『系統樹思考の世界 すべてはツリーとともに』

 科学雑誌『Newton』でもお馴染み?の進化生物学者、三中信宏氏の新書。

 要約すると「人は個々の多様な事例を整理、体系化する際には、“樹”のようなイメージを持つと理解がしやすいよ」ってことだと思う・・・
 それは生物進化、生物の分類についても系統学、分岐分類学があるし、実験や検証が困難な歴史や人文科学においても、系統樹思考を使えば「科学的」にそれらを扱うことができる。
 そしてその考えは「セフィロトの樹」(なんとブックカバーの裏側に描いてあるのだ!)のように宗教でも使われていて、つまり系統樹思考は科学の分野におさまらず、人間が複雑かつ多様な個別事例(トークン)を解り易くまとめる際に、昔からお世話になってた考え方だと。私たちは樹が好きだったんだと。

 この思考のパターンは「樹」ってしちゃうとちょっと神秘的だけど、つまりさまざまな個別事例の枝々が、さらにもう一段階カテゴリーが上位であるちょっと太い枝から出ていて、その枝はさらに太い枝から出て・・・そんなマトリョーシカの連続を解釈するならば、それは「フラクタル」ってことなんだと思います。
 これは確かにぱっと見「樹」なんだけど、これは樹がすごいんじゃなくて、我々が目にする樹がフラクタルなどの複雑系、数学的規則に則って生成されているから、樹もあのような形になっているわけで、樹を作る普遍的な法則(複雑系)がいかにすごいかってこと。
 うん。系統樹思考ばんざい!

 ・・・で、この本の後半にも、系統樹思考よりもさらにランクが高く、複雑なものを複雑なままとらえる「包括ネットワーク」っていう思考パターンが登場するのですが、これはドゥルーズ=ガタリ的に言うならば「リゾーム(地下茎型)」。
 個々の事例が複雑な網の目のようなネットワークを結んじゃってしまい、なにとなにが関係しているのかごちゃごちゃしちゃって、処理しにくい。というか私たちには処理できません。
 もっといえばNP問題ってのがあって、コンピューターにも無理なんです。ネットワークをそのまま理解させて、その中で最善の手段をしらみつぶしに導き出すのは・・・
 結局この問題の対応策としてコンピューターにやらせているのが「枝の剪定」・・・なんと系統樹思考。
 私は『超音速ソニックブレイド』で、ちょっとここら辺の話を扱ったことがあって、コンピューターに「巡回セールスマン問題」と言った超難問を解かせる時、しらみつぶしじゃなくて取るべき攻略法をコンピューターに限定させるために、系統樹思考のようなものをやらせているという話は知っていました。
 ただこの「系統樹思考」と言う言葉は初耳。三中さんのオリジナルな言葉なのか・・・それともプロの研究者が知っている専門用語なのかは、ちょっとわからないですが、これって福岡伸一さんの「動的平衡」級、いやそれ以上に使い勝手がいい言葉。流行語大賞決定!

 しかしこの本、決して内容は難しくはないんだけど、福岡伸一さんや佐倉統さんの本に比べてなんか読みにくい。とっつきづらいというか・・・
 「タイプとトークン」「アブダクション(=現時点における最善の説明の選択のこと)」・・・と初耳なプログラミング用語のオンパレード。もう少し解り易くは書けなかったのかな?トークンなんて「個々の事例」とか「最小単位」とかでいいじゃん。ダメ?
 でも数学が得意な理系の人には、全然ついていける内容なんでしょうね。単純な数理モデルが結構出てくるから。私は数理モデルがダメなんで・・・ひいこら解釈し「な~んだ、そういうことかあ」の連続でかなり疲れました。

