

・

エリア51
全裸で手術台に括り付けられるえる。
泣き叫ぶえる「やめて!やめて!!ライちゃん助けてえ・・・!」
医師が不気味な医療機器をえるの頭に取り付ける。

・

廃校となった高校に足を運ぶマルス。
季節は冬で枯葉が揺れる。
須藤「アニキも日本に帰ってたんすか?」
マルス「きみは・・・須藤君?」
須藤「お久しぶりっす・・・!」

ファミレス
ミックスグリルをむさぼる須藤「仕事は順調っすか?」
マルス「ひと段落はしたかな。きみはまだゲーマーで食ってるのか?」
須藤「世界大会で3回目の優勝をしたら、とんでもないところからオファーが来たっす。」
マルス「任天堂?」
須藤「アメリカ軍っすよ。この前終結したイラク戦争ってあるじゃないっすか。」
マルス「ああ。」
須藤「あの戦争でドローン兵器を操縦していたのは、何を隠そうこの俺っす。」
マルス「ドローンって・・・あのラジコンみたいなやつだろ。
あんなんで戦争ができるのか?」
須藤「アメリカの軍事技術はやばいっす。
そのうち巨大ロボットでも作るんじゃないっすか。」
マルス「ははは・・・そういう内部事情ってこんなところで話していいのか?」
立ち上がって大きな声で須藤「オレは世界中どこでも空爆できるっす!」
マルス「おい・・・」
須藤「どこで何を話していても、アメリカさんには筒抜けっすよ。」
マルス「その技術で、えるの気持ちを聞いてきてほしいよ。」
須藤「え?音信不通っすか?アニキの技術で携帯電話から追跡できないんすか?」
マルス「仮にできたとして・・・向こうが着信拒否をしているんだぞ。」
須藤「サイバーストーキング行為になるっすね・・・」
マルス「会って謝れば許してくれないかなあ・・・」
須藤「アニキ・・・男と違って女は過去を引きずらないっす。」
マルス「お前・・・知らない間にいろいろ経験したんだな・・・」
須藤「さあ、ここはオレがおごるっす。食べてください!」

えるとよく遊んでいた公園
笑顔で缶ぽっくりで遊ぶ小学生のえる。
笑顔で缶ぽっくりで遊ぶ中学生のえる。
笑顔で缶ぽっくりで遊ぶ高校生のえる。
マルス「あいつ・・・バカだったな・・・」
涙がにじむ。
マルス「だめだ・・・バカはオレだ・・・
もう忘れないと・・・」

・

改造手術を受けてソニックブレイドのコックピットに押し込まれるえる
「いやだあああ!!」
子どもの頃、いじめで跳び箱の中に閉じ込められた記憶がフラッシュバックする。
軍のスタッフが英語で叫ぶ。
「ふざけんじゃねえ、お前の改造手術に1000万ドルもかけたんだ!」

ガラス越しにソニックブレイドを見つめる補佐官
ため息をつく。「誰があの子を選んだの?」
将軍「実験は中止しますか?」
補佐官「そんなことしてみなさい。私は大統領に殺されるわ。
銃でもなんでも突き付けて、言うとおりにさせるのよ。」
将軍「それはすでにやりました。」
補佐官「じゃあ、手足に一発食らわせてやりなさい。」
将軍「それは絶対に許可できません。彼女の肉体はほとんど強化パーツにしてしまった。
コックピットの激しい振動に耐えるためにね。」
唾をのむ補佐官「・・・あの泣き虫に銃弾は効かないの?」
将軍「あの子がああいう性格でむしろ良かった。
もし、狂暴な人間がこの実験に選ばれていて・・・
銃器が効かないことに気づいたら・・・」
補佐官「わかったわ。暴力はなし。
あなたのやり方に任せるから、ソニックブレイドに乗せてちょうだい。」
将軍「・・・・・・。」