 ただ、この本は私の嫌いなポストモダンの思想をばっさり切り捨てる良本であります。それはどういうことかというと、相対主義を扱いながらも「どんな意見もそれはそれでいいじゃん」と価値の相対化に短絡的に走らずに、相対的に優先順位を決めよう。それがもっとも科学的な態度だよ、とか言うんです。この概念で行けば歴史だって進化論だって科学的に扱えるよ、と。
 このテーゼが書いてあるだけで『構造と力』の100倍は為になる本だと思う。この意見は、当たり前っちゃ当たり前なんですが、80年代の思想家や知識人はなぜここにいかなかったのだろう?って思っちゃいます。いや、行きついていた人もいたかもしれませんが・・・
 この「アブダクション」と言う方法を取ると、「相対的にこれよりはこの理論の方がまだまし・・・というように、その優先順位を決める基準はじゃあなによ?」って話に自ずとなっていくと思うのですが、これは「その理論はたくさんの人が信じているから正しい」という悪しき(?)民主主義的発想じゃなくて、ここで武器になるのが実験であり、テスト。
 実験データーに照らし合わせて相互比較し、その理論の解像度(これは私の造語)を上げていく・・・

 私は科学も思想の一つだ。という意見はあまり賛成していません。だって科学って事あるごとに私たちの先入観や幻想を見事に裏切ってくれるからw。そこが痛快。リンゴが万有引力で地面に落ちるのって思想じゃないですからね(「万有引力のせいだ」ってところが思想なのか?)。
 そもそも科学的な行為は古代からやっていたわけで、昔の人だって空を動く星を観て「なんで動いてるんだろ?」と科学的に疑問を持ったはず。
 でもその理由の解像度が今に比べてぼけていた。「あの星は神様が動かしている」とか「動く全てのものに命が宿っている」とか、ちょっと前では「空が地球中心に動いているから」とか・・・
 今の科学者は、同じ星を動く現象を観ても「神様」を使わずに、さらに合理的に目の前の現象の理由を理論化、体系化できます。
 現代の科学が絶対正しいとは言っていません。ただ「相対的に強いて言うなら今の理論の方が精度がいい」というだけです。この繰り返しが科学だと思います。

 三中氏は「この世界には完全無欠の本質がある」というグールド等の「本質主義」を批判します(三中さんはデビット・ハルの学問系統学寄り)。
 これは本質があるかどうかは知らないが、安易にそれに飛びつき絶対視してしまうと、科学的な相互比較の精神がまずいことになるから、三中氏はそう言っているのかもしれません。
 この相互比較を繰り返すことで理論の解像度をあげて、「本質たるもの」に近づくことはできそうですが、それは反比例のグラフ(双曲線)がXY軸にすれすれまで近づいても絶対にくっつかないように不可能なことなのかもしれません。
 でもそれってもはや、ほぼ本質・・・?

 とにかく「科学とは何ぞや?」って興味のある人にはお勧めの本かも。あとは数学に強い人ですね。数学よりも文学が好きな人は、この人よりも福岡伸一さんの方がとっつきやすいのだろうなあ・・・(でも福岡さんの進化論の記述はアブダクション的に信じちゃダメ!)

グリーン・ゾーン

 「面白い度☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆」

 嘘を欲したのはアメリカ政府そのものだ。だから君がここにいる。

 イラク暫定政権の安全地帯「グリーンゾーン」にちなむタイトルの本作は、2003年に起きたイラク戦争を題材にした戦争サスペンス映画。
 CMの印象ではシュワちゃんやセガール主演の(悪く言えば)ありきたりな一騎当千の軍人が戦うアクションものって感じですが、この映画はどちらかというとドキュメンタリータッチ。そう考えるとテレビCMはやっちまったな。もっと社会派っぽく宣伝すればよかったのに・・・

 そもそもこの映画の物語の核は、記憶に新しいイラクの大量破壊兵器に纏わるごたごたです。イラク戦争って私が思うにかなりスキャンダラスな戦争で、私もニューヨークの同時多発テロの報復でアメリカがアフガニスタンを攻撃しタリバン政権を追い払ったところまではついていけたんです。
 でもいつのまにかアメリカはイラクも攻撃してて「タリバンのついでにフセインもやっちゃうか?」ってかんじでさりげなく始まって終わっていたのが、このイラク戦争。
 当時のアメリカはブッシュ政権で、ブッシュ大統領と言えば、お父さんの代から中東イラクに挑戦し続けた偉大な政治家(フェイバリット文学は『はらぺこあおむし』)。
 イラクは石油資源も古代の貴重な遺跡もあるのに、イギリスにはクウェートを作られて石油の輸出を妨害されるわ、それに頭にきたイラクがクウェートに侵攻したら話が大きくなって湾岸戦争になっちゃうわ、その挙句アメリカには「大量破壊兵器作ってるだろ、お前」と言いがかりをつけられてフセイン政権は崩壊するわ、とにかく踏んだり蹴ったりの歴史。