パーカーを羽織り、冷たいコンクリートの床にへたり込んで震えているえる。

将軍「彼女の来歴が書かれた資料を。」
兵士「は。」
資料を受け取る将軍。
将軍「母親はWEMAの局長なのか?」
兵士「幼少期から疎遠だったそうですが。」
将軍「この実験に娘が参加していることは絶対に秘匿しろ。」
兵士「大統領補佐官からも申し使っております。」
将軍「しかし、哀しい境遇の子だな・・・
よし・・・彼女に会おう。私の部屋に通してくれ。
そして温かい食事を用意してくれないか。」

ブラッドリー将軍の執務室。
える「失礼します・・・」
将軍「やあ、かけたまえ。」
ソファに座ろうとするが、苦痛で顔をゆがめるえる
将軍「だいじょうぶか?ゆっくり・・・」
える「体中が冷たくて・・・動くたびに痛いんです。」
将軍「そうか・・・気の毒に。」
える「あれ・・・?日本語がしゃべれるんですか?」
将軍「沖縄の那覇基地にいたことがあってね。ワイフも日本人だ。」
涙ぐむえる「やっとお話ができる・・・」
将軍「いくらでも聞くよ。」
える「あのロボットには乗れません・・・私は狭いところが怖いんです・・・
ずっと閉じ込められて・・・いじめられてたから・・・」
将軍「辛い思いをしたんだな。」
える「それでも・・・今回のいじめは過去最悪です・・・
さすがのわたしも・・・もう・・・死にたい・・・」
将軍「わたしにも、君と同じ年ごろの娘がいてね・・・
きみが嫌なら、もうあれには乗らなくていい。」
える「・・・え?」
将軍「わたしが大統領に直談判する。計画は中止だと。」
える「ほんとう?」
将軍「私も幼少期、この肌の色だろう?
白人の子にずっといじめられてきてね・・・
きみの気持ちも少しはわかるつもりだ。許してほしい。さあ、スープを飲みなさい。」
える「ありがとう・・・初めてこの国で優しい人に会えた。」
将軍「きみには愛する人はいるのか?」
える「アメリカに恋人がいます。国連本部で働いていて・・・
わたし・・・国連で働けると思ったから・・・この実験に参加したんです。
そしたら、砂漠につれてかれて・・・体を機械にされた・・・
こんな体のあたしなんか・・・きっとライちゃんは愛してくれない・・・」
号泣するえる。
将軍「そんなことはない。」
声を荒げるえる「なんでわかるんですか!」
将軍「ソニックブレイド計画の責任者は、きみの恋人、マルス・ライだからだ。」
ロスアラモスでのマルスの写真を見せる将軍。
言葉を失うえる「・・・え?」
将軍「彼もきみがパイロットであることを知ったら、すぐに計画を中止させるはずだ。
だから、もう乗らなくていい。」
える「私が乗らないと・・・ライちゃんはどうなるんですか?」
将軍「国家反逆罪になる。」

・

ロスアラモス
プリントをデスクに置くフェイ「ソニックブレイドの戦闘データが入ってきました。」
目を通すマルス「どれどれ・・・不安定な歩行・・・
すぐに転倒・・・パイロットはひどい頭痛と吐き気を訴える。
怪獣の方はロボットを脅威と認識せず素通り・・・」
ロイド「戦闘データなのか、それ。」
カレル「実験は失敗ザンス。」
マルス「いや・・・始まったばかりだ。」

『超音速ソニックブレイド』脚本⑤

ロスアラモスの荒野
オープンカーを走らせる今日子。その助手席にはマルスが座っている。
今日子「・・・機械に感情や知性を与えられると思う?」
マルス「哲学の話ですか?」
今日子「いえ・・・技術的な話。」
マルス「そもそもデジタル信号が、あいまいで複雑なものをどこまで理解できるか・・・」
今日子「機械に愛や平和、正義は分らない?」
マルス「数量的な定義ができないと。
誰かを救うために他の誰かを犠牲にしなければならない状況があったら・・・」
今日子「難しいわね。」
マルス「ファジー理論と言って確率的に判断しちゃうやり方もありますけどね。
なんでそんな話をするんですか?」
今日子「いえ、ちょっと興味があっただけ。」

農場のゲートを通過する。
今日子「ここがWEMAの極秘研究施設よ。」
マルス「ただの農場に見えるのですが・・・」
今日子「実際ただの農場ですわ。」
マルス「そういえば、ずっと聞こうと思ってたんですけど・・・
ぼくのパソコンにWEMAからメッセージがあったんですよ。」
今日子「ふふ。読んでくれた?」
マルス「どうやって、ぼくを知ったんですか?それに、ぼくだって素人じゃない。
ハッキング対策くらいはしている。」

農場内を走るオープンカー。
道の両側には研究スタッフが住む家屋が並んでおり、小さな村のようになっている。

今日子「ここにいる変人にとっては従来のハッキング対策なんて意味がありませんの。」
マルス「そんなハッカーが?」
今日子「というより、コンピュータね。
彼の技術は核兵器以上に国際関係を変えてしまうから・・・世界中が狙っている。
でも、カレル博士はアナーキスト。そういったきな臭い話は嫌いなの。」
マルス「カレル?もしかして・・・パリ大の天才数学者エバリスト・カレルのことですか?」
今日子「あら、ご存じ?」
マルス「もしかして、ここにあるんですか?」
今日子「ええ。世界中のすべての暗号を破ることができる究極のスパコン。
量子コンピュータよ。」

農場のガレージに車を止める今日子。
農場には似つかわしくない厳重な扉の前まで歩く2人。
「話は通してあります。このキーカードを持っていきなさい。
これで、ここのすべてのドアは開くわ。」
カードを受け取るマルス。
「極秘施設のマスターキーをいただけるんですか?」
今日子「当然よ。」
マルス「・・・?」
車に戻る今日子「では、ごきげんよう。」
マルス「局長はいかないんですか?」
今日子「おしりを触られたくないから。」

扉のロックを外して、中に入ると頭上から強風が吹き、体についたほこりを飛ばされる。
次の扉に入ると、今度は地下に続くエレベータがある。
エレベータの壁には紙が貼ってあり「地下3Fを押すこと」と書かれている。

地下3F
エレベータのドアが開くと、目の前に巨大な人型ロボットが立っている。
マルス「・・・これは・・・」
白衣の女性「対怪獣人型兵器ソニックブレイド。今はただの置物よ。」
マルス「なんでこんなものが?」
白衣の女性「これが人類のメシアになるか、粗大ごみになるかはあなた次第。
プログラマーのマルス・ライね?」
マルス「ええ・・・」
白衣の女性「フェイ・ヤーメイよ。歓迎するわ。可愛いリーダーさん。」
マルス「・・・え?」

電子頭脳実験室と書かれたガラス張りのラボに案内されるマルス
フェイ「まったく、どこで遊んでいるのかしら。」
すると、散らかったデスクから、アロハシャツを着たサングラスの男が、突然現れ、フェイのスカートをめくる。
アロハシャツの男「ぺローン」
おしりを隠すフェイ「・・・いい年してそんなことしかできないの?」
マルス「・・・え?この人が・・・?世界一の天才数学者でありコンピュータの王・・・」
フェイ「カレル博士・・・」
カレル「にゃはは!女がミニスカートをはくってパンツ見せたい願望の表出だろ?
フロイトがそんなこと言ってた。」
フェイ「何自分に都合のいい仮説立ててるんですか。殺すわよ?」
憧れの人物がただのセクハラ野郎だと知って、失望して泣いてしまうマルス。
カレル「うお!マルちゃんが俺に会えてうれし泣きを・・・!」
フェイ「よかったわね。」
エディ・ロイド「おっ、坊やじゃねえか。早かったな・・・なんで泣いてんだ?」