 なぜアメリカがイラクを攻撃したのかは諸説ありますが、映画のラストでは石油工場らしきプラントが映っていたので「石油の利権のため」という説をとっていたようです。
 他にもトルクメニスタンの天然ガスを供給するパイプを敷くのにフセイン大統領が支配するイラクが地理的に邪魔だったとか、チェイニー副大統領と戦地に人材を派遣するブラックウォーター社がつながっていて雇用創出のためにあえて戦争を起こしたとか、内政問題がガタガタだった当時のアメリカ国民の政府への不満をそらすために他の国を敵国にしたてあげた等・・・まあいろいろあって、これは恐竜絶滅説のように複合的に起こったんだろうなあ・・・って感じがします。どれも理由の一部なのでしょう。

 これらの点でイラク戦争を起こした方がトレードオフの原理でデメリットよりメリットが上回ると判断したアメリカは、次に「じゃあどうやってイラクを攻撃する正当な理由を作ろうか?」となったわけで、国際社会に非難されないためにもいろいろ知恵を絞った挙句、嘘か本当か分からないけど可能性は0ではない「イラク大量破壊兵器製造の阻止」を掲げて戦争に踏み切ったのでしょう。
 結局イラクには大量破壊兵器はなかったわけだけど(とりあえずそんな形で落ち着いた)この理由を考えた人は頭いいですよ。
 兵器が無ければないで、「そういう悪さしていると思われるようなお前の態度にも落ち度があったんじゃないか?」とか「お前隠しやがったな!」って言えるし、なんとか上手い具合にことは運ぶとアメリカは当初は思ったのでしょう。
 この政治的な判断は決して間違ってなかったと思う。アメリカのような軍事大国の政治家って時に罪もないイラクの民間人をたくさん殺しても自国の利益を取るような冷酷なところがないとやっていけないと思うし、よく「バカだなアメリカは。破壊兵器があるかどうかよく調べてから攻撃を決めればよかったのに」と批判する人がいますが、私が思うに最初からイラクへの攻撃は決まっていたんです。あんな理由は後付け。だから何とでもかわせるであろう理由を作ったのは上手いと思う。

 しかし世界は甘くなかった。「イラクの大量破壊兵器の存在はアメリカのでっち上げ?」という話が出たとたん国際社会におけるアメリカの信用度は暴落。「世界の警察アメリカ」とか「パクスアメリカーナ」とかそんな時代は終わってしまいました。
 アメリカはパクス(平定)ではなくカオスをイラクにもたらしてしまい、イスラム教スンニ派、シーア派、そしてクルド族をなんとか独裁体制でまとめていたフセインを失ったイラクはもうドチャメチャ。対立する三つの勢力がそれぞれ自分勝手に権利を主張する会議のシーンはかなり印象的でした。
 これって今なおイラクを悩ます問題で、私が見たドキュメンタリーでは軍をまとめるアメリカ軍の兵士にイラク軍の兵士がやってきて「おい聞いてくれよ!シーア派のあいつ、オレがスンニ派だからっていじめるんだよ!」とか「クルド人が何か悪さしているのを俺は見た」って告げ口したり、もう学級崩壊している小学校のような状態になっていました。
 さらにこれまでフセイン政権で権力をセーブさせられていた最大勢力シーア派の横暴は「いじめ」で済むものではなく、まさに虐待。電気ドリルでスンニ派の人を突き刺したり本当に残酷。おそらくスンニ派の人も「目には目を」でひどいやり方で報復をしているだろうし、家族や友人を殺されちゃったら日本人だって「犯人を殺してやりたい」と思うわけで、イラクにはそんな人が数え切れないほどいる。