粗末なオフィス
カレル「この美人は、フェイ・ヤーメイ博士。医学者で専門は脳神経・・・」
訂正するフェイ「量子認識学。正しくは。
神経系の電気パルスが人間の主観的意識をどのように構築するかを・・・」
カレル「この分野のオーソリティざんすよ。」
フェイ「まだしゃべってたんだけど?」
カレル「しかし、人間の意識が物理的な電気信号に還元できるとは。
さすが中国人ザンス。冷たい唯物史観を持っていらっしゃる。
きみは徒歩や李白の詩が電気信号の産物とでもいうのかね?」
フェイ「ええ。ジャン・コクトーもね。」
マルス(仲悪り~・・・)
カレル「さて、ここでやっていることを簡単に説明しよう。
メインホールの巨人を見ただろう?
あいつを動かす人工知能を開発するのがうちのミッションざんす。」
マルス「あのロボットに知能を?」
カレル「あのソニックブレイドには、世界に一つしかないオレの傑作、ガイアシミュレータが搭載されているざんす。演算速度は従来のスパコンの1兆倍。
世界の連中は、オレの量子コンピュータがサーバールームのような場所にあると思っているようだが、まさかロボットの体内に隠されているとは思うまい。」
エディ「ソニックブレイドの動作制御は合計12000個を超えるサーボモーターが担っている。これをすべて同調させるだけでも大仕事だが・・・最終目標は怪獣どもとの戦闘だ。
となると、一般的な工業用ロボットのように、あらかじめエンジニアが動作パターンを網羅し、それをマシンに再生させるのは不可能。怪獣の行動なんか予測不可能だからな。」
マルス「それは・・・まあ・・・」
エディ「そこで坊やの出番だ。
いくら装備が一流でも、これを動かすコンピュータがヨチヨチ歩きじゃ話にならねえ。」
カレル「コンピュータは超一流ザンス。プログラムがないザンス。」
マルス「ちょっと待ってください・・・!つまり、戦闘状況に合わせて、出力内容を適切に変更していくような人工知能を作れと?フレーム問題は?」
フェイ「そこをなんとかするために、局長はここのボスにあなたを指名したの。」
マルス「・・・え?」
カレル「施設もスタッフも資金も、ムッシュの好きに使うザンス。
パトロンのアメリカ軍からいくらでも引っ張ってこれる。
ただし、絶対に成功させるザンス。これはマンハッタン計画、ヒトゲノム計画以上に重要なミッション。失敗したら国家反逆罪ザンス。」
マルス「ぼく・・・まだ19歳なんですけど・・・」
撤収していくスタッフ。
フェイ「よかったわね。好きなだけコンピュータをいじれるわよ。」

・

裁判所
裁判官「ロスアラモスで人工知能の開発を・・・?」
マルス「不可能だと思ったのですぐにやめた。オレは諦めが良くてね。」
裁判官「では、世界を滅ぼす人工知能がなぜ存在しているんです?」
マルス「開発ではなく教育をしたのさ。」

・

数日後
自分のオフィスで頭を抱えるマルス「知能そのものをコード化するなんて無理だ・・・」
ろくに睡眠も食事もとっておらず、部屋は散らかっている。
部屋に入ってくる酔っぱらっているカレル「いよ~う、マルちゃん、呑みに行こうぜ~!」
マルス「呑みに行こうぜって・・・もう吞んでるじゃないですか・・・
やっぱりムリだと思いますよ?
ロボットにパイロットを乗っけちゃダメなんですか?」
カレル「ははは!マルちゃんはミキサーを使ったことはおあり?」
マルス「ええ・・・」
カレル「あのサイズが激しく動くザンスよ?パイロットはスムージーザンス。」
マルス「遠隔操作は?」
カレル「軍は通信電波の傍受を危惧してるザンス。」
マルス「カレル博士はいつも遊んでばっかりですね・・・」
カレル「もともとこの計画には乗り気じゃないザンスよ。
自分の技術が軍事兵器に応用されて嬉しい科学者はいないザンス。」
マルス「だから適当に仕事をしてるんだ。」
カレル「それよりも、ムッシュが国連のサーバーにアタックしたプログラム。あれに興味があるザンス。あんたは情報だけ奪って痕跡一つ残さなかった。」
マルス「ああ、あれは相手がこちらの攻撃をたどろうとすると、プログラム自身がソースコードを変えるような仕組みを作ったんですよ。刺激を受けて色を変えるカメレオンみたいな。」
カレル「プログラムがプログラムを書くってことざんすか。」
マルス「ええ・・・もともとは大学でそんな研究がしたかったんです。」
カレル「では、それを今すぐ研究するザンス。」
マルス「・・・え?」
カレル「刺激に対して適応をする・・・それこそが知性ではなくて?」
マルス「あのプログラムは別に外界の刺激に適応をしているわけじゃないですよ。
あくまでもサイバー空間での・・・」
カレル「ソースコードはどこにあるざんす?」
マルス「・・・家ごと破壊されちゃったんです。」
カレル「あら、ざんねん。」
マルス「待てよ。高校のパソコン室に・・・」