 この原因はやっぱりアメリカにあると思う。最初にスンニ派、シーア派、クルド族問わず無差別爆撃したのはアメリカ軍だし、「第二次大戦後の日本のように、野球とSEXと映画、あとチョコレートでも皆にあげとけば上手いこと民主化できるだろ」と甘い見通しをしてしまったのもアメリカ。
 この三つ巴ならぬ“四つ巴”の状態を予想し、当初から危惧していたのがCIAの「マーティ捜査官」。太っちょでベテラン捜査官の風格漂うマーティさんは、国を棄て亡命したズバイディ氏を新たなイラクのリーダーに仕立て上げようと目論むアメリカ国防総省のインテリメガネ「パウンドストーン氏」と対立し、主人公のミラー准尉に協力するのですが、結局結末は現実と同じに・・・

 『アバター』の時も思ったけどアメリカってちょっと他民族に対する配慮とかデリカシーが足りない気がします。でもこの映画は『アバター』とちがって「それじゃダメなんだ」と頑張るイラク人のフレディが象徴的に描かれていて、彼の「この国の未来を決めるのは、あんたらじゃない」というセリフは悲痛でした。
 本当に余計な干渉って事態をこんがらがらせるだけ。「虚構の大義名分」大量破壊兵器をミラー准尉のチームに捜させるより、米軍が壊したインフラを直してやればいいのに・・・

 そういえば日本の自衛隊も小泉さんのイラク攻撃支持によって、イラクに派兵されましたが、彼らはひたすらイラクの人に水をくれてましたよね。
 それでも「駐留地に迫撃砲とかぶちこまれたらひとたまりもない」とかハラハラしていて、特に自衛隊員に死傷者が出なかったのは本当に奇跡(ボランティアの人が捕まった時も無事に帰してくれたし)。小泉さんて本当にツキまくっていたなあ・・・
 自衛隊と言えば後に国会議員になったヒゲの隊長だけど、アル・ラウィ将軍もいいヒゲしてました。けっこうフセイン役もできたんじゃないかってほど貫禄充分。
 でもフセイン大統領の命令で反乱分子を消したりしてたんだろうなあ・・・フセイン大統領は独裁政権を守るために結構処刑していたらしいから。

『80日間宇宙一周』制作裏話

 長かった~!!私が『80日間宇宙一周』の脚本を仕上げたのは2009年の1月。そして1月~3月までに47ページまで下書きをし、その後大学に復学・・・K氏の強い要望もあり再び下書きの続きを書いたのが2010年の4月に入ってからでした。
 そして今、とうとう133ページに及ぶ過去最長の短編漫画『80日間宇宙一周』の下書きが完了しました。

 これ出版社とかに出せるページ数ではないので(長すぎ!)、おそらくペン入れはしないと思います。あしからず。133枚もなぞってたら年が変わっちゃうよ。
 工場とかメカニックとかとにかくペン入れが面倒なものばかり出てくるし、鉛筆だからこそだせる濃淡の表現が結構好きなんです。鉛筆って、つけペンとスクリーントーンをいくら頑張っても出せないタッチの柔らかさがあります。

 で「全133ページ」は、これまで原稿に描いて一番長かった『innocent garden』を抜き記録更新。その上、田代漫画史上「最も人が死んだ漫画」としても記録更新(『ホットショット2』かよ)。おそらくこの死者200万人という記録は私死ぬまで抜けないと思います。なにしろもう宇宙戦争は書かないと思うので。
 
 これほどまで時間をかけて取り組んだ漫画は久々で(おそらく執筆期間は半年)、結構愛着があります。というわけで、ここからは『80日間宇宙一周』の制作裏話を。この漫画全く知らない人にとっちゃどうでもいい記事なんですけど・・・(本編は本サイトにあります)

 まず本作の世界設定から。この漫画の着想となったのは「冥王星準惑星降格」のニュースです。「水金地火木土天海冥」の太陽系の9個の惑星がひとつ減って8個に・・・
 もし冥王星人なるものがいたら抗議するんじゃないだろうか・・・?このアイディア(?)がこの漫画の始まりでした。
 あとは冥王星は太陽系で最も外側の軌道を回っているので、太陽系にやってくる隕石を撃退する番人のような星にしよう→ならばスターウォーズ計画のようにミサイルやレールガンを装備しているだろう→軍事国家だ!→軍国主義の国に生きる軍人の話・・・って感じで連想していきました。

 もう一つのポイントが時代設定。宇宙船などが出てくるSFなので未来っぽくなりがちですが、あまのじゃくな私は『ワイルドワイルドウェスト』のような「レトロフューチャーもの」を高校の頃から一度やりたかったので、ライトなどの服装は20世紀初頭のものに、乗っている宇宙船「ライトフライヤー号」は第一次世界大戦のプロペラ機のような感じにしました。ちなみに具体的なデザインの元ネタはドイツの「フォッカー」です。

 またこの漫画はそもそも少年誌を狙って考えたので、『ドラゴンボール』のようになにか目的があって世界中を旅する構造の漫画にしました。いわゆるロードムービーです。
 この漫画は宇宙の色々な星を旅して、太陽系の各惑星に暮らすそれぞれ違った文化と価値観を持つ人々と交流していく感じにしました。本当は木星や土星ってガスの塊なんですけどね。
 さらに、ワクワクする少年冒険ものの感じをより引き出すために、本作の固有名詞はジュール・ヴェルヌあたりから引用しているもの(ノーチラス号、メイルシュトローム砲など)が多いです。

 次にキャラクターについて。まずはミグ・チオルコフスキー。彼女の名前は世界最速の戦闘機「ミグ25」からとっています。名字のチオルコフスキーは「宇宙旅行の父」ともいわれる著名な科学者で、彼の考えた宇宙ロケットの公式は本作のホワイトボードにも書かれています。暇だったら探してみてやってください。
 当初彼女のデザイン画を見た友人は「この人男?」と性別が分からなかったようで、アクセントとなるリボンや、胸を大きくしたりして女性に見えるようにしました。
 一応この人のデザインは女優の「天海祐希」さんをイメージしています。女性キャスターで言うならクールな「中田 有紀」さんあたり。

 で、性格は昔の日本にたくさんいたような「昭和ひとケタ型」。責任感が強く、権利よりも義務を重んじるミグは国家にとっては非常に使い勝手のいい軍人なのです。
 そんな彼女を成長?させるのがまったく正反対な自由人のライト。かのスティーブン・スピルバーグ監督は「ドラマとは二本の棒をこすり合わせるように、正反対の性格のキャラを出せば燃え上がる」というようなことを言っていましたが、私もそう思います。
 初期の設定では子供っぽい行動派のライトを、理詰めで言い負かすお姉さんという感じでしたが、実際書いてみたら終始ライトに押されっぱなしでした。
 ミグは今年で31歳ですが、このアラサーと言う設定は自分でもよかったと思います。上手いことミドルエイジクライシスが書けたかどうかは不安ですが・・・

 ミグと言えば、シーンのあちこちでつぶやく奇妙な歌詞の歌。これは最後で分かるのですが「所ジョージ」さんの名曲の数々です。一応知らない人の為に解説すると・・・隕石解体時・・・「農家の唄」、軍事工場の前・・・「チョコレートを買いに」、帰宅時デモに遭遇・・・「まったくやる気がございません」、駆逐艦メインリアクター・・「森田さん家に持ってった笹ガレイの干物」です。
 またノーチラス号の建造工場のプレートには「安全第二」という所さんのアルバムのタイトルが、ミグが呑んでいる缶ビールは所さんがCMした「ジョッキ生」、ライトの口癖「ニャハハ」と「ガーピー」は「デジタル所」さんの引用です。全部気付いた人は相当の所さん通です!他にも何かあったかもしれませんが、もう忘れちゃいました。
 ちなみに私が一番好きな所さんの歌は「雨上がり黒い路上」です。名曲!