・

ソニックブレイドが大地を踏みしめる。
電子頭脳実験室で、人間の脳波でロボットが動く実験を見るマルス。
ソニックブレイドの25分の1のサイズのマケットが、MRIから送られてくる電気信号によって操作されている。
フェイ「ブレイン・マシン・インターフェイス。あの医療機器が検体の脳波を読み取り、それを電気信号に変えてロボットを操作する。
わたしはもともとホンダでそんな研究をやってて・・・」
マルス「すごいな。」
フェイ「ほら、お客様にごあいさつ。」
小さなソニックブレイドがマルスにコーヒーを注ぐ。
フェイ「この技術が発展すれば、究極の義手が作れるわ。いえ、人体をほとんどサイボーグ化できるかも。」
マルス「これを使わないなんてもったいない。」
フェイ「上から遠隔操作はリスクが大きいと却下されちゃってね。
まあ、わたしの技術は本来、医療目的だから。別にいいんだけど。」

・

ソニックブレイドがある地下3Fホール
アクチュエータ―開発部のオフィスには、ドラフターや製図用具が転がっている。
エディ「よお、順調そうだな。」
マルス「そう見えますか。」
エディ「全く見えん。フェイから聞いたぜ?遠隔操作を考えているそうだな。」
マルス「ブレイン・マシン・インターフェイス(BMI)を使わないのは損です。」
エディ「あのお嬢ちゃんには言うなよ。オレは反対だ。」
マルス「なぜ?」
エディ「あんたが最初に関わった怪獣は何だ?」
マルス「キングザウルスなんちゃらだったかな・・・
あの時は怪獣からの電波障害がすごくて・・・あ。」
エディ「そういうことだ。」
マルス「では、BMIの装置をコックピットに搭載するのはどうです?」
エディ「カレルに聞かなかったか?」
マルス「スムージー。」
エディ「そうだ。まあ、ボスはあんただ。判断は任せるよ。」


・

ロスアラモスの居住区にやってくる寺島先生「はい、約束のもの。」
古いハードディスクをマルスに渡す。
マルス「ありがとうございます。」
寺島「どういたしまして。航空便じゃダメだったの?」
マルス「世界の命運を握るプログラムなんで。
みんなは元気ですか?」
寺島「少しは手紙くらい出しなさい。」
マルス「ここは田舎すぎて、外部との情報が完全にシャットアウトなんですよ。」
寺島「ちゃんとご飯食べてる?少しやせたんじゃない?」
マルス「高校の頃と変わらないなあ・・・」
寺島「そうだね・・・ちなみに高校はなくなっちゃったよ。
今は教育委員会で働いてる。」
マルス「そうなんですか・・・」
寺島「しかし、散らかっているわねえ。掃除してあげる。」
マルス「だいじょうぶですって・・・」
寺島「いいから。もっと私を頼ってよ。わたしの・・・最後の教え子なんだから。」