 本作のもう一人の主役がライト・ケレリトゥスです。名前の由来はバレバレですね。ライト兄弟です。名字の「ケレリトゥス」は相対性理論の「E=M×Cの二乗」のCです。光速と言う意味のラテン語です。
 アメリカ生まれのライトは、自由と平等がモットーで人生をとことん楽しむタイプ。ミグのように国家のために自分の夢を諦める事が理解できません。
 彼にはモデルがいます。それは中学校の頃の友人のM氏です。破天荒かついつも笑顔。自由気ままな彼は、とにかく物理やメカに強く、東大生も輩出する進学校だったうちの高校でも物理が学年二位と驚異的な成績でした。
 M氏は頭が大変切れるのに、やることなすことおバカで私は本当にいろいろと笑わせてもらいました。この漫画は彼に捧げています。

 ミグの同僚バーニーは描いてて一番楽しかったデザインのキャラクター。小惑星解体部隊「ディープインパクト」のメカニック担当で、性格はぶっきらぼう。でも機械のように感情を出さず孤独に耐えるミグを、デニスと共に心配している数少ないミグの仲間。
 一方のデニスはディープインパクト最年長の参謀。彼女はミグを気にしながらも、女としてミグとは対極の人生を歩んでいます。夫の妻で、子の母親で、科学者で、そして星を守る戦士・・・
 この二人、出番は少ないもののけっこういい味出してくれました!

 研究のためならテロリストにも加担するファイヤーベントのような科学者トリエステ・ピカール卿は、深海潜水艇トリエステ号をつくったオーギュスト・ピカールから名前を頂きました。ピカールは「深海艇の人」と言うイメージがありますが、実は航空宇宙も研究しており、気球に乗って成層圏にも到達しているのです。海の底から、空の果て・・・これほど鉛直方向のギャップを冒険した科学者はこの人くらいなのではないでしょうか?
 しかし研究のためならどんな勢力にも加担するという彼の性格は、ヴェルナー・フォン・ブラウンをモデルにしています。「自分の作った技術を国家や軍がどう使おうとオレの知ったこっちゃない」という彼のテーゼは賛否両論ありますが、なんか小気味いいですよね。
 技術に非があるのではない。問題なのはそれを使う人間だ・・・この問題って現代の日本人のほとんどが、原子力や化石燃料といった科学技術の恩恵を受けて生活しているだけに難しいです。
 この手の問題が本作で少しでも問題定義できてよかった。これぞSFの醍醐味。

 いや~しかし終わった・・・とりあえず明日あたりにスキャナーでPCに取り込むから、K氏、もう少し待っててね。

Sex and the City

 「面白い度☆☆☆☆ 好き度☆☆」

 いや~けっこう面白かった。

 この映画は、フジテレビが大好きで一部の人は辟易としているであろう戦法「連続ドラマの映画版」なのですが、この手の映画はそのドラマのファンへのサービス的なものが多くて、ドラマを観ていない人はついていけない場合が多いんです。
 私は漫画を描きながら背後のテレビをつけっぱなしにしていて、音だけで最初は楽しんでいたのですが、この映画のすごいところは音だけで誰がどんなキャラクターかが分かってしまうこと。
 これってちょっとすごいですよ。吹き替えの声優さんの演技もうまさもありますが、やはりセリフを考えた脚本家の人がすごいのでしょう。
 なにしろ私、このドラマ全く何も知らずに映画版から見ましたからね。一見さんも大丈夫です。全然楽しめます。
 しかしタイトルがストレートでいいですよね。大学のクラスの女の子に「セックス&ザ・シティって知ってる?」って言ったら「セックスなんて言う人だとは思わなかった・・・」って幻滅されちゃったことがあったけど、そういうタイトルだから仕方がない。

 公開当時のテレビCMなどでは、ぱっと見4人の熟女ニューヨーカーはどれが誰だか全く分からなかったのですが、彼女達はちゃんとキャラ立ちしていて、置かれている立場も思考ルーティンもかなり明確に区別、設定されています。
 仲良しの女の子のグループの4人って、心理学では3人よりもいいらしくて3人だと2人がケンカした時なんだかんだで2対1になって分の悪い対立構造になりやすいようです。
 その点4人なら喧嘩しても誰か1人くらいは冷静な奴がいるだろうし、喧嘩した人にはそれぞれ友達がマンツーマンでアフターケア。

 そういえば「らきすた」「けいおん」とかの萌えアニメなんかもメインキャラは4人らしく、女の友情を描くならば4人って国を問わずドグマになりつつあるのか?
 「セックス&ザ・シティ」を観て、ああいった萌えアニメにはまる人の気持ちがちょっとわかったような気がします。たいした物語なんかなくても個性的な女性がワイワイやってるだけで面白いかもしれませんね。この映画がまさにそうでしたから。
 まさにテレビドラマの延長線上のようなストーリーで私は2時間ドラマとして楽しみました。

 とにかくこの映画、メインの女性たちが面白い。キャラが濃いというか、笑わせてもらいました。
 一応本作の物語の語り手にもなっているキャリーとビッグの結婚をめぐるドタバタ?が本筋って感じもしますが、メインの4人の中ではこのキャリーが一番キャラは大人しめ。「ときめきメモリアル」といっしょでヒロインはオーソドックスに仕上げられています。
 で、脇を固める3人が強烈。バレンタインデーになぜか女体盛りを自らの体で実験する奴はいるわ(サマンサ)、女体盛りでスタンバってたのに一向に来なかった男にカルフォルニアロールを投げつける奴はいるわ(サマンサ)、SEXが出来ないとその反動で食いしん坊になっちゃう奴はいるわ(サマンサ)、ウンコもらしちゃうのはいるわ(あ、これはシャーロット)で本当馬鹿馬鹿しいw。

 ウンコと言えば、結婚式を当日ドタキャンされ傷ついたキャリーが笑顔を取り戻すきっかけが、4人の中で唯一順調な人生を歩んでいる幸せいっぱいのシャーロットのウンコもらしイベントだったのですが、これって結婚式ドタキャンよりも考えようによっては心に暗い影を落とす事件じゃないか・・・!?
 みんな大爆笑していたけど、シャーロットは乙女だし・・・まあ、気を許せる友達の前では笑い話で終わるのか。なにしろみんな50歳だし。みんなも一度は経験があったのかもな(ねえよ!)。
 これが異性とのデート中だったら100年の恋も冷めるって・・・!いくら美人で性格がよくても「彼女はたまにうんちをもらすけどいい人よ」なんて紹介されちゃあ「そうなんだ・・・まあ、もらすことは誰だってあるしね、ははは・・・」なんて相手の男性はその場では優しくフォローしても、そいつの心の中では恋愛対象からひそかに除外されていることは必至です。
 だから異性じゃなくて同性の友達の前でもらしただけ、まだ幸運でしたよシャーロットは。それに彼女は結婚もしているし。
 私も大学でもらしたことあるけど、やっぱ結婚相手どころか彼女もいない身分で、もし異性の前でウンコ漏らしたら、一生結婚できないのでは・・?って恐怖にさいなまれることありますよ。
 ・・・あれ?なんか「セックス&ザ・シティ」の話じゃなくて、ウンコの話になってる・・・。

 で、私が一番好きだったのはSEX大好きのサマンサ。本当この人馬鹿で笑えるw。
 それに彼女自身も浮気性なところがあるからか、男性の浮気や結婚式のドタキャンにも意外と冷静に友達を励ましていましたし・・・けっこう前向きでいい奴なんです(怒るとカルフォルニアロール投げつけるけど・・・)。
 「1度の失敗くらい誰でもあるわよ」は彼女しか言えないセリフですよね。私もサマンサのように失敗を許せる人になりたいです。SEX依存症にはなりたくないけど・・・

ダイナソー

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆☆ 曲☆☆☆☆☆」

 最高の環境ビデオ。

 恐竜映画の金字塔と言ったら一般的にはやはり『ジュラシックパーク』って感じがしますが、個人的には『ジュラシックパーク』はバイテクを扱った素晴らしいSF映画であり、恐竜映画のBEST1は私はこちら。