・

マルス(こうして、通称“適応プログラム”の開発が始まった。
適応プログラムとは簡単に言うと箱庭だ。
プログラムの中には自然環境に当たる管理プログラムと、生物に当たるエージェント群が存在する。各エージェントには個性があり、演算結果には多少のばらつきがある。
管理プログラムはユーザーの意向に沿った演算を行ったエージェントを評価し、エージェント群の分布バランスに修正を加えるのだ。
これを繰り返すことで、エージェント群全体の知性を底上げしていく。
プログラムがプログラムを書くというのはそういった意味だ。
量子コンピュータはとりわけこの手のシミュレーションに強く、天文学的なエージェント群の進化を可能とする。
ただし、問題はこの知性は常にユーザーの評価を必要とすることだった。
ユーザー・・・すなわち知性を持つオレたち人間だ。)

・

施設のゲート
寺島「じゃあ、体に気を付けてね。」
マルス「先生も。」
寺島「ねえ・・・えるちゃんに会ってあげなよ。」
マルス「この仕事が終わったら。」
寺島「約束だからね。
まったく・・・マルスくんは先生が教えてやらなきゃ何もわからないんだから。」
マルス「あとで農場の野菜を送りますね。」
寺島「しかし、国連に就職して食糧問題に携わるとはね・・・すばらしい仕事よ。」
マルス「先生のおかげです。」

寺島を見送る。
マルス「今でも教師なんだな・・・はっ教師か。」

・

ソニックブレイドのあるメインホール
マルス「ロイドさん。やはりパイロットの路線で行きましょう」
エディ「だからそれは・・・」
マルス「開発段階だけです。人間のパイロットに実戦での動きをさせて、それを人工知能に学ばせる。そして、十分に知性が進化したら、操縦席をつぶせばいいじゃないですか。」
エディ「ほう。」
マルス「そもそもムリに知能を定義しようとしていたのが間違っていた。
知能がどんなものかわからないのだから、不可能なんです。
しかし・・・ぼくらには知能があることは明白・・・
ならば、ぼくらが教育すればいい。」
エディ「素晴らしいアイディアだが・・・(ソニックブレイドに目をやる)
あの棺桶に誰が乗るんだ?」
マルス「なんとかパイロットがスムージーにならないようにしてください。」
エディ「一つ聞かせてくれ。
仮に安全性が確保されたとして・・・あんたはこれに乗って戦おうと思うか?」
マルス「絶対に嫌だ。」

・

日本の自衛隊基地
教育訓練を終えて整列する新兵
敬礼するさくら「今日で教育訓練は終了です。新しい部隊での活躍を祈ります。
よく頑張ったわね。」
新兵に一人ずつバッジをつけてやるさくら。
涙ぐむえる「教官・・・ありがとうございました・・・」
微笑むさくら「強くなりなさい。あなたをいじめるやつが地球からいなくなるまで。」

配属先が書かれた掲示板を見に行く隊員たち。
「輸送科だ。お前は?」
「通信科。」
自分の名前を探すえる。しかし、どこにも書かれていない。
京冨野「深未二士はいるかな。」
える「は・・・はい!深未えるです!」
京冨野「来なさい。」
える(怒られるのかな・・・)

指揮官室
京冨野「まあ、座って。」
える「失礼します。」
京冨野「きみのことは神宮司陸曹長から聞いている。根性の塊だとね。」
える「はあ・・・」
京冨野「君はどうして自衛隊に入った?」
える「怪獣から町を守るためであります。」
京冨野「だとしたら、自衛隊にその仕事はない。
グドンの件で怪獣との交戦権は剥奪された。最高裁で違憲判決が出たからな。」
える「怪獣と戦えないのですか?」
京冨野「事後的な被災地支援、復興援助に留まる。
原則自然災害と同様のミッションとなるわけだ。」
える「では暴れる怪獣を誰が止めるんですか?」
京冨野「そこでだ。
怪獣と戦いたいという強い覚悟がきみにあるならば・・・うってつけの任務がある。」
える「え?」
京冨野「国連に出向という形になるが・・・どうかね。」
える「こ・・・国連・・・?
いかせてください!」

笑顔で退室するえるを見送る京冨野。
「すまない。他の優秀な隊員は失いたくない。」
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