 話の筋があまりに単純で「『リトルフット 謎の恐竜大陸』まんまやん」とか「白亜紀にキツネザルはいない(ブラキオサウルスもいない)」とか批判もありますが、これはディズニーが送る恐竜版『ディープブルー』。これこそ複雑な物語よりも映像美を楽しむ映画。
 高校生の頃、劇場でプテラノドンが滑空するシーンを見た時は涙と震えが来ましたよ。あまりに美しくて。景色が。この空撮どうやって撮ったんだろう?って。

 ただ映像もさることながら、とにかくこの映画は曲!曲が神がかっている。この曲のメドレーを美しい白亜紀の映像と共に楽しめるだけで私は超満足です。
 本作の音楽を手掛けたジェームズ・ニュートンハワード氏は作曲の時、ジョン・ウィリアムズ師匠の「ジュラシックパークのテーマ」と比較されることがかなりプレッシャーになったようですが、充分それに匹敵するスコアを書かれましたよ。
 しかもメインテーマの曲数が『ジュラシックパーク』の二倍はありますからね。特に卵の旅は最高傑作ですが(泣ける)、キツネザルの求愛~巨大隕石襲来~ベロキラプトル~恐竜大移動あたりの名曲の絶え間ない応酬はすごい!ここ名曲ラッシュですよ。
 もちろんサントラも買ったのですが、映画のEDのスタッフロールで流れるスペシャルメドレーが収録されてなかったのは残念。結局映画のDVDをサントラのように聴いてます。

 また本作はCG恐竜のモデリングの際に、骨と皮膚のあいだに「筋肉」をつけており、これによって恐竜の重量感や、皮膚のたるみによる年齢を表現しています。この技術は後に『JPⅢ』でも試みられていますが『ダイナソー』が先立って開発しています。
 特に巨大なブラキオサウルスのお婆さん「ベイリーン」が立ちあがるシーンは、本当に足腰が弱ってる感じが出ていて「体重55トンでコンドロイチン不足はこたえるだろうなあ・・・」ってお年寄りをいたわる主人公アラダ―の気持ちがちょっとわかりました。

 そう、この映画の面白い点はお年寄りの恐竜を出したこと。巨大隕石によって環境が激変し、小さな希望「命の大地」を求めて、小さな恐竜、大きな恐竜が種を超えて身を寄せ合い旅をしているのですが、この旅がとても過酷で、見た感じ「命の大地」のシーン以外で植物が生えているシーンは一切無く、となると彼らは飲まず食わずで砂漠とか横断しているわけで、本当に悲しい。
 で、そんな過酷な旅に一生懸命最後尾でついていく100歳を超えるスティラコサウルスのお婆さん「イーマ」とブラキオサウルスの「べイリーン」、そして馬鹿なイヌのようなアンキロサウルスの子ども「アール」・・・
 このトリオが意外と「弱者を労る気持ち、弱い立場の人だって力を合わせれば困難を乗り越えられる」というこの映画のテーマの象徴になっている気がして、面白かったです。

 私別にアメリカかぶれでも何でもないんですけど、一人の超人的な強さの男がたくさんの敵を倒していく『ドラゴンボール』や『北斗の拳』のような一騎当千的な話よりも、弱い立場の人が団結して強大な敵に立ち向かう話の方が好きなんです。民主主義万歳じゃないけど。大体たった一人で何十人もの敵を倒せるわけないじゃないですか(こんな性格でよく少年漫画描いてるな・・・)。
 だから弱い草食恐竜が団結して、恐怖と戦いながらもカルノタウルスに立ち向かうシーン(しかもよく見るとみんな怖くて震えてる・・・ように見える)は、もう本当にツボにはいっちゃって。

 あんな大災害に遭遇しながらも絶望に負けず必死に旅をする恐竜。なおかつお年寄りや子供をいたわることを教えてくれるこの映画は、やっぱり私にとって最高の恐竜映画です。
 こういうストレートなテーマって人間よりも動物などにキャラを置き換えた方がなぜか泣けるんですよね。なんでだろう?(ピクサーの『カ―ズ』もそれで号泣)
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